(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】スラリー
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230501BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230501BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230501BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230501BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20230501BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/62 Z
H01G11/86
H01M4/139
H01G11/30
(21)【出願番号】P 2021521664
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021414
(87)【国際公開番号】W WO2020240746
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】595138155
【氏名又は名称】ダイセルミライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】土井 邦朗
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116819(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026009(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/107896(WO,A1)
【文献】特開2017-130451(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013756(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/078356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-62
H01G 11/00-/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記スラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、その後、80℃以上の温度で乾燥して前記スラリーを固化させることにより、スラリーの固化物と集電体を含む電極であって、スラリーの固化物と集電体の剥離強度(
下記方法で求めるられる剥離強度である)が1.0N/m以上である電極を製造する、電極の製造方法。
1.電極を25mm×150mmサイズに切断してサンプルを得る
2.得られたサンプルをアルミバットの上に載置して、温度23℃、湿度50%条件下で一晩放置する
3.アクリル板の表面に前記サンプルの固化物表面を貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、アクリル板を前記サンプルの固化物表面に均一に密着させる
4.サンプルに密着させたアクリル板を固定して、サンプルのアクリル板とは反対側の右上端部を角度90°、速度100mm/minで引っ張り、剥離強度を測定する
スラリー:活物質と
、平均太さが1~1000nm、平均アスペクト比が10~1000である繊維状の接着性付与成分と
、融点(融点がないものは分解温度)が120℃以上であるバインダを含み、
前記繊維状の接着性付与成分と前記バインダの含有量の比(前者/後者;重量比)が0.5~2.0であり、
25℃における粘度
(25℃時粘度)が
1.0~30Pa・sであり
、
25℃から80℃まで15℃/分で昇温した場合の最低粘度
(80℃昇温時最低粘度)と前記
25℃時粘度の比(80℃昇温時最低粘度/25℃時粘度)が0.8以上である。
【請求項2】
前記スラリー中の
前記繊維状の接着性付与成分の含有量が、活物質
100重量部に対して0.01~10重量部である、請求項
1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記スラリーに含まれる不揮発分全量における
前記繊維状の接着性付与成分の含有量が0.01~10重量%である、請求項
1又は2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記バインダの含有量が、活物質
100重量部に対して0.01~10重量部である、請求項
1~3の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記スラリー中の
前記バインダと前記繊維状の接着性付与成分の合計含有量が0.02~20重量%である、請求項
1~4の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記スラリー中の
前記バインダと
前記繊維状の接着性付与成分と活物質の合計含有量が20~70重量%である、請求項
1~5の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記バインダが、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルデンプンから選択される少なくとも1種のバインダである、請求項1~6の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記スラリーは、下記式(1)で表される特性を有する、請求項1~7の何れか1項に記載の電極の製造方法。
剥離強度P
60
/剥離強度P
80
≧0.8 (1)
(式中の、剥離強度P
60
は、スラリーを、厚み15μmの銅箔表面に塗布し、60℃で30分乾燥して得られた、縦×横×厚みが25mm×150mm×100μmの固化物の表面に、両面テープでアクリル板を貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、銅箔/固化物/アクリル板積層体を得、得られた積層体のアクリル板側を固定した状態で、銅箔端を、角度90°、速度100mm/minで剥離する時の剥離強度である。剥離強度P
80
は、乾燥条件を80℃×22.5分に変更した以外は剥離強度P
60
と同様の方法で求められる剥離強度である)
【請求項9】
前記スラリーに含まれる不揮発分全量における活物質の含有量が99重量%以上である、請求項1~8の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記スラリーの、25℃から80℃まで15℃/分で昇温した場合の最低粘度(80℃昇温時最低粘度)が0.25~90Pa・sである、請求項1~9の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記スラリーの、25℃から80℃まで15℃/分で昇温した場合の最高粘度(80℃昇温時最高粘度)と前記25℃時粘度の比(80℃昇温時最高粘度/25℃時粘度)が3.0以下である、請求項1~10の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記スラリーの、
