(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20230501BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230501BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2021545209
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032511
(87)【国際公開番号】W WO2021049315
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019164441
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 匡
(72)【発明者】
【氏名】仲元 正至
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-54127(JP,A)
【文献】特開2015-56325(JP,A)
【文献】特開2018-142540(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073438(WO,A1)
【文献】特開2017-134952(JP,A)
【文献】特開2013-25983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層配置された複数の電池セルを含む電池モジュールと、前記電池モジュールに電気的に接続された電装ユニットと、前記電池モジュールおよび前記電装ユニットを収容する筐体と、を備えた電池パックであって、
前記各電池セルには、ガス排出弁が設けられており、
前記筐体は、前記電池モジュールおよび前記電装ユニットが載置される筐体本体と、前記電池モジュールの前記複数の電池セルに設けられた前記ガス排出弁を覆うように前記筐体本体の上部に取り付けられる蓋体とを含んでおり、
前記筐体の内部には、前記電池モジュールを収容する第1収容空間と、前記電装ユニットを収容する第2収容空間とが設けられており、
前記第1収容空間および前記第2収容空間は、前記電池モジュールおよび前記電装ユニットを収容した状態で連通しており、
前記第1収容空間および前記第2収容空間は、前記複数の電池セルの積層方向および前記蓋体の法線方向のそれぞれに直交する第1方向に並んで配置されており、
前記蓋体の前記第2収容空間を形成する部分には、前記第2収容空間と前記筐体の外部とを連通するダクトが設けられており、
前記ダクトには、前記ダクトの通路を閉塞する閉塞部材が設けられており、
前記閉塞部材は、前記第2収容空間のガス圧が前記筐体の外部の気圧に対して所定値以上になったときに、前記ダクトの通路を開通し、
前記筐体の前記第1収容空間を構成する内面と前記電池モジュールとの間には第1隙間が形成されており、
前記筐体の前記第2収容空間を構成する内面と前記電装ユニットとの間には第2隙間が形成されており、
前記第2隙間は、前記第1隙間よりも大きいことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池モジュールは、前記複数の電池セルに設けられた前記ガス排出弁を覆うように配置されるカバー部材をさらに含み、
前記カバー部材には、前記ガス排出弁から排出されたガスを前記第2収容空間側に導く案内部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記蓋体は、樹脂製であり、
前記電池モジュールと前記蓋体との間には、前記電池モジュールを覆う金属プレートが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記閉塞部材に対して前記第2収容空間側の部分において、前記閉塞部材に近接した位置には、前記ダクトの通路の断面を絞る絞り部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記筐体の少なくとも一部は、引張破壊応力よりも高い引張降伏応力を有する樹脂により形成されており、
前記所定値は、前記引張破壊応力以上、前記引張降伏応力未満であることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記ダクトの端部には、前記閉塞部材を保持する保持部材が取り付けられており、
前記ダクトには、前記閉塞部材の周縁に対向する第1保持面が形成されており、
前記保持部材には、前記閉塞部材の周縁に対向する第2保持面が形成されており、
前記閉塞部材は、少なくとも前記第1保持面と前記第2保持面との間に前記周縁が挟み込まれた状態で、前記ダクトおよび前記保持部材に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
前記保持部材には、前記第2保持面が環状になるように貫通する貫通穴が設けられており、
前記第2保持面の前記貫通穴の縁部は、前記閉塞部材の縁部に接触し、
前記第2保持面の貫通穴の周縁から前記閉塞部材の周縁までの距離は、前記貫通穴の周方向に沿って変化することを特徴とする請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記第1保持面および前記第2保持面の少なくとも一方には、前記第1保持面および前記第2保持面の少なくとも他方に向かって突出する突起部が設けられており、
前記突起部と前記第1保持面および前記第2保持面の少なくとも他方とによって前記閉塞部材の一部が挟み込まれていることを特徴とする請求項6に記載の電池パック。
【請求項9】
前記第1保持面および前記第2保持面の少なくとも他方には、前記突起部に対応する位置に凹部が設けられており、
前記突起部は、前記凹部に先端が入り込んだ状態で前記閉塞部材を保持することを特徴とする請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
前記電池モジュールは、前記第1方向に直交する側面を有し、
前記電装ユニットは、前記電池モジュールの側面に対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項11】
前記第1保持面には、前記ダクトの通路に連通する穴が形成されており、
前記閉塞部材の外径は、前記第1保持面の穴径より大きく、かつ、前記第2保持面の外径より小さいことを特徴とする
