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特許7271898サウンドマスキング設備、音声出力ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】サウンドマスキング設備、音声出力ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/00 20060101AFI20230502BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
G10K11/175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018189610
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020058403
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】松崎 伸樹
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061088(JP,A)
【文献】特開2014-009479(JP,A)
【文献】特開2010-007421(JP,A)
【文献】特開2003-250646(JP,A)
【文献】特表2008-545504(JP,A)
【文献】登録実用新案第3091672(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0350780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/00、17/00
G10K 11/175、11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、
前記音声出力ユニットが、
サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカを備えており、
前記スピーカから放音される音声は、前記音声出力ユニットが備える反射板により、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射して床面または天板の下面に当たり、
前記スピーカから放音される音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わり、その床面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が前記天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至るサウンドマスキング設備。
【請求項2】
床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、
前記音声出力ユニットが、
サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、
スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体と
を備えており、
前記スピーカが、下方または上方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音し、
前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有する錐体状または切頭錐体状をなし、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させるサウンドマスキング設備。
【請求項3】
床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、
前記音声出力ユニットが、
サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、
スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体と
を備えており、
前記スピーカが、下方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音するものであり、
前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有し、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させるものであり、当該側面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が天板の下面と交わるサウンドマスキング設備。
【請求項4】
前記反射体の側面で反射した音声が天板の下面に当たって反射し、その音声の向かう先を示す仮想線と床面とが交わる請求項3記載のサウンドマスキング設備。
【請求項5】
床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、
前記音声出力ユニットが、
サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、
スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体と
を備えており、
前記スピーカが、上方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音するものであり、
前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有し、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させるものであり、当該側面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わるサウンドマスキング設備。
