(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】ハイドロキノン誘導体を含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/085 20060101AFI20230501BHJP
A61K 31/222 20060101ALI20230501BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230501BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230501BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230501BHJP
【FI】
A61K31/085
A61K31/222
A61P3/04
A61P1/16
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021548485
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 KR2019011664
(87)【国際公開番号】W WO2020085644
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0128434
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521179836
【氏名又は名称】バイオトクステック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOTOXTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】53,Yeongudanji-ro,Ochang-eup Cheongwon-gu,Cheongju-si Chungcheongbuk-do 28115,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジョン グ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソク モ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、フン モ
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256226(JP,A)
【文献】特開平8-67627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 3/04
A61P 1/16
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル又は2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル-4-アセテートを有効成分として含む
ことを特徴とする肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記非アルコール性脂肪肝炎が肥満型非アルコール性脂肪肝炎である
請求項1に記載の肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル又は2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル-4-アセテートを有効成分として含む
ことを特徴とする肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は改善用食品組成物。
【請求項4】
前記非アルコール性脂肪肝炎が肥満型非アルコール性脂肪肝炎である
請求項3に記載の肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロキノン誘導体を含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満とは、エネルギーの摂取と消耗との不釣合いによって体内に脂肪が過剰蓄積し、脂肪組織が異常増加した状態のことを指す。肥満は、特別な原因疾患無しに過多な熱量の摂取や運動不足による単純性肥満と、遺伝的要因、内分泌疾患、視床下部の食欲調節中枢異常と薬剤の副作用によって二次的に誘発される症候性肥満とに分類され、全肥満患者の約95%が単純性肥満である。
【0003】
肥満は、それ自体の危険性よりは、肥満に起因する様々な合併症のため、その深刻性がより一層大きく認識されている。肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病などの代謝症候群、脂肪肝、関節異常、及び癌の発病危険を増加させることが知られている。
【0004】
現在、肥満治療剤の代表には、オルリスタット(Orlistat)を主原料とするゼニカル(登録商標)(ロシュ)、シブトラミンを主原料とするリダクティル(登録商標)(アボット)などが販売されているが、むかつき、下痢、腹痛、不眠症、血圧上昇、脂肪肝などの副作用があるため、副作用が少ないとともに安全な肥満治療剤の開発が要求されている。
