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特許7271627局所的な補強エリアを備えた内側自動車構造部品を製造するための方法
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  • 特許-局所的な補強エリアを備えた内側自動車構造部品を製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】局所的な補強エリアを備えた内側自動車構造部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20230501BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20230501BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20230501BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20230501BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230501BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D22/20 H
B21D53/88 Z
B21D22/20 E
B21D22/20 G
B23K11/00 570
B23K26/21 N
B62D25/04 A
B62D25/04 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021158807
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2018530129の分割
【原出願日】2016-12-08
(65)【公開番号】P2022008614
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2015/059479
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イバン・ビオー
(72)【発明者】
【氏名】イブ・ドルーアデーヌ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/036262(WO,A1)
【文献】特開2011-088484(JP,A)
【文献】特開2013-184221(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041159(WO,A1)
【文献】特表2013-501631(JP,A)
【文献】特開2011-195110(JP,A)
【文献】特開2014-193712(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104512473(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/20
B21D 53/88
B23K 11/00
B23K 26/21
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側上方前方ピラー(2)と、内側中心ピラー(4)と、内側上方前方ピラー(2)と内側中心ピラー(4)の上端部(12)との間に延びる内側サイドレール(6)とを備える車両の内側自動車構造部品(1)を製造するための方法であって、前記方法が、
内側上方前方ピラーブランク(20)、内側中心ピラーブランク(24)、および内側サイドレールブランクを提供するステップと、
内側上方前方ピラー(2)を形成するように、内側上方前方ピラーブランク(20)を熱間スタンプするステップと、
内側中心ピラー(4)を形成するように、内側中心ピラーブランク(24)を熱間スタンプするステップと、
内側サイドレール(6)を形成するように、内側サイドレールブランクを熱間スタンプするステップと、
内側自動車構造部品を得るように、内側上方前方ピラー(2)および内側中心ピラー(4)を内側サイドレール(6)に組み付けるステップと、
を含み、
本方法が、熱間スタンプステップの前に、
内側上方前方ピラー補強ブランク(22)を内側上方前方ピラーブランク(20)の局所的部分に取り付けるステップであって、前記内側上方前方ピラー補強ブランク(22)が、内側上方前方ピラーブランク(20)とともに熱間スタンプされ、それにより、内側上方前方ピラー(2)が、局所的な補強エリア(18)であって、前記局所的な補強エリア(18)の外側の内側上方前方ピラー(2)に対して増大した厚さを有する、局所的な補強エリア(18)を備えるようになっている、ステップと、
