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特許7271818抗ウイルス作用を有するリョクトウ外皮抽出物及びその抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】抗ウイルス作用を有するリョクトウ外皮抽出物及びその抽出方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20230502BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K36/48
A61P31/12
A61K31/7048
A61P43/00 111
A23K10/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021517086
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2018089229
(87)【国際公開番号】W WO2019227382
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520467143
【氏名又は名称】京冠生物科技股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520467154
【氏名又は名称】陳 慧文
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 慧文
(72)【発明者】
【氏名】尤 封陵
(72)【発明者】
【氏名】洪 宜年
(72)【発明者】
【氏名】畢 家甄
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182990(JP,A)
【文献】Molecules,2017年,Vol.22, Article:638,pp.1-13
【文献】Food Chemistry,2016年,Vol.201,pp.350-360
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2008年,Vol.16,pp.7141-7147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00 -36/9068
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス用の医薬組成物であって、リョクトウ外皮の原材料を5~15倍容量(v/w)のC1~C6アルコールに浸し、一次抽出後に超音波処理して抽出を行い、濃縮乾燥することにより得られる、リョクトウ外皮のアルコール抽出物を含み、前記C1~C6アルコールは、50%、75%、または95%の、エタノールまたはメタノールであり、
前記リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、2重量%~7重量%のビテキシン、及び2重量%~7重量%のイソビテキシンを含み、
前記ウイルスは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、ヘルペスウイルス、およびレオウイルスから選ばれる何れかであり、前記オルトミクソウイルス科はほ乳類インフルエンザウイルスH1N1(PR8)であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1記載の医薬組成物であって、アルコール抽出段階において50%、75%、または95%のエタノールまたはメタノールを、前記原材料の10倍容量(v/w)の量で使用することを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医薬組成物であって、前記リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、ウイルス誘発細胞変性効果を阻害することを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、細胞内のウイルスのHA力価を低下させることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、α-グルコシダーゼを阻害することによって抗ウイルス効果を達成することを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、ノイラミニダーゼを阻害することによって抗ウイルス効果を達成することを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗ウイルス用の医薬組成物を抽出する方法であって、
(1)リョクトウ外皮の原材料を供給し、
(2)前記リョクトウ外皮の原材料を、5~15倍容量(v/w)の量の抽出用のC1~C6アルコールに浸漬して浸漬液を得て、前記C1~C6アルコールは、50%、75%、または95%の、エタノールまたはメタノールであり、
(3)前記浸漬液をろ過してアルコール抽出液を得て、該アルコール抽出液を濃縮乾燥させ、
