(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】高電圧用構成材料
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20230501BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/3465
(21)【出願番号】P 2021555501
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2020056700
(87)【国際公開番号】W WO2020187702
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・エントナー
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-514008(JP,A)
【文献】特開平10-140023(JP,A)
【文献】特公昭45-036229(JP,B1)
【文献】特開2014-214244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0053081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリアミド及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料であって
、但しそれらが、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL
*a
*b
*座標からの色距離ΔEが20未満を有する、高電圧用構成材料。
【請求項3】
A)少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
が使用されることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物、又は請求項2に記載の高電圧用構成材料。
【請求項4】
A)少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、
B)0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
が使用され、但しレーザー吸収性の添加剤が使用されないことを特徴とする、請求項3に記載のポリマー組成物又は高電圧用構成材料。
【請求項5】
成分A)及びB)に加えて、さらにC)少なくとも1種の充填剤及び/又は補強材
が使用されることを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物又は高電圧用構成材料。
【請求項6】
成分A)、B)及びC)に加えるか、又はC)に代えて、さらにD)少なくとも1種の難燃剤
が使用されることを特徴とする、請求項5に記載のポリマー組成物又は高電圧用構成材料。
【請求項7】
成分A)、B)、C)、及びD)に加えるか、又はC)及び/又はD)に代えて、さらに、E)少なくとも1種の、前記成分B)、C)、及びD)以外のさらなる添加剤
が使用されることを特徴とする、請求項
6に記載のポリマー組成物又は高電圧用構成材料。
【請求項8】
前記充填剤及び/又は補強材が、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタル
クの群から選択されるべきことを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載のポリマー組成物又は高電圧用構成材料。
【請求項9】
前記難燃剤が、鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択されるべきことを特徴とする、請求項6又は7に記載の、ポリマー組成物又は高電圧用構成材
料。
【請求項10】
使用される添加剤E)が、少なくとも1種の熱安定剤で
あることを特徴とする、請求項7に記載の、ポリマー組成物又は高電圧用構成材
料。
【請求項11】
A)少なくとも1種のポリアミ
ドの100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部
の少なくとも1種の充填剤及び補強材
、及び
E)0.01~2質量部
の少なくとも1種の熱安定剤、
が使用されることを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載の、ポリマー組成物又は高電圧用構成材
料。
【請求項12】
A)少なくとも1種のポリアミ
ドの100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部
の少なくとも1種の充填剤及び補強
材、
D)3~100質量部
の少なくとも1種の難燃性添加剤、及び
E)0.01~2質量部
の少なくとも1種の熱安定剤、
が使用されることを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載の、ポリマー組成物又は高電圧用構成材
料。
【請求項13】
ポリアミドベースの製品を製造するための10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用であり、但し、それらの、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL
*a
*b
*座標からの色距離ΔEが20未
満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度が、少なくとも10%である、使用。
【請求項14】
RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL
*a
*b
*座標からの色距離ΔEが20未
満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、レーザー透明性高電圧用構成材
料を製造するためのプロセスであって、A)少なくとも1種のポリアミド及びB)10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オ
ンを相互に混合してポリマー組成物を得ること、押出加工してストランドを得ること、ペレットが可能になるまで冷却すること、乾燥及びペレット化すること、並びに次いで、前記ポリマー組成物を、射出成形法であって、特殊な方法である、ガスインジェクション技術、ウォーターインジェクション技術、及びプロジェクタイルインジェクション技術を含む、射出成形法によるか、異形押出法を含む押出成形法によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかけることにより、ここで、レーザー吸収剤が使用されない、プロセス。
【請求項15】
電気又は電子機器、制御装置のためのカバー、ヒューズ、継電器、蓄電池モジュール、ヒューズホルダー、ヒューズプラグ、端子、ケーブルホルダーのためのカバー/ハウジング、又は被覆材
料を含むことを特徴とする、請求項2~12のいずれか1項に記載の高電圧用構成材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリアミド及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンをベースとするポリマー組成物を含む、特に電気自動車のための、高電圧用構成材料、並びにポリアミドベースの製品を製造するための10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用(但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である)、並びに最後に、高電圧用構成材料としてのポリアミドベースの製品をマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリアミドのような工業用熱可塑性プラスチックは、それらの良好な機械的安定性、それらの耐薬品性、極めて良好な電気的性質、及び良好な作業性のため、特に自動車のための構成材料の分野でも重要な材料である。
【0003】
ポリアミドは、長年にわたり、必要とされる自動車構成材料を製造するための重要な構成要素を形成してきた。内燃エンジンは、長年にわたり駆動要素として圧倒的に使用されてきたものの、それに代わる駆動要素のための検討の過程で、材料選択に関して新たな需要がさらに生じている。この場合に顕著な役割を果たしているのは電気自動車であり、そこでは、内燃エンジンは、1つ又は複数の電気モーターによって部分的(ハイブリッド車両[HEV、PHEV、BEV Rex])又は全面的(電気自動車[BEV、FCEV])に置き換えられ、それらのモーターは、典型的には、その電気エネルギーを蓄電池又は燃料電池から引き出す。それらの単一の推進手段として内燃エンジン(ICE)を有する従来からの車両は、典型的には、12Vの搭載電圧系で対応している一方、駆動ユニットとして電気モーターを有するハイブリッド車両及び電気車両は、十分に高い電圧を必要とする。このことによって、専門規格又はその他に標準においてますます重要な役割を果たす、そのような高電圧構成材料の直接的な領域及びすぐ近傍での、重大なさらなる潜在的リスクがもたらされる。ここで、重要な役割を果たすのは、これらの危険領域を明確にマーキングして、人員、特にドライバー、整備士などとの意図しない接触を避けることであり、そのような高電圧集成部品の明確なカラーマーキングが特に重要となる。
【0004】
例えば、(非特許文献1)において、Idaho National Laboratory for HEV(Hybrid Electric Vehicle)のAdvanced Vehicle Teamは、専門規格を公表しており、そこでは、60V以上の高電圧がかかるすべての装置に、高電圧のような明瞭なマーキングを施すことが推奨されており、またこれに関連して、マーキングのためにオレンジ色が提案されている。
【0005】
しかしながら、いくつかの場合、コンパウンディング及び射出成形中に300℃を超える高い加工温度がかかるため、特に工業用熱可塑性プラスチックのための、オレンジ色に着色するのに適した着色剤の選択は、極めて限定される。
【0006】
(特許文献1)には、なかんずく、染料を含むポリアミドをベースとしたレーザー溶接可能な組成物が開示されており、そこで使用された染料が、例えばソルベントオレンジ60であり得る。
【0007】
(特許文献2)は、橋架けされたペリノン、キノフタロン、及びペリノン-キノフタロン、それらを調製するためのプロセス、並びにプラスチックの大量着色のためのそれらの使用に関する。列挙された好ましいプラスチックは、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリカーボネート、及びポリメタクリレートであり;特に好ましいのは、ポリスチレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンである。実施例16には、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンが明確に述べられている。
【0008】
(特許文献3)には、光の波長を変換させることが可能な蛍光性組成物、光波-変換要素としてのそのような組成物をベースとする成形物品、及びそのような要素を使用する、光学エネルギーを電気エネルギーに変換させるための装置が記載されている。(特許文献3)の実施例では、なかんずく、ポリエチレンテレフタレート(PET)中で、12H-フタロペリン-12-オンが使用されている。さらに、(特許文献3)では、なかんずく、ポリアミドの使用が提案されている。
【0009】
12H-フタロペリン-12-オン[CAS No.6925-69-5]は、ソルベントオレンジ60としても知られており、例えばLanxess Deutschland GmbH(Cologne)から、Macrolex(登録商標)Orange 3Gとして入手可能である。しかしながら、極端な必要条件下、特に電気自動車で見られるような必要条件下では、ソルベントオレンジ60は、プラスチックのマトリックスから移行する傾向を有し、そのため、高温では色強度が低下してしまうという欠点がある。ソルベントオレンジ60が、プラスチックの表面に移行する(ブルーミング)。それが、そこからこすり取られるか、洗い流されるか、若しくは溶解され得るか、又は蒸発するか(フォギング)、若しくは他の材料(例えば、隣接するプラスチック又はゴム部品)のに移行し得る(ブリーディング)。元のプラスチック中のソルベントオレンジ60の濃度が低下し、そのため、色強度の低下の原因となる。移行したソルベントオレンジ60はさらに、機械的又は物理的過程によって隣接する構成材料に移行されて、そこでの性能を損なう原因になり得るという欠点も有する。例として、電気接点の表面上へのソルベントオレンジ60の析出の結果起こり得る、スイッチ接点における電気抵抗の増大が挙げられる。したがって、電気部品の分野においては、プラスチックからの成分の移行は一般的に望ましいものではなく、その理由は、それがプラスチック及び空間的に隣接した部品の機能に悪影響を与えて、その結果、いくつかの場合、その電気部品の機能がもはや保証できなくなる可能性があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2005/084955A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第0827986A2号明細書
【文献】欧州特許第0041274B1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】https://avt.ini.gov/sites/default/files/pdf/hev/hevtechspecr1.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、欧州特許第0041274B1号明細書の教示をさらに進めて、本発明が取り組む課題は、高電圧用構成材料のため、特に電気自動車における高電圧用構成材料のための、ポリアミドベースのオレンジ色のポリマー組成物であり、それらは、12H-フタロペリン-12-オンをベースとした欧州特許第0041274B1号明細書の解決策と比較して、移行、特にブリーディングが、より少ない傾向にある。理想的には、本発明のオレンジ色のポリアミドベースの高電圧用構成材料は、上で引用した従来技術をベースとする製品と比較して改良された耐光堅牢度を有し、射出成形の直後に達成された元の色は、12H-フタロペリン-12-オンベースの成分と比較して、UV光下で長期間にわたって保持されるべきである。最後に、熱応力下での、本発明のオレンジ色の高電圧用構成材料の熱安定性が、12H-フタロペリン-12-オンベースの成分と比較して改良されているのが望ましい。理想的には、一実施形態において、本発明のオレンジ色の高電圧用構成材料は、800nm~1100nmの範囲の光の波長でレーザー透明性/レーザー透過性であって、それにより、上記の波長範囲で吸収性である他のアセンブリに対する透過型レーザー溶着のための条件を可能とするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、ポリアミドをベースとする熱可塑性ポリマー組成物及び式(I)の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン[CAS No.203576-97-0]を含む、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料がその特定の要求を満たすということが今や見出された。
【化1】
【0014】
ブリーディング
本発明に関連して、以下のようにしてブリーディングを確認する。
【0015】
最初に、60×40×2mm3の寸法のプラスチックシートを、試験対象の着色剤含有ポリアミド組成物から作製する。次いで、30×20×2mm3の寸法を有する可塑化PVCフィルムを、最初に作製した2枚のプラスチックシートの間に挟み込み、全部のシートを丸ごと、加熱空気乾燥キャビネット中、80℃で12時間貯蔵する。続いて、2枚のプラスチックシートから可塑化PVCの中に移行した着色剤を、ISO 105-A02に従ったグレースケールにより肉眼で評価し、「5」は、PVCフィルムが色の変化を示さない(ポリアミドのプラスチックシートからPVCフィルムへの、目視で確認できる着色剤の移行がない)ことを意味しており、「1」は、PVCフィルムが顕著な色の変化を示す(ポリアミドのプラスチックシートからPVCフィルムへの、目視で確認できる顕著な着色剤の移行がある)ことを意味する。
【0016】
耐光堅牢度
