IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポスコ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7271658加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法
<>
  • 特許-加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 図1
  • 特許-加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230501BHJP
   C22C 38/26 20060101ALI20230501BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/26
C21D9/46 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021515629
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2019010717
(87)【国際公開番号】W WO2020060050
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0112482
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ オン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,イル チャン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ-ナム
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135240(WO,A1)
【文献】特開2015-151555(JP,A)
【文献】特開2004-043949(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0074079(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/02
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りはFeおよび不可避な不純物からなり、
平均直径0.5μm以下の析出物の個数が10個/mm以下であり、
前記析出物は、ラーベス相(Laves Phase)を含み、
25℃伸び率が27%以上であり、900℃引張強度が45MPa以上であることを特徴とする加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【請求項2】
前記ラーベス相の析出物は、Moラーベス相析出物、Nbラーベス相析出物およびWラーベス相析出物を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【請求項3】
前記ラーベス相の析出物の総重量に対して、Wの重量比は、20%未満であることを特徴とする請求項1に記載の加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼。
【請求項4】
重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りがFeおよび不可避な不純物からなるスラブを再加熱して粗圧延する段階と、
粗圧延バーを仕上げ圧延する段階と、
仕上げ圧延された熱延鋼板を巻き取る段階と、を含み、
前記粗圧延バーを仕上げ圧延開始前の維持時間(秒)が、下記式(1)を満たし、
前記再加熱温度は、1,100~1,300℃であり、
25℃伸び率が27%以上であり、900℃引張強度が45MPa以上であり、
前記粗圧延は、
最後の2パスの総圧下率が50%以上であり、
前記巻き取り温度は500~700℃であり、
平均直径0.5μm以下である析出物の個数が10 個/mm 以下であり、
前記析出物はラーベス相(Laves Phase)を含むことを特徴とする加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
(1)8,000/(RHT-1,000)≦維持時間≦120
(ここで、RHTは、再加熱温度(℃)である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼に関し、より詳細には、成分系組成および析出物分布の制御を通じて加工性および高温強度を向上させることができるフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト系ステンレス鋼は、高価な合金元素が少なく添加されながらも、耐食性に優れていて、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて価格競争力が高い鋼材である。フェライト系ステンレス鋼は、排ガス温度800℃以上の排気系部品等(exhaust-manifold,collector cone)に使用される。自動車排気系(Exhaust Manifold)用部品は、800℃以上の高温の排気ガスに長時間直接さらされる環境で使用され、非常に高い安全性が要求される。そのため、従来高温特性を改善する合金成分および製造方法に関する多くの研究が行われてきた。
【0003】
その間高温特性を向上させる元素であるMo、Nb等の合金への影響に関する研究が多いが、実質的に高温で素材の内部に発生する結晶粒と析出物が高温物性に及ぼす影響の把握は不十分な状態である。このような結晶粒と析出物に関する合金成分および製造条件の最適化がなされてこそ、次第に高性能化していく自動車排気系(Exhaust Manifold)用素材に適用が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フェライト系ステンレス鋼の組成と製造工程を最適化して最終素材の析出物組成および分布を制御することによって、フェライト系ステンレス鋼の加工性と高温強度を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りはFeおよび不可避な不純物からなり、平均直径0.5μm以下の析出物の個数が10個/mm以下であることを特徴とする。
【0006】
前記析出物は、ラーベス相(Laves Phase)を含み、前記ラーベス相の析出物は、Moラーベス相析出物、Nbラーベス相析出物およびWラーベス相析出物を含むことを特徴とする。