請求項6に記載の電池パック。
【請求項12】
前記閉塞部材は、前記筐体の外部から前記第2収容空間側に向かって前記閉塞部材の厚み分だけ前記ダクトの端面から嵌入されていることを特徴とする
請求項1に記載の電池パック。
【請求項13】
前記閉塞部材に対して前記第2収容空間側の部分において、前記閉塞部材に近接した位置には、前記ダクトの外径を変更することなく前記ダクトの通路の断面を絞る絞り部が形成されていることを特徴とする
請求項1に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを含む電池モジュールと、電池モジュールを収容する筐体とを備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再充電可能な二次電池の分野では、鉛電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池等の水溶液系電池が主流であった。しかし、電気機器の小型化、軽量化が進むに連れ、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が着目され、その研究、開発及び商品化が急速に進められている。また、地球温暖化や枯渇燃料の問題から電気自動車(EV)や駆動の一部を電気モータで補助するハイブリッド自動車(HEV)が各自動車メーカーで開発され、その電源として高容量で高出力な二次電池が求められている。
【0003】
このような要求に合致する電源として、高電圧の非水溶液系のリチウムイオン二次電池が注目されている。特に、扁平箱型の電池容器を備えた角形リチウムイオン二次電池は、パック化した際の体積効率が優れているため、HEV、EV、又はその他の機器に搭載される電源として需要が増大している。このような密封型の電池容器を備える角形二次電池(電池セル)では、例えば、過充電、過昇温、又は外力による破損によって、電池容器の内部の圧力が上昇する場合がある。そこで、角形二次電池には、内部の圧力が上昇した際にガスを排出するガス排出弁が設けられている。
【0004】
このようなガス排出弁が設けられた電池セルを複数含む電池パックは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の電池パックは、二次電池である複数の素電池と、素電池から発生するガスを通過させる排気経路部と、複数の素電池と排気経路部とを収納するケースと、ケースに取り付けられて排気経路部を通過したガスを外部へ放出するガス排出ダクトとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の電池パックでは、素電池から排出されたガスを通過させる排気経路部を電池パック内に設けているため、素電池から排出されたガスにより他の素電池が高温になるのを抑制することが可能である。しかしながら、上記特許文献1に記載の電池パックでは、素電池から排出されたガスは、電池パック内において排出経路部のみにしか行き場がないため、比較的少量のガスが排出されただけで、排出経路部内のガス圧が上昇する。そして、ガス排出ダクトに設けられた蓋部がガス排出ダクトを開通し、電池パックの外部にガスが排出される。このガスには、有害成分も含まれるため、可能な限り電池パック内にガスを溜めることが望ましい。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、電池セルから排出されたガスにより他の電池セルが高温になるのを抑制しながら、可能な限り電池パック内にガスを溜めることが可能な電池パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池パックは、積層配置された複数の電池セルを含む電池モジュールと、前記電池モジュールに電気的に接続された電装ユニットと、前記電池モジュールおよび前記電装ユニットを収容する筐体と、を備えた電池パックであって、前記各電池セルには、ガス排出弁が設けられており、前記筐体の内部には、前記電池モジュールを収容する第1収容空間と、前記電装ユニットを収容する第2収容空間とが設けられており、前記第1収容空間および前記第2収容空間は、前記電池モジュールおよび前記電装ユニットを収容した状態で連通しており、前記筐体の前記第2収容空間を形成する部分には、前記第2収容空間と前記筐体の外部とを連通するダクトが設けられており、前記ダクトには、前記ダクトの通路を閉塞する閉塞部材が設けられており、前記閉塞部材は、前記第2収容空間のガス圧が前記筐体の外部の気圧に対して所定値以上になったときに、前記ダクトの通路を開通する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電池セルから排出されたガスにより他の電池セルが高温になるのを抑制しながら、可能な限り電池パック内にガスを溜めることが可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池パックの分解斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電池パックの電池モジュールの分解斜視図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る電池パックの電池セルの構造を示す斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る電池パックのダクト周辺の構造を示す断面図。
【
図5】
図4の保持部材およびフィルタを下流側から見た状態を示す図。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る電池パックの蓋体を構成する樹脂の応力-ひずみ曲線を示す図。
【
図7】電池セルからガスが排出された際の筐体内のガス圧と筐体の外部の気圧との差圧を示す図。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る電池パックのダクト周辺の構造を示す断面図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る電池パックのダクト周辺の構造を示す断面図。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る電池パックのダクト周辺の構造を示す断面図。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る電池パックの保持部材およびフィルタを下流側から見た状態を示す図。
