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特許7272008アミン組成物、アミン化合物、製造方法およびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】アミン組成物、アミン化合物、製造方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/27 20060101AFI20230502BHJP
   C07C 209/60 20060101ALI20230502BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230502BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20230502BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230502BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C07C211/27 CSP
C07C209/60
C08G59/50
C08G18/32 037
C08G18/10
C08G69/26
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019032382
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020132609
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】浅井 唯我
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 与一
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-060193(JP,A)
【文献】特開平04-031424(JP,A)
【文献】特開平04-282347(JP,A)
【文献】Organic Letters,2017年,19(24),6728-6731
【文献】Organic & Biomolecular Chemistry,2016年,14(1),69-73
【文献】Magnetic Resonance in Chemistry,1990年,28(12),1045-50
【文献】RN 1704206-01-8 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2015年05月14日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 1698716-49-2 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2015年05月05日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 1344602-57-8 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2011年11月11日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 1344523-17-6 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2011年11月11日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 1247766-83-1 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2010年10月28日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 1135683-40-7 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2009年04月17日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 2167469-00-1 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2018年01月01日,検索日:29 AUG 2022
【文献】RN 2165699-35-2 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2017年12月27日,検索日:29 AUG 2022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を含有する、アミン組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは無置換の環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立に無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項2】
式(1)中のAがノルボルナンジイル基である、請求項1に記載のアミン組成物。
【請求項3】
式(1)中のBおよびCがいずれも無置換のフェニル基である、請求項1または2に記載のアミン組成物。
【請求項4】
さらに、式(2)で表される化合物を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアミン組成物。
【化2】
(式(2)中、Dは無置換の環状アルケニル基であり、Eは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項5】
式(2)中の、Dがノルボルネニル基であり、Eが無置換のフェニル基である、請求項4に記載のアミン組成物。
【請求項6】
さらに、式(3)で表される化合物を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のアミン組成物。
【化3】
(式(3)中、Fは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。
【請求項7】
式(3)中のFが無置換のフェニル基である、請求項6に記載のアミン組成物。
【請求項8】
式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法であって、
塩基組成物存在下、環状アルカジエンと式(3)で表される化合物とを反応させることを含む、製造方法。
