(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】支持装置および支持ユニット
(51)【国際特許分類】
F16F 15/03 20060101AFI20230501BHJP
F16F 6/00 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
F16F15/03 B
F16F6/00
(21)【出願番号】P 2021560817
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046270
(87)【国際公開番号】W WO2021106094
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕
(72)【発明者】
【氏名】石井 優治
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-183554(JP,U)
【文献】特開昭61-109910(JP,A)
【文献】特開平03-041210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/03
F16F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力を発生する磁石ユニットと、
非磁性材料で形成され、磁石ユニットの第1方向に配置される第1部材と、
非磁性材料で形成され、前記第1部材の前記第1方向に配置される第2部材と、
磁性材料で形成され、前記第2部材の前記第1方向に配置される磁性部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に配置される磁性流体と、を有する、
支持装置。
【請求項2】
前記磁石ユニットは、
前記第1方向と平行に伸びる柱部と、
前記第1方向と平行に伸び前記柱部を内側に収容する筒部と、
前記第1方向とは反対の第2方向の端部において前記柱部と前記筒部とを接続する接続部と、
を有し、
前記第1部材は、前記磁石ユニットの前記第1方向の端部に配置される、
請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記磁性部材は、貫通孔を有し、
前記第1方向から見て、前記柱部の外形と前記貫通孔の外形とが略一致する、
請求項2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記第1方向から見て、前記磁石ユニットの外形と前記磁性部材の外形とが略一致する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項5】
前記磁石ユニットは、前記柱部に配置され前記第1方向に分極する永久磁石を有する、
請求項2または3に記載の支持装置。
【請求項6】
前記磁石ユニットは、励磁コイルを有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項7】
前記磁石ユニットは、前記第1方向と平行な対称軸に関する軸対称形状である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項8】
前記磁石ユニットは、非軸対称形状である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項9】
支持対象物を支持するベース部材と、
前記ベース部材に装着された複数の、請求項1から8のいずれか1項に記載の支持装置と、を有する、
支持ユニット。
【請求項10】
前記ベース部材に対する前記支持装置の装着角度を調整する角度調整部材を有する、
請求項9に記載の支持ユニット。
【請求項11】
前記支持装置は、前記支持装置の第1端部において支持対象物を支持し、
前記支持装置は、前記支持対象物に作用する外力によって発生する前記支持対象物の振動を抑制する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の支持装置。
【請求項12】
前記支持装置は、前記支持装置の第1端部において支持対象物を支持し、
前記支持装置は、前記支持装置の第2端部に作用する外力によって発生する前記支持対象物の振動を抑制する、
請求項1,2,3,4,5,6,7,8または11に記載の支持装置。
【請求項13】
前記支持ユニットは、前記支持対象物に作用する外力によって発生する前記支持対象物の振動を抑制する、
請求項9または10に記載の支持ユニット。
【請求項14】
前記複数の支持装置の第1端部が前記ベース部材に装着され、
前記支持ユニットは、前記複数の支持装置の第2端部に作用する外力によって発生する前記支持対象物の振動を抑制する、
