(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】生体情報取得装置及び生体情報取得方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20230502BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20230502BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H10/00
A61B10/00 Y
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2019050507
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 大資
(72)【発明者】
【氏名】奥川 美貴
(72)【発明者】
【氏名】濱口 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】古和 久朋
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216347(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/148199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00ー5/0538
A61B 5/06-5/398
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知機能検査機能を有する生体情報取得装置であって、
認知機能を検査するための検査情報を使用者へ提供する検査情報提供処理を行う検査情報提供手段と、
前記使用者の生体情報を取得する生体情報取得処理を行う生体情報取得手段と、
前記使用者からの前記検査情報に対する回答
に基づいて、前記検査情報に応じた前記認知機能の評価指標を算出する回答確認処理を行う回答確認手段と、
を有し、
前記検査情報提供処理、前記生体情報取得処理、前記回答確認処理の順番で行うことを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記生体情報取得処理の時間と、前記検査情報提供処理の終了後、前記回答確認処理を開始するまでに経過すべき時間とを合せることを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記検査情報提供処理を終了してから、前記回答確認処理を開始するまでに経過すべき時間が、前記生体情報取得処理に要する時間と一致するように、前記検査情報の内容を変更することを特徴とする請求項2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記検査情報提供処理を終了してから、前記回答確認処理を開始するまで経過すべき時間に、前記生体情報取得処理を行うように、前記生体情報取得処理を行う時間の長さを決定することを特徴とする請求項2に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記生体情報取得処理は、測定によって前記生体情報を取得する処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
前記生体情報取得処理は、生体情報測定器によって測定された前記生体情報の転送を受けることによって取得する処理であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。
【請求項7】
認知機能検査機能を有する生体情報取得装置において実行される生体情報取得方法であって、
認知機能を検査するための検査情報を使用者に提供するステップと、
前記使用者の生体情報を取得するステップと、
前記使用者からの前記検査情報に対する回答
に基づいて、前記生体情報取得装置が、前記検査情報に応じた前記認知機能の評価指標を算出する
回答確認処理を行うステップと、を順に行うことを特徴とする生体情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報取得装置及び生体情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の増加に伴い、認知症への取り組みが課題となっている。認知症とは、一旦正常に発達した知的機能が持続的に低下し、記憶機能をはじめとして、複数の知的機能の障害により社会生活に支障をきたすようになった状態を指す。認知症における知的機能の障害には、軽度のものから高度のものまであり、段階的に進行するとされている。中度認知症まで進行すると、日常生活に支障が生じるが、軽度認知症の状態であれば、生活習慣改善や抗認知症薬による効果が見られることから、早期発見・早期治療が重要である。
【0003】
認知症の早期発見のために行われる認知機能検査としては、MMSE,長谷川式(HDS-R),WMS-R,ADAS-J,Cog,MoCA-J,FCSRT等の種々の検査が提案されている。医療機関において認知症の診断を行う場合には、これらの認知機能検査のうち複数の検査が組み合わせて行われ、さらに神経学的な診察やMRI等も行われる。このように認知症の診断に要する間が長くなることから、高齢者等の認知症の検査対象者にとっても受診のハードルが高く、このことは早期発見を妨げる一因となっている。
【0004】
特許文献1には、医療機関での待ち時間に短時間で認知症の簡易診断テストを提供する認知症診断支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような簡易診断テストを受けるためには、システムが設置された医療機関に出向かなければならず、日常的な健康管理のなかで手軽に検査を受けることができなかった。
【0007】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、日常的な健康管理の一環として認知機能検査を受けることが可能な生体情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る生体情報取得装置は、
認知機能検査機能を有する生体情報取得装置であって、
認知機能を検査するための検査情報を使用者へ提供する検査情報提供処理を行う検査情報提供手段と、
前記使用者の生体情報を取得する生体情報取得処理を行う生体情報取得手段と、
前記使用者からの前記検査情報に対する回答を確認する回答確認処理を行う回答確認手段と、
を有し、
前記検査情報提供処理、前記使用者の前記生体情報の取得、前記使用者からの前記検査情報の回答確認の順番で行うことを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、日常的な健康管理の一環として生体情報を取得する際に、認知機能
検査を受けることができる。
ここで、生体情報としては、最高血圧、最低血圧、脈拍等の血圧情報や、体重、体脂肪率等の体組成、歩数や消費カロリー等の運動量、心拍数、心電データ、呼吸数、体温等が含まれるがこれに限られない。
また、認知機能検査としては、公知のMMSE,長谷川式(HDS-R),WMS-R,ADAS-J,Cog,MoCA-J,FCSRT等の種々の検査を参照しつつ、記憶に特化した検査等のように適宜の認知機能検査を採用することができる。
【0010】
また、本発明において、
前記生体情報取得処理の時間と、前記検査情報提供処理の終了後、前記回答確認処理を開始するまでに経過すべき時間とを合せるようにしてもよい。
【0011】
このようにすれば、生体情報取得処理の時間を、検査情報提供処理の終了後、回答確認処理を開始するまでに必要とされる経過すべき時間に適合させることにより、生体情報取得処理を、認知機能検査のために有効に活用することができる。
【0012】
また、本発明において、
