(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230502BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230502BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20230502BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/98
A61K8/20
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018233993
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】緒方 真由美
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸之
(72)【発明者】
【氏名】谷村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大杉 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】古林 典之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057145(JP,A)
【文献】特開2001-089381(JP,A)
【文献】特開2000-204014(JP,A)
【文献】特開平09-309721(JP,A)
【文献】特開平07-025742(JP,A)
【文献】特開2012-036174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヘパリン類似物質、(b)プラセンタエキス、(c)
ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である無機電解質、及び(d)水を含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
(a)ヘパリン類似物質、(b)プラセンタエキス、(c)
塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、及び硫酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である無機電解質、及び(d)水を含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項3】
剤形が、ローション、クリーム、乳液、ゲル、又はパックである、請求項1
又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
外用組成物が、化粧品、医薬部外品、又は医薬品である、請求項1~
3のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質を含有し、製剤安定性の優れた外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、酸性ムコ多糖類の一種であり、皮膚に対する保湿効果や抗炎症作用、血流促進、瘢痕・ケロイドの治療や予防など幅広い効果があることから医薬品や医薬部外品などの外用製剤に配合されている。従来、ヘパリン類似物質の効果を向上させる検討は種々行われており、例えば、ヘパリン類似物質にベタイン類を併用することで、ヘパリン類似物質の角質水分保持増強作用等とベタイン類の保湿作用が相乗的に作用し、肌荒れに対して顕著な改善・予防効果を示すことが知られている(特許文献1)。このように皮膚への有用性が示される一方で、ヘパリン類似物質を外用製剤に配合する際に、使用感の悪さが課題になることが知られており、ヒアルロン酸オリゴ糖を配合することによって使用感を向上できることが報告されている(特許文献2)。また、ヘパリン類似物質は乾皮症やアトピー性皮膚炎の治療にも用いられている。ヘパリン類似物質は多硫酸化多糖類を主成分とするため、皮膚に対して多少の刺激感を有するが、乾皮症やアトピー性皮膚炎においては刺激に対して過敏になっているため、この刺激を極力抑える製剤の開発が行われている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-143486号公報
【文献】特開2017-66060号公報
【文献】特開2015-203029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ヘパリン類似物質を含有する外用組成物を調製し保存したところ、経時的に着色及びにおいの変化があり、製剤安定性が劣るといった課題を見出した。今までに、ヘパリン類似物質を配合した製剤の経時的な着色やにおいの変化と言った課題について報告された例はない。製剤の着色及びにおいの変化は、製剤安定性や商品性の観点から好ましくないため、これらの課題を防止する手段が求められる。
【0005】
本発明はヘパリン類似物質を含有し、製剤安定性に優れた外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ヘパリン類似物質と水を含有する外用組成物に、プラセンタエキス及び電解質を配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)(a)ヘパリン類似物質、(b)プラセンタエキス、及び(c)無機電解質、及び(d)水を含有することを特徴とする外用組成物、
(2)(c)無機電解質が、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びカリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種である、(1)に記載の外用組成物、
(3)(c)無機電解質が、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、及び硫酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)又は(2)に記載の外用組成物、
(4)剤形が、ローション、クリーム、乳液、ゲル、又はパックである、(1)~(3)のいずれかに記載の外用組成物、
(5)外用組成物が、化粧品、医薬部外品又は医薬品である、(1)~(4)のいずれかに記載の外用組成物、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ヘパリン類似物質を含有し、製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の外用組成物において用いる各成分は、通常医薬品、医薬部外品、又は化粧品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0010】