内側中心ピラー補強ブランク(26)を内側中心ピラーブランク(24)の局所的部分に取り付けるステップであって、前記内側中心ピラー補強ブランク(26)が、内側中心ピラーブランク(24)とともに熱間スタンプされ、それにより、内側中心ピラー(4)が、局所的な補強エリア(16)であって、前記局所的な補強エリア(16)の外側の内側中心ピラー(4)に対して増大した厚さを有する、局所的な補強エリア(16)を備えるようになっている、ステップと、
を含み、
内側中心ピラー補強ブランク(26)の形状および内側中心ピラーブランク(24)の形状は、熱間スタンプの後の局所的な補強エリア(16)において互いに対応し、すなわち、内側中心ピラー補強ブランクの輪郭は、内側中心ピラーブランクにおける、補強エリアが延びる部分の輪郭と同じであり、
内側中心ピラー補強ブランク(26)は、内側中心ピラーブランク(24)の中心部に取り付けられ、前記中心部が、内側中心ピラーブランク(24)の上端部から離間しており、内側上方前方ピラー補強ブランク(22)は、内側上方前方ピラーブランクの上端部に取り付けられており、内側中心ピラー(4)の局所的な補強エリア(16)および内側上方前方ピラーの局所的な補強エリアは、車両の高さ方向において同じ高さに延びている、
ことを特徴とする、内側自動車構造部品(1)を製造するための方法。
【請求項2】
内側上方前方ピラーブランク(20)と内側サイドレールブランクとが単一の部品で形成され、前記内側上方前方ピラーブランクおよび前記内側サイドレールブランクが、内側上方前方ピラー補強ブランク(22)とともに、単一のステップで熱間スタンプされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内側上方前方ピラー補強ブランク(22)と内側中心ピラー補強ブランク(26)とが、内側上方前方ピラーブランク(20)と内側中心ピラーブランク(24)とに、抵抗スポット溶接またはレーザー溶接のステップによって取り付けられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
内側中心ピラー(4)が、レーザー溶接ステップによって内側サイドレール(6)に取り付けられている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
内側上方前方ピラー(2)と、内側中心ピラー(4)と、内側サイドレール(6)との各々が、1200MPaより大の引張強度を有するプレス硬化鋼部品で形成される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プレス硬化鋼の組成には、重量%で、
0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
内側上方前方ピラーブランク(20)、内側中心ピラーブランク(24)、内側上方前方ピラー補強ブランク(22)、および内側中心ピラー補強ブランク(26)が、前記ブランクが熱間スタンプされる前はフェライトおよびパーライトを主体とする構造を有し、内側上方前方ピラーおよび内側中心ピラーが、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
内側上方前方ピラーブランク(20)と内側中心ピラーブランク(24)との各々が、0.7mmから1.5mmの間に含まれる厚さを有し、内側上方前方ピラー補強ブランク(22)と内側中心ピラー補強ブランク(24)との各々が、0.5mmから1.5mmの間に含まれる厚さを有する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上方前方ピラーと、中心ピラーと、上方前方ピラーの上端部と中心ピラーの上端部との間に延びるサイドレールとを備えた自動車構造部品の製造方法であって、前記方法が、
請求項1から請求項8のいずれか一項に従って内側自動車構造部品(1)を製造するステップと、
外側上方前方ピラーおよび外側中心ピラーを外側サイドレールに取り付けることにより、外側自動車構造部品を製造するステップと、
内側自動車構造部品を外側自動車構造部品に取り付けて、自動車構造部品を形成するステップと、
を含む、自動車構造部品の製造方法。
【請求項10】
外側自動車構造部品が凹状断面を有し、内側自動車構造部品が、外側自動車構造部品のキャビティを閉じるように配置されている、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側上方前方ピラーと、内側中心ピラーと、内側上方前方ピラーと内側中心ピラーの上端部との間に延びる内側サイドレールとを備えるタイプの内側自動車構造部品を製造するための方法であって、前記方法が、
内側上方前方ピラーブランク、内側中心ピラーブランク、および内側サイドレールブランクを提供するステップと、