前記検査情報提供処理を終了してから、前記回答確認処理を開始するまでに経過すべき時間に、前記生体情報取得処理を行うように、前記検査情報の内容を変更するようにしてもよい。
【0013】
ここでは、検査情報の内容には、例えば、画像記憶や単語記憶等の検査の種類、難易度、問題数等を含むがこれらに限られない。
【0014】
また、本発明において、
前記検査情報提供処理を終了してから、前記回答確認処理を開始するまでに経過すべき時間に、前記生体情報取得処理を行うように、前記生体情報取得処理を行う時間の長さを決定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明において、
前記生体情報取得処理は、測定によって前記生体情報を取得する処理であるようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、日常的な健康管理の一環として生体情報を測定する際に、認知機能検査を受けることができる。
【0017】
また、本発明において、
前記生体情報取得処理は、生体情報測定器によって測定された前記生体情報の転送を受けることによって取得する処理であるようにしてもよい。
【0018】
このようにすれば、日常の健康管理の一環として測定された生体情報の転送の機会を利用して、認知機能検査を受けることができる。また、生体情報測定器によって測定された生体情報に限らず、気温や気圧等の環境情報等を含め生体情報と関連を有する関連情報を含めて転送を受けるようにしてもよい。
【0019】
また、本発明は、
認知機能検査機能を有する生体情報取得方法であって、
認知機能を検査するための検査情報を使用者に提供するステップと、
前記使用者の生体情報を取得するステップと、
前記使用者からの前記検査情報に対する回答を確認するステップと、
を順に行うことを特徴とする。
【0020】
このようにすれば、日常的な健康管理の一環として、生体情報を取得する際に、認知機能検査を受けることができる。
ここで、生体情報としては、最高血圧、最低血圧、脈拍等の血圧情報や、体重、体脂肪率等の体組成、歩数や消費カロリー等の運動量、心拍数、心電データ、呼吸数、体温等が含まれるがこれに限られない。
また、認知機能検査としては、公知のMMSE,長谷川式(HDS-R),WMS-R,ADAS-J,Cog,MoCA-J,FCSRT等の種々の検査を参照しつつ、記憶に特化した検査等のように適宜の認知機能検査を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、日常的な健康管理の一環として認知機能検査を受けることが可能な生体情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る生体情報測定システムの構成例の概略を説明するブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る生体情報測定システムの血圧情報測定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る生体情報測定システムの検査情報提供の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る生体情報測定システムのタッチパネルディスプレイの表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る生体情報測定システムの検査情報提供において表示される単語の遷移を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る生体情報測定システムの血圧計による血圧情報の測定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る生体情報測定システムの血圧計による血圧情報測定処理におけるタッチパネルディスプレイの表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る生体情報測定システムの回答確認の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る生体情報測定システムの検査情報提供において表示される単語の遷移を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る生体情報測定システムの回答確認の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る生体情報測定システムの回答確認の処理において提供される単語の
遷移を説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る生体情報測定システムの検査情報提供の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態3の検査情報提供処理におけるタッチパネルディスプレイの表示例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態3の検査情報提供処理において提供されるイラストの遷移を説明する図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る生体情報測定システムの回答確認の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態4に係る生体情報測定システムの検査情報提供の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施形態4に係る生体情報測定システムの転送生体情報受信の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
<実施形態1>
まず
図1から
図15に基づいて、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
(システム構成)
図1は本実施形態に係る生体情報取得装置である生体情報測定システム1の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、生体情報測定システム1は、生体情報測定器としての血圧計10と、端末としてのスマートフォン20を含んでおり、血圧計10とスマートフォン20とは通信可能な構成となっている。通信の方式は特に限定されないが、例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、超音波による情報伝送などの無線通信方法、ケーブル又はコネクタ等を介して接続される有線通信方式を採用することができる。
【0026】
(血圧計)
本実施形態における血圧計10は、いわゆるオシロメトリック法により使用者の血圧を測定する計測機器であり、
図1に示すように、センサ部110と、表示部120と、通信部130と、入力部140と、制御部150と、記憶部160を含んで構成される。
【0027】
センサ部110は、血圧計10のカフ部分に配置される圧力センサを備えており、適正なカフ圧下で使用者の血管から脈波を検出する。本実施形態における血圧計10では、センサ部が検出する脈波に基づいて、最高血圧、最低血圧に加えて脈拍も計測可能である。以下、最高血圧、最低血圧、脈拍の値をまとめて血圧情報という。本実施形態では、血圧情報が生体情報に相当する。
【0028】
表示部120は、例えば液晶ディスプレイなどによって形成され、算出された血圧情報を表示する。
【0029】
通信部130は、スマートフォン20と信号の送受信を司る通信インタフェースである。通信部130は、無線通信方法による場合には、近距離無線通信に係る電波を含む電波を送受信する通信アンテナであるがこれに限られず、所望の公知技術を採用することができる。また、通信部130は、有線通信方法によってもよく、所望の公知技術を採用することができる。通信部130によって、血圧計それぞれに固有の識別番号(例えば、シリアルナンバーなど)と、計測された血圧情報を含む情報が送信される。
