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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ブームの構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/687 20060101AFI20230502BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20230502BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B66C23/687 A
B66F11/04
B66F9/06 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019050981
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152488
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 輝
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-018370(JP,B1)
【文献】特開2005-112514(JP,A)
【文献】実開昭62-113193(JP,U)
【文献】特開2003-201088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0068076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/64-23/70
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮ブームを構成する複数のブームのうち少なくとも一部のブームは、前記ブームの軸よりも上側の部分に相当する、複数の折曲げ部が形成された上側部材と、前記軸よりも下側の部分に相当する、前記上側部材より多くの折曲げ部が形成された下側部材とを、それぞれの断面の周方向の端部同士を突き合わせて溶接して、断面が多角形筒状に形成され、
前記ブームは、前記多角形筒状の側面の平坦な部分に、前記上側部材と前記下側部材とを突き合わせて溶接した溶接部を有し、
前記ブームの長手方向に直交する断面において、前記上側部材の複数の前記折曲げ部のうち前記溶接部の直近の折曲げ部と、前記下側部材の複数の前記折曲げ部のうち前記溶接部の直近の折曲げ部とは、前記溶接部を挟んで上下対称の部分に形成され、
前記複数のブームのうち基端ブームは、前記上下対称の部分に形成された2つの前記折曲げ部は、折曲げ角度である内角が略同一であり、
前記基端ブームにおける前記下側部材に形成された全ての前記折曲げ部の内角は同一であるブームの構造。
【請求項2】
前記基端ブームの前記下側部材は、複数の前記折曲げ部のうち最も下方の折曲げ部と前記下方の折曲げ部に隣接する上方の折曲げ部との間の平面部と、前記上方の折曲げ部と前記上方の折曲げ部に隣接する次の上方の折曲げ部との間の平面部とを含む少なくとも2つ以上の隣接する平面部の長さが同一である請求項1に記載のブームの構造。
【請求項3】
前記基端ブームにおける長さが同一である2つ以上の前記平面部に隣接する少なくとも2つ以上の平面部は、同一である前記長さよりも長い長さで同一である請求項2に記載のブームの構造。
【請求項4】
前記上側部材の前記折曲げ部と、前記ブームの平坦な上面の端縁に形成された角部との間に、別の折曲げ部が形成されている請求項1から3のうちいずれか1項に記載のブームの構造。
【請求項5】
前記断面における最下部が水平に形成されている請求項1から4のうちいずれか1項に記載のブームの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンや高所作業車で用いられている伸縮ブームは、伸ばした状態での長さを一層長くすることが望まれていて、伸縮ブームを構成するブームの本数(段数)を増加させることで、長くすることができる。しかし、ブームの本数を増やすと伸縮ブーム全体の重量が増加し、荷物の吊上性能が低下する。
【0003】
そこで、伸縮ブームを軽量化する必要があり、各段のブームの板厚を薄くすればよい。ただし、単に各ブームの板厚を薄くしただけでは、ブームの剛性が低下し、要求仕様を満足することができなくなるおそれがある。
【0004】
ブームの剛性を増大させる構造として、ブームの側面等に折曲げ部を形成したものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-16763号公報
