(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】コンクリートの養生構造、及び、コンクリートの養生方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20230502BHJP
F16L 59/065 20060101ALI20230502BHJP
C04B 40/04 20060101ALI20230502BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
E04G21/02 104
F16L59/065
C04B40/04
C04B40/02
(21)【出願番号】P 2019032676
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】福井 直之
(72)【発明者】
【氏名】室野井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-041147(JP,Y1)
【文献】特開2009-133336(JP,A)
【文献】特開2004-331489(JP,A)
【文献】特開2006-220214(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150139(JP,U)
【文献】実開昭48-59769(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
C04B 40/00-40/06
F16L 59/065
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設したコンクリートに沿って設けられる養生構造であって、
前記コンクリートに沿って配置された内側保護層と、
前記内側保護層の外側に配置された真空断熱材からなる真空断熱材層と、
前記真空断熱材層の外側に配置された外側保護層と、を備え
、
前記内側保護層及び前記外側保護層は気泡発泡断熱材からなることを特徴とする、コンクリートの養生構造。
【請求項2】
前記内側保護層及び前記外側保護層は独立気泡発泡断熱材からなる、請求項
1に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項3】
前記外側保護層と内側保護層の発泡断熱材の見かけ密度が25~60kg/m3からなる、請求項
1又は2に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項4】
前記外側保護層は少なくとも厚み10mm以上を有している、請求項1~
3の何れか1項に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項5】
前記内側保護層は少なくとも厚み10mm以上を有している、請求項1~
4の何れか1項に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項6】
前記内側保護層及び前記外側保護層は、巻き上げ可能な材料により構成されている、請求項1~
5の何れか1項に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項7】
前記真空断熱材は吸着剤が芯材とともにガスバリア性フィルムに封入されており、
前記吸着剤は、無機系の材料である、請求項1~
6の何れか1項に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項8】
前記吸着剤は、アルミノケイ酸塩である、請求項
7に記載のコンクリートの養生構造。
【請求項9】
打設したコンクリートを養生する方法であって、
前記コンクリートに沿って
気泡発泡断熱材からなる内側保護層を構築する内側保護層構築ステップと、
前記内側
保護層の外側に真空断熱材を配置して真空断熱材層を構築する真空断熱材層構築ステップと、
前記真空断熱材層の外側に独立気泡発泡断熱材を配置して外側保護層を構築する外側保護層構築ステップと、を備えることを特徴とする、コンクリートの養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの養生構造、及び、コンクリートの養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムやビルなどの構造物を建設する際に用いられるコンクリートは、打設後にセメントの反応熱で水和反応が進行し、硬化が促進される。このため、打設後にコンクリートが外気により冷却されてコンクリートの熱が奪われると、水和反応が維持できず、十分にコンクリートの強度が発現せず、また、ひび割れの原因となる。このため、冬季にコンクリートを打設する場合には、コンクリートの熱が奪われないように断熱養生を行い必要がある。
【0003】
コンクリートを断熱養生するための構造としては、コンクリートの打設面を断熱マットやシートにより覆う構造が広く知られている。このようなコンクリートの断熱養生に用いられる養生用のマットとして、特許文献1には、シート状発泡体を防水布により包み込んだ養生マットが開示されている。また、特許文献2には、多孔質樹脂パネルを袋体2に収納した養生マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3150139号公報