【0030】
入力部140は、使用者からの入力を受け付けるボタン、タッチパネルディスプレイなどの入力手段であり、使用者から、電源のON/OFF、計測の開始、項目の選択などの各種操作を受け付ける。
【0031】
制御部150は、血圧計10の制御を司る手段であり、例えば、CPU(CentralProcessing Unit)などを含んで構成される。制御部150は、入力部
140を介して使用者からの計測開始の指示を受け付けるとカフを加圧し、適切なカフ圧下で、センサ部110が検出した脈波に基づいて血圧情報を算出する。そして、表示部120に当該算出した値を表示する。その他、入力部140を介して使用者の操作に応じた処理を実行するように血圧計10の各構成要素を制御する。
【0032】
記憶部160は、RAMなどの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成され、アプリケーションプログラム、血圧情報、などの各種の情報を記憶する。
測定結果記録部170は、記憶部160に含まれる不揮発性メモリであって、センサ部110によって測定された血圧情報等の情報を記録する。
【0033】
(スマートフォン)
スマートフォン20は、
図1に示すように、通信部210、タッチパネルディスプレイ220、記憶部230、制御部240、時計部250、音声入力部260、音声出力部270を含んで構成される。
【0034】
通信部210は、血圧計10との信号の送受信を司る通信インタフェースである。通信部210は、無線通信方法による場合には、近距離無線通信に係る電波を含む電波を送受信する通信アンテナであり、血圧計10から送信された計測情報を受信する他、他の電子機器や基地局とも電波の送受信を行う。通信部210は、有線通信方法によるものであってもよく、所望の公知技術を採用することができる。
【0035】
タッチパネルディスプレイ220は、表示手段と入力手段とを兼ねる。各種情報を使用者に表示し、使用者からの各種入力を受け付ける。
【0036】
記憶部230は、RAMなどの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成され、アプリケーションプログラム、生体情報、などの各種の情報を記憶する。
測定結果記録部231は、記憶部230に含まれる不揮発性メモリであって、血圧計10から受信した血圧情報や当該血圧情報が測定された測定日時等の情報を記録する。
認知機能検査結果記録部232は、記憶部230に含まれる不揮発性メモリであって、後述する認知機能検査の結果を記録する。この認知機能検査の結果には、認知機能検査が行われた検査日時の情報や、検査の内容、正答率等の評価情報が含まれるが、これらに限られない。
認知機能検査情報記憶部233は、記憶部230に含まれる不揮発性メモリであって、認知機能検査に用いられる単語、イラスト等のデータや認知機能検査を実施するためのプログラムを記憶する。また、認知機能検査の内容に応じて、検査情報の提供から、当該検査情報に対する使用者からの回答を確認するまでに必要な経過すべき時間に関する情報も記憶する。
時間調整情報記憶部234は、記憶部230に含まれる不揮発性メモリである。時間調整情報記憶部234には、血圧測定時間や、認知機能検査実施から使用者の回答確認までの時間を調整するための時間調整情報が記憶される。時間調整情報は、具体的には、タッチパネルディスプレイ220や、音声出力部270を通じて、使用者に提供される情報であり、調整すべき時間に応じて提供できるように、測定値表示のための視覚効果、音楽、動画、キャラクターとの会話プログラム等、種々の情報が記憶される。
【0037】
制御部240はスマートフォンの制御を司る手段であり、例えばCPUなどを含んで構成され、記憶部230に格納された各種プログラムを実行することにより、これらに応じた機能を発揮する。
【0038】
時計部250は、計時機能を有し、現在の日時情報を保持する。
【0039】
音声入力部260は、音声を電気信号に変換するマイクを含み、音声による情報の入力を受け付ける。
【0040】
音声出力部270は、電気信号を音声に変換するスピーカを含み、音声による情報の出力を行う。
【0041】
(血圧情報取得方法)
図2は、認知機能検査処理、生体情報取得処理及び回答確認処理を含む生体情報取得方法の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、生体情報としての血圧情報を、測定により取得している。すなわち、生体情報取得処理は、血圧情報測定処理として実現される。
まず、スマートフォン20を介して、認知機能検査のための情報が使用者に提供される(ステップS1)。
次に、血圧計10により生体情報である血圧情報の測定が行われる(ステップS2)。
次に、スマートフォン20を介して、認知機能検査のための情報に対する回答を使用者から受け付けて確認する(ステップS3)。
【0042】
(認知機能検査情報提供処理)
認知機能検査としては、MMSE,長谷川式(HDS-R),WMS-R,ADAS-J,Cog,MoCA-J,FCSRT等の種々の検査が提案されている。本実施形態では、血圧計10による血圧情報の測定時間を有効に利用するために、特に、記憶に特化した検査を行うが、これに限られない。認知機能検査の実施において、使用者による回答までに所定時間の経過や、所定の干渉課題が要求される場合には、この所定時間の経過や所定の干渉課題の代替として血圧情報の測定又はこれを含む作業を使用者に行わせることができる。このようにすれば、日常の健康管理である血圧情報の測定とともに、認知機能検査を手軽に行うことができるので、認知機能検査を受けるための抵抗感や手間を低減し、認知症の早期発見を期待できる。
【0043】
図3は、認知機能検査情報提供の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の認知機能検査は、単語再生といわれるものであり、表示された複数の単語を使用者に記憶させ、所定の時間又は所定の干渉作業の後に、先に表示された単語を口頭で発語させる。他の実施例を含め、以下に説明する認知機能検査情報提供処理は、記憶部230に記憶されたプログラムをスマートフォン20の制御部240において実行することによって実現される。すなわち、タッチパネルディスプレイ220、記憶部230、時計部250、音声入力部260及び音声出力部270及び、これらと協働する制御部240を含んで検査情報提供手段が構成される。また、認知機能検査情報提供処理及び後述する口頭確認処理を実行することにより、認知機能検査機能が実現される。
【0044】
使用者が血圧情報測定の日時として予め設定した日時が到来すると(ステップS11)、認知機能検査日として予め設定された日が到来しているか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12において認知機能検査日が到来していないと判断された場合には、タッチパネルディスプレイ220により、使用者に血圧測定のみを行うか否かの確認を求める(ステップS13)。ステップS13において、タッチパネルディスプレイ220を介して、または音声入力部260を介して、使用者から血圧測定のみを行う旨の入力を受け付けた場合には、認知機能検査情報提供処理を終了して、後述する血圧測定処理を行う。この場合には、血圧測定処理が終了すれば、回答確認処理を行わずに処理を終了する。ステップS13において、タッチパネルディスプレイ220を介して、または音声入力部260を介して、使用者から血圧測定のみを行わない旨の入力を受け付けた場合には、血圧測定処理および回答確認処理のいずれも行わずに処理を終了する。
【0045】
ステップS12において、認知機能検査日が到来していると判断された場合には、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイに「認知レベルテストをしませんか。」とい