【文献】実登第2575542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1,2に開示された技術は、いずれも、ブームの側面において、ブームを周方向に繋いだ溶接部を有していて、その溶接部よりも上方の部分において、折曲げ部が形成されている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、ブームの側面に、ブームを周方向に繋いだ溶接部が形成されている場合に、溶接部に掛る負荷を軽減することができるブームの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、伸縮ブームを構成する複数のブームのうち少なくとも一部のブームは、前記ブームの軸よりも上側の部分に相当する、複数の折曲げ部が形成された上側部材と、前記軸よりも下側の部分に相当する、前記上側部材より多くの折曲げ部が形成された下側部材とを、それぞれの断面の周方向の端部同士を突き合わせて溶接して、断面が多角形筒状に形成され、前記ブームは、前記多角形筒状の側面の平坦な部分に、前記上側部材と前記下側部材とを突き合わせて溶接した溶接部を有し、前記ブームの長手方向に直交する断面における前記上側部材の複数の前記折曲げ部のうち前記溶接部の直近の折曲げ部と、前記下側部材の複数の前記折曲げ部のうち前記溶接部の直近の折曲げ部とは、前記溶接部を挟んで上下対称の部分に形成され、前記複数のブームのうち基端ブームは、前記上下対称の部分に形成された2つの前記折曲げ部は、折曲げ角度である内角が略同一であり、前記基端ブームにおける前記下側部材に形成された全ての前記折曲げ部の内角は同一であるブームの構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るブームの構造によれば、ブームの側面に、ブームを周方向に繋いだ溶接部が形成されている場合に、溶接部に掛る負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る伸縮ブームを有する高所作業車1を示す模式図である。
図2図1の伸縮ブームの要部を示す斜視図である。
図3図2に示した伸縮ブームの軸Cに直交する面(A-A線に沿った面)による断面を示す断面図である。
図4図3に示した基端ブームを示す図3と同様の断面図である。
図5図3に示した第1中間ブームを示す図3と同様の断面図である。
図6図3に示した第2中間ブームを示す図3と同様の断面図である。
図7】実施形態の変形例1を示す、図3相当の断面図である。
図8】実施形態の変形例2を示す、図3相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るスライド部材の位置決め構造の具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
<実施形態>
(高所作業車の構成)
図1は本発明に係る伸縮ブーム10を有する高所作業車1を示す模式図、図2図1の伸縮ブーム10の要部を示す斜視図、図3図2に示した伸縮ブームの軸Cに直交する面(A-A線に沿った面)による断面を示す断面図である。
【0013】
図1に示した高所作業車1は、車両の荷台2上に、荷台2に対して起伏及び旋回するとともに軸C方向に伸縮する伸縮ブーム10が設けられ、伸縮ブーム10の伸長側の先端に、作業者が載るバケット8が設けられたものである。
【0014】
伸縮ブーム10は、荷台2に対して荷台面に対して旋回自在の旋回台4上に設けられている。旋回台4には、基部ブラケット5が設置され、伸縮ブーム10の基端(図2において、伸縮ブーム10の軸C方向のうち基部ブラケット5に向かう方向(基端方向B)の端部)が、この基部ブラケット5に、鉛直面内で揺動自在に支持されている。
【0015】
そして、同じく基部ブラケット5に一端が保持され、他端が伸縮ブーム10の基端よりも前方(伸縮ブーム10の軸C方向(長手方向)の先端に向かう方向(先端方向F))の部分に保持された起伏シリンダ6が伸縮することで、伸縮ブーム10は、基端を回転中心として回転することで、荷台2に対して起伏する。
【0016】
伸縮ブーム10は、図2,3に示すように、例えば、5つのブーム11,12,13,14,15が入れ子式に収容されて、それぞれのブーム12~15が軸C方向の先端方向Fに突出することで伸長する構成となっている。この伸縮ブーム10を構成している5つのブーム11~15は、基部ブラケット5に直接支持された最外側の基端ブーム11と、基端ブーム11の直近の内側に収容される第1中間ブーム12と、第1中間ブーム12の直近の内側に収容される第2中間ブーム13と、第2中間ブーム13の直近の内側に収容される第3中間ブーム14と、第3中間ブーム14の内側に収容されるトップブーム15とで構成されている。
