(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/02 20060101AFI20230502BHJP
E02D 3/046 20060101ALI20230502BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
E02D3/02 103
E02D3/046
E02D3/10 104
(21)【出願番号】P 2019072918
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】511232341
【氏名又は名称】サン・アンド・シイ・コンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000233262
【氏名又は名称】日立建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岡林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】田上 實
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081480(JP,A)
【文献】特開平06-065914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/02
E02D 3/046
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良すべき地盤に、非排土式のドレーン施工機材によって複数のバーチカルドレーンを形成し、このバーチカルドレーンから地盤中の間隙水を
地表面に排出する
、バーチカルドレーン工法を用いた地盤改良方法であって、
隣接する前記バーチカルドレーン同士の中間付近の地盤に、前記ドレーン施工機材によって長尺な空のケーシングパイプを鉛直方向に打設して周囲の地盤を加圧
し、地盤中の間隙水圧を上昇させた後、引き抜く工程を含
み、
前記ドレーン施工機材はバイブロハンマーを備え、前記空のケーシングパイプを打設する際に、前記バイブロハンマーを振動源とする振動によって前記バーチカルドレーンの周辺に地盤中の水分を集めることを特徴とする地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非排土式ドレーン施工機材を利用して事前荷重を載荷する地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に粘性土からなる地盤の上部に建物などを構築する場合、支持力を増加させ、建物を構築した後の地盤沈下を防止する等のために、バーチカルドレーン工法とプレロード工法とを併用することが一般的である。
【0003】
ここで、バーチカルドレーン工法とは、砂やボード状の厚紙など透水性を有する材料を地盤中に鉛直に延在させ、これら透水性材料からなる排水路(ドレーン)を通じて地盤内の間隙水を地盤外に排出することで地盤を改良する工法である。かつては、ドレーンからの排土を行う排土式の施工方法が一般的であったが、その排土の不便さを解消するため、非排土式の施工方法と変わってきた。
【0004】
また、プレロード工法とは、入手及び運搬が容易である土砂等による荷重を地表面に載荷することで地盤を早期に圧密化して硬化する工法である。そして、プレロード(事前載圧荷重)の方法としては、(1)盛土工法、(2)大気圧工法、(3)地下水位低下工法、(4)(1)~(3)の併用工法が知られている。
【0005】
このようなバーチカルドレーン工法とプレロード工法とを併用した工法によれば、地盤内水分をドレーンにより排出しつつ地盤を硬化させることができる。
【0006】
一方、例えば、流体が注入されることにより膨らむ袋体を地盤内に配設し、地盤内に配設された袋体に流体を注入して袋体を膨らませ、膨らんだ袋体の圧力によって袋体周囲の地盤を加圧する地盤の改良方法も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のバーチカルドレーン工法とプレロード工法(例えば盛土工法)とを併用する工法の場合、プレロードのための盛土を造成するための施工コストを抑制することが容易でなく、施工期間も長期化しやすいという問題点があった。また、地表面に載置する単位面積当たりの荷重を増やすには土砂等を鉛直上方に積み重ねる必要があるため、荷重の大きさに実用上限界があり、改良すべき地盤を硬化させるのに必要な荷重を加えることができず、地盤を十分に硬化できない場合があった。さらに、地表面に積み重ねられた土砂等から荷重を受けた地盤が沈下し、改良されるべき地盤に隣接する地盤がつられて沈下することが懸念されている。
【0009】
一方、例えば、特許文献1の方法の場合、特殊な袋体を地盤内に配設し、この袋体にセメントミルクなどの固化剤を注入するための別途の設備を導入する必要があるため、依然として施工コストが高く、施工期間も十分に短縮できないという問題がある。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、バーチカルドレーン工法による地盤改良方法において、施工コストを抑制することができ、施工期間も短縮することができる地盤改良方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、改良すべき地盤に、非排土式のドレーン施工機材によって複数のバーチカルドレーンを形成し、このバーチカルドレーンから地盤中の間隙水を排出する地盤改良方法であって、
隣接する前記バーチカルドレーン同士の中間付近の地盤に、前記ドレーン施工機材によって長尺な空のケーシングパイプを鉛直方向に打設して周囲の地盤を加圧する工程を含むことを特徴としている。
【0012】