請求項9、10または13に記載の支持ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、支持装置および支持ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
支持対象物を支持する様々な支持装置が利用されている。多自由度に対して支持力および減衰効果を発揮することができる支持装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-242363号公報
【文献】特開平6-185527号公報
【文献】特開2014-134238号公報
【文献】国際公開第2013/153741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、多自由度に対して支持力および減衰効果を発揮することができる支持装置および支持ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の支持装置は、磁石ユニットと、第1部材と、第2部材と、磁性部材と、磁性流体と、を持つ。磁石ユニットは、磁力を発生する。第1部材は、非磁性材料で形成され、磁石ユニットの第1方向に配置される。第2部材は、非磁性材料で形成され、第1部材の第1方向に配置される。磁性部材は、磁性材料で形成され、第2部材の第1方向に配置される。磁性流体は、第1部材と第2部材との間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】第1の実施形態の第1変形例の支持装置の側面断面図。
【
図6】第1の実施形態の第2変形例の支持装置の側面断面図。
【
図11】第3の実施形態の変形例の支持ユニットの側面図。
【
図12】第3の実施形態の変形例の支持ユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の支持装置および支持ユニットを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の支持装置の、
図2のI-I線における側面断面図である。
図2は、第1の実施形態の支持装置の、第2板および磁性板を記載しない平面図である。
【0008】
本願において、直交座標系のZ方向、X方向およびY方向が以下のように定義される。Z方向は、支持装置1の中心軸方向である。+Z方向(第1方向)は、磁石ユニット10から磁性板8に向かう方向であり、-Z方向(第2方向)は、+Z方向の反対方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。X方向およびY方向は、Z方向に直交する方向である。例えば、X方向およびY方向は水平方向である。X方向およびY方向のうち少なくともいずれか一方を、XY方向と言う場合がある。支持装置1の中心軸の周方向をθ方向とする。
【0009】
図1に示されるように、支持装置1は、磁石ユニット10と、第1板(第1部材)3aと、第2板(第2部材)3bと、磁性板(磁性部材)8と、磁性流体5と、を有する。支持装置1の構成部材は、支持装置1の中心軸に対して同軸状に配置される。
【0010】
磁石ユニット10は、鉄心10aと、永久磁石15とを有し、磁力を発生させる。磁石ユニット10は、Z方向と平行な対称軸に関する軸対称形状である。
鉄心10aは、鉄などの磁性材料により一体的に形成される。鉄心10aは、柱部12と、筒部14と、接続部13と、を有する。
【0011】
柱部12は、円柱状に形成される。柱部12は、Z方向と平行に伸びる。
筒部14は、円筒状に形成される。筒部14は、Z方向と平行に伸びる。筒部14のZ方向の長さは、柱部12と同等である。筒部14は、径方向の内側に柱部12を収容する。柱部12および筒部14は、径方向に空間を置いて同軸状に配置される。
接続部13は、円環状に形成される。接続部13は、磁石ユニット10の-Z方向の端部において、柱部12と筒部14とを接続する。
【0012】
永久磁石15は、円盤状に形成される。永久磁石15は、柱部12のZ方向の一部分に組み込まれる。永久磁石15は、Z方向に分極する。永久磁石15が柱部12に配置されるので、永久磁石15は単純な円盤状に形成される。これにより、永久磁石15の製造コストが抑制される。
【0013】
第1板3aおよび第2板3bは、非磁性材料で形成される。例えば、非磁性材料は、アルムミウム若しくはステンレス等の金属材料、またはアクリル若しくは繊維強化樹脂等の樹脂材料などである。第1板3aおよび第2板3bは同形状である。第1板3aおよび第2板3bの外形は、
図2の例では正方形状であるが、他の形状でもよい。第1板3aおよび第2板3bの外形は、磁石ユニット10の外形より大きい。第1板3aおよび第2板3bは、平板状に形成され、厚さ方向をZ方向に沿わせて配置される。第1板3aは、磁石ユニット10の+Z方向に配置される。第1板3aは、柱部12および筒部14の+Z方向の端部に当接する。第1板3aは、接着等により磁石ユニット10に固定される。第2板3bは、第1板3aの+Z方向に配置される。第1板3aおよび第2板3bは、Z方向に間隔を置いて平行に配置される。