【請求項6】
前記反射体の側面で反射した音声が床面に当たって反射し、その音声の向かう先を示す仮想線が天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至る請求項5記載のサウンドマスキング設備。
【請求項7】
前記反射体が有している前記スピーカから放音される音声を反射する反射面と水平面とのなす鋭角を28°ないし40°の間に設定している請求項2、3、4、5または6記載のサウンドマスキング設備。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のサウンドマスキング設備を構成するために用いられるものであって、
サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、
スピーカを支持するとともに天板付家具における天板の下面または天板の直下の所定箇所に取り付けられる支持体と
を備え、これらスピーカ及び支持体を一体化してなる音声出力ユニットであり、
前記スピーカから放音される音声は、当該音声出力ユニットが備える反射板により、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射して床面または天板の下面に当たり、
前記スピーカから放音される音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わり、その床面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が前記天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至る音声出力ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等の音環境を改善するためのサウンドマスキング設備に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等のフロアを複数の室または領域に区画することはしばしば行われている。そのような場合において、隣接する室または領域間で物音や話し声が漏れ伝わると、それがうるさく感じられたり、プライバシーまたは情報セキュリティの防護に差し障ったりする。この問題を緩和ないし解消するために、マスキング効果及びカクテルパーティ効果を応用したサウンドマスキング設備が考案されている。
【0003】
下記特許文献1には、フロアの天井または天井裏に設置したスピーカからピンクノイズやホワイトノイズ等のマスキング音を放音し、隣室の物音や話し声をマスキングするシステムが開示されている。だが、重量のあるスピーカを天井に直接固定しなければならず、施工に手間がかかる。
【0004】
しかも、近時では、インターネット等の電気通信回線を介して複数の遠隔地を結び、双方向に音声及び画像を送受信してテレビ会議(ビデオ会議)を行うことが増えてきている。テレビ会議に使用する集音マイクは、天板付家具即ちデーブルまたはデスク等の天板上に載置することが通常である。フロアの天井からマスキング音を放射するシステムでは、そのマスキング音がマイクに入力されてテレビ会議の相手方に届いてしまい、本来相手方によく聞こえて欲しい此方の音声が聞き取りにくくなる不都合が生じる。
【0005】
上述の問題を解消し得るものが、下記特許文献2に開示されているデスク型サウンドマスキング設備である。これは、デスクの天板下に懸吊支持される幕板にスピーカを設置したものであり、スピーカから放音されるマスキング音はデスクの下肢空間を伝搬してユーザの耳に届けられる一方、天板に遮られることから天板上に載置された集音マイクには直接入力はされない。
【0006】
このデスク型サウンドマスキング設備は優れて有用であるが、マスキング音が直立する幕板の面の向く水平軸方向に向かい、マスキング音の指向性がやや強い。加えて、マスキング音が直接音としてユーザの耳に聞こえ、ユーザがその音の発生源であるスピーカの存在に気づくことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-233672号公報
【文献】特許第6045268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、天板付家具の天板上に載置された集音マイクにサウンドマスキング用の音声が直接入力されることを回避しつつ、ユーザが所在する空間に音声を拡散させてより自然な音場を作出することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、前記音声出力ユニットが、サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカを備えており、前記スピーカから放音される音声は、前記音声出力ユニットが備える反射板により、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射して床面または天板の下面に当たり、前記スピーカから放音される音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わり、その床面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が前記天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至るサウンドマスキング設備を構成した。
【0010】
本発明では、床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、前記音声出力ユニットが、サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体とを備えており、前記スピーカが、下方または上方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音し、前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有する錐体状または切頭錐体状をなし、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させるサウンドマスキング設備を構成した