【
図12】本発明の第5実施形態の変形例による保持部材およびフィルタを下流側から見た状態を示す図。
【
図13】本発明の第6実施形態に係る電池パックのダクト周辺の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による電池パックについて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池パック100の分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る電池パック100の電池モジュール30の分解斜視図である。
【0013】
本発明の第1実施形態の電池パック100は、例えば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)などの車両に搭載される。電池パック100は、後述する一対の入出力端子101を介して供給された電力を電池セル20に蓄え、電池セル20に蓄えた電力を入出力端子101を介して車両のモータ等の電気機器に供給する。
【0014】
電池パック100は、二次電池からなる複数の電池セル20を含む電池モジュール30と、電池モジュール30から所定間隔をおいて配置され、電池モジュール30に電気的に接続される電装品を含む電装ユニット50と、電池モジュール30および電装ユニット50を収容する筐体70とを備えている。
【0015】
筐体70は、略直方体形状の箱型に形成されている。ここで、説明を簡略化するため、筐体70の奥行方向をX方向、幅方向をY方向、高さ方向をZ方向とし、筐体本体71と蓋体72との相対関係において、蓋体72側を上側、筐体本体71側を下側とする。筐体70は、幅方向(Y方向)の寸法が奥行方向(X方向)の寸法よりも大きくなっており、奥行方向(X方向)の寸法が高さ方向(Z方向)の寸法よりも大きくなっている。
【0016】
筐体70は、上部が開口する箱型に形成され電池モジュール30が載置される筐体本体71と、筐体本体71の上部開口を覆う蓋体72とによって構成されている。筐体本体71は、例えば電気亜鉛めっき鋼板等の金属材料によって形成されている。蓋体72は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂材料によって形成されている。
【0017】
筐体本体71は、電池モジュール30および電装ユニット50が載置される底面部71aと、底面部71aの周縁から立設する側壁71b、71c、71dおよび71eとを有する。側壁71bはX方向の一方側に配置され、側壁71cはY方向の一方側に配置され、側壁71dはX方向の他方側に配置され、側壁71eはY方向の他方側に配置されている。側壁71bは、側壁71dよりも高さが低くなるように形成されている。側壁71cおよび71eは、側壁71bと側壁71dとを接続するように設けられており、側壁71dから側壁71bに向かって高さが低くなるように形成されている。
【0018】
蓋体72は、上面部72aと、上面部72aの周縁から下方に延びる側壁72b、72cおよび72dとを有する。側壁72bは、上面部72aのX方向の一方側の端部に設けられている。側壁72cは、筐体本体71の側壁71cに対応するように、上面部72aのY方向の一方側の端部に設けられている。側壁72dは、筐体本体71の側壁71eに対応するように、上面部72aのY方向の他方側の端部に設けられている。
【0019】
また、蓋体72のX方向の一方側の両端部には、凹部72eが設けられている。凹部72eには、後述する入出力端子101に対応する部分に、入出力端子101を露出させるための貫通穴72fが形成されている。また、蓋体72の側壁72bの所定位置には、信号コネクタ72gおよびダクト80が設けられている。ダクト80の詳細構造については後述する。
【0020】
樹脂製の蓋体72を構成する上面部72a、側壁72b、側壁72cおよび側壁72dの中で、上面部72aが最も面積が広い平坦面を有する。このため、後述するように筐体70内のガス圧が上昇した場合、上面部72aが大きく変形する(膨らむ)ので、筐体70内の容積を大きくすることができる。これにより、蓋体72を金属製にする場合に比べて、より多くのガスを筐体70内に溜めることができる。
【0021】
筐体70の内部には、電池モジュール30を収容する第1収容空間70aと、第1収容空間70aに対してX方向の一方側に隣接して配置され、電装ユニット50を収容する第2収容空間70bとが設けられている。第1収容空間70aおよび第2収容空間70bは、電池モジュール30および電装ユニット50を収容した状態で連通している。
【0022】
筐体70の第1収容空間70aを構成する内面と電池モジュール30との間には、隙間(以下、第1収容空間70a内の隙間ともいう)が形成されている。なお、第1収容空間70a内の隙間の大きさは、筐体70の第1収容空間70aに電池モジュール30を収容した状態で、第1収容空間70aの容積から電池モジュール30の体積分を除いた大きさのことである。また、筐体70の第2収容空間70bを構成する内面と電装ユニット50との間には、隙間(以下、第2収容空間70b内の隙間ともいう)が形成されている。なお、第2収容空間70b内の隙間の大きさは、筐体70の第2収容空間70bに電装ユニット50を収容した状態で、第2収容空間70bの容積から電装ユニット50の体積分を除いた大きさのことである。
【0023】
ここで、本実施形態では、第2収容空間70b内の隙間は、第1収容空間70a内の隙間よりも大きく形成されている。具体的には、電装ユニット50の上面は、後述する補強部材(金属プレート)40の上面よりも低く、さらに電池モジュール30の上面(後述するバスバーホルダ33の上面)よりも低い。このため、第2収容空間70b内の上部の隙間は、第1収容空間70a内の上部の隙間よりも大きい。すなわち、電装ユニット50の上方でガスが流入できる空間は、電池モジュール30の上方でガスが流入できる空間よりも大きくなっている。また、電装ユニット50のY方向の両端面から筐体70の内面までの距離は、電池モジュール30のY方向の両端面から筐体70の内面までの距離よりも大きい。このため、第2収容空間70b内の長手方向の両端部の隙間は、第1収容空間70a内の長手方向の両端部の隙間よりも大きい。すなわち、電装ユニット50の側方でガスが流入できる空間は、電池モジュール30の側方でガスが流入できる空間よりも大きい。
