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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】車両用表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/26 20060101AFI20230502BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20230502BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B60Q1/26 Z
B60Q1/00 C
G08G1/16 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018240661
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100327
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】鷲 祐一郎
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159699(JP,A)
【文献】特開2004-220257(JP,A)
【文献】特開平05-004546(JP,A)
【文献】特開平11-003473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/26
B60Q 1/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に通知すべき通知情報に応じた通知情報光を路面に照射して当該通知情報を路面上に表示させる車両用表示システムであって、
前記通知情報光とは別に他車両と同じ所定挙動の認識マークに応じた認識マーク光を路面に照射して前記認識マークを路面上に描画する照射手段と、
自車両の周辺を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像によって得られた撮像画像データに基づいて、前記所定挙動を有する他車両からの前記認識マークが路面上に表示されているかを判断するマーク判断手段と、
前記マーク判断手段により他車両からの前記認識マークが路面上に表示されていると判断された場合に、自車両からの通知情報と他車両からの通知情報とのどちらを優先して路面上に表示すべきかを判断する優先判断手段と、
前記優先判断手段による判断結果に応じて前記照射手段を制御する照射制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用表示システム。
【請求項2】
前記優先判断手段は、自車両が前記通知情報光を路面に照射させるに先立って、前記マーク判断手段により他車両からの前記認識マークが路面上に表示されていると判断された場合、他車両からの通知情報を優先すると判断し、
前記照射制御手段は、前記優先判断手段により他車両からの通知情報を優先すると判断された場合、自車両の前記通知情報光についての路面への照射を禁止する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
自車両が優先道路を走行しているかを判断する道路判断手段をさらに備え、
前記優先判断手段は、前記マーク判断手段により他車両からの前記認識マークが路面上に表示されていると判断された場合に、前記道路判断手段により自車両が優先道路を走行していると判断されたとき、自車両からの通知情報を優先すると判断し、
前記照射制御手段は、前記優先判断手段により自車両からの通知情報を優先すると判断された場合、前記照射手段を制御して前記通知情報光を路面に照射させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記認識マークは、周波数150Hz以上で点滅する挙動を示すものである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば交差点に進入しようとする他者に対して、図形による警告マーク(通知情報)を交差点の路面上に描画表示することで、車両の接近を通知する車両用表示システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-37260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用表示システムを搭載する複数の車両が異なる方向から交差点に進入する場合には、路面上に描画される通知情報が重なり合って見えなくなってしまい、通知が不充分になる可能性があった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、路面上に描画される通知情報について視認性を向上させることができる車両用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る車両用表示システムは、外部に通知すべき通知情報に応じた通知情報光を路面に照射して通知情報を路面上に表示させるものである。車両用表示システムは、照射手段と、マーク判断手段と、優先判断手段と、照射制御手段とを備えている。照射手段は、通知情報光とは別に他車両と同じ所定挙動の認識マーク光を路面に照射して認識マークを路面上に描画するものである。マーク判断手段は、撮像画像データに基づいて所定挙動を有する他車両からの認識マークが路面上に表示されているかを判断するものである。優先判断手段は、マーク判断手段により他車両からの認識マークが路面上に表示されていると判断された場合に、自車両からの通知情報と他車両からの通知情報とのどちらを優先して路面上に表示すべきかを判断するものである。照射制御手段は、優先判断手段による判断結果に応じて照射手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両からの通知情報と他車両からの通知情報とのどちらを優先して表示すべきかを判断し、その判断結果に応じて照射手段を制御するため、2つの通知情報のいずれか一方のみを路面上に表示させることが可能となり、両者が重なり合って見え難くなることを防止できる。従って、路面上に表示される通知情報について視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両用表示システムを示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る通知情報及び認識マークの一例を示す上面図である。