【0011】
本発明では、床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、前記音声出力ユニットが、サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体とを備えており、前記スピーカが、下方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音し、前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有し、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させ、当該側面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が天板の下面と交わるサウンドマスキング設備を構成した。このようなものであれば、サウンドマスキング用の音声を間接音として、即ち反射体の側面及び天板の下面に当たって反射した音声をユーザの耳に届けることができる。
【0012】
そして、前記反射体の側面で反射した音声が天板の下面に当たって反射し、その音声の向かう先を示す仮想線と床面とが交わるならば、サウンドマスキング用の音声を反射体の側面、天板の下面、さらには床面に当てて反射させ、広範囲に拡散させることができる。
【0013】
本発明では、床面に接地する脚により天板が床面から浮上した位置に支持される天板付家具と、この天板付家具の天板の直下に設置されサウンドマスキング用の音声を出力する音声出力ユニットとを具備するサウンドマスキング設備であって、
前記音声出力ユニットが、サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、スピーカから放音される音声を鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面または天板の下面に当てる反射体とを備えており、前記スピーカが、上方に向けてサウンドマスキング用の音声を放音し、前記反射体が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面を有し、その側面を反射面としてスピーカから放音される音声を反射させ、当該側面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わるサウンドマスキング設備を構成した。このようなものであれば、サウンドマスキング用の音声を間接音として、即ち反射体の側面及び床面に当たって反射した音声をユーザの耳に届けることができる。
【0014】
そして、前記反射体の側面で反射した音声が床面に当たって反射し、その音声の向かう先を示す仮想線が天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至るならば、天板付家具の周囲に所在するユーザの耳の高さに的確にサウンドマスキング用の音声を送り届けることができる。
【0015】
前記反射体が有している前記スピーカから放音される音声を反射する反射面と水平面とのなす角度は、例えば28°ないし40°の間の鋭角に設定する。
【0016】
並びに、本発明では、サウンドマスキング用の音声を放音するスピーカと、スピーカを支持するとともに天板付家具における天板の下面または天板の直下の所定箇所に取り付けられる支持体とを備え、これらスピーカ及び支持体を一体化してなる音声出力ユニットであり、前記スピーカから放音される音声は、当該音声出力ユニットが備える反射板により、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射して床面または天板の下面に当たり、前記スピーカから放音される音声の向かう先を示す仮想線が床面と交わり、その床面に当たって反射する音声の向かう先を示す仮想線が前記天板の下面と交わらずに天板の外周縁よりも外方に至る音声出力ユニットを構成した。これにより、既製の天板付家具に後から当該音声出力ユニットを装着してサウンドマスキング機能を付与することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、天板付家具の天板上に載置された集音マイクにサウンドマスキング用の音声が直接入力されることを回避しながら、ユーザが所在する空間に音声を拡散させてより自然な音場を作出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のサウンドマスキング設備を示す側面図。
図2】同実施形態のサウンドマスキング設備の音声出力ユニットを拡大して示す要部側断面図。
図3】本発明の変形例のサウンドマスキング設備を示す側面図。
図4】同実施形態のサウンドマスキング設備の音声出力ユニットを拡大して示す要部側断面図。
図5】本発明の他の実施形態のサウンドマスキング設備の音声出力ユニットを拡大して示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1及び図2に、本実施形態のサウンドマスキング設備を示す。本実施形態のサウンドマスキング設備は、天板付家具1の天板11の直下の下肢空間に、サウンドマスキング用の音声Sを出力する音声出力ユニット2を設置することで構成される。
【0021】
天板付家具1は、既知の会議用テーブルやデスク等と同様、床面0に接地する脚12により天板11を床面0から浮上した位置に支持させているものである。天板付家具1が会議用テーブルである場合、床面0から天板11の下面111までの高さは、650mmないし700mm程度である。また、天板11の奥行寸法は、880mmないし1600mm程度である。
【0022】
