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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】支持金物固定構造及び支持金物固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20230502BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20230502BHJP
   H02S 20/24 20140101ALI20230502BHJP
【FI】
E04D13/00 L
E04D13/18 ETD
H02S20/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018192903
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060063
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-097450(JP,A)
【文献】特開2015-186402(JP,A)
【文献】特開2015-218554(JP,A)
【文献】特開2004-270305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00-13/18
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁上に固定され建物外部の床を構成する複数の矩形状のALCパネルに、積載物を支持する支持金物を固定する支持金物固定方法であって、
矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記積載物を支持する支柱と、を備えた前記支持金物の前記支柱が、長辺同士を隣接させて配設された前記ALCパネルの前記長辺の略中央部において前記長辺同士の境界上に位置するように、前記ALCパネルの短手方向を前記ベースプレートの長手方向として前記支持金物を前記ALCパネル上に配置する工程と、
締結具によって、前記ベースプレートの長手方向の両端部を前記ALCパネルに埋設されたアンカ部材に固定する工程と、
を有し、
前記ベースプレートの長手方向の両端部を2枚の前記ALCパネルの各々の短手方向中央部で前記アンカ部材にそれぞれ固定する支持金物固定方法。
【請求項2】
前記床は、第1方向を長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネルと、前記第1方向に直交する第2方向を長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネルとを含んで構成され、前記第1の複数のALCパネルに固定される前記支持金物と、前記第2の複数のALCパネルに固定される前記支持金物とを同一直線上に配置する、請求項1に記載の支持金物固定方法。
【請求項3】
梁上に固定され建物外部の床を構成する複数の矩形状のALCパネルに、積載物を支持する支持金物を固定する支持金物固定方法であって、
矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記積載物を支持する支柱と、を備えた前記支持金物の前記支柱が、長辺同士及び短辺同士を隣接させて配設された4枚の前記ALCパネルの角部が互いに対向する点の上に位置するように、前記ALCパネルの短手方向を前記ベースプレートの長手方向として前記支持金物を前記ALCパネル上に配置する工程と、
締結具によって、前記ベースプレートを前記4枚のALCパネルの各々に埋設されたアンカ部材に固定する工程と、
を有し、
前記ベースプレートの長手方向の両端四隅を4枚の前記ALCパネルに重なるように載置し前記両端四隅のそれぞれにて前記ベースプレートの長手方向に隣接する2枚の前記ALCパネルの各々の短手方向中央部で前記アンカ部材に固定する支持金物固定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の支持金物固定方法により固定される前記支持金物と、請求項3に記載の支持金物固定方法により固定される前記支持金物とが、同一の構成とされていることを特徴とする、支持金物固定方法。
【請求項5】
前記建物外部の床が、陸屋根又はバルコニ床であり、前記ALCパネルの上に、断熱材と、断熱材の上面を覆うように配置された防水シートと配置されている請求項1~4何れか1項に記載の支持金物固定方法。
【請求項6】
梁上に固定され長辺同士を隣接させて配設されて建物外部の床の一部を構成する2枚のALCパネルの各々に、前記長辺に平行にそれぞれ2つ埋設された、アンカ部材と、
矩形平板状とされ長手方向が前記2枚のALCパネルの前記長辺の略中央部で前記長辺に直交すると共に、前記アンカ部材に締結するための締結具が挿通される挿通孔を四隅に有するベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記床上の積載物を支持すると共に、前記2枚のALCパネルの前記長辺同士の境界上に配置される支柱と、を備える支持金物と、
を備え、