本発明に関連して使用した耐光堅牢度の尺度は、試験対象の着色剤含有ポリアミド組成物の上述したプラスチックシートを、以下の条件でUV下に保存した後での変色である:Suntest CPS+(Atlas Material Testing Technology GmbH(Linsengericht,Germany)製)からの、空冷Atlas Xenonランプ(1500ワット、45~130klx、波長300~800nm)を用いた、タイプのUV光及び窓ガラスフィルタ250~267W/m2、並びに照射時間96時間。本発明に関連して、変色は、DIN EN ISO 105-B02に従ったブルーウールスケールに基づいて視覚的に評価され、ここで「8」は、例外的に高い耐光堅牢度(色の変化ほとんど無し)を表し、及び「1」は、極めて低い耐光堅牢度(顕著な色の変化)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題
本発明は、少なくとも1種のポリアミド及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物を提供する。好ましいのは、使用されるナイロンが、ナイロン-6(PA6)又はナイロン-6,6(PA66)である、ポリマー組成物である。
【0018】
本発明はさらに、高電圧用構成材料としてのポリアミドベースの製品にマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関する。
【0019】
しかしながら、本発明はまた、信号用のオレンジ色を有するポリアミドベースの高電圧用構成材料、好ましくは電気自動車のための高電圧用構成材料をマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関する。
【0020】
さらに好ましいのは、ポリアミドの100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンが使用されるポリマー組成物であり、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、レーザー透明度が少なくとも10%である。
【0021】
本発明はさらに、少なくとも1種のポリアミド及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、レーザー透明度が少なくとも10%である。
【0022】
本発明はさらに、少なくとも1種のポリアミド及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、ここで使用されるポリアミドは、ナイロン-6又はナイロン-6,6であり、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、レーザー透明度が少なくとも10%である。
【0023】
本発明はさらに、少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとした高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0024】
本発明はさらに、ポリアミドベースのポリマー組成物、好ましくはポリアミドベースの高電圧用構成材料、特にはポリアミドベースの電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、レーザー透明度が少なくとも10%である。
【0025】
本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の混合装置において、反応剤として使用するための成分A)とB)とを混合することによって、さらなる使用のために配合される。これによって、中間体として、本発明の組成物をベースとする成形用コンパウンド物が得られる。これらの成形用コンパウンド物は、もっぱら成分A)及びB)のみで構成されていてもよいし、又は他に、成分A)及びB)に加えて、少なくとも1種のさらなる成分を含んでいてもよい。
【0026】
誤解がないように付言すると、本発明の範囲には、各種所望の組合せにおいて、以下において一般的な範囲又は特に好ましい範囲と記載されたすべての定義及びパラメーターが包含されることに注意されたい。このことは、同様に、特許請求されたプロセス及び使用に関連する、個々の成分の記述された量の組合せにも関連する。本出願に関連して引用されている標準は、本発明の出願日における最新の版を指す。
【0027】
高電圧
国連欧州経済委員会(UNECE)の規制第100号(電動パワートレインのための詳細な要件に関する車両承認に関する統一規定[2015/505])パラグラフ2.17には、電気部品又は電気回路の分類において、使用実効電圧が、60V超且つ1500V以下(直流)、又は30V超且つ1000V以下(交流)の二乗平均平方根(rms)(V=ボルト)の場合に「高電圧」の用語を適用すると記載してある。
【0028】
この「高電圧」の分類は、ISO6469-3:2018の電圧等級Bに相当する(「電気自動車-安全基準-第3部:電気的安全性」)。その5.2節は、適切な危険標識又は「オレンジ」色による、電圧等級Bの電気部品についてのマーキング要件をさらに含む。
【0029】
高電圧用構成材料及び電気自動車のための高電圧用構成材料
本発明においては、「高電圧用構成材料」は、上述の国連欧州経済委員会(UNECE)の協定規則第100号2.17項に記載の作動電圧に関連する構成材料又は製品を意味すると理解されたい。本発明においては、「電気自動車のための高電圧用構成材料」は、好ましくは、30V(直流電流)以上又は20V(交流電流)以上、より好ましくは、(ISO6469-3:2018の電圧等級Bのような)60Vの直流電流超、又は30Vの交流電流超の作動電圧がかかる、電気自動車における構成材料を指す。
【0030】
本発明においては、電気自動車のための高電圧用構成材料は、電圧導電部品と直接的に接触状態にある構成材料だけではなく、それに直接的に隣接しているか、又は接触防護装置、警告マーカー、若しくは遮蔽手段として機能する、空間的に近くにあるものも含み、本発明においては、電圧導電部品と直接接触状態にある構成材料が好ましい。
【0031】
本発明の電気自動車のための高電圧用構成材料は、好ましくはオレンジ色に着色され、RAL表色系において色数RAL2001、RAL2003、RAL2004、RAL2007、RAL2008、RAL2009、RAL2010、及びRAL2011に相当するシェードが特に好ましく、RAL表色系において色数RAL2003、RAL2008、及びRAL2011に相当するシェードが極めて特に好ましい。
【0032】
本発明において許される「同等のシェード」とは、L*a*b*系における色距離が、RALカラーチャートで「2」で始まる色数からのΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であるようなシェードである。EN ISO 11664-4で規定されているΔEの解説については、例えば以下を参照されたい。
https://de.wikipedia.org/wiki/Delta_E
【0033】
本発明の一実施形態において、本発明の電気自動車のための高電圧用構成材料は、800nm~1100nmの範囲の波長を有するレーザー光のための吸収剤であるようなさらなる構成材料をさらに添加することによって、1つのレーザー透明性の部材構成と1つのレーザー吸収部材構成との組合せがレーザー溶着性を付与するように設計される。
【0034】
オレンジ色
本発明に関連して、オレンジ色とは、https://de.wikipedia.org/wiki/RAL-Farbe#Orangeに記載のRAL表色系において、RALカラーチャートで「2」で始まる色数を有する色を意味すると考える。具体的には、本発明の出願時点において、表1に記載のオレンジ色のシェード(shade:色合い)の区別がなされている。
【0035】
【0036】
表1は、それぞれのRAL値に対する、装置に依存しないCIE L*a*b*色値を示し、L*は輝度を表し、a*=D65、及びb*=10度である。色モデルは、EN ISO 11664-4“Colorimetry--Part 4:CIE 1976、L*a*b* Colour space”において標準化されている。L*a*b*色空間(同様にCIELAB)については、以下を参照されたい:https://de.wikipedia.org/wiki/Lab-Farbraum。色空間におけるそれぞれの色は、直交座標{L*、a*、b*}を有するカラーローカスによって定義される。a*b*-座標面は、反対色理論を使用して構成されている。グリーンとレッドが互いにa*軸の両端に位置し、及びブルーからイエローまでがb*-軸である。補色のシェードがそれぞれ互いに180度反対側にあり、及びそれらの中間点(座標原点、a*=0、b*=0)がグレーである。
【0037】
L*軸は、0~100の数値で色の輝き(輝度)を表す。座標において、それは、原点でa*b*面に垂直に立っている。それは中性のグレー軸であり得、その理由は、すべての無彩色のシェード(グレーシェード)が、終端のブラック(L*=0)とホワイト(L*=100)との間に含まれるからである。a*軸は色のグリーン又はレッドの比率を示し、ここで負の値はグリーンを表し、正の値はレッドを表す。b*軸は色のブルー又はイエローの比率を表し、ここで負の値はブルーを表し、正の値はイエローを表す。
【0038】
a*値は約-170~+100の間、及びb*値は-100~+150の間のスパンであり、その最大値は、ある種のシェードの中間輝度の場合にのみ達成される。CIELAB色立体(color solid)は、中間輝度の領域にその最大範囲を有するものの、これは、その色範囲に依存して、高さと大きさが異なる。
【0039】
本発明は、ポリマー組成物のL*a*b*座標とRALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標との間の色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であるような、オレンジ様のシェードを包含する。
【0040】
透過型レーザー溶着法
非晶質及び半晶質のポリアミドのために使用されるさらなる技術分野は、透過型レーザー溶着法であり、これは、レーザー透過型溶着法、又は略してレーザー溶着法とも呼ばれる。プラスチックの貫通透過型レーザー溶着法は、成形コンパウンドにおける照射線の吸収に基づく。これは連結プロセスであって、そこでは、一般的には熱可塑性プラスチックで作製された2種の連結パートナーを、分子レベルで相互に連結させる。この目的のために、使用されたレーザー波長の範囲内で、一方の連結パートナーが高い透過係数を有し、及び他方が高い吸収係数を有する。高い透過係数を有する連結パートナーは、レーザービームを照射されても実質的に発熱しない。高い吸収係数を有する連結パートナーと接触すると、入射されたレーザーエネルギーがその表面近傍層に吸収され、それにより熱エネルギーに転換されて、プラスチックが溶融される。熱伝導プロセスのために、そのレーザー透明性の連結パートナーもまた、その連結ゾーンの領域で可塑化される。レーザー透過型溶着法に通常使用されるレーザー光源は、約600~1200nmの波長範囲の照射線を発生する。高出力ダイオードレーザー(HDL、X=800~1100nm)及び固体レーザー(例えば、Nd:YAGレーザー、X=1060~1090nm)が、特に一般的に使用される。多くの非添加型ポリマーは、レーザー照射線に対しては、ほとんど透明又は半透明である、すなわち、それらの吸収性は極めて低い。適切な着色剤によって、しかしまた、例えば充填剤及び補強材のようなさらなる添加剤によっても、その吸収、したがってレーザー光の熱への転換を調節することが可能となる。多くの場合、吸収性の連結パートナーに添加されるのは吸収性顔料であり、暗色の連結パートナーの場合には、通常カーボンブラック顔料である。このアプローチ方法は、レーザー透明性の連結パートナーでは不可能であるが、その理由は、例えばカーボンブラックで着色したポリマーは、不十分なレーザー光透過しか示さないからである。同じことが、多くの有機染料、例えばニグロシンにもあてはまる。したがって、着色されているにも関わらずレーザー光に対する十分な透過性を示し、それにより、透過型レーザー溶着法におけるレーザー透明性の構成材料として使用することができるような成形法が必要とされている。
【0041】
透過型レーザー溶着法の基本的な原理は、以下の文献からも当業者には公知である:Kunststoffe,87(1997),3,348~350、Kunststoffe,87(1997),11、1632~1640、Kunststoffe,88(1998),2,210~121、Plastverarbeiter,46(1995),9,42~46、及びPlastverarbeiter,50(1999),4,18~19。ポリマー成形物の、600~1200nmの波長を有するレーザー光に対する透過率は、分光光度計及び積分球光度計を用いて測定することができる。この測定組合せによって、透過された照射線の散乱比も求めることができる。レーザー透過型溶着法に好適なレーザー光源は、上述の約600~1200nmの波長範囲の照射線を発生するものであって、上述の高出力ダイオードレーザー又は固体レーザーが採用される。透過型レーザー溶着法のための成形物を製造する際に使用されるポリアミドベースのポリマー組成物に関しては、文献を完全且つ詳細に参照すると、レーザー透明性の成形物を製造するために、透過型レーザー溶着法に使用されるレーザーの波長範囲に実質的に吸収性を有さない成分が使用されることになる。このことは、特には、成分のC)充填剤及び補強材、D)難燃剤、又はE)添加剤の少なくとも1種をレーザー透明性成形のための組成物に添加する場合にもあてはまる。レーザー透明性成形物を製造するためには、そのレーザープロセスに関する波長範囲で吸収又は散乱するような添加物E)は、本発明において使用される成分B)に加えて使用しないのが好ましい。
【0042】
透過型レーザー溶着法のために使用する成形物を製造するためのポリアミド組成物の製造は、自体公知のプロセスによって実施される。これらには、典型的には、構成材料を、まず関連する質量分率で混合する工程が含まれる。構成材料の混合は、好ましくは、高温での、連動ブレンド法、混合法、混練法、押出法、又はロール法により実施される。混合の際の温度は、好ましくは220℃~340℃の範囲、より好ましくは240℃~300℃の範囲、特には250℃~290℃の範囲である。個々の構成材料を予備混合しておくのも好都合であり得る。さらに、予備混合した構成材料のそれぞれのポリアミド(ドライブレンド物)及び/又は個々の構成材料の溶融温度よりも顕著に低い温度で製造した物理的混合物から、成形物を直接製造することもまた可能である。ドライブレンド物の混合の際の温度は、好ましくは0℃~100℃の範囲、より好ましくは10℃~50℃の範囲、特には周囲温度(25℃+/-3℃)である。成形コンパウンドは、慣用されるプロセス、好ましくは射出成形法又は押出法によって加工して、成形物とすることができる。
【0043】
現時点では、レーザー透明度の測定が実施されるべき基準を形成する標準が未だ存在しない。したがって、当業者は以下のように測定を行う:レーザー透明度を、60mm×60mm×2mmの寸法及び高度に研磨した表面を有する5枚のシートそれぞれの、5箇所の所定の測定場所で測定する。それらの数値を使用して、平均レーザー透明度を計算する。この目的のために、測定するまではシートをバリア性のPEバッグ(PE=ポリエチレン)の中に包み込んでおき、成形して24時間後、成形したままの乾燥状態(dry-as-molded state)で、分析計の中で試験する。参照:K.D.Feddersen,“Laserdurchstrahlschweissen - die Loesung fuer nicht loesbare Verbindungen”、[“Laser Transmission Welding-the Solution for Unpartable Bonds”]、Oesterreichische Kunststoffzeitschrift,1/2,2018,p.50~52。本発明に関連して、成形したままの乾燥状態が意味するのは、射出成形の直後に、本発明に関連する試験対象の試験片を、23±2℃、相対湿度50±10%で少なくとも16時間貯蔵し、その後でそれぞれの研究を実施するということである。水分の測定については、ISO 15512:2009-10を参照されたい。
【0044】
本出願に関連して分析した試験片の透明度は、以下のようにして測定した:980nmのレーザー波長での近赤外線(NIR)域で、DVS Richtlinie [German Welding Society information sheet]2243(01/2014)“Laserstrahlschweissen thermoplastischer Kunststoffe”[“Laser Beam Welding of Thermoplastics”]に従い、60mm×60mm×2mmの寸法を有するプラークを使用し、LPKF TMG3透過度分析計(LPKF Laser & Electronics AG(Garbsen,Germany)製)を用い、DIN EN ISO/IEC 17025に従って作製した分析標準を用いて前もって較正した(参照;LPKF AG 101016-DE:“Einfache Transmissionsmessung fuer Kunststoffe LPKF TMG3”[“Simple Transmittion Measurement for Plastics LPKF TMG3”]。
