(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】バラン回路構造及びバラン
(51)【国際特許分類】
H03H 7/42 20060101AFI20230501BHJP
【FI】
H03H7/42
(21)【出願番号】P 2021545296
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2021076221
(87)【国際公開番号】W WO2021164647
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】202010102858.4
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521341570
【氏名又は名称】アンホイ アヌキ テクノロジーズ カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ズオ,チェンジー
(72)【発明者】
【氏名】へ,ジュン
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/086920(WO,A1)
【文献】特開平09-260145(JP,A)
【文献】特開2006-094462(JP,A)
【文献】国際公開第2009/005079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H7/30-H03H7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不平衡端子と、第1平衡端子と、第2平衡端子と、接地電源端子とを含む接続端子と、
第1インダクタと、第2インダクタとを有し、該第1インダクタの第1端子が該第2インダクタの第1端子と接続し、該第1インダクタの第2端子が前記不平衡端子と接続し、該第2インダクタの第2端子が開放端子であるように構成される不平衡ユニットと、
第3インダクタと、第4インダクタとを有し、該第3インダクタの第1端子及び該第4インダクタの第1端子が前記接地電源端子と接続し、該第3インダクタの第2端子が前記第1平衡端子と接続し、該第4インダクタの第2端子が前記第2平衡端子と接続するように構成される平衡ユニットと、を備え、
前記第1インダクタ、前記第2インダクタ、前記第3インダクタ及び前記第4インダクタがそれぞれ異なる平面内に位置し、該第1インダクタと該第3インダクタとが結合され、該第2インダクタと該第4インダクタとが結合され
、
前記第1インダクタと前記第3インダクタとが対応して設置され、該第1インダクタの長さと該第3インダクタの長さとが異なり、
前記第2インダクタと前記第4インダクタとが対応して設置され、該第2インダクタの長さと該第4インダクタの長さとが異なり、
前記第1インダクタの長さが前記第3インダクタの長さより大きく、
前記第2インダクタの長さが前記第4インダクタの長さより大きい
ことを特徴とするバラン回路構造。
【請求項2】
前記第1インダクタの、前記第3インダクタが位置する平面内の投影は、少なくとも一部が前記第3インダクタと重なり合わず、及び/又は、
前記第2インダクタの、前記第4インダクタが位置する平面内の投影は、少なくとも一部が前記第4インダクタと重なり合わない
ことを特徴とする請求項1に記載のバラン回路構造。
【請求項3】
前記第1インダクタ及び前記第3インダクタが平面螺旋状構造であり、
前記第1インダクタの、前記第3インダクタが位置する平面内の投影は、第1方向において少なくとも一部が該第3インダクタと重なり合わず、該第1方向が、該第1インダクタの前記不平衡端子と接続した部分の幅方向と、該第3インダクタの前記第1平衡端子と接続した部分の幅方向と同じ方向である
ことを特徴とする請求項
2に記載のバラン回路構造。
【請求項4】
前記第2インダクタ及び前記第4インダクタが平面螺旋状構造であり、
前記第2インダクタの、前記第4インダクタが位置する平面内の投影は、第2方向において少なくとも一部が該第4インダクタと重なり合わず、該第2方向が、該第4インダクタの前記第2平衡端子と接続した部分の幅方向と同じ方向である
ことを特徴とする請求項
2に記載のバラン回路構造。
【請求項5】
前記不平衡ユニットと前記平衡ユニットとが平行に設置され、
前記不平衡ユニット及び前記平衡ユニットに垂直な方向において、該不平衡ユニットの投影と該平衡ユニットの投影とは、少なくとも一部が重なり合う
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のバラン回路構造。
【請求項6】
前記第1インダクタが前記第2インダクタ、前記第3インダクタ及び前記第4インダクタに平行であり、
前記第1インダクタに垂直な方向において、前記第1インダクタと前記第3インダクタとが隣接して設置され、前記第2インダクタと前記第4インダクタとが隣接して設置される
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のバラン回路構造。
【請求項7】
前記第1インダクタと前記第3インダクタとの距離と、前記第2インダクタと前記第4インダクタとの距離とは同じである
