(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】鋼管内面下地処理装置
(51)【国際特許分類】
B24C 5/04 20060101AFI20230502BHJP
B24C 3/16 20060101ALI20230502BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20230502BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C3/16
B24C9/00 Z
E04G23/02 C
(21)【出願番号】P 2019069521
(22)【出願日】2019-03-31
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】306033025
【氏名又は名称】日本鉄塔工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【氏名又は名称】打越 佑介
(74)【代理人】
【識別番号】100213746
【氏名又は名称】川成 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻丸 敏彦
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-281346(JP,A)
【文献】特開2004-286114(JP,A)
【文献】特開平03-111174(JP,A)
【文献】実開昭61-078600(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/04
B24C 3/16
B24C 9/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状形体を有し、装置全体を鋼管中心軸方向に保持するための支持脚部と、支持脚部の先端に連結される回動自在な旋回ブラスト部とを含み、支持脚部は少なくとも3本の開閉脚自在な支持アームを有する少なくとも2組の開閉アーム脚部を、装置の中心軸方向へ相互に離間して設けられ、支持脚部の先端部には旋回ブラスト部を装置の中心軸の回りで回動させるための旋回モータが設けられ、旋回ブラスト部は、開閉脚しかつ旋回モータにより旋回される1本の旋回アームと、ブラストホースを介して外部のブラスト供給源に接続されるブラストノズルと、旋回アームとブラストノズルとを連結するための連結金具とを含み、ブラストホースは、支持脚部の外側に沿って配置され、実質的に旋回アームの開閉脚枢軸位置に対応する位置において支持脚部に対して固定され、この固定位置とブラストノズルとの間のブラストホースの部分はフリーな状態にされ、連結金具は、相対的に旋回アームとブラストノズルとが旋回アームの軸方向および/またはブラストホースの軸方向に摺動自在でありかつ旋回アームの軸および/またはブラストホースの軸の回りを回動自在となるように旋回アームとブラストノズルとの間を連結する、鋼管内面下地処理装置。
【請求項2】
ブラストノズルは連結金具に固定される一方、旋回アームは連結金具が摺動自在および回動自在に連結される、請求項1に記載の鋼管内面下地処理装置。
【請求項3】
ブラスト噴出方向を画角内に収めるようブラストノズルに配置されたカメラと、ブラスト噴出方向を照射するように配置された発光体とをさらに含む、請求項1または2に記載の鋼管内面下地処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管構造物における鋼管内表面の下地処理を行うための鋼管内面下地処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鋼管鉄塔などのような鋼管構造物に用いられる鋼管は、通常、溶融亜鉛ドブ漬けメッキ法を用いて鋼管の内外面をメッキすることによりその耐久性を維持されている。しかしながら、自然環境負荷や人為的工作などのような経年変化により亜鉛メッキ層に損傷が生じてしまったり、亜鉛メッキ層が浸食されて錆が発生してしまったりすることを完全に防止することは不可能とも言え、少なくとも定期的に点検補修作業を行うことが求められている。点検補修作業時、鋼管外面については、直接目視できるため、錆発生などの要補修箇所を比較的容易に発見して対処することができる。これに対し、鋼管内面の変化については、直視できないため、例えば、特許文献1に示されるような装置を鋼管内に挿入して錆などの要補修箇所を確認し、特許文献2~5に示されるような装置を用いて要補修箇所の補修を行う方法が取られていた。
【0003】
しかしながら、この方法は、要補修箇所の補修を確実に遂行できるものではあるが、要補修箇所の確認作業に時間を要することや、当該箇所に補修用工具を確実に位置させねばならないことなどの煩雑さを有するものであり、点検補修作業のコストを高騰させる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-090173号公報
【文献】特開2010-046737号公報
【文献】特開2010-089232号公報
【文献】特開2004-286114号公報