【0045】
本発明に関連して、「レーザー透明性(laser-transparent)」、又は他に「レーザー透過性(laser-transmitting)」という用語は、980nmの波長で少なくとも10%の透過度を有する、ポリマー組成物又は高電圧用構成材料を記述するのに使用する。本発明に関連して、「レーザー吸収剤」という用語は、2mmの厚みを有する前述のプラークによる、上述の方法による透過率が、0.5%未満であることを意味すると理解されたい。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施形態
好ましい実施形態においては、本発明は、成分A)及びB)に加えてさらに、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、好ましくは1~150質量部の量、より好ましくは5~80質量部の量、最も好ましくは10~50質量部の量の、C)少なくとも1種の充填剤及び/又は補強材を含む熱可塑性ポリマー組成物を含む、組成物又は高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料に関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0047】
さらに好ましい実施形態においては、本発明は、成分A)~C)に加えるか、又はC)に代えて、それぞれの場合において成分A)の100質量部を基準にして、好ましくは3~100質量部の量、より好ましくは5~80質量部の量、最も好ましくは10~50質量部の量の、D)少なくとも1種の難燃剤を含む熱可塑性ポリマー組成物を含む、組成物又は高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料に関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0048】
さらに好ましい実施形態においては、本発明は、成分A)~E)に加えるか、又はC)及び/又はD)に代えてさらに、それぞれの場合において成分A)の100質量部を基準にして、好ましくは0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量のE)少なくとも1種の、成分B)、C)及びD)以外のさらなる添加剤を含む熱可塑性ポリマー組成物を含む、組成物又は高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料に関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0049】
成分A)
本発明に関連して、本発明において成分A)として使用するためのポリアミドは、各種の方法により製造することが可能であり、且つ各種のモノマーから合成することが可能である。ポリアミドを調製するための数多くの手順が公知となっており、所望の最終製品に応じて、種々のモノマー単位、及び所望の分子量とするための各種の連鎖移動剤、或いは、後の工程で意図する後処理のための反応性基を含むモノマーなどを使用することができる。
【0050】
ポリアミドを調製するのに工業的に適したプロセスは、通常、溶融状態での重縮合で進行させる。これに関連して、ラクタムの加水分解的重合もまた、重縮合と考えることができる。
【0051】
有用な反応物質としては、以下のものが挙げられる:脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族及び/又は芳香族ジアミン、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナン-1,9-ジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、例えばアミノカプロン酸、又はそれに相当するラクタム。カプロラクタム、特にはε-カプロラクタムを使用するのが、特に好ましい。複数の上述のモノマーからのコポリアミドも含まれる。
【0052】
好ましいポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸、及び/又は少なくとも5個の環メンバーを有するラクタム、又はそれに相当するアミノ酸から進めて調製される、半晶質のポリアミドである。
【0053】
特に好ましいポリアミドは、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-4,6、及び/又は半芳香族コポリアミドである。好ましい半芳香族コポリアミドは、PA6T/6、PA6T/66、PA6T/6I、又はPA6T/6I/66である。
【0054】
本発明において極めて特に好ましいポリアミドは、ナイロン-6、及びナイロン-6,6であり、ナイロン-6が、極めて特に好ましい。
【0055】
本出願に関連して使用されるポリアミドの命名法は、国際的な標準のISO 1874-1に準じたものであって、最初の数が出発ジアミンの中の炭素原子の数を表し、最後の数がジカルボン酸の中の炭素原子の数を表す。例えばPA6の場合のように、1つだけの数字が記されているならば、これは、出発物質が、α,ω-アミノカルボン酸、又はそれから誘導されるラクタム、すなわちPA6の場合ならば、ε-カプロラクタムであったということを意味する。
【0056】
本発明において成分A)として好適に使用されるPA6[CAS No.25038-54-4]は、好ましくは、ISO 307に従い、96重量%硫酸中0.5重量%溶液で25℃で測定して、80~180mL/gの範囲、より好ましくは85~160mL/gの範囲、最も好ましくは90~140mL/gの範囲の粘度数を有する。本発明においては成分A)として好適に使用されるナイロン-6は、例えば、Lanxess Deutschland GmbH(Cologne)からDurethan(登録商標)B26として入手可能である。
【0057】
成分A)として好適に使用されるナイロン-6,6[CAS No.32131-17-2]は、好ましくは、ISO 307に従い、96重量%硫酸中0.5重量%溶液で25℃で測定して、80~180mL/gの範囲、さらにより好ましくは85~160mL/gの範囲、特に好ましくは90~140mL/gの範囲の粘度数を有する。本発明においては成分A)として好適に使用されるナイロン-6,6は、例えば、BASF SE(Ludwigshafen)からUltramid(登録商標)A24E01として入手可能である。
【0058】
本発明において成分A)として使用するためのポリアミドは、少なくとも1種の他のポリアミド及び/又は少なくとも1種の他のポリマーとの混合物の形態で使用することも可能である。好ましい他のポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)の群から選択される。少なくとも1種のさらなるポリアミド、又は少なくとも1種の他のポリマーと使用する場合、これは、好ましくは又は場合によっては、少なくとも1種の相溶化剤の使用と組み合わせる。
【0059】
当業者に公知の慣用される添加剤、好ましくは離型剤、安定剤及び/又は流動助剤を、成分A)として使用されるポリアミドの中に既に溶融された形で混合することも可能である。
【0060】
したがって、本発明において、少なくともナイロン-6及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物が好ましい。
【0061】
本発明においてはさらに、ナイロン-6,6及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物が好ましい。
【0062】
さらに好ましいのは、ナイロン-6又はナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用したポリマー組成物である。
【0063】
さらに好ましいのは、ナイロン-6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用したポリマー組成物である。
【0064】
さらに好ましいのは、ナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用したポリマー組成物である。
【0065】
本発明はさらに、少なくとも1種のナイロン-6又はナイロン-6,6及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を提供する。
【0066】
本発明はさらに、ナイロン-6及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を提供する。
【0067】
本発明はさらに、ナイロン-6,6及び10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を提供する。
【0068】
本発明はさらに、ナイロン-6又はナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとした、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供する。
【0069】
本発明はさらに、ナイロン-6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとした、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供する。
【0070】
本発明はさらに、ナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~5質量部、より好ましくは0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとした、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供する。
【0071】
本発明はさらに、ナイロン-6又はナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、波長980nmで少なくとも10%のレーザー透明度を有する、レーザー透明性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。
【0072】
本発明はさらに、ナイロン-6の100質量部あたり、0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、波長980nmで少なくとも10%のレーザー透明度を有する、レーザー透明性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。
【0073】
本発明はさらに、少なくとも10%の980nmの波長でのレーザー透明度を有する、ナイロン-6,6の100質量部あたり、0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを含むポリマー組成物をベースとする、レーザー透明性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。
【0074】
本発明はさらに、ナイロン-6又はナイロン-6,6の100質量部あたり0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、並びに、三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤を含むポリマー組成物をベースとする,レーザー吸収性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが、特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。添加剤E)として使用するためのレーザー吸収剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量で使用される。
【0075】
本発明はさらに、ナイロン-6の100質量部あたり0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、並びに、三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤を含むポリマー組成物をベースとする,レーザー吸収性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが、特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。添加剤E)として使用するためのレーザー吸収剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量で使用される。
【0076】
本発明はさらに、ナイロン-6,6の100質量部あたり0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、並びに、三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤を含むポリマー組成物をベースとする,レーザー吸収性高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料も提供し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが、特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。添加剤E)として使用するためのレーザー吸収剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量で使用される。
【0077】
本発明はさらに、ナイロン-6又はナイロン-6,6をベースとするポリマー組成物、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6をベースとする高電圧用構成材料、特にナイロン-6又はナイロン-6,6をベースとする電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関する。
【0078】
本発明はさらに、ナイロン-6をベースとするポリマー組成物、好ましくはナイロン-6をベースとする高電圧用構成材料、特にナイロン-6をベースとする電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関する。
【0079】
本発明はさらに、ナイロン-6,6をベースとするポリマー組成物、好ましくはナイロン-6,6をベースとする高電圧用構成材料、特にナイロン-6,6をベースとする電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関する。
【0080】
本発明は最後に、高電圧用構成材料としてのナイロン-6又はナイロン-6,6をベースとする製品をマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用に関する。
【0081】
本発明は最後に、高電圧用構成材料としてのナイロン-6をベースとする製品をマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用に関する。
【0082】
本発明は最後に、高電圧用構成材料としてのナイロン-6,6をベースとする製品をマーキングするための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用に関する。
【0083】
成分B)
本発明においては、使用される成分B)は、式(I)の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン[CAS No.203576-97-0]である。
【化2】
【0084】
10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンは、欧州特許出願公開第1118640A1号明細書実施例3)に記載の合成経路で調製することもでき、又は、Angene International Limited,UK Office(Churchill House,London)から入手することもできる。
【0085】
10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンは、粉体の形態で直接、又は他にマスターバッチ、圧縮粉若しくは濃縮物の形態で使用され得、好ましいのはマスターバッチであり、特に好ましいのは、特定の成分A)に相当するポリマーマトリックス中のマスターバッチである。
【0086】
成分C)