【化4】
(式(1)中、Aは無置換の環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立に無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【化5】
(式(3)中、Fは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。
【請求項9】
式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法であって、
塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることを含む、製造方法。
【化6】
(式(1)中、Aは無置換の環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立に無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【化7】
(式(2)中、Dは無置換の環状アルケニル基であり、Eは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【化8】
(式(3)中、Fは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項10】
さらに、塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることを含む、請求項8に記載の製造方法。
【化9】
(式(2)中、Dは無置換の環状アルケニル基であり、Eは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項11】
前記塩基組成物が、炭酸セシウムおよび水酸化セシウムから選ばれるセシウム含有化合物(a)と、金属ナトリウム(b)とを含有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含む組成物を製造する際の合成反応において、前記塩基組成物を2回以上に分割して添加する、請求項8~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
式(1)で表される、アミン化合物。
【化10】
(式(1)中、Aは無置換の環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立に無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項14】
式(1)中のAが、ノルボルナンジイル基である、請求項13に記載のアミン化合物。
【請求項15】
前記式(1)中のBおよびCが、いずれも無置換のフェニル基である、請求項13または14に記載のアミン化合物。
【請求項16】
式(2)で表される、アミン化合物。
【化11】
(式(2)中、Dはノルボルネニル基であり、Eは無置換のアリール基または無置換のヘテロアリール基である。)
【請求項17】
前記式(2)中のEが無置換のフェニル基である、請求項16に記載のアミン化合物。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか1項に記載のアミン組成物、あるいは請求項13~15のいずれか1項に記載のアミン化合物を含有する、エポキシ樹脂硬化剤。
【請求項19】
請求項18に記載のエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂を含有する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項20】
請求項19に記載のエポキシ樹脂組成物から形成された、硬化物。
【請求項21】
請求項1~7のいずれか1項に記載のアミン組成物、あるいは請求項13~15のいずれか1項に記載のアミン化合物を含有する、ウレタンプレポリマー硬化剤。
【請求項22】
請求項21に記載のウレタンプレポリマー硬化剤とウレタンプレポリマーとを含有する、ポリウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項23】
請求項22に記載のポリウレタンウレア樹脂組成物から形成された、硬化物。
【請求項24】
請求項1~7のいずれか1項に記載のアミン組成物、あるいは請求項13~15のいずれか1項に記載のアミン化合物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物とを含有する、ポリアミドワニス。
【請求項25】
請求項24に記載のポリアミドワニスの重縮合物である、ポリアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミン組成物およびアミン化合物に関する。また、これらの製造方法、ならびに、これらを利用した、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、硬化物、ウレタンプレポリマー硬化剤、ポリウレタンウレア樹脂組成物、ポリアミドワニスおよびポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂を始めとする各種樹脂の硬化剤として、官能基にアミノ基を含むアミン化合物は有用である(例えば、特許文献1~4)。また、アミン化合物は、ポリアミドやポリウレアの合成原料としても利用され、コーティング材料や成形品の材料として広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-024835号公報
【文献】特表2016-536287号公報
【文献】国際公開第2017/175740号
【文献】国際公開第2012/105303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した各用途を始め、アミン化合物およびこれを含む組成物については、広く研究開発の対象となり諸特性の改良が進められてきている。一方、近年の各分野における技術の進展や用途の拡大を鑑みると、材料の選択肢をさらに拡充することが求められる。
そこで本発明は、新規なアミン組成物、これに含まれるアミン化合物、およびそれらの製造方法、前記アミン組成物等を用いたエポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、ポリウレタンプレポリマー硬化剤、ポリウレタンウレア樹脂組成物、その硬化物、ポリアミドワニス、ポリアミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者らが新規なアミン化合物の合成について研究開発を進めた結果、環状アルキレン基(好ましくは、ノルボルナンジイル基)を有する新規アミン化合物の合成に成功した。本発明は、かかる新規化合物の合成に基づき上記の課題を解決するものであり、具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<26>により、上記課題は解決された。