前記ベースプレートの長手方向の両端部を2枚の前記ALCパネルの各々の短手方向中央部で前記アンカ部材にそれぞれ固定する支持金物固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持金物固定構造及び支持金物固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)からなる陸屋根等の上に積載される太陽光パネルを支持する支持金物の固定構造が開示されている。この支持金物の固定構造では、固定部材の上端に螺合されたナットと下端のロールプレートとで支持金物の底板部とALCパネルとを上下から挟み込むことで支持金物がALCパネルに固定されている。支持金物をALCパネルに固定することにより、梁に固定する場合と比較して支持金物の固定位置の制約が緩和され、太陽光パネルを効率よく配置できると共に、工事が行い易いというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-265736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ALCパネルを陸屋根やバルコニ床に使用する場合、湿式工法では、梁の上フランジに固定したプレートの挿通孔にALCパネルの目地鉄筋を挿通させてモルタルを充填する等の方法によりALCパネルを梁に固定する。一方、乾式工法では、ALC固定金具で梁の上フランジとALCパネルとを上下から挟み込むことでALCパネルを梁に固定するため、目地鉄筋等を利用して固定する場合に比べるとALCパネルの梁への固定強度が低いことが考えられる。
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載された技術では、支持金物の固定位置の制約を緩和することを目的としており、太陽光パネルから入力される風荷重(吹上荷重)によるALC固定金具及びALCパネルの破損を軽減することを考慮した支持金物の固定方法とはなっていない。このため、上述の乾式工法によりALCパネルを梁に固定した場合、支持金物の固定位置によっては、太陽光パネルから入力される吹上荷重が特定のALCパネル固定金具に集中し、ALC固定金具が破損する恐れがある。また、支持金物の固定位置に制約がないために、支持金物の固定位置によっては、吹上荷重によりALCパネルが斜めに持ち上げられ、梁に当接している角部等に割れや欠けが発生することが考えられる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、吹上荷重を複数のALCパネルのALC固定金具に分散して支持させることにより、ALC固定金具及びALCパネルの破損を抑止することができる支持金物固定構造及び支持金物固定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る支持金物固定方法は、梁上に固定され建物外部の床を構成する複数の矩形状のALCパネルに、積載物を支持する支持金物を固定する支持金物固定方法であって、矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記積載物を支持する支柱と、を備えた前記支持金物の前記支柱が、長辺同士を隣接させて配設された前記ALCパネルの前記長辺の略中央部において前記長辺同士の境界上に位置するように、前記ALCパネルの短手方向を前記ベースプレートの長手方向として前記支持金物を前記ALCパネル上に配置する工程と、締結具によって、前記ベースプレートの長手方向の両端部を前記ALCパネルに埋設されたアンカ部材に固定する工程と、を有する。
【0008】
第1の態様に係る支持金物固定方法によれば、支持金物のベースプレート中央に立設された支柱が、長辺同士を隣接させて配設されたALCパネルの長辺の略中央部において長辺同士の境界上に位置するように、ALCパネルの短手方向をベースプレートの長手方向として支持金物がALCパネル上に配置される。また、ベースプレートの長手方向両端部は、ALCパネルに埋設されたアンカ部材に締結具によって固定される。このため、積載物(一例として、太陽光パネル及びその架台)から入力される吹上荷重が、長辺同士を隣接させて配設された2枚のALCパネルに均等に分散される。これにより、吹上荷重が特定のALCパネル固定金具に集中することによるALC固定金具の破損を抑止することができる。結果として、吹上荷重によりALCパネルが持ち上げられることを抑止し、梁に当接している角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0009】
第2の態様に係る支持金物固定方法は、第1の態様に係る支持金物固定方法において、前記ベースプレートの長手方向の両端部を2枚の前記ALCパネルの各々の短手方向中央部で前記アンカ部材にそれぞれ固定する。
【0010】
第2の態様に係る支持金物固定方法によれば、2枚のALCパネルの各々の短手方向中央部でベースプレートの長手方向両端部がアンカ部材に固定されるので、例えばALCパネルの短手方向端部で固定する場合に比べて、ALCパネルの重心の近くで支持金物を固定することができる。これにより、仮に吹上荷重によりALCパネルが持ち上げられる場合でも、ALCパネルが斜めに傾斜した状態で持ち上げられることを抑止し、梁に当接している角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0011】
第3の態様に係る支持金物固定方法は、第1の態様又は第2の態様に係る支持金物固定方法において、前記床は、第1方向を長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネルと、前記第1方向に直交する第2方向を長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネルとを含んで構成され、前記第1の複数のALCパネルに固定される前記支持金物と、前記第2の複数のALCパネルに固定される前記支持金物とを同一直線上に配置する。
【0012】
第3の態様に係る支持金物固定方法によれば、第1方向を長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネルと、第1方向に直交する第2方向を長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネルとにより建物外部の床が構成される。そして、第1の複数のALCパネルに固定される支持金物と、第2の複数のALCパネルに固定される支持金物とが同一直線上に配置される。このため、互いに直交する第1の複数のALCパネル及び第2の複数のALCパネルにそれぞれ固定される支持金物が、同一直線上に延在される積載物の一部(一例として太陽光パネルの架台)を共に支持することが可能となる。これにより、取付方向が異なるALCパネルの間に積載物を架け渡すことが可能となり、設置できる積載物(一例として、太陽光パネル)の寸法及び個数の自由度が増して、積載物を効率よく配置することができる。