好ましい実施形態においては、少なくとも1種の充填剤又は補強材が、成分C)として使用される。この場合、2種以上の異なった充填剤及び/又は補強材の混合物を使用することもまた可能である。
【0087】
以下の群からの、少なくとも1種の充填剤又は補強材を使用することが好ましい:炭素繊維[CAS No.7440-44-0]、ガラスビーズ、又は中実若しくは中空のガラスビーズ、若しくはガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)[CAS No.65997-17-3]、非晶質シリカ[CAS No.7631-86-9]、石英粉[CAS No.14808-60-7]、ケイ酸カルシウム[CAS No.1344-95-2]、メタケイ酸カルシウム[CAS No.10101-39-0]、炭酸マグネシウム[CAS No.546-93-0]、カオリン[CAS No.1332-58-7]、焼成カオリン[CAS No.92704-41-1]、白亜[CAS No.1317-65-3]、カイアナイト、[CAS No.1302-76-7]、粉体化若しくは摩砕石英[CAS No.14808-60-7]、マイカ[CAS No.1318-94-1]、金雲母[CAS No.12251-00-2]、硫酸バリウム[CAS No.7727-43-7]、長石[CAS No.68476-25-5]、ウォラストナイト[CAS No.13983-17-0]、モンモリロナイト[CAS No.67479-91-8]、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム[CAS No.12125-28-9]、及びタルク[CAS No.14807-96-6]。
【0088】
繊維質の充填剤又は補強材の中では、ガラス繊維及びウォラストナイトが特に好ましく、極めて特に好ましいのは、ガラス繊維である。レーザー吸収成分/レーザー吸収剤高電圧用構成材料の場合、炭素繊維を充填剤又は補強材としても使用され得る。
【0089】
ガラス繊維に関しては、“http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund”によれば、当業者であれば、チョップト繊維(短繊維とも呼ばれる)(長さ範囲:0.1~1mm)、長繊維(長さ範囲:1~50mm)、及び連続繊維(長さ:50mm超)を、区別できるであろう。短繊維は、好ましくは、射出成形技術で使用され、エクストルーダーを用いて直接加工され得る。長繊維もやはり、エクストルーダーで加工することができる。前記繊維は、繊維スプレー法に広く使用されている。長繊維は、熱硬化性樹脂に充填剤として添加されることが多い。連続繊維は、繊維強化プラスチックにおいて、ロービング又は生地の形態で使用される。連続繊維を含む製品は、最高の剛性及び強度値を与える。同様に利用可能なものは、摩砕したガラス繊維であって、摩砕した後のそれらの長さは、典型的には70~200μmの範囲である。
【0090】
本発明において成分C)として好適に使用されるガラス繊維は、ISO 13320に記載のレーザー回折粒径分析(レーザーグラニュロメトリー/レーザー回折法)により測定して、1~50mmの範囲,より好ましくは1~10mmの範囲、最も好ましくは2~7mmの範囲の平均開始時長さを有する、チョップト長ガラス繊維である。標準ISO 13320によるレーザー回折粒径測定法/レーザー回折法については、次のサイトを参照されたい。
https://de.wikipedia.org/wiki/Laserbeugungs-Partikelgr%C3%B6%C3%9Fenanalyse
【0091】
成分C)として使用する好ましいガラス繊維は、ISO 13320に従うレーザー回折法によって測定して、好ましくは7~18μmの範囲、より好ましくは9~15μmの平均繊維直径を有する。
【0092】
好ましい実施形態においては、成分C)として好適に使用されるガラス繊維を、適切なサイジング系又は接着促進剤/接着促進剤系を用いて変性する。シランをベースとするサイジング系又は接着促進剤を使用することが好ましい。成分C)として好適に使用するためのガラス繊維を処理するのに特に好ましいシランベースの接着促進剤は、一般式(II)のシラン化合物である。
(X-(CH
2)
q)
k-Si-(O-C
rH
2r+1)
4-k (II)
[式中、
Xは、NH
2-、カルボキシル-、HO-、又は
【化3】
であり、
式(XI)中のqは、2~10、好ましくは3~4の整数を表し、
式(XI)中のrは、1~5、好ましくは1~2の整数を表し、
式(XI)中のkは、1~3の整数、好ましくは1を表す]。
【0093】
特に好ましい接着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、並びにX置換基としてグリシジル基又はカルボキシル基を含む相当するシランの群からのシラン化合物であり、極めて特に好ましいのは、特にカルボキシル基である。
【0094】
成分C)として好適に使用されるガラス繊維を変性するためには、接着促進剤、好ましくは式(II)のシラン化合物を、それぞれの場合において成分C)の100重量%を基準にして、好ましくは0.05%~2重量%の量、より好ましくは0.25%~1.5重量%の量、最も好ましくは0.5%~1重量%の量で使用する。
【0095】
成分C)として好適に使用されるガラス繊維は、組成物を得るため、又は製品を得るために加工した結果として、組成物の中、又は製品の中で、元々使用されたガラス繊維より短くなり得る。したがって、加工した後でのガラス繊維の長さの、高分解能X線CTによって求めた算術平均は、多くの場合、わずか150μm~300μmの範囲でしかない。
【0096】
“http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern”によれば、ガラス繊維は、溶融紡糸プロセス(ダイドローイング、ロッドドローイング及びダイブローイングプロセス)で製造される。ダイドローイングプロセスにおいては、加熱されたガラス素材は、白金紡糸口金プレートの数百個のダイ孔を通して重力下に流れ出る。それらのフィラメントは、3~4km/分の速度で無限の長さに引き出すことができる。
【0097】
当業者は、各種のタイプのガラス繊維を区別しており、例としてそのいくつかをここに列記する。
・ Eガラス:最適な費用-便益比を有する、最も一般的に使用されている材料(R&G製のEガラス)、“https://www.r-g/de/wiki/Glasfasern”による組成は、53~55%のSiO2、14~15%のAl2O3、6~8%のB2O3、17~22%のCaO、5%未満のMgO、1%未満のK2O又はNa2O、及び約1%のその他の酸化物
・ Hガラス:重量を減少させるための中空ガラス繊維(R&G製の中空ガラス繊維織布、160g/m2及び216g/m2)
・ R,Sガラス:機械的に高性能が要求される用途のため(R&G製のS2ガラス)
・ Dガラス:電気的に高性能が要求される用途のためのボロシリケートガラス
・ Cガラス:高い耐化学薬品性を有する
・ 石英ガラス:高い熱安定性を有する
【0098】
さらなる例は、“http://de.wikipedia.org/wiki/Glasfaser”に見出すことができる。プラスチックの補強のためには、Eガラス繊維に最大の関心が寄せられている。「E」は電気絶縁ガラスを表し、その理由は、それが、元々、特に電気産業で使用されていたからである。Eガラスを製造するためには、純粋な石英に石灰石、カオリン及びホウ酸を加えて、ガラス溶融物が製造される。二酸化ケイ素と共に、それらは異なる量で各種の金属酸化物を含んでいる。それらの組成が製品の性質を決定する。本発明においては、Eガラス、Hガラス、R,Sガラス、Dガラス、Cガラス及び石英ガラスの群からの少なくとも1つのタイプのガラス繊維を使用することが好ましく、Eガラスから製造したガラス繊維が特に好ましい。
【0099】
Eガラスから製造したガラス繊維は、最も一般的に使用されている補強材料である。その強度特性は、金属(例えば、アルミニウム合金)のそれに匹敵し、Eガラス繊維を含む積層品の比重は、金属のそれよりも低い。Eガラス繊維は、不燃性で、約400℃までの耐熱性を有し、ほとんどの化学薬品に対しては安定であり、耐候性もある。
【0100】
成分C)として好適に使用されるものとしてはさらに、針状の鉱物質充填剤がある。本発明においては、針状の鉱物質充填剤とは、極めて鋭い針状の特性を有する鉱物質充填剤を意味すると理解されたい。成分C)として使用するのに好ましい針状の鉱物質充填剤は、ウォラストナイトである。その針状の鉱物質充填剤が、高分解能X線CTで求めて、好ましくは2:1~35:1までの範囲、より好ましくは3:1~19:1までの範囲、特別に好ましくは4:1~12:1までの範囲の、長さ:直径の比率を有する。高分解能X線CTで求めた針状の鉱物質充填剤の平均粒径は、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、特別に好ましくは10μm未満である。
【0101】
成分C)として好適に使用されるのはさらに、ISO 13320に従いレーザー回折法によって求めた粒径分布が、5~250μmの範囲、好ましくは10~150μmの範囲、より好ましくは15~80μmの範囲、最も好ましくは16~25μmの範囲のd90を有する、非繊維質で非発泡の摩砕ガラスである。d90値、それらの測定法、及びそれらの重要性については、Chemie Ingenieur Technik(72),pp.273~276(3/2000,Wiley-VCH Verlags BmbH(Weinheim),2000)を参照されたく、それによると、d90値とは、それより下に、粒子の量の90%が存在する粒径である。
【0102】
その非繊維質で非発泡の摩砕ガラスが、微粒子状で、非円筒形の形状を有し、ISO 13320に従いレーザー回折法によって求めて、5未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満の、長さ対厚みの比を有することが、本発明においては好ましい。ゼロの値はあり得ないと理解されたい。
【0103】
成分C)として使用するのに特に好適な非発泡で非繊維状の摩砕ガラスはさらに、繊維状ガラスに典型的な、ISO 13320に従ってレーザー回折法によって求め、5を超える長さ対直径の比(L/D比)の円筒状又は楕円状の断面のガラスの形状を有さないことを特徴とする。
【0104】
本発明において成分C)として特に好適に使用される非発泡で非繊維質な摩砕ガラスは、好ましくはミル、好ましくはボールミルを用いてガラスを摩砕し、より好ましくはその後で篩別(sifting)又は篩別(sieving)することによって得られる。成分C)として使用するための非繊維状で非発泡の摩砕ガラスを摩砕するための、好ましい出発物質としては、一実施形態において、特にガラス製品の製造中に望ましくない副生物として、及び/又は規格外の一次製品(規格外物質と呼ばれる)として発生する、ガラスの廃品が挙げられる。そのようなものとしては特に、廃ガラス、リサイクルガラス及び破損ガラス、特に窓ガラスやビンガラスの製造の際に得ることができるもの、及びガラス含有充填剤及び補強材の製造の際に得ることができるもの、特にメルトケーキと呼ばれる形態にあるものが挙げられる。それらのガラスは着色されていてもよいが、成分C)として使用するための出発物質としては、無着色のガラスが好ましい。
【0105】
成分D)
好ましい実施形態においては、少なくとも1種の難燃剤が、成分D)として使用される。好ましい難燃剤は、成分C)以外の鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤である。
【0106】
鉱物質難燃剤の中でも、水酸化マグネシウムが特に好ましい。水酸化マグネシウム[CAS No.1309-42-8]は、その原産地及び製造方法の結果として不純物が混入し得る。典型的な不純物としては、例えばケイ素-、鉄-、カルシウム-、及び/又はアルミニウム-含有の化学種が挙げられ、それらは、例えば水酸化マグネシウム結晶の中で、酸化物の形態で混入し得る。鉱物質難燃剤として使用するための水酸化マグネシウムは、サイズ剤処理されていなくてもよく、又は他にはサイズ剤処理されていてもよい。鉱物質難燃剤として使用するための水酸化マグネシウムは、好ましくは、ステアレート又はアミノシロキサンをベースとするサイジング、より好ましくはアミノシロキサンを用いたサイジングで提供される。鉱物質難燃剤として使用するための水酸化マグネシウムが、ISO 13320に従うレーザー回折法によって求めて、0.5μm~6μmの範囲のメディアン粒径d50を有するのが好ましく、その中でも0.7μm~3.8μmの範囲のd50が好ましく、及び1.0μm~2.6μmの範囲のd50が特に好ましい。
【0107】
本発明における鉱物質難燃剤として好適な水酸化マグネシウムのタイプとしては、例えばMagnifin(登録商標)H5IV(Martinswerk GmbH(Bergheim,Germany)製)、又はHidromag(登録商標)Q2015TC(Penoles(Mexico City、Mexico)製)が挙げられる。
【0108】
好ましい窒素含有難燃剤は、以下のものである:トリクロロトリアジン、ピペラジン、及びCAS No.1078142-02-5のモルホリンの反応生成物、特にはMCA PPM Triazine HF(MCA Technologies GmbH(Biel-Benken,Switzerland)製)、さらにはメラミンシアヌレート、及びメラミンの縮合反応生成物、具体的にはメレム(melem)、メラム(melam)、メロン(melon)、又はこのタイプでさらに縮合度の高い化合物。好適な無機窒素含有化合物は、アンモニウム塩である。
【0109】
加えて、脂肪族及び芳香族スルホン酸と、鉱物質難燃性添加剤、特には水酸化アルミニウム、又は炭酸Ca-Mg水和物との塩(独国特許出願第A4236122号明細書)を使用することもまた可能である。
【0110】
成分D)として使用するのに同様に適しているのは、酸素-、窒素-、又は硫黄-含有金属化合物の群からの難燃性相乗剤である。それらの中でも好ましいのは、亜鉛フリーの化合物、特には酸化モリブデン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化チタン、窒化マグネシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、又はそれらの混合物である。
【0111】
しかしながら、また別な実施形態においては、必要があれば、成分D)として亜鉛含有化合物を使用することもまた可能である。それらとしては、好ましくは、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、及び窒化亜鉛、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0112】
好ましいリン含有難燃剤は、以下のものである:有機金属ホスフィン酸塩、ホスホン酸のアルミニウム塩、赤リン、無機金属次亜リン酸塩、金属ホスホン酸塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドの誘導体(DOPO誘導体)、レソルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)(オリゴマーを含む)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)(オリゴマーを含む)、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンポリ(アルミニウムホスフェート)、メラミンポリ(ジンクホスフェート)、又はフェノキシホスファゼンオリゴマー、及びそれらの混合物。
【0113】
好ましい有機金属ホスフィン酸塩は、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)である。好ましい無機金属次亜リン酸塩は、次亜リン酸アルミニウムである。
【0114】
成分D)として使用されるさらなる難燃剤としては、炭化層形成物、より好ましくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリエーテルケトン、及び、滴り防止剤(antidrip agent)、特にはテトラフルオロエチレンポリマーが挙げられる。
【0115】
成分D)として使用するための難燃剤は、純粋な形で添加されもよく、又は他にマスターバッチ若しくは濃縮物として添加されてもよい。
【0116】