【0014】
磁性板8は、鉄などの磁性材料により形成される。磁性板8は、円板状に形成される。磁性板8は、径方向の中央部に貫通孔8hを有する。Z方向から見て、貫通孔8hは円形状である。磁性板8は、厚さ方向をZ方向に沿わせて配置される。磁性板8は、第2板3bの+Z方向に配置される。磁性板8は、接着等により第2板3bに固定される。
【0015】
Z方向から見て、磁石ユニット10の外形と磁性板8の外形とが略一致する。磁石ユニット10の外形および磁性板8の外形はともに円形状であり、それぞれの直径が同等である。Z方向から見て、柱部12の外形と貫通孔8hの外形とが略一致する。柱部12の外形および貫通孔8hの外形はともに円形状であり、それぞれの直径が同等である。
【0016】
磁性板8の中心軸と磁石ユニット10の中心軸とが、XY方向にずれる場合がある。これに伴って、磁性板8のエッジと磁石ユニット10のエッジとが、XY方向にずれる。このとき、磁性板8の中心軸と磁石ユニット10の中心軸とを一致させようとする磁気吸引力が発生する(エッジ効果)。
【0017】
磁性流体5は、マグネタイト等の磁性微粒子を媒体となるベース液中に分散させた流体である。磁性微粒子の表面が界面活性剤で覆われて、磁性微粒子の凝集が抑制されている。磁性流体5に磁場をかけると、磁性流体5は磁束線に沿って変形し、その位置に留まろうとする。磁性流体5を変形させると、元の形状に戻ろうとする復元力が発生する。磁性流体5に磁場をかけると、磁性流体5の粘性が増加するものもある。
【0018】
図3は、磁気回路の説明図である。永久磁石15の起磁力により、支持装置1には、柱部12、磁性流体5、磁性板8、筒部14および接続部13を通る磁気回路が形成される。磁気回路は、支持装置1のθ方向の全周にわたって形成される。この磁気回路に、磁束線Mが通る。磁性流体5は、磁束線Mに沿って配向する。そのため、
図3に示される断面において、磁性流体5は山形を呈する。磁性流体5は、第1板3aおよび第2板3bに密着し、θ方向に連続する。これにより、磁性流体5、第1板3aおよび第2板3bにより密閉された気体室6が形成される。
【0019】
例えば、支持装置1は、磁性板8(または第2板3b)において支持対象物を支持する。支持対象物から磁性板8に対してZ方向の外力が作用する場合がある。磁性板8がZ方向に変位すると、磁性流体5が変形する。磁性流体5は、元の形状に戻ろうとする復元力を発揮する。また、磁性板8がZ方向に変位すると、気体室6の圧力が変化する。気体室6も、元の状態に戻ろうとする復元力を発揮する。復元力の大きさは、磁性板8のZ方向の変位の大きさに比例するので、バネと同様の効果が得られる。これに加えて、磁性板8が-Z方向に大きく変位するほど、磁性流体5の磁束密度が高くなるため、復元力が追加される。全体として、Z方向の変位に対する復元力の勾配(見かけ上のバネ定数)が、通常の線形バネよりも大きくなる。これにより、支持装置1はZ方向に対して通常のバネよりも効果的に支持力を発揮する。
【0020】
支持対象物から磁性板8に対して、磁性板8が傾く方向の外力が作用する場合がある。磁性板8が傾くと、θ方向の一部分で第1板3aと第2板3bとの間隔が狭くなり、その反対側の部分で第1板3aと第2板3bとの間隔が広くなる。いずれの部分でも、磁性流体5が変形して復元力を発揮する。これにより、支持装置1は、磁性板8が傾く方向に対して支持力を発揮する。
支持装置1は、磁性流体5の粘性により減衰効果を発揮する。
【0021】
図4は、XY方向の支持力の説明図である。支持対象物から磁性板8に対して、XY方向の外力が作用する場合がある。磁性板8がXY方向に移動すると、磁性板8の中心軸が磁石ユニット10の中心軸からXY方向にずれる。磁性板8のエッジが磁石ユニット10のエッジからXY方向にずれる。前述されたエッジ効果により、磁性板8の中心軸と磁石ユニット10の中心軸とを一致させようとする磁気吸引力が発生する。このエッジ効果による復元力により、支持装置1は、XY方向に対して支持力を発揮する。
磁性板8がXY方向に移動すると、磁性流体5に粘性せん断力が作用する。これにより、支持装置1は、XY方向に対して減衰効果を発揮する。
【0022】
支持対象物から磁性板8に対してθ方向の外力が作用する場合がある。前述されたように、磁性板8の外形および磁石ユニット10の外形はともに円形状である。そのため、磁性板8がθ方向に回転しても、磁性板8のエッジは磁石ユニット10のエッジからずれない。前述されたエッジ効果による復元力が発生しない。すなわち、磁性板8に支持される支持対象物は、θ方向に回転自由である。支持装置1は、アキシャル軸受(スラスト軸受)として利用可能である。
