(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】電力管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230502BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230502BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230502BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230502BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20230502BHJP
【FI】
H02J3/00 180
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
G06Q50/06
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2019021182
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145178(WO,A1)
【文献】特開2012-060761(JP,A)
【文献】特開2012-235644(JP,A)
【文献】特開2016-067195(JP,A)
【文献】特開2012-055078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-10/10
G06Q 30/00-30/08
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
G16Z 99/00
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー源を用いて発電を行う複数の発電設備と、前記複数の発電設備によって発電された余剰電力を消費する拠点施設と、が設置されている地域コミュニティからの売電要求に応じて、前記複数の発電設備によって発電された余剰電力を一旦買い取るための処理を行う第1処理装置と、
前記拠点施設で電力を消費することを前提として、
所定期間を単位として前記拠点施設における全消費電力量が全買取電力量を超えているか否かを判定し、前記全消費電力量が前記全買取電力量を超えていない場合、前記全消費電力量の分の電力量に対して既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行い、前記全消費電力量が前記全買取電力量を超えている場合、前記全消費電力量のうち、前記全買取電力量までの分の電力量に対して前記既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行うとともに、前記全買取電力量を超える分の電力量に対して前記既定の電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行う第2処理装置と、
を備えたことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記第1処理装置は、前記余剰電力を既定の買取単価よりも高い買取単価で買い取るための処理を行う
ことを特徴とする請求項
1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記余剰電力は、前記複数の発電設備が発電した電力のうち、前記地域コミュニティを形成する複数の地域住民の家屋それぞれで消費しきれない電力である
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記発電設備は、太陽光を再生可能エネルギー源とする発電設備である
ことを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽光発電設備を所有する地域住民(需要家)が集まって地域コミュニティを形成し、太陽光発電設備の発電電力の少なくとも一部を地域コミュニティ内の拠点施設で消費し、太陽光発電設備の余剰電力を電力会社等に売電する仕組みが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、太陽光発電設備の消費電力を固定価格で買い取る制度(FIT)の適用期間が終了すると、需要家にとって、太陽光発電設備の余剰電力を売電したときの価格に比べて、余剰電力に相当する電力を買電するときの価格の方が高くなるため、スマートメータを介して太陽光発電設備から拠点施設へ電力を供給するとき、電気料金の売買損失が生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、スマートメータを介して太陽光発電設備から拠点施設へ電力を供給するとき、電気料金の売買損失を抑えて地域コミュニティ内で発電された電力を有効に消費することが可能な電力管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明は、電力管理システムであって、再生可能エネルギー源を用いて発電を行う複数の発電設備と、前記複数の発電設備によって発電された余剰電力を消費する拠点施設と、が設置されている地域コミュニティからの売電要求に応じて、前記複数の発電設備によって発電された余剰電力を一旦買い取るための処理を行う第1処理装置と、前記拠点施設で電力を消費することを前提として、所定期間を単位として前記拠点施設における全消費電力量が全買取電力量を超えているか否かを判定し、前記全消費電力量が前記全買取電力量を超えていない場合、前記全消費電力量の分の電力量に対して既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行い、前記全消費電力量が前記全買取電力量を超えている場合、前記全消費電力量のうち、前記全買取電力量までの分の電力量に対して前記既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行うとともに、前記全買取電力量を超える分の電力量に対して前記既定の電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行う第2処理装置と、を備える。
【0007】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スマートメータを介して太陽光発電設備から拠点施設へ余剰電力を供給するとき、電気料金の売買損失を抑えて地域コミュニティ内で発電された電力を有効に消費することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る電力管理システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る電力管理システムの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る電力管理システムに用いられる地域コミュニティリストの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る電力管理システムの買取処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る電力管理システムの売渡処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