【0024】
第2収容空間70b内の隙間が第1収容空間70a内の隙間よりも大きく形成されているので、後述するように電池セル20のガス排出弁10から排出されたガスは、第1収容空間70a内の隙間から排出されて、主として第2収容空間70b内の隙間に流入する。このため、第2収容空間70b内の隙間は、電池セル20のガス排出弁10から排出されたガスを溜めるガス溜め部となっている。
【0025】
電池モジュール30は
図2に示すように、電池積層体31と、複数のセルホルダ(図示せず)と、複数のバスバー32と、バスバーホルダ(カバー部材)33と、一対のエンドプレート36と、中間プレート37と、4つのサイドプレート38とを備えている。電池積層体31は、複数の電池セル20が積層されることにより構成されている。複数のセルホルダ(図示せず)は、複数の電池セル20をそれぞれ保持する。複数のバスバー32は、複数の隣接する電池セル20同士を電気的に接続する。バスバーホルダ33は、複数のバスバー32を保持する。エンドプレート36は、電池積層体31の積層方向の一端および他端に1つずつ配置される。中間プレート37は、電池積層体31の積層方向の中央に配置される。サイドプレート38は、電池積層体31の短手方向(X方向)の一端および他端に2つずつ配置される。
【0026】
以下、電池モジュール30について詳細に説明する。
【0027】
電池積層体31を構成する電池セル20は
図3に示すように、電池ケース1と蓋6とを備えている。電池ケース1の内部には、発電体である電極群(図示せず)が収納され、電池ケース1の上部開口は蓋6によって封止されている。蓋6は、レーザ溶接によって電池ケース1に溶接されており、電池ケース1と蓋6によって電池容器が構成されている。
【0028】
蓋6の長手方向(X方向)の両端部には、正極外部端子8Aと負極外部端子8Bが設けられている。正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bは、蓋6の上面から後述する補強部材40に向けて突出する略直方体形状に形成されている。この正極外部端子8Aと負極外部端子8Bを介して電極群(図示せず)が充電されると共に、外部負荷に電力が供給される。また、蓋6の長手方向(X方向)の中央部には、ガス排出弁10が一体的に設けられている。ガス排出弁10は、蓋6の一部を薄肉化してスリット状の溝を形成することによって形成されている。何らかの異常により電池セル20内の圧力が上昇して所定圧力を超えると、ガス排出弁10が開裂して電池セル20の内部からガスが排出される。これにより、電池セル20内の圧力が低減され、電池セル20の安全性が確保される。また、蓋6には、注液栓11が溶接されていて、電池ケース1内に電解液を注入するための注液口9が封止されている。
【0029】
隣接する2つの電池セル20のうちの一方の電池セル20の正極外部端子8Aと他方の電池セル20の負極外部端子8Bとが積層方向に隣り合うように、複数の電池セル20が交互に反転させて積層配置されることによって、電池積層体31が構成されている。
【0030】
エンドプレート36は、金属製の板状の部材である。
図2に示すように、エンドプレート36の上面は、バスバーホルダ33の上面と同じ、又は少しだけ高くなるように配置されている。エンドプレート36の上面には、補強部材40を固定するためのネジ穴が形成されている。エンドプレート36の下面には、筐体本体71の底面部71aに固定するためのネジ穴が形成されている。
【0031】
中間プレート37は、金属製の板状の部材である。中間プレート37の上面は、バスバーホルダ33の上面と同じ、又は少しだけ高くなるように配置されている。中間プレート37の上面には、補強部材40を固定するためのネジ穴が形成されている。中間プレート37のY方向の両面には、サイドプレート38を固定するためのネジ穴が形成されている。中間プレート37の下面には、筐体本体71の底面部71aに固定するためのネジ穴が形成されている。
【0032】
サイドプレート38は、金属製の板状の部材である。サイドプレート38のY方向の端面には、エンドプレート36を固定するためのネジ穴が形成されている。サイドプレート38の下面には、筐体本体71の底面部71aに固定するためのネジ穴が形成されている。
【0033】
バスバー32は、導電性を有する金属製の板状の部材であり、隣接する電池セル20の正極外部端子8Aと負極外部端子8Bとを電気的に接続するように溶接されている。これにより、複数の電池セル20は直列接続されている。
【0034】
バスバーホルダ33は、複数の電池セル20のガス排出弁10を覆うように配置されている。バスバーホルダ33は、複数のバスバー32が取り付けられるホルダ本体34と、複数のバスバー32を覆うようにホルダ本体34に取り付けられるホルダカバー35とを含んでいる。
【0035】
ホルダ本体34は、例えばPP(ポリプロピレン)等の電気的絶縁性を有する樹脂製の部材であり、板状または枠状に形成されている。ホルダカバー35とホルダ本体34との間には、空間S33が形成されており、後述する構成を採用することにより、この空間S33にガス排出弁10から排出されたガスをより好適に流すことができる。より具体的には、ホルダ本体34は、電池セル20の蓋6に対向配置され複数のバスバー32が取り付けられる底面部34aと、底面部34aの周縁から立設する4つの側壁34bとを含んでいる。底面部34aには、バスバー32の下方に位置する部分に、電池セル20の正極外部端子8Aおよび負極外部端子8Bが挿通される開口部(図示せず)が形成されている。底面部34aの長手方向(Y方向)の中央部には、中間プレート37が挿入される挿入穴34cが形成されている。底面部34aの電池セル20のガス排出弁10に対向する位置には、ガス排出弁10から排出されたガスが通過する開口部34dが形成されている。このように構成することにより、ガス排出弁10から排出されたガスは、ホルダ本体34に形成された開口部34dを通過し、空間S33に流入する。
【0036】
また、ホルダ本体34のX方向の一方側においてY方向の両端部には、バスバー32に電気的に接続された端子片39が設けられている。この端子片39は、複数のバスバー32のうちのY方向の一端および他端に配置されるバスバー32と電装ユニット50の端子とを電気的に接続している。
【0037】