【0006】
<1>式(1)で表される化合物を含有する、アミン組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<2>式(1)中のAがノルボルナンジイル基である、<1>に記載のアミン組成物。
<3>式(1)中のBおよびCがいずれもフェニル基を含む、<1>または<2>に記載のアミン組成物。
<4>さらに、式(2)で表される化合物を含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載のアミン組成物。
【化2】
(式(2)中、Dは環状アルケニル基であり、Eはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<5>式(2)中の、Dがノルボルネニル基であり、Eがフェニル基を含む、<4>に記載のアミン組成物。
<6>さらに、式(3)で表される化合物を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のアミン組成物。
【化3】
(式(3)中、Fはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<7>式(3)中のFがフェニル基を含む、<6>に記載のアミン組成物。
<8>式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法であって、塩基組成物存在下、環状アルカジエンと式(3)で表される化合物とを反応させることを含む、製造方法。
【化4】
(式(1)中、Aは環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【化5】
(式(3)中、Fはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<9>式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含むアミン組成物の製造方法であって、塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることを含む、製造方法。
【化6】
(式(1)中、Aは環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【化7】
(式(2)中、Dは環状アルケニル基であり、Eはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【化8】
(式(3)中、Fはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<10>さらに、塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることを含む、<8>に記載の製造方法。
【化9】
(式(2)中、Dは環状アルケニル基であり、Eはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<11>前記塩基組成物が、炭酸セシウムおよび水酸化セシウムから選ばれるセシウム含有化合物(a)と、金属ナトリウム(b)とを含有する、<8>~<10>のいずれか1つに記載の製造方法。
<12>前記式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物を含む組成物を製造する際の合成反応において、前記塩基組成物を2回以上に分割して添加する、<8>~<11>のいずれか1つに記載の製造方法。
<13>式(1)で表される、アミン化合物。
【化10】
(式(1)中、Aは環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<14>式(1)中のAが、ノルボルナンジイル基である、<13>に記載のアミン化合物。
<15>前記式(1)中のBおよびCが、いずれもフェニル基を含む、<13>または<14>に記載のアミン化合物。
<16>式(2)で表される、アミン化合物。
【化11】
(式(2)中、Dは環状アルケニル基であり、Eはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
<17>前記式(2)中のDがノルボルネニル基である、<16>に記載のアミン化合物。
<18>前記式(2)中のEがフェニル基を含む、<16>または<17>に記載のアミン化合物。
<19><1>~<7>のいずれか1つに記載のアミン組成物、あるいは<13>~<15>のいずれか1つに記載のアミン化合物を含有する、エポキシ樹脂硬化剤。
<20><19>に記載のエポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂を含有する、エポキシ樹脂組成物。
<21><20>に記載のエポキシ樹脂組成物から形成された、硬化物。
<22><1>~<7>のいずれか1つに記載のアミン組成物、あるいは<13>~<15>のいずれか1つに記載のアミン化合物を含有する、ウレタンプレポリマー硬化剤。
<23><22>に記載のウレタンプレポリマー硬化剤とウレタンプレポリマーとを含有する、ポリウレタンウレア樹脂組成物。
<24><23>に記載のポリウレタンウレア樹脂組成物から形成された、硬化物。
<25><1>~<7>のいずれか1つに記載のアミン組成物、あるいは<13>~<15>のいずれか1つに記載のアミン化合物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物とを含有する、ポリアミドワニス。
<26><25>に記載のポリアミドワニスの重縮合物である、ポリアミド。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規なアミン化合物、これを含むアミン組成物、およびそれらの製造方法、これを用いたエポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、その硬化物、ポリウレタンプレポリマー硬化剤、ポリウレタンウレア樹脂組成物、その硬化物、ポリアミドワニス、ポリアミドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
<アミン組成物・アミン化合物>