【0023】
以上に詳述されたように、実施形態の支持装置1は、磁石ユニット10と、第1板3aと、第2板3bと、磁性板8と、磁性流体5と、を持つ。磁石ユニット10は、磁力を発生する。第1板3aは、非磁性材料で形成され、磁石ユニットの+Z方向に配置される。第2板3bは、非磁性材料で形成され、第1板3aの+Z方向に配置される。磁性板8は、磁性材料で形成され、第2板3bの+Z方向に配置される。磁性流体5は、第1板3aと第2板3bとの間に配置される。
磁性流体5の復元力により、支持装置1は各方向に支持力を発揮する。磁性流体5の粘性により、支持装置1は各方向に減衰効果を発揮する。したがって、支持装置1は、多自由度に対して支持力および減衰効果を発揮することができる。
【0024】
磁石ユニット10は、柱部12と、筒部14と、接続部13と、を有する。柱部12は、+Z方向と平行に伸びる。筒部14は、+Z方向と平行に伸び、柱部12を内側に収容する。接続部13は、+Z方向とは反対の-Z方向の端部において柱部12と筒部14とを接続する。第1板3aは、磁石ユニット10の+Z方向の端部に配置される。
これにより、磁性流体5が環状に配置されるので、磁性流体5、第1板3aおよび第2板3bで密閉された気体室6が形成される。磁性板8がZ方向に変位すると、気体室6の圧力が変化して、復元力が発生する。これにより、支持装置1は、Z方向に対して大きな支持力を発揮することができる。
【0025】
磁性板8は、貫通孔8hを有する。+Z方向から見て、柱部12の外形と貫通孔8hの外形とが略一致する。
+Z方向から見て、磁石ユニット10の外形と磁性板8の外形とが略一致する。
磁性板8がXY方向に変位すると、エッジ効果により、磁性板8の中心軸と磁石ユニット10の中心軸とを一致させようとする復元力が発生する。これにより、支持装置1は、XY方向に対する支持力を発揮することができる。
【0026】
磁石ユニット10は、柱部12に配置され+Z方向に分極する永久磁石15を有する。
これにより、永久磁石15の形状が単純になり、永久磁石15の製造コストが抑制される。
【0027】
磁石ユニット10は、+Z方向と平行な対称軸に関する軸対称形状である。
磁性板8がθ方向に回転しても、エッジ効果による復元力が発生しない。磁性板8は、θ方向に回転自由である。したがって、支持装置1は、アキシャル軸受として利用可能である。
【0028】
第1の実施形態の第1変形例について説明する。
図5は、第1の実施形態の第1変形例の支持装置の側面断面図である。
図5は、
図2のI-I線に相当する部分における断面図である。第1変形例の支持装置1aは、永久磁石15に代えて励磁コイル17を有する点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての第1変形例の説明は省略される。
【0029】
支持装置1aは、励磁コイル17を有する。励磁コイル17は、柱部12の周囲に巻回される。励磁コイル17に通電すると、磁石ユニット10は電磁石として機能する。励磁コイル17は、接続部13に当接する。これにより、励磁コイル17の熱が磁石ユニット10に伝達されて外部に放出される。励磁コイル17は、第1板3aに当接しない。これにより、励磁コイル17から磁性流体5への熱影響が抑制される。
【0030】
励磁コイル17の電流量を変化させると、磁石ユニット10の磁力が変化する。これにより、磁性流体5の配向強さが変化するので、磁性流体5の復元力が変化する。したがって、励磁コイル17の電流量を調整することにより、支持対象物に合せて支持装置1aの支持力を調整することができる。支持力の異なる複数種類の支持装置1aを製造する必要がないので、製造コストが抑制される。
【0031】
支持装置1aの支持力を変化させると、支持対象物を含めた振動系の固有振動数が変化する。励磁コイル17の電流量を調整することにより、固有振動数を調整することができる。例えば、固有振動数は、支持対象物で発生する振動の振動数と一致しないようにチューニングされる(制振効果)。例えば、固有振動数は、支持対象物に伝達される振動の振動数より低くなるようにチューニングされる。このとき、固有振動数が小さいほど、免振効果が大きくなる。これにより、支持装置1は、免振装置として機能する。支持力の異なる複数種類の支持装置1aを製造する必要がないので、製造コストが抑制される。
【0032】
第1の実施形態の第2変形例について説明する。
図6は、第1の実施形態の第2変形例の支持装置の側面断面図である。
図6は、
図2のI-I線に相当する部分における断面図である。第2変形例の支持装置1bは、永久磁石15に加えて励磁コイル17を有する点で、第1の実施形態およびその第1変形例とは異なる。第1の実施形態またはその第1変形例と同様である点についての第2変形例の説明は省略される。
【0033】
