(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/657 20180101AFI20230502BHJP
F21S 41/19 20180101ALI20230502BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20230502BHJP
F21S 45/10 20180101ALI20230502BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20230502BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20230502BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20230502BHJP
F21Y 115/00 20160101ALN20230502BHJP
【FI】
F21S41/657
F21S41/19
F21S41/143
F21S45/10
F21S41/20
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21W102:10
F21Y115:00
(21)【出願番号】P 2019065559
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170423(JP,A)
【文献】特開2016-225240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291532(US,A1)
【文献】特開2009-087811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-2/00,390
2/00,500-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が搭載された回路基板と、
前記発光素子の光出射側に設けられ、前記回路基板に対して取付部材を介して取り付けられたレンズ部材と、
前記レンズ部材からの出射光について光軸調整を行うためのエイミング機構部と、を備え、
前記エイミング機構部は、
前記レンズ部材に対して取り付けられて、前記レンズ部材を回動させることで光軸調整を行うものであ
って、
前記レンズ部材は、光軸調整時における前記レンズ部材の撓みを抑えるリブを有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記レンズ部材は、正面視状態で前記回路基板よりも大きい面積を有すると共に、前記エイミング機構部を取り付けるための複数の取付孔を有し、
前記回路基板は、正面視状態で前記回路基板の端部側に前記複数の取付孔を回避するための回避切り欠きが形成されている
ことを特徴とする
請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば発光素子、ヒートシンク、リフレクタ、レンズ部材等を有した車両用灯具が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、車両用灯具は光軸調整のために、エイミング機構部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の車両用灯具に対して、エイミング機構部を備えたまま、構成を簡素化したいという要求がある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エイミング機構部を有したままで構成を簡素化することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光素子が搭載された回路基板と、発光素子の光出射側に設けられ、回路基板に対して取付部材を介して取り付けられたレンズ部材と、レンズ部材からの出射光について光軸調整を行うためのエイミング機構部と、を備え、エイミング機構部は、回路基板及びレンズ部材の少なくとも一方の対象に対して取り付けられ、この対象を回動させることで光軸調整を行うものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エイミング機構部は、回路基板及びレンズ部材の少なくとも一方の対象に対して取り付けられ、対象を回動させることで光軸調整を行うため、リフレクタやヒートシンク等を有しない場合においても回路基板やレンズ部材を通じて光軸調整を行うことができる。従って、エイミング機構部を有したままで構成を簡素化することができる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る車両用灯具を示す側方断面図である。
【
図2】
図1に示したユニット及びサブエイミング機構部を示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係るユニット及びサブエイミング機構部を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係るユニットの正面図である。
【
図7】第2実施形態に係るユニットの上方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具を示す側方断面図である。
図1に示すように車両用灯具1は、発光素子10と、回路基板20と、レンズ部材30と、サブエイミング機構部(エイミング機構部)40と、ブラケット50と、メインエイミング機構部60と、ハウジング70と、アウターレンズ80とを備えている。
【0011】
発光素子10は、光源となるLED(Light Emitting Diode)によって構成され、回路基板20に搭載されたものである。回路基板20は、絶縁性の基板に、発光素子10を点灯制御するための点灯回路が形成されたものである。また、回路基板20は、コネクタ部21についても搭載されており、コネクタ部21を通じて点灯制御信号及び点灯電力等を導入する。レンズ部材30は、発光素子10の光出射側に設けられた光学体である。
【0012】
サブエイミング機構部40は、回路基板20を上下左右に回動させることで、レンズ部材30からの出射光について光軸調整を行うものである。ブラケット50は、サブエイミング機構部40を介して、発光素子10及びレンズ部材30を搭載した回路基板20であるユニットUを支持するものである。このブラケット50は、複数のユニットU(
図1においては1つを図示)を支持可能となっており、例えば3眼LEDライトについてはブラケット50に3つのユニットUが支持されるようになっている。
【0013】
メインエイミング機構部60は、ブラケット50を上下左右に回動させることで、複数のユニットUを一括して回動させて複数のユニットUについて一括した光軸調整を行うものである。
【0014】
ハウジング70は、ユニットU、ブラケット50及びメインエイミング機構部60を収納等するものである。アウターレンズ80は、ハウジング70に対して取り付けられる透明性の樹脂材であり、ユニットUからの光を外部に導くものである。
【0015】
図2は、
図1に示したユニットU及びサブエイミング機構部40を示す斜視図である。
図3は、
図1に示したユニットUの正面図である。
図4は、
図1に示したユニットUの側方断面図である。
【0016】
図2~