うメッセージを表示し、又は、音声出力部270から当該メッセージの音声を出力し、使用者に同意を求める(ステップS14)。
【0046】
このとき、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に「はい」及び「いいえ」のボタンを表示して、使用者がいずれかのボタンに触れたかを検出し、同意の有無を判断する。または、スマートフォン20の音声入力部260から使用者の口頭による回答を受け付けて判断するようにしてもよい。
使用者の同意が得られない場合には、ステップS13に進む。
使用者の同意が得られた場合には、記憶部230の認知機能検査情報記憶部233に記憶されているn個の単語リストを取得する(ステップS15)。認知機能検査情報記憶部233には、単語リストが記憶されていてもよいし、単語群からn個の単語を抽出して単語リストを構成するようにしてもよい。このとき、単語群を構成する単語には、各単語が属するカテゴリーも併せて記憶されていてもよい。
【0047】
次に、これから実施する認知機能検査方法をスマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示して案内する(ステップS16)。ここでは、「これからn個の単語を1個ずつ表示します。表示された単語を読み上げて記憶して下さい。」のような認知機能検査の方法を案内するメッセージを表示する。このメッセージは併せて、スマートフォン20の音声出力部270が出力してもよい。
【0048】
次に、i=1とおく(ステップS17)。
そして、
図4に示すように、ステップS13で取得した単語リストの1番目の単語をタッチパネルディスプレイ220に表示し、使用者に表示された単語を読み上げるように促すメッセージを表示する(ステップS18)。ここでは、タッチパネルディスプレイ220に「飛行機」という単語が表示されている。表示された単語を読み上げるように促すメッセージは、音声出力部270を介して出力するようにしてもよい。
【0049】
スマートフォン20の音声入力部260を介して取得した音声から、使用者がi番目の単語を読み上げる音声を認識する(ステップS19)。使用者がi番目の単語を読み上げる音声が所定時間内に認識できない場合には、表示された単語を読み上げるように再度促すメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示するか、音声出力部270を介して出力するようにしてもよい。また、使用者がi番目の単語を読み上げる音声が所定時間内に認識できない場合には、ステップS20に進むようにしてもよい。
【0050】
使用者がi番目の単語を読み上げる音声を認識すると、i=nか否かを判断する(ステップS20)。
ステップS18において、i=nではない場合には、i=i+1とし(ステップS21)、ステップS18に戻り、ステップS15で取得した単語リストの次の単語についてステップS18以降の処理を繰り返す。このようにして、
図5に示すように、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220には、順次、n個の異なる単語が表示される。ここでは、単語リストは、飛行機、猫、桜、鼻、冷蔵庫の5個の単語から構成される。このとき表示される単語は、乗り物、動物、花、体の一部、家電等のように全て異なるカテゴリーに属するようにする。表示される単語の数nは、5に限られず、適宜設定すればよい。同様の検査を複数回繰り返す場合には、表示される単語の数を、1回目は5個、2回目は7個というように、回数を重ねるごとに増やしていく。
ステップS20において、i=nである場合には、ステップS15で取得した単語リストの内容と検査情報を提供した日時を記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記憶する(ステップS2
2)。ここで、検査情報を提供した日時は、例えば、n番目の単語の読み上げ音声を認識した時点の日時である。
そして、認知機能検査情報の提供処理を終了する。
【0051】
このように認知機能検査情報の提供処理が終了すると、
図2に示すように、血圧情報測定処理に進む(ステップS2)。
【0052】
(血圧情報測定処理)
図6は、血圧情報測定の処理手順を示すフローチャートである。他の実施例を含め、以下に説明する血圧情報測定処理は、記憶部230に記憶されたプログラムをスマートフォン20の制御部240において実行し、血圧計10と連携することによって実現される。このとき、血圧計10も同様に、記憶部160に記憶されたプログラムを制御部150によって実行する。生体情報取得手段としての生体情報測定手段は、スマートフォン20の、タッチパネルディスプレイ220、記憶部230、時計部250、音声入力部260及び音声出力部270、通信部210及び、これらと協働する制御部240を含む。生体情報測定手段は、さらに、血圧計10の、少なくともセンサ部110、記憶部160、通信部130及び、これらと協働する制御部150を含む。
【0053】
まず、使用者に血圧測定の開始を案内する(ステップS23)。このとき、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に、
図7に示すように、「START」、「STOP」のボタンを表示するとともに、「では、深く深呼吸をしてから、血圧を測定しましょう。」という血圧情報測定を促すメッセージを、タッチパネルディスプレイ220に表示又は音声出力部270から出力する。ここで、さらに、血圧の測定操作を説明するメッセージ、具体例としてはカフを腕に巻くように指示するメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示又は音声出力部270から出力してもよい。このときに、血圧計10の所定の初期化を行う。
【0054】
使用者がカフを腕に巻いて、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示された「START」ボタンを押下する、又は音声入力部260を介して、使用者が「スタート」という音声を入力するのを待機する(ステップ24)。
「START」ボタンの押下、又は「スタート」という音声が検出されると、スマートフォン20が血圧測定を開始する指示を血圧計10に送信し、指示を受信した血圧計10がカフ圧を加圧する(ステップS25)。所定の圧力まで加圧されると、カフ圧を徐々に減圧する(ステップS26)。
次に、公知の方法により、最高血圧、最低血圧、脈拍数を算出する(ステップS27)。
血圧計10において、最高血圧、最低血圧、脈拍数が算出されると、血圧計10の表示部120に算出された最高血圧、最低血圧、脈拍数を表示するとともに、最高血圧を含む血圧情報をスマートフォン20に送信する(ステップS28)。
【0055】
血圧計10から血圧情報を受信することにより、スマートフォン20は、血圧計10での血圧情報の測定が終了したこと認識する。そして、ステップS22で記憶された認知機能検査情報の提供日時から所定時間が経過しているか否かを判断する(ステップS29)。この所定時間とは、ステップS1で実施された認知機能検査の内容に応じて、単語の表示等の認知機能検査情報の提供から、使用者による単語の再生等の回答を確認するまでに空けるべき時間である。このような所定時間は、記憶部230の認知機能検査情報記憶部233に記憶されている。
【0056】
ステップS28において、認知機能検査情報の提供日時から所定時間が経過していると判断された場合には、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に、ステップS27で算出された最高血圧、最低血圧、脈拍数を表示して(ステップS30)、処理を終了する。ステップS29において、算出された最高血圧、最低血圧、脈拍数は、音声出力部270を介して出力するようにしてもよい。