内側上方前方ピラーを形成するように、内側上方前方ピラーブランクを熱間スタンプするステップと、
内側中心ピラーを形成するように、内側中心ピラーブランクを熱間スタンプするステップと、
内側サイドレールを形成するように、内側サイドレールブランクを熱間スタンプするステップと、
内側自動車構造部品を得るように、内側上方前方ピラーおよび内側中心ピラーを内側サイドレールに組み付けるステップと、
を含んでいる、方法に関する。
【0002】
本発明は、そのような内側自動車構造部品を有する自動車構造部品を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
自動車車両の上方ドアリング部品を形成するそのような内側自動車構造部品は、乗員室内へのいずれの種類の侵入に対しても自動車車両の乗員を保護することを可能にするために、特定の機械的特性を有していなければならない。
【0004】
上方ドアリング部品は、より具体的には、転倒事故の場合に、車両の屋根が乗員室内に侵入すること、または、屋根のクラッシュを防止するように配置されている。
【0005】
このため、屋根のクラッシュを生じる、転倒事故の場合において、これらピラーが曲がることを防止するために、中心ピラーと上方前方ピラーとを、補強要素で補強することが知られている。補強要素は、たとえば、補強要素を取り付けなければならない、中心ピラーの一部および上方前方ピラーの一部の相補的な形状を有するパッチの形態で、中心ピラーの一部、および、上方前方ピラーの一部に取り付けられている。
【0006】
したがって、補強要素は、たとえば、冷間スタンプステップの間、および、次いで、補強しなければならないピラーの相補的エリアに取り付けられる形状としなければならない。しかし、補強要素の寸法が小さいことにより、スタンププロセスを通して、および、取付けステップを通して、操作することが困難になっている。したがって、補強された構造部品の製造は、最適ではない。
【0007】
別の解決策は、補強されるべきエリアにおいて、局所的に厚みのあるエリアを有する、補強されたブランクを直接提供し、次いで、ブランクをピラーへと成形することである。
【0008】
しかし、この解決策は、やはり、自動車車両各々のモデルに関して異なるブランクを提供しなければならない点で、十分ではない。この異なるブランクは、補強されるエリアの位置、および、たとえば、補強されるエリアの寸法に関する、前記モデルに関する要請に応じるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、単純な方式で実施することができ、いくつかの車両のモデルに容易に適用することができる、補強構造部品を製造するための方法を提案することにより、これら問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、上述のタイプの方法に関し、本方法が、熱間スタンプステップの前に、
内側上方前方ピラー補強ブランクを内側上方前方ピラーブランクの局所的部分に取り付けるステップであって、前記内側上方前方ピラー補強ブランクが、内側上方前方ピラーブランクとともに熱間スタンプされ、それにより、内側上方前方ピラーが、局所的な補強エリアであって、前記局所的な補強エリアの外側の内側上方前方ピラーに対して増大した厚さを有する、局所的な補強エリアを備えるようになっている、ステップと、
内側中心ピラー補強ブランクを内側中心ピラーブランクの局所的部分に取り付けるステップであって、前記内側中心ピラー補強ブランクが、内側中心ピラーブランクとともに熱間スタンプされ、それにより、内側中心ピラーが、局所的な補強エリアであって、前記局所的な補強エリアの外側の内側中心ピラーに対して増大した厚さを有する、局所的な補強エリアを備えるようになっている、ステップと、を含んでいる。
【0011】
熱間スタンプのステップの前に補強ブランクをピラー部品に取り付けることにより、小さいパーツを、熱間スタンプステップを通して扱う必要性を避けている。この理由は、補強ブランクが、扱いがより容易であるピラーブランクとともに熱間スタンプされているためである。さらに、補強特性は、ピラーブランクを変更する必要なく、補強ブランクの特性を変更することによって容易かつ簡単に変更することができる。したがって、同じピラーブランクを、異なる補強の要請を有する様々な自動車車両のモデルに使用することができる。
【0012】
本発明の他の有利な態様によれば、車両下部構造は、単一または任意の技術的に可能な組合せで考慮される、以下の特徴の1つまたは複数を含んでいる。
【0013】
内側上方前方ピラーブランクと内側サイドレールブランクとが単一の部品で形成され、前記内側上方前方ピラーブランクおよび内側サイドレールブランクが、内側上方前方ピラー補強ブランクとともに、単一のステップで熱間スタンプされる。