本実施形態に係るアミン組成物は、式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化12】
(式(1)中、Aは環状アルキレン基であり、BおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【0010】
式(1)中、Aは環状アルキレン基である。すなわち、環状アルキレン基は、式中のメチン基(CH)に直接結合している。
ここでの環状アルキレン基は置換基を有していてもよい。しかしながら、環状アルキレン基は無置換であることが好ましい。
【0011】
環状アルキレン基としては、炭素数3~10の環状アルキレン基であることが好ましく、炭素数5~8の環状アルキレン基であることがより好ましい。また、架橋構造を有する環状アルキレン基であることが好ましい。
具体的にはAは、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、中でもノルボルナンジイル基であることが特に好ましい。ノルボルナンジイル基としては、式(N1)または(N2)で表されるものが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【0012】
【化13】
【0013】
式(1)中のBおよびCはそれぞれ独立にアリール基またはヘテロアリール基を含み、アリール基が好ましい。
ここでのアリール基またはヘテロアリール基はアミノメチル基などの置換基を有していても、連結基を介して式中のメチン基(CH)に置換していてもよい。しかしながら、アリール基またはヘテロアリール基は無置換であることが好ましい。また、アリール基またはヘテロアリール基は連結基を介さずに式中のメチン基(CH)に結合していることが好ましい。
なお、本明細書において「アリール基」は置換または無置換の芳香族炭化水素基を意味し、「ヘテロアリール基」が含まれない意味である。
アリール基としては、炭素数6~22のものが好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
ヘテロアリール基としては、炭素数1~24が好ましく、2~12がより好ましく、3~6がさらに好ましい。ヘテロアリール基として具体的には、チエニル基、フリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリル基、トリアジニル基が挙げられる。
【0014】
式(1)で表される化合物の分子量は200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、280以上であることがさらに好ましい。上限値としては、1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本実施形態に係るアミン組成物において、上記式(1)で表されるアミン化合物の含有量は特に限定されないが、蒸留等により高濃度の組成物を得る場合には、上記式(1)で表される化合物の濃度が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特になく上記式(1)で表される化合物の濃度が100質量%の組成物としてもよい。
【0016】
本実施形態に係るアミン組成物は、さらに、式(2)で表される化合物を含有していてもよい。
【化14】
(式(2)中、Dは環状アルケニル基であり、Eはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【0017】
式(2)中、Dは環状アルケニル基である。すなわち、環状アルケニル基は連結基を介さずに式中のメチン基(CH)に置換している。
環状アルケニル基は置換基を有していてもよい。しかしながら、環状アルケニル基は無置換であることが好ましい。
ここでの環状アルケニル基は、炭素数3~10の環状アルキレン基であることが好ましく、炭素数5~8の環状アルキレン基であることがより好ましい。また、架橋構造を有する環状アルキレン基であることが好ましい。
環状アルケニル基に含まれる二重結合の数は1つまたは2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。具体的にDは、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、シクロオクテニル基が挙げられ、中でもノルボルネニル基であることが特に好ましい。ノルボルネル基としては、式(N3)または(N4)で表されるものが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【0018】
【化15】
【0019】
式(2)中、Eは、式(1)におけるBと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0020】
式(2)で表される化合物の分子量は100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、180以上であることがさらに好ましい。上限値としては、800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本実施形態に係るアミン組成物において、上記式(2)で表される化合物の含有量は特に限定されないが、蒸留等により高濃度の組成物を得る場合には、上記式(2)で表される化合物の濃度が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特になく上記式(2)で表される化合物の濃度が100質量%の組成物としてもよい。
なお、詳細は後述するが、式(2)で表される化合物は式(1)で表される化合物の原料化合物あるいは合成中間化合物(中間体)となる。
【0022】
本実施形態に係るアミン組成物は、さらに、式(3)で表される化合物を含有していてもよい。
【化16】
(式(3)中、Fはアリール基またはヘテロアリール基を含む。)
【0023】
式(3)中、Fはアリール基またはヘテロアリール基を含み、アリール基が好ましい。
Fは、式(1)におけるBと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(3)で表される化合物としては、ベンジルアミンが例示される。
【0024】
本実施形態に係るアミン組成物において、上記式(3)で表される化合物は式(1)で表される化合物および(2)で表される化合物を得る際の出発原料であり、製品における濃度は低減されていることが好ましい。かかる観点から、蒸留等により高濃度の組成物を得る場合には、上記式(3)で表される化合物の濃度が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。下限は特になく上記式(3)で表される化合物の濃度が0.1質量%以上であることが実際的である。