【文献】実開平5-40506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、冬季に大量に積雪するような場所でダムを構築する際にコンクリートを養生する場合には、特許文献1,2に記載された断熱マットを用いようとしても、十分な断熱性能を確保するためには、断熱マットを厚くしなければならない。例えば、EPS製の断熱マットを用いる場合には、厚さが200~300mm程度必要になる。しかしながら、冬季に大容量の断熱マットを搬送すると輸送コストが増大し、また、養生後に断熱マットを廃棄する際の廃棄コストも増大する。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、低容量であっても高い断熱効果のある養生構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンクリートの養生構造は、打設したコンクリートに沿って設けられる養生構造であって、コンクリートに沿って配置された内側保護層と、内側保護層の外側に配置された真空断熱材からなる真空断熱材層と、真空断熱材層の外側に配置された外側保護層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、真空断熱材層を真空断熱材により構成しており、真空断熱材はEPS(発泡スチロール)などの断熱材に比べて断熱性能が高く、真空断熱材層を薄くすることができる。このため、低容量であっても高い断熱効果のある養生構造を提供することができる。また、真空断熱材は、踏み抜きやコンクリート表面の凹凸、石粒やゴミなどによりガスバリアフィルムにリークが生じてしまうと、断熱性能が急激に低下してしまう。これに対して、本実施形態によれば、真空断熱材層の内側及び外側に内側保護層及び外側保護層を設けているため、真空断熱材の踏み抜きや、打設面の凹凸によるガスバリアフィルムの破損を防止し、断熱性能を確実に保持することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、内側保護層及び外側保護層は気泡発泡断熱材からなる。
上記構成の本発明によれば、内側保護層及び外側保護層に対しても断熱性を持たせることができ、養生構造の断熱性を向上することができるとともに、内側保護層及び外側保護層を軽量化することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、内側保護層及び外側保護層は独立気泡発泡断熱材からなる。
雨水等の水が真空断熱材層の近傍まで到達してしまい、この水が凍結してしまうと真空断熱材層のガスバリアフィルムを破損するおそれがある。これに対して、上記構成の本発明によれば、雨水等が外側保護層を通り、真空断熱材層の近傍に到達するのを防止できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、外側保護層は少なくとも厚み10mm以上であり、保護層の見かけ密度が好ましくは25~60kg/m3の範囲を有している。
一般的な冬季用のスパイク付きの作業用長靴のスパイクの長さは4mm程度である。これに対して、上記構成の本発明によれば、外側保護層は少なくとも厚み10mm以上を有しているため、スパイクによる真空断熱材の踏み抜きを防止できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、内側保護層は少なくとも厚み10mm以上であり、保護層の見かけ密度が好ましくは25~60kg/m3の範囲を有している。を有している。
ダム等のコンクリートには荒い骨材が用いられているため、コンクリートの打設面には数ミリ程度、石が突出する。これに対して、上記構成の本発明によれば、内側保護層は少なくとも厚み10mm以上を有しているため、コンクリートの骨材による真空断熱材の破損を防止できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、内側保護層及び外側保護層は、巻き上げ可能な材料により構成されている。
上記構成の本発明によれば、養生を行う現場に効率よく内側保護層及び外側保護層の材料を搬入することができ、作業性が向上する。
【0014】
本発明において、好ましくは、真空断熱材は吸着剤が芯材とともにガスバリア性フィルムに封入されており、吸着剤は、無機系の材料である。
使用後に真空断熱材を廃棄する際に、吸着剤の種類によっては、真空断熱材内の吸着剤に水がかかると、未反応の材料が発熱や発火するおそれがある。これに対して、上記構成の本発明によれば、発熱反応がない無機系の材料を用いているため、発熱や発火を防止できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、吸着剤は、アルミノケイ酸塩である。
上記構成の本発明によれば、アルミノケイ酸塩を吸着剤として用いているため、発熱や発火を確実に防止できる。
【0016】
本発明のコンクリートの養生方法は、打設したコンクリートを養生する方法であって、コンクリートに沿って内側保護層を構築する内側保護層構築ステップと、内側断熱材層の外側に真空断熱材を配置して真空断熱材層を構築する真空断熱材層構築ステップと、真空断熱材層の外側に独立気泡発泡断熱材を配置して外側保護層を構築する外側保護層構築ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低容量であっても高い断熱効果のある養生構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態によるコンクリートの養生構造を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のコンクリートの養生構造及びコンクリートの養生方法の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるコンクリートの養生構造を示す鉛直断面図である。本実施形態のコンクリートの養生構造は、例えば、寒冷地にダムなどを構築する際に、打設したコンクリート20を養生するために用いられるものである。なお、本実施形態の養生構造は、ビルや橋梁等のコンクリートの養生にも適用することができる。