第2変形例の支持装置1bは、永久磁石15に加えて励磁コイル17を有する。これにより、多自由度に対して強い支持力および減衰効果を発揮することができる。また、励磁コイル17の電流量を調整することにより、支持対象物に合せて支持力を調整することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の支持装置の、
図8のVII-VII線における側面断面図である。
図8は、第2の実施形態の支持装置の、第2板および磁性板を記載しない平面図である。第2の実施形態の支持装置201は、磁石ユニット210が非軸対称形状である点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての第2の実施形態の説明は省略される。
【0035】
支持装置201の磁石ユニット210は、Z方向に平行な支持装置201の中心軸に対して非軸対称形状である。磁石ユニット210は、柱部212と、筒部214と、接続部213と、を有する。
柱部212は、四角柱状に形成される。
図8に示されるように、Z方向に直交する柱部212の断面形状は、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする長方形状である。
筒部214は、四角筒状に形成される。筒部214は、X方向およびY方向の内側に柱部212を収容する。
【0036】
第1板203aおよび第2板203bの外形は、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする長方形状である。
磁性板208は、四角板状に形成される。磁性板208は、X方向およびY方向の中央に貫通孔208hを有する。Z方向から見て、貫通孔208hの形状は、X方向を長手方向としY方向を短手方向とする長方形状である。
【0037】
Z方向から見て、磁石ユニット210の外形と磁性板208の外形とが略一致する。磁石ユニット210の外形および磁性板208の外形は、ともに長方形状である。それぞれの長手方向の長さが同等であり、それぞれの短手方向の長さが同等である。Z方向から見て、柱部212の外形と貫通孔208hの外形とが略一致する。柱部212の外形および貫通孔208hの外形は、ともに長方形状である。それぞれの長手方向の長さが同等であり、それぞれの短手方向の長さが同等である。これらにより、支持装置201は、XY方向において磁性板208の中心軸と磁石ユニット210の中心軸とを一致させようとするエッジ効果を発揮する。
【0038】
支持装置201の支持対象物から磁性板208に対して、磁性板208が傾く方向の外力が作用する場合がある。第1の実施形態と同様に、支持装置201は、磁性板208が傾く方向に対して支持力を発揮する。特に、X軸を中心に磁性板208が傾く場合には、磁性板208のY方向の端部が、Z方向に大きく変位する。これにより、磁性流体205が大きく変形して、大きな復元力を発揮する。そこで、支持対象物が傾きやすい方向をY方向に一致させて、支持対象物を支持することが望ましい。これにより、支持装置201は、傾きやすい支持対象物に対して大きな支持力を発揮することができる。
【0039】
支持対象物から磁性板208に対してXY方向の外力が作用する場合がある。磁性板208がXY方向に移動すると、磁性板208の中心軸が磁石ユニット210の中心軸からXY方向にずれる。磁性板208のエッジが磁石ユニット210のエッジからXY方向にずれる。前述されたエッジ効果により、磁性板208の中心軸と磁石ユニット210の中心軸とを一致させようとする磁気吸引力が発生する。このエッジ効果による復元力により、支持装置201は、XY方向に対して支持力を発揮する。
【0040】
支持対象物から磁性板208に対してθ方向の外力が作用する場合がある。前述されたように、磁性板208の外形および磁石ユニット210の外形は、ともに長方形状である。そのため、磁性板208がθ方向に回転すると、磁性板208のエッジが磁石ユニット210のエッジからずれる。前述されたエッジ効果により、磁性板208のエッジと磁石ユニット210のエッジとを一致させようとする磁気吸引力が発生する。このエッジ効果による復元力により、支持装置201は、θ方向に対して支持力を発揮する。これにより、支持装置201は、6自由度の全てに対して支持力および減衰効果を発揮する。
【0041】
以上に詳述されたように、第2の実施形態の支持装置201は、磁石ユニット210が非軸対称形状である。
磁性板208がθ方向に回転すると、エッジ効果による復元力が発生する。したがって、支持装置201は、θ方向に対して支持力を発揮することができる。
【0042】
前述されたように、支持装置201の柱部212は四角柱状であり、筒部214は四角筒状である。これに対して、柱部は四角以外の多角柱状であり、筒部は四角以外の多角筒状であってもよい。また、柱部は多角以外の非円柱状(例えば楕円柱状)であり、筒部は多角以外の非円筒状(例えば楕円筒状)であってもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の支持ユニットの側面図であり、