ことを特徴とする請求項
6に記載のバラン回路構造。
【請求項8】
前記第1インダクタに垂直な方向において、前記第1インダクタと前記第3インダクタとを1つの構成として見なし、且つ前記第2インダクタと前記第4インダクタとを1つの構成として見なす場合、この2つの構成が間隔をあけて設置されるものである
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載のバラン回路構造。
【請求項9】
複数の回路基板と、
前記複数の回路基板に設置される、請求項1~
8のいずれか1項に記載のバラン回路構造と
を備えることを特徴とするバラン。
【請求項10】
前記バラン回路構造の異なる部分がそれぞれ前記複数の回路基板の異なる回路基板に設置される
ことを特徴とする請求項
9に記載のバラン。
【請求項11】
前記複数の回路基板は互いに間隔をあけて設置されるとともにそれぞれ異なる平面内に位置することにより、前記バラン回路構造の異なる部分がそれぞれ異なる平面内に位置する
ことを特徴とする請求項
10に記載のバラン。
【請求項12】
収容空間を有するパッケージ構造をさらに備え、前記バラン回路構造が前記回路基板に設置された状態で、前記パッケージ構造の収容空間により前記バラン回路構造及び前記回路基板に対してパッケージ処理が行われた
ことを特徴とする請求項
9~
11のいずれか1項に記載のバラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子回路の技術分野に属し、具体的に、バラン回路構造及びバランに関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2020年2月19日に中国専利局に提出された、出願番号が202010102858.4であり、名称が「バラン回路構造及びバラン」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
バラン回路は、平衡―不平衡変換回路とも呼ばれ、一般的に、平衡端子、不平衡端子及び複数のインダクタ素子を備える。発明者の研究により、従来のバラン回路は、複数のインダクタ素子を有するため、集積化の過程において、効果的に小型化させることが困難であった問題があるため、空間占有面積が比較的に大きい。
【発明の概要】
【0004】
上記の事情に鑑みて、本出願は、従来のバラン回路が効果的に小型化することが困難であった問題を改善できるバラン回路構造及びバランを提供する。
【0005】
本出願は、下記の技術案を採用する。
【0006】
バラン回路構造は、不平衡端子と、第1平衡端子と、第2平衡端子と、接地電源端子とを含む接続端子と、第1インダクタと、第2インダクタとを有し、該第1インダクタの第1端子が該第2インダクタの第1端子と接続し、該第1インダクタの第2端子が前記不平衡端子と接続し、該第2インダクタの第2端子が開放端子であるように構成される不平衡ユニットと、第3インダクタと、第4インダクタとを有し、該第3インダクタの第1端子及び該第4インダクタの第1端子が前記接地電源端子と接続し、該第3インダクタの第2端子が前記第1平衡端子と接続し、該第4インダクタの第2端子が前記第2平衡端子と接続するように構成される平衡ユニットと、を備え、前記第1インダクタ、前記第2インダクタ、前記第3インダクタ及び前記第4インダクタがそれぞれ異なる平面内に位置し、該第1インダクタと該第3インダクタとが結合され、該第2インダクタと該第4インダクタとが結合される。
【0007】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第1インダクタと前記第3インダクタとが対応して設置され、該第1インダクタの長さと該第3インダクタの長さとが異なり、及び/又は、前記第2インダクタと前記第4インダクタとが対応して設置され、該第2インダクタの長さと該第4インダクタの長さとが異なる。
【0008】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第1インダクタの長さが前記第3インダクタの長さより大きい。
【0009】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第2インダクタの長さが前記第4インダクタの長さより大きい。
【0010】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第1インダクタの、前記第3インダクタが位置する平面内の投影は、少なくとも一部が前記第3インダクタと重なり合わなく、及び/又は、前記第2インダクタの、前記第4インダクタが位置する平面内の投影は、少なくとも一部が前記第4インダクタと重なり合わない。
【0011】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第1インダクタ及び前記第3インダクタが平面螺旋状構造であり、前記第1インダクタの、前記第3インダクタが位置する平面内の投影は、第1方向において少なくとも一部が該第3インダクタと重なり合わなく、該第1方向が、該第1インダクタの前記不平衡端子と接続した部分の幅方向と、該第3インダクタの前記第1平衡端子と接続した部分の幅方向と同じ方向である。