本発明における合成反応では、アミン類とアルカリ金属を同時に使用する場合があり、Benkeser還元によって式(1)で表される化合物や式(2)で表される化合物におけるアリール基またはヘテロアリール基の芳香環が、例えば1,3-シクロヘキサジエン環や1,4-シクロヘキサジエン環などに還元された化合物が副生物として含まれる可能性がある。また、本反応では、式(1)~(3)の化合物における2つのアミノ基間で脱アンモニア型や脱水素型の縮合反応が起こり、イミン化合物やα,β-ジアミノ化合物が副生物として含まれる可能性がある。
【0025】
<アミン化合物・アミン組成物の製造方法>
式(1)で表される化合物およびアミン組成物は、塩基組成物存在下、環状アルカジエンと式(3)で表される化合物とを反応させることによって得られる。
また、式(1)で表される化合物およびアミン組成物は、塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることによっても得られる。
さらに、式(1)で表される化合物およびアミン組成物は、塩基組成物存在下、環状アルカジエンと式(3)で表される化合物とを反応させること、および、塩基組成物存在下、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させることによっても得られる。
【0026】
<<環状アルカジエン>>
環状アルカジエンとしては、3~8員環の環状アルカジエンであることが好ましく、5員環または6員環の環状アルカジエンであることがより好ましく、6員環の環状アルカジエンであることがさらに好ましい。環状アルカジエンの具体例としては、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、シクロオクタジエン等が挙げられ、中でもノルボルナジエンであることが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法において、環状アルカジエンと式(3)で表される化合物との比率は任意に設定することができる。具体的には、環状アルカジエンに対して、式(3)で表される化合物を、モル比(式(3)/環状アルカジエン)で、0.4倍以上であることが好ましく、0.8倍以上であることがより好ましく、1.6倍以上であることがさらに好ましく、3.6倍以上であることが一層好ましい。上限としては、10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。
【0028】
一方、式(2)で表される化合物に対する、式(3)で表される化合物のモル比率(式(3)/式(2))は、0.2倍以上であることが好ましく、0.4倍以上であることがより好ましく、0.8倍以上であることがさらに好ましく、1.8以上であることが一層好ましい。上限としては、5.0倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましい。
環状アルカジエン、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
<<塩基組成物>>
塩基組成物としては、アルカリ金属含有化合物(周期表第1元素含有化合物)(a)の少なくとも1種と、金属ナトリウム(b)とを含有する塩基組成物が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属含有化合物(周期表第1元素含有化合物)(a)の少なくとも1種と、アルカリ土類金属含有化合物(周期表第2元素含有化合物)(c)の少なくとも1種と、金属ナトリウム(b)とを含有する組成物が挙げられる。アルカリ土類金属含有化合物(c)を含有することにより、塩基組成物のべたつきを抑え、ハンドリング性を向上することができる。
アルカリ金属含有化合物(a)は、カリウム含有化合物、ルビジウム含有化合物、セシウム含有化合物、フランシウム含有化合物が例示され、カリウム含有化合物、セシウム含有化合物が好ましく、セシウム含有化合物がより好ましい。アルカリ金属含有化合物(a)は、MOH、M CO(Mはアルカリ金属)が好ましい。
アルカリ土類金属含有化合物(c)は、カルシウム含有化合物、マグネシウム含有化合物が好ましく、マグネシウム含有化合物がより好ましい。アルカリ金属土類含有化合物(c)は、M(OH)、MCO、MO(Mはアルカリ土類金属)が好ましい。
本発明で用いる塩基組成物の具体例としては、炭酸セシウムおよび水酸化セシウムから選ばれるセシウム含有化合物と、金属ナトリウムとを含有する組成物が挙げられる。また、特開平10-259147号公報に記載の組成物も挙げられる。
【0030】
アルカリ金属含有化合物(a)は、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記塩基組成物におけるアルカリ金属含有化合物(a)に含まれるアルカリ金属と、金属ナトリウム(b)のモル比(アルカリ金属の物質量:ナトリウムの物質量)は、反応を効率良く進行させる観点から、0.50:1~8.0:1であり、好ましくは1.0:1~4.0:1であり、より好ましくは1.0:1~3.0:1であり、さらに好ましくは1.5:1~2.5:1である。
【0032】
アルカリ土類金属含有化合物(c)の含有量は、アルカリ金属含有化合物(a)および金属ナトリウム(b)の総量を100質量部としたとき、好ましくは30~150質量部であり、より好ましくは40~130質量部であり、さらに好ましくは50~100質量部である。アルカリ土類金属含有化合物(c)の含有量が30質量部以上であることにより、塩基組成物のべたつきを抑えられる傾向にある。また、アルカリ土類金属含有化合物(c)の含有量が150質量部以下であることにより、塩基組成物の触媒としての活性に影響せず、反応を進行させる傾向にある。
アルカリ土類金属含有化合物(c)は、1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記塩基組成物は、アルカリ金属含有化合物(a)と、金属ナトリウム(b)とを含有する混合物を、不活性ガス雰囲気下で100℃~500℃の温度で熱処理することにより製造することができる。アルカリ金属含有化合物(a)および金属ナトリウム(b)を混合する順番は特に限定されない。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を挙げることができる。