【0005】
最近では、肥満人口の増加による代謝症候群の有病率増加に伴って非アルコール性脂肪肝疾患の有病率も増加の一方である。脂肪肝は、上述のように肥満の合併症として誘発されたり、又はその他様々な原因、例えば、アルコール、糖尿、栄養不良症、薬物の乱用などによって誘発されることが報告されているが、組織検査において5%以上の肝組織に脂肪が沈着した場合と定義される。特に、有意なアルコール摂取、脂肪肝を招く薬物の服用、同伴する他の原因による肝疾患などがないのに、映像検査や組織検査から肝内脂肪沈着の所見が見られる疾患を‘非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease,NAFLD)’というが、ここには単純脂肪肝(simple steatosis)と非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis,NASH)が含まれる。単純脂肪肝は比較的良好な予後を示すが、非アルコール性脂肪肝炎はNAFLD患者の10~20%に発病する疾患で、肝内脂肪沈着と共に肝組織損傷を伴う炎症を示し、9~25%の患者において肝硬変症に進行し、その30~40%が肝疾患の合併症によって死亡する致命的な疾病である。
【0006】
非アルコール性脂肪肝炎は、肥満、インスリン耐性などの代謝症候群と密接に関連しているが、まだ、正確な病理機転及び治療方法は知られていない。非アルコール性脂肪肝炎の確定診断は主に組織病理学的検査によってなされ、非アルコール性脂肪肝炎診断の最小限の必須所見としては、脂肪症、肝組織の風船様変性、肝小葉内炎症がある。このような非アルコール性脂肪肝炎を効果的に治療するためには、特に、非アルコール性脂肪肝が脂肪肝炎に進行することを抑えながら脂肪肝炎の炎症を改善させることによって次の段階への進行を抑制することが重要である。さらに、非アルコール性脂肪肝炎に関連したインスリン抵抗性及び内臓脂肪の蓄積などを運動療法又は薬物治療によって減少させることが、治療において非常に重要な管理項目である。
【0007】
非アルコール性脂肪肝炎による社会的費用が増加するにつれて、多くの研究者が治療剤を開発しようと努力してきたが、現在まで非アルコール性脂肪肝疾患に対して臨床的効果が証明された薬物治療はなく、特に、非アルコール性脂肪肝炎の発生や進行を防ぐ治療薬剤は開発されていない。全世界的に非アルコール性脂肪肝炎治療剤として承認された治療剤は皆無であり、患者への安全性と効能を考慮して次善策として選択可能なオフラベル薬物が存在するだけである。インスリン抵抗性改善剤(例えば、PPARs(Peroxisome proliferator-activated receptors) agonists)やファルネソイドX受容体作用剤(Farnesoid X Receptor(FXR) agonist)などが臨床開発中であるが、治療効果が証明された薬物はなく、異常脂質症のような副作用を誘発する薬物もある。また、非アルコール性脂肪肝炎の場合、様々な病態生理が関与するため、通常の抗酸化、抗炎症効能だけでは実際の動物実験、臨床試験において十分な治療効能を奏することができない場合が多い。
【0008】
従来、特定のハイドロキノン誘導体が四塩化炭素(CCl4)誘導肝硬変モデルにおいて肝線維化に対して抑制作用を示し、アセトアミノフェン及びα-ナフチルイソチオシアネート(ANIT)誘発急性肝損傷モデルにおいて肝機能改善効果を示すことが確認されたことがある(特許文献1-2)。しかしながら、上記の先行文献に記載されたハイドロキノン誘導体が肥満、非アルコール性脂肪肝又は非アルコール性脂肪肝炎に直接の効能を示すかどうかについては、上記の先行文献を含めて如何なる文献にも報告されたことがない。
【0009】
本発明者らは、上記ハイドロキノン誘導体が肥満、内臓脂肪の蓄積、又はインスリン抵抗性のような非アルコール性脂肪肝炎の危険因子に対する改善効果を示すことはもとより、組織病理学的に肝組織内脂肪の蓄積及び肝小葉炎症に対する改善に複合的に作用することによって非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療にも効能を有することを発見し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平1996-67627号
【文献】韓国登録特許第10-1042697号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ハイドロキノン誘導体を含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一般式1のハイドロキノン誘導体を有効成分として含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【0013】
[一般式1]
【0014】
【0015】
前記R1は、炭素数4~8のアルキル基、R2は、水素原子、炭素数2~6のアルキルカルボニル基又は炭素数2~6のアルコキシカルボニル基を表す。
【0016】