【文献】特開2004-011013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鋼管の内面を広範囲にわたって短時間で効率良く下地処理を行うことにより、要補修箇所の補修モレを防止すると共に、点検補修作業のコストを低減できる鋼管内面下地処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による鋼管内面下地処理装置は、基本的に、要補修箇所の有無に関係なく、鋼管内面全体を所要程度まで連続して研削できることを骨子とするものである。
【0007】
本発明による鋼管内面下地処理装置は、全体的に細長い柱状形体を有しており、装置全体を鋼管中心軸方向に保持するための支持脚部と、支持脚部の先端に連結される回動自在な旋回ブラスト部とから構成される。
【0008】
支持脚部は、本出願人の出願に係る特開2008-100139号公報に開示された支持アーム駆動機構におけるものと同様な少なくとも3本の開閉脚自在な支持アームを有する少なくとも2組の開閉アーム脚部を、装置の中心軸方向へ相互に離間して設けられる。支持脚部の先端部には、旋回ブラスト部を装置の中心軸の回りで回動させるための旋回モータが設けられる。
【0009】
旋回ブラスト部は、支持アームと同様な駆動機構により開閉脚しかつ旋回モータにより旋回される1本の旋回アームと、ブラストホースを介して外部のブラスト供給源に接続されるブラストノズルと、旋回アームとブラストノズルとを連結するための連結金具とから構成される。ブラストホースは支持脚部の外側に沿って配置され、実質的に、旋回アームの開閉脚枢軸位置に対応する位置において支持脚部に対して固定され、この固定位置とブラストノズルとの間のブラストホースの部分はフリーな状態にされる。連結金具は、相対的に、旋回アームとブラストノズルとが旋回アームの軸方向および/またはブラストホースの軸方向に摺動自在であり、かつ、旋回アームの軸および/またはブラストホースの軸の回りを回動自在となるように旋回アームとブラストノズルとの間を連結する。
【0010】
好ましくは、ブラストノズルから噴出されるブラストによる影響をより少なくするため並びに噴出されるブラストの向きを安定するために、ブラストノズルは連結金具に固定される一方、旋回アームは連結金具に対して摺動自在および回動自在となるように連結される。
【0011】
また、ブラスト噴出方向を画角内に収めるようブラストノズルに配置されたCCDカメラのようなカメラと、ブラスト噴出方向を照射するように配置されたLEDのような発光体とを備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による鋼管内面下地処理装置は、下地処理を要する鋼管内に挿入され、鋼管の軸方向へ移動される。旋回アームは支持アーム駆動機構により鋼管内面寸法に対応した角度まで開脚されると共に、旋回モータにより回動される。ブラストは外部のブラスト供給源からブラストホースを介して圧送供給され、ブラストノズルから噴出されて鋼管内面を研削する。
【0013】
ここにおいて、旋回アームとブラストノズルとが旋回アームの軸方向および/またはブラストホースの軸方向に摺動自在であり、かつ、旋回アームの軸および/またはブラストホースの軸の回りで回動自在である。ブラストホースは、旋回アームの旋回に従動する形で回動され、旋回アームの回転中心との位置ズレ分に対しては、旋回アームの軸方向に摺動することにより対応し、旋回アームの回転円との交差に対しては、旋回アームの軸の回りで回動することにより対応する。これにより、ブラストホースは、旋回アームに邪魔されることなく(或いは、旋回アームの旋回を邪魔することなく)、支持脚部先端の固定位置を頂点とする円錐状に旋回できる。
【0014】
このことは、ブラストノズルを一方向へ回転させ続けることが可能であることを意味しており、鋼管内面下地処理装置を移動させることにより鋼管内面を連続して研削でき、従来の処理装置と比べ、作業時間を大幅に短縮することができる。また、カメラと発光体との組合せによりブラストによる研削状況をリアルタイムで確認できるため、処理モレ等が生じるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による鋼管内面下地処理装置を断面状態で示す側面図である。
【
図2】
図1に示す鋼管内面下地処理装置の旋回ブラスト部を説明するための拡大部分図である。
【
図3】
図1に示す鋼管内面下地処理装置における旋回アームとブラストホースとの位置関係を模式的に示す、
図2の下方側から見た図である。
【
図4】
図1に示す鋼管内面下地処理装置における旋回ブラスト部を示す、
図2の下方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態としての鋼管内面下地処理装置について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0017】
本発明の実施形態による鋼管内面下地処理装置は、
図1に示すように、全体的に細長い柱状形体を有しており、装置全体を鋼管Sの中心軸方向に保持するための支持脚部1と、支持脚部1の先端(図示の場合、下方端)に連結される回動自在な旋回ブラスト部2とから構成される。
【0018】