【0013】
第4の態様に係る支持金物固定方法は、梁上に固定され建物外部の床を構成する複数の矩形状のALCパネルに、積載物を支持する支持金物を固定する支持金物固定方法であって、矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記積載物を支持する支柱と、を備えた前記支持金物の前記支柱が、長辺同士及び短辺同士を隣接させて配設された4枚の前記ALCパネルの角部が互いに対向する点の上に位置するように、前記ALCパネルの短手方向を前記ベースプレートの長手方向として前記支持金物を前記ALCパネル上に配置する工程と、締結具によって、前記ベースプレートを前記4枚のALCパネルの各々に埋設されたアンカ部材に固定する工程と、を有する。
【0014】
第4の態様に係る支持金物固定方法によれば、支持金物のベースプレート中央に立設された支柱が、長辺同士及び短辺同士を隣接させて配設された4枚のALCパネルの角部が互いに対向する点の上に位置するように、ALCパネルの短手方向をベースプレートの長手方向として支持金物がALCパネル上に配置される。また、ベースプレートは、4枚のALCパネルの各々に埋設されたアンカ部材に締結具によって固定される。このため、積載物から入力される吹上荷重が、長辺同士及び短辺同士を隣接させて配設された4枚のALCパネルに均等に分散される。これにより、吹上荷重が特定のALCパネル固定部位に集中することによるALC固定金具の破損を抑止することができる。結果として、吹上荷重によりALCパネルが持ち上げられることを抑止し、梁に当接している角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0015】
第5の態様に係る支持金物固定方法は、第1の態様に係る支持金物固定方法により固定される前記支持金物と、第4の態様に係る支持金物固定方法により固定される前記支持金物とが、同一の構成とされていることを特徴とする。
【0016】
第5の態様に係る支持金物固定方法によれば、第1の態様に係る支持金物固定方法により固定される支持金物と、第4の態様に係る支持金物固定方法により固定される支持金物とが、同一の構成とされている。このため、支持金物を2枚のALCパネルの上に配置する場合と、4枚のALCパネルの上に配置する場合とで、同一形状の支持金物を用いることが可能となり、別形状の支持金物を設計・製造する必要がない。また、建物外部の床が、取付方向の異なるALCパネルにより構成されている場合に、ALCパネルの取付方向に応じて異なる支持金物を使用するという、施工時の手間を省くことができる。
【0017】
第6の態様に係る支持金物固定構造は、梁上に固定され長辺同士を隣接させて配設されて建物外部の床の一部を構成する2枚のALCパネルの各々に、前記長辺に平行にそれぞれ2つ埋設された、アンカ部材と、矩形平板状とされ長手方向が前記2枚のALCパネルの前記長辺の略中央部で前記長辺に直交すると共に、前記アンカ部材に締結するための締結具が挿通される挿通孔を四隅に有するベースプレートと、前記ベースプレートの中央に立設され前記床上の積載物を支持すると共に、前記2枚のALCパネルの前記長辺同士の境界上に配置される支柱と、を備える支持金物と、を備える。
【0018】
第6の態様に係る支持金物固定構造によれば、長辺同士を隣接させて配設されて建物外部の床の一部を構成する2枚のALCパネルの各々に、長辺に平行にそれぞれ2つのアンカ部材が埋設されている。また、支持金物は、長手方向が2枚のALCパネルの長辺の略中央部で長辺に直交するように配置されるベースプレートと、ベースプレートの中央に立設されて2枚のALCパネルの長辺同士の境界上に配置される支柱と、を含んで構成される。そして、ベースプレートの四隅には、2枚のALCパネルの各々に埋設されたアンカ部材に締結するための締結具が挿通される挿通孔が設けられている。このため、積載物から入力される吹上荷重が長辺同士を隣接させて配設された2枚のALCパネルに均等に分散され、吹上荷重が特定のALCパネル固定部位に集中することを抑止することによりALC固定金具の破損を抑止することができる。結果として、吹上荷重によりALCパネルが持ち上げられることを抑止し、梁に当接している角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る支持金物固定構造及び支持金物固定方法は、吹上荷重を複数のALCパネルのALC固定金具に分散して支持させることにより、ALC固定金具及びALCパネルの破損を抑止することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物の屋根部を示す縦断面図である。
図2図1に示される屋根部におけるALCパネル及び支持金物の配置を示す平面図である。
図3】(A)は支持金物の立面図である。(B)は(A)の支持金物の平面図である。
図4】ALC固定金具によりALCパネルが梁に固定されている状態を示す、図2の4-4線断面図である。
図5】第1実施形態の変形例に係る支持金物固定構造が適用された建物の屋根部におけるALCパネル及び支持金物の配置を示す平面図である。
図6】第2実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物の屋根部におけるALCパネル及び支持金物の配置を示す平面図である。
図7図6の7-7線断面図である。
図8】(A)は支持金物の立面図である。(B)は(A)の支持金物の平面図である。