図3図1に示した優先判断部による判断処理の一例を示す上面図である。
図4図1に示した優先判断部による判断処理の他の例を示す上面図であり、(a)は第1の状態を示し、(b)は第2の状態を示している。
図5】本実施形態に係る車両用表示システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両用表示システムを示すブロック図である。図1に示すように車両用表示システム1は、外部に通知すべき通知情報に応じた通知情報光を路面に照射して、通知情報を路面上に表示させるものである。この車両用表示システム1は、光源ユニット(照射手段)10と、車載カメラ(撮像手段)20と、ナビゲーションシステム30と、レーダユニット40と、制御装置50とを備えている。
【0011】
光源ユニット10は、外部に通知すべき通知情報を路面上に表示させるべく、通知情報に対応した通知情報光を路面に照射するものである。さらに、本実施形態において光源ユニット10は、通知情報に付随して認識マークに応じた認識マーク光についても路面に照射して認識マークを路面上に描画する。
【0012】
図2は、本実施形態に係る通知情報及び認識マークの一例を示す上面図である。図2に示すように、本実施形態に係る車両用表示システム1において光源ユニット10は、通知情報光NIIを照射することで、自車両が右折する旨や左折する旨等の通知情報NIを路面上に描画する。さらに、光源ユニット10は、通知情報NIに加えて、認識マークRMについても路面上に描画すべく、認識マーク光RMIを路面に照射する。ここで、認識マークRMは、例えば周波数150Hz以上で点滅(所定挙動の一例)するように描画されるものである。なお、図2に示す例において認識マークRMは、正三角形を包囲した丸のマークとなっているが、この形状に限られるものではない。
【0013】
このような図1に示す光源ユニット10は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)と、光の照射位置を調整する機械的機構や光学的機構等とを備えて構成されている。本実施形態において光源ユニット10は、例えば前照灯室内に配置されることを想定しているが、これに限らず、車両前面の中央部や車両天井部等に配置されていてもよい。
【0014】
車載カメラ20は、自車両の周辺、特に車両前方を撮像する撮像手段である。この車載カメラ20は、撮像によって得られた画像データを制御装置50に送信する。
【0015】
ナビゲーションシステム30は、自車両を目的地まで誘導すべく地図情報、自車位置情報、及び経路情報等を運転者に伝達するものである。本実施形態においてナビゲーションシステム30は、自車両の位置情報、自車両の走行道路の情報、自車両の走行道路における交通法規の情報等を制御装置50に送信する。
【0016】
レーダユニット40は、ミリ波等のレーダ装置であって、周囲の障害物を検出するための装置である。このレーダユニット40は、出射したミリ波の反射波に基づいて、障害物までの距離や位置を検出するものである。
【0017】
制御装置50は、車両用表示システム1の全体を制御するものであって、例えば車両用ECU等によって構成されている。この制御装置50は、他者検出部51と、交差点検出部52と、照射制御部(照射制御手段)53と、マーク判断部(マーク判断手段)54と、道路判断部(道路判断手段)55と、優先判断部(優先判断手段)56とを備えている。
【0018】
他者検出部51は、車載カメラ20の撮像によって得られた撮像画像データ、及び、レーダユニット40の検出結果等に基づいて、自車両に接近している他者(歩行者、自転車及び他車両等)を検出するものである。
【0019】
交差点検出部52は、車載カメラ20の撮像によって得られた撮像画像データや、ナビゲーションシステム30からの地図情報及び自車位置情報等に基づいて、自車両が交差点に進入しようとしていること(例えば交差点の所定距離手前以内に入ったこと)を検出するものである。
【0020】
照射制御部53は、光源ユニット10を制御して通知情報光NII及び認識マーク光RMIを路面に照射させるものである。この照射制御部53は、他者検出部51によって自車両に接近している他者を検出した場合や、自車両が交差点に進入しようとしていることを検出した場合に、通知情報光NII及び認識マーク光RMIを路面に照射させて、通知情報NI及び認識マークRMを路面上に表示させる。
【0021】
マーク判断部54は、車載カメラ20の撮像によって得られた撮像画像データに基づいて、他車両からの認識マークRMが路面上に表示されているかを判断する。この際、マーク判断部54は、所定挙動に基づいて認識マークRMの存在を判断する。本実施形態において認識マークRMは周波数150Hz以上で点滅する表示(所定挙動の表示)となっている。このため、マーク判断部54は、周波数150Hz以上で点滅する表示が路面上に存在するか否かに基づいて、認識マークRMが路面上に表示されているかを判断することとなる。この場合においてマーク判断部54は、周波数150Hz以上で点滅するか否かだけでなく、マーク形状等も加味して認識マークRMが表示されているかを判断するようにしてもよい。
【0022】
道路判断部55は、自車両が優先道路を走行しているかを判断するものである。この道路判断部55は、ナビゲーションシステム30からの地図情報、自車位置情報及び交通法規の情報や、車載カメラ20からの画像データを解析等することにより、自車両が優先道路を走行しているかを判断する。
【0023】
優先判断部56は、マーク判断部54により他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていると判断された場合に、自車両からの通知情報NIと他車両からの通知情報NIとのどちらを優先して路面上に表示すべきかを判断するものである。
【0024】
図3は、図1に示した優先判断部56による判断処理の一例を示す上面図である。図3に示すように、自車両が通知情報光NIIを路面に照射させるに先立って、マーク判断部54により他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていると判断されたとする。この場合、優先判断部56は、他車両からの通知情報NIを優先すると判断する。
【0025】
図4は、図1に示した優先判断部56による判断処理の他の例を示す上面図であり、(a)は第1の状態を示し、(b)は第2の状態を示している。図4(a)に示すように、自車両が通知情報光NIIを路面に照射させるに先立って、マーク判断部54により他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていると判断されており、且つ、道路判断部55により自車両が優先道路を走行していると判断されたとする。この場合、図4(b)に示すように、優先判断部56は、自車両からの通知情報NIを優先すると判断する。