25℃から80℃まで15℃/分で昇温した場合の最低粘度(80℃昇温時最低粘度)と前記25℃時粘度の比(80℃昇温時最低粘度/25℃時粘度)が0.8以上、1.0未満である、請求項1~11の何れか1項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー、該スラリーを用いて形成される活物質層と集電体の積層体を含む電極、及び前記電極を備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の電池はスマートフォンやノートパソコン等の情報関連機器の他、ハイブリッド車や電気自動車にも搭載することが検討されている。そのため、より小型化、高容量化、長寿命化することが求められている。
【0003】
電極では、活物質とバインダと溶媒とを含むスラリーを集電体上に塗布し、乾燥して、活物質を含む塗膜層(=活物質層)を形成することによって、活物質を集電体の表面に接着する方法が採用されている。そして、前記バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等が知られている(特許文献1)。また、乾燥方法としては、通常、生産効率が良好な点から、加熱乾燥する方法が採用される。
【0004】
しかし、高温(例えば、80℃以上の温度)で加熱乾燥すると、低粘度化したスラリー中で対流が生じることによってバインダの分布に偏りが生じ、得られる活物質層のうち、バインダが少なく、薄化した部分は、集電体の表面から剥離し易くなることが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題を解決する方法として、比較的低温(例えば、40℃~60℃)で予備乾燥を行い、その後、徐々に乾燥温度を上げることが考えられるが、乾燥に長時間を要するため、生産効率の低下が問題となる。
【0007】
その他、スラリー中の対流によりバインダ分布に偏りが生じても、活物質を集電体上に保持可能とするために、バインダを増量することが考えられるが、バインダを増量すると、活物質量の含有割合が減少するため、電池容量が低下するという問題も生じる。
【0008】
従って、本発明の目的は、高温で加熱乾燥した場合にも、活物質を集電体の表面に強固に接着可能なスラリーを提供することにある。
本発明の他の目的は、均一な厚みで、活物質を集電体の表面に強固に接着可能な固化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、均一な厚みの固化物が集電体の表面に強固に接着されてなる積層体を含む電極を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記電極を備えた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、繊維状の接着性付与成分を含むスラリーを用いることで、高温で加熱乾燥してもスラリーの粘度を保持して、スラリー中で対流が発生するのを抑制することができること、繊維状の接着性付与成分は活物質の間をすり抜けて移動することが困難であるため、移動が抑制され、分布が偏るのを防止することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、活物質と繊維状の接着性付与成分とを少なくとも含むスラリーであって、下記式(1)で表される特性を有するスラリーを提供する。
剥離強度P60/剥離強度P80≧0.8 (1)
(式中の、剥離強度P60は、スラリーを、厚み15μmの銅箔表面に塗布し、60℃で30分乾燥して得られた、縦×横×厚みが25mm×150mm×100μmの固化物の表面に、両面テープでアクリル板を貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、銅箔/固化物/アクリル板積層体を得、得られた積層体のアクリル板側を固定した状態で、銅箔端を、角度90・、速度100mm/minで剥離する時の剥離強度である。剥離強度P80は、乾燥条件を80℃×22.5分に変更した以外は剥離強度P60と同様の方法で求められる剥離強度である)
【0011】
本発明は、また、スラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状の接着性付与成分の占める割合が0.01~10重量%である前記スラリーを提供する。
【0012】
本発明は、また、前記繊維状の接着性付与成分がセルロース繊維である前記スラリーを提供する。
【0013】
本発明は、また、前記繊維状の接着性付与成分の平均太さが1~1000nm、平均アスペクト比が10~1000である前記スラリーを提供する。
【0014】
本発明は、また、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルデンプンから選択される少なくとも1種のバインダを含む前記スラリーを提供する。
【0015】
本発明は、また、前記スラリーの固化物を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記固化物と集電体との積層体を含む電極を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記電極を備えた電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスラリーは、含有する繊維状の接着性付与成分が相互に絡まり合うため、適度な粘度を有する。また、前記粘度は、高温条件下でも維持できる。
そのため、本発明のスラリーを塗布して得られる塗膜は、高温条件下でも薄化すること無く厚みを維持することができる。
また、本発明のスラリーは、高温条件下でもスラリー中に対流が発生するのを抑制することができる。
更に、本発明のスラリーは、高温条件下でも繊維状の接着性付与成分は活物質の間をすり抜けて移動することが困難であるため、前記スラリーを塗布して得られる塗膜は、高温条件下でも繊維状の接着性付与成分の移動が抑制される。
従って、本発明のスラリーを使用すれば、高温で乾燥させることで乾燥時間を短縮しつつ、(繊維状の)接着性付与成分を均一に含む塗膜を歩留まり良く製造することができる。
すなわち、本発明のスラリーを使用すれば、(繊維状の)接着性付与成分を均一に含み、且つ適度な厚みを有することで、被着体(例えば、集電体)への接着性に優れた塗膜を、優れた作業性にて製造することができる。
【0019】
更に、本発明のスラリーは、接着性付与成分として繊維状のものを使用するため、非繊維状の接着性付与成分に比べて、被着体(例えば、集電体)の表面に活物質を接着する接着力に優れる。そのため、非繊維状の接着性付与成分を使用する場合に比べて、使用量を減量することができる。これによれば、相対的にスラリー中における活物質の含有割合が増加するので、電池容量を高める効果が得られる。
【0020】
本発明のスラリーを使用すれば、集電体への接着性に優れ、電極の電池容量を高める効果を有する活物質層を形成することができる。
【0021】
そして、前記活物質層を含む電極は、活物質層の集電体への密着性に優れるため、充放電の繰り返しにより電極が膨張・収縮しても、活物質層が集電体から剥がれ落ちるのを防止することができ、電池容量を長期に亘って安定的に維持することができる。
【0022】
前記電極を備える電池は、例えば、スマートフォンやノートパソコン等の情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[スラリー]
本発明のスラリーは、活物質と繊維状の接着性付与成分とを少なくとも含む。本発明のスラリーは、活物質と繊維状の接着性付与成分以外にも、他の成分(例えば、後述のバインダや溶媒等)を含有することができる。
【0024】
<活物質>
