(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】油圧システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/08 20060101AFI20230501BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F15B11/08 B
F03C1/253
(21)【出願番号】P 2021186209
(22)【出願日】2021-11-16
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0050397
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521129314
【氏名又は名称】モトロール カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Mottrol Co., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンヒョン
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-196802(JP,U)
【文献】特開平05-026205(JP,A)
【文献】実開昭51-068984(JP,U)
【文献】特開2019-011835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/253
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両方向に回転可能な油圧モータ;
一端が前記油圧モータの一側ポートと連結された第1の油圧ライン;
一端が前記油圧モータの他側ポートと連結された第2の油圧ライン;
前進すると前記油圧モータを停止させ、作動油の供給を受けると後進するブレーキピストン;
前記ブレーキピストンを前進方向に弾性加圧するブレーキ弾性部材;
作動油の供給を受けると前進して前記ブレーキピストンを前進方向に加圧する加圧ピン;
一端が前記加圧ピンに連結されて作動油を供給する加圧流路;
前記加圧流路を開閉する加圧スプール;
前記第1の油圧ラインから分岐して前記加圧流路の他端に合流する第1の分岐流路;
前記第2の油圧ラインから分岐して前記加圧流路の前記他端に合流する第2の分岐流路
;
前記加圧流路の前記他端に設けられ、前記第1の分岐流路から供給される作動油と前記第2の分岐流路から供給される作動油とのうち、高い圧力を有する作動油を前記加圧流路に伝達するシャトル弁;
及び
前記ブレーキピストンが前進すると加圧されて前記油圧モータと接触して前記油圧モータを停止させるための摩擦力を発生させる摩擦板;
を含む油圧システム。
【請求項2】
前記第1の油圧ラインの他端及び前記第2の油圧ラインの他端に連結され、前記油圧モータに供給する作動油の移動方向を制御する方向切換弁をさらに含む、請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記方向切換弁の切換動作に応じて前記油圧モータに作動油が供給されると、
前記ブレーキピストンは、作動油の供給を受けて後進し、
前記加圧スプールは、前記加圧流路を遮断することを特徴とする、請求項2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記方向切換弁が中立位置にあると、
前記ブレーキピストンへの作動油の供給が中断され、
前記加圧スプールは、前記加圧流路を開放することを特徴とする、請求項2に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記油圧モータは、可変型斜板を含み、
前記油圧システムは、
前記油圧モータの前記可変型斜板の角度を調節する第1のシリンダ及び第2のシリンダ;及び、
前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダへの作動油の供給を制御する斜板角調節弁;
をさらに含む、請求項1~
4のうちのいずれか1項に記載の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧システムに関し、より詳しくは、油圧モータに作動油を供給し、回転を動作、または回転を停止させる油圧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧システムは、作動油を吐出するメインポンプと、メインポンプから吐出された作動油で動作する駆動装置とを含む。なお、駆動装置は、油圧モータ及び油圧シリンダなどを含むことができる。また、各種の弁により作動油の供給可否と移動方向を制御するようになっている。
【0003】
