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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 37/30 20060101AFI20230502BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230502BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B64D37/30
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018129935
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020006812
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516250856
【氏名又は名称】日本FC企画株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀 美知郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 由佳
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179321(JP,A)
【文献】特開2017-114186(JP,A)
【文献】特開2016-117478(JP,A)
【文献】特開平05-116689(JP,A)
【文献】特開平11-281299(JP,A)
【文献】特開2012-111298(JP,A)
【文献】特表2015-535783(JP,A)
【文献】特開2014-040240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/30
B64C 27/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素供給源と、
該水素供給源の水素から動力を得る航空機であって、
前記水素供給源の水素タンク外周部に前記水素供給源の空気抵抗を増大させる空気抵抗手段と、を備え、
前記空気抵抗手段には、少なくともフェルト状、編地状、ハニカム構造状、多孔質構造製、若しくは発砲プラスティック製、又はこれらの組合せの材料を用い、
前記空気抵抗手段を、水素が蓄圧された水素供給源に比べて密度が低い空気抵抗層で構成した、
ことを特徴とする航空機。
【請求項2】
前記水素供給源と前記空気抵抗手段とからなる構造体の空気抵抗係数kは次式であらわされることを特徴とする請求項1に記載の航空機。
k≧0.004
ただし、k[kg/m]:空気抵抗係数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素から動力を得る航空機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に、電気推進式航空機に一時的かつ電気的に接続する空中動力補助装置を備える航空機が開示されている。この航空機は、電気推進式航空機とは別に飛行しており、電気推進式航空機に搭載のバッテリーに対して、その航空機に搭載の電気エネルギー生産システムによって、飛行中などに充電する。電気推進式航空機の、比較的短かった飛行時間を倍増さらには3倍増に増大させようとするものであった。電気エネルギー生産システムの1つの実施例として、燃料電池を挙げている。
【0003】
また、非特許文献1には、燃料電池システムによってプロペラ用モータを駆動する燃料電池ドローンが開示されている。プロペラ用モーター駆動電源をバッテリーと燃料電池のハイブリッドにして、バッテリーのみの無人航空機に比べて長時間飛行を可能にしている。これら燃料電池駆動の無人航空機に使用される固体高分子形燃料電池は、比較的低温からも運転ができ、無人航空機用の電源に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-505411号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】“NASA, JAXA Eye Fuel-Cell Propulsion For Aircraft” Aviation Week & Space Technology:Aug 10,2015
【文献】「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」国土交通省 航空局、平成30年3月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固体高分子形燃料電池を無人航空機用の電源に用いた場合には、水素タンクなどの燃料供給システムを上空に飛ばすことになり、水素タンクごと落下した場合の安全性には問題があった。
【0007】