本実施形態における音声出力ユニット2は、サウンドマスキング用の音声Sを放音するスピーカ21と、スピーカ21から放音される音声Sを反射させる反射体22と、スピーカ21及び反射体22を支持する支持体23とを備える。
【0023】
スピーカ21は、例えば、振動体であるボイスコイルの振動を振動板に伝達し空気を震えさせる既知のダイナミックスピーカである。スピーカ21が出力するマスキング音Sは、他人の会話や、作業に伴って発生する物音、各種機器の作動音等をマスキングする効果のある音である。好適なマスキング音Sとして、可聴域にてパワーが周波数に反比例する傾向を有したピンクノイズ、パワーが周波数の二乗に反比例する傾向を有したブラウンノイズ、パワーが周波数によらず略均一なホワイトノイズ等を挙げることができる。尤も、マスキング音Sとして、鳥の囀りのような自然音若しくは環境音、またはバックグラウンドミュージック等を出力してもよい。マスキング音Sとなるノイズに、自然音、環境音またはバックグラウンドミュージックを重畳しても構わない。
【0024】
反射体22は、その側面221が錐体状または切頭錐体状(若しくは、錐台状)をなす、薄肉のまたは稠密な部材である。特に、本実施形態では、反射体22の形状を円錐状または切頭円錐状としているが、角錐状または切頭角錐状としてもよい。反射体22は、硬質樹脂成形品として作製することができる。反射体22は、先細りの先端側をスピーカ21の振動板に向けて配置する。この錐体状または切頭錐体状をなす反射体22の軸の向きは、図2に一点鎖線で表しているスピーカ21の主軸(正面軸または中心軸)Aと平行または略平行にし、さらには両者の軸Aを可能な限り一致させることが好ましい。
【0025】
反射体22は、スピーカ21のフレーム211に固定する。本実施形態では、反射体22の裾の拡がる基端側の四隅に、当該反射体22の軸に対して直交する外方に延出するフランジ222を成形し、そのフランジ222から軸と平行または略平行に伸長する複数本の支柱223を設け、その支柱223の先端部をスピーカ21のフレーム211に連結するようにしている。反射体22のフランジ222と支柱223とは一体成形してもよいし、両者を別体としそれらをビスやリベット等の止着具224または接着剤等を使用して固着してもよい。支柱223とスピーカ21のフレーム211とは、止着具225または接着剤等を使用して固着する。
【0026】
支持体23は、スピーカ21のフレーム211を支持する支持部231と、支持部231から起立しその先端側で外方に屈曲して水平または略水平な取付片233を形成した立壁部232とを有している。支持体23は、例えば板金材をプレス加工する等して作製することができる。
【0027】
スピーカ21、反射体22及び支持体23は、一体化したユニット2となる。この音声出力ユニット2のスピーカ21には、当該スピーカ21を介して出力する音声Sを再生するための図示しない音響再生装置、例えばオーディオ機器やパーソナルコンピュータ等を接続する。
【0028】
本実施形態では、スピーカ21から鉛直下方に向けてマスキング音Sを放音し、鉛直軸に沿ってこれと相対する反射体22の外側面221にマスキング音Sを当てて、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した斜め上方に向けて反射させる。そのために、図2に示しているように、スピーカ21の振動板を下方に向け、その直下に反射体22を配し、その姿勢が維持されるように支持体23に支持させた上、支持体23の上端部にある取付片233を天板付家具1の天板11の下面111に接合する。取付片233と天板11とは、止着具234または接着剤等を使用して固着する。
【0029】
本実施形態にあって、反射体22の基端部即ち下端部の外径は約50mmに設定し、反射体22の高さは約10mmないし約20mmの間に設定し、天板11の下面111から反射体22の下端部までの距離は約40mmないし約50mmの間に設定する。また、反射体22の外側面である錐面221と水平軸とがなす鋭角の角度θは、約28°ないし約40°の間に設定する。無論、これらの寸法値はあくまでも一例であり、これ以外の値をとることを妨げるものではない。
【0030】
スピーカ21の指向性の主軸Aの方向は、スピーカ21から最も強い音波の成分(音圧または音量)が放射される方向を意味する。従って、図1及び図2に二点鎖線の矢印の仮想線Sで模式的に表しているように、スピーカ21から放音されたマスキング音Sは、主として主軸Aと平行な方向である鉛直下方に進行し、まず反射体22の外側面221に当たる。そして、その外側面221が反射面となり、マスキング音Sは天板11の下面111に向かって斜め上方に反射される。さらに、マスキング音Sは天板11の下面111に当たって斜め下方に反射され、今度は床面0に当たる。このように天板11の下面111及び床面0に当たって反射したマスキング音Sが、天板11の外周縁よりも外方に至り、ユーザの耳元へと届く。
【0031】
加えて、既に述べた通り、反射体22は錐体状または切頭錐体状をなしており、しかもその軸がスピーカ21の主軸Aと略合致している。故に、スピーカ21から反射体22に向かって放音されたマスキング音Sは、反射体22の外側面221に当たって反射するときに、反射体22の軸と直交する前後左右の四方、換言すれば軸を中心とした周囲360°に、平面視において放射状に拡散することとなる。これにより、ユーザが所在する空間の広範囲に万遍なくマスキング音Sを送り届けることができる。
【0032】
音声出力ユニット2は、一基の天板付家具1に対して一個設置してもよいし、複数個設置してもよい。天板付家具1が幅方向に長尺な大形の天板11を有する会議用テーブルである場合、音声出力ユニット2を当該テーブル1の幅方向に沿って複数個設置することも好ましい。
【0033】