しかしながら、また別な実施形態においては、(必要であり、且つ難燃剤からハロゲンをなくす自由を失う不利を考慮に入れるなら)、ハロゲン含有難燃剤を難燃剤として使用することもまた可能である。好ましいハロゲン含有難燃剤は、市販されている有機ハロゲン化合物であって、より好ましくはエチレン-1,2-ビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリスチレン、若しくは臭素化ポリフェニレンエーテルであり、それらは単独で使用することも、又は相乗剤、特に三酸化アンチモン又は五酸化アンチモンと組み合わせて使用することもでき、特に好ましいのは、ハロゲン含有難燃剤の中でも臭素化ポリスチレンである。臭素化ポリスチレンは、それぞれの場合において、組成物全体を基準にして、好ましくは10重量%~30重量%の範囲の量、より好ましくは15重量%~25重量%の範囲の量で使用され、その場合、その他の成分の少なくとも1つを削減して、重量パーセントを合計したものが常に100になるようにする。
【0117】
臭素化ポリスチレンは、広く各種の製品品質で市販されている。それらの例としては、例えばFiremaster(登録商標)PBS64(Lanxess(Cologne,Germany)製)、及びSaytex(登録商標)HP-3010(Albemarle(Baton Rouge,USA)製)が挙げられる。
【0118】
成分D)として使用するための難燃剤の中でも、極めて特に好ましいのは、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)[CAS No.225789-38-8]、並びに、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とメラミンポリホスフェートとの組合せ、又はアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)と、少なくとも1種のホスホン酸のアルミニウム塩との組合せであり、後者の組合せが特別に好ましい。
【0119】
アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)[CAS No.225789-38-8]、又はアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とメラミンポリホスフェートとの組合せ、又はアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せは、それぞれの場合において全組成物を基準にして、好ましくは5~35重量%の量、より好ましくは10~30重量%の量、最も好ましくは15~25重量%の量で使用され、この場合、他の構成材料の少なくとも1種を削減して、重量パーセントを合計したものが常に100になるようにする。
【0120】
アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とメラミンポリホスフェートの組合せ、又はアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せの場合、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)の比率が、それぞれの場合において、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とメラミンポリホスフェートとの組合せ、又はアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せの100重量部を基準にして、好ましくは40~90重量部、より好ましくは50~80重量部、最も好ましくは60~70重量部である。
【0121】
成分D)として使用するのに好適なアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)の例は、Exolit(登録商標)OP1230又はExolit(登録商標)OP1240(Clariant International Ltd.(Muttenz,Switzerland)製)である。メラミンポリホスフェートは、広く各種の製品品質で市販されている。その例としては、例えば、Melapur(登録商標)200/70(BASF(Ludwigshafen,Germany)製)、及びBudit(登録商標)3141(Budenheim(Budenheim,Germany)製)が挙げられる。
【0122】
好ましいホスホン酸のアルミニウム塩は、以下の群から選択される:
第一ホスホン酸アルミニウム[Al(H2PO3)3]、
塩基性ホスホン酸アルミニウム[Al(OH)H2PO3)2・2H2O]、
Al2(HPO3)3・xAl2O3・nH2O
(ここで、xは2.27~1の範囲であり、及びnは、0~4の範囲である)、
Al2(HPO3)3・(H2O)q (III)
(ここで、qは、0~4の範囲である)、特にホスホン酸アルミニウム四水和物[Al2(HPO3)3・4H2O]又は第二ホスホン酸アルミニウム[Al2(HPO3)3]、
Al2Mz(HPO3)y(OH)v・(H2O)w (IV)
(ここで、Mはアルカリ金属イオンを表し、zは0.01~1.5の範囲、yは2.63~3.5の範囲、vは0~2の範囲、及びwは0~4の範囲である)、及び
Al2(HPO3)u(H2PO3)t・(H2O)s (V)
(ここで、uは2~2.99の範囲、tは2~0.01の範囲、及びsは0~4の範囲である)、
ここで、式(IV)におけるz、y、及びv、並びに式(V)におけるu及びtは、対応するホスホン酸のアルミニウム塩が全体として電荷を有さないような数だけを想定することがよい。
【0123】
式(IV)における好ましいアルカリ金属Mは、ナトリウム及びカリウムである。
【0124】
記載されたホスホン酸のアルミニウム塩は、個別に使用することも、又は混合物中で使用することもできる。
【0125】
特に好ましいホスホン酸のアルミニウム塩は、以下の群から選択される:
第一ホスホン酸アルミニウム[Al(H2PO3)3]、
第二ホスホン酸アルミニウム[Al2(HPO3)3]、
塩基性ホスホン酸アルミニウム[Al(OH)H2PO3)2・2H2O]、
ホスホン酸アルミニウム四水和物[Al2(HPO3)3・4H2O]、及び
Al2(HPO3)3・xAl2O3・nH2O(ここで、xは2.27~1の範囲であり、及びnは、0~4の範囲である)。
【0126】
極めて特に好ましいのは、第二ホスホン酸アルミニウムのAl2(HPO3)3[CAS No.71449-76-8]及び第二ホスホン酸アルミニウム四水和物のAl2(HPO3)3・4H2O[CAS No.156024-71-4]であり、とりわけ好ましいのは、第二ホスホン酸アルミニウムのAl2(HPO3)3である。
【0127】
本発明において成分D)として使用するためのホスホン酸のアルミニウム塩の調製法は、例えば国際公開第2013/083247A1号パンフレットに記載されている。典型的にはそれには、アルミニウム源、好ましくはアルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム又は水酸化アルミニウムと、リン源、好ましくはホスホン酸、ホスホン酸アンモニウム、ホスホン酸アルカリ金属塩とを、場合によってはテンプレートと共に、溶液中、20℃~200℃で、最高で4日間までの時間をかけて反応させることが含まれる。この目的のためには、アルミニウム源とリン源とを混合し、水熱反応条件下又はリフラックス条件下で加熱し、濾過し、洗浄し、乾燥させる。好ましいテンプレートは、ヘキサン-1,6-ジアミン、グアニジンカーボネート、又はアンモニアである。好ましい溶媒は、水である。
【0128】
成分E)
使用される成分E)は、成分B)~D)以外の、少なくとも1種のさらなる添加剤である。成分E)として使用するための好ましい添加剤は、以下のものである:抗酸化剤、熱安定剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、水吸収抑制のための成分又は加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、成核剤、可塑剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤及び/又は離型剤、水吸収抑制のための成分、流動助剤若しくはエラストマー変性剤、鎖伸長性添加剤、成分B)とは別の着色剤、並びにレーザー吸収性成分若しくは高電圧用構成材料の場合には、レーザー吸収剤。それらの添加剤は単独で使用してもよいし、又は混合物として、又はマスターバッチの形態で使用してもよい。
【0129】
成分E)の好ましい熱安定剤は、以下のものである:立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、及びさらに亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン、3,3’-チオジプロピオネート、及びこれらの群の各種置換されたもの、又はそれらの混合物。
【0130】
一実施形態において、成分E)において使用される熱安定剤は銅塩であり得、好ましくは次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2との組合せであり得る。使用される銅塩は、好ましくはヨウ化銅(I)[CAS No.7681-65-4]、及び/又はヨウ化(トリフェニルホスフィノ)銅[CAS No.47107-74-4]である。銅塩は、次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2と、又は少なくとも1種のアルカリ金属ヨウ化物と組み合わせて使用されるのが好ましい。好ましいアルカリ金属ヨウ化物は、ヨウ化カリウム[CAS No.7681-11-0]である。
【0131】
成分E)として使用する熱安定剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、好ましくは0.01~2質量部の量、より好ましくは0.05~1質量部の量で使用される。
【0132】
成分E)として使用するためのUV安定剤としては、置換レソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン、少なくとも1種の2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル単位を含むHALS誘導体(”Hindered Amine Light Stabilizers”)又はベンゾフェノンを使用することが好ましい。
【0133】
成分E)として使用するUV安定剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、好ましくは0.01~2質量部の量、より好ましくは0.1~1質量部の量で使用される。
【0134】
成分E)として使用可能な成分B)とは別の着色剤としては、以下のものが挙げられる:好ましくは無機顔料、特にウルトラマリンブルー、バナジン酸ビスマス、酸化鉄、二酸化チタン、硫化亜鉛、亜鉛-チタン-酸化亜鉛[CAS No.923954-49-8]、さらには有機染料、好ましくはフタロシアニン、キナクリドン、ベンゾイミダゾール、特にNi-2-ヒドロキシナフチルベンゾイミダゾール[CAS No.42844-93-9]、及び/又はピリミジンアゾベンゾイミダゾール[CAS No.72102-84-2]、及び/又はピグメントイエロー192[CAS No.56279-27-7]、並びにさらにはペリレン、アントラキノン、特にC.I.ソルベントイエロー163[CAS No.13676-91-0](この列挙は完全ではない)。
【0135】
一実施形態において、レーザー吸収性の成分/高電圧用構成材料の場合、好ましくはカーボンブラック又はニグロシンも着色剤として使用される。
【0136】
成分E)として使用するための成核剤は、好ましくは、フェニルホスフィン酸ナトリウム又はフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素、最も好ましくはタルクであるが、この列挙は網羅的ではない。
【0137】
成分E)として使用するための流動助剤は、少なくとも1種のα-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。ここで特に好ましいのは、そのα-オレフィンがエテン及び/又はプロペンから形成され、そのメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルが、そのアルコール構成材料として、6~20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基を含んでいるコポリマーである。極めて特に好ましいのは、アクリル酸2-エチルヘキシルである。流動助剤として好適なコポリマーの特徴は、それらの組成だけではなく、それらが低分子量であることである。したがって、本発明において熱分解から保護されるべき組成物に好適なコポリマーは特に、190℃、加重2.16kgで測定したMFI値が、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、より好ましくは少なくとも300g/10分であるようなものである。MFI、すなわちメルトフローインデックスは、熱可塑性プラスチックの溶融物の流動特性を特徴付け、これは、標準のISO 1133又はASTM D 1238に規定されている。使用される流動助剤は、特に好ましくは、550のMFIを有するエテンとアクリル酸2-エチルヘキシルとのコポリマーであり、Lotryl(登録商標)37EH550として知られている。
【0138】
成分E)として使用するための鎖伸長性添加剤は、1分子あたり少なくとも2個の分岐性又は鎖伸長性官能基を含む、二官能又は多官能の分岐性又は鎖伸長性添加剤が好ましい。好ましい分岐性又は鎖伸長性添加剤としては、1分子あたり少なくとも2個の、一級及び/又は二級アミノ基及び/又はアミド基及び/又はカルボン酸基と反応することが可能な鎖伸長性官能基を有する低分子量又はオリゴマー性化合物が挙げられる。鎖伸張性官能基は、好ましくはイソシアネート、アルコール、ブロックトイソシアネート、エポキシド、無水マレイン酸、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾロンであり、好ましくはエポキシドである。
【0139】
特に好ましい二官能又は多官能の分岐性又は鎖伸張性添加剤としては、以下のものが挙げられる:ジグリシジルエーテルをベースとするジエポキシド(ビスフェノールとエピクロロヒドリン)、アミンエポキシ樹脂をベースとするジエポキシド(アニリンとエピクロロヒドリン)、ジグリシジルエステルをベースとするジエポキシド(脂環族ジカルボン酸とエピクロロヒドリン)の個別又は混合物の形、並びにさらには2,2-ビス[p-ヒドロキシフェニル]プロパンジグリシジルエーテル、ビス[p-(N-メチル-N-2,3-エポキシプロピルアミノ)フェニル]メタン、及び1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を含むグリセロールのエポキシ化脂肪酸エステル。
【0140】
特に好ましい二官能又は多官能の分岐性又は鎖伸張性添加剤は、グリシジルエーテル、最も好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル[CAS No.98460-24-3]又はグリセロールのエポキシ化脂肪酸エステル、及びさらには極めて特に最も好ましくはエポキシ化ダイズ油[CAS No.8013-07-8]、及び/又はエポキシ化アマニ油である。
【0141】
成分E)として使用するのに好適な可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素オイル、又はN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0142】
成分E)として好ましくは使用されるエラストマー変性剤は、以下のものの1種又は複数のグラフトポリマーを含む:
E.1:5重量%~95重量%、好ましくは30重量%~90重量%の、少なくとも1種のビニルモノマー、及び
E.2:95重量%~5重量%、好ましくは70重量%~10重量%の、1種又は複数の、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有するグラフトベース、(ここで、重量%は、エラストマー変性剤の100重量%を基準にしたものである)。
【0143】
グラフトベースE.2は、一般的には、0.05~10μm、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.2~1μmの、ISO 13320に従いレーザー回折法によって求めた平均粒径d50値を有する。
【0144】
E.1モノマーは、以下のものの混合物であるのが好ましい:
E.1.1:50重量%~99重量%の、ビニル芳香族化合物及び/又は環置換されたビニル芳香族化合物、特には、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、及び/又はメタクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、並びに