ステップS29において、認知機能検査情報の提供日時から所定時間が経過していないと判断された場合には、ステップS31に進む。ステップS31では、認知機能検査情報の提供日時からの経過時間を調整する時間調整処理を行う。ここでは、時間調整処理の一例として、記憶部230の時間調整情報記憶部234に記憶された時間調整情報を、タッチパネルディスプレイ220、音声出力部270を介して使用者に提供する。ここで、認知機能検査情報の提供から回答の確認までに空けるべき時間(経過すべき時間)と、現在までの経過時間との差分が、調整すべき時間となる。時間調整情報の内容は、このような調整すべき時間に応じて選択する。血圧情報測定処理の時間は、選択された時間調整情報を提供する時間を含めて決定される。時間調整情報としては、例えば、音楽、動画、ゲーム、キャラクターとの会話等であり、これらのファイルやプログラムを時間調整情報記憶部234から読み出して再生又は実行することにより、使用者に提供する。これらの時間調整情報を提供し、認知機能検査情報の提供日時から所定時間が経過するのを待機する。上記差分に応じて、複数種類の情報を提供してもよいし、一つの情報の途中で提供を中止してもよい。また、時間調整情報は時間調整情報記憶部234に記憶されたものに限られず、ネットワークを介して外部のサーバからストリーミング等の方法で、使用者に提供するようにしてもよい。
ここでは、タッチパネルディスプレイ220への血圧情報の表示(ステップS30)の前に、時間調整情報の提供を行っている。ステップS28において、血圧計10の表示部120にすでに血圧情報を表示しているので、単に今回の血圧情報を表示する処理は省略してもよい。しかし、今回の測定による最高血圧等の血圧情報の表示とともに、記憶部230の測定結果記録部231に記録されている過去の血圧情報を含めた履歴をグラフ表示する、又は今回の血圧情報の表示に視覚または聴覚効果を付与する等により、時間調整情報として今回の血圧情報に関連する情報を含めて提供してもよい。また、時間調整情報の提供として、使用者に最高血圧等の表示を読み上げさせるように促すメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示、又は音声出力部270から出力するようにしてもよい。また、調整すべき時間が1秒程度の短い時間である場合には、時間調整処理として、血圧情報の表示(ステップS30)を少し遅らせるようにしてもよい。
【0057】
(回答確認処理)
図8は、提供された認知機能検査情報に対する使用者の回答確認の処理手順を示すフローチャートである。他の実施例を含め、以下に説明する回答確認処理は、記憶部230に記憶されたプログラムをスマートフォン20の制御部240において実行することによって実現される。すなわち、タッチパネルディスプレイ220、記憶部230、時計部250、音声入力部260及び音声出力部270及び、これらと協働する制御部240を含んで回答確
認手段が構成される。
【0058】
ステップS32では、記憶部230の認知機能検査結果記録部232から、検査に使用した単語リストを取得する。
次に、タッチパネルディスプレイ220に、使用者に記憶した単語の口頭での回答を促すメッセージを表示する(ステップS33)。たとえば、「覚えている単語を言ってください」等のメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する。記憶した単語の口頭での回答を促すメッセージを、音声出力部270を介して出力するようにしてもよく、表示と音声出力を併せて行ってもよい。
【0059】
次に、i=1,j=0とおく(ステップS34)。
そして、使用者からのi番目の単語の音声を、音声入力部260を介して取得する(ステップS35)。
【0060】
取得した音声を解析し、使用者が回答した単語がステップS32で取得した単語リストに含まれるか否かを判断する(ステップS36)。
ステップS36において、単語リストに含まれると判断された場合には、j=j+1とおき(ステップS37)、ステップS38に進む。
ステップS36において、単語リストに含まれないと判断された場合には、ステップS38に進む。
【0061】
ステップS38では、i=nか否かを判断する。
ステップS38において、i=nではない場合には、i=i+1とおき(ステップS39)、ステップS35に戻り、i+1番目の単語の音声の取得を待機する。
ステップS38において、i=nである場合には、今回の認知機能検査の対象となった単語数n、使用者が再生できた単語数j、正答率j/nをタッチパネルディスプレイ220に表示するとともに、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録する(ステップS40)。
【0062】
次に、次回の認知機能検査予定日を使用者に案内する(ステップS41)。例えば、「検査お疲れ様でした。よくできていましたよ。最終的な結果を出すためには、後3回試験をして下さいね。次回の検査はX日に行います。」等のメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する。このメッセージを、音声出力部270を介して出力してもよい。
次回の検査日は、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録しておき、当該日の血圧情報測定の際に、次回の認知機能検査を促すようにする。このように、認知機能検査は、複数回行うことによって評価の確度がより高まる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、日常の健康管理の一環として行われる血圧情報の測定の機会を利用して、認知機能検査を行うことにより、認知機能検査を受けるためのハードルを低くして、認知症の早期発見を期待できる。
【0064】
上述したように、本実施形態では、スマートフォン20から血圧計10に血圧測定を開始する指示を送信することにより血圧計10での血圧測定を開始しているが、血圧測定の開始に至るまでのスマートフォン20と血圧計10の動作はこれに限られない。例えば、スマートフォン20において、タッチパネルディスプレイ220への表示や音声出力部270からの音声出力によって、血圧計10の操作を案内し、使用者が血圧計10の入力部140を構成するボタンを押下することにより、血圧測定を開始するようにしてもよい。この場合にも、スマートフォン20では、ステップS28において血圧計10から送信された血圧情報を受信することにより血圧測定が終了したことを認識できるので、以降の処理を同様に行うことができる。
【0065】
<実施形態2>
以下に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
本実施形態では、生体情報システムの構成、認知機能検査情報の提供から血圧情報の測定を経て検査情報に対する回答の確認に至る全体の流れ及び、血圧測定処理の内容は実施形態1と同じである。本実施形態では認知機能検査の内容が実施形態1とは異なるので、認知機能検査の処理及び検査情報に対する回答の確認処理について説明する。
【0066】
(認知機能検査情報提供処理)
本実施形態の認知機能検査は、単語再認といわれるものであり、表示された複数の単語を使用者に記憶させ、所定の時間又は所定の干渉作業の後に、先に表示された単語以外にダミーの単語を含めて複数の単語を表示させ、当該表示された単語が先に表示された単語であるか否かを回答させる。
本実施形態の認知機能検査情報の提供処理は、
図3と同様である。ここでは、例えば、
表示される単語の数nを8とし、
図9に示すように、梅、ラジオ、すずめ、大砲、消しゴム、スカート、机、月の順で8個の単語をスマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に順次表示させる。これらの単語は少なくとも3つ以上のカテゴリーから抽出するものとする。
【0067】
(回答確認処理)