【0014】
内側上方前方ピラー補強ブランクと内側中心ピラー補強ブランクとが、内側上方前方ピラーブランクと内側中心ピラーブランクとに、抵抗スポット溶接またはレーザー溶接のステップによって取り付けられる。
【0015】
内側中心ピラーが、スポット溶接またはレーザー溶接ステップによって内側サイドレールに取り付けられている。
【0016】
内側上方前方ピラーと、内側中心ピラーと、内側サイドレールとの各々が、1200MPaより大の引張強度を有するプレス硬化鋼部品で形成される。
【0017】
プレス硬化鋼の組成には、重量%で、
0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。
【0018】
内側上方前方ピラーブランク、内側中心ピラーブランク、内側上方前方ピラー補強ブランク、および内側中心ピラー補強ブランクが、前記ブランクが熱間スタンプされる前はフェライトおよびパーライトを主体とする構造を有し、内側上方前方ピラーおよび内側中心ピラーが、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有する。
【0019】
内側上方前方ピラーブランクと内側中心ピラーブランクとの各々が、0.7mmから1.5mmの間に実質的に含まれる厚さを有し、内側上方前方ピラー補強ブランクと内側中心ピラー補強ブランクとの各々が、0.5mmから1.5mmの間に基本的に含まれる厚さを有する。
【0020】
内側中心ピラー補強ブランクが、内側中心ピラーブランクの中心部に取り付けられ、前記中心部が、内側中心ピラーブランクの上端部から離間している。
【0021】
内側前方ピラー補強ブランクが、内側前方ピラーブランクの上端部に取り付けられている。本発明は、上方前方ピラーと、中心ピラーと、上方前方ピラーの上端部と中心ピラーの上端部との間に延びるサイドレールとを備えた自動車構造部品を製造するための方法であって、前記方法が、
上述の内側自動車構造部品を製造するステップと、
外側上方前方ピラーおよび外側中心ピラーを外側サイドレールに取り付けることにより、外側自動車構造部品を製造するステップと、
内側自動車構造部品を外側自動車構造部品に取り付けて、自動車構造部品を形成するステップと、
を含む、自動車構造部品を製造するための方法にも関する。
【0022】
本方法の別の特徴によれば、外側自動車構造部品が凹状断面を有し、内側自動車構造部品が、外側自動車構造部品のキャビティを閉じるように配置されている。
【0023】
本発明の他の態様および利点は、例として与えられ、添付図面を参照して成される、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る方法によって得られた内側自動車構造部品の正面図である。
図2図1の内側構造部品の分解斜視図である。
図3】本発明に係る方法に使用されるブランクの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、内側上方前方ピラー2と、内側中心ピラー4と、内側サイドレール6とを備えた内側自動車構造部品1を製造するための方法に関する。
【0026】
そのような内側自動車構造部品1は、相補的な外側自動車構造部品とともに、自動車車両のフロントドアを囲むとともに受領するように配置されたドアリングの上部を形成する自動車構造部品を形成することが意図されている。
【0027】
「inner(内側)」および「outer(外側)」との用語は、自動車車両の内部および外部に関して規定されている。内側は、車両の内部に向けられるものを規定し、外側は、車両の外部に向けられるものを規定する。「下方(lower)」および「上方(upper)」との用語は、通常の使用条件における自動車車両の高さ方向に関して規定される。
【0028】
既知のように、上方前方ピラーは、車両の高さ方向に延び、Aピラーとしても知られる、車両の前方ピラーを形成するように、下方前方ピラーに取り付けられることが意図されている。Bピラーとしても知られる中心ピラーは、車両の高さ方向に延び、車両のドアのロック手段を受領することと、5つのドアの車両の場合にフロントドアとリアドアとの間に延びることとが意図されている。中心ピラーは、実質的に乗員室の高さ全体に沿って延びている。サイドレールは、前方長手方向端部8と後方長手方向端部10との間に、車両の後方-前方方向、すなわち長手方向に延びている。サイドレールは、上方前方ピラーと中心ピラーとを結合し、車両の屋根パネルを支持することが意図されている。
【0029】
内側上方前方ピラー2と内側サイドレール6とは、たとえば単一部品で形成され、内側中心ピラー4の上端部12は、内側サイドレール6、たとえば内側サイドレール6の中心部14に取り付けられている。中心部14は、前方長手方向端部8と後方長手方向端部10との間に延びている。この実施形態によれば、内側サイドレール6は、実質的に乗員室の長さ全体に沿って延びる場合があり、それにより、後方長手方向端部10が車両の後方ピラー(図示せず)に取り付けられている。代替的には、内側中心ピラー4は、内側サイドレール6の後方長手方向端部10に取り付けることができる。