図9】比較例に係る支持金物固定構造が適用された建物の屋根部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下、図1図5及び図9を用いて、本発明に係る支持金物固定構造及び支持金物固定方法の第1実施形態について説明する。
【0022】
図1には、第1実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物10の「建物外部の床」としての屋根部12を示す縦断面図が示されている。この図に示されるように、屋根部12は、建物10の最上階の天井の一部を構成するH型鋼からなる梁14と、梁14の上フランジ14Aの上に載置されたALCパネル16、18と、ALCパネル16、18の上に配置された断熱材20と、断熱材20の上面を覆うように配置された防水シート22と、を含んで構成された陸屋根(平屋根)である。
【0023】
梁14の上に配置された隣接する2枚のALCパネル16、18の上には、支持金物24が配置されている。支持金物24は、図3(A)及び図3(B)に示されるように、矩形平板状のベースプレート26と、ベースプレート26の中央に立設された支柱28と、を含んで構成されている。ベースプレート26の上面と、支柱28の下端とは、溶接により接合されている。
【0024】
ベースプレート26は、基部26Aと、基部26Aの短手方向両端に設けられ、長手方向に延在された立上り部26Bとを備えている。また、基部26Aの4つの角部には、後述するボルト32を挿入するための4つの挿通孔26Cが穿孔されている。ここで、ベースプレート26の長手方向における挿通孔26Cの間隔L1は、ALCパネル16、18の短手方向の寸法(短辺の長さ)と一致するように設定されている。
【0025】
支柱28は、円筒状の本体部28Aと、本体部28Aの上端を閉塞する円盤状の上面材28Bとを備えた、中空構造の円柱状の部材である。
【0026】
図1に戻ると、ベースプレート26は、「アンカ部材」としてのプラグアンカ30と、「締結具」としてのボルト32とによって、長手方向両端部がALCパネル16、18に固定されている。
【0027】
プラグアンカ30は、外周面に図示しない雄ねじが形成されており、ALCパネル16、18に螺合されている。ここで、一般的なALCビスに比べて雄ねじのねじ山の高さ寸法が大きく、ALCパネル16、18との接触面の広いプラグアンカ30を使用することにより、支持金物24をALCパネル16、18に強固に固定することができる。
【0028】
また、プラグアンカ30の内側には、ボルト32を収容するボルト挿入孔が形成されており、ボルト32が螺入されるとプラグアンカ30が径方向外側に広がるように、プラグアンカ30の長手方向に沿って、図示しない貫通孔が複数設けられている。ボルト32は、ベースプレート26に設けられた挿通孔26C(図3(B)参照)に挿通され、プラグアンカ30の内側に螺合されている。
【0029】
支持金物24の上には、「積載物」としての太陽光パネル34及びその架台36が固定されている。架台36は、下面が支柱28の上面材28Bに図示しない取付金物を介して固定され、隣接する図示しない支柱との間に架け渡された下桟36Aと、下桟36Aの上に下桟36Aに直交して配設され、上面が太陽光パネル34の下面にそれぞれ固定された上桟36B、36Cと、を含んで構成されている。
【0030】
太陽光パネル34は、複数の太陽電池を集積して板状に構成した発電装置である。太陽光パネル34は、できる限り大きい発電量が得られる方角を向くように、一方向に傾斜して設置されている。太陽光パネル34の下面との間で傾斜角を構成する水平方向(図1において矢印Dで示される方向)に下桟36Aが延在されている。言い換えると、太陽光パネル34の上面が向けられた側を正面(間口)とすると、正面から見て奥行方向に下桟36Aが延在され、太陽光パネル34の奥行方向後方には、太陽光パネル34と同じ寸法の図示しない太陽光パネルが設置されている。以下、下桟36Aの延在方向を奥行方向、上桟36B、36Cの延在方向を間口方向と称し、図面においては奥行方向を矢印D、間口方向を矢印Wにより示す。なお、ここでいう奥行方向及び間口方向は、太陽光パネル34の傾斜方向に基づいて定義されたものであり、建物10の奥行方向及び間口方向とは一致しない場合もある。
【0031】
図2には、本実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物10の屋根部12におけるALCパネル16、18及び支持金物24の配置が示されている。この図では、断熱材20、防水シート22、太陽光パネル34、及び架台36は省略されている。この図に示されるように、複数のALCパネル16、18は、間口方向Wを長手方向として並列に配設され、長手方向両端が梁40にALC固定金具42によりそれぞれ固定されている。梁40は奥行方向Dに沿って延在され、複数のALCパネル16、18は、長辺16A、18A同士が対向した状態で奥行方向Dに沿って並列に配置されている。この配列が間口方向Wに繰り返され、短辺16B同士が隣接したALCパネル16同士、及び短辺18B同士が隣接したALCパネル18同士は、ALC固定金具42により同じ梁40に固定されている。ALC固定金具42の詳細については、後述する。
【0032】
支持金物24は、間口方向Wに延在された梁14の上に長辺16A、18Aが配置された2枚の隣接するALCパネル16、18の上に配置されている。ここで、ベースプレート26の長手方向が、2枚のALCパネル16、18の長辺16A、18Aの略中央部で長辺16A、18Aに直交するように、支持金物24が配置されている。言い換えると、ALCパネル16、18の短手方向がベースプレート26の長手方向とされて支持金物24が配置されている。また、支柱28が、2枚のALCパネル16、18の長辺16A、18A同士の境界上に位置するように、支持金物24が配置されている。