前記薬学組成物において、一般式1のハイドロキノン誘導体が2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル(化合物1)又は2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル-4-アセテート(化合物2)であることが好ましい。
【0017】
前記薬学組成物において、非アルコール性脂肪肝炎は肥満型非アルコール性脂肪肝炎(obese NASH)であることが好ましい。
【0018】
本発明の他の態様によれば、前記一般式1のハイドロキノン誘導体を有効成分として含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は改善用食品組成物に関する。
【0019】
前記食品組成物において、一般式1のハイドロキノン誘導体が2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル(化合物1)又は2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル-4-アセテート(化合物2)であることが好ましい。
【0020】
前記食品組成物において、非アルコール性脂肪肝炎は肥満型非アルコール性脂肪肝炎であることが好ましい。
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明は、一般式1のハイドロキノン誘導体を有効成分として含む肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療用薬学組成物に関する。
【0023】
[一般式1]
【0024】
【0025】
前記R1は、炭素数4~8のアルキル基、R2は水素原子、炭素数2~6のアルキルカルボニル基又は炭素数2~6のアルコキシカルボニル基を表す。
【0026】
前記R1で表示される炭素数4~8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれのものであってもよく、その例としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種へプチル基、各種オクチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。このアルキル基としては炭素数4~7の直鎖状のものが好ましく、n-ヘキシル基がより好ましい。
【0027】
また、R2のうち、炭素数2~6のアルキルカルボニル基は、直鎖状、分岐状のいずれのものであってもよく、例として、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基などを挙げることができる。また、R2のうち、炭素数2~6のアルコキシカルボニル基は、直鎖状、分岐状のいずれのものであってもよく、例として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0028】
前記薬学組成物において、一般式1のハイドロキノン誘導体が2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル又は2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル-4-アセテートであることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、体重増加又は内臓脂肪の蓄積を抑制して肥満を予防、改善又は治療する効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、特に、肝組織内脂肪の蓄積及び肝小葉炎症を抑制するだけでなく、インスリン抵抗性を改善させ、非アルコール性脂肪肝炎を予防、改善又は治療できる効果がある。本発明は、非アルコール性脂肪肝炎の組織病理学的特徴、すなわち、脂肪症、肝組織の風船様変性及び肝小葉内炎症などを示す全ての非アルコール性脂肪肝炎の治療に適用可能であり、好ましくは、肥満型非アルコール性脂肪肝炎の治療に適用可能である。
【0031】
前記一般式1のハイドロキノン誘導体は非常に安全性の高い化合物であることが確認された。特に、2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテルの場合は、臨床試験において単回投与時に、成人1人につき2000mgまでも異常反応を起こさなかった。14日間反復投与をした場合にも、成人1人につき1日1000mg容量にも異常反応を起こさない、非常に安全性の高い化合物として確認された。したがって、本発明の組成物は、慢性的で且つ長期間の治療を要する肥満又は非アルコール性脂肪肝炎の治療に効果的に利用可能であるという利点がある。
【0032】
本発明の薬学的組成物は経口又は非経口投与でき、好ましくは、経口投与方式で適用される。
【0033】