本発明における活物質としては、例えば、炭素材(カーボン)、金属単体、珪素単体(シリコン)、珪素化合物、鉱物質(ゼオライト、珪藻土、焼成珪藻土、タルク、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー等)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等)、金属酸化物[アルミナ、酸化亜鉛、二酸化マンガン、二酸化チタン、二酸化鉛、酸化銀、酸化ニッケル、リチウム含有複合酸化物(LiCoO2、チタン酸リチウム等)]、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ニッケル、水酸化カドミウム等)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、金属酸化物、リチウム含有複合酸化物、珪素単体、珪素化合物、及び炭素材から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
前記珪素単体としては、例えば、無定形珪素(アモルファスシリコン)、低結晶性シリコン等が挙げられる。
【0026】
前記珪素化合物としては、例えば、酸化硅素(SiO等)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム等)、シリコンと遷移金属(スズ、チタン等)との合金、シリコン複合化物(シリコンとSiOとの複合化物等)、炭化珪素等が挙げられる。
【0027】
炭素材としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファスカーボン、ハードカーボン、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0028】
活物質は、スラリーの用途に応じて適宜選択して使用するのが好ましい。例えば、スラリーがリチウムイオン電池の正極形成用スラリーである場合は、正極活物質としてリチウム含有複合酸化物(特に、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム及びその合金)を含有することが好ましい。また、スラリーが、リチウムイオン電池の負極形成用スラリーである場合は、負極活物質として珪素単体、珪素化合物、炭素材(特に黒鉛)、及び金属酸化物[リチウム含有複合酸化物(特に、チタン酸リチウム、ニオブチタン系酸化物)、Ti、Sn、又はCoの合金や酸化物等]から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0029】
<繊維状の接着性付与成分>
本発明における繊維状の接着性付与成分は、スラリー中において繊維状の形状を保持し、互いに絡まりあって、三次元網目構造を形成する。このような三次元網目構造は、高温条件下(例えば、80℃以上の条件下)でも形状が保持される。尚、本発明において、接着性付与成分とは、活物質を被着体(好ましくは、集電体)の表面に接着して固定する作用を有する成分である。
【0030】
前記繊維状の接着性付与成分を含む本発明のスラリーは、高温条件下でも粘度の低下が抑制され、対流が生じるのが抑制される。すなわち、前記繊維状の接着性付与成分によって付与される粘性は、温度非依存性である。
そして、前記繊維状の接着性付与成分を含む本発明のスラリーは、高温条件下でも、繊維状の接着性付与成分が移動するのを抑制することができる。
【0031】
本発明のスラリーは、繊維状の接着性付与成分の1種を単独で含有していても良いし、2種以上を組み合わせて含有していても良い。
【0032】
前記繊維状の接着性付与成分としては、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリ-p-フェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、液晶ポリマー繊維等が挙げられる。
【0033】
前記繊維状の接着性付与成分の平均太さは、特に限定されないが、例えば1~1000nmであり、なかでも、スラリー中で互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、3~500nmが好ましく、特に好ましくは3~200nmである。尚、繊維状の接着性付与成分の平均太さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて十分な数(例えば、10個以上)の繊維状の接着性付与成分について、これらの繊維状の接着性付与成分の太さ(直径)を計測し、算術平均することにより求められる。
【0034】
前記繊維状の接着性付与成分の平均長さは、特に限定されないが、例えば0.01~1000μmであり、なかでも、スラリー中で互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、0.3~200μmが好ましく、特に好ましくは0.5~100μm、最も好ましくは1~20μmである。尚、繊維状の接着性付与成分の平均長さは、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて十分な数(例えば、10個以上)の繊維状の接着性付与成分について、これらの長さを計測し、算術平均することにより求められる。繊維状の接着性付与成分の長さは、直線状に伸ばした状態で計測すべきであるが、現実には屈曲しているものが多いため、電子顕微鏡像から画像解析装置を用いて繊維状の接着性付与成分の投影径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して下記式から算出するものとする。
長さ=投影面積/投影径
【0035】
前記繊維状の接着性付与成分の平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)は、特に限定されないが、例えば10~1000であり、なかでも、スラリー中で互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成し、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御できる点で、15~500が好ましく、特に好ましくは20~100である。
【0036】
前記繊維状の接着性付与成分としては、なかでも、セルロース繊維、アラミド繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブから選択される少なくとも1種が、電池の酸化還元反応により劣化し難く、経時安定性に優れる点で好ましく、特に、スラリー中で互いに絡まりあって安定した三次元網目構造を形成できる点で、セルロース繊維及び/又はアラミド繊維が好ましく、とりわけセルロース繊維が好ましい。
【0037】
(セルロース繊維)
前記セルロース繊維は、原料パルプを粉砕、摩砕、解砕、或いは爆砕等に付すことによって製造することができる。前記原料パルプには、綿花リンタや木材パルプが使用できる。また、木材パルプには、広葉樹パルプ及び針葉樹パルプが含まれる。
【0038】
前記セルロース繊維としては、例えば、「セリッシュ」(微小繊維状セルロース、ダイセルファインケム(株)製)等の市販品を使用しても良い。
【0039】
(アラミド繊維)
前記アラミド繊維は2個以上の芳香環がアミド結合を介して結合した構造を有するポリマー(すなわち、全芳香族ポリアミド)からなる繊維であり、前記全芳香族ポリアミドにはメタ型及びパラ型が含まれる。前記全芳香族ポリアミドとしては、例えば、下記式(a)で表される構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【化1】
【0040】