【0020】
図1に示すように、養生構造1は、コンクリート20の打設面(上面)を覆うように、コンクリート20に沿って設けられた内側保護層2と、内側保護層2の上面を覆うように内側保護層2の外側に配置された真空断熱材層4と、真空断熱材層4の上面を覆うように真空断熱材層4の外側に設けられた外側保護層6とを備える。なお、本明細書では、コンクリートから離間する方向を外側、コンクリートに近接する方向を内側という。
【0021】
真空断熱材層4は、真空断熱材4Aにより構成される。真空断熱材4Aとしては、例えば、グラスウール芯材4Cをガスバリア性フィルム4Bで包み、真空状態で密封した断熱材(株式会社旭ファイバーグラス社製のビップエース(登録商標)などを用いることができる。真空断熱材層4の厚さは、コンクリート20が例えば5度以下にならならないような断熱性を確保できるような厚さとすればよく、具体的には10mm~60mmとすることが好ましい。また、真空断熱材層4は一層である必要はなく、必要に応じて複数層積層してもよい。なお、本実施形態では、真空断熱材層4の厚さは20mm程度としている。
【0022】
真空断熱材4Aの芯材4Cとしては、真空断熱材の技術分野で用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、連続気泡硬質ポリウレタンフォーム、無機繊維、有機繊維、無機粉体、エアロゲル等を使用することができる。ハンドリング、断熱性の観点から、シート状に形成された無機繊維が好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナやシリカ等のセラミック繊維、スラグウール繊維、ロックウール繊維等が挙げられる。これらの中では、断熱性、成形加工性等の観点から、ガラス繊維が好ましい。なお、芯材の耐熱性を向上させるため、ステンレス鋼、クロム-ニッケル系合金、高ニッケル合金、高コバルト合金等の耐熱性金属繊維を少量混合することもできる。芯材は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る真空断熱材において、吸着剤が芯材4Cと共に袋状のガスバリア性フィルム4Bに封入されてもよい。吸着剤は、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素等のガス、及び/又は水分を吸着する物質である。吸着剤としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、活性炭、酸化バリウム、バリウム-リチウム合金又はこれらの混合物等が挙げられる。使用後の廃棄手法を考えた場合、一部の吸着剤は解体時に水がかかると、未反応の材料が発熱や発火する可能性がある。このため、このような発熱反応が無い無機系の材料、特に、無機鉱物系の材料が好ましい。特に好ましい材料はアルミノケイ酸塩である。吸着剤は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0024】
本発明に用いられるガスバリア性フィルム4Bは、ガスバリア性を有するフィルムであれば特に制限はないが、シール層及びガスバリア層を積層したものが好ましく、芯材に接する側から順にシール層、ガスバリア層及び1層以上の樹脂フィルム層を積層したものがより好ましい。ガスバリア性フィルム4Bの厚さは、特に制限はないが、通常50~200μmであり、好ましくは60~180μmである。
【0025】
ガスバリア層は、ガスを透過しない層であり、真空断熱材の真空度の低下を防ぐ観点から用いられる。ガスバリア層としては、金属箔や、樹脂フィルム上に蒸着膜を形成した蒸着フィルム等が挙げられる。蒸着フィルムは、蒸着法、スパッタ法等により、基材上に蒸着膜を形成することにより得られる。ガスバリア性及び経済的観点から、金属箔及び蒸着材料のいずれにおいても、好ましくは、アルミニウムが用いられる。
【0026】
蒸着フィルムの基材となる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルを部分ケン化した物等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。
【0027】
ガスバリア層の厚さは特に制限はないが、金属箔の場合は、1~60μmであり、好ましくは5~30μmである。厚さが1μm以上であれば、金属箔の強度が高く、ピンホールの形成等が抑えられる。蒸着フィルムの場合は、ガスバリア層の厚さは、10~60μm、好ましくは12~30μmであり、そのうち蒸着膜の厚さは、0.2~3.0μm、好ましくは0.5~2.0μmである。蒸着膜の厚さが0.2μm以上であればガスバリア性を発揮でき、3.0μm以下であれば蒸着膜形成の技術的な困難さは大きくはない。ガスバリア層に用いられる金属箔や蒸着フィルムは公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0028】