塩基組成物の調製における温度は、好ましくは100℃~500℃であり、より好ましくは110℃~300℃であり、さらに好ましくは120℃~280℃である。温度が、100℃~500℃であることにより、金属ナトリウムが融解するために、分散混合しやすく、かつ、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
塩基組成物の調製における加熱時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
【0034】
アルカリ土類金属含有化合物(c)は、アルカリ金属含有化合物(a)および金属ナトリウム(b)の混合物に添加すればよいが、アルカリ金属含有化合物(a)、金属ナトリウム(b)およびアルカリ土類金属含有化合物(c)を混合する順番は特に限定されない。
【0035】
アルカリ金属含有化合物(a)およびアルカリ土類金属含有化合物(c)は吸湿性が高いことから、塩基組成物の調製前に熱処理を加えてもよい。調製前の熱処理は、不活性ガス下または真空下で行うことが好ましい。調製前の熱処理の温度は、不要な水分を取り除くことができる温度であれば特に限定されないが、通常200℃~500℃であり、好ましくは250℃~400℃である。
熱処理の温度を200℃~500℃とすることにより、化合物中の水分を十分に取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。調製前の熱処理の時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に水分を取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。
反応終了後における反応液と塩基組成物とは、分沈降、遠心分離、濾過等の一般的な方法により分離できる。
【0036】
塩基組成物は、式(1)で表される化合物の合成反応において、触媒として作用する一方で不可逆的な反応開始剤としても機能する。したがって、アミン化合物の合成反応の進行に伴って、塩基組成物の系内での量は減少していく。また、一度に大量の塩基組成物を投入すると、発熱が生じて副反応が促進される可能性がある。そこで、式(1)で表される化合物の合成反応に際して、塩基組成物を2回以上に分割して添加することが好ましい。塩基組成物の添加の回数の上限は特にないが、10回以下であることが実際的である。特に、合成反応を無溶媒系で進行させる場合に有益である。
また、塩基組成物を一定速度で連続的あるいは断続的に反応液中に投入してもよい。投入に要する時間は、例えば、0.1~36時間、好ましくは0.5~6時間、より好ましくは2~5時間である。また、投入する速度は一定であってもよいし、経時で変化させてもよい。
【0037】
本実施形態に係る製造方法における塩基組成物の質量は、一般的には、式(3)で表される化合物100質量部に対して、0.01~400質量部、好ましくは0.1~300質量部、より好ましくは1.0~150質量部である。複数回に分けて添加する場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0038】
式(1)で表される化合物の合成反応の反応温度は、適宜調整すればよく、一般的には0~150℃、好ましくは10~120℃の範囲であり、さらに好ましくは10~40℃であり、一層好ましくは10~35℃である。温度を0℃以上とすることにより、充分な反応速度が得られる。
合成反応は、アルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る製造方法においては、溶媒を用いてもよいし、無溶媒で行ってもよい。
溶媒は反応温度や反応物等によって適宜選択される。合成反応で溶媒を用いる場合、得られた反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま式(1)で表される化合物またはアミン組成物として用いてもよく、適宜な後処理を行った後に、式(1)で表される化合物またはアミン組成物として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、蒸留、クロマトグラフィー等の公知の精製を挙げることができる。
反応終了後の塩基組成物を除去するために、ろ過助剤を使用してもよい。ろ過助剤としては、珪藻土、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素などがある。好ましくは、キョーワード600(協和化学工業社製)、セライト503、セライトハイフロスーパーセル、セライトスタンダードスーパーセル、より好ましくはセライトスタンダードスーパーセルである。
【0040】
<エポキシ樹脂組成物>
式(1)で表される化合物およびアミン組成物は、これをエポキシ樹脂の硬化剤として用いることができる。すなわち、本実施形態に係るエポキシ樹脂硬化剤は、本実施形態に係るアミン化合物またはアミン組成物を含有することが好ましい。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂は、通常、一分子中に、2~10のエポキシ基を有し、2~6のエポキシ基を有することが好ましく、2~4のエポキシ基を有することがより好ましく、2つのエポキシ基を有することがさらに好ましい。エポキシ基はグリシジルエーテル基であることが好ましい。エポキシ樹脂は、低分子化合物(例えば、数平均分子量2000未満)であっても、高分子の化合物(ポリマー、例えば、数平均分子量2000以上)であってもよい。ポリマーのエポキシ樹脂は、脂肪族化合物であっても、脂環式化合物であっても、または芳香環を有する化合物であってもよい。特に、エポキシ樹脂は、一分子中に、2つの芳香環および/または2つの脂肪族6員環を有することが好ましく、2つの芳香環を有することがより好ましい。なかでも、エピクロロヒドリンと、2つ以上の反応性水素原子を有する化合物(例えばポリオール)との反応によって得られるエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の原料として具体的には、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)またはその水素化物、ビスフェノールF(4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン)またはその水素化物、テトラブロモビスフェノールA(2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)またはその水素化物、クレゾールをホルムアルデヒドと反応させたノボラック型樹脂、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。エポキシ樹脂組成物に用いうるエポキシ樹脂としては、上記の他、特開2018-83905号公報の段落0036~0039の記載、特開2018-135433号公報の段落0032~0035を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、希釈剤を含まない固形分中で、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。上限としては、89質量%以下であることが好ましく、87質量%以下であることがより好ましく、86質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0043】