上記式中、Ar1、Ar2は同一又は異なって芳香環、又は2個以上の芳香環が単結合又は連結基を介して結合した基を示す。前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭素数6~10の芳香族炭化水素環が挙げられる。また、前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基(例えば、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基等)、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、-NH-、-SO2-等が挙げられる。また、前記芳香環は種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、C1-4アルキル基)、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基)、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基(例えば、モノ又はジC1-4アルキルアミノ基)、スルホ基等]を有していてもよい。更に、前記芳香環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0041】
前記アラミド繊維は、例えば、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸のハロゲン化物に、少なくとも1種の芳香族ジアミンを反応(例えば、溶液重合、界面重合等)させることにより製造することができる。
【0042】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族ジアミン酸としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0044】
前記アラミド繊維は、上記全芳香族ポリアミドを周知慣用の方法により(例えば、紡糸、洗浄、乾燥処理等の工程を経て)繊維状に紡糸することにより製造できる。また、繊維状に紡糸された後は、必要に応じて解砕処理等を施すことができる。例えば、超高圧ホモジナイザー等により強力な機械的剪断力を加えミクロフィブリル化することができる。
【0045】
前記アラミド繊維としては、例えば、「ティアラ」(ダイセルファインケム(株)製)等の市販品を使用しても良い。
【0046】
<その他の成分>
本発明のスラリーは、上記成分以外にも他の成分を1種又は2種以上含有していても良い。他の成分としては、例えば、バインダ、溶剤、導電付与材等が挙げられる。
【0047】
(バインダ)
前記バインダは、スラリーに添加することで、スラリーの固化物の被着体への接着性を向上させることができ、スラリーの固化物に柔軟性を付与することができる化合物である。
【0048】
前記バインダは耐熱性に優れることが、高温条件下でも接着力を保持することができる点で好ましく、融点(融点がないものは分解温度)は、例えば120℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上である。尚、バインダの融点(融点がないものは分解温度)の上限は、例えば400℃である。
【0049】
前記バインダの1重量%水溶液の粘度(25℃、60回転における)は、例えば10~10000mPa・sであることが、少量の添加でスラリーに適度な粘度を付与することができる点で好ましく、特に好ましくは50~5000mPa・s、最も好ましくは100~5000mPa・sである。
【0050】
前記バインダとしては、環境負荷が小さい点において水性バインダが好ましい。水性バインダとしては、例えば、多糖類又はその誘導体(1)、下記式(2)で表される構成単位を有する化合物、下記式(3)で表される構成単位を有する化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化2】
(式中、Rは水酸基、カルボキシル基、フェニル基、N-置換又は無置換カルバモイル基、又は2-オキソ-1-ピロリジニル基を示す)
【化3】
(式中、nは2以上の整数を示し、Lはエーテル結合又は(-NH-)基を示す)
【0051】
前記式(2)中のN-置換カルバモイル基としては、-CONHCH(CH3)2、-CON(CH3)2基等の、N-C1-4アルキル置換カルバモイル基が挙げられる。
【0052】
前記式(2)中のカルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよい。
【0053】
前記式(3)中のnは2以上の整数であり、例えば2~5の整数、好ましくは2~3の整数である。従って、式(3)中の[CnH2n]基は炭素数2以上のアルキレン基であり、ジメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。
【0054】
上記式(2)で表される構成単位を有する化合物、及び上記式(3)で表される構成単位を有する化合物は、それぞれ、式(2)で表される構成単位や式(3)で表される構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
【0055】
上記式(2)で表される構成単位を有する化合物としては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、メタクリル酸メチル・ブタジエンゴム(MBR)、ブタジエンゴム(BR)等のジエン形ゴム;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体・ナトリウム塩、アクリル酸/スルホン酸共重合体・ナトリウム塩等のアクリル系ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系ポリマー;ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0056】
上記式(3)で表される構成単位を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0057】
前記多糖類又はその誘導体(1)は、2個以上の単糖類がグリコシド結合によって重合してなる化合物である。本発明においては、なかでも、グルコース(例えば、α-グルコース、又はβ-グルコース)がグリコシド結合によって重合してなる化合物、若しくはその誘導体が好ましく、特に、セルロース、デンプン、グリコーゲン、若しくはこれらの誘導体から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0058】
前記多糖類又はその誘導体(1)としては、なかでも、耐熱性及び粘性付与効果に優れる点で、セルロース又はその誘導体が好ましい。前記セルロース又はその誘導体としては、例えば、下記式(1-1)で表される構成単位を有する化合物が挙げられる。
【化4】
(式中、R
1~R
3は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する炭素数1~5のアルキル基を示す。尚、前記ヒドロキシル基及びカルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよい)
【0059】
前記炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0060】
前記ヒドロキシル基及びカルボキシル基はアルカリと塩を形成していてもよく、例えば、ナトリウムやアンモニウム、窒素含有方複素環式化合物(イミダゾール等)、リチウムと塩を形成していてもよい。
【0061】
前記セルロースの誘導体としては、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらのアルカリ塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム)等が挙げられる。
【0062】
前記バインダとしては、なかでも、環境負荷が小さく、その上、粘性付与効果に優れ、少量の添加でスラリーに塗布に適した粘度を付与することができる点で、多糖類又はその誘導体(1)、及び上記式(3)で表される構成単位を有する化合物から選択される少なくとも1種の水性バインダが好ましい。尚、水性バインダとは、例えば、20℃の水に対する溶解性が1g/L以上のバインダ、又は20℃の水に粒子径(粒子径の測定方法:レーザー回折法による)1μm以下で分散するバインダである。
【0063】
前記バインダとしては、環境負荷が小さく、粘性付与効果に優れ、少量の添加でスラリーに塗布に適した粘度を付与することができ、その上、耐熱性に優れる点で、多糖類又はその誘導体(1)が好ましく、とりわけセルロース又はその誘導体が好ましい。
【0064】
(溶媒)
前記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルミアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状アミド類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等の環状アミド類;メチルスルホキシド等のスルホキシド類等から選択される少なくとも1種が好ましく、なかでも、環境負荷が小さく、安全性に優れる点で水を使用することが好ましい。
【0065】
(導電性付与材)
前記導電性付与材としては、例えば、金属の粉末、導電性ポリマー、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0066】
前記導電性付与材は繊維状であってもよい。繊維状の導電性付与材としては、例えば、金属、半導体、炭素材料、導電性高分子等の導電性素材を含む繊維状物質が挙げられる。
【0067】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、コバルト、錫、及びこれらの合金等の公知乃至慣用の金属が挙げられる。
【0068】
上記半導体としては、例えば、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等の公知乃至慣用の半導体が挙げられる。
【0069】
上記炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の公知乃至慣用の炭素材料が挙げられる。
【0070】
上記導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリp-フェニレン、ポリp-フェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びこれらの誘導体(例えば、共通するポリマー骨格にアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エチレンジオキシ基等の置換基を有するもの;具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン等)等が挙げられる。
【0071】
<スラリーの製造方法>
本発明のスラリーは、自公転式撹拌脱泡装置、ホモディスパー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用して上記成分を均一に混合することにより製造することができる。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0072】
本発明のスラリーでは、繊維状の接着性付与成分が、スラリー中に分散した状態で互いに絡まりあって、三次元的な網目構造を形成する。このような三次元網目構造は高温条件下(例えば、80℃以上の温度条件下)でも損なわれず保持される。そのため、本発明のスラリーは粘度の温度依存性が低く、室温での粘度が高温条件下でも維持される。
【0073】
本発明のスラリーの25℃における粘度(=25℃時粘度)は、例えば0.6~100Pa・sであり、塗布性に優れる点で、好ましくは0.8~50Pa・s、特に好ましくは1.0~30Pa・sである。スラリーの粘度は、例えば、溶媒を添加することにより調整することができる。
【0074】
本発明のスラリーの80℃昇温時最低粘度は、高温乾燥条件に昇温する際に塗膜の形状が保持されやすいという観点から、例えば0.25~90Pa・sが好ましく、より好ましくは0.5~45Pa・s、特に好ましくは1~30Pa・sである。
【0075】
スラリーを25℃から80℃まで昇温すると、通常、粘度は低下するが、本発明のスラリーの、80℃昇温時最低粘度と25℃時粘度の比(80℃昇温時最低粘度/25℃時粘度)は、例えば0.12以上である。スラリーの粘度の温度依存性をさらに低く制御して、均一で厚い塗膜を効率的に形成できる観点から、スラリーの80℃昇温時最低粘度/25℃時粘度は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
【0076】
前記80℃昇温時最低粘度とは、本発明のスラリーを25℃から80℃まで、15℃/分で昇温することによる粘度推移の中の最も低い粘度である。
【0077】
また、スラリーの一部がゲル化する場合は、スラリーを25℃から80℃まで昇温する間に、粘度が上昇する。しかし、スラリーがゲル化すると乾燥しにくくなり、乾燥に長時間を要して作業効率が低下するため好ましくない。そのため、高温で効率的に乾燥できるという観点から、本発明の80℃昇温時最高粘度と25℃における粘度の比(80℃時最高粘度/25℃時粘度)は、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。
【0078】
前記80℃昇温時最高粘度とは、本発明のスラリーを25℃から80℃まで、15℃/分で昇温することによる粘度推移の中の最も高い粘度である。
【0079】
尚、本発明のスラリーの粘度は、MCRレオメータを用いて周波数1Hzの条件で測定した複素粘度である。
【0080】
本発明のスラリーは上記の粘度特性を有するため、室温(例えば、25℃)において塗布し易い粘度にスラリーを調整し、当該スラリーを塗布して厚く、均一な塗膜を形成すれば、その後に直ちに高温で加熱乾燥しても、塗膜の粘度の低下が抑制されるので、塗膜の形状は保持され、厚く、均一な固化物が歩留まり良く製造できる。
【0081】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)における、活物質の含有量は、例えば90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。尚、活物質の含有量の上限は、例えば、99.98重量%である。本発明のスラリーは活物質を上記範囲の通り高濃度で含有するため、これを使用すれば、高電池容量の電極を形成することができる。
【0082】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)における繊維状の接着性付与成分の含有量は、例えば0.01~10.0重量%、好ましくは0.1~5.0重量%、特に好ましくは0.3~3.0重量%である。
【0083】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)におけるバインダの含有量は、例えば0.01~10.0重量部、好ましくは0.1~5重量部、特に好ましくは0.3~3.0重量部である。
【0084】
本発明のスラリーに含まれる不揮発分全量(100重量%)における繊維状の接着性付与成分とバインダの合計含有量は、例えば0.01~20.0重量%、好ましくは0.1~10.0重量%、特に好ましくは0.5~5.0重量%である。