シール層は、加熱により融着可能な樹脂である。熱融着可能な樹脂であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル、PET、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又はそれらの混合体からなるフィルム等を用いることができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体が用いられる。ポリエチレンは、0.90~0.98g/cm3の密度のものが好ましい。ポリプロピレンは、0.85~0.95g/cm3の密度のものが好ましい。シール層の厚さは特に制限はないが、通常10~100μmであり、好ましくは25~60μmである。シール層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0029】
樹脂フィルム層は、ガスバリア層を保護する目的で、ガスバリア層上に任意に設けられる層である。樹脂フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。好ましくは、PET、ナイロン6又はナイロン66である。これらの樹脂フィルムには、有機質、無機質のフィラーを添加することもできる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。樹脂フィルム層には、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を更に向上させるために、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルコール等のビニルモノマーを重合、共重合させて得られるガスバリア性樹脂を塗布したり、積層したり、それらの粒子を樹脂フィルム層中に混合分散させることもできる。樹脂フィルム層の厚さは特に制限はないが、通常5~40μmであり、好ましくは10~30μmである。樹脂フィルム層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0030】
ガスバリア性フィルム4Bは、袋状に形成される。袋状とは、中に芯材及び吸着剤を入れられる形状である。ガスバリア性フィルムを袋状に形成する工程には、特に制限はない。例えば、ガスバリア性フィルムがシール層有する場合に、互いのシール層が接するように2枚のガスバリア性フィルムを重ねて、芯材及び吸着剤を納める部位の周りを、芯材及び吸着剤の挿入のための開口部を残して熱融着することにより、ガスバリア性フィルムを袋状に形成してもよい。
【0031】
本実施形態に係る真空断熱材4Aは、板状である。板状とは、薄く平たい形状を言い、対向する2つの面及びこれら2つの面を接続する側周面を有する。好ましくは、外層が、板状の真空断熱材4Aの少なくとも片面の一部を覆っており、使用する際に熱源側に配置される面の縁を枠状に覆っている。好ましくは、外層は真空断熱材4Aの側周面も覆っており、より好ましくは真空断熱材4Aの全面(すなわち、両面及び側周面)を覆っている。また、複数の真空断熱材4Aを組み合わせて用いる場合には、真空断熱材4A同士の継ぎ目部分における熱の漏洩を防ぐために、側周面を外層で覆うことが有利である。
【0032】
本実施形態に用いられる外層は、紙及び/又は不織布である。紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着させて製造した物である。有機繊維及び無機繊維のいずれも紙の材料として使用し得る。紙の材料となる有機繊維としては、例えば、植物由来の繊維、合成繊維等があり、紙の材料となる無機繊維は、例えば、鉱物、金属からなる繊維、合成繊維等がある。不織布とは、繊維シート、ウェブまたはバットで、線が一方向またはランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。有機繊維及び無機繊維のいずれも不織布の材料として使用し得る。
【0033】
不織布の材料となる有機繊維は天然繊維及び化学繊維を含み、天然繊維としては綿、羊毛、フェルト、麻、パルプ、絹等があり、化学繊維としてはレーヨン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維、アセテート等がある。不織布の原料となる無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等がある。好ましい材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンである。紙及び不織布は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0034】
外層の厚さは、0.01mm~3mmであり、好ましくは0.03~0.5mmである。外層の目付は特に制限はないが、好ましくは10~200g/m2であり、より好ましくは20~100g/m2である。
【0035】
外層は、例えば、ラミネートによって、ガスバリア性フィルムの、芯材と接しない側(真空断熱材4Aの外側)に接着される。ラミネートの方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネート、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。
【0036】
外側保護層6は、ポリオレフィン、ポリプロピレン、エチレンビニル共重合樹脂(EVA)製のシート状の独立気泡発泡断熱材6Aから構成される。独立気泡発泡断熱材6Aは、厚さが10mm以上であり、圧縮硬さは20Kpa以上であり、発泡倍率は40倍以下であるのが好ましい。
【0037】