本実施形態では、床面0に接地する脚12により天板11が床面0から浮上した位置に支持される天板付家具1と、この天板付家具1の天板11の直下に設置されサウンドマスキング用の音声Sを出力する音声出力ユニット2とを具備するサウンドマスキング設備であって、前記音声出力ユニット2が、サウンドマスキング用の音声Sを放音するスピーカ21と、スピーカ21から放音される音声Sを鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて天板11の下面111に当てる反射体22とを備えているサウンドマスキング設備を構成した。
【0034】
本実施形態によれば、天板付家具1の天板11上に載置されるテレビ会議用の集音マイクにマスキング音Sが直接入力されることを回避しつつ、ユーザが所在する空間にマスキング音Sを拡散させてより自然な音場を作出することができる。ユーザの耳に聞こえるマスキング音Sは、反射体22の側面221、天板11の下面111及び床面0で反射した間接音であり、反射を経ずにユーザの耳に直に届く直接音ではないため、マスキング音Sの発生源であるスピーカ21の存在が明らかになりにくい。
【0035】
前記スピーカ21が、下方に向けてサウンドマスキング用の音声Sを放音し、前記反射体22が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面221を有する錐体状または切頭錐体状をなし、その側面221を反射面としてスピーカ21から放音される音声Sを反射させるものとしており、音声出力ユニット2を小形化しながらも、前後左右の広い範囲にマスキング音Sを供給することが可能となっている。
【0036】
図1に示しているように、前記スピーカ21から前記反射体22に向けて放音され、反射体22の側面221に当たって反射する音声Sの向かう先を示す仮想線は、天板11の下面111と交わる。従って、反射体22の側面221及び天板11の下面111で反射したマスキング音Sをユーザの耳に届けることができる。
【0037】
さらに、天板11の下面111に当たって反射する音声Sの向かう先を示す仮想線と床面0とが交わる。これにより、マスキング音声Sを床面0で反射させより一層効果的にユーザの耳に届けることができる。なお、天板11の寸法が大きい場合、仮想線Sと床面0とが交わる位置が天板11の直下にあることがある。
【0038】
本実施形態における音声出力ユニット2は、サウンドマスキング用の音声Sを放音するスピーカ21と、スピーカ21から放音される音声Sを鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて天板付家具1の天板11の下面111に当てる反射体22と、スピーカ21及び反射体22を支持するとともに天板付家具1における天板11の下面111または天板11の直下の所定箇所に取り付けられる支持体23とを備え、これらスピーカ21、反射体22及び支持体23を一体化してなるものである。この音声出力ユニット2は、既製の天板付家具1に後付けしてサウンドマスキング機能を付与するべく用いることが可能である。
【0039】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、図3及び図4に示すように、音声出力ユニット2のスピーカ21と反射体22との上下関係を、上記実施形態とは真逆に反転してもよい。
【0040】
図3及び図4に示す変形例では、スピーカ21から鉛直上方に向けてマスキング音Sを放音し、鉛直軸に沿ってこれと相対する反射体22の外側面221にマスキング音Sを当てて、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した斜め下方に向けて反射させる。そのために、スピーカ21の振動板を上方に向け、その直上に反射体22を配し、その姿勢が維持されるように支持体23に支持させた上、支持体23の上端部にある取付片233を天板付家具1の天板11の下面111に接合する。
【0041】
図3に二点鎖線の矢印の仮想線Sで模式的に表すように、スピーカ21から放音されたマスキング音Sは、主としてスピーカ21の指向性の主軸Aと平行な方向である鉛直上方に進行し、まず反射体22の外側面221に当たる。そして、その外側面221が反射面となり、マスキング音Sは床面0に向かって斜め下方に反射される。さらに、マスキング音Sは床面0に当たって斜め上方に反射される。このマスキング音Sの少なくとも一部は、再度天板11の下面111に当たることなく、天板11の外周縁よりも外方に至り、ユーザの耳元へと届く。
【0042】
加えて、既に述べた通り、反射体22は錐体状または切頭錐体状をなしており、しかもその軸がスピーカ21の主軸Aと略合致している。故に、スピーカ21から反射体22に向かって放音されたマスキング音Sは、反射体22の外側面221に当たって反射するときに、反射体22の軸と直交する前後左右の四方、換言すれば軸を中心とした周囲360°に、平面視において放射状に拡散することとなる。これにより、ユーザが所在する空間の広範囲に万遍なくマスキング音Sを送り届けることができる。
【0043】
音声出力ユニット2は、一基の天板付家具1に対して一個設置してもよいし、複数個設置してもよい。
【0044】
本変形例では、床面0に接地する脚12により天板11が床面0から浮上した位置に支持される天板付家具1と、この天板付家具1の天板11の直下に設置されサウンドマスキング用の音声Sを出力する音声出力ユニット2とを具備するサウンドマスキング設備であって、前記音声出力ユニット2が、サウンドマスキング用の音声Sを放音するスピーカ21と、スピーカ21から放音される音声Sを鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面0に当てる反射体22とを備えているサウンドマスキング設備を構成した。
【0045】
本変形例によれば、天板付家具1の天板11上に載置されるテレビ会議用の集音マイクにマスキング音Sが直接入力されることを回避しつつ、ユーザが所在する空間にマスキング音Sを拡散させてより自然な音場を作出することができる。ユーザの耳に聞こえるマスキング音Sは、反射体22の側面221及び床面0で反射した間接音であり、反射を経ずにユーザの耳に直に届く直接音ではないため、マスキング音Sの発生源であるスピーカ21の存在が明らかになりにくい。