E.1.2:1重量%~50重量%の、ビニルシアニド、特には不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル、及び/又は(メタ)アクリル酸(C1~C8)-アルキル、特にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体、特には無水物及びイミド、特には無水マレイン酸又はN-フェニルマレイミド(ここで、重量%は、エラストマー変性剤の100重量%を基準にしたものである)。
【0145】
好適なモノマーE.1.1は、スチレン、α-メチルスチレン及びメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択され、好適なモノマーE.1.2は、アクリロニトリル、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジル、及びメタクリル酸メチルのモノマーの少なくとも1種から選択される。特に好適なモノマーは、E.1.1ではスチレン、E.1.2ではアクリロニトリルである。
【0146】
エラストマー変性剤において使用するグラフトポリマーに好適なグラフトベースのE.2は、例えば、以下のものである:ジエンゴム、EPDMゴム、すなわちエチレン/プロピレン及び場合によってはジエンをベースとするもの、さらには、アクリル酸エステル、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン、及びエチレン/酢酸ビニルゴム。EPDMは、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを表す。
【0147】
好適なグラフトベースのE.2は、ジエンゴム、特にブタジエン、イソプレンなどをベースとするもの、又はジエンゴム若しくはジエンゴムのコポリマー若しくはそれらの混合物と、さらなる共重合性モノマー、特にE.1.1及びE.1.2との混合物であり、但し、成分E.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-10℃未満である。
【0148】
特に好適なグラフトベースE.2は、ABSポリマー(エマルション法、バルク法、及び懸濁法のABS)であり、ここでABSは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンを表し、例えば以下の文献に記載されている:独国特許出願公開第A2035390号明細書、又は独国特許出願公開第A2 248 242号明細書、又は“Ullmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie”,vol.19(1980),p.277~295。グラフトベースE.2のゲル含量は、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%である(トルエン中で測定)。
【0149】
成分E)として使用するためのエラストマー変性剤/グラフトポリマーは、フリーラジカル重合、好ましくはエマルション重合、懸濁重合、溶液重合、又はバルク重合、特には、エマルション重合又はバルク重合で製造される。
【0150】
特に好適なグラフトゴムとしてはさらに、ABSポリマーが挙げられ、このものは、米国特許第A4937285号明細書に従って、有機過酸化物とアスコルビン酸とからなる開始剤系を用いた酸化還元開始法によって製造される。
【0151】
周知のように、グラフト化反応においては、グラフトモノマーはその全部がグラフトベースの上にグラフトされる必要はないので、グラフトポリマーは、本発明においては、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーを(共)重合させ、さらに仕上げ作業によって得られた反応生成物を意味すると理解されたい。
【0152】
同様に好適なアクリレートゴムは、好ましくはアクリル酸アルキルのポリマーであるグラフトベースE.2をベースとし、場合によっては、E.2を基準にして最高40重量%までの、その他の重合性エチレン性不飽和モノマーを組み合わせたものである。好適な重合性アクリル酸エステルとしては、以下のものが挙げられる:C1~C8-アルキルエステル、好ましくはメチル、エチル、ブチル、n-オクチル及び2-エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロC1~C8-アルキルエステル、例えばアクリル酸クロロエチル、グリシジルエステル、及びそれらのモノマーの混合物。コアとしてのアクリル酸ブチルとシェルとしてのメタクリル酸メチルを含むグラフトポリマー、特には、Dow Corning Corporation,Midland Michigan,USA製の、Paraloid(登録商標)EXL2300が特に好ましい。
【0153】
エチレン性不飽和モノマーに代えて、架橋は、2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを共重合させることによって達成され得る。好ましい架橋性モノマーとしては、以下のものが挙げられる:3~8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3~12個の炭素原子を有する不飽和1価アルコール又は2~4個のOH基及び2~20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル;ポリ不飽和ヘテロサイクリック化合物、好ましくはトリビニルシアヌレート及びトリアリルシアヌレート;多官能ビニル化合物、好ましくはジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン;さらにはリン酸トリアリル及びフタル酸ジアリル。
【0154】
特に好適な架橋性モノマーは、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、及び少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロサイクリック化合物である。
【0155】
極めて特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋されたモノマーの量は、グラフトベースE.2を基準にして、好ましくは0.02%~5重量%、特には0.05%~2重量%である。
【0156】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合には、グラフトベースE.2を1重量%未満の量に限定することが有利である。
【0157】
アクリルエステルに加えて、場合によってはグラフトベースE.2を製造するために使用することが可能な、好ましい「その他の」重合性で、エチレン性の不飽和モノマーとしては以下のものが挙げられる:アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC1~C6-アルキルエーテル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、ブタジエン。グラフトベースE.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有するエマルションポリマーである。
【0158】
E.2のさらなる好適なグラフトベースは、例えば以下の特許に記載されているような、グラフト-活性なサイトを有するシリコーンゴムである:独国特許出願公開第A3704657号明細書、独国特許出願公開第A3704655号明細書、独国特許出願公開第A3631540号明細書、及び独国特許出願公開第A3631539号明細書。
【0159】
シリコーン成分を含む好ましいグラフトポリマーは、シェルとしてメタクリル酸メチル又はスチレン-アクリロニトリルを、及びコアとしてシリコーン/アクリル酸エステルグラフト物を有するものである。シェルとして好適に使用されるスチレン-アクリロニトリルは、Metablen(登録商標)SRK200である。シェルとして好適に使用されるメタクリル酸メチルは、Metablen(登録商標)S2001、又はMetablen(登録商標)S2030、又はMetablen(登録商標)SX-005である。Metablen(登録商標)S2001を使用することが特に好ましい。Metablen(登録商標)の商品名を有する製品は、三菱レイヨン(株)(日本国、東京)から入手することが可能である。
【0160】
架橋は、2個以上の重合性二重結合を有する共重合性モノマーによって達成することが可能である。架橋性モノマーの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:3~8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3~12個の炭素原子を有する不飽和1価アルコール又は2~4個のOH基及び2~20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、好ましくは、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル;ポリ不飽和ヘテロサイクリック化合物、好ましくはトリビニルシアヌレート及びトリアリルシアヌレート;多官能ビニル化合物、好ましくはジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン;さらにはリン酸トリアリル及びフタル酸ジアリル。
【0161】
好適な架橋性モノマーは、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル、及び少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロサイクリック化合物である。
【0162】
特に好適な架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋されたモノマーの量は、グラフトベースE.2を基準にして、好ましくは0.02%~5重量%、特には0.05%~2重量%である。
【0163】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合には、グラフトベースE.2を1重量%未満の量に限定することが有利である。
【0164】
アクリルエステルに加えて、場合によってはグラフトベースE.2を製造するために使用し得る、好ましい「その他の」重合性でエチレン性の不飽和モノマーとして、以下のものが挙げられる:アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC1~C6-アルキルエーテル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、ブタジエン。グラフトベースE.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有するエマルションポリマーである。
【0165】
グラフトポリマーをベースとするエラストマー変性剤に加えて、グラフトポリマーをベースとせず、10℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは-20℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー変性剤を使用することも可能である。好ましくは、これらには、ブロックコポリマー構造を有するエラストマー及びそれに加えて、熱可塑性的に溶融することが可能なエラストマー、特に、EPM、EPDM及び/又はSEBSゴム(EPM=エチレン-プロピレンコポリマー、EPDM=エチレン-プロピレン-ジエンゴム、SEBS=スチレン-エテン-ブテン-スチレンコポリマー)が含まれる。
【0166】
成分E)として使用するための、潤滑剤及び/又は離型剤は、好ましくは、以下のものである:長鎖脂肪酸、特にはステアリン酸又はベヘン酸、それらの塩、特にはステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、及びそれらのエステル誘導体、特にはペンタエリスリトールをベースとするもの、特にはペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、又はアミド誘導体、特にはエチレンビスステアリルアミド、モンタンワックス、及び低分子量ポリエチレン若しくはポリプロピレンのワックス。
【0167】
本発明に関連して、モンタンワックスは、28~32個の炭素原子の鎖長を有する、直鎖の飽和カルボン酸の混合物である。
【0168】
本発明においては、以下の群からの潤滑剤及び/又は離型剤を使用することが特に好ましい:8~40個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族カルボン酸と、脂肪族飽和アルコールとのエステル、又は2~40個の炭素原子を有するアミンと、8~40個の炭素原子を有する不飽和脂肪族カルボン酸、又はそれぞれのカルボン酸に代えて、8~40個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪族カルボン酸の金属塩とのアミド。
【0169】
成分E)として極めて特に好適に使用するための潤滑剤及び/又は離型剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート[CAS No.115-83-3]、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸カルシウム、及びエチレングリコールジモンタネートの群から選択され得る。ステアリン酸カルシウム[CAS No.1592-23-0]又はエチレンビスステアリルアミド[CAS No.110-30-5]を使用することが、特に好ましい。エチレンビスステアリルアミド(Loxiol(登録商標)EBS、Emery Oleochemicals製)を使用することが、極めて特に好ましい。
【0170】
成分E)として好適に使用される、加水分解安定剤/水吸収抑制のための成分は、好ましくはポリエステルで、好ましいのはポリブチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンテレフタレートであり、極めて特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートである。それらのポリエステルは、それぞれの場合において、ポリマー組成物全体を基準にして、好ましくは5重量%~20重量%の濃度、より好ましくは7重量%~15重量%の濃度で使用され、但し、そのポリマー組成物の重量パーセントを総合計したものが必ず100重量%になるようにする。
【0171】
レーザー吸収成分/レーザー吸収高電圧用構成材料の場合、成分E)として、以下の群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤を使用することができる:三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノン。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。
【0172】
レーザー吸収剤、特に三酸化アンチモンは、粉体として直接使用してもよく、又はマスターバッチの形で使用してもよい。好ましいマスターバッチは、ポリアミド及び/又はポリオレフィン、好ましくはポリエチレンをベースとするものである。ナイロン-6ベースのマスターバッチの形態にある三酸化アンチモンを使用するのが、極めて特に好ましい。
【0173】
レーザー吸収剤は、個別に使用してもよく、又は2種以上のレーザー吸収剤の混合物として使用してもよい。
【0174】
レーザー吸収剤は、特定の波長のレーザー光を吸収することができる。実際のところ、その波長は、157nm~10.6μmの範囲である。これらの波長のレーザーの例は、国際公開第2009/003976A1号パンフレットに記載されている。1064、532、355、及び266nmの波長を達成することが可能な、Nd:YAGレーザー及びCO2レーザーを使用することが好ましい。
【0175】
レーザー透明性高電圧用構成材料
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、及び
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0176】
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、及び
D)3~100質量部の、好ましくは鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0177】
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、及び
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0178】
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
