IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7271725少なくとも1つの戸をガイドするガイドシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】少なくとも1つの戸をガイドするガイドシステム
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/58 20060101AFI20230501BHJP
   E05D 15/26 20060101ALI20230501BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
E05D15/58 A
E05D15/26
E06B3/48
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021568579
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 AT2020060179
(87)【国際公開番号】W WO2020232489
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】A50451/2019
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デュア
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500483(JP,A)
【文献】実公平07-052308(JP,Y2)
【文献】国際公開第2018/204947(WO,A1)
【文献】実開平06-037480(JP,U)
【文献】特許第2915965(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/081963(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0300075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
E06B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの戸(3a,3b)を家具本体(2)に対して相対的にガイドするガイドシステム(5)であって、
-前記少なくとも1つの戸(3a,3b)を前記家具本体(2)の端面(2a)に沿ってガイドするように形成された第1のガイド(7a)と、
-該第1のガイド(7a)に対して横方向に延びており、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)を前記家具本体(2)の側壁(13a)に沿ってガイドするように形成された少なくとも1つの第2のガイド(7b)と
を有する、ガイドシステム(5)において、
当該ガイドシステム(5)は、少なくとも前記第1のガイド(7a)と前記第2のガイド(7b)との間の移行領域において、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)を支持する少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)を有しており、該少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)が前記少なくとも1つの戸(3a,3b)と当接することにより、前記移行領域での、前記家具本体(2)および/または前記側壁(13a)に配置されたカバープレート(20)と、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)との間の衝突が防止されていることを特徴とする、ガイドシステム(5)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの戸(3a,3b)がスライド式折戸の戸である、請求項1に記載のガイドシステム。
【請求項3】
前記家具本体(2)の前記側壁(13a)および/または該側壁(13a)に配置されたカバープレート(20)と、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)との間の衝突が防止されている、請求項1又は2に記載のガイドシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、可動に支持されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のガイドシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、回転可能に支持されている、請求項4に記載のガイドシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、回転対称に形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のガイドシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、回転可能なローラとして形成されている、請求項6に記載のガイドシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、前記側壁(13a)に結合された取付け部材(14)に配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のガイドシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)の、前記取付け部材(14)に対して相対的な位置は、少なくとも1つの調節装置(16)により調節可能に予め設けられている、請求項8に記載のガイドシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのそらせ部材(15a,15b)は、取付け位置において前記カバープレート(20)に配置されており、該カバープレート(20)は、前記家具本体(2)の前記側壁(13a)と、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)との間に位置する隙間(31)を少なくとも部分的に覆い隠すように形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項11】
前記カバープレート(20)は取付け位置において、鉛直方向に延びる回転軸(29)を中心として旋回可能に支持されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項12】
前記そらせ部材(15a,15b)は、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)を滑動支持する、凸状に形成された少なくとも1つのそらせ輪郭(23)を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項13】
取付け位置において、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)の高さ方向に互いに間隔をあけて配置された少なくとも2つのそらせ部材(15a,15b)が設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項14】
前記第1のガイド(7a)および/または前記第2のガイド(7b)は、ガイドレールに沿って形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項15】
前記第1のガイド(7a)および前記第2のガイド(7b)は、共に一体にまたは互いに別個の構成部材として形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つの戸(3a,3b)は、少なくとも1つの家具ヒンジ(10)を介して支持体(11)に旋回可能に支持されており、該支持体(11)は、前記第2のガイド(7b)に沿って移動可能に支持されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のガイドシステム。
【請求項17】
家具本体(2)と、該家具本体(2)に対して相対的に可動に支持された少なくとも1つの戸(3a,3b)と、該戸(3a,3b)を前記家具本体(2)に対して相対的に移動させる、請求項1から16までのいずれか1項記載のガイドシステム(5)とを備えた家具(1)。
【請求項18】
前記家具本体(2)は、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)を収容する少なくとも1つの側方の収容ポケット(8a,8b)を有しており、前記少なくとも1つの戸(3a,3b)は、前記第2のガイド(7b)を介して、前記家具本体(2)の前記側壁(13a)に対して実質的に平行に可動である、請求項17記載の家具。
【請求項19】
当該家具(1)は、前記家具本体(2)に対して相対的に可動に支持された少なくとも2つの戸(3a,3b)を有しており、これらの戸(3a,3b)は取付け位置において、鉛直方向に延びる軸を介して互いに枢着結合されており、前記少なくとも2つの戸(3a,3b)は前記ガイドシステム(5)を介して、前記戸(3a,3b)が互いに実質的に同一平面に方向付けられている第1の位置と、前記戸(3a,3b)が互いに実質的に平行に方向付けられている第2の位置との間で可動である、請求項17または18記載の家具。
【請求項20】