エポキシ樹脂組成物は、式(1)で表される化合物およびアミン組成物以外の硬化剤を含んでいてもよい。このような他の硬化剤としては、特許第6177331号公報の段落0029に記載のアミン系硬化剤、特開2011-213983号公報の段落0011~0016に記載のアミン系硬化剤を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0044】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、硬化促進剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、離型剤、強靱化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、流動化剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤または増粘剤等を含んでいてもよい。
【0045】
本実施形態に係る硬化物は、エポキシ樹脂組成物から形成される。硬化物は、建築用塗料、接着剤、自動車部品、航空機用部品、複合材料、プリント基板用材料、重電機器の絶縁含浸材料、エレクトロニクス素子の封止材など、広い分野に用いることができる。また、特開2018-83905号公報の段落0045に記載の用途、特開2018-135433号公報の段落0053に記載の用途、特表2016-527384号公報の段落0039~0043に記載の用途、特開2011-213983号公報の段落0048に記載の用途にも好ましく用いられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0046】
<ポリウレタンウレア樹脂組成物>
式(1)で表されるアミン化合物およびアミン組成物は、ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤として用いることができる。また、本実施形態のポリウレタンウレア樹脂組成物は、上記ウレタンプレポリマー硬化剤とウレタンプレポリマーとを含有することが好ましい。
本実施形態に係る硬化物は、ポリウレタンウレア樹脂組成物から形成される。
【0047】
<ポリアミドワニス>
式(1)で表される化合物およびアミン組成物は、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物を含有するポリアミドワニスとすることができる。このポリアミドワニスを重縮合させたポリアミドを得ることができる。カルボキシル基を有する化合物としては、2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸が好ましい。
【実施例
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<アミン化合物の分析>
(1)ガスクロマトグラフィー(GC)分析
アミン組成物中の各成分の含有量比の測定は、GC分析により以下の方法により行った。
装置:島津製作所社製GC-2025
カラム:アジレント・テクノロジー社製CP-Sil8CBforAmines (0.25μm×0.25 mm×30 m)
カラム温度:80℃で2分間保持し、8℃/分の速度で昇温し、150℃で5分間保持し、15℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持した。
溶媒:2-プロパノール
(2)ガスクロマトグラフ質量(GC-MS)分析
得られたアミン化合物およびアミン組成物中に含まれる各成分の質量分析による構造同定はGC-MS分析により以下の方法により行った。
EIモード
装置:アジレント・テクノロジー社製GC7890A
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB-1MS(0.25μm×0.25mm×30m)
キャリア-ガス:ヘリウム
カラム温度:50℃で2分間保持し、20℃/分の速度で昇温し、320℃で10分間保持した。
質量分析計:日本電子社製AccuTOF GCX
イオン化手法:電子イオン化法(EI
イオン化エネルギー:70eV
イオン源温度:250℃
【0050】
FIモード
装置:アジレント・テクノロジー社製GC7890A
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB-1MS(0.25μm×0.25mm×30m)
カラム温度:50℃で2分間保持し、20℃/分の速度で昇温し、320℃で10分間保持した。
質量分析計:日本電子社製AccuTOF GCX
イオン化手:電界イオン化法(FI
【0051】
<塩基組成物の調製>
磁気撹拌子を備えた200mLのナスフラスコにアルゴン雰囲気下で、300℃で減圧乾燥させた炭酸セシウム(CsCO,富士フイルム和光純薬社製)23.375g、金属ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)1.65g、300℃で減圧乾燥させた酸化マグネシウム(MgO,富士フイルム和光純薬社製)17.6gを仕込んだ。このナスフラスコをアルミブロックヒータースターラーにて250℃、1時間加熱撹拌した後に、アルミブロックヒータースターラーから取り外し、空冷で室温まで冷却することにより塩基組成物を得た。
【0052】
実施例1
200mLナスフラスコにアルゴン雰囲気下で、磁気撹拌子、ベンジルアミン10.716g、ノルボルナジエン2.304gを入れた後に、塩基組成物0.996gを加え、アルゴン雰囲気下、25℃、500rpmで反応を開始した。反応開始から60分、120分、180分、240分経過後に追加の塩基組成物をアルゴン雰囲気下で各々0.996g加えた。反応開始から360分経過後に、イソプロピルアルコール16mLを加えて反応を停止させた。