本発明の薬学的組成物の適当な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々な処方が可能である。一般に、1日の非経口的な投与量は、上述したハイドロキノン誘導体として約0.01~100mg/kg体重であり、好ましくは約0.05~50mg/kg体重である。また、本発明の組成物の経口的投与量は、上述したハイドロキノン誘導体として約0.1~500mg/kg体重であり、好ましくは約0.5~200mg/kg体重であり、これを1~3回に分割して投与することができる。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、従来慣用されている方法によって様々な形態で調製することができる。この場合、一般に、製剤用の担体や賦形剤などの、医薬品の添加剤として許容されている添加剤を用いて製剤化することができる。また、本化合物の生体利用率や安定性を向上させるために、マイクロカプセル、微粉末化、シクロデキストリンなどを用いた包接化などの製剤技術を含む薬物伝達システムを用いることができる。
【0035】
前記組成物を経口投与製剤として利用する場合には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤又は内服用液剤などの形態で用いることができるが、消化管における吸収に適した形態で用いることが好ましい。また、流通性、保存性などの理由によって所望の形態で製剤を提供する場合にも従来の製剤技術を用いることができる。また、非経口投与剤として利用する場合には、注射剤、坐剤、及びテープ、パップ(湿布剤)などの経皮吸収剤などの形態とすることができるが、流通性、保存性などの理由によって固形製剤を使用時に適当な溶剤で溶解して使用することも可能であり、液剤及び半固形剤の形態で提供することも、従来の製剤技術によって可能である。
【0036】
本発明の他の態様によれば、本発明は、有効成分として一般式1のハイドロキノン誘導体を含む食品組成物に関する。
【0037】
本発明の食品組成物は、錠剤やカプセル剤、顆粒剤、シロップ剤などの補充物形態、飲料、菓子、パン、粥、シリアル食品、麺類、ジェリー、スープ、乳製品、調味料、食用油などのいかなる形態で使用することも可能である。また、食品組成物として使用するときには、本発明の有効成分の効能に影響を与えない範囲において別の有効成分や、ビタミン、ミネラル又はアミノ酸などの栄養素などを多様に組み合させることも可能である。本発明の食品組成物から展開される食品には、補充物、健康食品、機能性食品、特定保健用食品などが含まれる。また、本発明の食品組成物の摂取量は、上述したハイドロキノン誘導体として約0.1~500mg/kg体重とすることが好ましく、約0.5~200mg/kg体重とすることがより好ましく、これを1~3回に分割して摂取することが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の組成物は、一般式1のハイドロキノン誘導体を有効成分として含む薬学組成物であり、内臓脂肪の蓄積を抑制し、肥満を予防、改善又は治療できる効果がある。
【0039】
また、本発明の組成物は、特に肝組織内脂肪の蓄積を抑制し、肝小葉炎症を治療する効果があるだけでなく、インスリン抵抗性を改善させて非アルコール性脂肪肝又は非アルコール性脂肪肝炎を予防、改善又は治療できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】FFC食餌(Fat,fructose-and cholesterol-rich diet)給餌モデルにおける肝小葉炎症に対する本発明の化合物1の作用を示す図である。
【
図2】FFC食餌給餌モデルにおける脂肪肝に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図3】FFC食餌給餌モデルにおける非アルコール性脂肪肝疾患活性指数に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図4】MCD食餌(Methionine and choline deficient diet)8週給餌モデルにおける肝小葉炎症に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図5】MCD食餌8週給餌モデルにおける非アルコール性脂肪肝疾患活性指数に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図6】MCD食餌8週給餌モデルにおけるALT数値に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図7】MCD食餌12週給餌モデルにおける肝小葉炎症に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図8】MCD食餌12週給餌モデルにおける非アルコール性脂肪肝疾患活性指数に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図9】高脂肪食餌(High fat diet)給餌モデルにおける動物体重に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図10】高脂肪食餌給餌モデルにおける飼料摂取量に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図11】高脂肪食餌給餌モデルにおける副睾丸脂肪重量に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図12】13週反復毒性試験時に、化合物1の各1日投与容量による体重変化を示す図である。