【0017】
伸縮ブーム10は、外側から内側に向かう順に、基端ブーム11、第1中間ブーム12、第2中間ブーム13、第3中間ブーム14、トップブーム15の配置となっている。
【0018】
各ブーム12~15が、相対的に外側のブーム(外側ブーム)に最も長く収容された状態で、伸縮ブーム10は長さが最短(全縮)となる。そして、この全縮の状態から、基端ブーム11を除いた他のブーム12~15が、それぞれの外側のブームに対して、先端方向Fに突出することで、軸C方向に伸長する。
【0019】
伸縮ブーム10の内部には、一端が基端ブーム11の基端側の部分に固定された伸縮シリンダ50が設けられていて、伸縮シリンダ50が伸縮することにより、各ブーム12~15が同時に突出したり、同時に収容されたりして、伸縮ブーム10の全体として伸縮する。
【0020】
バケット8は、図1に示すように、伸縮ブーム10の格納状態(起伏角度が最小、伸縮長さが全縮、旋回方向が前方やや右向きとなる基準位置で、車両のキャビン3の上前方に配置された状態となっている。なお、高所作業車1は、伸縮ブーム10の起伏角度、伸縮ブーム10の伸縮状態、伸縮ブーム10の旋回角度に拘わらず、バケット8を水平に維持する機構(図示せず)を備えている。
【0021】
また、高所作業車1は、荷台の前部と後部とにそれぞれ、車両の幅方向に張り出して、路面に設置されるアウトリガ7,7を備えている。前後の各アウトリガ7は、伸縮ブーム10の起伏状態、伸縮状態及び旋回状態に応じて適切な長さに張り出され、車両の走行時は、路面から上昇して離れる。
【0022】
(ブームの構造)
図4図3に示した基端ブーム11を示す図3と同様の断面図、図5図3に示した第1中間ブーム12を示す図3と同様の断面図、図6図3に示した第2中間ブーム13を示す図3と同様の断面図である。
【0023】
図3,4に示すように、基端ブーム11は、軸C方向に直交する断面において多角形筒状に形成されている。基端ブーム11は、図4に示すように、軸Cよりも略上側の部分に相当する上側部材11Bと、軸Cよりも略下側の部分に相当する下側部材11Aとを、それぞれの断面の周方向の端部同士を突き合わせて溶接して形成されている。
【0024】
すなわち、上側部材11Bは、断面が上下反対の角張ったU字状(以下、角U字状という。)に形成され、一方、下側部材11Aは、断面が略U字状に形成されている。後に詳述するが、下側部材11Aは、上側部材11Bに比べて、多数の折曲げ部11d等が形成され、又それらの折曲げ部間の距離が短い。
【0025】
上側部材11Bの断面の上下反対の角U字状の端部と、下側部材11Aの断面の略U字の端部とをそれぞれ突き合わせて、その突き合わせた部分を溶接により接合することで、周方向に繋がった、閉じた多角形筒状の断面を形成している。
【0026】
上側部材11Bと下側部材11Aとを接合した2か所の溶接部11C(図4の断面図では2か所であるが、各溶接部11Cはそれぞれ軸C方向に延びて形成されているため、基端ブーム11としては2本の溶接部11Cである。)は、基端ブーム11の両側面に形成されている。
【0027】
各溶接部11Cは、上側部材11Bの端部と下側部材11Aの端部とを同一平面状に配置した状態で突き合わせて接合されているため、基端ブーム11の側面の平坦な部分に形成されていることになる。
【0028】
基端ブーム11は、上述したように多角形筒状を呈しているが、上面は水平面に形成され、その上面から、一方の側面、下面、他方の側面、上面に至る範囲は、21個の折曲げ部11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11i,11j.11k,11m,11n,11o,11p,11q,11r,11s,11t,11u,11vが形成されている。全ての折曲げ部11a~11vは、山折りとなるように折り曲げられている。つまり、各折曲げ部11a~11vの内角は角度180[°]未満である。
【0029】
ここで、折曲げ部11aと折曲げ部11vは、図4に示した状態で軸Cを通る鉛直面に対して左右対称の部位に形成されている。同様に、折曲げ部11bと折曲げ部11u、折曲げ部11cと折曲げ部11t、折曲げ部11dと折曲げ部11s、折曲げ部11eと折曲げ部11r、折曲げ部11fと折曲げ部11q、折曲げ部11gと折曲げ部11p、折曲げ部11hと折曲げ部11o、折曲げ部11iと折曲げ部11n、折曲げ部11jと折曲げ部11m、についても、軸Cを通る鉛直面に対して左右対称の位置に形成されている。
【0030】
上述した、左右対称の部位に形成された対応する2つの折曲げ部11a,11v等は、それらの折曲げ部11a,11v等の内角の角度も同一である。なお、折曲げ部11kは、軸Cを通る鉛直面上で、基端ブーム11の最下部に形成されている。