少なくとも2つのそらせ部材(15a,15b)が設けられており、第1のそらせ部材(15a)は、第1の前記戸(3a)に係合可能であり、第2のそらせ部材(15b)は、第2の前記戸(3b)に係合可能である、請求項19記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの戸、特にスライド式折戸を家具本体に対して相対的にガイドするガイドシステムであって、
-少なくとも1つの戸を家具本体の端面に沿ってガイドするように形成された第1のガイドと、
-第1のガイドに対して横方向に延びており、少なくとも1つの戸を家具本体の側壁に沿ってガイドするように形成された少なくとも1つの第2のガイドと
を有する、ガイドシステムに関する。
【0002】
さらに本発明は、家具本体と、家具本体に対して相対的に可動の少なくとも1つの戸と、説明しようとする形式のガイドシステムとを備えた家具に関する。
【0003】
国際公開第2018129572号に示されたガイドシステムにより、互いに枢着結合された2つの戸が、戸が実質的に互いに同一平面に方向付けられている第1の位置と、戸が実質的に互いに平行に方向付けられている第2の位置との間で可動である。戸は、第2の(平行)位置において家具本体の側方の挿入空洞内に突入可能である。戸が、挿入空洞内の突入位置から出発して挿入空洞外の位置に動かされる場合、相対して横方向に延びる各ガイドレールの移行領域において手動で力が加えられることにより、戸が極早期に家具本体の側壁に対して傾いてしまう、ということが生じ得る。このことは極端なケースでは、戸が家具本体に挟まって動かなくなり、戸を継続して動かすことができなくなる、ということにつながる場合がある。戸を戻すことにより初めて、引っかかりを解消することができる。この引っかかりにより、戸とガイドシステムの金具部材とは、高い機械的負荷に晒されることになる。
【0004】
本発明の課題は、上述した欠点を回避して、冒頭で述べた形式のガイドシステムを提供することにある。
【0005】
このことは本発明に基づき、特許請求項1記載の特徴により解決される。本発明の別の有利な実施例は、各従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明では、ガイドシステムが、少なくとも第1のガイドと第2のガイドとの間の移行領域において、少なくとも1つの戸を支持する少なくとも1つのそらせ部材を有している、ということが想定されており、この場合、少なくとも1つのそらせ部材により、移行領域での、家具本体、特に家具本体の側壁および/または側壁に配置されたカバープレートと、少なくとも1つの戸との間の衝突が防止されている。
【0007】
換言すると、第1のガイドと第2のガイドとの間の移行領域内に、この移行領域内での少なくとも1つの戸の極早期の旋回動作を妨げる、少なくとも1つのそらせ部材が配置されている。これにより戸は、戸が家具本体の側壁に対して実質的に平行に方向付けられている位置から出発して完全に引き出された後に初めて側壁に対して旋回可能であると共に、次いで家具本体を覆い隠す位置に可動である、ということが保証されている。
【0008】
1つの実施例では、少なくとも1つのそらせ部材は、可動に、好適には回転可能に支持されている、ということが想定されていてよい。そらせ部材は、回転対称に、例えば回転可能なローラとして形成されていてよい。
【0009】
少なくとも1つのそらせ部材は、側壁に結合された取付け部材に配置されていてよく、この場合、好適には、少なくとも1つのそらせ部材の、取付け部材に対して相対的な位置は、少なくとも1つの調節装置により調節可能である、ということが想定されている。調節装置により、そらせ部材の位置を調節することができ、これにより、少なくとも1つの戸がそらせ部材に沿って滑動するように支持され得ると共に、そらせ部材が戸に挟まって動かなくなるということが排除されている。
【0010】
そらせ部材は、家具本体、特に家具本体の側壁、家具本体に結合されるべき取付け部材、少なくとも1つの戸、または家具本体に可動に支持されるカバープレートに配置されていてよい。カバープレートは、家具本体の側壁と、少なくとも1つの戸との間に位置する隙間を少なくとも部分的に覆い隠すように形成されている。好適には、カバープレートは取付け位置において、鉛直方向に延びる軸を中心として旋回可能に支持されている、ということが想定されている。
【0011】
そらせ部材は、戸を滑動支持する、凸状に形成された少なくとも1つのそらせ輪郭を有していてよい。このようにして、移行領域における戸の旋回動作の開始、経過および終了が、より良好に制御され得る。
【0012】
本発明の別の細部および利点は、以下の図面の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1aおよび図1bは、家具本体と、家具本体に対して相対的に可動の戸とを備えた家具の斜視図である。