血圧測定処理は、実施形態1と同様であるので説明を省略し、以下に、
図10を参照して、回答確認処理について説明する。
まず、認知機能検査情報の提供に使用した単語n個(正解群)を、記憶部230の認知機能検査結果記録部232から読出し、認知機能検査情報記憶部233に記憶された単語群から、正解群に含まれない単語m個(ダミー群)を抽出し、併せてn+m個の単語から構成される単語リストを取得する(ステップ51)。
【0068】
そして、タッチパネルディスプレイ220に表示される単語が、血圧測定の前に表示された単語である場合には「あった」、血圧測定の前に表示された単語ではない場合には「なかった」と口頭で回答するように回答方法を案内するメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する(ステップS52)。回答方法を案内するメッセージを、音声出力部270を介して出力するようにしてもよく、表示と音声出力を併せて行ってもよい。
【0069】
次に、i=1,j=0とおく(ステップS53)。
そして、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220にi番目の単語を表示する(ステップS54)。ここでは、後述するように、正解群に含まれる単語、又は正解群に含まれない単語のいずれかが表示される。
次に、使用者からの「あった」又は「なかった」という回答を示す音声を、音声入力部260を介して取得する(ステップS55)。
【0070】
取得した音声を解析し、回答が正しいか否かを判断する(ステップS56)。すなわち、ステップS54でタッチパネルディスプレイ220に表示された単語が正解群に含まれるものであり、取得した回答が「あった」である場合には回答が正しいと判断し、取得した回答が「なかった」である場合には回答が正しくないと判断する。また、ステップS54でタッチパネルディスプレイ220に表示された単語がダミー群に含まれるものであり、取得した回答が「なかった」である場合には回答が正しいと判断し、取得した回答が「あった」である場合には回答が正しくないと判断する。
【0071】
ステップS56において、回答が正しいと判断された場合には、j=j+1とおき(ステップS57)、ステップS58に進む。
ステップS56において、回答が正しくないと判断された場合には、ステップS58に進む。
【0072】
ステップS58では、i=n+mか否かを判断する。
ステップS58において、i=n+mではない場合には、i=i+1とおき(ステップS59)、ステップS54に戻り、i+1番目の単語をタッチパネルディスプレイ220に表示する。このようにして、例えば、
図11に示すように、梅、蝶、のこぎり、ラジオ、すずめ、大砲、口、消しゴム、スカート、大根、カメ、机、笛、イチゴ、ぞう、月の16個の単語が、順次タッチパネルディスプレイ220に表示される。ここでは、mを8個とし、ダミー群として、網掛けで示した8個の単語が抽出されている。正解群とダミー群とからなるn+m個の単語を表示する際には、
図11のように正解の単語を表示する順序を維持し、正解の間にダミーの単語を表示しているが、正解群とダミー群の単語の表示順序はこれに限られない。例えば、正解群の単語の表示順序を入れ替えて、正解の間にダミーの単語を表示するようにしてもよい。
【0073】
ステップS58において、i=n+mである場合には、今回の認知機能検査の対象となった単語数n、ダミーとして追加した単語数m、使用者が再認できた単語数j、正答率j/(n+m)をタッチパネルディスプレイ220に表示するとともに、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録する(ステップS60)。
次に、次回の認知機能検査予定日を使用者に案内する(ステップS61)。例えば、「検査お疲れ様でした。よくできていましたよ。最終的な結果を出すためには、後3回試験をして下さいね。次回の検査はX日に行います。」等のメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する。このメッセージを、音声出力部270を介して出力してもよい。
次回の検査日は、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録しておき、当該日の血圧情報測定の際に、次回の認知機能検査を促すようにする。
【0074】
本実施形態においても、認知機能検査情報の提供処理において表示される単語の数nは、8に限られず、適宜設定すればよい。同様の検査を複数回繰り返す場合には、表示される単語の数を、1回目は8個、2回目は6個、3回目は12個というように、各回で個数を異ならせてもよい。また、ダミー群として抽出する単語の数は、認知機能検査情報の提供処理において表示される単語の数と同数とすればよいが、ダミーの数を増減させて難易度を調整することもできる。
【0075】
このように、本実施形態によれば、日常の健康管理の一環として行われる血圧情報の測定の機会を利用して、認知機能検査を行うことにより、認知機能検査を受けるためのハードルを低くして、認知症の早期発見を期待できる。
【0076】
<実施形態3>
以下に、本発明の実施形態3について説明する。実施形態1と同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
本実施形態では、生体情報システムの構成、認知機能検査情報の提供から血圧情報の測定を経て検査情報に対する回答の確認に至る全体の流れ及び、血圧測定処理の内容は実施形態1と同じである。本実施形態では認知機能検査の内容が実施形態1とは異なるので、認知機能検査の処理及び検査情報に対する回答の確認処理について説明する。
【0077】
(認知機能検査情報提供処理)
図12は、認知機能検査情報提供の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の認知機能検査は、画像を用いた単語再生といわれるものであり、イラストを表示してその物品名を使用者に記憶させ、所定の時間又は所定の干渉作業の後に、先に表示された単語を口頭で発語させる。
【0078】
ステップS11及びステップS12における処理は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
次に、記憶部230の認知機能検査情報記憶部233に記憶されているn枚のイラスト及び当該イラストの物品名からなるリストを取得する(ステップS71)。認知機能検査情報記憶部233には、リストが記憶されていてもよいし、イラストと物品名との組を複数含む群からn個の組を抽出してリストを構成するようにしてもよい。
【0079】
次に、これから実施する認知機能検査方法をスマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示して案内する(ステップS72)。ここでは、「これからn個のイラストを1個ずつ表示します。表示されたイラストの物品名を読み上げますので、復唱して記憶して下さい。」のような認知機能検査の方法を案内するメッセージを表示する。このメッセージは併せて、スマートフォン20の音声出力部270が出力してもよい。
【0080】
次に、i=1とおく(ステップS73)。
そして、
図13に示すように、ステップS71で取得したリストの1番目のイラストをタッチパネルディスプレイ220に表示し、当該イラストの物品名を読み上げる音声を音声出力部270から出力する(ステップS74)。ここでは、タッチパネルディスプレイ220には、フライパンのイラストが表示され、音声出力部270から物品名である「フライパン」という音声を出力する。このとき、使用者に物品名を復唱するように促すメッセージを同様に表示してもよい。
【0081】