【0012】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第2インダクタ及び前記第4インダクタが平面螺旋状構造であり、前記第2インダクタの、前記第4インダクタが位置する平面内の投影は、第2方向において少なくとも一部が該第4インダクタと重なり合わなく、該第2方向が、該第4インダクタの前記第2平衡端子と接続した部分の幅方向と同じ方向である。
【0013】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記不平衡ユニットと前記平衡ユニットとが平行に設置され、前記不平衡ユニット及び前記平衡ユニットに垂直な方向において、該不平衡ユニットの投影と該平衡ユニットの投影とは、少なくとも一部が重なり合う。
【0014】
任意選択で、上記バラン回路構造において、前記第1インダクタが前記第2インダクタ、前記第3インダクタ及び前記第4インダクタに平行であり、前記第1インダクタに垂直な方向において、前記第1インダクタと前記第3インダクタとが隣接して設置され、前記第2インダクタと前記第4インダクタとが隣接して設置される。
【0015】
任意選択で、前記第1インダクタと前記第3インダクタとの距離と、前記第2インダクタと前記第4インダクタとの距離とが同じである。
【0016】
任意選択で、前記第1インダクタに垂直な方向において、前記第1インダクタと前記第3インダクタとを1つの構成として見なし、且つ前記第2インダクタと前記第4インダクタとを1つの構成として見なす場合、この2つの構成が間隔をあけて設置されるものである。
【0017】
上記をもとに、本出願は、複数の回路基板と、前記複数の回路基板に設置される上記のバラン回路構造と、を備えるバランをさらに提供する。
【0018】
任意選択で、前記バラン回路構造の異なる部分がそれぞれ前記複数の回路基板の異なる回路基板に設置される。
【0019】
任意選択で、前記複数の回路基板は互いに間隔をあけて設置されるとともにそれぞれ異なる平面内に位置することにより、前記バラン回路構造の異なる部分がそれぞれ異なる平面内に位置する。
【0020】
任意選択で、前記バランは、収容空間を有するパッケージ構造をさらに備え、前記バラン回路構造が前記回路基板に設置された状態で、前記パッケージ構造の収容空間により前記バラン回路構造及び前記回路基板に対してパッケージ処理が行われた。
【0021】
本出願の上記の目的、特徴及び利点をより明瞭にするため、以下、例を挙げて、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本出願に係るバラン回路構造の回路原理図である。
【
図3】本出願に係る第1インダクタと、第2インダクタと、第3インダクタと、第4インダクタとの相対位置関係の模式図である。
【
図4】本出願に係る第1平衡端子の信号と第2平衡端子の信号との振幅の一致度の関係の模式図である。
【
図5】本出願に係る第1インダクタと、第2インダクタと、第3インダクタと、第4インダクタとの長さの関係の模式図である。
【
図6】本出願に係る第1インダクタと、第2インダクタと、第3インダクタと、第4インダクタとの異なる長さによる信号損失の模式的効果図である。
【
図7】本出願に係る第1インダクタと第2インダクタとの相対位置関係の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本出願の目的、技術案及び利点をより明瞭にするため、以下、本出願に用いられる図面を参照しながら、本出願における技術案を明瞭且つ完全に説明し、説明される実施形態が本出願の選択可能な実施形態にすぎず、すべての実施形態ではないことは無論である。ここで図面を用いて示した本出願の実施形態における部品は、様々な配置方法で配置、設計することが可能である。
【0024】
このため、本出願において、図面を参照する詳細な説明は、本出願の選択可能な実施形態を示すものにすぎず、保護しようとする本出願の範囲を限定するものではない。本出願の実施形態をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施形態は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0025】
図1に示すように、本出願は、バラン10を提供する。バラン10は、バラン回路構造100と回路基板200とを備える。
【0026】
任意選択で、回路基板200が複数ある。このようにして、バラン回路構造100を複数の回路基板200に設置することができ、例えば、バラン回路構造100の異なる部分をそれぞれ複数の回路基板200の異なる回路基板200に設置する。
【0027】
複数の回路基板200は、互いに間隔をあけて配置されるとともにそれぞれ異なる平面内に位置することにより、バラン回路構造100の異なる部分を異なる平面内に位置させて、バラン10の空間占有面積を減らして、集積化(パッケージ)の過程における小型化処理に寄与できる。
【0028】