【0030】
内側上方前方ピラー2、内側サイドレール6、および内側中心ピラーは、1200MPaより大、たとえば、1300MPaより大の引張強度を有するプレス硬化鋼部品で形成されている。プレス硬化鋼部品は、マルテンサイト系構造を提供する。そのような高い機械的特性により、このシル部品を、ドアリングなどの補強構造を形成するための適切な部品としている。
【0031】
そのような鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。この組成のレンジにより、プレス硬化部品の引張強度は、1300MPaから1650MPaの間に含まれている。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。この組成のレンジにより、プレス硬化部品の引張強度は、1800MPaより高くなっている。
【0034】
鋼は、コーティングされない場合があるか、コーティング、たとえば、溶融メッキ、電着、真空メッキなどの任意の適切な処理により、合金化電気亜鉛メッキ処理がされるか、亜鉛メッキ処理される場合がある。
【0035】
内側上方前方ピラー2と内側中心ピラー4とは、各々が、局所的な補強エリア16と補強エリア18とを備えている。補強エリア16と補強エリア18とは、ピラーの残りの部分の厚さ、すなわち、補強エリア16および補強エリア18の外側のピラーの厚さよりも大である、増大した厚さを提供している。たとえば、内側上方前方ピラー2および内側中心ピラーは、補強エリア16および補強エリア18の外側において、実質的に0.7mmから1.5mmの間に含まれる厚さを提供し、補強エリア16および補強エリア18において、実質的に1.2mmから3mmの間に含まれる厚さを提供する。
【0036】
局所化により、補強エリア16および補強エリア18が、内側上方前方ピラー2および内側中心ピラー4の表面全体にわたって延びないことが意味されている。
【0037】
内側上方前方ピラー2の補強エリア16は、内側上方前方ピラー2の上端部、すなわち、内側上方前方ピラー2と内側サイドレール6との間の連結部において延びている。内側中心ピラー4の補強エリア18は、中心ピラーの中心エリア、すなわち、内側中心ピラー4の下端部および上端部12から離間したエリアに延びている。より具体的には、ドアが閉じられた状態の、取り付けられた車両では、補強エリア16と補強エリア18とが、車両のフロントドアの窓のベースに対してほぼ反対側に、前記窓の両側に延びる。したがって、補強エリア16と補強エリア18とは、車両の高さ方向において、実質的に同じ高さで延びている。
【0038】
そのような局所的な補強エリアにより、車両のドアリングが、屋根が乗員室内に侵入することなく、転倒事故に耐えることを可能にし、一方、ドアリングの大部分の厚さを低減し、補強エリアの外側のピラーの厚さに対応することを可能にしている。したがって、十分な機械的特性を有しつつ、自動車構造部品を軽量化することが可能である。
【0039】
内側自動車構造部品1を製造するための方法がここで説明される。
【0040】
図3に示すように、内側上方前方ピラー2を形成するためのブランク20が提供される。図3に示す実施形態によれば、この内側上方前方ピラーブランク20は、内側サイドレール6を形成するための、内側サイドレールブランクを形成する部分を備えている。換言すると、内側上方前方ピラーブランク20と内側サイドレールブランクとは、単一のブランクで形成されている。
【0041】
ブランク20は、ほぼ平坦で、たとえば、熱間スタンプの後に内側前方ピラーおよびサイドレールを形成するのに適切な輪郭と寸法を有するように、鋼シートから切られる。鋼シートは、内側上方前方ピラーおよびサイドレールが、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有することになるように構成された、フェライトおよびパーライトを主体とする構造を有している。
【0042】
ブランク20の厚さは、内側前方ピラー2の厚さ、および、補強エリア16の外側の内側サイドレール6の厚さに等しい。
【0043】
内側上方前方ピラー補強ブランク22は、たとえば、内側前方ピラー補強ブランク20と同じ材料の鋼シートからブランク22を切ることにより、やはり提供される。内側上方前方ピラー補強ブランク22は、内側上方前方ピラーブランク20に組み付けられるとともに熱間スタンプされる際に、補強エリア16を形成するように適合された輪郭および寸法を有している。したがって、内側上方前方ピラー補強ブランク22は、補強エリア16の厚さと内側上方前方ピラーブランク20の厚さとの間の厚さの差に等しい厚さを有している。したがって、内側上方前方ピラー補強ブランク22は、0.5mmから1.5mmの間に実質的に含まれる厚さを有している。