【0031】
さらに、一方の溶接部11Cの直近の2つの折曲げ部11cと折曲げ部11dは、この溶接部11Cを挟んで上下対称の部分に形成されている。すなわち、折曲げ部11cの溶接部11Cからの距離と折曲げ部11dの溶接部11Cからの距離とは等しい。具体的には、例えば、折曲げ部11cは溶接部11Cの上側58[mm]の位置に形成され、折曲げ部11dは溶接部11Cの下側58[mm]の位置に形成されている。
【0032】
他方の溶接部11Cの直近の2つの折曲げ部11tと折曲げ部11sも同様に、この溶接部11Cを挟んで上下対称の部分に形成されている。具体的には、例えば、折曲げ部11tは溶接部11Cの上側58[mm]の位置に形成され、折曲げ部11sは溶接部11Cの下側58[mm]の位置に形成されている。
【0033】
また、配置が上下対称の2つの折曲げ部11c,折曲げ部11dは、それらの折曲げ部11c,11dの内角の角度も同一(例えば、角度168[°])に設定されている。他方の、配置が上下対称の2つの折曲げ部11t,折曲げ部11sも同様に、それらの折曲げ部11c,11dの内角の角度が同一(例えば、角度168[°])に設定されている。
【0034】
また、溶接部11Cよりも下側の、隣り合う2つの折曲げ部間の、周方向に沿った長さは、溶接部11Cと直近の折曲げ部11dとの距離と同程度の長さ(溶接部11Cと直近の折曲げ部11dとの距離に対して略20[%]の差)以下の長さに設定され、比較的短い長さとなっている。
【0035】
例えば、折曲げ部11d,11e間の長さは69[mm]、折曲げ部11e,11f間の長さは60[mm]、折曲げ部11f,11g間の長さは60[mm]、折曲げ部11g,11h間の長さは60[mm]、折曲げ部11h,11i間の長さは36[mm]、折曲げ部11i,11j間の長さは36[mm]、折曲げ部11j,11k間の長さは36[mm]に設定されている。
【0036】
折曲げ部11s,11r間の長さは69[mm]、折曲げ部11r,11q間の長さは60[mm]、折曲げ部11q,11p間の長さは60[mm]、折曲げ部11p,11o間の長さは60[mm]、折曲げ部11o,11n間の長さは36[mm]、折曲げ部11n,11m間の長さは36[mm]、折曲げ部11m,11k間の長さは36[mm]に設定されている。
【0037】
なお、折曲げ部11d,11e,…,11sの内角は、同一の角度168[°]に設定されている。
【0038】
一方、溶接部11Cよりも上側の、折曲げ部11c,11b間の長さは140[mm]、折曲げ部11b,11a間の長さは60[mm]、折曲げ部11a,11v間の長さは304[mm]、折曲げ部11t,11u間の長さは140[mm]というように、隣り合う2つの折曲げ部間の長さは、下側の折曲げ部11d,11e間等比べて長めに設定されている。
【0039】
以上のように構成された本実施形態の基端ブーム11によると、折曲げ部11a等の数が21個と、従来に比べて非常に多いため、基端ブーム11の剛性を高めることができる。したがって、基端ブーム11の板厚を、従来よりも薄くしても基端ブーム11の強度が低くなるのを防止又は抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の基端ブーム11によると、溶接部11Cよりも下側の折曲げ部11d等の数を溶接部11Cよりも上側の折曲げ部11c等の数よりも多く設定しているため、相対的に負荷の大きくなる下側の座屈強度を重点的に増強することができる。
【0041】
また、本実施形態の基端ブーム11によると、側面の平坦な部分(特に、上下方向の中央部付近(上下方向の軸Cの付近))に溶接部11C,11Cを有するため、接合のための溶接時に生じる溶接歪を軽減することができる。
【0042】
また、本実施形態の基端ブーム11によると、軸Cに直交する断面において、各溶接部11C,11Cを挟んだ上部及び下部の略対称の部位に、折曲げ部11c,11d、折曲げ部11t,11sが形成されているため、溶接部11Cに掛る負荷を、上下に均等に分散させることができる。
【0043】
しかも、本実施形態の基端ブーム11は、各溶接部11C,11Cを挟んだ上下対称の部位に形成された、折曲げ部11c,11d、折曲げ部11t,11sの折曲げ角度(すなわち内角の角度に対応(折り曲げ角度=180-内角の角度))が等しいため、溶接部11Cに掛る負荷の分散を、より一層、上下に均等に分散させることができる。
【0044】
また、本実施形態の基端ブーム11は、基端ブーム11の水平な上面と側面との間に形成された折曲げ部11aと、溶接部11Cを挟んで上側の部分に形成された折曲げ部11cとの間に、別の折曲げ部11bが形成されているため、折曲げ部11aと折曲げ部11cとの間が、距離の長い平面になるのを防止することができる。