ホルダカバー35は、例えばPP(ポリプロピレン)等の電気的絶縁性を有する樹脂製の部材であり、板状に形成されている。ホルダカバー35は、バスバー32と補強部材40とを電気的に絶縁する。ホルダカバー35は、上面部35aと、上面部35aの周縁から下方に延びる4つの側壁35bとを含んでいる。上面部35aの長手方向(Y方向)の中央部には、中間プレート37が挿入される挿入穴35cが形成されている。
【0038】
ここで、ホルダカバー35のX方向の一方側に配置される側壁35bのY方向の両端部には、切り欠き35dが形成されている。この切り欠き35dは、ホルダカバー35をホルダ本体34に取り付けた状態で、端子片39との間に隙間を有する大きさに形成されている。このため、ガス排出弁10から排出されバスバーホルダ33の空間S33に流入したガスは、切り欠き35dを通過してX方向の一方側に流出する。すなわち、切り欠き35dは、空間S33内のガスを第2収容空間70b側に導く案内部として機能する。なお、空間S33内のガスを第2収容空間70b側に導く案内部としては、切り欠き35dに限定されるものではない。例えば、ホルダカバー35のX方向の一方側に配置される側壁35bに開口部を形成してもよいし、ホルダカバー35のX方向の一方側に側壁35bを設けなくてもよい。これらの場合にも、空間S33内のガスを第2収容空間70b側に導くことができる。
【0039】
ホルダカバー35に、ガス排出弁10から排出されたガスを第2収容空間70b側に導く切り欠き35dを設けることによって、電池セル20から高温のガスが排出された場合に、高温のガスが空間S33から切り欠き35dに案内される。このため、他の電池セル20に対向する開口部34dを介して他の電池セル20に流れることが抑制されるので、他の電池セル20が高温になるのを抑制することができる。これにより、熱により他の電池セル20に異常が誘発されるのを抑制することができる。
【0040】
また、バスバーホルダ33と筐体70の蓋体72との間には、バスバーホルダ33を覆う補強部材40が設けられている。補強部材40は、例えば亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料によって構成された板状の部材である。補強部材40は、バスバーホルダ33を挟んで電池セル20の蓋6に対向するように配置されている。補強部材40は、電池積層体31の長手方向(Y方向)の一端から他端まで延びるとともに、電池積層体31の短手方向(X方向)の一端から他端まで延びるように形成されている。
【0041】
補強部材40は、複数のネジ41を用いてエンドプレート36および中間プレート37に固定されている。補強部材40は、板金により形成されているとともに、Y方向に延びる溝40aが複数形成されている。このため、ガス排出弁10から排出されバスバーホルダ33の空間S33に流入したガスが、ホルダカバー35の挿入穴35cの縁と中間プレート37との隙間から流出した場合、ガスは補強部材40に当たり冷却されながらY方向に流れる。このため、高温のガスが筐体70の樹脂製の蓋体72に直接当たることがないので、熱により蓋体72が変形等するのを抑制することができる。また、ガスは補強部材40の長手方向(Y方向)に沿って流れるので、ガスに対する補強部材40の冷却時間および冷却面積を確保することができ、高温のガスを効率良く冷却することができる。
【0042】
図1に示すように、筐体70の第2収容空間70bに配置される電装ユニット50は、複数の電池セル20を制御する制御基板、リレーおよびヒューズなどの電装品と、電装品を収容する電装ホルダとによって構成されている。電装ホルダは、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の電気的絶縁性を有する樹脂製の部材である。電装ユニット50は、略直方体形状に形成されているとともに、Y方向に沿って延びるように配置されている。
【0043】
電装ユニット50の長手方向(Y方向)の両端部には、正極および負極の入出力端子101が設けられている。正極の入出力端子101は、例えば電装ユニット50の電装品を介して、電池セル20の正極外部端子8Aに接続された端子片39に電気的に接続されている。負極の入出力端子101は、例えば電装ユニット50の電装品を介して、電池セル20の負極外部端子8Bに接続された端子片39に電気的に接続されている。
【0044】
ここで、本実施形態では、筐体70には、第2収容空間70bと筐体70の外部とを連通するダクト80が設けられている。ダクト80は、筐体70内のガスを筐体70の外部に排出するために設けられている。ダクト80は、筐体70のうちの第2収容空間70bを形成する部分(ここでは、蓋体72の側壁72b)に設けられている。
【0045】
ダクト80を筐体70のうちの第2収容空間70bを形成する部分に設けることによって、第1収容空間70aで発生したガスは、第2収容空間70bを介してダクト80のガス通路(通路)80aを通過する。特に、第1収容空間70aは、電池セル20の発熱により、電装ユニット50が収容された第2収容空間70bよりも高温になりやすく、第1収容空間70aのガスは、低温である第2収容空間70bに流れやすい。このような結果、ガス排出弁10から排出された第1収容空間70a内のガスが、第1収容空間70a内に滞留して、他の電池セル20に流れるのをより抑制することができる。なお、ダクト80は、筐体70のうちの第2収容空間70bを形成する部分であれば、蓋体72の他の位置に設けられていてもよいし、筐体本体71に設けられていてもよい。
【0046】
図4に示すように、ダクト80は、蓋体72の側壁72bから外側に向かって突出する筒状に形成されている。ダクト80の内部には、筐体70の内部空間(ここでは第2収容空間70b)に繋がるガス通路(通路)80aが形成されている。ダクト80は、本実施形態では樹脂製の筐体70の蓋体72に一体成形されているが、蓋体72に取り付けられたものであってもよい。また、ダクト80の先端(下流端)には、フィルタ(閉塞部材)91と、保持部材92と、パイプ95とが設けられている。パイプ95は、ダクト80から例えば車室の下方位置などの車両の外部にまで延在している。これにより、電池パック100が車両の何れの位置に配置されていたとしても、パイプ95により電池パック100から排出されたガスを車両の外部に放出することができる。このため、ダクト80やパイプ95が設けられていない場合と異なり、電池パック100が車室内に配置されていたとしても、電池パック100内のガスが車室内に放出されるのを防止することができる。このため、電池パック100を車室内に配置することができる。