【0033】
奥行方向Dに沿って複数配置された支持金物24の上に下桟36Aが架け渡され、複数の下桟36Aの上に架け渡された上桟36B、36Cの上に太陽光パネル34が固定される(図1参照)。
【0034】
ここで、上述の通り、ベースプレート26の長手方向における挿通孔26Cの間隔L1は、ALCパネル16、18の短手方向の寸法(短辺の長さ)と一致するように設定されている。このため、支持金物24が2枚のALCパネル16、18の上に配置された状態で、4つの挿通孔26Cは、ALCパネル16、18の短手方向中央にそれぞれ2つずつ位置することとなる。支持金物24が配置された状態で挿通孔26Cがプラグアンカ30の同軸上に位置するように、プラグアンカ30は、ALCパネル16、18の各々の短手方向中央に、長辺16A、18Aに平行に2つずつ埋設されている。
【0035】
ALCパネル16の両端を梁40に固定する2つのALC固定金具42は、ALCパネル16の短手方向中央に配置されているので、この2つのALC固定金具42と、ALCパネル16に埋設された2つのプラグアンカ30とは、同一直線上(ALCパネル16の中心線上)に配置されている。ALCパネル18においても同様に、両端を梁40に固定する2つのALC固定金具42と、2つのプラグアンカ30とは、同一直線上(ALCパネル18の中心線上)に配置されている。
【0036】
図4は、図2に示される屋根部12の平面図において4-4線に沿って切断された状態の断面図であり、短辺16B同士を隣接させて配設された2枚のALCパネル16がALC固定金具42により梁40に固定された状態が示されている。ALC固定金具42は、本体部42Aと、本体部42Aの下端に回動可能に連結されたフック42Bと、を含んで構成されている。また、本体部42A上部の外周面に形成された雄ねじにナット42Cが螺合されている。
【0037】
本体部42Aの下部は、水平面で切断した断面が梁40の側に開口したコ字状に形成され、このコ字断面内にフック42Bを収容可能に構成されている。本体部42Aの下端には、フック42Bの回動を許容するように図示しない切欠きが設けられている。この切欠きの寸法は、フック42Bが本体部42Aのコ字断面内に収容された状態から本体部42Aの外に回動した場合に、ALC固定金具42が略L字状となる位置でフック42Bの回動が阻止されるように設定されている。
【0038】
ALC固定金具42を取り付ける際には、フック42Bを本体部42Aの内部に収容した状態でALCパネル16に形成された図示しない挿通孔にALCパネル16の上面から挿入される。収容状態にあるフック42Bの上端がALCパネル16の下面より下に到達すると、自重によりフック42Bが回動し、ALC固定金具42が略L字状となる位置でフック42Bの回動が阻止される。ここで、フック42Bの上面が梁40の上フランジ40Aの下面に接触した状態でナット42Cを回して下方に移動させることにより、ナット42Cとフック42Bの上面とでALCパネル16と梁40の上フランジ40Aとを上下から挟み込み、ALCパネル16が梁40に固定される。
【0039】
<作用及び効果>
次に、第1実施形態に係る支持金物固定方法について説明し、その説明を通して第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る支持金物固定方法により、既築の建物10のALCパネル16、18に対して支持金物24が後付けで固定される場合、前準備として、支持金物24を設置する領域の断熱材20及び防水シート22がカッター等で切り取られる。次いで、ALCパネル16、18に下穴が形成され、プラグアンカ30が螺入される。
【0041】
本実施形態に係る支持金物固定方法では、図2に示されるように、梁40の上フランジ40Aに固定され屋根部12を構成する複数の矩形状のALCパネル16、18に、屋根部12に積載される太陽光パネル34及びその架台36を支持する支持金物24が固定される。ここで、支持金物24のベースプレート26と、支柱28とは、溶接により予め接合されている。
【0042】
具体的には、まず、ベースプレート26の中央に立設された支柱28が、長辺16A、18A同士を隣接させて配設されたALCパネル16、18の長辺16A、18Aの略中央部において、長辺16A、18A同士の境界上に位置するように、かつベースプレート26の長手方向がALCパネル16、18の短手方向とされるように、支持金物24がALCパネル16、18上に配置される。
【0043】
次に、ベースプレート26の長手方向両端部(四隅)に設けられた挿通孔26Cにボルト32が挿通され、このボルト32がプラグアンカ30に螺合されることにより、ベースプレート26の長手方向両端部がALCパネル16、18に埋設されたプラグアンカ30に固定される。
【0044】
本実施形態に係る支持金物固定方法を既築の建物10に対して適用する場合、支持金物24を固定した後で、上述の前準備の段階で切り取られた断熱材20が戻され、戻された断熱材20の上に防水シート22が配設される。また、支柱28の本体部28Aの周りには、円筒状に形成された防水シート22が配設される。次いで、支柱28の上面材28Bに図示しない取付金物を介して下桟36Aが固定され、さらに、上桟36B、36Cと、太陽光パネル34とが取り付けられる。
【0045】
