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特許7271656ポッティング材料、電気または電子部品を電気的に絶縁する方法、および電気絶縁部品
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  • 特許-ポッティング材料、電気または電子部品を電気的に絶縁する方法、および電気絶縁部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ポッティング材料、電気または電子部品を電気的に絶縁する方法、および電気絶縁部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20230501BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230501BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230501BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230501BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230501BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
H01L23/30 Z
H01L23/30 R
C08L101/00
C08L83/04
C08K7/00
C08K3/01
C08K3/22
C08K3/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021510739
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2019069757
(87)【国際公開番号】W WO2020043395
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】102018214641.1
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ハイトマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン へネック
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ケスナー
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001900(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 101/00
C08L 83/04
C08K 7/00
C08K 3/01
C08K 3/22
C08K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポッティング材料であって、
最大5.0μmの粒径を有する酸化マグネシウム粒子、多孔質酸化マグネシウム粒子凝集体、最大0.5μmの粒径を有する酸化ケイ素粒子、最大0.5μmの粒径を有するシリカ粒子、およびそれらの混合物から選択される反応性粒子を、5.0~30.0重量%と、
粒径が1μm超のフィラー粒子および/またはフィラー繊維を、45.0~90.0重量%と、
水を、5.0~20.0重量%と
を含有し、
前記反応性粒子は、水との反応によってポッティング材料を硬化させることのできる粒子である、ポッティング材料。
【請求項2】
前記反応性粒子は、第1の粒子としての酸化マグネシウム粒子と、第2の粒子としての酸化ケイ素粒子および/またはシリカ粒子との混合物であり、前記第1の粒子と前記第2の粒子との重量比は、99:1~40:60の範囲であることを特徴とする、請求項1記載のポッティング材料。
【請求項3】
前記フィラー粒子が、酸化アルミニウム、カイヤナイト、石英、蛍石、アルミノケイ酸塩、表面酸化ケイ素粉末、表面酸化炭化ケイ素粉末、混合酸化物およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載のポッティング材料。
【請求項4】
前記ポッティング材料が、フィラー粒子として酸化アルミニウム粒子を含み、前記反応性粒子に対する酸化ケイ素粒子および/またはシリカ粒子の割合が、前記反応性粒子100重量%に対して少なくとも8重量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のポッティング材料。
【請求項5】
前記ポッティング材料がさらに、少なくとも1つの融剤を0.5~5.0重量%含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のポッティング材料。