また、燃料電池ドローンの水素タンクの落下速度は、上記非特許文献2の「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」に記載の飛行高さ150mからの落下に対して200km/hの速度に達する可能性もあり、水素タンクの支持構造を大きくしなければならず、かつ、重くなるといった問題があった。
【0008】
また、特許文献1の空中動力補給装置の場合には、電気エネルギーの補給に時間を要して宅配物などの移送に長時間を要したり、充電基地のネット網が必要となったりして、技術的にも、輸送価格的にも多大な負担を要するといった問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その主たる目的は、水素から動力を得る航空機において、水素タンクの支持構造が大きく、かつ、重くなることの防止と落下の際の耐衝撃性の向上を図ることを別々に解決しようと試みるのではなく一挙に解決すべく、航空機あるいは航空機に備えた水素タンクが上空から落下する際の速度を管理することができる航空機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る航空機は、水素供給源と、該水素供給源の水素から動力を得る航空機であって、前記水素供給源の空気抵抗を増大させる空気抵抗手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
航空機は、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他の機器をいう。航空機には、有人航空機と無人航空機とを含む。有人航空機は、人が乗って航空の用に供することができる航空機であればよく、マルチコプターのような回転翼を複数有する形状・構造の航空機であってもよい。無人航空機は、無人で航空の用に供することができる航空機であって、ドローンを含む。ドローンは、航空機であって、構造上人が乗ることができないものであり、遠隔操作や自動操縦により、飛行させることができるものである。
【0012】
構造上人が乗ることができないものとは、当該機器の概括的な大きさや潜在的な能力を含めた構造、性能等を確認することにより、これに該当すると判断されたものをいう。また、遠隔操作とは、プロポ等の操縦装置を活用し、空中での上昇、ホバリング、水平飛行、下降等の操作を行うことをいう。自動操縦とは、当該機器に組み込まれたプログラムにより自走的に操縦を行うことをいう。
【0013】
好ましくは、航空機は、小型飛行機、小型回転翼航空機、ドローンなどの小型航空機が好ましい。この小型航空機は有人航空機と無人航空機とを含む。水素から動力を得る方法は、水素燃料電池とモータとの組み合わせ、水素燃料ジェットエンジン、又は水素燃料エンジンが挙げられる。水素燃料エンジンには、例えば、水素を燃料とするレシプロエンジン、水素を燃料とするロータリーエンジンが挙げられる。水素供給源には、例えば、水素を貯蔵する燃料タンクを含み、インテグラル・タンクとセル・タンクとが含まれる。水素には、水素、液体水素、高圧水素が含まれる。
【0014】
より好ましくは、航空機は、水素供給源と、酸素供給源と、水素供給源からの水素と酸素供給源からの酸素とを反応させ、動力を発生させるよう構成された燃料電池システムと、を含むものが好ましい。また、水素供給源と、酸素供給源と、水素供給源からの水素と酸素供給源からの酸素とを混合して、動力を発生させるよう構成された水素燃料エンジンと、を含む航空機であってもよい。
【0015】
空気抵抗手段は、軽量な材料によって構成することが好ましい。また、空気抵抗手段は、水素が蓄圧された水素供給源に比べて密度が低い空気抵抗層で構成し、水素供給源に設けることが好ましい。空気抵抗手段は、例えば、少なくとも、フェルト状若しくは編地状のもの、ハニカム構造製若しくは多孔質構造製、又は発砲プラスティック製のものを用いることが好ましい。もっとも、耐火性、防炎性、難燃性の点で、発泡スチロールは除かれる。空気抵抗手段は、難燃性を有することが好ましい。
【0016】
また、水素供給源と空気抵抗手段とからなる構造体の空気抵抗係数kは0.004以上(k≧0.004)であることが好ましい。
ただし、k[kg/m]:空気抵抗係数である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の航空機によれば、上記構成としたので、空気抵抗手段が水素供給源の空気抵抗を増大させ、落下する際の速度を管理することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明の航空機によれば、さらに、空気抵抗手段を、水素が蓄圧された水素供給源に比べて密度が低い空気抵抗層で構成し、水素供給源に設けたので、水素供給源が落下した場合の落下速度を抑制することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明の航空機によれば、さらに、水素供給源と空気抵抗手段とからなる構造体の空気抵抗係数kは0.004以上(k≧0.004)であるので、落下速度を低速に抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の航空機の一実施形態を示すドローンのシステム系統図である。