【
図13】インスリン耐性検査時に、時間による血糖の変化を示す図である。
【
図14】インスリン耐性検査の結果をiAUC値に数値化し、化合物1の処理によるインスリン感受性増加を示す図である。
【
図15】高脂肪食餌給餌モデルにおける肝小葉炎症に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図16】高脂肪食餌給餌モデルにおける非アルコール性脂肪肝疾患活性指数に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図17】高脂肪食餌給餌モデルにおけるALT数値に対する化合物1の作用を示す図である
【
図18】高脂肪食餌給餌モデルにおけるAST数値に対する化合物1の作用を示す図である。
【
図19】高脂肪食餌給餌モデルにおける血中コレステロール数値(A)及び血中中性脂肪(TG)数値に対する化合物1の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態として具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される内容が徹底且つ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0042】
[試験例1]FFC食餌(Fat,fructose-and cholesterol-rich diet)給餌非アルコール性脂肪肝炎モデルにおける効能評価
【0043】
(1)試験方法
【0044】
FFC食餌(高脂肪、高果糖、高コレステロール食餌)(RESEARCH DIETS,Product No.:D12079B)を6~7週齢の雄C57BL/6マウスに16週間食餌して非アルコール性脂肪肝を誘発した後、生検を行って非アルコール性脂肪肝活性指数(NAS score)が3.2以上である動物だけを分離した。生検2週後、0.5% MC(Methyl cellulose)水溶液だけを投与した陰性対照群(FFC control)、0.5% MC水溶液に溶解した化合物1投与群(2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル化合物を各30mg/kg及び200mg/kg投与した群)のように3群に試験群を分離して構成する。化合物1は総2ヶ月間投与し、非アルコール性脂肪肝炎に対する改善効能を組織病理学的検査によって評価した。
【0045】
(2)組織病理学的検査方法及び結果
【0046】
組織病理学的検査のために、マウスを犠牲にし、肝組織を分離して、ヘマトキシリン-エオシン(Hematoxylin-Eosin,H&E)染色スライドを作製した。すなわち、分離された肝組織を、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で4℃で24時間固定させた後、流水に水洗し、パラフィンで包埋して、組織を3~4μm厚に薄切した。薄切した組織をコーティングスライド上に付けた後、キシレン(xylene)でパラフィンを除去し、系列アルコール順(99%、95%、90%、80%及び70%エタノール(EtOH))に含水過程を経た後、組織学的染色を行った。薄切した組織をヘマトキシリン染色液で5分間染色後、流水に5分間水洗し、1% HClアルコール及びアンモニアで脱染色した。その後、流水に10分間水洗した後、再びエオシン染色液で1分間対照染色し、含水の逆方向に脱水過程を経た後に封入した。
【0047】
H&E染色されたスライドを顕微鏡下で検鏡して組織病理学的評価を進行し、表1の基準に基づいて非アルコール性脂肪肝疾患活性指数(NAFLD activity score:NAS)を数値化して記録した。非アルコール性脂肪肝疾患活性指数は、1)脂肪症(steatosis)、2)肝小葉内炎症などの病変(lobular inflammation)、3)肝組織の風船様変性(ballooning)の変化に対する評価点数を合算して算出され、非アルコール性脂肪肝炎の重症度評価に広く用いられている。
【0048】
【0049】
図1に示すように、化合物1投与群では、賦形剤である0.5% MC(Methyl cellulose)水溶液だけを投与した陰性対照群(FFC control)に比べて肝小葉炎症性細胞浸潤が減少し、炎症に対する改善効果に優れることが確認された。また、化合物1投与群は、濃度依存的に脂肪肝改善効果が見られ(
図2)、非アルコール性脂肪肝疾患活性指数が低くなることが確認された(
図3)。
【0050】
したがって、本発明は、非アルコール性脂肪肝炎の予防又は治療に優れている効果が確認された。
【0051】
[試験例2]MCD食餌(Methionine and choline deficient diet)8週及び12週給餌非アルコール性脂肪肝炎モデルにおける効能評価
【0052】
MCD食餌(メチオニン-コリン欠乏食餌、Methionine and choline deficient diet)モデルは、ベータ-酸化とVLDL(Very low-density lipoprotein、超低密度脂質タンパク)合成に重要な働きをするメチオニン及びコリンがない食餌を供給することによって脂肪肝を誘発する試験モデルであり、組織病理学的に肝小葉内炎症がひどく誘発されるので、非アルコール性脂肪肝炎の改善効果を観察するためのモデルとして広く用いられている。