このような油圧システムは、建設機械を含む様々な分野で使用されている。例えば、建設機械において走行及び旋回に使用される油圧モータは、メインポンプから作動油の供給を受けて駆動されるが、作動油が供給されると、走行又は旋回し、また、作動油の供給が途絶えると、慣性によって一定時間走行又は旋回して停止する。
【0004】
なお、油圧モータを停止させるためにブレーキ装置が使用されている。油圧モータに適用される従来の機械式ブレーキ装置は、油圧モータの回転体に接触して摩擦力を発生させる摩擦板と、摩擦板を加圧するブレーキピストンとから構成される。
【0005】
しかし、油圧モータが停止した状態で外力によって油圧モータのトルクが発生する場合、機械式ブレーキ装置に十分な制動トルクが発生しないと、油圧モータが回転して、油圧モータ内の作動油の吐出ができなくなり、圧力が上昇する現象が起こるという問題点がある。例えば、油圧モータが建設機械の走行モータとして使用される場合、建設機械が傾斜地に駐車されると、建設機械の自重によって油圧モータにトルクが発生し、建設機械は相当な重量を有するため、機械式ブレーキ装置だけでは十分な制動トルクを確保することが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施例は、油圧モータの停止状態を安定的に維持できる油圧システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例によれば、油圧システムは、両方向に回転可能な油圧モータ;一端が前記油圧モータの一側ポートと連結された第1の油圧ライン;一端が前記油圧モータの他側ポートと連結された第2の油圧ライン;前進すると前記油圧モータを停止させ、作動油の供給を受けると後進するブレーキピストン;前記ブレーキピストンを前進方向に弾性加圧するブレーキ弾性部材;作動油の供給を受けると前進して前記ブレーキピストンを前進方向に加圧する加圧ピン;一端が前記加圧ピンに連結されて作動油を供給する加圧流路;前記加圧流路を開閉する加圧スプール;前記第1の油圧ラインから分岐して前記加圧流路の他端に合流する第1の分岐流路;前記第2の油圧ラインから分岐して前記加圧流路の前記他端に合流する第2の分岐流路;及び、前記加圧流路の前記他端に設けられ、前記第1の分岐流路から供給される作動油と前記第2の分岐流路から供給される作動油とのうち高い圧力を有する作動油を前記加圧流路に伝達するシャトル弁;を含む。
【0008】
上述の油圧システムは、前記第1の油圧ラインの他端及び前記第2の油圧ラインの他端に連結され、前記油圧モータに供給する作動油の移動方向を制御する方向切換弁をさらに含むことができる。
【0009】
前記方向切換弁の切換動作に応じて前記油圧モータに作動油が供給されると、前記ブレーキピストンは、作動油の供給を受けて後進し、前記加圧スプールは、前記加圧流路を遮断することができる。
【0010】
前記方向切換弁が中立位置にあると、前記ブレーキピストンへの作動油の供給が中断され、前記加圧スプールは、前記加圧流路を開放することができる。
【0011】
上述の油圧システムは、前記油圧モータに接触して前記油圧モータを停止させるための摩擦板をさらに含むことができる。また、前記ブレーキピストンは、前進すると、前記摩擦板を加圧して摩擦力を発生させることができる。
【0012】
前記油圧モータは、可変型斜板を含むことができる。また、前記油圧システムは、前記油圧モータの前記可変型斜板の角度を調節する第1のシリンダ及び第2のシリンダと、前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダへの作動油の供給を制御する斜板角調節弁とをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施例によれば、油圧システムは、油圧モータの停止状態を安定的に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例に係る油圧システムの油圧回路図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った油圧システムの断面図である。
【
図4】
図2の加圧スプールを拡大して示す動作状態別の断面図である。
【
図5】
図2の加圧スプールを拡大して示す動作状態別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参考にして、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は種々に変更して実施することができ、下記の実施例に限定されない。
【0016】