また、外側保護層6を構成する断熱材6Aはロールアップ可能である(巻き上げることができる)ことが望ましい。ロールアップ可能な材料の厚みと発泡倍率との関係は、以下の表1に示す通りである。また、外側保護層6の見かけ密度が好ましくは25~60kg/m
3の範囲を有している。
【表1】
なお、表1は発泡ポリプロピレンを用いた場合について示すが、これ以外の材料についても同様な値となる。
【0038】
本実施形態では、内側保護層2を構成する断熱材2Aは外側保護層6を構成する断熱材6Aと同様の材料により構成されている。ただし、内側保護層2を構成する断熱材2Aについては、外側保護層6のように、踏み抜きに対する性能は必要とされない。このため、通常の断熱材により構成してもよい。
【0039】
上記の養生構造は以下のようにして構築することができる。
まず、コンクリートの打設現場に、内側保護層2及び外側保護層6を構成する独立気泡発泡断熱材、及び、真空断熱材層4を構成する真空断熱材を搬入する。なお、独立気泡発泡断熱材は、ロール状の巻き上げた状態で搬入するのが望ましい。
【0040】
次に、打設したコンクリートの上面を覆うように独立気泡発泡断熱材2Aを配置し、内側保護層2を構成する(内側保護層構築ステップ)。この発泡断熱材は積層しても良い。
【0041】
次に、内側保護層2の上面を覆うように、真空断熱材4Aを配置し、真空断熱材層4を構成する(真空断熱材層構築ステップ)。
【0042】
次に、真空断熱材層4の上面を覆うように独立気泡発泡断熱材6Aを配置し、外側保護層6を構築する(外側保護層構築ステップ)。
以上の工程により、養生構造1を構築することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の養生構造によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、真空断熱材層4を真空断熱材4Aにより構成しており、真空断熱材はEPS(発泡スチロール)などの断熱材に比べて断熱性能が高く、真空断熱材層4を薄くすることができる。このため、低容量であっても高い断熱効果のある養生構造を提供することができる。また、真空断熱材4Aは、踏み抜きやコンクリート表面の凹凸などによりガスバリアフィルムにリークが生じてしまうと、断熱性能が急激に低下してしまう。これに対して、本実施形態によれば、真空断熱材層4の内側及び外側に内側保護層2及び外側保護層6を設けているため、真空断熱材4Aの踏み抜きや、打設面の凹凸によるガスバリアフィルムの破損を防止し、断熱性能を確実に保持することができる。
【0044】
また、本実施形態では、内側保護層2及び外側保護層6は気泡発泡断熱材からなる。これにより、内側保護層2及び外側保護層6に対しても断熱性を持たせることができ、養生構造1の断熱性を向上することができるとともに、内側保護層2及び外側保護層6を軽量化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、内側保護層2及び外側保護層6は独立気泡発泡断熱材6Aからなる。雨水等の水が真空断熱材層4の近傍まで到達し、真空断熱材層4と外側保護層6の間で水が凍結して氷が発生してしまうと、養生構造1の上方を歩くなどした際に、氷が真空断熱材層4のガスバリアフィルムに刺さり、真空断熱材4Aが破損するおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、雨水等が外側保護層6を通り、真空断熱材層4の近傍に到達するのを防止できる。
【0046】
一般的な冬季用のスパイク付きの作業用長靴のスパイクの長さは4mm程度である。これに対して、本実施形態によれば、外側保護層6が少なくとも厚み10mm以上を有しているため、スパイクによる真空断熱材4Aの踏み抜きを防止できる。
【0047】
ダム等のコンクリートには荒い骨材が用いられているため、コンクリートの打設面には数ミリ程度、石が突出する。これに対して、本実施形態によれば、内側保護層2は少なくとも厚み10mm以上を有しているため、コンクリートの骨材による真空断熱材4Aの破損を防止できる。
【0048】
また、本実施形態において、内側保護層2及び外側保護層6は、巻き上げ可能な材料により構成されている。これにより、養生を行う現場に効率よく内側保護層2及び外側保護層6の断熱材2A,6Aを搬入することができ、作業性が向上する。
【0049】
また、本実施形態において、真空断熱材4Aは吸着剤が芯材とともにガスバリア性フィルムに封入されており、吸着剤は、無機鉱物系の材料である。使用後に真空断熱材4Aを廃棄する際に、吸着剤の種類によっては、真空断熱材4A内の吸着剤に水がかかると、未反応の材料が発熱や発火するおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、吸着剤として発熱反応がない無機鉱物系の材料を用いているため、発熱や発火を防止できる。
【0050】
また、本実施形態において、真空断熱材4Aに用いられる吸着剤は、アルミノケイ酸塩である。このような構成の本実施形態によれば、アルミノケイ酸塩を吸着剤として用いているため、発熱や発火を確実に防止できる。
【0051】
本実施形態では、内側保護層2及び外側保護層6を独立気泡発泡断熱材2A、6Aで構成したが、これに限らず、例えば、ゴムシート等の真空断熱材層4を保護する機能を有する部材であればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 養生構造
2 内側保護層
2A 断熱材
4 真空断熱材層
4A 真空断熱材
4B ガスバリア性フィルム
4C 芯材
6 外側保護層
6A 断熱材
20 コンクリート