【0053】
(1)試験方法
【0054】
1)MCD食餌8週給餌試験
【0055】
7週齢の雄C57BL/6マウスにMCD食餌(RESEARCH DIETS,Product No:A02082002B)を4週間給餌して非アルコール性脂肪肝を誘発した後、4週間さらにMCD食餌を給餌しながら、次表2のG3~G8試験群構成におけるように、本発明のハイドロキノン誘導体化合物に該当する2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル(化合物1)と比較対照群として他の薬物をマウスに特定投与容量で4週間反復経口投与し、非アルコール性脂肪肝炎に対する改善効能を臨床病理学的検査及び組織病理学的検査によって評価した。
【0056】
【0057】
正常対照群は、MCD食餌ではなく正常食餌を給餌(RESEARCH DIETS,Product No:A02082003B)した場合であり、陰性対照群は、MCD食餌を給餌した後、賦形剤である0.5% MC(Methyl cellulose)水溶液だけを投与した場合である。比較対照群として、表2のように、FXR作用剤であるオベチコール酸(Obeticholic acid,OCA)、PPARγ作用剤であるピオグリタゾン(Pioglitazone,PGZ)、抗酸化剤であるレスベラトロール(Resveratrol,RSV)及びDDB(Biphenyl Dimethyl Dicarboxylate)系列肝機能保護剤(DDB complex)を使用して効能対比実験とした。レスベラトロール及びDDB系列肝機能保護剤の投与容量は200mg/kgに設定した。オベチコール酸及びピオグリタゾンの1日投与容量は、FDA及びEMA提出許可資料から報告された毒性容量と、論文などに報告された有効容量及び副作用容量を参考して、それぞれ30mg/kg/day及び10mg/kgと、上の表2のように設定した。
【0058】
オベチコール酸の場合、CD-1(ICR)マウスを用いた7日反復投与毒性試験(3、50、175、300mg/kg濃度)時に、175mg/kg濃度で動物の死亡のような深刻な副作用が現れることが報告されたことがある(FDA obeticholic acid(INT-747)NDA package pharmacology reviews;Application number:207999Orig1s000)。また、western diet NASHマウスモデルにおける効能試験時に、40mg/kg以上の容量ではむしろ非アルコール性脂肪肝疾患の経過を悪化(肝線維化の深刻化、ALT数値の上昇)させることが報告されたことがある(Front Pharmacol.2018 May1;9:410)。したがって、多くのマウス非アルコール性脂肪肝研究論文で用いられた20~30mg/kg容量範囲のうち、最高の容量である30mg/kgに試験容量を設定した。
【0059】
ピオグリタゾンの場合、マウス13週反復毒性試験時に、320mg/kg以上の容量で個体死亡が発生し、100mg/kgの以上で心臓副作用が発生することが報告されている(FDA Pioglitazone(ACTOS)NDA package pharmacology reviews:021073)。また、マウスに非アルコール性脂肪肝に対する効能容量範囲として10~30mg/kgが研究論文に報告されているが、ピオグリタゾン25mg/kgの容量でむしろ脂肪肝を悪化させると報告された研究結果(Int.J.Mol.Sci.2015,16,12213-12229,PPAR Res.2014:38183)も参考して、一般的に最も多く報告された容量である10mg/kgを試験容量として設定した。
【0060】
2)MCD食餌12週給餌試験
【0061】
MCD食餌の給餌期間を総12週に延長して非アルコール性脂肪肝炎の誘発レベルを高めた。そのために、7週齢の雄C57BL/6マウスにメチオニン-コリン欠乏食餌を8週間給餌して非アルコール性脂肪肝を誘発した後、表2と同じ試験群を同一投与容量で4週間反復経口投与した。
【0062】
(2)組織病理学的及び臨床病理学的評価結果
【0063】
1)MCD食餌8週給餌試験
【0064】
試験例1の組織病理学的検査方法と同様に、MCD食餌8週給餌試験したマウスから肝組織を分離してH&E染色スライドを作製した後、表1の基準に基づいて、1)脂肪症(steatosis)、2)肝小葉内炎症などの病変(lobular inflammation)、3)肝組織の風船様変性(ballooning)の変化を分析し評価点数を合算して非アルコール性脂肪肝疾患活性指数を算出し、これを用いて非アルコール性脂肪肝炎の治療効果を評価した。
【0065】
マウス肝組織の組織病理学的肝小葉炎症、及び非アルコール性脂肪肝疾患活性指数は、
図4及び
図5に示し、代表的な肝機能臨床病理数値であるALT数値は、
図6に示す。
【0066】