図10は平面図である。支持ユニット300は、ベース部材350と、支持装置301と、を有する。
ベース部材350は、四角板状に形成される。ベース部材350は、+Z方向の表面に配置される支持対象物Bを支持する。
【0044】
支持装置301は、前述された実施形態またはその変形例の支持装置1,1a,1b,201である。支持装置301は、ベース部材350の-Z方向の表面に装着される。例えば、支持装置301の第1端部(例えば磁性板または第2板)がベース部材350に装着され、支持装置301の第2端部(例えば磁石ユニット)が外部(例えば地面)に固定される。支持装置301の中心軸がベース部材350の表面に対して直交するように、支持装置301がベース部材350に装着される。複数の支持装置301が、X方向およびY方向に離れて配置される。
図10の例では、4個の支持装置301が、ベース部材350の四隅に配置される。
【0045】
支持装置301が第1の実施形態またはその変形例の支持装置1,1a,1bである場合に、支持装置301はθ方向を除く各方向に対して支持力を発揮する。支持ユニット300は複数の支持装置301を有するので、θ方向を含む全方向に対して支持力を発揮する。したがって、支持ユニット300は、多自由度に対して支持力および減衰効果を発揮することができる。
【0046】
第3の実施形態の変形例について説明する。
図11は、第3の実施形態の変形例の支持ユニットの側面図であり、
図12は平面図である。変形例の支持ユニット300aは、第1角度調整部材341を有する点で、第3の実施形態とは異なる。第3の実施形態と同様である点についての変形例の説明は省略される。
【0047】
支持装置301の中心軸がベース部材350の表面に対して直角以外の角度で交差するように、支持装置301がベース部材350に対して傾いた状態で配置される。
図11および
図12の例では、複数の支持装置301の中心軸が支持対象物Bの中心点付近を通るように、支持装置301が配置される。
【0048】
第1角度調整部材341は、ベース部材350に対する支持装置301の装着角度を調整する。例えば、第1角度調整部材341は三角柱状に形成される。第1角度調整部材341の外周の一面がベース部材350に装着され、他の一面が支持装置301に装着される。これにより、支持装置301が傾いた状態でベース部材350に装着される。
第2角度調整部材342は、外部に対する支持装置301の装着角度を調整する。
【0049】
前述された実施形態またはその変形例の支持装置1,1a,1b,201は、Z方向に直交する方向に比べて、Z方向に対して大きな支持力を発揮する。
図9および
図10に示される第3の実施形態の支持ユニット300では、Z方向の支持力とXY方向の支持力とが異なる。
【0050】
これに対して、変形例の支持ユニット300aは、ベース部材350に対する支持装置301の装着角度を調整する第1角度調整部材341を有する。これにより、支持ユニット300aの各方向の支持力を調整することができる。例えば、支持対象物Bで振動が発生する場合または支持対象物Bに振動が伝達される場合に、その振動方向に対する支持ユニット300aの支持力を大きくする。また、角度の異なる複数種類の第1角度調整部材341を用意することで、支持ユニット300aの各方向の支持力を調整することができる。大きな支持力を発揮する方向の異なる複数種類の支持装置301を製造する必要がないので、製造コストを抑制することができる。
【0051】
前述された第3の実施形態およびその変形例では、支持装置301の第1端部がベース部材350に装着され、第2端部が外部(例えば地面)に固定される。第2端部が固定される外部は、天井であってもよい。この場合、支持ユニット300,300aは、支持対象物Bを吊り下げ支持する。また、第2端部が固定される外部は、搬送装置や車両の荷台であってもよい。
【0052】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、磁石ユニット10と、第1板3aと、第2板3bと、磁性板8と、磁性流体5と、を持つ。これにより、支持装置1は、多自由度に対して支持力および減衰効果を発揮することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b,201,301…支持装置、3a…第1板(第1部材)、3b…第2板(第2部材)、5…磁性流体、6…気体室、8…磁性板(磁性部材)、8h…貫通孔、10,210…磁石ユニット、12…柱部、13…接続部、14…筒部、300,300a…支持ユニット、341…第1角度調整部材(角度調整部材)、350…ベース部材。