本実施形態に係る支持金物固定方法によれば、太陽光パネル34及び架台36から入力される吹上荷重が、長辺16A、18A同士を隣接させて配設された2枚のALCパネル16、18の4つのALC固定金具42に均等に分散される。これにより、吹上荷重が1つのALC固定金具42に集中することによるALC固定金具42の破損を抑止することができる。結果として、吹上荷重によりALC固定金具42が破損してALCパネル16、18が持ち上げられることを抑止し、梁14、40に当接しているALCパネル16、18の角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る支持金物固定方法によれば、図9に示される比較例のように、ALCパネル16、18に切欠きを設ける必要がない。この比較例の建物100の屋根部102に適用される支持金物104は、ベース部106と、支柱108と、を含んで構成されている。そして、ベース部106は、支柱108に固定された上フランジ106Aと、下フランジ106Bと、水平面で切断した断面形状が十字状とされたウエブ106Cと、により構成されている。比較例において建物100が既築の状態で太陽光パネル34を後付けする場合、支持金物104を設置する部分のALCパネル16、18に切欠き110が形成され、切欠き110にベース部106が設置される。次いで、梁14の上フランジ14Aにベース部106の下フランジ106Bが図示しないボルト等により固定される。ここで、ALCパネル16、18に切欠き110を形成するためには、ALCパネル16、18を梁14から取り外さなければならない。このため、ALCパネル16、18を梁14から取り外す手間や雨仕舞の手間が発生する。
【0047】
これに対して、本実施形態に係る支持金物固定方法によれば、ALCパネル16、18に切欠きを設ける必要がない。このため、建物10が既築の状態で太陽光パネル34を後付けする場合であっても、ALCパネル16、18を梁14から取り外す必要がない。
【0048】
本実施形態に係る支持金物固定方法では、支持金物24のベースプレート26の長手方向両端部(四隅)に設けられた挿通孔26Cに挿通されたボルト32が、ALCパネル16、18の各々の短手方向中央部に埋設されたプラグアンカ30にそれぞれ固定される。このため、例えばALCパネル16、18の短手方向端部で固定する場合に比べて、ALCパネル16、18の重心の近くで支持金物を固定することができる。これにより、仮に吹上荷重によりALCパネル16、18が持ち上げられる場合でも、ALCパネル16、18が斜めに傾斜した状態で持ち上げられることを抑止し、梁14、40に当接しているALCパネル16、18の角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0049】
なお、本実施形態の支持金物固定構造及び支持金物固定方法が適用される建物10の屋根部12は、図2に示されるように長手方向が同一方向(間口方向W)に向けられて配設された複数のALCパネル16、18により構成されるものとしたが、これに限定されない。例えば、図5に示す変形例のような構成としてもよい。
【0050】
(変形例)
図5に示されるように、変形例に係る支持金物固定構造及び支持金物固定方法が適用される建物44の屋根部46は、「第1方向」としての奥行方向Dを長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネル48、50と、「第2方向」としての間口方向Wを長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネル52、54とを含んで構成されている。
【0051】
第1の複数のALCパネル48、50は、間口方向Wに延在された梁56に固定され、第2の複数のALCパネル52、54は、奥行方向Dに延在された梁58に固定されている。
【0052】
第1の複数のALCパネル48、50に固定される支持金物24と、第2の複数のALCパネル52、54に固定される支持金物24とは、設置方向が異なっているが、形状・寸法は同一である。
【0053】
また、第1の複数のALCパネル48、50に固定される支持金物24と、第2の複数のALCパネル52、54に固定される支持金物24とは、直線Pで示される同一直線上に配置され、直線Pに沿って延在された下桟36A(図1参照)を支持している。
【0054】
本実施形態に係る支持金物固定方法では、屋根部46は、奥行方向Dを長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネル48、50と、間口方向Wを長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネル52、54とを含んで構成される。そして、第1の複数のALCパネル48、50に固定される支持金物24と、第2の複数のALCパネル52、54に固定される支持金物24とは、直線Pで示される同一直線上に配置される。このため、第1の複数のALCパネル48、50に固定される支持金物24と第2の複数のALCパネル52、54に固定される支持金物24とが、同一直線P上に延在される下桟36Aを共に支持することが可能となる。これにより、架台36の上に設置できる太陽光パネル34の寸法及び個数の自由度が増して、効率よく太陽光パネル34を配置することができる。
【0055】
なお、上記変形例においては、第1の複数のALCパネル48、50に固定される支持金物24と第2の複数のALCパネル52、54に固定される支持金物24とが、同一直線P上に配置される例を示したが、これに限られない。第1の複数のALCパネル48、50と第2の複数のALCパネル52、54との相対的な位置関係により、両者の間で支持金物24を同一直線P上に配置することができない納まりの場合には、第1の複数のALCパネル48、50が配設される領域と、第2の複数のALCパネル52、54が配設される領域とで、それぞれに設置可能な寸法及び個数の太陽光パネル34を選択すればよい。
【0056】
〔第2実施形態〕
以下、図6図8を用いて、本発明に係る支持金物固定構造及び支持金物固定方法の第2実施形態について説明する。なお、これらの図では、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6には、第2実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物60の屋根部62の平面図が示されている。この図では、断熱材20、防水シート22、太陽光パネル34、及び架台36は省略されている。この図に示されるように、屋根部62は、間口方向Wを長手方向として並列に配設された第1の複数のALCパネル64、66、68と、奥行方向Dを長手方向として並列に配設された第2の複数のALCパネル70、72と、を含んで構成されている。