任意選択で、複数の回路基板200間の具体的な相対位置関係が限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0029】
例えば、複数の回路基板200は、平行に設置してもよく、異なる回路基板同士が0°でない夾角をなすように非平行に設置してもよい。
【0030】
なお、上記の構成をもとに、応用要求に応じて、バラン10は収容空間を有するパッケージ構造をさらに備えてもよい。このようにして、バラン回路構造100を回路基板200に設置した後、さらにパッケージ構造の収容空間によりバラン回路構造100及び回路基板200に対してパッケージ処理を行うことができる。
【0031】
なお、上記及び下記の説明において、「複数」は、2つ以上を意味し、つまり、2つも含む。
【0032】
図2に示すように、本出願は、上記バラン10に適用できるバラン回路構造100をさらに提供する。バラン回路構造100は、接続端子と、不平衡ユニットと、平衡ユニットとを備える。
【0033】
任意選択で、接続端子は、不平衡端子111と、第1平衡端子112と、第2平衡端子113と、接地電源端子114とを含み、不平衡ユニットが、第1インダクタ121と第2インダクタ122とを有し、平衡ユニットが、第3インダクタ131と第4インダクタ132とを有する。
【0034】
ここで、第1インダクタ121の第1端子が第2インダクタ122の第1端子と接続し、第1インダクタ121の第2端子が不平衡端子111と接続し、第2インダクタ122の第2端子が開放端子である。第3インダクタ131の第1端子及び第4インダクタ132の第1端子が接地電源端子114と接続し、第3インダクタ131の第2端子が第1平衡端子112と接続し、第4インダクタ132の第2端子が第2平衡端子113と接続する。
【0035】
そして、第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ13がそれぞれ異なる平面内に位置し、第1インダクタ121と第3インダクタ131とが結合され、第2インダクタ122と第4インダクタ132とが結合される。
【0036】
上記の設置によれば、第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132がそれぞれ異なる平面内に位置するため、集積化処理の過程において、比較的に小さい空間占有面積を保証できる。このようにして、従来のバラン回路は複数のインダクタ素子が同一の平面内に設置されて効果的に小型化することが困難であった問題を改善できるため、実用価値が高く、例えば、製造コストを抑えることができ、応用環境の空間に大きく制限されないことなどが挙げられる。
【0037】
任意選択で、接続端子とする複数の端子の具体的な用途は限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0038】
例えば、不平衡端子111は、バラン回路構造100の入力端子として、外部設備(例えば、アンテナ)からの第1信号を受信する。このようにして、第1信号が第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132により、例えば第2信号と第3信号との2つの異なる信号に変換された後、第1平衡端子112及び第2平衡端子113がそれぞれ第2信号及び第3信号を他の設備に送信することができ、例えば、第1平衡端子112が第2信号を送信し、第2平衡端子113が第3信号を送信するようにする。
【0039】
また、例えば、第1平衡端子112及び第2平衡端子113は、それぞれバラン回路構造100の第1入力端子及び第2入力端子とされ、それぞれ外部からの第4信号及び第5信号を受信し、例えば、第1平衡端子112が第4信号を取得し、第2平衡端子113が第5信号を取得するようにする。このようにして、第4信号及び第5信号が第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132により第6信号に変換された後、不平衡端子111が該第6信号を他の設備に送信することができる。
【0040】
接地電源端子114の具体的な用途は限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0041】
例えば、第1平衡端子112及び第2平衡端子113に接続された他の設備(例えば、接地電源端子114により給電される増幅器)が、バラン回路構造100を介して電力を取得する必要がある場合、即ち、該バラン回路構造100を介して給電する場合、接地電源端子114は、バラン回路構造100の電源端子として直流電源設備と接続して他の設備に給電することに用いられることができる。
【0042】
また、例えば、第1平衡端子112及び第2平衡端子113に接続された他の設備(例えば、接地電源端子114により給電する必要がない増幅器)が、バラン回路構造100を介して給電する必要がない場合、接地電源端子114は、バラン回路構造100の接地端子として接地に用いられることができる。
【0043】
任意選択で、不平衡ユニットと平衡ユニットとの相対位置関係が限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0044】