図面は概略的でかつ縮尺に合わせて図示されていないことに留意されたい。図面にある部分の相対的な寸法及び比率は、図面における明確性及び便宜のためにその大きさを誇張又は縮小して示されており、任意の寸法は単に例示に過ぎず、限定的なものではない。また、2つ以上の図面に示される同一の構造物、要素又は部品には、類似する特徴を示すために、同一の参照符号を付してある。
【0017】
本発明の実施例は、本発明の好適な実施例を具体的に示している。それで、図解の多様な変形が予想される。従って、実施例は図示した領域の特定の形態に限らず、例えば、製造による形態の変形も含む。
【0018】
以下、
図1~3を参照して本発明の一実施例に係る油圧システム101を説明する。
【0019】
図1~3に示されるように、本発明の一実施例に係る油圧システム101は、油圧モータ200、第1の油圧ライン610、第2の油圧ライン620、ブレーキピストン400、ブレーキ弾性部材450、加圧ピン500、加圧流路650、加圧スプール750、第1の分岐流路651、第2の分岐流路652、及びシャトル弁730を含む。
【0020】
また、本発明の一実施例に係る油圧システム101は、方向切換弁720、摩擦板420、第1のシリンダ260、第2のシリンダ270、及び斜板角調節弁740をさらに含むことができる。
【0021】
油圧モータ200は、メインポンプ(図示せず)から作動油の供給を受けて作動されることになる。また、油圧モータ200は、両方向に回転可能である。即ち、油圧モータ200は、作動油を供給される方向によって回転方向が変化する。例えば、油圧モータ200は、建設機械を走行させるために使用される走行モータとして使用することができる。しかし、本発明の一実施例において、油圧モータ200は、走行モータに限定されない。
【0022】
また、本発明の一実施例において、油圧モータ200は、可変型斜板204を含むことができる。
【0023】
第1の油圧ライン610は、一端が油圧モータ200の一側ポートと連結され、第2の油圧ライン620は、一端が油圧モータ200の他側ポートと連結される。油圧モータ200は、作動油の供給を受ける方向によって回転方向が変化するが、例えば、第1の油圧ライン610から作動油の供給を受けると、油圧モータ200は右旋回し、油圧モータ200から排出された作動油は、第2の油圧ライン620に沿って移動することになる。逆に、第2の油圧ライン620から作動油の供給を受けると、油圧モータ200は左旋回し、油圧モータ200から排出された作動油は、第1の油圧ライン610に沿って移動することになる。なお、油圧モータ200から作動油が流入されるポートが流入ポート、また、作動油を排出するポートが排出ポートになる。
【0024】
方向切換弁720は、第1の油圧ライン610の他端及び第2の油圧ライン620の他端に連結され、メインポンプが油圧モータ200に供給する作動油の移動方向を制御する。即ち、方向切換弁720の動作状態によって、選択的に、第1の油圧ライン610を通じて油圧モータ200に作動油が供給されるか、第2の油圧ライン620を通じて油圧モータ200に作動油が供給されることになる。
【0025】
摩擦板420は、油圧モータ200の回転体に接触して油圧モータ200を停止させる。具体的には、後述するブレーキピストン400が前進して摩擦板420を加圧すると、摩擦力が生じ、油圧モータ200を停止させることになる。
【0026】
ブレーキピストン400は、前進して、摩擦板420を加圧して油圧モータ200を停止させることになる。但し、ブレーキピストン400に作動油が供給されると、ブレーキピストン400が後進しながら油圧モータ200の停止状態が解除されるようになる。
【0027】
ブレーキ弾性部材450は、ブレーキピストン400を前進方向に弾性加圧することができる。従って、ブレーキピストン400に作動油が供給されていない場合は、ブレーキ弾性部材450が提供する弾性力によって、ブレーキピストン400が前進しながら油圧モータ200を停止させることになる。即ち、ブレーキ弾性部材450は、油圧モータ200を停止させるための基本的な制動トルクを提供する。
【0028】
加圧ピン500は、作動油の供給を受けると前進してブレーキピストン400を前進方向に加圧することになる。即ち、加圧ピン500は、ブレーキ弾性部材450の弾性力による制動トルクが十分でない場合、これを補完する。
【0029】
特に、本発明の一実施例では、油圧モータ200が外力によって回転し、油圧モータ200内の作動油が外部に吐出されなくなることによる圧力上昇が生じる場合、前記作動油の圧力で加圧ピン500がブレーキピストン400を加圧するように構成される。
【0030】
例えば、油圧モータ200が建設機械の走行モータとして使用される場合、建設機械が傾斜地に駐車されると、建設機械の自重によって油圧モータ200に相当なトルクが加えられ、ブレーキ弾性部材450の弾性力だけでは十分な制動トルクが確保できなくなる。これにより、油圧モータ200が外力によって回転するようになるが、このとき、油圧モータ200内の作動油の圧力が上昇し、このような作動油が有する圧力で加圧ピン500を押してブレーキピストン400を加圧することにより、ブレーキ弾性部材450の弾性力だけでは十分でない制動トルクをさらに確保することが可能となる。