【0085】
本発明のスラリーにおける、バインダと繊維状の接着性付与成分の合計含有量は、例えば0.02~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%である。
【0086】
本発明のスラリーにおいて、繊維状の接着性付与成分と前記バインダの含有量の比(前者/後者;重量比)は、例えば0.1~5.0であり、好ましくは0.1~3.0、最も好ましくは0.5~2.0である。
【0087】
本発明のスラリーは、繊維状の接着性付与成分を上記範囲で含有するため、スラリーの粘度の温度依存性を低く制御することができる。繊維状の接着性付与成分の含有量が上記範囲を下回ると、スラリーの粘度の温度依存性が高まり、高温条件下では塗膜の形状が崩れやすくなり、均一で厚い固化物を効率よく形成することが困難となる傾向がある。
【0088】
本発明のスラリーにおける繊維状の接着性付与成分の含有量は、活物質100重量部に対して、例えば0.01~10.0重量部であり、好ましくは0.1~5.0重量部、特に好ましくは0.3~2.0重量部である。本発明のスラリーは接着性付与成分として繊維状のものを含有するため、(繊維状の)接着性付与成分の含有量を上記範囲にまで低減しても、活物質の集電体への接着力を保持することができ、接着力を保持しつつ、活物質の含有割合を高めることができ、高電池容量の電極を実現できる。繊維状の接着性付与成分の含有量が上記範囲を上回ると、相対的に活物質の含有量が低下することで、電極の電池容量が低下する傾向がある。一方、繊維状の接着性付与成分の含有量が上記範囲を下回ると、活物質を集電体の表面に保持することが困難となり、活物質が集電体から剥がれ落ちることにより、電極の電池容量が低下する傾向がある。
【0089】
本発明のスラリーにおけるバインダの含有量は、活物質100重量部に対して、例えば0.01~10.0重量部であり、好ましくは0.1~5.0重量部、特に好ましくは0.3~2.0重量部である。
【0090】
本発明のスラリーにおける、バインダと繊維状の接着性付与成分と活物質の合計含有量は、スラリー全量の、例えば20~70重量%、好ましくは35~60重量%である。
【0091】
本発明のスラリーを遠心分離(例えば、5000rpm×5分)して得られる上澄み液中のバインダ含有量は、前記スラリーに含まれるバインダ全量の45重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。
【0092】
本発明のスラリーは上記特性を有するため、(繊維状の)接着性付与成分の含有量を増量せずとも、若しくは、従来より減量しても、優れた接着性を発揮することができ、活物質の含有割合を低下することなく、若しくは活物質の含有割合を従来より増加させつつ、接着力を向上することができ、優れた接着力と、高電池容量とを兼ね備える電極を形成することができる。
【0093】
また、本発明のスラリーは前記の通り、繊維状の接着性付与成分は、活物質の間に分散した状態で、互いに絡まりあって、三次元的な網目構造を形成する。そして、前記三次元網目構造は高温条件下(例えば、80℃以上の条件下)でも保持される。そのため、本発明のスラリーは温度上昇による粘度の低下が抑制される。すなわち、本発明のスラリーの粘度は温度依存性が低い。
【0094】
従って、本発明のスラリーの粘度を、室温(例えば、25℃)で塗布し易い粘度に調整して、厚く均一に塗布して塗膜を形成し、その後に直ちに高温条件(例えば、80℃)で加熱乾燥すると、塗膜の粘度の低下が抑制されるので、塗膜の形状は崩れることなく保持されて、厚く、均一な固化物を効率よく形成することができる。
【0095】
[固化物]
本発明の固化物は上記スラリーの固化物である。本発明の固化物は、例えば、上記スラリーを被着体の表面に塗布し、乾燥して前記スラリーを固化させることにより製造することができる。
【0096】
上記スラリーを塗布する被着体としては、特に限定されず、例えば、金属基材、プラスチック基材、セラミックス基材、半導体基材、ガラス基材、紙基材、木基材等の表面が塗装表面である公知乃至慣用の各種基材が挙げられる。本発明においては、なかでも、集電体として作用する金属基材(より好ましくは、金属箔)を使用することが好ましい。
【0097】
上記スラリーの被着体への塗布量は、例えば20~350g/m2程度であり、好ましくは80~200g/m2である。塗布厚みは、乾燥後の厚みが、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは200μm以上である。尚、上限は、例えば500μm、好ましくは400μmである。
【0098】
上記スラリーの塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、マスク印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキージ印刷法、シルクスクリーン印刷法、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。また、スラリーの塗布には、フィルムアプリケーター、バーコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ブレードコーター等が使用できる。
【0099】
上記スラリーは粘度の温度依存性が低いため、高温で塗膜を加熱乾燥しても、塗膜の形状を維持することができる。そのため、短時間で効率的に塗膜を乾燥して、固化物を形成することができる。乾燥温度は、例えば70℃~150℃であり、好ましくは80~120℃である。乾燥時間は、前記乾燥温度条件下で、例えば1分~5時間、好ましくは10分~1時間である。
【0100】
上記スラリーの乾燥方法としては、加熱乾燥以外にも、減圧、送風等の従来公知の方法を採用しても良い。
【0101】
[電極]
本発明の電極は、上記スラリーの固化物と集電体との積層体を含む。より好ましくは、前記固化物からなる活物質層と集電体との積層体を含む。本発明の電極は、前記固化物と集電体以外の構成要素を含んでいても良い。
【0102】
本発明の電極は、例えば、上記スラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、その後、乾燥して前記スラリーを固化させることにより製造することができる。
【0103】
前記集電体には正極集電体と負極集電体が含まれる。そして、前記正極集電体は、例えば、アルミ箔等で形成される。また、負極集電体は、例えば、銅箔等で形成される。
【0104】
集電体へのスラリーの塗布量、塗布方法、塗膜の乾燥方法、乾燥後の塗膜の厚みは、上述の被着体へのスラリーの塗布量、塗布方法、塗膜の乾燥方法、乾燥後の塗膜の厚みと同様である。
【0105】
本発明の電極を構成する固化物(若しくは、活物質層)と集電体とは優れた接着力で接着しており、剥離強度は例えば1.0N/m以上、好ましくは2.0N/m以上、特に好ましくは10.0N/m以上である。尚、剥離強度の上限は、例えば70.0N/mである。
【0106】
また、本発明の電極は、上記の粘度の温度依存性が小さいスラリーを使用して製造される。そのため、製造工程において高温で加熱乾燥しても、均一な膜厚を有する固化物(若しくは、活物質層)を集電体の表面に歩留まり良く形成することができる。
【0107】
固化物(若しくは、活物質層)の端部の膜厚と中央部の膜厚の差は小さく、端部膜厚と中央部膜厚の比(端部膜厚/中央部膜厚)は、例えば0.9以上であり、好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上である。
【0108】