この地盤改良方法では、前記ドレーン施工機材はバイブロハンマーを備え、前記ケーシングパイプを打設する際のバイブロハンマーによる振動によって、前記バーチカルドレーンの周辺に地盤中の水分を集めることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の施工方法によれば、改良すべき地盤を確実に圧密化であるとともに、施工コストを抑制することができ、施工期間も短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の地盤改良方法の一実施形態の概要を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、改良すべき地盤に、非排土式のドレーン施工機材によって複数のバーチカルドレーンを形成し、このバーチカルドレーンから地盤中の間隙水を排出する地盤改良方法であって、隣接するバーチカルドレーン同士の中間付近の地盤に、ドレーン施工機材によって長尺な空のケーシングパイプを鉛直方向に打設して周囲の地盤を加圧する工程を含む。
【0016】
従来の工法では事前荷重はいずれも静的な荷重であったが、本発明の特徴の一つは、動的な事前荷重を併用する点にある。
【0017】
以下、本発明の地盤改良方法の一実施形態について図面とともに説明する。
図1は、本発明の地盤改良方法の一実施形態の概要を例示した断面図である。
図2は、
図1に示した実施形態の平面図である。
【0018】
図1および
図2に例示したように、この実施形態の地盤改良方法では、非排土式のドレーン施工機材(図示していない)によって、複数のバーチカルドレーン2を形成する。バーチカルドレーン2は、その内部の透水性材料が地盤1中の間隙水を透水することにより、地盤1中の水分を地盤外(地表面)に排出するものである。
【0019】
従来と同様に、バーチカルドレーン2は、非排土式のドレーン施工機材(バーチカルドレーン打設機)を用いたバーチカルドレーン工法により形成することができる。具体的には、例えば、ドレーン施工機材によって、地表面から改良すべき軟弱な地盤1の下端近傍まで鉛直下方に長尺なケーシングパイプを打設し、このケーシングパイプ内部に砂やボード状の厚紙などの透水性材料を充填した後、ケーシングパイプを引き抜くことで、バーチカルドレーン2を形成することができる。また、この実施形態では、複数のバーチカルドレーン2が所定の間隔で形成されている。
【0020】
さらに、この実施形態の地盤改良方法では、隣接するバーチカルドレーン2同士の中間付近の地盤1に、ドレーン施工機材によって空のケーシングパイプ3を鉛直方向に打設する。
【0021】
ケーシングパイプ3は、上述したバーチカルドレーン2を形成する際に使用される中空かつ長尺な略円筒状の部材であり、例えば、先端側に開閉時自在な蓋などを備えていてよい。 この実施形態では、ケーシングパイプ3の鉛直方向の長さは、バーチカルドレーン2とほぼ等しく形成されており、ケーシングパイプ3の直径も、バーチカルドレーン2の直径とほぼ等しく形成されている。
【0022】
ケーシングパイプ3を打設するためのドレーン施工機材は、バーチカルドレーン2を形成する際に使用したものと同じ非排土式の施工機材を使用することができる。また、このドレーン施工機材は、バイブロハンマーを備えていることが好ましい。この場合、地盤1にケーシングパイプ3を打設する際に、バイブロハンマーによる振動によってバーチカルドレーン2の周辺に地盤1中の水分を集めることができるため、バーチカルドレーン2からの水分の排出を促進することができ、地盤1の圧密速度を短縮することができる。
【0023】
そして、
図2に例示したように、これらバーチカルドレーン2およびケーシングパイプ3は、平面視において互い違いのマトリックス状(格子状)に配列されて設けられている。
【0024】
この実施形態の地盤改良方法では、ドレーン施工機材を使用して地盤1に空のケーシングパイプ3を打設することで、その周囲の地盤1を加圧して事前荷重とすることができる。すなわち、ケーシングパイプ3の打設によって、十分な圧力を地盤1にほぼ一様に加えることができ、地盤1中の間隙水圧を上昇させることができるため、バーチカルドレーン2からの水分の排出が促進され、地盤1の圧密速度を速めることができる。
【0025】
また、この実施形態の地盤改良方法では、バーチカルドレーン工法に使用されるケーシングパイプ3を地盤1に打設することで事前載荷重としているとともに、このケーシングパイプ3を打設するためのドレーン施工機材は、バーチカルドレーン2を形成する際に使用したものと同じ施工機材を使用することができる。したがって、プレロード(事前載荷重)のための盛土や別途の設備、特殊な材料などが不要であるため、施工コストを大幅に抑制することができ、施工期間も短縮することができる。
【0026】
なお、
図1、
図2では、ケーシングパイプ3が地盤1中に打設された状態を例示しているが、空のケーシングパイプ3の打設によって地盤1中の間隙水圧を上昇させた後、直ちに引き抜くことができる。
【0027】
本発明の地盤改良方法は、以上の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては、複数のバーチカルドレーンとケーシングパイプとが、平面視において互い違いのマトリックス状に配置されているが、このような配置に限定されるものではない。すなわち、地盤へのケーシングパイプの打設によって周囲の地盤が加圧され、バーチカルドレーンからの水分の排出が促進されるような配置に適宜設計することができる。また、上述した実施形態においては、バーチカルドレーンとケーシングパイプの鉛直方向の長さをほぼ等しい長さとされているが、このような長さに限定されるものではなく、適宜設計することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 地盤
2 バーチカルドレーン
3 ケーシングパイプ