【0046】
前記スピーカ21が、上方に向けてサウンドマスキング用の音声Sを放音し、前記反射体22が、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した側面221を有する錐体状または切頭錐体状をなし、その側面221を反射面としてスピーカ21から放音される音声Sを反射させるものとしており、音声出力ユニット2を小形化しながらも、前後左右の広い範囲にマスキング音Sを供給することが可能となっている。
【0047】
図3及び図4に示しているように、前記スピーカ21から前記反射体22に向けて放音され、反射体22の側面221に当たって反射する音声Sの向かう先を示す仮想線は、床面0と交わる。従って、反射体22の側面221及び床面0で反射したマスキング音Sをユーザの耳に届けることができる。
【0048】
さらに、床面0に当たって反射する音声Sの向かう先を示す仮想線は、天板11の下面111と交わらずに天板11の外周縁よりも外方に至る。これにより、床面0で反射したマスキング音声Sをより一層効果的にユーザの耳に届けることができる。
【0049】
本変形例における音声出力ユニット2は、サウンドマスキング用の音声Sを放音するスピーカ21と、スピーカ21から放音される音声Sを鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させて床面0に当てる反射体22と、スピーカ21及び反射体22を支持するとともに天板付家具1における天板11の下面111または天板11の直下の所定箇所に取り付けられる支持体23とを備え、これらスピーカ21、反射体22及び支持体23を一体化してなるものである。この音声出力ユニット2は、既製の天板付家具1に後付けしてサウンドマスキング機能を付与するべく用いることが可能である。
【0050】
上記実施形態及び変形例では、スピーカ21及び反射体22をできるだけ接近させて小形のユニット2とし、当該ユニット2を天板付家具1の天板11の下面111に取り付けるようにしていた。これに対し、天板11の直下の下肢空間において、スピーカ21と反射体22とを鉛直方向に大きく離間させて配置することも可能である。具体例を挙げると、錐体状または切頭錐体状をなす反射体を、床面0の近傍に設けることができる。この場合における反射体は、天板付家具1の脚12の一部をなすベースを兼ねることがある。
【0051】
また、上記実施形態及び変形例では、錐体状または切頭錐体状をなす反射体22の外側面221を反射面として、スピーカ21から放音されるマスキング音Sを反射させていた。これに対し、錐体状または切頭錐体状をなし内部が中空の反射体の内側面(例えば、円錐状または切頭円錐状の内周面、換言すれば擂鉢状の内周面)を反射面として、マスキング音Sを反射させることも可能である。この場合における反射体は、拡開する基端側、つまりは錐体の底にあたる部位が開口している。その上で、当該反射体を、その基端側をスピーカ21の振動板に向けて配置する。反射体の軸の向きは、スピーカ21の主軸Aと平行または略平行にし、さらには両者の軸Aを可能な限り一致させることが好ましい。
【0052】
しかして、スピーカ21から鉛直下方に向けてマスキング音Sを放音し、鉛直軸に沿ってこれと相対する反射体の内側面にマスキング音Sを当てて、鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した斜め上方に向けて反射させる。そのために、スピーカ21の振動板を下方に向け、その直下に反射体を、開口する基端側を上に、先細りの先端側を下にして配設する。
【0053】
反射体は、スピーカ21から放音されるサウンドマスキング用の音声Sを反射する傾斜した側面を有するものであればよく、必ずしも錐体状または切頭錐体状をなしている必要はない。また、反射体が有する反射面は、湾曲面であってもよいし、平坦面であってもよい。
【0054】
スピーカ21の振動板と反射体22の側面との間の(鉛直方向に沿った)距離は、固定でもよいが、スピーカ21と反射体22とのうち一方を他方に対して相対変位させる機構、例えばねじ送り機構を介設することによって可変としてもよい。同様に、天板11の下面111または床面0と反射体22の側面221との間の(鉛直方向に沿った)距離も、可変としてよい。
【0055】
スピーカ21及び反射体22を備える音声出力ユニット2は、常に天板11の下面111に固定するとは限らない。音声出力ユニット2を天板付家具1における天板11以外の部材、例えば脚12等に固定しても構わない。その場合にも、音声出力ユニット2は、天板11の直下に配置することは言うまでもない。
【0056】
上記実施形態及び変形例では、音声出力ユニット2が、スピーカ21から放音されるサウンドマスキング用の音声Sを鉛直軸及び水平軸に対して傾斜した方向に反射させる反射体22を備えていた。だが、図5に示すように、反射体22の反射面221の向く方向が、鉛直軸に対して殆どまたは全く傾いていない(即ち、反射面221が水平面ないし略水平面である)音声出力ユニット2を構成することもできる。図5に示す例において、スピーカ21から下方に放音された音声Sは、反射体22に当たって反射された後、天板11の下面11や床面0に当たりながら拡散する。このような態様では、上記実施形態及び変形例と比較して幾分効率が落ちる可能性があるものの、やはりユーザの所在する空間に自然な音場を構築することができる。
【0057】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ユーザの所在する空間にサウンドマスキング用の音場を構築するために利用できる。
【符号の説明】
【0059】
0…床面
1…天板付家具
11…天板
111…下面
12…脚
2…音声出力ユニット
21…スピーカ
22…反射体
221…側面(反射面)
23…支持体
S…サウンドマスキング用の音声を示す仮想線
図1
図2
図3
図4
図5