固化物(若しくは、活物質層)の端部膜厚と中央部膜厚の比は、以下の方法により測定することができる。
1.本発明のスラリーを、厚み15μm、一辺150mmの正方形の銅箔の片面に、乾燥後の厚みが50μm以上になるように均一に塗布する。
2.塗膜を上面にして、80℃に昇温して1時間乾燥・固化させて固化物(若しくは、活物質層)を形成する。
3.形成された固化物(若しくは、活物質層)の端部の最も膜厚が薄い箇所の膜厚を端部膜厚、中央部の最も膜厚が厚い箇所の膜厚を中央部膜厚として、端部膜厚と中央部膜厚の比を算出する。固化物(若しくは、活物質層)の膜厚は、例えば、マイクロメータ((株)ミツトヨ製)により測定することができる。
【0109】
更に、本発明の電極は、製造工程における加熱乾燥温度にかかわらず、固化物と集電体との接着力に優れ、下記式(1)で表される特性を有する。
剥離強度P60/剥離強度P80≧0.8 (1)
(式中の、剥離強度P60は、スラリーを、厚み15μmの銅箔表面に塗布し、60℃で30分乾燥して得られた、縦×横×厚みが25mm×150mm×100μmの固化物の表面に、両面テープでアクリル板を貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、銅箔/固化物/アクリル板積層体を得、得られた積層体のアクリル板側を固定した状態で、銅箔端を、角度90・、速度100mm/minで剥離する時の剥離強度である。剥離強度P80は、乾燥条件を80℃×22.5分に変更した以外は剥離強度P60と同様の方法で求められる剥離強度である)
【0110】
前記剥離強度比(剥離強度P60/剥離強度P80)は0.8以上であり、好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.9以上である。尚、上限は2.0である。
【0111】
本発明の固化物の剥離強度P60は、例えば1N/m以上、好ましくは2N/m以上、特に好ましくは10N/m以上である。尚、剥離強度の上限は、例えば70N/mである。
【0112】
本発明の固化物の剥離強度P80は、例えば1N/m以上、好ましくは2N/m以上、特に好ましくは10N/m以上である。尚、剥離強度の上限は、例えば70N/mである。
【0113】
また、本発明の固化物の剥離強度P60/剥離強度P120は、例えば0.7以上であり、好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上、最も好ましくは0.95以上である。尚、上限は2.0である。
【0114】
本発明の固化物の剥離強度P120は、例えば1N/m以上、好ましくは2N/m以上、特に好ましくは10N/m以上である。尚、剥離強度の上限は、例えば70N/mである。
尚、剥離強度P120は、乾燥条件を120℃×15分に変更した以外は剥離強度P60と同様の方法で求められる剥離強度である。
【0115】
また、本発明の電極はの活物質層の膜厚は、例えば50μm以上、好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上である。
【0116】
本発明の電極は、上記の通り、固化物(若しくは、活物質層)の密度が均一であるため、高容量・高品質である。
また、本発明の電極は、厚い固化物(若しくは、活物質層)を備えるため、高電池容量を有する。
更に、本発明の電極は、固化物(若しくは、活物質層)と集電体との密着性に優れるため、充放電の繰り返しにより電極が膨張・収縮しても、固化物(若しくは、活物質層)が集電体から剥がれ落ちるのを防止することができ、長期に亘って安定的に電池容量を高く維持することができる。
【0117】
[電池]
本発明の電池は、上記電極を備えることを特徴とする。
【0118】
前記電池には、電極(正極、及び負極)とセパレータを積層して巻回したものを、電解液と共に缶などの容器に封入した巻回型電池や、電極(正極、及び負極)とセパレータを積層したシート状物を、電解液と共に、比較的柔軟な外装体内部に封じ込めた積層型電池が含まれる。
【0119】
本発明の電池には、リチウムイオン電池、ニッケル・水素充電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等の二次電池;マンガン乾電池、アルカリマンガン電池、リチウム一次電池等の一次電池;電気二重層キャパシタ等が含まれる。
【0120】
本発明の電池は、厚い活物質層(活物質層の厚みは、例えば50μm以上)が集電体上に形成されてなる電極を備えるため、高い電池容量を有する。そのため、スマートフォンやノートパソコン等の情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0122】
調製例1(セルロースナノファイバー(CNF)スラリー液の調製)
市販の広葉樹パルプを水で懸濁して、1重量%スラリー液(1)100Lを得た。
次いで、得られたスラリー液に、ディスクリファイナー(長谷川鉄工(株)製、商品名「SUPERFIBRATER400-TFS」)を用いて、クリアランス0.15mm、ディスク回転数1750rpmとして10回叩解処理してリファイナー処理を施した。
リファイナー処理後の1重量%スラリー液に、更に、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザー(ゴーリン社製、商品名「15M8AT」)を用いて、処理圧50MPaで50回ホモジナイズ処理を施した。
リファイナー処理及びホモジナイズ処理を施した後の1重量%スラリー液をガーゼで繰り返し濾して、不揮発分濃度9.9重量%のスラリー液を得た。
得られた9.9重量%スラリー液に水を添加し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)を用いて3000rpmで5分間撹拌することで、1.2重量%のスラリー液を得た。得られた1.2重量%スラリー液をCNFスラリー液(1)とする。
得られたCNFスラリー液(1)に含まれる繊維を任意に10本選び出し、選び出された繊維を、電子顕微鏡(SEM、TEM)を用いて観察し繊維長と繊維径を測定した。その結果、10本の繊維の平均太さは79.2nm、平均長さは6.14μm、平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)は78であった。
【0123】
実施例1
(スラリーの製造)
調製例1で得られたCNFスラリー液(1)84gをポリプロピレン製容器に入れ、1.5重量%のCMC水溶液(CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、分解温度:290℃以上、1重量%水溶液の25℃、60回転における粘度:1500~3000mPa・s、ダイセルファインケム(株)製、品番2200)67.5gを添加し、活物質としての人造黒鉛(平均粒子径:約20μm)99.0gを更に加えて、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)を用いて3000rpmで30分間撹拌して、スラリー(1)を得た。得られたスラリー(1)の25℃における粘度(MCRレオメータを用いて、周波数1Hzの条件で測定した複素粘度)は、9.745Pa・sであった。
【0124】
(電極の製造)
得られたスラリー(1)を、厚み15μm、一辺150mmの正方形の銅箔に、乾燥後の厚みが50μm以上となるようにアプリケーターにより塗布した。その後、塗膜を上面にして、60℃で30分乾燥・固化させて電極活物質層を銅箔の片面に形成した電極(固化物/銅箔)を作製した。
【0125】
(密着性評価)
下記手順で固化物の銅箔への密着性を評価した。
1.得られた電極(固化物/銅箔)を25mm×150mmサイズに切断してサンプルを得た。