【0026】
なお、この場合において優先道路でない道路を走行する他車両は、路面上に表示された自車両の認識マークRMを認識し、自己が優先道路を走行中でないことから、自己の通知情報NIが優先されるべきものではないと判断することとなる。
【0027】
再度図1を参照する。図1に示す照射制御部53は、優先判断部56による判断結果に応じて光源ユニット10を制御するものである。照射制御部53は、優先判断部56により他車両からの通知情報NIを優先すると判断された場合、自車両の通知情報光NII及び認識マーク光RMIについて路面への照射を禁止する。また、照射制御部53は、優先判断部56により自車両からの通知情報NIを優先すると判断された場合、光源ユニット10を制御して、自車両の通知情報光NII及び認識マーク光RMIを路面に照射する。
【0028】
図5は、本実施形態に係る車両用表示システム1の処理を示すフローチャートである。まず、図5に示すように、他者検出部51は、車載カメラ20の撮像によって得られた画像データ等に基づいて、自車両に接近している他者(歩行者、自転車及び他車両等)が存在するかを判断する(S1)。自車両に接近している他者が存在する場合(S1:YES)、処理はステップS7に移行する。
【0029】
自車両に接近している他者が存在しない場合(S1:NO)、交差点検出部52は、ナビゲーションシステム30からの情報等に基づいて、自車両が交差点に進入しようとしているかを判断する(S2)。自車両が交差点に進入しようとしていない場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0030】
一方、自車両が交差点に進入しようとしている場合(S2:YES)、マーク判断部54は、車載カメラ20からの撮影画像データに基づいて他車両からの認識マークRMが路面上に表示されているかを判断する(S3)。他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていない場合(S3:NO)、処理はステップS7に移行する。
【0031】
他車両からの認識マークRMが路面上に表示されている場合(S3:YES)、道路判断部55は、ナビゲーションシステム30からの情報等に基づいて、自車両が優先道路を走行しているかを判断する(S4)。自車両が優先道路を走行している場合(S4:YES)、優先判断部56は、自車両の通知情報光NIIの照射に先立って他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていたとしても、自車両からの通知情報NIを優先すると判断する(S5)。その後処理はステップS7に移行する。
【0032】
一方、自車両が優先道路を走行していない場合(S4:NO)、優先判断部56は、他車両からの通知情報NIを優先すると判断する(S6)。その後、処理はステップS1に移行する。
【0033】
また、ステップS7において照射制御部53は、通知情報光NIIを路面に照射して通知情報NIを路面上に描画表示させる(S7)。その後、処理はステップS1に移行する。
【0034】
このようにして、本実施形態に係る車両用表示システム1によれば、自車両からの通知情報NIと他車両からの通知情報NIとのどちらを優先して表示すべきかを判断し、その判断結果に応じて光源ユニット10を制御するため、2つの通知情報NIのいずれか一方のみを路面上に表示させることが可能となり、両者が重なり合って見え難くなることを防止できる。従って、路面上に表示される通知情報NIについて視認性を向上させることができる。
【0035】
さらに、優先判断部56は、他車両からの認識マークRMが路面上に表示されているかを判断して自車両と他車両との通知情報NIのどちらを優先すべきかを判断することから、優先判断を行うにあたり車車間通信を行う必要がない。
【0036】
また、自車両が通知情報光NIIを路面に照射させるに先立って他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていると判断した場合、他車両からの通知情報NIを優先すると判断し、自車両の通知情報光NIIについての路面への照射を禁止するため、先に路面上に表示されている通知情報NIを優先して重なりを防止することができる。
【0037】
また、他車両からの認識マークRMが路面上に表示されていると判断された場合に、道路判断部55により自車両が優先道路を走行していると判断されたとき、自車両からの通知情報NIを優先すると判断し、光源ユニット10を制御して通知情報光NIIを路面に照射させる。このため、優先道路を走行中の車両という一時停止しない側の車両の通知情報NIが優先されることとなり、重なりを防止することができる。
【0038】
なお、この場合において優先道路でない道路を走行する他車両は、路面上に表示された自車両の認識マークRMを認識し、自己が優先道路を走行中でないことから、通知情報光NIIの路面への照射を禁止することとなる。
【0039】
また、認識マークRMは、周波数150Hz以上で点滅する挙動を示すものであるため、運転者等の人にはちらつきの煩わしさを感じさせることなく、光源ユニット10には点滅の挙動を認識させることができる。
【0040】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、実施形態同士の技術や公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0041】
例えば上記認識マークRMは、周波数150Hz以上で点滅するという所定挙動を示すものであるが、これに限らず、所定挙動は、例えば点滅周波数が定められた規則で変化するものであったり、形状が定められた規則で変化するものであったりしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 :車両用表示システム
10 :光源ユニット(照射手段)
20 :車載カメラ(撮像手段)
30 :ナビゲーションシステム
40 :レーダユニット
50 :制御装置
51 :他者検出部
52 :交差点検出部
53 :照射制御部(照射制御手段)
54 :マーク判断部(マーク判断手段)
55 :道路判断部(道路判断手段)
56 :優先判断部(優先判断手段)
NI :通知情報
NII :通知情報光
RM :認識マーク
RMI :認識マーク光
図1
図2
図3
図4
図5