次に、スマートフォン20の音声入力部260を介して取得した音声から、使用者がi番目のイラストの物品名を復唱する音声を認識する(ステップS75)。使用者がi番目の単語を読み上げる音声が所定時間内に認識できない場合には、表示された単語を読み上げるように促すメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示するか、音声出力部270を介して出力するようにしてもよい。また、使用者がi番目の単語を読み上げる音声が所定時間内に認識できない場合には、ステップS76に進むようにしてもよい。
【0082】
使用者がi番目のイラストの物品名を復唱する音声を認識すると、i=nか否かを判断する(ステップS76)。
ステップS76において、i=nではない場合には、i=i+1とし(ステップS77
)、ステップS74に戻り、ステップS
71で取得したリストの次のイラスト及び物品名についてステップS
74以降の処理を繰り返す。このようにして、
図14に示すように、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220には、順次、異なるイラストが表示される。ここでは、リストは、フライパン、うさぎ、帽子、鶏、飛行機、ペンギン、チューリップ、カスタネットの8枚のイラストから構成される。このとき表示されるイラストは、全て異なるカテゴリーに属するようにする。表示されるイラストの数nは、8に限られず、適宜設定すればよい。同様の検査を複数回繰り返す場合には、表示される単語の数を、1回目は8枚、2回目は12枚というように、回数を重ねるごとに増やしていってもよい。
ステップS76において、i=nである場合には、ステップS
71で取得したリストの内容と検査情報を提供した日時を記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記憶する(ステップS78)。ここで、検査情報を提供した日時は、例えば、n番目の単語の読み上げ音声を認識した時点の日時である。
そして、認知機能検査情報の提供処理を終了する。
【0083】
(回答確認処理)
血圧測定処理は、実施形態1と同様であるので説明を省略し、以下に、
図15を参照して、回答確認処理について説明する。
まず、認知機能検査情報の提供に使用したn個の物品名を含む物品名リストを、記憶部230の認知機能検査結果記録部232から読出して取得する(ステップ81)。
【0084】
次に、タッチパネルディスプレイ220に、使用者に記憶した物品名の口頭での回答を促すメッセージを表示する(ステップS82)。たとえば、「覚えている物品名を言ってください」等のメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する。記憶した物品名の口頭での回答を促すメッセージを、音声出力部270を介して出力するようにしてもよく、表示と音声出力を併せて行ってもよい。
【0085】
次に、i=1,j=0とおく(ステップS83)。
そして、使用者からのi番目の単語の音声を、音声入力部260を介して取得する(ステップS84)。
【0086】
取得した音声を解析し、ステップS81で取得した物品名リストに含まれるか否かを判断する(ステップS85)。
ステップS85において、物品名リストに含まれると判断された場合には、j=j+1とおき(ステップS86)、ステップS87に進む。
ステップS85において、物品名リストに含まれないと判断された場合には、ステップS87に進む。
【0087】
ステップS87では、i=nか否かを判断する。
ステップS87において、i=nではない場合には、i=i+1とおき(ステップS88)、ステップS84に戻り、i+1番目の単語の音声の取得を待機する。
ステップS87において、i=nである場合には、今回の認知機能検査の対象となった物品名数n、使用者が再生できた物品名数j、正答率j/nをタッチパネルディスプレイ220に表示するとともに、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録する(ステップS89)。
【0088】
次に、次回の認知機能検査予定日を使用者に案内する(ステップS90)。例えば、「検査お疲れ様でした。よくできていましたよ。最終的な結果を出すためには、後3回試験をして下さいね。次回の検査はX日に行います。」等のメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示する。このメッセージを、音声出力部270を介して出力してもよい。
次回の検査日は、記憶部230の認知機能検査結果記録部232に記録しておき、当該日の血圧情報測定の際に、次回の認知機能検査を促すようにする。このように、認知機能検査は、複数回行うことによって評価の確度がより高まる。
【0089】
このように、本実施形態によれば、日常の健康管理の一環として行われる血圧情報の測定の機会を利用して、認知機能検査を行うことにより、認知機能検査を受けるためのハードルを低くして、認知症の早期発見を期待できる。
【0090】
<実施形態4>
本実施形態は、既に生体情報測定器によって測定された生体情報の転送を受けることによって、生体情報を取得している。すなわち、生体情報取得処理は、転送生体情報受信処理として実現される。実施形態1と共通する構成及び処理については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。生体情報としては、例えば、血圧のほか、体重、体組成、運動量又は体温が挙げられるが、これらに限られない。
【0091】
生体情報取得装置である生体情報測定システム1の概略構成は、
図1に示す実施形態1の場合と共通である。ただし、本実施形態では、血圧計10は、既に測定された生体情報としての血圧情報を記憶部160の測定結果記録部170に記憶している。そして、血圧計10が測定結果記録部170に記憶している測定結果をスマートフォン20に転送することにより、スマートフォン20は血圧計10の測定結果記録部170に記録されている血圧情報を取得する。
ここでは、血圧計10を例に説明するが、スマートフォン20と通信可能に接続される体重計、体組成計、運動量計、体温計等を含む複数の生体情報測定器から、記憶している生体情報を転送させるようにしてもよい。また、スマートフォン20と通信可能に接続されて生体情報を転送する装置は、生体情報測定機能を有する生体情報測定器であってもよいし、自らは生体情報測定機能を有しないが、他の生体情報測定器において測定された生体情報を記憶している装置であってもよい。さらに、スマートフォン20と通信可能に接続された装置から、記憶部160の所定領域に記憶されている気温や気圧等の環境条件を含む生体情報と何らかの関連を有する情報としての関連情報の転送を受けるようにしてもよい。ここで生体情報測定機能を有する生体情報測定器と、自らは生体情報
測定機能を有しないが、他の生体情報測定器において測定された生体情報や関連情報を記憶している装
置を含めて、生体関連情報保持装置と称する。
【0092】
認知機能検査処理、生体情報取得処理及び回答確認処理を含む生体情報取得方法の処理手順は
図2に示す実施形態1と同様である。
【0093】
(認知機能検査情報提供処理)
図16に認知機能検査情報提供処理を示す。
図3に示す実施形態1の認知機能検査情報提供処理と異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態では、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に「生体情報を転送しますか。」というメッセージを表示し、又は、音声出力部270から当該メッセージの音声を出力し、使用者に、生体情報等の転送に対する同意を求める(ステップS91)。
スマートフォン20に複数の生体関連情報保持装置が通信可能に接続されている場合には、血圧計10を含む複数の生体関連情報保持装置のリストを、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示させ、生体情報の転送を受けるべき生体関連情報保持装置を選択させる態様で同意を求めてもよい。