図4に示す肝小葉の炎症細胞浸潤指数は、非アルコール性脂肪肝炎の組織病理学的評価において最も重要な指数の一つである。また、非アルコール性脂肪肝炎の薬物的治療の最大の目的が、脂肪肝から脂肪肝炎への進行又は脂肪肝炎から肝硬変のような次の段階への進行が起きないようにすることにある点からも、病理組織学的肝小葉炎症の改善は、非常に重要な効能改善指標である。
【0067】
本発明の化合物1投与群の場合、陰性対照群(MCD control)に比べて肝小葉炎症性細胞浸潤の改善効果が顕著であった(
図4)。特に、現在臨床で非アルコール性脂肪肝炎1次治療剤として用いられているインスリン抵抗性改善薬物であるピオグリタゾン(Pioglitazone,PGZ)に比べても優れた抗炎症効能を示し、また、現在臨床3床開発中であるオベチコール酸(Obeticholic acid,OCA)に比べても優れた抗炎症効能を示した。
【0068】
また、本発明の化合物1は、非アルコール性脂肪肝疾患活性指数が低くなることが確認され(
図5)、臨床病理学的肝機能指標であるALT数値が、陰性対照群及び比較対照群に比べて化合物1の200mg/kg投与群において顕著に減少することが観察された(
図6)。
【0069】
一方、抗酸化、抗炎症の効果があると知られたレスベラトロール(RSV)及びDDB系列肝機能保護剤(DDB complex)の場合、陰性対照群に比べて非アルコール性脂肪肝炎の改善効果を示していないが、これは、一般の抗酸化、抗炎効果だけでは、複雑な病理機転を持つ非アルコール性脂肪肝炎に対する抑制効果が得られないということを意味する。これに基づいて、本発明の化合物1は、非アルコール性脂肪肝炎を適応症として開発される既存の様々な作用機転の薬物群に比べて優れた非アルコール性脂肪肝炎抑制効能を示すことが確認された。
【0070】
2)MCD食餌12週給餌試験
【0071】
MCD食餌12週給餌試験したマウス肝組織の肝小葉炎症性細胞浸潤に対する改善効果、及び非アルコール性脂肪肝疾患活性指数は、
図7及び
図8に示す。
【0072】
図7及び
図8に示すように、化合物1投与群の場合、陰性対照群(MCD control)に比べて肝小葉炎症性細胞浸潤に対する改善効果を示し、非アルコール性脂肪肝疾患活性指数が低くなったが、このような効果は化合物1の濃度依存的に増加することが観察された。特に、現在臨床で非アルコール性脂肪肝炎1次治療剤として用いられているインスリン抵抗性改善薬物であるピオグリタゾン(PGZ)に比べても優れた炎症抑制効能を示し、現在臨床3床開発中であるオベチコール酸(OCA)に比べても優れた効能を示した。
【0073】
本試験例でも、抗酸化、抗炎症効果があると知られたレスベラトロール(RSV)及びDDB系列肝機能保護剤(DDB complex)の場合、陰性対照群に比べて改善効果が見られなかったが、これは、一般の抗酸化、抗炎効果だけでは、複雑な病理機転を持つ非アルコール性脂肪肝炎に対する抑制効果が十分でないことを意味する。
【0074】
[試験例3]高脂肪食餌(High-fat diet,HFD)給餌肥満及び非アルコール性脂肪肝炎モデルにおける効能評価
【0075】
(1)試験方法
【0076】
60kcal%高脂肪食餌(RESEARCH DIETS,Product No:D12492)を7週齢の雄C57BL/6マウスに16週間食餌して非アルコール性脂肪肝を誘発し、高脂肪食餌17週目から25週目まで試験物質を9週間反復経口投与し、非アルコール性脂肪肝炎に対する改善効能を臨床病理学的検査及び組織病理学的検査によって評価した。
【0077】
試験群として、HFD食餌ではなく正常食餌(10kcal%脂肪食餌、RESEARCH DIETS,Product No:D12450B)を給餌した正常対照群と、HFD食餌を給餌した後、賦形剤である0.5% MC(Methyl cellulose)水溶液だけを投与した陰性対照群、及び化合物1(2,3,5-トリメチルハイドロキノン-1-ヘキシルエーテル)投与群(30、100、200mg/kg)、比較対照群(オベチコール酸30mg/kg、ピオグリタゾン10mg/kg、DDB系列肝機能保護剤200mg/kg)を設定した。
【0078】
(2)体重及び内臓脂肪蓄積抑制効果の確認
【0079】
前記(1)の試験方法と同様に、9週間試験物質を反復経口投与しながら9週間の体重増加量、飼料摂取量及び一般症状を観察、記録した。
【0080】
図9から確認されるように、化合物1投与群の場合、陰性対照群(HFD control)に比べて高脂肪食餌給餌による体重増加率が顕著に減少した。特に、化合物1投与群の場合、飼料摂取量は他の投与群と差異がなかったところ(
図10)、化合物1投与群における体重減少効能は飼料摂取量減少に起因するものでないことが分かる。
【0081】
また、
図11に示すように、マウスの解剖検査時に副睾丸脂肪の重さを測定した結果、化合物1は、副睾丸脂肪のような内臓脂肪の蓄積を抑制する効果に優れていた。このような副睾丸脂肪のような内臓脂肪の場合、皮下脂肪よりは速く動かされ、肝門脈を通して肝に直接流入して肝損傷を誘発することがあるため、非アルコール性脂肪肝炎の進行及び予後とも密接な関連を有することが知られている。
【0082】
このように、化合物1は、非常に優れた体重及び内臓脂肪量減少効果があり、肥満の予防、改善又は治療に効果があることが確認された。
【0083】