【0031】
上述のように、本発明の一実施例では、別途の作動油を投入することなく、油圧モータ200が外力で回転する時、油圧モータ200内の作動油を活用することにより、非常に効率的に制動トルクを確保することが可能となる。
【0032】
加圧流路650は、一端が加圧ピン500に連結され、加圧ピン500で作動油を供給することができる。
【0033】
加圧スプール750は、加圧流路650上に設けられ、加圧流路650を開閉することができる。即ち、加圧スプール750が開放されると、加圧流路650に沿って供給される作動油が加圧ピン500を押すようになる。
【0034】
第1の分岐流路651は、第1の油圧ライン610から分岐して加圧流路650の他端に合流することができる。
【0035】
第2の分岐流路652は、第2の油圧ライン620から分岐して加圧流路650の他端に合流することができる。
【0036】
シャトル弁730は、加圧流路650の他端、即ち、第1の分岐流路651と第2の分岐流路652との合流地点に設けられ、第1の分岐流路651から供給される作動油と第2の分岐流路652から供給される作動油とのうち高い圧力を有する作動油を加圧流路650に伝達することができる。
【0037】
上述のような構造により、ブレーキピストン400が前進して油圧モータ200を停止させた状態で外力によって油圧モータ200が回転すると、油圧モータ200内の作動油が排出されなくなり、第1の油圧ライン610又は第2の油圧ライン620の圧力が上昇する。即ち、油圧モータ200の回転方向によって第1の油圧ライン610から分岐された第1の分岐流路651の圧力が上昇することもあり、また、第2の油圧ライン620から分岐された第2の分岐流路652の圧力が上昇することもある。
【0038】
シャトル弁730は、第1の分岐流路651の作動油及び第2の分岐流路652の作動油のうち、相対的に高い圧力を持つ作動油を加圧流路650に移動させ、加圧弁750が加圧流路650を開放すると、シャトル弁730を通過した作動油の圧力が加圧ピン500に伝達され、加圧ピン500がブレーキピストン400を加圧することになる。
【0039】
図4に示されるように、方向切換弁720が中立位置にあると、ブレーキピストン400への作動油の供給が中断され、加圧スプール750は、加圧流路650を開放し、油圧モータ200を停止させることになる。従って、油圧モータ200を停止させるための制動トルクをさらに確保することが可能となる。
【0040】
なお、
図5に示されるように、方向切換弁720の切換動作に応じて第1の油圧ライン610又は第2の油圧ライン620を通じて油圧モータ200に作動油が供給されると、ブレーキピストン400は、作動油の供給を受けて後進し、加圧スプール750は、加圧流路650を遮断することになる。従って、制動トルクがなくなり、油圧モータ200は回転できるようになる。
【0041】
第1のシリンダ260及び第2のシリンダ270は、油圧モータ200の斜板204と連結され、斜板204の角度を調節する。
【0042】
斜板角調節弁540は、第1のシリンダ260及び第2のシリンダ270への作動油の供給を制御することにより、斜板204の角度を調節する。
【0043】
上述のような構成により、本発明の一実施例に係る油圧システム101は、油圧モータ200の停止状態を安定的かつ効率的に維持することができる。
【0044】
以上、添付の図面に基づいて本発明の実施例を説明してきたが、本発明が属する技術分野の当業者であれは、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の形態に変更して実施可能であることが理解できるだろう。
【0045】
上述した実施例は、あくまでも例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと理解されるべきであり、本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその等価概念から導き出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0046】
101:油圧システム、200:油圧モータ、204:斜板、260:第1のシリンダ、270:第2のシリンダ、400:ブレーキピストン、420:摩擦板、450:ブレーキ弾性部材、500:加圧ピン、610:第1の油圧ライン、620:第2の油圧ライン、650:加圧流路、651:第1の分岐流路、652:第2の分岐流路、720:方向切換弁、730:シャトル弁、740:斜板角調節弁、750:加圧弁