【0094】
ステップS12の処理は、実施形態1と同様である。ステップS12において認知機能検査日が到来していないと判断された場合には、タッチパネルディスプレイ220又は音声出力部270により、使用者に生体情報等の転送のみを行うか否かの確認を求める(ステップS92)。
ステップS92において、タッチパネルディスプレイ220を介して、または音声入力部260を介して、使用者から生体情報転送のみを行う旨の入力を受け付けた場合には、認知機能検査情報提供処理を終了して、後述する転送生体情報受信処理を行う。この場合には、転送生体情報受信処理が終了すれば、回答確認処理を行わずに処理を終了する。ステップS92において、タッチパネルディスプレイ220を介して、または音声入力部260を介して、使用者から、生体情報の転送のみを行わない旨の入力を受け付けた場合には、転送生体情報受信処理および回答確認処理のいずれも行わずに処理を終了する。
【0095】
(転送生体情報受信処理)
図17は、転送生体情報受信の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する転送生体情報受信処理は、記憶部230に記憶されたプログラムをスマートフォン20の制御部240において実行し、血圧計10と連携することによって実現される。このとき、血圧計10も同様に、記憶部160に記憶されたプログラムを制御部150によって実行する。生体情報取得手段は、スマートフォン20の、タッチパネルディスプレイ220、記憶部230、時計部250、音声入力部260及び音声出力部270、通信部210及び、これらと協働する制御部240を含む。生体情報取得手段は、さらに、血圧計10の、少なくとも記憶部160、通信部130及び、これらと協働する制御部150を含む。
【0096】
まず、使用者に生体情報転送の開始を案内する(ステップS93)。このとき、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に、「START」のボタンを表示するとともに、「STARTボタンを押すか、スタートと声をかけると転送を開始します。」という転送開始を案内するメッセージをタッチパネルディスプレイ220に表示又は音声出力部270から出力する。
【0097】
使用者がスマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示された「START」ボタンを押下、又は音声入力部260を介して使用者が「スタート」という音声を入力するのを待機する(ステップ94)。
「START」ボタンの押下、又は「スタート」という音声が検出されると、血圧計10の測定結果記録部170に記憶された血圧情報を受信する(ステップS95)。生体情報の転送を受けるべき生体関連情報保持装置が複数選択されている場合には、各生体関連情報保持装置から生体情報を順次受信する。
【0098】
ステップS29及びステップS31の処理は、
図6に示す実施形態1と同様である。
ステップS29において、認知機能検査情報の提供日時から所定時間が経過していると判断された場合には、スマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に、ステップS95で受信した生体情報を表示して(ステップS96)、処理を終了する。ステップS96において、受信した生体情報は、音声出力部270を介して出力するようにしてもよい。
【0099】
このように、本実施形態によれば、日常の健康管理の一環として測定された生体情報の転送の機会を利用して、認知機能検査を行うことにより、認知機能検査を受けるためのハードルを低くして、認知症の早期発見を期待できる。
<変形例>
血圧情報測定処理におけるステップS26及びステップS28の処理は、血圧情報測定処理における他の手順において行うようにしてもよい。
【0100】
認知機能検査の内容は、実施形態1、実施形態2、実施形態3で説明したものに限られず、他の認知機能検査を採用してもよく、実施形態1、実施形態2、実施形態3で説明した認知機能検査を組み合わせて行ってもよい。
また、認知機能検査情報として提供される単語、イラストの数や難易度等の検査情報を変更することにより、認知機能検査情報提供処理の終了後、回答確認処理の開始までに必要な時間を伸縮することができるので、この時間が血圧情報測定処理に要する時間に一致するように検査情報を変更するようにしてもよい。
【0101】
実施形態1では、生体情報測定器として、血圧情報を測定する血圧計を備える生体情報測定システムについて説明した。生体情報測定器として、生体測定情報として体重を測定する体重計、体脂肪率等の体組成を測定する体組成計、歩数や消費カロリー等の運動量を測定する運動量計、体温を測定する体温計を備える生体情報測定システムについても本発明を適用することができる。
【0102】
また、実施形態1では、血圧計10は単体で血圧情報を測定できる構成であるが、
図1において、入力部140、表示部120を省略し、操作情報等の入力や各種情報の表示は、スマートフォン20側から行うように構成することもできる。また、
図1において、測定結果記録部170を省略して、測定結果の記録はスマートフォン20側で行うように構成することもできる。
【0103】
また、実施形態1における生体情報測定システムは、端末としてスマートフォン20を含んで構成されるが、端末は、これに限定されず、タブレット端末、ノートパソコンなどの携帯情報端末の他、据置型の情報端末であってもよい。
【0104】
また、実施形態1ないし実施形態3では、
図2に示すように、認知機能検査情報の提供と、認知機能検査情報に対する使用者からの回答の確認との間に、血圧情報の測定を行っている。このような順番で各処理が行われるのであれば、記憶した直後の回答(第1の回答)と少し時間を空けた後の回答(第2の回答)の両者を確認するような検査について、血圧情報の測定の前に、認知機能検査情報の提供、及び、認知機能検査情報に対する使用者からの第1の回答の確認を行い、血圧情報の測定の後に、認知機能検査情報に対する使用者からの第2の回答の確認を行うようにしてもよい。回答までに要する経過すべき時間
や干渉作業が異なる認知機能検査を行う場合には、経過すべき時間が短いものについては、第1の回答確認として血圧情報の測定前に行い、長いものについては、第2の回答確認として血圧情報の測定後に行うようにしてもよい。また、同一の認知機能検査について、回答までに要する経過すべき時間や干渉作業が異なる場合の検査を行うために、回答確認を血圧情報測定の前と後とで行うようにしてもよい。
【0105】
また、
図6に示す血圧情報測定処理では、認知機能検査情報提供処理の終了後に、血圧測定の開始を案内している。このような血圧情報測定処理を一例とする生体情報測定処理において、生体情報の測定を行う前に、足踏みや踏み台昇降等の運動タスクを課し、その後に生体情報を測定するようにしてもよい。このようにすれば、生体情報の測定に、時間調整の手段として運動タスクを組み込むことができる。この場合には、足踏みのタイミングや踏み台昇降の回数をスマートフォン20のタッチパネルディスプレイ220に表示し又は音声出力部270から出力することにより時間調整を行うことができる。
【0106】
実施形態1ないし3で説明した生体情報の測定と実施形態4で説明した生体情報の転送とを組み合わせて行うようにしてもよい。この場合に、例えば、血圧計10による血圧情報の測定と血圧情報の転送とを組み合わせて行うこともできるし、血圧計10による血圧情報の測定と他の生体情報測定器からの生体情報の転送とを組み合わせて行うこともできる。
【符号の説明】
【0107】
1・・・・生体情報測定システム
10・・・血圧計
20・・・スマートフォン
110・・センサ部
130・・通信部
150・・制御部
160・・記憶部
210・・通信部
220・・タッチパネルディスプレイ
230・・記憶部
240・・制御部
250・・時計部
260・・音声入力部
270・・音声出力部