【請求項6】
前記ポッティング材料がさらに、少なくとも1つの架橋性合成樹脂を1.0~15.0重量%含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のポッティング材料。
【請求項7】
前記合成樹脂が、ポリシロキサンであることを特徴とする、請求項6記載のポッティング材料。
【請求項8】
電気または電子部品(21)を電気的に絶縁する方法であって、
前記部品(21)に、請求項1から7までのいずれか1項記載のポッティング材料をポッティング(11)するステップと、
前記ポッティングされた部品(21)を、水飽和雰囲気中で50℃~95℃の範囲の温度で熱処理(12)するステップと、
前記ポッティングされた部品(21)を乾燥(13)させるステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記ポッティング材料が、請求項1から5までのいずれか1項記載のポッティング材料であり、前記ポッティングされた部品(21)を、前記乾燥の後に、架橋性合成樹脂を用いた、または固体合成樹脂の有機溶媒溶液を用いた加圧浸潤(14)に供することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ポッティング材料が、請求項6または7記載のポッティング材料であり、前記ポッティングされた部品(21)を、前記乾燥の後に、150℃~200℃の範囲の温度でのさらなる熱処理(15)に供することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか1項記載のポッティング材料を硬化した材料で包囲された電気または電子部品(21)を含む、電気絶縁部品(20)。
【請求項12】
気密性の封止体(40)で包囲されていることを特徴とする、請求項11記載の電気絶縁部品(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポッティング材料に関する。さらに本発明は、ポッティング材料を用いて電気または電子部品を電気的に絶縁する方法、および該方法によって製造することができる電気絶縁部品に関する。
【0002】
従来技術
包装および保護、ならびに電気および電子部品の損失熱の効果的な散逸のために、標準的には有機結合型ポッティング材料が使用されており、これは、熱伝導率を高めるためにセラミックフィラーと混合されている。このようなポッティング材料は、例えば独国特許出願公開第102008045424号明細書から知られている。しかし、有機マトリックスゆえに、ポッティング材料の耐熱性は、選択されるポリマーによって制限される。ポッティング時に十分な流動性を達成するためには、熱伝導性が良好である固形分を任意に高い割合で使用することができない。なぜならば、架橋前のポリマーの固有粘度がすでに水の粘度よりも著しく高く、よって通常は固形分50~60体積%で加工性の上限に達するためである。シリコーンエラストマーをベースとする200℃までの温度に耐えるポッティング材料において、達成可能な熱伝導率は、2.5~3.0W/mKである。
【0003】
セラミックフィラーとの混合物においても、ポリマー結合型ポッティング材料は、電気または電子部品よりも高い熱膨張係数を示す。確かに弾性配合物は膨張差に起因する機械的応力を緩和することができるが、こうした配合物は200℃超の使用温度で後収縮し、脆くなる可能性がある。これにより、機械的応力がせん断力の形で部品に作用し得る。
【0004】
アルミナセメントまたはリン酸塩セメントをベースとしたポッティング材料を使用することにより、耐熱性の限度を少なくとも300℃に上げると同時に、熱伝導率を3.0W/mKをはるかに超えるまで上げることができる。そのようなものは、例えば国際公開第2015/067441号から知られている。該明細書で使用されている液相の水は粘度が非常に低いため、熱伝導性の良好なセラミック粒子の、70体積%超という高い充填度が可能となる。この場合、水の一部がセメントと結合して水和物相を形成し、この水和物相がフィラー粒子を結合マトリックスとして取り囲み、有機ポリマーよりも良好な熱伝導性をもたらす。また、熱膨張係数も、ポリマー結合型材料よりはるかに低い。しかしながら、形成された水和物相は、目標の最大使用温度である300℃まで再び完全に脱水される。その結果、0.4~0.6%の著しい収縮が生じ、また、部分的に組織において内部でマイクロクラックも形成される。これにより、ポッティングされた構成要素との界面で高いせん断力が生じる。また、水の放出により追加の細孔空間およびマイクロクラックが形成されるため、熱伝導率の初期の非常に高い値も大幅に低下する。
【0005】
発明の開示