【0047】
ダクト80には、ガス通路80aを閉塞することが可能なフィルタ91が設けられている。フィルタ91は、ガス透過性を有さず、透湿性および防水性を有する例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料からなる円形状のシートによって構成されている。フィルタ91は、ガス通路80aを閉塞し、電池セル20のガス排出弁10から排出されたガスを筐体70内に密封する。また、フィルタ91は、外部から異物や水が電池パック100に浸入するのを防止する。なお、ここでは、本発明の閉塞部材として、ガス透過性を有さず、透湿性および防水性を有するフィルタを用いる例について示したが、閉塞部材の材質は、少なくともガス透過性を有していなければよく、特に限定されるものではない。
【0048】
ダクト80には、フィルタ91の縁部に係合する係合凹部81がダクト80の内周面に沿って1周にわたって形成されている。係合凹部81は、フィルタ91の第2収容空間70b側の一方面91aの縁部に対向する第1保持面81aと、フィルタ91の外周面に対向配置される内周面81bとを有する。以下、第2収容空間70b側(ダクト80のガス流入側)を「上流側」、第2収容空間70bとは反対側(ダクト80のガス排出側)を「下流側」ともいう。
【0049】
保持部材92は、ダクト80の先端(下流端)に固定部材(図示せず)を用いて固定されている。保持部材92は、フィルタ91の下流側の他方面91bの縁部に対向する第2保持面92aを有する。フィルタ91は、第1保持面81aと第2保持面92aとの間に縁部が挟み込まれた状態で、ダクト80および保持部材92に保持されている。
【0050】
また、第2保持面92aとダクト80の第1保持面81aとの間の距離は、フィルタ91の厚みよりも大きい。そこで、フィルタ91の上流側には、クッションとしての機能を有する不織布93が配置されている。この不織布93がフィルタ91を保持部材92側に付勢(押す)ことにより、フィルタ91は他方面91bが保持部材92に密着した状態で保持されるので、電池パック100の密封性が保持される。また、フィルタ91の縁部が第2保持面92aと第1保持面81aとによって挟持(固定)されることもない。なお、不織布93に替えて、フィルタ91を保持部材92側に付勢する(密着させる)他の付勢部材を設けることも可能である。また、フィルタ91の上流側に不織布93や付勢部材を設けない構成としてもよい。この場合、第2保持面92aとダクト80の第1保持面81aとの間の距離は、フィルタ91の厚みよりもわずかに大きく設定される。この場合にも、電池パック100内のガス圧が上昇することにより、フィルタ91は保持部材92側に移動して保持部材92に密着し、ガス圧によりその密着状態が保持される。
【0051】
保持部材92の中心部には、第2保持面92aが環状になるように保持部材92を厚み方向に貫通する貫通穴92bが形成されている。
図5に示すように、保持部材92は、下流側から見て、貫通穴92bの縁部がフィルタ91の縁部の全周にわたって重なる(係合する)ように形成されている。
【0052】
ここで、電池積層体31を構成する電池セル20に何らかの異常が発生し、電池セル20の内圧が所定の圧力を超えると、ガス排出弁10が開裂してガスが筐体70内に排出される。例えば、常用温度の1つの電池セル20からガスが排出された場合、電池パック100内のガス圧およびダクト80内のガス圧は上昇するが、フィルタ91は保持部材92に密着した状態で保持され、電池パック100内の密封状態が維持される。
【0053】
その一方、何らかの異常により例えば高温になった電池セル20からガスが大量に排出されると、筐体70内のガス圧は急激に上昇する。そして、第2収容空間70b(筐体70)内のガス圧が筐体70の外部の大気圧に対して所定値以上になると、フィルタ91は、ガス圧に起因して撓みが大きくなり、保持部材92の貫通穴92bに入り込んだ状態(
図4の2点鎖線参照)、又は保持部材92から外れて貫通穴92bを通過する。これにより、ガス通路80aが開通されるので、電池パック100内のガスがパイプ95を介して車両の外部に放出される。このため、第2収容空間70bのガス圧と筐体70の外部の大気圧との差圧が所定値(以下、限界圧ともいう)よりも大きくなるのを防止することができる。なお、以下では、第2収容空間70bのガス圧と筐体70の外部の大気圧との差圧を単に「差圧」という場合がある。
【0054】
上述したように、フィルタ91の上流側には、クッションとして機能する不織布93が配置されている。すなわち、フィルタ91は、第1保持面81aと第2保持面92aとによって強固に挟持されていない。このため、フィルタ91がガス通路80aを開通する差圧(限界圧)、すなわちフィルタ91の係合状態が解除される差圧(限界圧)は、フィルタ91の屈曲性と、フィルタ91を保持する構造(ここでは、保持部材92の貫通穴92bの穴径)とによって設定可能である。
【0055】
フィルタ91がガス通路80aを開通する限界圧は、電池パック100が破損しない限り、できるだけ高い方が望ましい。限界圧を高くするほど、電池パック100内に溜めることができるガス量が多くなるためである。ここで、蓋体72を構成する樹脂の応力-ひずみ曲線は、例えば
図6に示すようになっており、引張破壊応力よりも引張降伏応力の方が高くなっている。そこで、本実施形態では、限界圧は、蓋体72の引張破壊応力以上、引張降伏応力未満に設定される。限界圧が引張降伏応力未満に設定されることにより、電池パック100がガス圧で破損する前にフィルタ91が外れてガス通路80aが開通されるので、電池パック100の破損を防止することができる。また、限界圧が引張破壊応力以上に設定されることにより、低いガス圧でフィルタ91が外れてガス通路80aが開通するのを防止することができる。
【0056】
また、
図7に示すように、充電率(SOC:State Of Charge)が常用範囲(例えば30%以上70%以下の範囲)の1つの電池セル20からガスが排出された場合、排出されるガスは少量のため、電池パック100内のガス圧は低く、差圧は限界圧未満である。
【0057】