【0045】
距離の長い平面部は距離の短い平面部に比べて剛性が低くなるが、距離の長い平面部に折曲げ部11bが形成されるとともに、距離の長い平面部が2つの距離の短い平面部とされることで、剛性の向上を図ることができる。
【0046】
また、基端ブーム11の折曲げ部11a,11vは、基端ブーム11の内側に配置される第1中間ブーム12からスライド部材等を介して反力を受ける。溶接部11Cよりも上側の部分に、剛性の低い、距離の長い平面部が形成されていると、この反力の変動により、距離の長い平面部が凹状と凸状とに交代的に変化し、その変化の際に異音が生じる。さらに、この距離の長い平面部は、大きな反力が作用した際の剪断変形の起点になり得る。
【0047】
しかし、本実施形態の基端ブーム11は、折曲げ部11bによって、距離の長い平面部の形成を回避しているため、異音の発生や剪断変形の発生を防止又は抑制することができる。
【0048】
本実施形態の伸縮ブーム10は、図5に示した第1中間ブーム12についても、基端ブーム11と同様に、上側部材12Bと下側部材12Aとを溶接で接合した溶接部12Cが、側面の平坦な部分に形成されている。また、溶接部12Cよりも下側に形成された折曲げ部12c~12rの数は、上側に形成された折曲げ部12b,12a,12t,12sに比べて多い。さらに、折曲げ部12b,12c、折曲げ部12s,12rは、溶接部12Cを挟んでよりも上下対称の部位に形成されている。
【0049】
したがって、本実施形態の伸縮ブーム10における第1中間ブーム12も、基端ブーム11と同様の作用効果を発揮する。
【0050】
さらに、本実施形態の伸縮ブーム10は、図6に示した第2中間ブーム13についても、基端ブーム11と同様に、上側部材13Bと下側部材13Aとを溶接で接合した溶接部13Cが、側面の平坦な部分に形成されている。また、溶接部13Cよりも下側に形成された折曲げ部13c~13rの数は、上側に形成された折曲げ部13b,13a,13t,13sに比べて多い。さらに、折曲げ部13b,13c、折曲げ部13s,13rは、溶接部13Cを挟んでよりも上下対称の部位に形成されている。
【0051】
したがって、本実施形態の伸縮ブーム10における第2中間ブーム13も、基端ブーム11と同様の作用効果を発揮する。
【0052】
なお、本実施形態の伸縮ブーム10は、図3に示すように、第3中間ブーム14及びトップブーム15は、上側部材と下側部材という2つの部材を繋ぎ合わせた構造ではなく、1つの部材を環状に折り曲げて、その端部同士を上面に平坦な部分で繋ぎ合わせた(図3において、溶接部は黒色に塗り潰された部分)構造であるため、本発明は適用されていないが、第3中間ブーム14及びトップブーム15についても、本発明を適用してもよい。
【0053】
また、本実施形態の伸縮ブーム10は、基端ブーム11、第1中間ブーム12及び第2中間ブーム13に対して本発明を適用したものであるが、伸縮ブーム10を構成する複数のブーム11~15のうち、少なくとも1つのブームに適用すればよく、本実施形態のように、3つのブーム11,12,13に適用したものに限定されない。
【0054】
<変形例1>
図7は上述した実施形態の変形例1を示す、図3相当の断面図である。
【0055】
上述した実施形態は、基端ブーム11が、全ての折曲げ部の内角が角度180[°]未満に設定されて全ての折曲げ部が山折りの態様であったが、本発明はこの実施形態に限定されず、例えば図7に示すように、一部の折曲げ部の内角が角度180[°]を超える谷折りの折曲げ部であってもよい。
【0056】
ここで、図7に示した変形例1の伸縮ブーム110は、基端ブーム111(上側部材111Bと下側部材111Aとの端部同士を突き合わせて溶接して溶接部111Cが形成されている)の内側に第1中間ブーム12が収容され、第1中間ブーム12の内側に第2中間ブーム13が収容され、第2中間ブーム13の内側に第3中間ブーム14が収容され、第3中間ブーム14の内側にトップブーム15が収容されている。
【0057】
なお、変形例1の第1中間ブーム112は実施形態の第1中間ブーム12と同一であり、変形例1の他のブーム13,14,15も、実施形態のブーム13,14,15と同一である。
【0058】
変形例1の基端ブーム111は、実施形態1における基端ブーム11の、折曲げ部11aに対応した折曲げ部111aと折曲げ部11bに対応した折曲げ部111bとの間と、折曲げ部111bと折曲げ部11cに対応した折曲げ部111cとの間に、内角が180[°]を超える谷折りの折曲げ部111w,111xが形成され、同様に、折曲げ部11vに対応した折曲げ部111vと折曲げ部11uに対応した折曲げ部111uとの間と、折曲げ部111uと折曲げ部11tに対応した折曲げ部111tとの間に、内角が180[°]を超える谷折りの折曲げ部111z,111yが形成されている。