成分として、少なくとも5.0~30.0重量%、好ましくは5.0~20.0重量%、特に好ましくは5.0~15.0重量%の反応性粒子、45.0~90.0重量%のフィラー粒子および/またはフィラー繊維、ならびに5.0~20.0重量%の水を含有するポッティング材料が提案される。前述および後述の重量%データはいずれも、それぞれポッティング材料全体の100重量%を基準とする。
【0006】
反応性粒子は、最大5.0μmの粒径を有する酸化マグネシウム粒子、多孔質酸化マグネシウム粒子凝集体、特に最大75μmの粒径を有する多孔質酸化マグネシウム粒子凝集体、酸化ケイ素粒子、特に最大0.5μmの粒径を有する非晶質酸化ケイ素粒子、最大0.5μmの粒径を有するシリカ粒子、およびそれらの混合物から選択される。これにより、反応性粒子と水との反応によってポッティング材料を硬化させて、熱的に安定な水酸化マグネシウム水和物相、ケイ酸塩水和物相および/またはケイ酸マグネシウム水和物相を形成することができる。
【0007】
多孔質酸化マグネシウム粒子凝集体は、か焼により製造することができる。非多孔質酸化マグネシウム粒子は、溶融法により製造することができる。
【0008】
いずれの粒径も、レーザ粒度計による粒度測定および走査型電子顕微鏡(SEM)による一次粒径測定によって求めることができる。
【0009】
好ましくは、反応性粒子は、第1の粒子としての酸化マグネシウム粒子と、第2の粒子としての酸化ケイ素粒子および/またはシリカ粒子との混合物である。この場合、第1の粒子と第2の粒子との重量比は、99:1~40:60の範囲である。特に好ましくは、この重量比は、90:10~70:30である。これにより、熱的に特に安定なケイ酸マグネシウム水和物相を製造することができる。
【0010】
フィラー粒子とは、粒径、特に一次粒径が1μm超の粒子であると理解される。フィラー粒子として適した材料は、特に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ素、アルミノケイ酸塩、炭化ケイ素および窒化ホウ素である。フィラー粒子として適した他の材料は、特にカイヤナイト、ルチル、石英および蛍石である。フィラー粒子としての使用に適したさらなる他の材料は、無機ケイ酸塩、金属酸化物、混合酸化物、スピネル、窒化物、炭化物またはホウ化物である。さらに、特に表面酸化ケイ素粉末および表面酸化金属粉末、例えば銅粉末またはアルミニウム粉末をフィラー粒子として使用することもできる。炭素は、特にダイヤモンドの形態でフィラー粒子として使用することができる。
【0011】
ここで、酸化アルミニウム、カイヤナイト、石英、蛍石、アルミノケイ酸塩、表面酸化ケイ素粉末、表面酸化炭化ケイ素粉末および混合酸化物(特にフェライト)が特に好ましい。
【0012】
フィラー繊維は、特に、炭素繊維またはカーボンナノチューブであってよい。また、他の有機または無機繊維、例えば特にアラミド繊維またはガラス繊維もフィラー繊維として適している。
【0013】
フィラー粒子およびフィラー繊維は、ポッティング材料の硬化時には、反応しないかまたはせいぜいポッティング材料の水と表面的に反応するに過ぎない。フィラー粒子として粒径5.0μm超の非多孔質酸化マグネシウム粒子を用いた場合、硬化プロセスが中断され、その後、大幅な水酸化物形成によって、すでに硬化した材料が膨張する。
【0014】
ポッティング材料中に含有させることができるフィラー粒子の割合が高いため、非常に高い熱伝導率を実現することができる。
【0015】
反応性粒子とフィラー粒子と水との比率に応じて、ポッティング材料は、その流動性を妨げるチキソトロピー性ないしペースト状のコンシステンシーを示す場合がある。したがって、ポッティング材料がさらに少なくとも1つの融剤を0.5~5.0重量%含有することが好ましい。適した融剤は、特にポリカルボキシレートエーテル(PCE)、重縮合物、ポリマーベースの消泡剤および湿潤剤であり、ポリカルボキシレートエーテルが好ましい。
【0016】
また、ポッティング材料がさらに少なくとも1つの架橋性合成樹脂を1.0~15.0重量%含有することが好ましい。特に好ましくは、この合成樹脂はポリシロキサンである。さらに、ポッティング材料の乾燥時に細孔空間が形成された場合には、その細孔流路を合成樹脂で塞ぎ、その細孔壁を合成樹脂でコーティングして疎水化することができる。
【0017】
酸化ケイ素またはシリカと酸化マグネシウムとを合わせたもののモル割合が5モル%(反応性粒子の合計100重量%に対して7.4重量%の酸化ケイ素またはシリカに相当)以下の場合には、酸化アルミニウムフィラーにより、高湿度での長時間の貯蔵下で、障害となる新たな相としてメイクスネライト(Meixnerit)が形成され、これは体積増加により組織を膨張させることが判明した。このため、酸化アルミニウムを含有するポッティング材料については、反応性粒子に対する酸化ケイ素およびシリカの割合が少なくとも8重量%、特に好ましくは少なくとも14重量%であることが好ましい。