【0007】
前記析出物の総重量に対して、Wの重量比は、20%未満であることを特徴とする。
【0008】
前記ステンレス鋼は、25℃伸び率が27%以上であり、900℃引張強度が45MPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明による加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りがFeおよび不可避な不純物からなるスラブを再加熱して粗圧延する段階と、粗圧延バーを仕上げ圧延する段階と、仕上げ圧延された熱延鋼板を巻き取る段階と、を含み、前記粗圧延バーを仕上げ圧延開始前の維持時間(秒)が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
(1)8,000/(RHT-1,000)≦維持時間≦120
ここで、RHTは、再加熱温度(℃)である。
【0010】
前記再加熱温度は、1,100~1,300℃であることを特徴とする。
【0011】
前記粗圧延は、最後2パスの総圧下率が50%以上でることを特徴とする。
【0012】
前記巻き取り温度は、500~700℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるフェライト系ステンレス鋼は、析出物を低減し、固溶Wを高めて、加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することができる。
【0014】
また、本発明によるフェライト系ステンレス鋼は、常温伸び率27%以上および900℃高温強度45MPa以上を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のフェライト系ステンレス鋼の析出物分布を示すSEM写真である。
図2】比較例のフェライト系ステンレス鋼の析出物分布を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、この実施例に限定されず、他の形態で具体化できる。本発明を明確にするために、説明と関係ない部分の図示は省略した。
【0017】
任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に記載がない限り、他の構成要素を除くものではない。
【0018】
単数の表現は、文脈上明白に例外がない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本発明は、自動車排気系用部品への製造のための加工性および高温稼動環境での安全性確保のための高温強度の確保に対して、Mo、Nb、Wの添加とともに、析出物の制御を通じて加工性と高温強度が向上したフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【0020】
本発明による加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りはFeおよび不可避な不純物からなり、平均直径0.5μm以下の析出物の個数が10個/mm以下である。
【0021】
以下、本発明の合金成分の元素含有量の数値限定理由について説明する。以下では、特別な言及がない限り、単位は、重量%である。
【0022】
Cの含有量は、0.0005~0.02%である。
Cは、強度に大きく影響を及ぼす元素であり、その含有量が0.0005%未満なら、強度が低下し、かつ高純度製品を作るための精錬コストが高くなり、0.02%を超過すると、素材の不純物が増加して、伸び率と加工硬化指数(n値)が低くなり、DBTTが高まって衝撃特性が低下する。
【0023】
Nの含有量は、0.005~0.02%である。
Nは、熱間圧延時にオーステナイトを析出させて再結晶を促進させる役割をする元素であり、その含有量が0.005%未満なら、TiN晶出が少なくなって、スラブの等軸晶率が低くなる。一方、0.02%を超過すると、素材の不純物が増加して、伸び率と加工硬化指数(n値)が低くなり、DBTTが高まって衝撃特性が低下する。
【0024】
Siの含有量は、0.01~1.0%である。
Siは、製鋼時に溶鋼の脱酸とフェライト安定化のために添加される元素であり、その含有量が0.01%未満なら、精錬コストが増加する問題があり、1.0%を超過すると、素材の不純物が増加して伸び率と加工硬化指数(n値)が低くなり、Si系介在物が増加して加工性が悪くなる。
【0025】
Mnの含有量は、0.01~1.2%である。
Mnは、耐食性の改善に有効な元素であり、その含有量が0.01%未満なら、精錬コストが増加する問題があり、1.2%を超過すると、素材の不純物が増加して伸び率が低くなる。
【0026】
Pの含有量は、0.001~0.05%である。
Pは、鋼中に不可避に含有される不純物であり、酸洗時に粒界腐食を起こし、熱間加工性を阻害する主要原因となる元素であるから、その含有量をできる限り低く制御することが好ましい。しかしながら、0.001%未満に制御する場合、精錬コストが増加し、0.05%を超過すると、不純物の増加によって伸び率および加工硬化指数が低くなる。
【0027】
Crの含有量は、10.0~25.0%である。
Crは、鋼の耐食性および耐酸化性の向上に効果的な元素であり、本発明では、10%以上添加する。ただし、その含有量が多すぎる場合、伸び率が低くなり、熱延スティッキング(sticking)欠陥が発生する問題があって、25.0%以下に制限する。
【0028】
Moの含有量は、1.5~3.0%である。
Moは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を増加させると同時に、高温強度を向上させる役割をする。Mo含有量が1.5%未満なら、素材内固溶される量が少なくて、高温強度および熱疲労特性の劣化と異常酸化発生確率が高まり、3.0%を超過すると、衝撃特性が低下して、加工時に破断発生の危険が大きくなり、費用増加の問題がある。
【0029】
Nbの含有量は、0.3~0.7%である。
Nbは、固溶Cと結合してNbCを析出して固溶Cの含有量を低減して耐食性を増加させ、高温強度が増加する効果がある。Nb含有量が0.3%未満なら、素材内固溶される量が少なくて、高温強度が低下する問題があり、0.7%を超過すると、Nb系析出物と固溶量が過度に増加して伸び率と衝撃特性が低くなる。
【0030】
Wの含有量は、0.5~2.0%である。
Wは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を増大すると同時に、高温強度を向上させる。したがって、0.5%以上添加することが好ましく、0.5%未満なら、素材内固溶される量が少なくて、高温強度が低下する問題がある。一方、2.0%を超過すると、過度な析出物が生成されて、加工時にクラックが多発する問題がある。