(4)リョクトウ外皮のアルコール抽出物を得ることからなる方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、アルコール抽出段階において50%、75%、または95%のエタノールまたはメタノールを、前記原材料の10倍容量(v/w)の量で使用することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法により調製した飼料添加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リョクトウ(緑豆)外皮抽出物の医薬組成物およびその抽出方法に関するものであり、特に、抗ウイルス作用を有するリョクトウ外皮抽出物の医薬組成物、その抽出方法、および応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本草綱目(Compendium of Materia Medica)によると、リョクトウは主に、腫脹を減退させる、悪気を下向きに保つ、熱を取り除く、有毒物質を除去する、丹毒を治療する、利尿を促進する、渇きを癒す、腸や胃を正常化する、枕の詰め物として用いて視力を改善する、頭痛や片頭痛を治療する、気を活発にする、五臓を調和させる、気分を落ち着かせる、十二経線に作用する、皮膚を潤す、植物や無機物やヒ素からくる有毒物質を取り除く、などの目的で使用されている。リョクトウは、無毒で甘未のある寒涼性食物で、除熱、夏の暑さの緩和、腫脹減退のための利尿促進、咽喉の湿潤化、口渇の癒し、視力の改善、血圧の降下などに利用できるだけでなく、日射病や喉頭咽頭炎の治療にも利用できる。そのため、リョクトウは、夏向きの軽食物として一般に人気が高い。
【0003】
リョクトウと、その外皮と芽は異なる機能をもつ。リョクトウは、腫脹減退、気の流れの調節、除熱、有毒物質の除去、腸や胃の正常化、感冒や頭痛の治療のために使用可能であり、リョクトウを定期的に摂取することにより、気を活発にし、五臓を調和させ、十二経絡を調節することができる。リョクトウ外皮は、無毒で甘味のある寒涼性食物で、熱毒を除去し、頭痛や片頭痛の治療に用いることができる。リョクトウの新芽は、味気がないが甘味はある食物であり、アルコールの影響を放散させ、熱毒を除去し、三焦(さんしょう)を調節するために用いられる。リョクトウの莢は、長期の血性下痢の治療に使用できる。現代の研究において、リョクトウの豆は非常に栄養価が高く、そのタンパク質含量はコメよりも高いことが証明されている。リョクトウは炭水化物が豊富で脂肪が少なく、蛋白質、カルシウム、リン、鉄、カロチンなども有している。夏季にリョクトウスープを定期的に摂取することで、日射病、熱毒による皮膚潰瘍やせつを予防でき、腎炎、糖尿病、高血圧、動脈硬化、胃腸炎、喉頭咽頭炎などに対しても有用である。
【0004】
リョクトウは約20%~24%のタンパク質を含み、主に、タンパク質のおもな形態であるグロブリンとアルブミンがそこに貯蔵されている。リョクトウは蛋白質含量が高く、多くの必須アミノ酸が豊富である。しかし、リョクトウは、トレオニン、硫黄含有アミノ酸、リジン、およびトリプトファンが相対的に欠乏している。リョクトウは、産業動物には消化が容易ではないため、産業動物に適用することは困難である(Randhir and Shetty, 2007)。現在のところ、リョクトウ外皮に含まれる栄養成分に関してはほとんど研究がなされていない。
【0005】
ウイルスは細菌よりも小さい生物で、電子顕微鏡でしか見ることができない。今日、製薬業界では有効な抗ウイルス剤は見つかっておらず、ヒトや動物は自分自身の免疫を介してウイルス感染と闘っている。一般的なウイルス感染は、エンテロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、ポリオ、インフルエンザ、上気道感染などを含む。それらは強力な拡散能力を持ち、通常は集団発生を引き起こす。インフルエンザ(「flu」としても知られる)に関しては、インフルエンザウイルスは、ヒトまたは動物に感染し、公衆衛生および安全に対する深刻な脅威と経済的損失をもたらす。よって解決策が切望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
西洋医学では、ウイルス感染症に対する有効な治療戦略がなく、新薬の研究開発の進行が遅い。そこで、伝統医学応用の価値を向上させるために、中医学の知見と化学・生物学技術を融合することにした。しかし、植物由来原料の品質は変動が激しいので、植物由来原料の利用は比較的困難である。例えば、植物由来の飼料添加物の原材料は自然由来であり、それに含まれる成分は、生産場所の環境や気候などのいくつかの要因により変化し、製品の効果を左右する。この問題を解決することが切に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗ウイルス性医薬組成物に関し、一次抽出後に超音波処理により5~15倍容量(v/w)の量のC1~C6のアルコールでリョクトウ外皮の原材料を浸漬・抽出し、濃縮・乾燥することにより得られる混合物である抗ウイルス性医薬組成物に関する。
【0008】
好ましくは、本発明では、リョクトウ外皮の原材料は、VIVA(商標名)(King‘s Ground Biotech Co., Ltd.により製造)、という名称の製品に由来する。
【0009】