【0018】
ポッティング材料を、電気または電子部品を電気的に絶縁するための方法において使用することができる。部品とは、ここでは、ユニットの構成要素とも理解されるべきである。特に、電子部品は、例えばDBC(Direct-Bonded Copper)基板にWBG半導体(Wide-Bandgap Semiconductor)などの高性能半導体を搭載した回路であってよい。さらに、部品は特に、例えば金属製筐体における、例えばポットトランスにおける、凹部を有するヒートシンクにおける、またはフレームモジュールにおけるチョークコイルまたは変圧器コイルなどの受動素子であり得る。本方法によって二次電池を電気的に絶縁することもできる。電気的な絶縁性に加えてさらに、損失熱の散逸の向上も達成される。
【0019】
本方法では、まず部品にポッティング材料をポッティングする。次いで、ポッティングされた部品を、水飽和雰囲気中で50℃~95℃の範囲の温度で熱処理する。その際、ポッティング材料において反応性粒子と水との反応を開始させるための最低温度が必要である。最高温度によって、蒸発防止として水飽和雰囲気と一緒に凝結反応の促進が保証される。熱処理の持続時間は、好ましくは30分~10時間の範囲である。熱処理に続いて、ポッティングされた部品を、好ましくは最大40℃の温度、特に好ましくは30~40℃の範囲の温度で乾燥させる。乾燥を100kPa未満の圧力で行う場合には、これを特に30℃未満の温度で行うこともできる。フィラーとして酸化マグネシウムを使用した場合には、硬化したポッティング材料の膨張を招き得る望ましくない進行性の水酸化マグネシウム形成が生じるが、このような乾燥によって、この形成が妨げられる。ポッティング材料がフィラーとして酸化マグネシウムを含有しない場合には、乾燥を、より高い温度で、例えば80℃で促進させて行うこともできる。
【0020】
乾燥によって、硬化したポッティング材料の細孔形成が生じる。その後に、これらの細孔にまた水分が吸収されてしまうのを防ぐために、合成樹脂により細孔を塞ぐことが好ましい。このために、本方法の様々な実施形態により、合成樹脂をポッティング材料に導入するという選択肢が提供される。
【0021】
ポッティング材料自体が合成樹脂を含まない場合には、本方法の一実施形態において、ポッティングされた部品を、乾燥後に、架橋性合成樹脂による加圧浸潤に供することが好ましい。
【0022】
もう1つの実施形態において、ポッティング材料の乾燥組織に、固体合成樹脂の例えばエタノールまたはキシレンなどの有機溶媒溶液を加圧浸潤させる。
【0023】
ポッティング材料自体がすでに合成樹脂を含有している場合には、ポッティングされた部品を、乾燥後に、150℃~200℃の範囲の温度でさらに熱処理することが好ましい。この場合、合成樹脂が溶融し、溶融物は、結合マトリックスにおいて残留水によって残された細孔空間の毛管力によって、サブマイクロメートル範囲の直径を有する微小細孔に吸い込まれる。このようにして、開孔組織が塞がれて十分に密な組織となるか、または少なくとも毛管表面の内部に疎水性の層が設けられる。形成された最終生成物において、例えば水または水溶液のような極性媒体の毛管輸送がこのようにして防止される。架橋性合成樹脂がポリシロキサンである場合には、これが、所定の温度下で、硬化したポッティング材料の塩基性水酸化物の存在下で架橋しながら反応することで、350℃の持続的な温度まで熱的に安定である熱硬化性合成樹脂が生成される。
【0024】
硬化したポッティング材料中の細孔空間を塞ぐことにより、典型的には、水中で貯蔵した際のポッティング材料の吸水量が少なくとも10分の1に減少する。
【0025】
本方法により、特に10Ω×cm超の比抵抗で絶縁された電気絶縁部品を製造することができる。疎水性細孔充填が行われている場合であっても、フィラーとして酸化マグネシウムをベースとし、かつ結合相として水酸化マグネシウムのみをベースとするポッティング材料は、例えば少なくとも80℃の温度といった高温および例えば95%の湿度といった高湿度下では、長期的には安定でない。それにもかかわらず、電気絶縁の寸法安定性を保証するためには、電気絶縁部品が気密性の封止体に包囲されていることが好ましい。
【0026】
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による方法の実施例を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施例による電気絶縁部品の概略断面図である。
図3】本発明による、および従来技術による、電気絶縁の熱膨張および熱収縮を示すグラフである。