【0031】
上述した本発明の成分系組成によれば、ラーベス相(Laves Phase)を含む析出物が析出され、ラーベス相析出物は、[Fe、Cr][Mo、Nb、W]でありうる。すなわち、ラーベス相析出物は、Moラーベス相析出物、Nbラーベス相析出物およびWラーベス相析出物を含むことができる。このような析出物を制御することによって、自動車排気系用部品への製造のための加工性および高温強度を確保することができる。
【0032】
本発明の一実施例によるフェライト系ステンレス鋼は、平均直径0.5μm以下の析出物の個数が10個/mm以下である。
【0033】
本発明の一実施例によれば、析出物の総重量に対して、Wの重量比は、20%未満である。すなわち、[Fe、Cr][Mo、Nb、W]で表現されるラーベス相析出物の総重量に対して、[Fe、Cr][W]のうちW重量の割合が20%未満であり、Wの基地組織内固溶量を十分に確保して高温強度を向上させることができる。Wを含むラーベス相析出物が過多に析出される場合には、固溶Wの減少によって高温強度が低下し、脆性破壊の危険が増加するので、ラーベス相析出物の総重量に対して、W重量比は20%未満であることが好ましい。
【0034】
これにより、本発明の一実施例によるフェライト系ステンレス鋼は、25℃常温伸び率27%以上および900℃引張強度45MPa以上を満たすことができる。
【0035】
次に、本発明の一実施例による加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
【0036】
本発明の加工性と高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼は、加工性および高温強度を確保するために、微細な析出物の大きさおよび分布を制御しなければならないので、成分系制御だけでなく、熱延工程の制御も要求される。
【0037】
熱間圧延および焼鈍し工程を経て熱延焼鈍し材に製造され、例えば、重量%で、C:0.0005~0.02%、N:0.005~0.02%、Si:0.01~1.0%、Mn:0.01~1.2%、P:0.001~0.05%、Cr:10.0~25.0%、Mo:1.5~3.0%、Nb:0.3~0.7%、W:0.5~2.0%、残りがFeおよび不可避な不純物からなるスラブを再加熱して粗圧延し、粗圧延バー(bar)を仕上げ圧延し、仕上げ圧延された熱延鋼板を巻き取り、巻き取られた熱延コイルを焼鈍し熱処理することができる。
【0038】
まず、スラブ鋳造中に生成された粗大な析出物を再分解するために、スラブの熱延再加熱温度を1,100℃以上に制御しなければならず、再加熱温度が非常に高い場合、結晶粒が粗大化されるので、1,300℃以下に制限する。
【0039】
次に、粗圧延工程では、変形エネルギーを付与するために、粗圧延の最後2パスの総圧下率を50%以上にする。粗圧延は、通常、3個~4個の圧延ミルで構成されるが、本発明における最後2パスは、最後の圧延ミルをおよび最後から二番目の圧延ミルである。最後2パスの圧下率の合計を50%以上で強圧下することで、電位生成を円滑にする。
【0040】
粗圧延された粗圧延バー(bar)が仕上げ圧延開始前まで維持される時間(秒)は、下記式(1)を満たすことができる。
(1)8,000/(RHT-1,000)≦維持時間≦120
ここで、RHTは、再加熱温度(℃)である。
【0041】
粗圧延後に仕上げ圧延まで維持される時間を8,000/(RHT-1,000)秒以上にして十分な再結晶時間を付与し、120秒以下に制限して結晶粒の粗大化を防止する。これは、仕上げ圧延時に変形組織をさらに付与して、析出物の粗大化を防止し、その後、焼鈍し工程で固溶されるようにする。
【0042】
また、仕上げ圧延された熱延鋼板の巻き取り温度は、500~700℃である。熱間圧延中に析出された析出物の粗大化を防止し、ラーベス相析出物中のW重量比が高まらないように、巻き取り温度を700℃以下に制御しなければならず、形状および表面品質のために500℃以上に制御することが好ましい。
【0043】
以下、本発明の好ましい実施例を通じてより詳細に説明する。
【0044】
実施例
ステンレス鋼lab scale溶解およびIngot生産設備を活用して下記の表1に記載された合金成分系で20mmバーサンプルを製造した。その後、表2に記載された再加熱温度、圧下率、式(1)による維持時間、巻き取り温度によって6mmに熱間圧延後、1,100℃で熱延焼鈍しを実施し、2.0mmに冷間圧延後、1,100℃で焼鈍し処理して、最終製品を生産した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
上記のように製造された最終冷延鋼板に対して、常温で引張して伸び率を評価し、高温引張強度を評価した。高温引張強度は、JIS G 0567方法に基づいて900℃でテストを進めて評価した。
【0048】
【表3】
【0049】
図1は、本発明の一実施例によるフェライト系ステンレス鋼の析出物分布を示すSEM写真である。図2は、比較例によるフェライト系ステンレス鋼の析出物分布を示すSEM写真である。
【0050】
図1および図2に示すように、本発明によって製造された実施例では、直径0.5μm以下の析出物が少なく分布していることが分かり、比較例は、相対的に析出物が粗大であり、多量析出されたことを確認することができる。
【0051】
比較例1~4は、本発明の合金成分組成を外れた鋼種A~Dに関するものであり、具体的には、高温強度と関連したMo、Nb、Wの含有量が不足した鋼種である。これらを表2に示されたように、本発明による製造方法で製造しても、析出物の直径、個数およびW重量比を満足するが、固溶量の不足によって900℃高温強度は目標値に達しないことが分かる。
【0052】
比較例5~7は、本発明の合金成分組成を満たす鋼種E~Gに関するものであり、合金組成を満たしても、製造方法の条件を満たさない場合、析出物が多量析出されたり、Wが十分に固溶されない問題点を示した。
【0053】
実施例1~3は、本発明の合金組成および製造方法の条件を全部満たす場合であり、本発明が達成しようとする析出物分布および鋼材物性を全部満たすことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によるフェライト系ステンレス鋼は、加工性および高温強度に優れ、700℃以上の高温の排気ガスに直接露出する長時間の稼動環境で高い耐久性と安全性を有する。
図1
図2