図2図2aおよび図2bは、図1a、図1bに示した家具を、別の戸同士の位置で示す図である。
図3図3aは家具の斜視図であり、図3bは図3aを拡大して詳細に示す図である。
図4図4a~図4cは、側方の収容ポケットからの戸の脱出動作を時系列で示す図である。
図5図5aおよび図5bは、カバープレートに配置されたそらせ部材および戸を旋回可能に支持する家具ヒンジを示す斜視図である。
図6図6aおよび図6bは、収容ポケットからの戸の引き出し動作を時間的に連続するステップで示す図である。
図7図7aおよび図7bは、収容ポケットからの戸の引き出し時の、戸の別の位置を示す図である。
【0014】
図1aには、家具本体2と、家具本体2に対して相対的に可動の戸3a,3b;4a,4bとを備えた家具1の斜視図が示されている。戸3a,3b;4a,4bはガイドシステム5により、戸3a,3b;4a,4bが実質的に互いに同一平面に方向付けられている第1の位置と、戸3a,3b;4a,4bが実質的に互いに平行に方向付けられている第2の位置との間で可動に支持されている。戸3a,3bが、第2の(平行な)位置において第1の動作方向(M1)で家具本体2の側方の収容ポケット8a内に挿入可能である一方で、他方の2つの戸4a,4bは、互いに平行な位置において別の収容ポケット8b内に挿入可能である。以下に、図3aおよび図3bに基づき機能形式を説明するが、他方の戸4a,4bにも同じ説明が当てはまる。ガイドシステム5は、長手方向(L)を有する第1のガイド7aを含み、この場合、第2の戸3bに結合可能なガイドキャリッジ6が、第1のガイド7aに沿って移動可能に支持されている。
【0015】
図1bに示す家具1では、戸3a,3bが、図1aに示した同一平面位置から出発して互いに角度を成す位置に移動させられた。第1のガイド7aは、戸3a,3bを家具本体2の端面2aに沿ってガイドするように形成されている。第1の戸3aは、2つ以上の家具ヒンジ10を介して支持体11に支持されており、支持体11は、第1の動作方向(M1)において、すなわち家具本体2の奥行き方向において、収容ポケット8a内に挿入可能である。支持体11は、示された図面では支持体11が長手方向(L)において第1のガイド7aに接続する移行箇所に位置しており、これにより、第1のガイド7aと支持体11との間でガイドキャリッジ6が往復移動可能である。図示の移行箇所において、支持体11は第1のガイド7aに解離可能に係止されており、この場合、第1のガイド7aと支持体11との間の係止は、ガイドキャリッジ6が支持体11内または支持体11上に進入することにより解離可能である。支持体11は、細長い柱の形態で形成されており、その長さは少なくとも、戸3a,3bの高さの1/2に相当する。2つの戸3a,3bは、少なくとも1つのヒンジ金具9を介して、鉛直方向に延びる軸線を中心として互いに枢着結合されている。第2の戸3bは、ガイドキャリッジ6を介して第1のガイド7aに沿って移動可能に支持されている。
【0016】
図2aには、互いに平行に方向付けられた戸3aおよび3bを備えた家具1が示されている。支持体11は、ガイドキャリッジ6の進入により第1のガイド7aから係止解除されたため、支持体11は(ガイドキャリッジ6と戸3a,3bと共に)第1の動作方向(M1)で長手方向(L)に対して横方向に延びる第2のガイド7b(図3)に沿って収容ポケット8a内に挿入可能である。好適には、第1のガイド7aおよび/または第2のガイド7bは、ガイドレールに沿って形成されている、ということが想定されている。
【0017】
図2bには、完全に挿入された状態で収容ポケット8a内に位置する戸3a,3bを備えた家具1が示されている。つまり、戸3a,3bはガイドシステム5により、戸3a,3bが実質的に互いに同一平面に方向付けられている図1aに示した第1の位置と、戸3a,3bが実質的に互いに平行に方向付けられておりかつ収容ポケット8a内に収容可能な図2bに示す第2の位置とを起点として可動に支持されている。このようにして、例えば図2aおよび図2bに示すようなキッチン12を完全に覆い隠すことができ、これにより、キッチン12を居住空間のその他の領域から視覚的に仕切ることが可能である。収容ポケット8aは、図示の実施例では側壁13aと、側壁13aから平行に間隔をあけて配置された隔壁13bとから形成され、この場合、互いに平行な位置にある戸3a,3bは、第1の動作方向(M1)で側壁13aと隔壁13bとの間に挿入可能である。
【0018】