さらに、化合物1投与群の場合、正常動物においても副作用を示し得る代謝経路をターゲットとする他の薬物とは違い、ラット単回経口投与毒性試験時に、2000mg/kgの高容量投与にも死亡個体が発生しなかった。また、13週経口反復投与毒性試験時に、500mg/kgの高い濃度にも死亡、臓器不全などの深刻な副作用を示しておらず、また、体重(
図12)及び飼料摂取量、尿検査及び血液学的検査においても化合物1投与に起因する変化がないことが観察された。
【0084】
(3)インスリン抵抗性改善効果確認
【0085】
化合物1の化合物投与7週目にインスリン耐性検査を行って、化合物1が高脂肪食餌によるインスリン抵抗性増加に及ぼす影響を観察した。
【0086】
インスリン耐性検査は、4時間絶食を行ったマウスにインスリンを腹腔投与し(0.7IU/kg)、30分間隔で血糖を測定して行った。また、インスリン抵抗性を数値化するために、インスリン投与前の血糖を基底値(baseline)とし、減少した血糖数値曲線の面積をiAUC値で数値化してインスリン抵抗性を定量的に比較した(
図14)。ここで、iAUC値が小さいほどインスリン抵抗性が高いことを意味し、iAUC値が大きいほどインスリン感受性が大きいことを意味する。
【0087】
インスリン耐性検査の結果、
図13に示したように、化合物1投与群の場合、インスリン投与時に、陰性対照群及び他の薬物対照群に比べて血糖減少がより速く起きることが確認できた。すなわち、陰性対照群の場合、末梢組織のインスリン抵抗性増加によって血糖減少が徐々に起きるが、化合物1投与時には、インスリンに対する感受性が増加することにより、血糖がより速く減少することを観察した。これを、
図14のように、iAUC値で数値化して比較した場合にも、陰性対照群及び他の薬物対照群に比べて、高脂肪食餌によって発生するインスリン抵抗性に対する抑制効果が大きいことが確認できた。
【0088】
(4)組織病理学的及び臨床病理学的評価結果
【0089】
試験例1の組織病理学的検査方法と同様に、高脂肪食餌給餌試験したマウスから肝組織を分離してH&E染色スライドを作製した後、表1の基準に基づいて、1)脂肪症(steatosis)、2)肝小葉内炎症などの病変(lobular inflammation)、3)肝組織の風船様変性(ballooning)の変化を分析し、評価点数を合算して非アルコール性脂肪肝疾患活性指数を算出し、これを用いて非アルコール性脂肪肝炎の治療効果を評価した。
【0090】
図15及び
図16に示すように、組織病理学的な評価においても化合物1は他の薬物に比べて優れた非アルコール性脂肪肝炎の治療効能を示すことが確認された。
図15及び
図16に示すように、化合物1投与群の場合、陰性対照群(HFD control)に比べて肝小葉炎症性細胞浸潤及び脂肪肝に対する改善効果を示し、この改善効果は化合物1処理濃度依存的に増加することが観察された。また、化合物1の200mg/kg投与群の場合、他の対照薬物に比べて顕著に高い肝小葉炎症抑制効果を示した。
【0091】
臨床病理学的な評価においても化合物1投与によって肝機能及び肝損傷指標であるALT及びAST数値が正常レベルに回復したことを確認した。特に、他の薬物対照群に比べてALT、AST数値がより多く減少したことを確認した(
図17及び
図18)。
【0092】
さらに、脂肪肝及び脂肪肝炎進行を悪化させる血中コレステロール及び中性脂肪数値が陰性対照群に比べて減少することを確認した(
図19(A)及び(B))。オベチコール酸の場合、本動物実験では高いコレステロール抑制作用を示したが、臨床試験時には低い濃度(成人1人につき10~25mg)でも正常人と非アルコール性脂肪肝患者において総コレステロール及びLDLコレステロールを上げる副作用を示すことが知られている(Diabetes,Obesity and Metabolism 18:936-940,2016)。これに対し、本発明の化合物1は、臨床1床試験時に、成人1人につき1000mgの容量を14日間反復投与した場合にも、異常脂質血症のような異常反応が報告されなかった。
【0093】
(5)総合評価
【0094】
前記高脂肪食餌給餌動物モデル試験から、本発明の化合物1が体重増加及び内臓脂肪量の蓄積を減少させる効果に優れ、肥満の予防、改善又は治療剤として有用に利用可能であることが確認された。
【0095】
また、本発明の化合物1は、既に開発された非アルコール性脂肪肝炎治療剤に比べて、体重及び内臓脂肪蓄積抑制、インスリン感受性増加、及び肝組織炎症抑制効果に優れるので、複雑で様々な因子が作用する非アルコール性脂肪肝炎の治療に極めて効果的であることが確認された。
【0096】
それに加えて、本発明の化合物1は、ラットにおける半数致死量が2000mg/kgを上回り、ビーグル犬における最大耐性容量が2000mg/kg以上である非常に安全な化合物として確認されたことがあり、ラットを用いた13週反復投与毒性試験において500mg/kgの高い濃度でも死亡、体重減少、臓器不全のような副作用が見られなかった。また、臨床1床試験からも、単回投与時に成人1人につき2000mgまで、14日反復投与時に成人1人につき1000mgまでも異常反応が報告されなかった、安全性の高い化合物であるので、長期治療が必要な非アルコール性脂肪肝炎治療剤として有用に利用可能である。