D)3~100質量部の、好ましくは鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、並びに
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0179】
本発明において特に好ましいのは、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料であり、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度/レーザー透過率が、少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲である。レーザー透明度の測定については、上記及び特に以下の文献を参照されたい:K.D.Feddersen,“Laserdurchstrahlschweissen-die Loesung fuer nicht loesbare Verbindungen」,Oesterreichische Kunststoffzeitschrift,1/2,2018,pages50~52。
【0180】
レーザー吸収性高電圧用構成材料
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、及び
E)三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。特に好ましいレーザー吸収剤は、酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンである。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。
【0181】
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、及び
E)三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。
【0182】
本発明においては、以下のものを含むポリマー組成物をベースとする高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が好ましい:
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、及び
D)3~100質量部の、好ましくは鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、並びに
E)三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノンの群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満である。
【0183】
プロセス
本発明はさらに、高電圧用構成材料において、特には電気自動車のための高電圧用構成材料において使用される、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、ポリマー組成物を製造するためのプロセスにも関し、それは、少なくとも1種の混合装置の中で、A)少なくとも1種のポリアミド及びB)10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、及び場合によっては、さらなる成分C)、D)及びE)の少なくとも1つを相互に混合することにより、ここで、E)は、レーザー吸収剤を表さない、特には、先に定義された成分E)に従ったレーザー吸収剤ではない。
【0184】
本発明によるプロセスにおいては、少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、0.01~5質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用するのが好ましい。本発明のプロセスによる高電圧用構成材料が、少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲の、980nmの波長でのレーザー透明度を有するのが好ましい。
【0185】
本発明はさらに、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスに関し、それには、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかける。さらなる加工にかける前に、場合によっては、ポリマー組成物を、排出させてストランドとし、ペレット化が可能となるまで冷却し、場合によっては乾燥させ、及びペレット化する。一実施形態において、そのポリマー組成物を、ペレット化した形態で中間貯蔵する。この場合、レーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用しない。少なくとも33%、より好ましくは40%~90%の範囲のレーザー透明度が達成されれば好ましい。
【0186】
相当するプロセスは、高電圧用構成材料を製造することにも適用可能であり、その場合、少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、0.01~3質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用し、成分E)としてのレーザー吸収剤を使用しなくても、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%であることが達成される。少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲の、980nmの波長でのレーザー透明度が達成されれば、好ましい。
【0187】
より具体的には、本発明は、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスに関し、それには、A)少なくとも1種のポリアミド及びB)10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、好ましくは少なくとも1種のポリアミドの100質量部あたり、0.01~5質量部の10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを相互に混合してポリマー組成物を得る工程、押出加工してストランドを得る工程、ペレットが可能になるまで冷却する工程、乾燥及びペレット化の工程、並びに次いで、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかける工程が含まれ、ここで、成分E)としては、レーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用しない。
【0188】
誤解がないように付言すると、本発明の範囲には、本発明のプロセスの各種の組合せにおいて、組成物又は高電圧用構成材料に関連して一般的とされるか、又は好ましい領域と特定されて列挙されたすべての定義及びパラメーターが包含される、ということに注意されたい。
【0189】
プロセス変法とは関係なく、そのレーザー溶接プロセスは、2つの連結パートナーの物性に大きく依存する。その中を通してレーザーが通過する部分でのレーザー透明度(LT)の大きさが、単位時間あたりに導入することが可能なエネルギー量の点から、加工速度に直接影響する。半晶質の熱可塑性プラスチックは、一般的に、それらに固有のミクロ構造(通常は、球晶の形態にある)のために、より低いレーザー透明度を有する。それらが、入射されたレーザー光を、純粋に非晶質の熱可塑性プラスチックの内部構造よりも顕著に散乱させる:後方散乱が、透過における全エネルギーの量を減らし;拡散(側方)散乱が、多くの場合、レーザービームの広がりをもたらし、その結果、溶接精度が低下する。半晶質のモルホロジーは、一般的には、高いレーザー透明度に障害となるが、他の性質では、メリットをもたらす。例えば、半晶質の物質は、ガラス転移温度よりも高い温度でも機械的な耐久性に優れ、及び一般的に、非晶質な物質よりも良好な耐薬品性を有する。結晶化が早い物質は、さらに、加工において、特に早い脱型、及びその結果として短いサイクル時間というメリットを有する。したがって、望まれるのは、半晶質、迅速な結晶化、及び高いレーザー透明度の組合せである。さらなる成分の、C)充填剤若しくは補強材、D)難燃性添加剤、及びE)熱安定剤、並びにいずれかのさらなる添加剤が選択される必要があり、但し、第一に、本発明において製造される製品、高電圧用構成材料、及び電気自動車のための高電圧用構成材料は、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である。
【0190】
本発明においては、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスであって、A)少なくとも1種のポリアミド及びB)10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを相互に混合してポリマー組成物を得ること、押出加工してストランドを得ること、ペレットが可能になるまで冷却すること、乾燥及びペレット化すること、及び次いで、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法による、さらなる加工にかけることによる、プロセスが好ましく、ここで、
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、及び
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
が使用され、成分E)としてのレーザー吸収材は使用されない。
【0191】
少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲のレーザー透明度が達成されれば、好ましい。
【0192】
本発明においては、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスであって、
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、並びに
D)3~100質量部の、好ましくは鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、
を相互に混合してポリマー組成物を得ること、押出加工してストランドとすること、ペレットが可能になるまで冷却すること、乾燥及びペレット化すること、及び次いで、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかけることによる、プロセスが好ましく、成分E)としてのレーザー吸収材は使用しない。
【0193】
本発明においては、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、レーザー透明性の高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスであって、
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、並びに
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
を相互に混合してポリマー組成物を得ること、押出加工してストランドとすること、ペレットが可能になるまで冷却すること、乾燥及びペレット化すること、及び次いで、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかけることによる、プロセスが好ましく、成分E)としてのレーザー吸収材は使用しない。
【0194】
本発明においては、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び980nmの波長でのレーザー透明度が少なくとも10%である、レーザー透明性の高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するためのプロセスであって、
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
D)3~100質量部の、好ましくは、鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、及び
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
を相互に混合してポリマー組成物を得ること、押出加工してストランドとすること、ペレットが可能になるまで冷却すること、乾燥及びペレット化すること、及び次いで、そのポリマー組成物を、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)によるか、押出成形法(異形押出法を含む)によるか、又は吹込成形法によるさらなる加工にかけることによる、プロセスが好ましく、成分E)としてのレーザー吸収材は使用しない。
【0195】
高電圧用構成材料、又は電気自動車のための高電圧用構成材料は、好ましくは、少なくとも20%、特には25%~90%の範囲の、980nmの波長でのレーザー透明度を有し、したがって、レーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用しない。
【0196】
誤解がないように付言すると、本発明の範囲には、本発明のプロセスの各種の組合せにおいて、ポリマー組成物又は高電圧用構成材料に関連して一般的とされるか、又は好ましい領域と特定されて列挙されたすべての定義及びパラメーターが包含される、ということに注意されたい。
【0197】
高電圧用構成材料
本発明はさらに、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である、射出成形法(特殊な方法である、GIT(ガスインジェクション技術)、WIT(ウォーターインジェクション技術)、及びPIT(プロジェクタイルインジェクション技術)を含む)を介するか、押出成形法(異形押出法を含む)、又は吹込成形法によるさらなる加工によって、さらに加工される、上述のポリマー組成物の手段によって得ることが可能な高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料にも関し、レーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用しない。高電圧用構成材料の場合、レーザー透明度は、厚み2mmの成形体について980nmで測定する。少なくとも20%であることが好ましい。
【0198】
ポリアミドベースの、高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料は、少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲の980nmの波長でのレーザー透明度を有するのが好ましい。使用されるポリアミドは、好ましくは、ナイロン-6又はナイロン-6,6である。
【0199】
非レーザー透明性の高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料が望まれる場合には、使用される成分E)は、以下の群から選択される少なくとも1種のレーザー吸収剤である:三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノン。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが、特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。
【0200】
別な方法として、本発明に関連して、本発明の組成物中、並びに本発明のプロセス及び使用において、レーザー吸収性高電圧用構成材料におけるレーザー吸収剤として、二酸化チタン、カーボンブラック、SiO2、金属化合物、特に、リン酸水酸化銅又はリン酸銅を使用することも可能である。参照:独国特許出願公開第A198 14 298号明細書、独国特許出願公開第10 2004 051 246A1号明細書。添加剤E)として使用するためのレーザー吸収剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量で使用される。
【0201】
誤解がないように付言すると、本発明の範囲には、本発明の高電圧用構成材料又は電気自動車のための高電圧用構成材料の各種の組合せにおいて、ポリマー組成物に関連して一般的又は好ましい領域と特定されて列挙されたすべての定義及びパラメーターが包含される、ということに注意されたい。
【0202】
好ましい高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料でありながらも、レーザー透明性且つレーザー透過性の高電圧用構成材料は、電気ドライブトレイン及び/又は蓄電池システムに用途を見出している。特に好ましい高電圧用構成材料は、電気又は電子機器、制御装置のためのカバー、ヒューズ、継電器、蓄電池モジュール、ヒューズホルダー、ヒューズプラグ、端子、ケーブルホルダーのためのカバー/ハウジング、又は被覆材料、特に高電圧母線及び高電圧配電器母線の被覆材料である。