得られた懸濁液にクロロホルム50mL、セライトスタンダードスーパーセル(純正化学社製)40cmを加え、ろ紙No.5C(桐山製作所社製)および桐山ろうとSB-60(桐山製作所社製、60mmφ)を用いて吸引ろ過した。ろ液に対して0.5MのHClとクロロホルムを加えて分液操作を行い、水相を回収した。次いで1M水酸化ナトリウムとクロロホルムを加えて再度分液操作後有機相を回収し、減圧下でクロロホルムを留去することでアミン組成物を得た。
得られたアミン組成物について、GC-MS分析を行ったところ、式(1-1)または(1-2)で表される組成式C2126のアミン化合物a~f、式(2-1)で表される組成式C1417Nのアミン化合物gおよびh、およびベンジルアミンを含む組成物であることが分かった。GC分析により、ベンジルアミンの転化率は47%、ノルボルナジエンの転化率は99%以上、gおよびhのノルボルナジエンを基準とした収率は49%、a~fのノルボルナジエンを基準とした収率は19%であった。得られたクロマトグラムより、a~hおよびベンジルアミンの保持時間および溶媒を除いた面積比率は以下の通りであった。
【0053】
ベンジルアミン(保持時間4.5分):49.1%
アミン化合物a(保持時間25.08分):1.1%
アミン化合物b(保持時間25.51分):2.4%
アミン化合物c(保持時間25.87分):1.9%
アミン化合物d(保持時間26.10分):1.7%
アミン化合物e(保持時間26.17分):3.5%
アミン化合物f(保持時間26.23分):1.8%
アミン化合物g(保持時間17.28分):10.6%
アミン化合物h(保持時間17.56分):10.7%
【0054】
【化17】
【化18】
【化19】
【0055】
<アミン組成物の低沸点成分除去>
実施例1で得られたアミン組成物を真空度0.25kPaで蒸留し、ベンジルアミンを留去した後、式(2-1)で表されるアミン化合物gおよびhを主成分とするアミン組成物を留分として回収した。そして未留出の蒸留塔底として、式(1-1)または(1-2)で表されるアミン化合物a~fを主成分とするアミン組成物を得た。
【0056】
<アミン化合物の蒸留精製>
実施例1で得られたアミン組成物を真空度0.008kPaで蒸留し、ベンジルアミンおよび式(2-1)で表されるアミン化合物(gおよびh)を留去した後、蒸留塔底を220~250℃に加温することにより、式(1-1)または(1-2)で表されるアミン化合物a~fを主成分とするアミン組成物(アミン組成物Xと称する)を留出液として得た。
【0057】
さらに、アミン組成物XのNMR測定により、式(1-1)と式(1-2)の芳香族水素に該当するケミカルシフト7.15~7.50ppmのピーク面積とベンジル位水素に該当するケミカルシフト3.20~3.55ppmのピーク面積の比が5対1であり、基質に用いたベンジルアミンのベンジル位炭素上で結合形成反応が起こったことを確認した。
【0058】
<エポキシ樹脂組成物の調製>
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル製、商品名:JER828 、エポキシ当量:186g/eq、以下、DGEBAと略する。)(0.329g)と蒸留精製により得たアミン組成物X(0.135g)を混合しエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0059】
<エポキシ樹脂硬化物の調製>
示差走査熱量分析(以下、DSCと略する)用アルミパンに上記で調製したエポキシ樹脂組成物を10mg充填した。窒素雰囲気下、DSC装置内で5℃/分の昇温速度で30℃から280℃まで昇温し、280℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で急冷させた。以上のとおりにして、エポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。
【0060】
<エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の測定>
上記で得たエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度(以下、Tgと略する)について、示差走査熱量計「DSC6220」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、5℃/分の昇温速度で30~250℃まで示差走査熱量分析を行うことにより求めた。
エポキシ樹脂硬化物のTg:178.1℃
【0061】
実施例2
<環状アミノアルケンからのアミン合成>
試験管型反応器にアルゴン雰囲気下で、磁気撹拌子、蒸留により回収した式(2-1)で表されるアミン化合物gおよびhを主成分とするアミン組成物Y(0.997g)、ベンジルアミン(1.072g)を入れた後に、塩基組成物(0.996g)を加え、アルゴン雰囲気下、25℃、500rpmで反応を開始した。反応開始から60分、120分、180分、240分経過後に追加の塩基組成物をアルゴン雰囲気下で各々0.996g加えた。反応開始から360分経過後に、イソプロピルアルコール16mLを加えて反応を停止させた。
得られた懸濁液にクロロホルム20mL、セライトスタンダードスーパーセル(純正化学(株)製)10cmを加え、ろ紙No.5C((株)桐山製作所社製)および桐山ろうとSB-25((株)桐山製作所社製、25mmφ)を用いて吸引ろ過した。ろ液に対して0.5MHClとクロロホルムを加えて分液操作を行い、水相を回収した。次いで1M水酸化ナトリウムとクロロホルムを加えて再度分液操作後有機相を回収し、減圧下でクロロホルムを留去することでアミン組成物Zを得た。
得られたアミン組成物Zについて、GC-MS分析を行ったところ、式(1-1)または(1-2)で表される組成式C2126のアミン化合物a~f、式(2-1)で表される組成式C1417Nのアミン化合物gおよびh、およびベンジルアミンを含む組成物であることが分かった。GC分析により、ベンジルアミン転化率32%、gおよびhの転化率は64%、a~fの収率は18%であった。得られたクロマトグラムより、a~hおよびベンジルアミンの保持時間および溶媒を除いた面積比率は以下のとおりであった 。
ベンジルアミン(保持時間4.5分):38.5%
アミン化合物a(保持時間25.08分):1.3%
アミン化合物b(保持時間25.51分):2.9%
アミン化合物c(保持時間25.87分):2.3%
アミン化合物d(保持時間26.10分):2.1%
アミン化合物e(保持時間26.17分):4.1%
アミン化合物f(保持時間26.23分):2.1%
アミン化合物g(保持時間17.28分):9.4%
アミン化合物h(保持時間17.56分):9.6%