その一方、充電率が常用範囲を超えた1つの電池セル20からガスが大量に排出された場合、電池パック100内のガス圧は、筐体70の外部の気圧に対して所定値以上になる。すなわち、差圧は限界圧以上になる。また、充電率が常用範囲であっても複数の電池セル20からガスが排出された場合、電池パック100内のガス圧は、筐体70の外部の気圧に対して所定値以上になる。すなわち、差圧は限界圧以上になる。限界圧をこのように設定することによって、電池パック100内のガス圧が大きく上昇して差圧が大きくなった際に、ガス通路80aを確実に開通し、電池パック100の破損を確実に防止することができる。
【0058】
本実施形態では、上記のように、電池セル20のガス排出弁10から排出されたガスは第1収容空間70aに放出され、筐体70内全体(第1収容空間70aおよび第2収容空間70b)に溜められる。これにより、上記特許文献1のように電池パック内に設けられる排出経路部にガスを溜める場合に比べて、ガスを溜める容積が大きいので、電池セル20からガスが排出された場合における電池パック100内のガス圧の上昇を小さくすることができる。このため、筐体70内のガス圧が筐体70の外部の大気圧に対して所定値以上になるのを抑制することができるので、より多くのガスを筐体70内に溜めることができる。なお、本実施形態では、電池パック100内を区画するような排出経路部を設けていないので、電池パック100の小型化を図ることができる。
【0059】
また、ダクト80を筐体70のうちの第2収容空間70bを形成する部分に設けることによって、ダクト80を介してガスが筐体70の外部に排出される際に、第2収容空間70bが負圧になる。このため、ガス排出弁10から排出された第1収容空間70a内のガスは第2収容空間70bに流れやすくなるので、高温のガスが他の電池セル20に流れるのを抑制することができる。
【0060】
また、ダクト80には、第2収容空間70bのガス圧が筐体70の外部の大気圧に対して所定値以上になったときに、ダクト80のガス通路80aを開通させるフィルタ91を設けている。これにより、電池セル20に異常が発生して電池セル20から大量のガスが排出された場合であっても、ガス通路80aを開通し、電池パック100の破損を確実に防止することができる。
【0061】
なお、電池セル20のガス排出弁10から排出されたガスは、主としてガス溜め部(第2収容空間70b内の隙間)に溜まる。ガス溜め部は、電池モジュール30から所定間隔をおいて設けられているので、電池セル20から排出された高温のガスに起因して、他の電池セル20の温度が上昇するのをより抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電池パック100では
図8に示すように、ダクト80のフィルタ91に対して上流側の部分には、フィルタ91の縁部を保持する係合突起82がダクト80の内周面に沿って1周にわたって形成されている。なお、係合突起82は、フィルタ91を保持することが可能であれば、フィルタ91を複数箇所(部分的に)保持するように設けられていてもよい。係合突起82は、フィルタ91の一方面91aの縁部に対向する第1保持面82aと、第1保持面82aの内側端部からダクト80の内面に延びる傾斜面(絞り部)82bとを有する。傾斜面82bは、上流側(第2収容空間70b側)から下流側(第2収容空間70bとは反対側)に向かって内径が小さくなるように形成されている。これにより、ガス通路80aの断面積は、下流側に向かって小さくなっている。
【0063】
本実施形態では、上記のように、ダクト80のフィルタ91に対して上流側の部分において、フィルタ91に近接した位置には、ガス通路80aの断面を絞る傾斜面82bが形成されている。これにより、電池セル20のガス排出弁10から大量のガスが排出された場合、ガス通路80a内にガスが流れ込むが、このとき、傾斜面82bによってガス通路80aの断面積が小さくなっているため、傾斜面82bの内側を通過するガスの流速が速くなる。このため、フィルタ91に対する風圧(ガス圧)が高くなる。また、フィルタ91の中心部に集中的にガス圧がかかる。これらにより、電池セル20のガス排出弁10から大量のガスが排出され、電池パック100内のガス圧が急激に上昇した場合に、フィルタ91が外れやすくなるので、電池パック100内のガスを確実に車両の外部に放出することができる。
【0064】
第2実施形態のその他の構成および効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る電池パック100では
図9に示すように、保持部材92の第2保持面92aの所定位置には、第1保持面82aに向かって突出する突起部92cが形成されている。この突起部92cと第1保持面82aとによって、フィルタ91および不織布93が挟持されている。突起部92cは、第2保持面92aに例えば1つだけ設けられており、フィルタ91および不織布93の一部のみを挟持している。これにより、ガス圧によってフィルタ91の係合状態が解除された場合に、フィルタ91がパイプ95内に飛翔するのを抑制することができるので、フィルタ91がパイプ95内に貼り付いたり、パイプ95内を塞いだりするのを抑制することができる。
【0066】
また、突起部92cは、第1保持面82aから所定距離を隔てて配置されている。突起部92cと第1保持面82aとの間の距離は、例えばフィルタ91の厚みよりも小さく形成されている。これにより、突起部92cと第1保持面82aとによって、フィルタ91を確実に挟持することができる。
【0067】
突起部92cの数は特に限定されるものではないが、フィルタ91を強固に保持するために、例えばフィルタ91の周縁を全周にわたって挟持するように突起部92cを複数個形成すると、差圧が限界圧以上に上昇した場合であってもフィルタ91が外れなくなってしまう。このため、差圧によってフィルタ91の係合状態を確実に解除するためには、突起部92cは、フィルタ91の一部のみを挟持するように構成されている必要がある。
【0068】
なお、ここでは突起部92cを第2保持面92aに設ける例について示したが、第2保持面92aに向かって突出する突起部を第1保持面82aに設けてもよいし、第1保持面82aおよび第2保持面92aの両方に突起部を設けてもよい。
【0069】
第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0070】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る電池パック100では