図3aには、家具本体2を備えた家具1の斜視図が示されており、この場合、第1の戸3aは、より見やすくするために消されている。家具本体2は第1のガイド7aが配置されており、第1のガイド7aにより、戸3a,3bを家具本体2の端面2aに沿ってガイドすることができる。家具本体2の側壁13aには少なくとも1つの第2のガイド7bが配置されており、第2のガイド7bにより、戸3a,3bを家具本体2の側壁13aに沿ってガイドすることができる。図示の実施例では、側壁13aに、高さ方向において互いに間隔をあけて配置された2つの第2のガイド7bが設けられており、この場合、支持体11が(戸3a,3bと共に)第2のガイド7bに沿って可動である。移動可能な支持体11には、第1の戸3aを旋回可能に支持するように互いに間隔をあけて配置された2つ以上の家具ヒンジ10が設けられている。第2の戸3bは、少なくとも1つのヒンジ金具9を介して第1の戸3aに結合されている。
【0019】
ガイドシステム5は、第1のガイド7aと第2のガイド7bとの間に位置する移行領域において少なくとも1つの戸3a,3bを支持する少なくとも1つのそらせ部材15a,15bを有している。少なくとも1つのそらせ部材15a,15bにより、移行領域内での家具本体2、特に家具本体2の側壁13aと、少なくとも1つの戸3a,3bとの間の衝突が防がれる。少なくとも1つのそらせ部材15a,15bは、図示の実施例では側壁13aにおいて、側壁13aの床付近の領域と正面領域とに取り付けられている。
【0020】
図3bには、図3aにおいて丸で囲まれた領域が拡大されて示されている。回転対称に、好適には回転可能なローラの形態で形成された2つのそらせ部材15a,15bが認められ、この場合、第1の戸3aの内側は第1のそらせ部材15aに接して移動可能であり、第2の戸3bの内側は第2のそらせ部材15bに接して移動可能である。そらせ部材15a,15bは、取付け部材14を介して側壁13aに取り付けられており、この場合、取付け部材14は2つの戸3a,3bの下方に係合している。そらせ部材15a,15bは、基部19に回転可能に支持されており、この場合、取付け部材14に対して相対的なそらせ部材15a,15bの位置は、少なくとも1つの調節装置16により調節可能である。
【0021】
図示の実施例では、調節装置16は2つの緊締ねじ17a,17bを有しており、この場合、基部19は、緊締ねじ17a,17bが緩められた状態では少なくとも1つのリニアガイド18a,18b,18cを介して取付け部材14に対して相対的に調節可能であると共に、基部19は、緊締ねじ17a,17bが締められた状態では取付け部材14に対して相対的に固定されている。(側壁13aと隔壁13bとから形成された)側方の収容ポケット8aから戸3a,3bを引き出す際に、第1の戸3aは、第1のそらせ部材15aに当接することで、隔壁13bから所定の間隔をあけて離間される。第2の戸3bは、一方ではヒンジ金具9を介して第1の戸3aに枢着結合されておりかつ他方ではガイドキャリッジ6に枢着結合されているため、収容ポケット8aから引き出す際には、第2の戸3bも側壁13aから離間される。第1の戸3aを支持する家具ヒンジ10の旋回動作は、戸3a,3bが家具本体2の収容ポケット8aから完全に脱出して初めて可能である。
【0022】
図4a~図4cには、側方の収容ポケット8aからの戸3a,3bの脱出動作を時系列で示す平面図が示されている。図4aにおいて戸3a,3bは、戸3a,3bが側方の収容ポケット8a内に収容されている平行位置に位置している。この場合、そらせ部材15a,15bは2つの戸3a,3bの間に位置している。戸3a,3bに対するそらせ部材15a,15bの位置を調節可能な調節装置16の緊締ねじ17a,17bが認められる。
【0023】
図4bにおいて、第1の戸3aを可動に支持するように家具ヒンジ10が配置された支持体11は、第2のガイド7b(図3a)に対するその進出位置付近に位置している。ただし戸3a,3bは、そらせ部材15a,15bにより引き続き、側壁13aに対して離間された位置に保たれ、この場合、家具ヒンジ10の旋回動作は、第1の戸3aがそらせ部材15aに当接することにより妨げられている。戸3a,3bが側方の収容ポケット8aから完全に脱出して初めて、取付け位置で鉛直方向に延びる軸線を中心とした第1の戸3aの旋回動作が可能である(図4c)。
【0024】
図5aには、本発明の1つの別の実施例が示されており、この場合、少なくとも1つのそらせ部材15aが、家具本体2に取り付けられるべきカバープレート20に配置されている。このそらせ部材15aは、図3a、図3b、図4a~図4cに示したそらせ部材15a,15bに対して択一的または補足的に設けられてよい。
【0025】
そらせ部材15aは、図5aではカバープレート20と共に、好適には取り付け位置で鉛直方向に延びる回転軸29を中心として旋回可能に支持されている。カバープレート20は、特に戸3aが収容ポケット8a内に完全に挿入された位置に位置するときに、家具本体2、特に家具本体2の側壁13aと、戸3aとの間に位置する隙間31(図6a)を覆い隠すように形成されている。カバープレート20は、第1のウェブ20aと、第1のウェブ20aから横方向に、好適には実質的に直角に突出する第2のウェブ20bとを有している。