===電力管理システムを用いる全体構成===
図1は、本実施形態に係る電力管理システムを用いる全体構成の一例を示す図である。
【0012】
電力管理システム100は、地域コミュニティ200内で発電された電力を地域コミュニティ200内で有効に使用することを支援するためのシステムであって、例えば電力会社等の一般電気事業者によって運営されることとする。
【0013】
地域コミュニティ200は、需要家である地域住民が相互の交流を通して地域の活性化を図るために集まって形成される集団である。地域コミュニティ200内には、複数の地域住民の家屋210、複数の太陽光発電設備220、拠点施設230、蓄電池240が存在することとする。
【0014】
複数の太陽光発電設備220は、太陽光を再生可能エネルギー源として発電を行う設備であって、複数の地域住民の家屋210にそれぞれ設置されている。拠点施設230は、複数の地域住民が共同で利用することが可能な施設(例えば公民館、体育館)である。拠点施設230は、地域コミュニティ200内に複数存在していてもよい。蓄電池240は、拠点施設230で消費するための電力を予め充電しておく二次電池である。蓄電池240は、充放電の際の電力損失を考慮すると、拠点施設230に設置することが望ましい。
【0015】
地域住民の家屋210、太陽光発電設備220、拠点施設230、蓄電池240は、電力系統310に接続されている。又、地域住民の家屋210及び拠点施設230には、電力の使用状況を把握するためのスマートメータ320が設置されている。
【0016】
地域住民の家屋210では、天候や時間帯に応じて、電力系統310から供給される電力と、家屋210に設置されている太陽光発電設備220によって発電された電力と、の何れか一方の電力を選択的に消費する。拠点施設230では、天候や時間帯に応じて、電力系統310から供給される電力と、複数の太陽光発電設備220によって発電された余剰電力と、の何れか一方の電力を選択的に消費する。蓄電池240は、天候や時間帯に応じて、電力系統310から供給される電力と、複数の太陽光発電設備220によって発電された余剰電力と、の何れか一方の電力を充電し、拠点施設230からの要求に応じて充電されている電力を放電する。
【0017】
複数の太陽光発電設備220によって発電された電力は、複数の地域住民の家屋210でそれぞれ消費される一方、複数の地域住民の家屋210それぞれで消費しきれない余剰電力は、拠点施設230でリアルタイムに消費されるとともに蓄電池240にも充電される。そして、複数の太陽光発電設備220の発電電力のうち、複数の地域住民の家屋210及び拠点施設230で消費しきれず、且つ、蓄電池240にも充電しきれない電力は、電力管理システム100を通して一時的に預かることとなる。
【0018】
===電力管理システム===
図2は、本実施形態に係る電力管理システムの一例を示す図である。
図3は、本実施形態に係る電力管理システムに用いられる地域コミュニティリストの一例を示す図である。 電力管理システム100は、太陽光発電設備220によって発電された電力が地域コミュニティ200内で有効に消費されるように、第1処理装置110及び第2処理装置120を含んで構成されている。
【0019】
第1処理装置110は、地域住民の家屋210からの売電要求に応じて、太陽光発電装置220の余剰電力を、一時的に預かることを目的として既定の買取単価よりも高い買取単価で買い取るための処理を行う。一方、第2処理装置120は、一時的に預かっている余剰電力に相当する分の電力を既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価で売り渡すための処理を行う。ここで、電力管理システム100の運営者にとって、地域コミュニティ200との間で上記のような電力の管理を行うだけでは損失を生じるが、電力管理システム100の運営を通して運営者と電力供給契約を結ぶ地域住民を増やすことによって、利益を得ることが可能となる。
【0020】
第1処理装置110は、記憶部111、受信部112、判定部113、買取部114を含んで構成されている。
【0021】
記憶部111には、スマートメータ320に割り当てられた固有の識別情報を基準として、地域コミュニティ200に対して地域住民の家屋210、太陽光発電設備220、拠点施設230を対応付けた地域コミュニティリスト400が記憶されている。
【0022】
太陽光発電装置220の余剰電力を売電する場合、地域住民からの指示に従ってスマートメータ320から売電要求が送信される。受信部112は、スマートメータ320から送信されてくる売電要求を受信する。
【0023】
判定部113は、受信部112によって受信された売電要求が地域コミュニティ200内の地域住民の家屋210から送信されているか否かを判定する。具体的には、判定部113は、売電要求に含まれているスマートメータ320を示す識別情報と、地域コミュニティリスト400に登録されている全てのスマートメータ320の識別情報と、を比較し、前者の識別情報が後者の識別情報の何れかと一致した場合、売電要求が地域コミュニティ200内に存在する地域住民の家屋210に設置されたスマートメータ320から送信されているものと判定する。
【0024】
買取部114は、売電要求が地域コミュニティ200内に存在する地域住民の家屋210に設置されたスマートメータ320から送信されていると判定された場合、太陽光発電設備220の余剰電力を、一時的に預かることを目的として、既定の買取単価よりも高い買取単価で買い取るための処理を行う。このとき、買取部114は、地域コミュニティリスト400内の該当するスマートメータ320の欄に対して、売電要求に応じて太陽光発電設備220の余剰電力を買い取った余剰電力量(買取電力量)を記憶させる。
【0025】
第2処理装置120は、受信部121、判定部122、売渡部123を含んで構成されている。
【0026】
受信部121は、拠点施設230に設置されているスマートメータ320から、拠点施設230における電力消費量を示す情報を受信する。
【0027】
判定部122は、所定期間(例えば1日、1週間、1か月)を単位として、拠点施設230の消費電力量が全買取電力量を超えているか否かを判定する。具体的には、拠点施設230における消費電力量と、地域コミュニティリスト400内に記憶されている全余剰電力量と、を比較する。
【0028】