好ましくは、本発明では、アルコール抽出工程において、50%、75%、95%のエタノールまたはメタノールを、原材料の10倍容量(v/w)の量で使用する。
【0010】
好ましくは、本発明では、アルコール抽出は超音波振動により処理される。すなわち、室温で1時間振動・抽出し、固体残渣を除去して、リョクトウ外皮のアルコール抽出溶液を得る。
【0011】
好ましくは、本発明では、リョクトウ外皮のアルコール抽出液を50℃から60℃でさらに乾燥させ、リョクトウ外皮のアルコール抽出物を得る。
【0012】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、約2重量%~7重量%のビテキシン、または約2重量%~7重量%のイソビテキシン、またはそれらの組合せを含む。
【0013】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、ウイルスが誘導する細胞変性効果を阻害することができる。このウイルスは、好ましくは、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ヘルペスウイルス、またはレオウイルスを含む。
【0014】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、赤血球中のウイルスのHA(赤血球凝集アッセイ)力価を低下させることができ、このウイルスは、オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルスなど)、パラミクソウイルス科(ニューカッスル病ウイルスなど)、ヘルペスウイルスまたはレオウイルスを含むことが好ましい。
【0015】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、α-グルコシダーゼ(アルファ-グルコシダーゼ)を阻害することによって抗ウイルス効果を達成する。
【0016】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、ノイラミニダーゼを阻害することによって抗ウイルス効果を達成し、このウイルスは、好ましくは、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ヘルペスウイルスまたはレオウイルスを含む。
【0017】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮のアルコール抽出物は、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ヘルペスウイルスまたはレオウイルスを含むウイルスを阻害する。
【0018】
また、本発明は、抗ウイルス性リョクトウ外皮抽出物の医薬組成物の抽出方法に関し、(1)リョクトウ外皮の原材料を提供すること、(2)リョクトウ外皮の原材料を、5~15倍容量(v/w)の量の抽出用C1~C6アルコールに浸漬して浸漬液を得ること、(3)浸漬液をろ過してアルコール抽出液を得て、そのアルコール抽出液を濃縮して乾燥させること、および(4)リョクトウ外皮のアルコール抽出物を得ること、を含む、抗ウイルス性リョクトウ外皮抽出物の医薬組成物の抽出方法に関する。
【0019】
好ましくは、本発明において、リョクトウ外皮の原材料は、VIVA(商標名)という名称の製品に由来するものである。
【0020】
好ましくは、本発明において、アルコール抽出工程において、50%、75%、95%のエタノールまたはメタノールを、原材料の10倍容量(v/w)の量で使用する。
【0021】
好ましくは、本発明では、アルコール抽出は超音波振動により処理される。すなわち、室温で1時間振動・抽出し、固体残渣を除去して、リョクトウ外皮のアルコール抽出溶液を得る。
【0022】
好ましくは、本発明では、リョクトウの外皮のアルコール抽出液を50℃から60℃でさらに乾燥させ、リョクトウ外皮のアルコール抽出物を得る。
【0023】
また、本発明は、上記の抽出方法により調製された飼料添加物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の抽出方法によって得られたビテキシンおよびイソビテキシンの正規分布を示す図。
図1B】本発明の抽出方法によって得られたビテキシンおよびイソビテキシンの正規分布を示す図。
図1C】本発明の抽出方法によって得られたビテキシンおよびイソビテキシンの正規分布を示す図。
図1D】本発明の抽出方法によって得られたビテキシンおよびイソビテキシンの正規分布を示す図。
図2】標準物質の25ppmビテキシン及び25ppmイソビテキシン、並びに本発明のVIVA(商標名)のメタノール抽出物、及びVIVA(商標名)のエタノール抽出物のクロマトグラムを示す図。
図3】本発明の抽出プロセスのフローチャート。
図4】本発明の抽出物のHPLCカラムクロマトグラムを示す図。
図5】本発明によるリョクトウ外皮のエタノール抽出物の細胞毒性試験結果を示す図。
図6】本発明によるリョクトウ外皮のエタノール抽出物の細胞変性効果の試験結果を示す図。
図7】本発明によるリョクトウ外皮のエタノール抽出物が、細胞中のウイルスのHA力価を減少させるという試験結果を示す図。
図8】本発明によるリョクトウ外皮のアルコール抽出物に対するα-グルコシダーゼ阻害能試験の結果を示す図。