図2図1のドローンに搭載された燃料タンクの構成を示す説明図である。
図3】本発明の航空機の空気抵抗手段を理論的に示す、上空から燃料タンクを落下させた場合の落下高さに対する燃料タンクの地上到達時の落下速度との関係を示すグラフである。
図4】本発明の航空機の空気抵抗手段を理論的に示す、高さ150mの上空から燃料タンクを落下させた場合の燃料タンクの地上到達時の落下速度と空気抵抗係数との関係を示すグラフである。
図5】第二の実施形態の空気抵抗手段の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
[第一の実施形態]
【0022】
本実施形態の航空機は、本発明の航空機のなかでも、燃料電池を電源とする場合のドローンである。このドローンの好ましいシステム系統図を図1に示す。ドローン6は、図1に示すように、燃料タンク1と、水素レギュレータ7と、水素供給系8と、燃料電池スタック9と、水素循環ポンプ10と、空気吸気系11と、空気供給ポンプ12と、空気排気系13と、インバーター14と、モータ15と、プロペラ16と、二次電池17と、DC/DCコンバーター18と、を備えている。
【0023】
(燃料電池システム)
本実施形態のドローン6が備える燃料電池システムは、圧力容器を具備してこの圧力容器に蓄圧された高純度の水素を減圧弁によって減圧して固体高分子形燃料電池に供給するものである。燃料電池は、水素等の燃料と空気等の酸化剤を電気化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。この燃料電池は、用いられる電解質の種類によって、数種類に分類される。なかでも、電解質としてプロトン伝導性を有する高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池は、コンパクトな構造で高出力密度が得られ、かつ簡易なシステムで運転が可能なことから、多くの用途での電源として使用することができる。さらには、宇宙用の電源や無人飛行機用の電源としての使用することもできる。
【0024】
燃料タンク1の内部に蓄圧された水素は、水素レギュレータ7によって減圧され、水素供給系8を介して燃料電池スタック9に供給される。燃料電池スタック9の発電によって消費された余剰の水素は、水素循環ポンプ10によって水素供給系8に戻される。一方で、空気吸気系11から取り込まれた空気は、空気供給ポンプ12によって燃料電池スタック9に供給され、燃料電池スタック9において発電に消費されると共に、余剰となった空気は空気排気系13から大気に放出される。
【0025】
燃料電池スタック9の固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜をアノード電極、カソ-ド電極からなる一対のガス拡散電極が挟持した単電池と、それぞれの電極に反応ガスを供給するための流路を有するガス不透過性のセパレータで構成される。そして、水素等の燃料ガスをアノード電極に、空気等の酸化剤ガスをカソード電極に供給すると、電気化学反応により単電池で起電力が起きる。この単電池の起電力は高々1Vと低いため、通常は複数の単電池を積層した電池スタックとして使用される。
【0026】
燃料電池スタック9によって発電された直流電気は、インバーター14によって交流電気に変換されて出力され、モータ15を駆動し、プロペラ16を回転させて、ドローン6に推力を与える。もっとも、モータ15に直流モータを用いる場合にはインバーター14は不要であり、燃料電池スタック9によって発電された直流電気が、変換されずに出力され、モータ15を駆動する。
【0027】
本実施形態の燃料電池システムによれば、二次電池17とハイブリッド構成にすることで安定した電気が供給される。必要に応じて電圧を昇圧/降圧する場合にはDC/DCコンバーター18を介することもある。
【0028】
(空気抵抗手段)
燃料タンク1は、図2に示すように、水素タンク2と、空気抵抗層3とを備えている。本実施形態の空気抵抗手段は、水素が蓄圧された水素タンク2に比べて密度が低い空気抵抗層3で構成されており、水素タンク2の外周部に設けられている。空気抵抗層3は、水素タンク2の空気抵抗を増大させる。なお、本実施形態では、水素タンク2を略半球形と略円筒とから構成しているが、水素タンク2が球形であっても、楕円形であっても空気抵抗層3はその外周部に具備される。また、空気抵抗層3は、一様な厚さである必要はなく、厚い箇所と薄い箇所とから構成されても空気抵抗としての効果は発揮される。
【0029】