例えば、不平衡ユニットと平衡ユニットとは、平行に設置してもよく、0°でない夾角をなすように非平行に設置してもよい。
【0045】
ここで、不平衡ユニットと平衡ユニットとが平行に設置された場合、バラン回路構造100の空間占有面積をさらに減らすように、任意選択で、不平衡ユニット及び平衡ユニットに垂直な方向において、不平衡ユニットの投影と平衡ユニットの投影とは、少なくとも一部が重なり合う。
【0046】
つまり、不平衡ユニット及び平衡ユニットに平行な平面内において、不平衡ユニットの投影と平衡ユニットの投影とは少なくとも一部が重なり合い、即ち、一部又は全部が重なり合う(集積化の過程における空間占有面積に基づいて設定することができる)。
【0047】
そして、上記の不平衡ユニットと平衡ユニットとが平行に設置された場合、任意選択で、
図3に示すように、第1平衡端子112の信号と第2平衡端子113の信号との振幅の一致度を比較的に高くするため、第1インダクタ121が第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132に平行であるようにする。
【0048】
つまり、第1インダクタ121が位置する平面、第2インダクタ122が位置する平面、第3インダクタ131が位置する平面及び第4インダクタ132が位置する平面は、互いに平行に設置される。
【0049】
そして、第1インダクタ121に垂直な方向において、第1インダクタ121と第3インダクタ131とが隣接して設置され、第2インダクタ122と第4インダクタ132とが隣接して設置される。つまり、第1インダクタ121に垂直な方向において、第1インダクタ121と第3インダクタ131とを1つの構成として見なし、第2インダクタ122と第4インダクタ132とを1つの構成として見なす場合、この2つの構造を、間隔をあけて設置する。
【0050】
上記設置によれば、従来技術である「第1インダクタ121と第3インダクタ131とを1つの構成として見なし、第2インダクタ122と第4インダクタ132とを1つの構成として見なす場合、この2つの構造を、間隔を設けずに設置する」の技術案に比べて、第1平衡端子112の信号と第2平衡端子113の信号との振幅の一致度がより良く、
図4に示すように、間隔をあけて設置された場合、3.2GHzに対する振幅偏差が0.763dBから0.569dBに下がり、6GHzに対応する振幅偏差が|-1.26|dBから|-0.67|dBに下がった。
【0051】
なお、第1インダクタ121に垂直な方向において、第1インダクタ121と、第2インダクタ122と、第3インダクタ131と、第4インダクタ132との具体的な位置関係も限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0052】
例えば、第1インダクタ121に垂直な方向において、順に第1インダクタ121、第3インダクタ131、第2インダクタ122及び第4インダクタ132であってもよい。
【0053】
また、例えば、第1インダクタ121に垂直な方向において、順に第3インダクタ131、第1インダクタ121、第4インダクタ132及び第2インダクタ122であってもよい。
【0054】
そして、第1平衡端子112の信号と第2平衡端子113の信号との振幅の一致度をさらに向上させるため、任意選択で、第1インダクタ121が第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132に平行にする案をもとに、第1インダクタ121と第3インダクタ131との距離(
図3に示されたL1)と、第2インダクタ122と第4インダクタ132との距離(
図3に示されたL2)とを同じにする。
【0055】
このようにして、第1インダクタ121と第3インダクタ131との電磁結合距離と、第2インダクタ122と第4インダクタ132との電磁結合距離とを同じにすることができて、第3インダクタ131に接続された第1平衡端子112の信号と、第4インダクタ132に接続された第2平衡端子113の信号との振幅の一致度が比較的に高い。
【0056】
任意選択で、不平衡ユニットの長さと平衡ユニットの長さとの関係も限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0057】
例えば、不平衡ユニットの長さと平衡ユニットの長さとを同じにすることができる。具体的な一応用例において、第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを等しくし、第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを等しくすることができる。
【0058】
また、例えば、本出願の発明者の研究によると、不平衡ユニットと平衡ユニットとを、長さが異なるように設定することで、信号が不平衡ユニット及び平衡ユニットにより変換処理されるときに生じた損失を低減することができる。
【0059】
不平衡ユニットと平衡ユニットとを長さが異なるように設定する具体的な形式も限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0060】