図9A】本発明によるリョクトウ外皮のアルコール抽出物に対するノイラミニダーゼ阻害能試験の結果を示す図。
図9B】本発明によるリョクトウ外皮のアルコール抽出物に対するノイラミニダーゼ阻害能試験の結果を示す図。
図9C】本発明によるリョクトウ外皮のアルコール抽出物に対するノイラミニダーゼ阻害能試験の結果を示す図。
図9D】本発明によるリョクトウ外皮のアルコール抽出物に対するノイラミニダーゼ阻害能試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、抗ウイルス効果を有するリョクトウ外皮抽出物に関し、このリョクトウ外皮抽出物は、King‘s Ground Biotech Co., LtdのVIVA(商標名)という名称の製品を得るためのプロセスで処理が施される。図1Aから1Dにおいて、正規分布曲線から、異なるバッチにおける異なる供給源のすべてのリョクトウ外皮が、大量のビテキシンとイソビテキシンを含む混合物を提供できることがわかる。標準物質である25ppmのビテキシンと25ppmのイソビテキシン、及び、VIVA(商標名)のメタノール抽出物とVIVA(商標名)のエタノール抽出物のクロマトグラムから、図2に示すように、本発明の抽出方法は、一般天然物に通常起こる生産場所の環境や気候など、いくつかの要因によって引き起こされる変化の問題を克服することができ、有効成分を同定・定量化して品質安定化を達成できることから、飼料添加物あるいは食品添加物としてさらに応用できることが分かった。したがって、本発明はまた、動物の健康を増進する飼料添加物に関する。
【0026】
さらに、本発明は、ウイルスの細胞変性効果およびHA力価を減少させることができるリョクトウ外皮抽出物に関するものであって、このウイルスは、好ましくは、オルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルスなど)、パラミクソウイルス科(ニューカッスル病ウイルスなど)、ヘルペスウイルスまたはレオウイルスを含み、また、本発明によって開示された抽出法によって得られる抽出物は、主に有効成分のビテキシンおよびイソビテキシンを含む。この2つの有効成分は、α-グルコシダーゼとノイラミニダーゼを阻害する能力を有しており、抗ウイルス作用をもたらす。
【0027】
本発明のリョクトウ外皮抽出物は、50%、75%、95%のエタノール、メタノールまたは任意の他のアルコールを含むC1~C6のアルコールによって抽出することが好ましいが、これに限定されるわけではない。好ましいのは、エタノールによる抽出であり、異なる濃度でエタノールにより抽出した結果は、それら全てが特定の量のビテキシンおよびイソビテキシンを含むことを示す。本発明の最良の実施例を示すために、便宜上、アルコール抽出物は、以下、エタノール抽出物またはEEと称される。
【実施例
【0028】
実施例1: リョクトウ外皮抽出物の有効成分の抽出
図3に示すように、King‘s Ground Biotech Co., Ltd.の調製プロセスに従って、リョクトウ外皮の原材料を用意し、生産計画して、配合、物理的、化学的、生物学的処理、測定、パッケージを行い、動物飼料添加剤や他の食品の添加剤として使用できるVIVA(商標名)という名称の製品を得た。実験室での小規模生産では、重量の単位は50グラム(g)であった。得られた動物飼料添加物50gを、10倍量、すなわち500ミリリットル(ml)の95%エタノールに添加し、超音波処理により抽出を行った。室温で1時間振動させ、粗ろ過により固体残渣を除去し、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出溶液を得た。この段階での容量は約350ml~380mlで、回収率は約70~80%であった。減圧濃縮後、20g~25gの抽出液を得ることができ、原材料重量の約40~50%であった。当該抽出液を50~60℃で乾燥させ、残った水分を除去し、原材料重量の約20~30%(w/w)であるリョクトウ外皮のエタノール抽出物10g~15gを得た。
【0029】
実施例2: リョクトウ外皮のエタノール抽出物の有効成分試験
実施例1から得たリョクトウ外皮のエタノール抽出物をDMSOに溶解した。リョクトウ外皮のエタノール抽出物1.4gを、DMSO14mlに溶解した後、メタノールで100倍に希釈し、主として成分分析用HPLCで分析した。図4に示すように、標準物質と比較した結果、保持時間約25分~30分の間に生じる2つのピークはそれぞれビテキシン及びイソビテキシンであることが確認された。計算の結果、ビテキシンの絶対量は31.015ミリグラム(mg) (エタノール抽出物の2.22%)であり、イソビテキシンの絶対量は33.893mg(エタノール抽出物の2.42%)であることが分かった。
【0030】
先行技術から、ビテキシン及びイソビテキシンは、α-グルコシダーゼ及びノイラミニダーゼを阻害する能力を有するため、ウイルス活性を阻害できることが知られている。現在、純正のビテキシンとイソビテキシンまたはそれらの標準物質は高価であり、10mgに対して数ニュー台湾ドルから数万ニュー台湾ドル(NTD)の費用がかかる。価格は純度の高さに依存し、イソビテキシンの方が高価である。このような価格の問題があるため、その用途や応用は限られている。
【0031】
実施例3: 細胞毒性試験