固体高分子形燃料電池に燃料ガスとして水素を供給するための高純度の水素を蓄圧する圧力容器は、一般的には水素の圧力容器外へのリークを抑える樹脂製あるいは金属製のライナー材と、耐圧用にライナー材の外周部に巻いた高強度繊維とから構成されている。圧力容器である水素タンク2は、内層21と外層22の2層より構成される。内層21をライナー材と呼び、ナイロンなどの高分子材料、あるいはアルミニウムを主成分とする金属材料によって構成される。外層22は補強層であり、炭素繊維などによって構成される。ドローン6に組み込まれる燃料タンク1は、ドローン6と一体にして飛行させるため、軽量な材料によって構成する必要がある。そのために、燃料タンク1は、高分子材料やアルミニウム合金や炭素繊維で構成することが好適である。
【0030】
空気抵抗層3は、水素タンク2と一体ではなく、水素タンク2の外層22の外側に、別部材として装着されるものであり、水素タンク2と空気抵抗層3を合わせて燃料タンク1と呼称している。外層22に空気抵抗層3を装着させる方法としては、接着や巻回や嵌設など様々な方法があるが、ドローン6の飛行中に空気抵抗層3が外層22から外れたり、脱落しないように強固に固定される方法であれば、いかなる方法を用いてもよい。
【0031】
水素タンク2の耐圧容器としての強度は、内層21と外層22によって充分に確保されている。空気抵抗層3は、水素供給源の空気抵抗を増大させる目的をもって具備されるものである。すなわち、ドローン6が制御不能となって落下する場合などに、主として空気抵抗層3が落下速度を管理する役割を担う。具体的には、空気抵抗層3を具備しない場合に比較して、燃料タンク1若しくはドローン6全体の落下速度を減衰させる役割を有している。これにより、ドローン6の地表面あるいは建築物等への衝突の際の衝撃が緩和される。その結果、水素タンク2が受ける衝撃も緩和されるので、水素タンク2の衝突による破壊が防止される。
【0032】
また、空気抵抗層3は、難燃性の素材から構成されていることが望ましい。すなわち、燃料タンク1が地表面あるいは建造物などに衝突した場合に、万一、水素タンク2が破壊され、あるいは亀裂が生じることを防止するためである。難燃性の素材を得るには、素材に難燃剤を添加してもよく、難燃剤として、水酸化アルミニウム、塩素化パラフィン、リン酸エステル系化合物などを用いてもよい。
【0033】
次に、空気抵抗手段の作用について説明する。航空機、特定には、ドローン6が必要な電気を発電する燃料電池スタック9に水素含有ガスを供給する水素タンク2、あるいは外周部に空気抵抗層3で覆った燃料タンク1を、上空より落下させた場合の運動方程式は(1)式で与えられる。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、(1)式の第1辺および第2辺は燃料タンク1の落下方向yの落下加速度である。tは時間であり、vは落下速度である。(1)式の第3辺の第1項のmは燃料タンク1の質量である。gは重力加速度であり、mgは燃料タンク1に働く重力である。(1)式の第3辺の第2項のDは燃料タンク1の落下時の空気抵抗力であり、(2)式で与えられる。
【0036】
【数2】
【0037】
ここで、(2)式の第2辺のCは抗力係数であり、ρは空気の密度である。Sは燃料タンク1の投影面積であり、燃料タンク1がその長手方向に落下するとき、燃料タンク1の短手方向の外径をdとするとS=(1/4)πdで与えられる。また、第3辺のkは空気抵抗係数と呼ばれ、(3)式で与えられる。
【0038】
【数3】
【0039】
(1)式の運動方程式より、t秒後の燃料タンク1の落下速度vは(4)式で与えられる。
【0040】
【数4】
【0041】
燃料タンク1の質量mが一定で、その短手方向の外径d(以下、「直径φ」ともいう。)が異なる場合の落下速度との関係を図3に示す。図3(a)は、質量m=1kgの場合で、空気抵抗係数k=0、若しくは直径φが10cm~30cmのいずれかの条件のとき、上空から燃料タンク1を落下させた場合の落下高さに対する燃料タンク1の地上到達時の落下速度との関係を示すグラフである。図3(b)は、質量m=2kgの場合で、空気抵抗係数k=0、若しくは直径φが10cm~30cmのいずれかの条件のとき、上空から燃料タンク1を落下させた場合の落下高さに対する燃料タンク1の地上到達時の落下速度との関係を示すグラフである。
【0042】
航空機に装着する燃料タンク1の質量mを1kgとし、空気抵抗層3の短手方向の外径dを0cm、10cm、20cm、30cmとした場合に、上記(4)式を用いて得られる落下速度vと落下高さとの関係は、図3(a)に示すように、空気抵抗が働かない場合(k=0)、150mの上空から燃料タンク1を落下させると、地上での落下速度は60m/sにも達する。それに対して、短手方向の外径dが30cmとなる空気抵抗層3で覆うことで、m=1kgのとき落下速度vは30m/sを下回るまでに低下する。その結果、地上到達時の運動エネルギーはおよそ1/4にまで低減できる。
【0043】
図4には、航空機に装着する燃料タンク1の質量mが一定の条件で150mの上空から落下させた場合の地上到達時の落下速度vと(3)式で与えられる空気抵抗係数kとの関係を示す。図4(a)には、燃料タンク1の質量m=1kgの場合を示す。図4(a)に示すように、空気抵抗係数kが増大するにつれて落下速度vが低下している。傾向的に、質量m=1kgの場合、空気抵抗係数kが0.004位までは落下速度vは急激に低下し、空気抵抗係数kが0.004を超えた辺りからは徐々に落下速度が低下する。