【0059】
変形例1の基端ブーム111は、溶接部111Cを挟んで上下対称の部位に折曲げ部111c,111d、折曲げ部111t,111sが形成されているため、実施形態の基端ブーム11と同様に作用効果を発揮する。
【0060】
さらに、変形例1の基端ブーム111は、山折りの折曲げ部111a~111vに加えて、1つの山折りの折曲げ部111bを挟む2つの折曲げ部111w,111xが谷折りに形成され、1つの山折りの折曲げ部111uを挟む2つの折曲げ部111z,111yが谷折りに形成されている。
【0061】
これにより、2つの谷折りの折曲げ部111w,111xを含む部分、及び2つの谷折りの折曲げ部111z,111yを含む部分の剛性を、実施形態の基端ブーム11よりも増大させることができる。
【0062】
なお、谷折りの折曲げ部111w,111x及び折曲げ部111z,111yを、溶接部11Cよりも上側の部分の、下側に比べて距離の長い平面部に形成したことで、変形例1の基端ブーム111は実施形態の基端ブーム11に比べて、異音の発生や剪断変形の発生を、より一層効果的に、防止又は抑制することができる。
【0063】
<変形例2>
図8は上述した実施形態の変形例2を示す、図3相当の断面図である。
【0064】
上述した実施形態、変形例1は、基端ブーム11,111の最下部が折曲げ部11k,111kとなる態様であったが、本発明はこの実施形態に限定されず、例えば図8に示すように、最下部が折曲げ部ではなく平坦な面であってもよい。
【0065】
ここで、図8に示した変形例2の伸縮ブーム210は、基端ブーム211(上側部材211Bと下側部材211Aとの端部同士を突き合わせて溶接して溶接部211Cが形成されている)の内側に第1中間ブーム212が収容され、第1中間ブーム212の内側に第2中間ブーム213が収容され、第2中間ブーム213の内側に第3中間ブーム214が収容され、第3中間ブーム214の内側にトップブーム215が収容されている。
【0066】
変形例2の伸縮ブーム210を構成する各ブーム211~215は、実施形態のブーム11~15、変形例1のブーム111,12~15とは折曲げ部の数が異なり、例えば基端ブーム211については、18個の折曲げ部211a~211sが形成されている。
【0067】
そして、折曲げ部211b,211cは溶接部211Cを挟んで上下対称の部位に形成され、折曲げ部211r,211qは溶接部211Cを挟んで上下対称の部位に形成されている。
【0068】
このように、変形例2の基端ブーム211は、折曲げ部211a~211sの数が偶数であり、かつ18個の折曲げ部211a~211sが左右対称に形成されているため、折曲げ部211iと折曲げ部211jとの間の水平な平坦部分が、基端ブーム211の断面における最下部となる。
【0069】
変形例2の基端ブーム211は、溶接部111Cを挟んで上下対称の部位に折曲げ部211b,211c、折曲げ部211r,211qが形成されているため、実施形態の基端ブーム11、変形例1の基端ブーム111と同様に作用効果を発揮する。
【0070】
さらに、変形例2の基端ブーム211は、基端ブーム211の最下部がへ水平な平坦面となるため、基端ブーム211を水平な面に載置して製造する際や、基端ブーム211を高所作業車1から取り外して水平面に載置する等の際に、最下部の水平な平坦面を接地することで、最下部が折曲げ部のものに比べて倒れにくく静止状態を安定して維持することができる。
【0071】
上述した実施形態や変形例1,2は、高所作業車に用いられている伸縮ブーム10のブーム構造であるが、本発明に係るブーム構造は、高所作業車の伸縮ブームに限定するものではなく、クレーンの伸縮ブームに適用することもできる。
【0072】
上述した実施形態や変形例1,2は、溶接部を挟んで上側に形成された折曲げ部と下側に形成された折曲げ部とが、溶接部から全く同一の位置であるが、本発明に係るブームの構造は、上側の折曲げ部と下側の折曲げ部とが、溶接部を挟んで、厳密に対称の部位に形成されていなくてもよい。
【0073】
具体的には、溶接部から上側の折曲げ部までの距離と、溶接部から下側の折曲げ部までの距離との差が、20[%]以内であれば、略対称の範囲に含まれる。なお、略対称の範囲は、好ましくは10[%]以内である。
【符号の説明】
【0074】
1 高所作業車
10 伸縮ブーム
11 基端ブーム
11C 溶接部
11a-11k 折曲げ部
11m-11v 折曲げ部
C 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8