開発された薬剤は安全性要件を満たさなければならず、かつ、それらの使用濃度によって毒性をもたらさないことが必要であり、このため、本発明のエタノール抽出物の細胞毒性試験をさらに実施した。ブランク対照としてDMSOを用いた。1%の濃度のDMSOでは、細胞は増殖と形態に差を示さず、つまり毒性を示さなかった。
【0032】
使用した細胞株は、MDCK細胞(イヌ腎臓上皮細胞)であり、インフルエンザの可能性を探るための試験で使用される一般的な細胞株標的である。使用した細胞培養液は、10% FBS血清と1% PSA抗生物質混合液によるDMEMとした。リョクトウ外皮のエタノール抽出物1.4gを、DMSO5.6mlに溶解して、リョクトウ外皮のエタノール抽出物の高濃度250ミリグラム/ミリメートル(mg/ml)保存液を得た後、DMSOによりそれぞれ62.5、125、250、500、1000、2000マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)の作業濃度に希釈した。細胞をペトリ皿に播種し、24時間増殖させた後、試験対象のリョクトウ外皮のエタノール抽出物を加えた。24、48、72時間後、細胞生存率をそれぞれ分析した(MTTアッセイ)。図5に示すように、試験はMDCK細胞で行われ、濃度2000(μg/ml)以下のリョクトウ外皮のエタノール抽出液は細胞毒性を示さず、優れた安全性を示した。
【0033】
実施例4: 抗ウイルス試験-リョクトウ外皮のエタノール抽出物によるインフルエンザウイルスの細胞変性効果(CPE)阻害
【0034】
インフルエンザウイルス粒子は細胞に感染した後、宿主細胞を殺し、それが細胞変性効果(CPE)を生じさせる。したがって、細胞変性効果が阻害された場合に抗ウイルス効果があったとみなされる。
【0035】
本発明では、MDCK細胞(イヌ腎臓上皮細胞)を試験対象として用いた。使用したウイルス株はPR8(H1N1)で、リョクトウ外皮のエタノール抽出物の濃度は、0, 125, 2000(μg/ml)とし、そのうち、0μg/mlをDMSOブランク対照とした。この試験では、まず細胞株を播種した。24時間後、MDCK細胞を異なる濃度のリョクトウ外皮のエタノール抽出物で1時間前処理し、またPR8ウイルス株を異なる濃度のリョクトウ外皮のエタノール抽出物で1時間前処理した。その後、リョクトウ外皮のエタノール抽出物で前処理したウイルスと、リョクトウ外皮のエタノール抽出物で前処理した細胞株を共培養して感染させた。感染1時間後にウイルス溶液を除去し、リョクトウ外皮のエタノール抽出液を加えた。24時間後、CPE試験結果を観察した。
【0036】
図6に示すように、矢印は細胞変性効果(CPE)が起こった場所を示している。本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物により、細胞変性効果の発生を減少させることができる。2000μg/mlの濃度では、細胞変性効果は観察されず、顕微鏡下の細胞の形態は正常であった。
【0037】
実施例5: 抗ウイルス試験-リョクトウ外皮のエタノール抽出物による細胞内インフルエンザウイルスのHA力価低下
インフルエンザウイルスの表面にある赤血球凝集素は、赤血球上のレセプターと結合することができる。ウイルスの力価が十分に高い場合、赤血球の赤血球凝集が生じる。したがって、赤血球の赤血球凝集は、ウイルス力価を検査する方法として利用できると考えられる。これは赤血球凝集アッセイ(HA)とも呼ばれる。
【0038】
細胞株および本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物の濃度は、実施例4に記載したものと同じものとした。この試験では、まず細胞株を播種した。24時間後、MDCK細胞を異なる濃度のリョクトウ外皮のエタノール抽出物で1時間前処理し、PR8ウイルス株を異なる濃度のリョクトウ外皮のエタノール抽出物で1時間前処理した。その後、リョクトウ外皮のエタノール抽出物で前処理したウイルスと、リョクトウ外皮のエタノール抽出物で前処理した細胞株を共培養して感染させた。感染1時間後にウイルスを除去し、リョクトウ外皮のエタノール抽出液を加えた。24時間後、HA力価試験用に細胞培養液を採取した。
【0039】
その結果、図7に示すように、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物が濃度2000μg/mlの場合、細胞のHA力価は検出できなかった。したがって、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物は、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルスのHA力価を低下させることが判明した。
【0040】
実施例6: リョクトウ外皮のエタノール抽出物に対するα-グルコシダーゼ阻害能試験
0.8マイクロリットル(μL)のリョクトウ外皮のエタノール抽出物(DMSOに溶解した濃度20mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、2.5mg/mL、1.25mg/mL、0.625mg/mL、0mg/mL)を用意した。溶解したリョクトウ外皮のエタノール抽出物を、リン酸緩衝液69.2μL(100ミリモル(mM)、pH 6.8)及びα-グルコシダーゼ10μL(1単位/ミリリットル(U/mL)、Sigma)と混合し、37℃のインキュベーターに入れて15分間培養した。