2.得られたサンプルをアルミバットの上に載置して、恒温恒湿機中(温度23℃、湿度50%)に入れて一晩放置した。
3.サンプルの厚さを測定した。
4.アクリル板の表面に10cm長さの両面テープ(ナイスタックNW-25、ニチバン(株)製)を貼って、電極(固化物/銅箔)の固化物側表面に貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、アクリル板を固化物側表面に均一に密着させて、アクリル板/固化物/銅箔積層体を得た。
6.アクリル板/固化物/銅箔積層体のアクリル板側をレオメータ((株)サン科学製、CR-150およびCR-500DX)に固定して、銅箔側右上端部をレオメータの治具に挟み、角度90・、速度100mm/minで引っ張り、剥離強度を測定した。
【0126】
実施例2
(電極の製造)工程において、乾燥条件を60℃×30分から、80℃×22.5分に変更した以外は実施例1と同様にした。
【0127】
実施例3
(電極の製造)工程において、乾燥条件を60℃×30分から、120℃×15分に変更した以外は実施例1と同様にした。
【0128】
比較例1~3
(スラリーの製造)工程において、CNFスラリー液(1)を84g使用したのに代えて、SBR水分散液(製品名「TRD2001」(JSR(株)製))を2g使用し、スラリー全体の固形分濃度が50%となるように水分調整してスラリー(2)を得、(電極の製造)工程においてスラリー(1)に代えてスラリー(2)を使用した以外は実施例1~3と同様にした。
【0129】
比較例4~5
(スラリーの製造)工程において、CNFスラリー(1)を84g使用したのに代えて、SBR水分散液(製品名「TRD2001」(JSR(株)製))を10g使用し、スラリー全体の固形分濃度が50%となるように水分調整してスラリー(3)を得、(電極の製造)工程においてスラリー(1)に代えてスラリー(3)を使用した以外は実施例1、3と同様にした。
【0130】
結果を下記表にまとめて示す。
【表1】
※剥離強度比(対60℃)は、乾燥条件60℃で得られた電極に対する剥離強度の比である。
剥離強度比(対実施例1)は、実施例1で得られた電極に対する剥離強度の比である。
【0131】
上記表から、本願のスラリーを使用すれば、比較例のスラリーを使用した場合に比べ、乾燥温度による剥離強度に差が小さく、比較例のスラリーでは120℃で乾燥させると接着力が急激に低下するのに対し、本願のスラリーでは、120℃の高温でも、接着性を高く維持することができ、優れた作業性で、歩留まり高く、高電池容量の電極を製造できることがわかる。
【0132】
以上のまとめとして、本発明の構成及びバリエーションを以下に付記する。
[1] 活物質と繊維状の接着性付与成分とを少なくとも含むスラリーであって、下記式(1)で表される特性を有するスラリー。
剥離強度P60/剥離強度P80≧0.8 (1)
(式中の、剥離強度P60は、スラリーを、厚み15μmの銅箔表面に塗布し、60℃で30分乾燥して得られた、縦×横×厚みが25mm×150mm×100μmの固化物の表面に、両面テープでアクリル板を貼り合わせ、1kgの重りを5往復させて、銅箔/固化物/アクリル板積層体を得、得られた積層体のアクリル板側を固定した状態で、銅箔端を、角度90・、速度100mm/minで剥離する時の剥離強度である。剥離強度P80は、乾燥条件を80℃×22.5分に変更した以外は剥離強度P60と同様の方法で求められる剥離強度である)
[2] 前記繊維状の接着性付与成分の含有量が、前記活物質1重量部に対して0.01~10重量部である、[1]に記載のスラリー。
[3] 前記繊維状の接着性付与成分の平均太さが1~1000nmである、[1]又は[2]に記載のスラリー。
[4] 前記繊維状の接着性付与成分の平均長さが0.01~1000μmである、[1]~[3]の何れか1つに記載のスラリー。
[5] 前記繊維状の接着性付与成分の平均アスペクト比(平均長さ/平均太さ)が10~1000である、[1]~[4]の何れか1つに記載のスラリー。
[6] 前記繊維状の接着性付与成分がセルロース繊維である、[1]~[5]の何れか1つに記載のスラリー。
[7] 前記繊維状の接着性付与成分の平均太さが1~1000nm、平均アスペクト比が10~1000である、[1]~[6]の何れか1つに記載のスラリー。
[8] 前記活物質が、金属酸化物、リチウム含有複合酸化物、珪素単体、珪素化合物、及び炭素材からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]~[7]の何れか1つに記載のスラリー。
[9] 前記スラリーに含まれる不揮発分全量における、活物質の含有量が90重量%以上である[1]~[8]の何れか1つに記載のスラリー。
[10] 前記スラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状の接着性付与成分の含有量が0.01~10.0重量部である[1]~[9]の何れか1つに記載のスラリー。
[11] 更にバインダを含む、[1]~[10]の何れか1つに記載のスラリー。
[12] バインダが水性バインダである、[11]の何れか1つに記載のスラリー。
[13] バインダが、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルデンプンから選択される少なくとも1種である、[11]又は[12]に記載のスラリー。
[14] 前記バインダの含有量が、前記活物質1重量部に対して0.01~10重量部である、[11]~[13]の何れか1つに記載のスラリー。
[15] 前記バインダが、融点(融点がないものは分解温度)が120℃以上のバインダである、[11]~[14]の何れか1つに記載のスラリー。
[16] 前記バインダが、1重量%水溶液の、25℃、60回転における粘度が10~10000mPa・sのバインダである、[11]~[15]の何れか1つに記載のスラリー。
[17] 前記スラリーに含まれる不揮発分全量におけるバインダの含有量が0.01~10.0重量部である[11]~[16]の何れか1つに記載のスラリー。
[18] 前記スラリーに含まれる不揮発分全量における繊維状の接着性付与成分とバインダの合計含有量が0.02~20重量%である[11]~[17]の何れか1つに記載のスラリー。
[19] 前記繊維状の接着性付与成分と前記バインダの含有量の比(前者/後者;重量比)が0.1~5.0である、[11]~[18]の何れか1つに記載のスラリー。
[20] 前記バインダと前記繊維状の接着性付与成分の合計含有量が0.02~20重量%である[11]~[19]の何れか1つに記載のスラリー。
[21] 前記バインダと前記繊維状の接着性付与成分と前記活物質の合計含有量が20~70重量%である[11]~[20]の何れか1つに記載のスラリー。
[22] 前記スラリーを、5000rpm×5分条件で遠心分離して得られる上澄み液中のバインダ含有量が、前記スラリーに含まれるバインダ全量の45重量%以上である[11]~[21]の何れか1つに記載のスラリー。
[23] [1]~[22]の何れか1つに記載のスラリーの固化物。
[24] [23]に記載の固化物と集電体との積層体を含む電極。
[25] 前記固化物端部の膜厚と固化物中央部の膜厚の比が0.9以上である[24]に記載の電極。
[26] 固化物の膜厚が50μm以上である[24]又は[25]に記載の電極。
[27] [24]~[26]の何れか1つに記載の電極を備えた電池。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のスラリーは、スマートフォンやノートパソコン等の情報関連機器、ハイブリッド車や電気自動車等に好適に使用する電池の電極活物質層を形成する用途に好適に使用することができる。