【0058】
第1の複数のALCパネル64、66、68の長手方向両端は、奥行方向Dに沿って延在され、建物60の最上階の天井の一部を構成する梁74にALC固定金具42によって固定されている。
【0059】
第2の複数のALCパネル70、72の長手方向両端は、間口方向Wに沿って延在され、建物60の最上階の天井の一部を構成する梁76にALC固定金具42によって固定されている。
【0060】
本実施形態において、第1の複数のALCパネル64、66に固定されている支持金物78と、第2の複数のALCパネル70、72に固定されている支持金物78とは、同一形状及び同一寸法を有している。
【0061】
奥行方向Dに沿って複数配置された支持金物78の上に下桟36Aが架け渡され、複数の下桟36Aの上に架け渡された上桟36B、36Cの上に太陽光パネル34が固定される(図7参照)。なお、同一直線上に配置された、第1の複数のALCパネル64、66に固定されている支持金物78と第2の複数のALCパネル70、72に固定されている支持金物78とで下桟36Aを支持する構成としてもよい。その場合、下桟36Aは、図6における間口方向Wに沿って延在される。
【0062】
図8(A)及び図8(B)には、本実施形態の支持金物78が示されている。これらの図に示されるように、支持金物78は、矩形平板状のベースプレート80と、ベースプレート80の中央に立設された支柱82と、を含んで構成されている。ベースプレート80の上面と、支柱82の下端とは、溶接により接合されている。
【0063】
ベースプレート80は、基部80Aと、基部80Aの短手方向両端に設けられ、長手方向に延在された立上り部80Bとを備えている。また、基部80Aの4つの角部には、ボルト32を挿入するための4つの挿通孔80Cが穿孔されている。さらに、4つの挿通孔80Cのベースプレート80の長手方向内側には、4つの挿通孔80Dが穿孔されている点が、第1実施形態のベースプレート26と異なっている。
【0064】
ここで、ベースプレート80の長手方向における挿通孔80Cの間隔L1は、第1実施形態のベースプレート26と同様に、ALCパネル64、66、68、70、72の短手方向の寸法(短辺の長さ)と一致するように設定されている。この挿通孔80Cには、第1の複数のALCパネル64、66に支持金物78を固定するためのボルト32が挿通される。
【0065】
また、ベースプレート80の長手方向における挿通孔80Dの間隔L2は、挿通孔80Cの間隔L1よりも小さく設定されている。挿通孔80Dには、第2の複数のALCパネル70、72に支持金物78を固定するためのボルト32が挿通される。
【0066】
図6に戻ると、本実施形態に係る支持金物78は、第1の複数のALCパネル64、66、68のうち、梁76の上に長辺64A、66Aが配置された2枚の隣接するALCパネル64、66上に固定されている。ここで、第1の複数のALCパネル64、66に対する支持金物78の配置は、上述の第1実施形態に係る支持金物固定方法における支持金物24の配置と同様である。すなわち、ベースプレート80の長手方向が、ALCパネル64、66の長辺64A、66Aの略中央部で長辺64A、66Aに直交するように、支持金物78が配置される。また、ALCパネル64、66の長辺64A、66A同士の境界上に支柱82が位置するように、支持金物78が配置されている。そして、支持金物78は、間隔L1で穿孔された挿通孔80Cに挿入されたボルト32によって、2枚のALCパネル64、66に埋設されたプラグアンカ30にそれぞれ固定されている。
【0067】
一方、第2の複数のALCパネル70、72に固定された支持金物78は、第1実施形態に係る支持金物固定方法における支持金物24の配置とは異なっている。詳しく説明すると、長辺70A、72A同士及び短辺70B、72Bを隣接させて配設され、4つの角部が互いに対向する4枚のALCパネル70、72の上に支持金物24が固定されている。ここで、4枚のALCパネル70、72の4つの角部が互いに対向する点Qの上に支柱82が位置するように、支持金物78が配置されている。また、4枚のALCパネル70、72の短手方向がベースプレート80の長手方向とされている。すなわち、ベースプレート80は、4枚のALCパネル70、72の互いに隣接された短辺70B、72Bの境界の上に、この境界に沿うように配置されている。
【0068】
支持金物78は、挿通孔80Cよりも長手方向内側に穿孔された挿通孔80Dに挿入されたボルト32によって、4枚のALCパネル70、72に埋設されたプラグアンカ30にそれぞれ固定されている。ここで、ベースプレート80の長手方向における挿通孔80Dの間隔L2は、挿通孔80Cの間隔L1(長辺70A、72A同士が隣接されて配設されたALCパネル70、72のALC固定金具42の間隔)よりも小さく設定されているので、挿通孔80Dに挿通されるボルト32及びこれと螺合するプラグアンカ30は、ALC固定金具42に干渉することなく、かつALC固定金具42の近傍に位置する。
【0069】
図7には、第2実施形態に係る支持金物固定構造が適用された建物60の屋根部62を図6の7-7線で切断した縦断面図が示され、4枚の第2の複数のALCパネル70、72に固定された支持金物78の縦断面図が示されている。この図に示されるように、支持金物78は、ベースプレート80の基部80Aの短手方向が2枚のALCパネル70の短辺70B同士の境界をまたがるように配置されている。なお、図7では、ALCパネル70、72を梁76に固定するALC固定金具42の図示は省略されている。