【0044】
図3並びに図4においては、150mの上空から燃料タンク1を落下させることを前提に計算を行った。これは、国土交通省航空局が発行する上記非記特許文献2の「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」に規定されるように、150mまでは国土交通省の許可なくドローンを飛行することが可能であることから、ドローン6も、150mの上空までは飛行する可能性があることを前提としている。
【0045】
本発明の航空機の燃料タンク1(水素タンク2と空気抵抗層3とからなる構造体)の空気抵抗係数kは、図4の結果を基に提案している。すなわち、各種外径dを有する複数の燃料タンク1において、燃料タンク1のそれぞれの短手方向の外径dと質量mとから、(3)式から求まる空気抵抗係数kを0.004以上に設定した。
【0046】
図4(b)に、燃料タンク1の質量mが2kgの場合を示す。図4(a)及び図4(b)から、質量mが増加すると、落下速度vと空気抵抗係数kとの関係を示すグラフは、左上方へシフトすることがわかる。傾向的に、質量m=2kgの場合、空気抵抗係数kが0.002位までは落下速度vは急激に低下し、空気抵抗係数kが0.002を超えた辺りからは徐々に落下速度が低下する。質量m=2kgの場合、空気抵抗係数kが0.004の落下速度は、空気抵抗係数kが0.002のそれより、低速に抑えられることになる。他方、燃料タンク1の質量が1kg未満の場合は、図示しないが、落下速度vは、質量が1kgの場合と比較して、さらに低速に抑えられることとなる。
【0047】
本実施形態のドローン6によれば、水素が蓄圧された水素タンク2と比較して、軽量で密度が低い空気抵抗層3を、水素タンク2に設けたので、水素タンク2の空気抵抗を増大させ、落下する際の速度を管理することができる。また、空気抵抗層3が難燃性の素材から構成されている場合には、燃えにくく、水素タンク2の破壊あるいは亀裂の発生を防止することができる。
【0048】
また、水素供給源である燃料タンク1と空気抵抗手段である空気抵抗層3とからなる構造体の空気抵抗係数kが0.004以上(k≧0.004)の場合には、空気抵抗係数kが0.004未満の場合に比べて、落下速度vを低速に抑えることができる。
【0049】
さらに、本実施形態のドローン6によれば、燃料タンク1の落下速度が、上記非特許文献2の「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」に記載の飛行高さ:地上高150mからの落下に対して200km/hの速度に達することを防止するすることができる。水素タンク2の支持構造が大きく、かつ、重くなるという問題を解決することができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態のドローン6によれば、水素タンク内の温度低下を防止し、水素タンク2が極低温の温度域で疲労破損することを防止することができる。
【0051】
[第二の実施形態]
次に、図5を参照して、第二の実施形態のドローン6について説明する。なお、以下、第一の実施形態と同一又は対応する部分については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0052】
第二の実施形態のドローン6は、水素タンク2に少なくともフェルト状、編地状、ハニカム構造製、多孔質構造製、若しくは発砲プラスティック製又はこれらの組合せの材料を用いる空気抵抗層3a,3b,3cを設けた燃料タンク1A,1B,1Cを備えている。円筒形状の水素タンク2aに空気抵抗層3aを設けた燃料タンク1Aを、図5(a)、図5(b)に示す。また、球形状の水素タンク2bに空気抵抗層3bを設けた燃料タンク1Bを図5(c)、図5(d)に示す。さらに、楕円形状の水素タンク2cに空気抵抗層3cを設けた燃料タンク1Cを、図5(e)、図5(f)に示す。
【0053】
第二の実施形態のドローン6によれば、水素タンク2a,2b,2cの外周部に夫々空気抵抗層3a,3b,3cを設けたので、水素タンク2a,2b,2cの空気抵抗が増大して、例えばドローン6が事故などによって上空から落下する場合にも、落下速度を減少させることが出来る。空気抵抗層3a,3b,3cによって覆った水素タンク2a,2b,2cの落下速度は、気温などの気象条件の影響は受けはするものの、主には空気抵抗層3a,3b,3cの外径da,db,dcと、空気抵抗層3a,3b,3cを含む燃料タンク1の重量とによって決まる。空気抵抗層3の外径が大きい程、また、水素タンク2と空気抵抗層3とを合わせた重量が軽い程、燃料タンク1A,1B,1Cの落下速度は遅くなり、水素タンク2a,2b,2cが破損する度合いが低減される可能性が高い。そのため、空気抵抗層3a,3b,3cの材質は、軽量で、かつ、密度の小さいフェルト状、編地状、ハニカム構造製、多孔質構造製、発砲プラスティック製のものが好適である。