【0044】
内側上方前方ピラー補強ブランク22の輪郭は、補強エリア16が延びる、内側上方前方ピラー補強ブランク20の部分の輪郭と同じである。
【0045】
内側上方前方ピラー補強ブランク22は、補強エリア16が延びる位置、すなわち、図3に示すように、内側上方前方ピラーブランク20の上端部において、内側上方前方ピラーブランク20に取り付けられる。内側上方前方ピラー補強ブランク22は、たとえば、内側前方ピラーブランク20にスポット溶接されるかレーザー溶接される。
【0046】
得られる組み立てられたブランクは、こうして、熱間スタンプされて、内側前方ピラー2および内側サイドレール6の形状を取得する。
【0047】
内側中心ピラー4を形成するために、内側中心ピラーブランク24が提供される。
【0048】
内側中心ピラーブランク24は、ほぼ平坦で、たとえば、熱間スタンプの後に内側中心ピラーを形成するのに適切な輪郭と寸法を有するように、鋼シートから切られる。鋼シートは、内側上方前方ピラーおよびサイドレールが、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有することになるように構成された、フェライトおよびパーライトを主体とする構造を有している。
【0049】
ブランク24の厚さは、補強エリア18の外側の内側中心ピラー4の厚さに等しい。
【0050】
内側中心ピラー補強ブランク26は、たとえば、内側中心ピラー補強ブランク24と同じ材料の鋼シートからブランク26を切ることにより、やはり提供される。内側中心ピラー補強ブランク26は、内側中心ピラーブランク24に組み付けられるとともに熱間スタンプされる際に、補強エリア18を形成するように適合された輪郭および寸法を有している。したがって、内側中心ピラー補強ブランク26は、補強エリア18の厚さと内側中心ピラーブランク20の厚さとの間の厚さの差に等しい厚さを有している。したがって、内側中心ピラー補強ブランク24は、0.5mmから1.5mm未満の値との間に実質的に含まれる厚さを有している。
【0051】
内側中心ピラー補強ブランク24の輪郭は、補強エリア18が延びる、内側中心ピラー補強ブランク24の部分の輪郭と同じである。
【0052】
内側中心ピラー補強ブランク26は、補強エリア18が延びる位置、すなわち、図3に示すように、内側中心ピラーブランク24の中心部で、内側中心ピラーブランク24に取り付けられる。内側中心ピラー補強ブランク26は、たとえば、内側中心ピラーブランク24にスポット溶接されるかレーザー溶接される。
【0053】
得られる組み立てられたブランクは、こうして、熱間スタンプされて、内側中心ピラー4の形状を取得する。
【0054】
内側中心ピラー4はこうして、たとえば、前述の内側自動車構造部品を形成するように、抵抗スポット溶接またはレーザー溶接により、内側サイドレール6に取り付けられる。
【0055】
内側前方ピラー補強ブランク22と内側中心ピラー補強ブランク26とをそれぞれ、熱間スタンプステップの前に内側前方ピラーブランク20と内側中心ピラーブランク24とに取り付けることにより、前述の熱間スタンプステップの間のブランクの扱いが容易になる。
【0056】
補強ブランク22および補強ブランク26の材料が、補強エリア16および補強エリア18の望ましい機械的特性に応じて、ピラーブランク20およびピラーブランク24の材料とは異なっている場合があることに留意されたい。
【0057】
さらに、補強エリア16および補強エリア18の機械的特性を変更することは、補強ブランク22および補強ブランク26を単純に変更することによって容易に達成することができる。したがって、補強エリア16および補強エリア18の特性を適合させるように、補強ブランク22および補強ブランク26を変更することにより、同じピラーブランク20およびピラーブランク24を、様々な車両のモデルに使用することができる。
【0058】
得られる内側自動車構造部品1は、こうして、外側自動車構造部品に組み付けて、自動車構造部品を形成することができる。そのような外側自動車構造部品は、外側上方前方ピラー、外側中心ピラー、および外側サイドレールを備え、また、上述の方法に類似の方法によって提供することができる。外側構造部品は、たとえば、車両の内側に向かって開いたU状などの、凹状の断面を有している。内側自動車構造部品1は、外側自動車構造部品のキャビティを閉じるように適合されている。
【0059】
得られる自動車構造部品は、具体的には、転倒事故の場合における屋根のクラッシュを防止するように、軽量であるとともに特に強固である。
図1
図2
図3