【0041】
培養後、p-ニトロフェニル-α-d-グルコピラノシド(p-nitrophenyl-α-d-glucopyranoside)(5mM, Sigma)20μLを基質として培養液に添加し、37℃のインキュベーター中で20分間培養した。その後、NaCO(0.1M)を50μL加えて反応を終了させ、波長450nmにおける吸光度を分光光度計により測定し、測定結果を記録した。図8に示すように、リョクトウ外皮のエタノール抽出物は、α-グルコシダーゼの活性を用量依存的に低下させることができるという結果になり、IC50は20.07±0.9μg/mLであり、参考文献に開示されているビテキシンおよびイソビテキシンのIC50値、それぞれ23.9μg/mLおよび46.9μg/mLよりも低かった。この結果は、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物がα-グルコシダーゼ活性を阻害する優れた能力を有するため、抗ウイルス能力と潜在性を示すことも実証した。このウイルスは、α-グルコシダーゼを必要とするウイルスファミリー、例えば、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ヘルペスウイルスまたはレオウイルスなどに由来することが好ましい。
【0042】
実施例7: リョクトウ外皮のエタノール抽出物に対するノイラミニダーゼ阻害能試験
【0043】
ノイラミニダーゼはインフルエンザウイルス粒子を宿主細胞から放出させるのに必要な酵素である。したがって、ノイラミニダーゼ活性の阻害は、インフルエンザを治療するための戦略となる。実際、ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザの治療に臨床使用されている。本発明では、哺乳類インフルエンザウイルスH1N1(PR8)およびトリインフルエンザウイルスH6N1(3937)から得たノイラミニダーゼを用いて、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物のノイラミニダーゼ活性阻害試験を行った。
【0044】
1μLのリョクトウ外皮のエタノール抽出物(DMSOに溶解した濃度200mg/ml、50mg/ml、12.5mg/ml、3.125mg/ml、0mg/ml)を用意し、25μLのウイルス(128倍希釈3937ウイルス粒子と8倍希釈PR8ウイルス粒子から成る)と混合し、1x分析緩衝液(33mM MES (2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸または4-モルホリンエタンスルホン酸、SIGMA、M3671)、20mMの CaCl、pH 6.5)によって、50μLまで容量を調整し、37℃のインキュベーター中で20分間培養した。その後、50μLの蛍光発生基質(50マイクロモル(μM)の4-メチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸、Sigma)を加え、37℃インキュベーター中で60分間共培養した。最後に、反応を終了するために0.2 M NaCOを100μL追加した。蛍光は励起波長355nm、発光波長460nmで測定した。背景をもとに相対蛍光単位(RFU)を求め、IR (%) = (1 - RFU検体/RFU DMSO) ×100%という式により、阻害率(IR)を算出した。
【0045】
図9A~9Dに示すように、オセルタミビルと同様に、リョクトウ外皮のエタノール抽出物は、ほ乳類インフルエンザウイルスまたはトリインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを用量依存的に阻害する能力を有する。これらの結果から、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物は、ノイラミニダーゼ活性を阻害する優れた能力を有するため、抗ウイルス能力および潜在性を示すことが明らかとなった。好適には、このウイルスは、哺乳動物インフルエンザウイルスまたはトリインフルエンザウイルスである。
【0046】
本発明の実施例は、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物が抗ウイルス能力を有し、ウイルスのα-グルコシダーゼおよびノイラミニダーゼを阻害するメカニズムを通して、抗ウイルス効果を達成することができることを示した。したがって、α-グルコシダーゼおよびまたはノイラミニダーゼを有するウイルスに対してこれを使用することができる。一方、本発明のリョクトウ外皮のエタノール抽出物は、インビトロ試験において細胞毒性を示さず、安全で良好な抗ウイルス生成物である。
【0047】
本発明により提供される抽出方法および得られた抽出物は、高いコスト優位性を有する。高いコスト優位性とは、低コストの原料源、高収率のビテキシンおよびイソビテキシンまたはそれらの組合せ、良好な回復、および簡単な抽出方法を含む。したがって、これは産業での応用に有利であり、さらなる開発および保護に値する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D