【0028】
本発明の実施例
本発明による方法の3つの実施例のシーケンスを図1に示す。図中ではまず、表1にその組成を示すポッティング材料B1、B2またはB3の提供10が行われる:
【表1】
【0029】
表1および以下の表において、dは、反応性粒子およびフィラー粒子の粒度範囲を示し、d50は、その粒度のメジアン値を示す。
【0030】
以下の成分を使用した:
【表2】
【0031】
Magnesia 2837は、溶融法で製造された。Magnesia 298は、か焼によって製造された開孔した酸化マグネシウム粒子凝集体からなる。
【0032】
電子部品は、本実施例ではDBC基板上のWBG半導体であり、これを、ステップ11において、それぞれのポッティング材料でポッティングする。ステップ12では、硬化オーブン内にて水飽和雰囲気中で熱処理を行う。処理温度は、80℃である。ポッティング材料B1の場合には、処理時間は1時間であり、ポッティング材料B2およびB3の場合には、処理時間は10時間である。ステップ13では、ポッティングして熱処理した部品を乾燥させる。この乾燥は、ポッティング材料B1の場合には35℃の温度で行い、ポッティング材料B2およびB3の場合には80℃の温度で行う。このために、ポッティングした部品をそれぞれ空気循環式オーブン内に配置する。
【0033】
この段階では、硬化したポッティング材料B1は、高湿度での長時間の貯蔵(温度85℃、相対空中湿度100%で5日超)下では、ブルカイトの形成により不安定である。この条件下では、硬化したポッティング材料B2は、メイクスネライトの形成により不安定である。これに対して、硬化したポッティング材料B3は、この条件でも寸法安定性を有している。
【0034】
ステップ14では、メチルポリシロキサン樹脂(Wacker Chemie AG, MSE 100)による200バールの圧力下で1時間の加圧浸潤を行う。これにより、10~11重量%の材料吸収下で材料厚さ12mmの浸潤が行われる。この場合、乾燥ステップで形成された、20体積%の多孔率を有する硬化したポッティング材料における細孔が完全に塞がれる。
【0035】
硬化させてこのようにして処理したポッティング材料は、5~10W/mKの熱伝導率を有する。
【0036】
代替的な実施例では、ステップ14において、固体メチルポリシロキサン樹脂のエタノール溶液による加圧浸潤を行う。加圧浸潤の終了時に溶媒を除去して元通りにすることで、部分的に充填されていない細孔空間が残る。
【0037】
本方法は、電気絶縁部品20を得る16ことにより終了する。これを図2に示す。これは、DBC基板の形態の基板22上に設けられたWBG半導体の形態の電子部品21からなる。部品21は、硬化したポッティング材料30で包囲されている。硬化したポッティング材料30の周囲には、シリコーンゲルからなる気密性の封止体40がさらに施与される。ポッティング材料B3を使用する場合には、気密性の封止体40を省略することができる。
【0038】
図3に、温度Tを300℃まで上昇させた場合、および再び温度Tを低下させた場合の、異なる材料の長さの相対的な変化DLを示す。例えば銅Cuのような金属の長さの変化は可逆的であるのに対し、図示した他の材料では延伸の後に収縮が生じ、これにより長さの不可逆的な変化が生じる。しかし、この変化は、本発明の実施例による硬化したポッティング材料B1、B2、B3の場合にはごくわずかであり、0.20%未満である。比較例VBとして、例えば国際公開第2015/067441号から知られているアルミナセメントポッティング材料の延伸および収縮挙動が示されている。本発明によるポッティング材料を使用した場合には、該材料によりポッティングした部品に作用するせん断力が、比較例VBによるポッティング材料を使用した場合と比較して著しく低いことが分かる。
【0039】
本発明のさらなる実施例では、ポッティング材料B4およびB5を使用し、その組成を表2に示す:
【表3】
【0040】
「シロキサン」とは、反応性ポリシロキサン(Wacker Chemie AG, Silres MK)である。
【0041】
部品を電気的に絶縁する際のポッティング材料B4およびB5の使用は、加圧浸潤ステップ14を第2の熱処理ステップD15に置き換えるという点で、ポッティング材料B1およびB3について説明した手順とは異なる。この熱処理ステップでは、温度175℃で空気循環式オーブン内にて熱処理を行う。ここで、硬化したポッティング材料に含まれるポリシロキサンが溶融し、毛管力により細孔の壁に引き寄せられ、そこで架橋して硬化する。
【0042】
加水分解安定性および気密性の封止体40の使用に関して、ポッティング材料B4は、ポッティング材料B1と同様の挙動を示し、ポッティング材料B5は、ポッティング材料B3と同様の挙動を示す。
図1
図2
図3