【0026】
好適には、カバープレート20の第1のウェブ20aと第2のウェブ20bとは、それぞれ異なる長さを有している、ということが想定されている。
【0027】
カバープレート20は、家具本体2、特に側壁13aに取り付けられるべき金具部材22に旋回可能に結合されており、この場合、カバープレート20は、蓄力器21(特に引張ばね)の力により、隙間31を覆い隠す位置に向かって(つまり被覆位置に向かって常時)押圧されている。そらせ部材15aは、好適には凸状に形成されたそらせ輪郭23を有しており、そらせ輪郭23は戸3aと協働し得る。そらせ部材15aはこの場合も、収容ポケット8aから戸3aを引き出す際の、戸3aと家具本体2および/またはカバープレート20との間の衝突を防ぐように形成されている。
【0028】
図5bには、支持体11に戸3aを旋回可能に支持するための例示的な家具ヒンジ10の斜視図が示されている。家具ヒンジ10は、支持体11に取り付ける第1のストッパ部材24と、戸3aに取り付ける第2のストッパ部材25とを有している。家具ヒンジ10は、多重枢着ヒンジとして少なくとも5つ、好適には少なくとも7つの枢着軸を備えて形成されていてよい。家具ヒンジ10は、好適には長孔の形態のガイド30を備えた、好適には枢着アームの形態の、可動に支持された制御部材27を有しており、この場合、家具ヒンジ10のピン26が、制御部材27のガイド30内で移動可能にガイドされている。このようにして、制御部材27の動作が家具ヒンジ10の動作に結合されている。制御部材27は、カバープレート20と協働する制御カム28を備えており、これにより、カバープレート20は時間的かつ運動学的に制御されて、回転軸29を中心として可動である。
【0029】
図6aには、側壁13aと隔壁13bとの間に配置された、つまり部分的に家具本体2の収容ポケット8a内に位置する戸3aの平面図が示されている。互いに直角に延びるウェブ20a,20bを備えたカバープレート20は、金具部材22を介して家具本体2の側壁13aに取り付けられている。カバープレート20は、回転軸29を中心として旋回可能に支持されており、戸3aの進出動作に際して、家具ヒンジ10の制御部材27の制御カム28と係合可能である。カバープレート20により、特に第1のウェブ20aにより、側壁13aと戸3aとの間に位置する隙間31を少なくとも部分的に覆い隠すことができる。隙間31を覆い隠す位置において、カバープレート20の第1のウェブ20aは、側壁13aに対して実質的に直角に方向付けられている。制御部材27を備えた家具ヒンジ10は、支持体11に配置されており、この場合、支持体11は第2のガイド7bに沿って移動可能である。そらせ輪郭23を備えたそらせ部材15aは、制御部材27から高さ方向に離間されているため、そらせ部材15aに制御部材27は接触不能であり、戸3aは接触可能である。
【0030】
戸3aが収容ポケット8から引き出されると、カバープレート20、この場合はカバープレート20の第2のウェブ20bに、制御部材27の制御カム28が接触することになる。このようにして、図6bに示すように、カバープレート20は家具ヒンジ10の制御部材27により回転軸29を中心として旋回させられる。カバープレート20の旋回動作により、そらせ部材15aも回転軸29を中心として動かされ、このとき、そらせ部材15aのそらせ輪郭23が戸3aに接触し、これにより、戸3aと家具本体2の側壁13aとの間の衝突を防いでいる。
【0031】
図7aには、収容ポケット8aからの戸3aの引き出し動作の続きが示されている。戸3aは、そらせ部材15aのそらせ輪郭23に沿って滑動するように支持され得、この場合、戸3aと側壁13aおよび/またはカバープレートとの間の衝突が防止される。これに対して、制御カム28を備えた制御部材27は、カバープレート20に沿って滑動するように支持され得、これにより、カバープレート20はそらせ部材15aと共に回転軸29を中心として旋回可能である。
【0032】
図7bには戸3aの別の位置が示されており、戸3aは、収容ポケット8aから完全に引き出された後に初めて、側壁13aに対して相対的に旋回可能である。この位置では、カバープレート20の第1のウェブ20aは側壁13aに対して実質的に平行に方向付けられている。図7bに示す戸3aの位置に次いで、戸3aは、家具本体2を覆い隠す位置(図1a)に動かされてよい。カバープレート20の、蓄力器21の力により生ぜしめられる、望ましくない戻り動作を防ぐために、カバープレート20、特にカバープレート20の第1のウェブ20aは、図6bに示した位置から出発して、戸3aが家具本体2を覆い隠す位置まで常に、家具ヒンジ10の制御部材27の制御カム28に支持されている、ということが想定されていてよい。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b