ここで、第1インダクタ121と第3インダクタ131とが対応して設置し、第2インダクタ122と第4インダクタ132とが対応して設置することをもとに、第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとが異なり、及び/又は、第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとが異なるようにする。
【0061】
例えば、第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを異なるように設定し、且つ第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを同じく設定する。
【0062】
また、例えば、第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを同じく設定し、且つ第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを異なるように設定する。
【0063】
また、例えば、第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを異なるように設定し、且つ第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを異なるように設定する。
【0064】
そして、各インダクタ素子の長さを異なって設定する具体的な形式も限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0065】
例えば、第1インダクタ121及び第3インダクタ131について、第1インダクタ121の長さを第3インダクタ131の長さより大きく設定してもよく、第1インダクタ121の長さを第3インダクタ131の長さより小さく設定してもよい。
【0066】
また、例えば、第2インダクタ122及び第4インダクタ132について、第2インダクタ122の長さを第4インダクタ132の長さより大きく設定してもよく、第2インダクタ122の長さを第4インダクタ132の長さより小さく設定してもよい。
【0067】
上記の設置によれば、本出願の発明者の研究によると、「第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを同じく設定し、且つ第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを同じく設定する」構成に比べて、
図5に示すような「第1インダクタ121の長さを第3インダクタ131の長さより大きく設定し、且つ第2インダクタ122の長さを第4インダクタ132の長さより大きく設定する」構成を採用する場合、特定の周波数範囲内で、損失がより低い。
【0068】
図6に示すように、信号の周波数が3.2GHzから6.0GHzまでの範囲において、上記の「第1インダクタ121の長さと第3インダクタ131の長さとを同じく設定し、且つ第2インダクタ122の長さと第4インダクタ132の長さとを同じく設定する」構成を採用した場合、損失が-1.025dB~-1.032dBとなる。上記の「第1インダクタ121の長さを第3インダクタ131の長さより大きく設定し、且つ第2インダクタ122の長さを第4インダクタ132の長さより大きく設定する」構成を採用した場合、損失が-0.821dB~-0.766dBとなり、損失がその前の技術案を採用する場合より顕著に小さくなった。
【0069】
さらに、本出願の発明者の研究によると、不平衡ユニットと平衡ユニットとの重なり合いの度合いが該不平衡ユニットと該平衡ユニットとの結合係数を左右するので、バラン回路構造100の中心動作周波数を左右する。
【0070】
したがって、バラン回路構造100の中心動作周波数に対する異なる要求に応じて、不平衡ユニットと平衡ユニットとの重なり合いの度合いに対して異なって設定することができる。
【0071】
例えば、不平衡ユニットと平衡ユニットとを完全に重なり合うように設置してもよい。
【0072】
また、例えば、バラン回路構造100の中心動作周波数を調整するプロセスの複雑さを低減するため、不平衡ユニットと平衡ユニットとを不完全に重なり合うように設置してもよい。
【0073】
詳細に、第1インダクタ121と第3インダクタ131とが対応して設置し、且つ第2インダクタ122と第4インダクタ132とが対応して設置することをもとに、下記のように設置することができる。
【0074】
第1インダクタ121の、第3インダクタ131が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第3インダクタ131と重なり合わなく、及び/又は、第2インダクタ122の、第4インダクタ132が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第4インダクタ132と重なり合わない。
【0075】