本発明の外用組成物中におけるヘパリン類似物質の含有量は、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~0.5w/w%がより好ましい。
本発明の外用組成物中におけるプラセンタエキスの由来としては、例えばヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジなどが挙げられるが、好ましくはブタである。また、プラセンタエキスとして市販されている商品(例えばビオカタライザープラセンタAPF(SW)(M-PE-APF))を使用してもよい。
【0011】
本発明のプラセンタエキスの含有量は、本発明の外用組成物中、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~0.5w/w%がより好ましい。また、ヘパリン類似物質1質量部に対して0.001~500質量部が好ましく、0.01~50質量部がより好ましい。
本発明における電解質は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられ、この中でも塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムが特に好ましい。本発明の外用組成物中における電解質の含有量は0.01~10w/w%が好ましく、0.1~5w/w%がより好ましい。また、ヘパリン類似物質1質量部に対して0.001~1000質量部が好ましく、0.01~500質量部がより好ましい。
【0012】
本発明の外用組成物は、水を含有する。本発明の外用組成物中における水の含有量は、1~99.9w/w%が好ましく、50~99.9w/w%がより好ましい。
【0013】
本発明の外用組成物は、上記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分を適宜配合することができる。例えば、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム等)、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフル等)、抗炎症剤(サリチル酸、グリチルリチン酸又はその塩、グリチルレチン酸、アラントイン等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール等)、防腐剤(パラベン類(メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン等)、安息香酸又はその塩、フェノキシエタノール等)、保湿剤(ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール等)、アミノ酸(L-セリン、L-プロリン、L-ヒドロキシプロリン等)等)、各種動植物(オウレン、オウバク、海藻、ボタンピ、カンゾウ、ローズマリー、セージ等)の抽出物、ビタミン類(パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸アミド等)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類等)、代謝賦活剤、ゲル化剤(水溶性高分子(カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、油性ゲル化剤(ステアリン酸イヌリン、パルミチン酸デキストリン等)等)、粘着剤等が挙げられる。
【0014】
これらの成分の添加量は、特に制約はなく、使用感等を考慮しながら適宜定めることができる。
【0015】
本発明の外用組成物は化粧品、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。
【0016】
本発明における外用組成物とは、成分(d)の水を含む外用組成物である。
【0017】
本発明の外用組成物は皮膚に適用できる剤形である限り、その形態は特に制限されない。具体的な剤形としては、ローション、クリーム、乳液、ゲル、パック、入浴剤等が挙げられる。これらの剤形のうち、ローション、クリームが特に好ましい。
【0018】
本発明の外用組成物は、剤形に応じて常法により製造することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は、下記の例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、数値は全て質量%を意味するものとする。
【0020】
(外用組成物の調製法)
以下表1、2に示す処方に従い、ヘパリン類似物質、プラセンタエキス(BIODELL BIOCHEMICAL S.A.製のビオカタライザープラセンタAPF(SW)(M-PE-APF))、電解質を精製水に均一に溶解し、実施例1~8及び比較例1~5の外用組成物を得た。
【0021】
(試験例1:においの評価)
実施例1~7、比較例1~4の各外用組成物5mLを10mLのスクリュー管に充てんし、65℃2週間保管し、調製直後からのにおいの変化を3人のパネラーが官能評価で確認した。
(においの評価基準)
○:においの変化がない
×:においの変化がある(不快臭あり)
【0022】
【0023】
表1の結果から明らかなように、ヘパリン類似物質を配合した外用組成物は、経時的に不快臭が発生した(比較例1、3~4)。ヘパリン類似物質とプラセンタエキスを配合した外用組成物についても経時的に不快臭が発生した(比較例2)。一方、ヘパリン類似物質とプラセンタエキスと電解質を配合した外用組成物は、経時的なにおいの変化は抑制された(実施例1~7)。
【0024】
(試験例2:着色の評価)
実施例1~5、8、比較例1、5の各外用組成物5mLを10mLのスクリュー管に充てんし、65℃2週間保管した。調製直後と65℃2週間保管品を波長400nmで吸光度を測定し、着色を評価した。
【0025】
【0026】
ヘパリン類似物質のみを配合した外用組成物は経時的に著しく着色した(比較例1、5)。一方、実施例1~5、8に示す通り、プラセンタエキスと電解質を同時に配合すると、各比較例に比べて経時的な着色を抑制することができた。
(処方例)
以下表3に示す処方に従い、各成分を水に均一に溶解し、外用組成物を得た。なお、以下処方例1の数値は全て質量%を意味するものとする。
【0027】
【0028】
*1:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体含有組成物は、商品名「Lipidure-NR」(日油株式会社製)を用いた。
*2:テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル含有組成物は、商品名「SBG-24」(山川貿易株式会社製)を用いた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、ヘパリン類似物質を含有し、製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。