売渡部123は、拠点施設230における消費電力量が地域コミュニティリスト400内に記憶されている全余剰電力量を超えていない場合、拠点施設230における全消費電力量に対して既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行う。一方、売渡部123は、拠点施設230における消費電力量が地域コミュニティリスト400内に記憶されている全余剰電力量を超えている場合、拠点施設230における全消費電力量のうち、全余剰電力量までの分の電力量に対しては既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行い、全余剰電力量を超える分の電力量に対しては既定の電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行う。このとき、売渡部123は、地域コミュニティリスト400に対して、上記の処理を行うために、拠点施設230における消費電力量と相殺された余剰電力量の欄の値を更新する。例えば、全ての余剰電力量を売り渡した場合、余剰電力量の欄の値は“0”と更新される。
【0029】
尚、第1処理装置110及び第2処理装置120の機能は、マイクロプロセッサのソフトウエア処理によって実現される。
【0030】
===電力管理システムの動作の一例===
図4は、本実施形態に係る電力管理システムの買取処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る電力管理システムの売渡処理の一例を示すフローチャートである。
【0031】
<<買取処理>>
先ず、受信部112がスマートメータ320から太陽光発電設備220の余剰電力の売電要求を受信すると(ステップS10)、判定部113は、上記の売電要求が地域コミュニティ200内における地域住民の家屋210に設置されているスマートメータ320から送信されているか否かを判定する(ステップS11)。
【0032】
次に、上記の売電要求が地域コミュニティ200内における地域住民の家屋210に設置されているスマートメータ320から送信されていると判定部113が判定した場合(ステップS11:YES)、買取部114は、太陽光発電設備220の余剰電力を既定の買取単価よりも高い買取単価で買い取るための処理を行い、地域コミュニティリスト400内の該当するスマートメータ320の欄に対して、余剰電力量を記憶させる(ステップS12)。
【0033】
<<売渡処理>>
例えば、以下に説明する処理は、地域コミュニティ200を単位として、前日に買い取られた太陽光発電設備220の全余剰電力を対象として当日に行われる処理であることとする。
【0034】
先ず、受信部121が、地域コミュニティ200内における拠点施設230に設置されたスマートメータ320から消費電力量を示す情報を受信すると(ステップS20)、判定部122は、拠点施設230における消費電力量が既に買い取っている全余剰電力量を超えているか否かを判定する(ステップS21)。
【0035】
次に、拠点施設230における消費電力量が既に買い取っている全余剰電力量を超えていないと判定部122が判定した場合(ステップS21:YES)、拠点施設230における全消費電力量に対して既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理(売渡処理1)を行う。このとき、売渡部123は、地域コミュニティリスト400に対して、売渡処理1を行うために、拠点施設230における消費電力量と相殺された余剰電力量の欄の値を更新する(ステップS22)。
【0036】
一方、拠点施設230における消費電力量が既に買い取っている全余剰電力量を超えていると判定部122が判定した場合(ステップS21:NO)、拠点施設230における全消費電力量のうち、全余剰電力量までの分の電力量に対しては既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価を適用して売り渡すための処理を行い、全余剰電力量を超える分の電力量に対しては既定の電気料金単価を適用して売り渡すための処理(売渡処理2)を行う。このとき、地域コミュニティリスト400に対して、売渡処理2を行うために、拠点施設230における消費電力量と相殺された余剰電力量の欄の値を更新する(ステップS23)。
【0037】
尚、売渡処理1,2において、既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価で売り渡すための処理を行う代わりに、既定の電気料金単価で売り渡すための処理を行うとともに、地域コミュニティ200内の地域住民が利用可能なポイント等を付与することとしてもよい。
【0038】
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る電力管理システムは、複数の太陽光発電設備220と、複数の太陽光発電設備220によって発電された余剰電力を消費する拠点施設230と、が設置されている地域コミュニティ200からの売電要求に応じて、複数の太陽光発電設備220によって発電された余剰電力を一旦買い取るための処理を行う第1処理装置110と、拠点施設230で電力を消費することを前提として、上記の余剰電力に相当する電力を地域コミュニティ200にインセンティブを与える形で売り渡すための処理を行う第2処理装置120と、を備えている。
【0039】
第2処理装置120は、上記の余剰電力に相当する電力を既定の電気料金単価よりも安い電気料金単価で売り渡すための処理を行うこととしてもよい。又、第2処理装置120は、上記の余剰電力に相当する電力を既定の電気料金単価で売り渡すための処理を行うとともに、地域コミュニティ200にポイント等の特典を付与するための処理を行うこととしてもよい。
【0040】
第1処理装置110は、上記の余剰電力を既定の買取単価よりも高い買取単価で買い取るための処理を行うこととしてもよい。
【0041】
上記の余剰電力は、複数の太陽光発電設備220が発電した電力のうち、拠点施設230で消費しきれない電力であることとしてもよい。又、拠点施設230には、複数の太陽光発電設備220によって発電された電力を蓄電する蓄電池240が設置され、上記の余剰電力は、複数の太陽光発電設備220が発電した電力のうち、蓄電池240に蓄電しきれない電力であることとしてもよい。
【0042】
このように、本実施形態によれば、スマートメータ320を介して太陽光発電設備220から拠点施設230へ電力を供給するとき、電気料金の売買損失を抑えて地域コミュニティ200内で発電された電力を有効に消費することが可能となる。
【0043】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
100 電力管理システム
110 第1処理装置
111 記憶部
112,121 受信部
113,122 判定部
114 買取部
120 第2処理装置
123 売渡部
200 地域コミュニティ
210 地域住民の家屋
220 太陽光発電設備
230 拠点施設
240 蓄電池