【0054】
[第三の実施形態]
第三の実施形態の航空機について、説明する。第三の実施形態の航空機は、図示しないが、水素から動力を得る方法として、燃料電池システムに代えて、水素燃料エンジンと、この水素エンジンで稼働される発電機とを備えている。本実施形態の航空機は、マルチコプターのような回転翼を複数有する形状・構造の航空機である。この航空機は、人が乗って航空の用に供することができる構成とされている。
【0055】
(水素燃料エンジン)
第三の実施形態の航空機が備える水素燃料エンジンは、圧力容器を具備してこの圧力容器に蓄圧された高純度の水素が減圧弁によって減圧供給されて使用される。すなわち、燃料タンク1の内部に蓄圧された水素は、水素レギュレータ7によって減圧され、水素供給系8を介して水素燃料エンジンに供給される。水素燃料エンジンによって発電機を稼働させ、発生した電力でモータ15を駆動し、プロペラ16を回転させて、航空機に推力を与える。モータ15の非駆動時には、二次電池17へ供給して蓄電している。
【0056】
第三の実施形態の航空機によれば、水素が蓄圧された水素タンク2と比較して、軽量で密度が低い空気抵抗層3を、水素供給源である燃料タンク1に設けたので、人が搭乗した場合においても、水素タンク2の空気抵抗を増大させ、落下する際の速度を管理することができる。そして、安全性に優れる。
【0057】
[実施形態のその他の変形]
なお、上記実施形態はそれぞれ、無人航空機としてのドローン6、有人航空機としてのマルチコプターを挙げたが、夫々、小型飛行機、小型回転翼航空機、飛行船その他の機器に変形することができる。これらの変形例のいずれの場合も水素タンク2の空気抵抗を増大させ、落下する際の速度を管理することができる。
【0058】
また、現在、わが国でのドローンの飛行制限高度は地上150mとされている。このような高度の制限がない航空機の場合、図3に示すように、地上高が高くなればなるほど、速度は終端速度に近づく。燃料タンク1の質量m=1kg一定で、かつ、燃料タンク1の短手方向の外径dを、例えば、30cm以上(d≧30cm)に構成すると、地上100m以上の高度のとき、燃料タンク1の落下の際の速度は、d<30cmの場合より低減され、管理される。それ以上の速さで地面や建造物に衝突する可能性を低減することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、空気抵抗手段として、水素が蓄圧された水素タンク2に比べて密度が低い空気抵抗層3(第一の実施形態)と、少なくともフェルト状、編地状、ハニカム構造製、多孔質構造製、若しくは発砲プラスティック製又はこれらの組合せの材料を用いる空気抵抗層3a,3b,3c(第二の実施形態)とを挙げた。空気抵抗手段は、水素を貯蔵する水素供給源の空気抵抗を増大させるものであればよく、例えば、形状、構造等はこれらに何ら限定されるものではない。
【0060】
例えば、図2においては、水素タンク2を円筒状の胴部20aの長手方向の両端に半球状の端部20b、20cが一体として接続された形態で表わされているが、水素タンク2の形状はこれに何ら限定されない。例えば、球状(図5(c)、図5(d)参照)であっても、楕円体形状(図5(e)、図5(f)参照)であってもよい。水素タンク2の形状にかかわらず、空気抵抗層3はその外側に装着されていればよい。また、図2においては、空気抵抗層3は所定の厚さを有するものとして表現されているが、空気抵抗層3の厚さは一定である必要はなく、厚い箇所と薄い箇所から構成されていてもよい。いずれの場合も、空気抵抗を生ずる効果は発揮される。なお、図2に示す水素タンク2には開口部23が端部20bに設けられている。
【0061】
また、水素供給源の一例として、水素タンクを例示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、水素供給源は、インテグラル・タンクであってもよい。また、複数の水素タンクで構成してもよいし、複数のインテグラル・タンク、若しくは、それらの組み合わせであってもよい。
【0062】
また、固体高分子形燃料電池に燃料ガスを供給するシステムとして、改質器を具備してメタンガスやプロパンガスなどの水素含有ガスを改質して得られる水素と二酸化炭素と水分とを主成分とする燃料ガスを固体高分子形燃料電池に供給するシステムとすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B、1C 燃料タンク(水素供給源)
2、2a、2b、2c 水素タンク
3、3a,3b,3c 空気抵抗層(空気抵抗手段)
6 ドローン(航空機)
7 水素レギュレータ
8 水素供給系
9 燃料電池スタック
10 水素循環ポンプ
11 空気吸気系
12 空気供給ポンプ
13 空気排気系
14 インバーター
15 モータ
16 プロペラ
17 二次電池
18 DC/DCコンバーター
20a 胴部
20b、20b 端部
21 内層
22 外層
23 開口部


図1
図2
図3
図4
図5