例えば、第1インダクタ121の、第3インダクタ131が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第3インダクタ131と重なり合わなく、且つ、第2インダクタ122の、第4インダクタ132が位置する平面における投影は、第4インダクタ132と完全に重なり合う。
【0076】
また、例えば、第1インダクタ121の、第3インダクタ131が位置する平面における投影は、第3インダクタ131と完全に重なり合い、且つ、第2インダクタ122の、第4インダクタ132が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第4インダクタ132と重なり合わない。
【0077】
また、例えば、第1インダクタ121の、第3インダクタ131が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第3インダクタ131と重なり合わなく、且つ、第2インダクタ122の、第4インダクタ132が位置する平面における投影は、少なくとも一部が第4インダクタ132と重なり合わない。
【0078】
なお、上記に例示した案をもとに、対応して設置された2つのインダクタ素子を重なり合わないように設置する具体的な形式が限定されず、実際の応用要求に応じて選択することができる。
【0079】
例えば、第1インダクタ121及び第3インダクタ131について、第3インダクタ131が位置する平面内の任意方向において、第1インダクタ121の該平面における投影と第3インダクタ131とを重なり合わないように設置する。第2インダクタ122及び第4インダクタ132について、第4インダクタ132が位置する平面内の任意方向において、第2インダクタ122の該平面における投影と第4インダクタ132とを重なり合わないように設置する。
【0080】
また、例えば、重なり合わないように設置することによってバラン回路構造100の空間占有面積が比較的に大きくなる問題を考慮して、第1インダクタ121及び第3インダクタ131について、1つの方向においてだけ重なり合わないように設置してもよく、第2インダクタ122及び第4インダクタ132についても、1つの方向においてだけ重なり合わないように設置してもよい。
【0081】
詳細に、具体的な一応用例において、
図7に示すように、第1インダクタ121及び第3インダクタ131が平面螺旋状構造であり、第2インダクタ122及び第4インダクタ132が平面螺旋状構造である。
【0082】
これをもとに、第1インダクタ121及び第3インダクタ131について、第1インダクタ121の、第3インダクタ131が位置する平面における投影は、第1方向において少なくとも一部が該第3インダクタ131と重なり合わなく、且つ該第1方向が、該第1インダクタ121の不平衡端子111と接続した部分の幅方向と、該第3インダクタ131の第1平衡端子112と接続した部分の幅方向と同じ方向である。
【0083】
第2インダクタ122及び第4インダクタ132について、第2インダクタ122の、第4インダクタ132が位置する平面における投影は、第2方向において少なくとも一部が該第4インダクタ132と重なり合わなく、且つ該第2方向が、該第4インダクタ132の第2平衡端子113と接続した部分の幅方向と同じ方向である。
【0084】
なお、上記構成において、第1方向と第2方向とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0085】
ここで、本実施例において、バラン回路構造100の空間占有面積をより小さくするため、第1方向と第2方向とが同じで方向ある。つまり、第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132は、同じ方式で設置することができる。
【0086】
上記のように、本出願に係るバラン回路構造100及びバラン10は、第1インダクタ121、第2インダクタ122、第3インダクタ131及び第4インダクタ132をそれぞれ異なる平面内に設置することにより、集積化処理の過程において、空間占有面積が比較的に小さい。
【0087】
上記は、本出願の好ましい実施形態にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に対して各種の変更や変化を行ってもよい。本出願の本質及び主旨から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良等も、本出願の保護範囲内に属する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本出願によるバラン回路構造及びバランは、従来のバラン回路は複数のインダクタ素子が同一の平面内に設置されて効果的に小型化することが困難であった問題を改善できるため、実用価値が高く、例えば、製造コストを抑えることができ、応用環境の空間に大きく制限されないことなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0089】
10 バラン
100 バラン回路構造
111 不平衡端子
112 第1平衡端子
113 第2平衡端子
114 接地電源端子
121 第1インダクタ
122 第2インダクタ
131 第3インダクタ
132 第4インダクタ
200 回路基板