支持脚部1は、本出願人の出願に係る特開2008-100139号公報に開示された支持アーム駆動機構におけるように、脚開閉モータ10により駆動されるラックアンドピニオン11によって開閉脚する少なくとも3本の支持アーム12を有する少なくとも2組の開閉アーム脚部13を有しており、少なくとも2組の開閉アーム脚部13は装置の中心軸方向へ相互に離間して設けられる。支持脚部1の先端部(図示の場合、下方の端部)には、旋回ブラスト部2を装置の中心軸の回りで回動させるための旋回モータ14が設けられる。
【0019】
旋回ブラスト部2は、
図2により詳細に示すように、支持アーム12と同様な駆動機構により開閉脚し、かつ、旋回モータにより旋回される1本の旋回アーム20と、ブラストホース21を介して外部のブラスト供給源(図示なし)に接続されるブラストノズル22と、旋回アーム20とブラストノズル22とを連結するための連結金具23とから構成される。
【0020】
ブラストホース21は、支持脚部1の外側に沿って配置されたホースホルダ24に保持される。ホースホルダ24は、支持脚部1の後端(図示の場合、上方端)から旋回アーム20の開閉脚の枢軸位置またはその近傍まで延びるように配設され、ブラストホース21はその上に固定されたのち、ブラストホース21のホースホルダ24に固定された位置とブラストノズル22との間の部分のブラストホース21はフリーな状態にされており、旋回アーム20に対して後述する摺動および回動自在な関係で設けられる。
【0021】
連結金具23は、相対的に、旋回アーム20とブラストノズル22とが旋回アーム20の軸方向および/またはブラストホース21の軸方向に摺動自在であり、かつ、旋回アーム20の軸および/またはブラストホース21の軸の回りで回動自在な関係を有して旋回アーム20とブラストノズル22とを連結する。この摺動自在および回動自在な関係については、図示の例では、ブラストノズル22を連結金具23に固定する一方、旋回アームは連結金具が摺動自在および回動自在となるように連結される。
【0022】
このような相関関係で連結することは、ブラストノズル22から噴出されるブラストにより生じる反力が所要の摺動および回動を阻害する虞をより少なくでき、かつ、これにより、噴出されるブラストの向きを安定的に一定に保つことができる。
【0023】
次に、旋回ブラスト部2の回動時における旋回アーム20、ブラストノズル22、連結金具23の相対的位置関係について、
図3を参照して説明する。
【0024】
旋回モータ14によって旋回ブラスト部2の回動されると、所要の開脚角度まで開脚された旋回アーム20は、旋回モータ14の回転軸Mを中心として旋回する。これに対し、旋回アーム20に連結金具23を介して連結されたブラストノズル22は、ブラストホース21が旋回ブラスト部2の外側の旋回アーム20の開閉脚の枢軸位置に対応する位置に固定されていることにより、その固定位置Oを中心にブラストノズル22のフリー部分の長さを半径として、旋回アーム20の回動に従動して回動される。
【0025】
旋回アーム20がブラストホース21の固定位置O上にあるとき(
図3に実線で示す6時の位置)、ブラストホース21は旋回アーム20の背後側(図面の奥側)に位置し、かつ、ブラストノズル22は旋回アーム20の最自由端側に位置する。旋回アーム20が旋回されると、旋回アーム20の長さおよびブラストホース21のフリー部分の長さが一定であることにより、ブラストノズル22は旋回アーム20の回動に伴って旋回アーム20の最自由端から離間する方向へ摺動し、そして、旋回アーム20が固定位置Oから最も離間する側に位置するとき(12時の位置)、ブラストホース21は旋回アーム20の前面側(図面の手前側)に位置し、かつ、ブラストノズル22は旋回アーム20の最自由端から最も離間した位置へ摺動する。
【0026】
かくして、旋回アーム20の旋回運動とブラストホース21の回転運動は互いに独立して行われることができ、両者が交わり合って旋回および回動を阻止することはない。
【0027】
連結金具23には、
図4に示すように、ブラストノズル22から噴出されるブラストの噴出方向を画角内に収めるよう配置されたCCDカメラのようなカメラ25と、ブラスト噴出方向を照射するように配置されたLEDのような発光体26とを備える。カメラ25はブラストによる研削状況を外部のモニタ(図示なし)に送信し、作業者が研削モレの有無や追加の研削の必要性などをリアルタイムで判断ですることを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述した本発明の説明は、連続ブラスト研削を目的として説明されたが、ブラスト供給源をバキューム吸引装置に換える(より好ましくは、ブラストノズルもまたバキューム用ノズルに換える)ことで、研削に用いたブラストを鋼管内から吸い出して除去できることは容易に理解されよう。また、ブラストの代わりに塗装材や仕上げ材や保護皮膜剤などのような液体を塗布する作業に対しても、本発明のブラスト系統の構成部分を交換するという簡単な作業により適合させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 支持脚部
2 旋回ブラスト部
10 脚開閉モータ
11 ラックアンドピニオン
12 支持アーム
13 開閉アーム脚部
14 旋回モータ14
2 旋回ブラスト部
20 旋回アーム
21 ブラストホース
22 ブラストノズル
23 連結金具
24 ホースホルダ
25 カメラ
26 発光体
M 旋回モータ回転軸
O ブラストホース固定位置
S 鋼管