【0203】
使用
本発明はさらに、ポリアミドベースの製品を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが好ましくは10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%である;上述した「オレンジ色」の表題部の詳細を参照されたい。それらは、本明細書で主張する使用にもあてはめることができる。レーザー透明度は、射出成形した製品について、厚み2mmの成形体で980nmの波長で測定する。後者は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲にある。
【0204】
本発明は、好ましくは、ポリアミドベースの高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度が、少なくとも10%である。
【0205】
本発明は、より好ましくは、ポリアミドベースの電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用にも関し、但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度が、少なくとも10%である。
【0206】
非レーザー透明性若しくはレーザー吸収性のポリマー組成物、又は高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料を製造するのに、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用する場合には、使用される成分E)は、以下の群から選択される、少なくとも1種のレーザー吸収剤である:三酸化アンチモン、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸銅カリウム、水酸化銅、酸化スズアンチモン、三酸化ビスマス、及びアントラキノン。酸化スズ、三酸化アンチモン、又は酸化スズアンチモンが、特に好ましい。三酸化アンチモンが極めて特に好ましい。
【0207】
別な方法として、本発明に関連して、レーザー吸収性高電圧用構成材料におけるレーザー吸収剤として、二酸化チタン、カーボンブラック、SiO2、金属化合物、特にリン酸水酸化銅又はリン酸銅を使用することも可能である。参照:独国特許出願公開第A198 14 298号明細書、独国特許出願公開第10 2004 051 246A1号明細書。添加剤E)として使用するためのレーザー吸収剤は、それぞれの場合において、成分A)の100質量部を基準にして、0.01~80質量部の量、より好ましくは0.05~50質量部の量、最も好ましくは0.1~30質量部の量で使用される。
【0208】
現在のところ、レーザー透明度の測定に関して基準となる標準は未だ存在しない。したがって、本発明に関連して、出力の熱電測定により、レーザー透過率を1064nmの波長で求める。測定の概要は次のように記述することができる:ビームデバイダー(SQ2非偏光ビームデバイダー(Laser-optik GmbH製))を用いて、全出力2ワットを有するレーザービーム(1064nmの波長を有するダイオード励起Nd-YAGレーザー、FOBA DP50)からのリファレンスビームを、90度の角度で出力1ワットに分割する。これをリファレンスセンサーに当てる。ビームデバイダーを通過する元のビームの一部は、同様に出力1ワットで、測定ビームを構成する。ビームデバイダーの先のモードシャッター(5.0)によって焦点を絞り、直径0.18mmの焦点とする。レーザー透明度(LT)測定センサーを、焦点の下80mmの距離に配置する。試験プラークを、LT測定センサーの上2mmの距離に配置する。好ましくは、本発明において、試験プラークは、エッジゲートを有し60×60×2mm3の寸法を有する、射出成形された試験プラークである。測定は、プラークの中央部(2つの対角線の交点)で実施する。全測定時間は30秒であり、最後の5秒で測定結果を確定する。リファレンスセンサー及び測定センサーからの信号を同時に検出する。サンプルの挿入と同時に測定を開始する。透過率、したがってレーザー透明度(LT)は、次式から求める:
LT=信号測定センサー/信号リファレンスセンサー×100%
【0209】
この測定モードは、レーザー系におけるゆらぎ及び主観的な読取り誤差を排除する。それぞれのプラークで、少なくとも5回の測定からLTの平均値を作製する。平均値の作製は、それぞれの物質について10個のプラークで実施する。個々のプラークの測定の平均値を、試験対象物質の最終的な平均及び標準偏差を計算するのに使用する。
【0210】
プロセス変法とは関係なく、レーザー溶接プロセスは2つの連結パートナーの物性に大きく依存する。その中を通してレーザーが通過する部分でのレーザー透明度(LT)の大きさは、単位時間あたりに導入することが可能なエネルギー量の点から、加工速度に直接影響する。半晶質の熱可塑性プラスチックは、一般的に、それらに固有のミクロ構造(通常は、球晶の形態にある)のために、より低いレーザー透明度を有する。それらは、入射されたレーザー光を、純粋に非晶質の熱可塑性プラスチックの内部構造よりも顕著に散乱させる:後方散乱は透過における全エネルギーの量を減らし、拡散(側方)散乱は、多くの場合、レーザービームに広がりをもたらし、その結果、溶接精度が低下する。半晶質のモルホロジーは、一般的には高いレーザー透明度には障害となるが、他の性質にはメリットをもたらす。例えば、半晶質の物質はガラス温度よりも高い温度でも機械的な耐久性に優れ、そして一般的に、非晶質な物質よりも良好な耐薬品性を有する。結晶化が早い物質はさらに、加工において特に早い脱型、及びその結果として短いサイクル時間という利点を提供する。したがって、望まれるのは、半晶質、迅速な結晶化、及び高いレーザー透明度の組合せである。さらなる成分の、C)充填剤若しくは補強材、D)難燃性添加剤、及びE)熱安定剤、及びいずれかのさらなる添加剤が選択される必要があり、但し第一に、ポリマー組成物から製造される製品、高電圧用構成材料、及び電気自動車のための高電圧用構成材料は、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満であり、及びレーザー透明度が少なくとも10%でなければならない。
【0211】
本発明においては好ましいのは、レーザー透明性ポリアミドベースの製品を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用であって、ここで
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、及び
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
が使用され、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度は、少なくとも10%であり、ここでレーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用されない。少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲のレーザー透明度が達成されることが好ましい。
【0212】
本発明において好ましくは、レーザー透明性ポリアミドベースの製品を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用であって、ここで
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から好ましくは選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、並びに
D)3~100質量部の、好ましくは、鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、
が使用され、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、レーザー透明度は、少なくとも10%であり、ここでレーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用しない。少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲の、980nmの波長でのレーザー透明度が達成されることが好ましい。
【0213】
本発明において好ましくは、レーザー透明性ポリアミドベースの製品を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用であって、ここで
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、好ましくは、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、及び
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも1つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
が使用され、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度は、少なくとも10%であり、ここでレーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用されない。
【0214】
本発明において好ましいのは、レーザー透明性ポリアミドベースの製品を製造するための、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンの使用であって、ここで
A)少なくとも1種のポリアミド、好ましくはナイロン-6又はナイロン-6,6、特にナイロン-6の100質量部あたり、
B)0.01~5質量部の、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オン、
C)1~150質量部の、ガラスビーズ又は中実若しくは中空のガラスビーズ、又はガラス繊維、又は摩砕ガラス、非晶質石英ガラス、1%のアルカリ含量を有するアルミニウムボロシリケートガラス(Eガラス)、非晶質シリカ、石英粉、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成カオリン、白亜、カイアナイト、粉体化若しくは摩砕石英、マイカ、金雲母、硫酸バリウム、長石、ウォラストナイト、モンモリロナイト、式AlO(OH)のプソイドベーマイト、炭酸マグネシウム、及びタルクの群から好ましくは選択される少なくとも1種の充填剤及び補強材、特にガラス繊維、
D)3~100質量部の、好ましくは、鉱物質難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤から選択される、少なくとも1種の難燃性添加剤、及び
E)0.01~2質量部の、好ましくは、立体障害フェノール、特に2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基の少なくとも一つを含むもの、さらには亜リン酸塩、次亜リン酸塩、特に次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、ヒドロキノン、芳香族二級アミン、及び3,3’-チオジプロピオネートの群から選択される、少なくとも1種の熱安定剤、
が使用され、
但し、RALカラーチャートで「2」で始まる色数のL*a*b*座標からの色距離ΔEが20未満、好ましくはΔEが10未満、より好ましくはΔEが5未満であり、及び、980nmの波長でのレーザー透明度は、少なくとも10%であり、ここでレーザー吸収剤、特に先に定義された成分E)に従うレーザー吸収剤は使用されない。
【0215】
少なくとも20%、より好ましくは25%~90%の範囲の、980nmの波長でのレーザー透明度が達成されることが好ましい。
【0216】
高電圧用構成材料、特に電気自動車のための高電圧用構成材料としての、ポリアミドベースの製品をマーキングするために、10,10’-オキシビス-12H-フタロペリン-12-オンを使用することが好ましい。
【0217】
誤解がないように付言すると、本発明の範囲には、本発明の使用のいずれかの組合せにおいて、ポリマー組成物又は高電圧用構成材料に関連して一般的とされるか、又は好ましい領域と特定されて列挙されたすべての定義及びパラメーターが包含される、ということに注意されたい。
【実施例】
【0218】
本発明に記載の性質における改良を示すために、まず、コンパウンディングによって相当するポリアミドベースのポリマー組成物を調製した。この目的のためには、個々の成分を、二軸スクリューエクストルーダー(ZSK 25 Compounder、Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)製)の中で270~300℃の間の温度で混合し、ストランドとして排出し、ペレット化が可能になるまで冷却し、及びペレット化した。(一般的には、真空乾燥キャビネット中80℃で2日間の)乾燥をさせた後で、270~290℃の範囲の温度で射出成形によりペレットを加工して、それぞれの試験のための標準試験片を得た。
【0219】
本発明の試験に関連して、ブリーディングの測定は、30×20×2mm3の可塑化PVCフィルム(P-PVC、FB110、白色、標準の低温抵抗性、Jedi Kunststofftechnik GmbH(Eitorf,Germany)製)の変色と考えられ、この場合、それを、表2に示す組成物をベースとする、2枚の60×40×2mm3のプラスチックシートの間に挟み込み、加熱空気乾燥キャビネット中、80℃で12時間保存した。それに続けて、ISO 105-A02のグレースケールに従って目視により評価し、その場合、「5」は、そのPVCフィルムが色の変化を全く示さないことを意味し、「1」は、そのPVCフィルムが顕著な色の変化を示したことを意味する。
【0220】
本発明に関連して、耐光堅牢度の目安は、60×40×2mm3のシートの形状の表2に記載の成形コンパウンド物を、Atlas Material Testing Technology GmbH(Linsengericht,Germany)製のUV光線(Suntest CPS+で、300~800nm、45~130klx、窓ガラスフィルタ250~765W/m2)を用いて、96時間、UV下に貯蔵した後の変色と考えた。次いで、変色を、DIN EN ISO 105-B02に従ったブルーウールスケールに基づいて視覚的に評価し、ここで「8」は、例外的に高い耐光堅牢度(色の変化ほとんど無し)を表し、及び「1」は、極めて低い耐光堅牢度(顕著な色の変化)を表す。
【0221】
反応剤:
成分A): ナイロン-6(Durethan(登録商標)B26、Lanxess Deutschland GmbH(Cologne,Germany)製)
成分B): 10,10’-オキシ-ビス-12H-フタロペリン-12-オン[CAS No.203576-97-0]、Angene International Limited(London)製
成分X/1): 12H-フタロペリン-12-オン[CAS No.6925-69-5]、Macrolex(登録商標)Orange 3G(Lanxess Deutschland GmbH(Cologne)製)の形態。
【0222】
【0223】
表IIにおける結果は、本発明実施例1が、比較例1における従来技術による成分X/1を用いて着色した物質よりも低いブリーディングを同時に有しながらも、レーザー透明度、及びさらには、より高い耐光堅牢度を有したことを示す。本発明実施例1で試験した可塑性のプラークは、ΔEが10未満のRAL2001の色値を有していた。n.d.は、本発明の出願時点では、「測定できず」ということを表す。
【0224】
本出願に関連して分析した試験片のレーザー透明度は、DVS-Richtlinie 2243(01/2014)“Laserstrahlschweissen thermoplastischer Kunststoffe”に従い、LPKF Laser & Electronics AG(Garben,Germany)製のLPKF TMG3透過率分析器を使用し、60mm×60mm×2mmの寸法のプラークを使用し、980nmのレーザー波長で近赤外線(NIR)域で測定し、DIN EN ISO/IEC 17025に従って作製した分析標準を用いて事前に較正した;LPKF AG 101016-DE:“Einfache Transmissionsmessung fuer Kunsstoffe LPKF TMG3”を参照されたい。本発明で使用される成分B)を含まない試験用プラークと比較したレーザー透過率の相対比について、評価及び分類を行った。