【0070】
<作用及び効果>
次に、第2実施形態に係る支持金物固定方法について説明し、その説明を通して第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0071】
2枚の第1の複数のALCパネル64、66に支持金物78を固定する方法は、第1実施形態に係る支持金物固定方法と同様であるので、説明を省略する。以下、4枚の第2の複数のALCパネル70、72に支持金物78を固定する支持金物固定方法について説明する。
【0072】
本実施形態に係る支持金物固定方法では、図6及び図7に示されるように、梁76の上フランジ76Aに固定され屋根部62を構成する第2の複数のALCパネル70、72に、屋根部62に積載される太陽光パネル34及びその架台36を支持する支持金物78が固定される。ここで、支持金物78のベースプレート80と、支柱82とは、溶接により予め接合されている。
【0073】
具体的には、まず、ベースプレート80の中央に立設された支柱82が、長辺70A、72A同士及び短辺70B、72B同士を隣接させて配設された4枚のALCパネル70、72の角部が互いに対向する点Qの上に位置するように、かつベースプレート80の長手方向が第2の複数のALCパネル70、72の短手方向とされるように、短辺70B、72B同士の境界上に支持金物78が配置される。
【0074】
次に、ベースプレート80に設けられた挿通孔80Dにボルト32が挿通され、このボルト32がプラグアンカ30に螺合されることにより、ベースプレート80が4枚の第2の複数のALCパネル70、72の各々に埋設されたプラグアンカ30に固定される。
【0075】
次いで、支柱82の上面材82Bに図示しない取付金物を介して下桟36Aが固定され、さらに、上桟36B、36Cと、太陽光パネル34とが取り付けられる。
【0076】
本実施形態に係る支持金物固定方法によれば、太陽光パネル34から架台36を介して入力される吹上荷重が、長辺70A、72A同士及び短辺70B、72B同士を隣接させて配設され、4つの角部が互いに対向する4枚のALCパネル16、18の4つのALC固定金具42に均等に分散される。これにより、吹上荷重が1つのALC固定金具42に集中することによるALC固定金具42の破損を抑止することができる。結果として、吹上荷重によりALC固定金具42が破損して第2の複数のALCパネル70、72が持ち上げられることを抑止し、梁74、76に当接している第2の複数のALCパネル70、72の角部等における割れや欠けの発生を抑止することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る支持金物固定方法では、ベースプレート80の長手方向が第2の複数のALCパネル70、72の短手方向とされるように、短辺70B、72B同士の境界上に支持金物78が配置されるので、支持金物78をALC固定金具42の近傍で固定し、ALC固定金具42に吹上荷重を直接作用させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る支持金物固定方法では、第1の複数のALCパネル64、66に固定される支持金物78と、第2の複数のALCパネル70、72に固定される支持金物78とが同一の構成とされている。このため、支持金物78を2枚のALCパネル64、66に固定する場合と、4枚のALCパネル70、72に固定する場合とで、同一形状の支持金物78を用いることが可能となり、別形状の支持金物を設計・製造する必要がない。また、第1の複数のALCパネル64、66と第2の複数のALCパネル70、72とで異なる支持金物を選定し、取り付けるという手間を省くことができる。
【0079】
〔上記実施形態の補足説明〕
上記実施形態では、陸屋根に対して支持金物固定構造及び支持金物固定方法を適用したが、これに限定されない。例えば、バルコニ床などの他の建物外部の床に対して適用してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、既築の建物に対して支持金物固定方法を適用する場合について説明したが、これに限られない。新築の建物に対して本発明の支持金物固定方法を適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、下桟36Aの延在方向を奥行方向Dとして説明したが、下桟36Aの延在方向はこれに限られない。支持金物24、78が同一直線上に複数配置されていれば、その上に下桟36Aを架け渡すことが可能であるので、図2図5及び図6に示される納まりにおいて、間口方向Wとして示された方向に下桟36Aを配置することが可能である。例えば、図5において直線P上に下桟36Aを配設するものとして説明したが、建物44の方角に応じて太陽光パネル34のエネルギー効率を最大化するために、直線Pに直交する方向において同一直線上に位置する支持金物24の間に下桟36Aを架け渡してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10、44、60 建物
12、46、62 屋根部(建物外部の床)
16、18、64、66、70、72 ALCパネル
16A、18A、64A、66A、70A、72A 長辺
24、78 支持金物
26、80 ベースプレート
26C、80C 挿通孔
28、82 支柱
30 プラグアンカ(アンカ部材)
32 ボルト(締結具)
34 太陽光パネル(積載物)
36 架台(積載物)
36A 下桟(積載物)
36B、36C 上桟(積載物)
40、56、58、74、76 梁
48、50 第1の複数のALCパネル
52、54 第2の複数のALCパネル
70B、72B 短辺
D 奥行方向(第1方向)
W 間口方向(第2方向)
P 直線
Q 点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9