図10に示すように、保持部材92の第2保持面92aの所定位置には、第1保持面82aに向かって突出する突起部92dが形成されている。第1保持面82aには、突起部92dに対応する位置に凹部82cが形成されている。本実施形態の突起部92dは、上記第3実施形態の突起部92cよりも突出量が大きく、第1保持面82aの凹部82c内に入り込むように形成されている。
【0071】
本実施形態では、突起部92dおよび凹部82cを設けることによって、フィルタ91および不織布93はフィルタ91により貫通された状態で保持される。これにより、ガス圧によってフィルタ91の係合状態が解除された場合に、フィルタ91がパイプ95内に飛翔するのをより抑制することができるので、フィルタ91がパイプ95内に貼り付いたり、パイプ95内を塞いだりするのをより抑制することができる。
【0072】
なお、ここでは突起部92dを第2保持面92aに設け、凹部82cを第1保持面82aに設ける例について示したが、突起部を第1保持面82aに設け、凹部を第2保持面92aに設けてもよい。
【0073】
第4実施形態のその他の構成および効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0074】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係る電池パック100では
図11に示すように、保持部材92の中心部に形成された貫通穴92bは、下流側から見て、楕円形状に形成されている。これにより、フィルタ91の縁部のうち貫通穴92bの長軸に対応する部分91cは、フィルタ91の縁部のうち貫通穴92bの短軸に対応する部分91dに比べて、保持部材92に接触(係合)する幅(貫通穴92bの周縁からフィルタ91の周縁までの距離)が小さくなる。このため、ガス排出時に、フィルタ91の部分91cが他の部分よりも保持部材92から外れやすくなるので、より確実にガス通路80aを開通させることができる。なお、貫通穴92bの周縁からフィルタ91の周縁までの距離とは、貫通穴92bの周縁のある位置からフィルタ91の周縁の最短位置までの距離のことである。
【0075】
図11では、フィルタ91の保持部材92に対して係合する幅を上下方向(短軸方向)および左右方向(長軸方向)に対称にする例について示したが、上下方向または左右方向に非対称にしてもよい。また、例えば
図12に示す第5実施形態の変形例のように、保持部材92に、貫通穴92bの内側に向かって突出する突部92eを部分的に設けてもよい。
図11および
図12に示すように、保持部材92の第2保持面92a(
図4参照)のフィルタ91の縁部に係合する幅を、貫通穴92bの周方向に沿って変化させる(一定でない)ことによって、フィルタ91は、保持部材92に対して部分的に外れやすくなるので、より確実にガス通路80aを開通させることができる。また、保持部材92のフィルタ91に係合する幅や位置を変化させることによって、フィルタ91の作動圧(外れる圧力)をコントロールしやすくなる。
【0076】
第5実施形態のその他の構成および効果は、上記第1~第4実施形態と同様である。
【0077】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態に係る電池パック100では
図13に示すように、ダクト80のフィルタ91に対して上流側の部分には、フィルタ91の縁部に係合する係合突起83がダクト80の内周面に沿って1周にわたって形成されている。なお、係合突起83は、フィルタ91を保持することが可能であれば、フィルタ91を複数箇所(部分的に)保持するように設けられていてもよい。係合突起83は、フィルタ91の一方面91aの縁部に対向する第1保持面83aと、第1保持面83aの内側端部から上流側に向かって延びる内面83bと、内面83bの上流側の端部からダクト80の内面に延びる傾斜面(絞り部)83cとを有する。第1保持面83aおよび傾斜面83cは、ダクト80の内面から下流側に向かって内側に傾斜するように形成されている。
【0078】
保持部材92には、第1保持面83aに対向配置され、第1保持面83aとの間でフィルタ91および不織布93を保持する第2保持面92fを有する突起部92gが設けられている。第2保持面92fは、第1保持面83aに対して平行に形成されている。
【0079】
第1保持面83aおよび第2保持面92fが、ダクト80の内面に対して傾斜して形成されているため、フィルタ91および不織布93は、中心部が下流側に向かって凸状になるように撓んだ状態で、第1保持面83aおよび第2保持面92fに保持されている。
【0080】
本実施形態では、上記のように、フィルタ91は、ダクト80の内面から下流側に向かって内側に傾斜する第1保持面83aおよび傾斜面83cによって保持されている。これにより、フィルタ91にガス圧がかかった場合にフィルタ91が移動する方向(下流方向)と、フィルタ91が第1保持面83aおよび傾斜面83cの間から抜け出る方向(下流方向)とが一致する。このため、フィルタ91にガス圧がかかった場合に、フィルタ91が保持部材92からより外れやすくなるので、より確実にガス通路80aを開通させることができる。
【0081】
第6実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0083】
例えば、上記実施形態では、電池セル20が二次電池からなる場合について示したが、本発明はこれに限らず、電池セル20は二次電池以外の電池であってもよい。
【0084】
また、上述した実施形態および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記第6実施形態の第2保持面92fまたは第1保持面83aに突起部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 ガス排出弁
20 電池セル
30 電池モジュール
33 バスバーホルダ(カバー部材)
35d 切り欠き(案内部)
40 補強部材(金属プレート)
50 電装ユニット
70 筐体
70b 第2収容空間
71 筐体本体
72 蓋体
80 ダクト
80a ガス通路(通路)
81a、82a、83a 第1保持面
82b、83c 傾斜面(絞り部)
82c 凹部
91 フィルタ(閉塞部材)
92 保持部材
92a、92f 第2保持面
92b 貫通穴
92c、92d 突起部
100 電池パック