図4に示すように、回路基板20は正面視状態で、略四角形状の平板のうち左上部分が上方に突出して略L字形状とされている。この回路基板20には、3隅に開口部22a~22cが形成されている。第1開口部22aは正面視状態で回路基板20の左上の隅部に形成されており、第2開口部22bは回路基板20の左下の隅部に形成されており、第3開口部22cは回路基板20の右下の隅部に形成されている。また、上記したコネクタ部21は、第2開口部22bと第3開口部22cとの中間位置に配置されている。
【0017】
発光素子10は、上記のような回路基板20の上下端の中間、且つ、左右端の中間となる位置に配置されている。レンズ部材30は、高さ方向の中間位置において左右に延びて配置されている。このレンズ部材30は、中央のレンズ31と左右の取付部32とを備えており、レンズ31を介して発光素子10からの光を出射する。発光素子10はレンズ31の焦点位置に配置されている。また、レンズ部材30は発光素子10の上下が空気流路ARを構成するように貫通状態となっており、発光素子10の熱を逃がし易い構成となっている。
【0018】
レンズ31は、前面31aが略球面となっている。一方、レンズ31は後面31bが複数の区画に形成された曲面となっており、各区画に入射した光によりそれぞれの配光を形成し、これら配光を合成することにより所望の配光パターンを形成するようになっている。
【0019】
取付部32は、左右それぞれに2つの開口を有しており、そのうちの1つにネジ33(取付部材)が挿入される。ネジ33の先端は回路基板20にまで達しており、レンズ部材30は、ネジ33を介して回路基板20に対して直接取り付けられることとなる。なお、レンズ部材30は、ネジ33に限らず、回路基板20に取り付けるための部材であれば、接着剤等を利用して取り付けられていてもよい。
【0020】
エイミング機構部40は、第1~第3ホルダ41a~41cと、第1及び第2アジャストスクリュー42a,42cと、ピボット42bとを備えている。
【0021】
第2ホルダ41bは、第2開口部22bに挿入取付されている。この第2ホルダ41bにはピボット42bの前端側が取り付けられている。ピボット42bの後端側はブラケット50に取り付けられている。ピボット42bは第2ホルダ41b及びブラケット50に対して固定的に取り付けられていることから、回路基板20のうち第2開口部22b付近は、ブラケット50との距離を常に略一定に維持する。
【0022】
これに対して、第1及び第3開口部22a,22c付近はブラケット50との距離が可変とされる。詳細に説明する。第1及び第3開口部22a,22cには、それぞれ第1及び第3ホルダ41a,41cが挿入取付される。この第1及び第3ホルダ41a,41cはネジ受部を有している。一方、第1及び第2アジャストスクリュー42a,42cは前端側がネジ切りされ、ネジ切り部が第1及び第3ホルダ41a,41cのネジ受部と噛み合っている。第1及び第2アジャストスクリュー42a,42cの後端側はブラケット50に取り付けられている。また、第1及び第2アジャストスクリュー42a,42cは回転自在とされている。
【0023】
このため、例えば第1アジャストスクリュー42aを回転させると、第1開口部22a付近とブラケット50との距離が変化する。一方、第2開口部22b付近はブラケット50との距離が固定されていることから、回路基板20は上下に回動することとなり、上下の光軸調整がされることとなる。また、第2アジャストスクリュー42cを回転させると、第3開口部22c付近とブラケット50との距離が変化する。一方、第2開口部22b付近はブラケット50との距離が固定されていることから、回路基板20は左右に回動することとなり、左右の光軸調整がされることとなる。
【0024】
なお、第1~第3開口部22a~22cの位置は、上記に限らず、回路基板20を上下左右に回動することができれば、例えば、右上部分が上方に突出して略L字形状とされている等、他の位置であってもよい。また、メインエイミング機構部60についてもサブエイミング機構部40と同様である。
【0025】
次に、本実施形態に係る車両用灯具1の作用を説明する。本実施形態に係る車両用灯具1は、回路基板20に発光素子10が設けられ、その光出射側にレンズ部材30が設けられている。すなわち、発光素子10からの光は直接レンズ部材30に至っている。また、レンズ部材30から出射された光は、アウターレンズ80を介して外部に至る。このため、リフレクタを備えない構成となっている。さらに、レンズ部材30の後面31bを複数区間に形成して所望の配光パターンを形成するため、例えばシェードを兼ねるヒートシンクを備える必要がなくなっている。
【0026】
ここで、従来の車両用灯具は、リフレクタやヒートシンクを備え、例えば発光素子が搭載されるヒートシンクごとエイミングを行うようになっている。しかし、このようなヒートシンクを備えない場合や、さらにリフレクタを備えない場合には、アジャストスクリュー42a,42c等をヒートシンクに設けることができなくなる。よって、構成を簡素化するとエイミングをどのように行うか問題が生じる。
【0027】
しかし、本実施形態に係る車両用灯具1は回路基板20を回動させるため、構成を簡素化しつつもエイミングを行うことができる。
【0028】
このようにして、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、サブエイミング機構部40は、回路基板20に対して取り付けられ、回路基板20を回動させることで光軸調整を行うため、リフレクタやヒートシンク等を有しない場合においても回路基板20を通じて光軸調整を行うことができる。従って、サブエイミング機構部40を有したままで構成を簡素化することができる車両用灯具1を提供することができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る車両用灯具は第1実施形態にものと同様であるが、一部構成が第1実施形態のものと異なっている。以下、相違点について説明する。
【0030】
図5は、第2実施形態に係るユニットU及びサブエイミング機構部40を示す斜視図である。
図6は、第2実施形態に係るユニットUの正面図である。
図7は、第2実施形態に係るユニットUの上方断面図である。
【0031】
図5~
図7に示すように、第2実施形態に係るユニットUは第1実施形態に係るユニットUと同位置に設けられるものである。このユニットUは、第1実施形態と同様の構成を備えているが、平面視してレンズ部材30が回路基板20よりも大きな面積を有するようになっている。
【0032】
第2実施形態においてレンズ部材30は、正面視状態で、略四角形状の平板のうち左上部分が上方に突出して略L字形状とされている。このレンズ部材30は、回路基板20より大きな面積を有し、3隅に開口部(取付孔)34a~34cが形成されている。第1開口部34aは正面視状態でレンズ部材30の左上の隅部に形成されており、第2開口部34bはレンズ部材30の左下の隅部に形成されており、第3開口部34cはレンズ部材30の右下の隅部に形成されている。
【0033】
レンズ部材30の第1開口部34aには第1ホルダ41aが挿入取付され、第2開口部34bには第2ホルダ41bが挿入取付され、第3開口部34cには第3ホルダ41cが挿入取付される。
【0034】
また、レンズ部材30は、前方に向けてレンズ31が突出して形成されている。また、レンズ部材30は、上記したコネクタ部21を収納するために、第2開口部34bと第3開口部34cとの中間位置において、前方に突出する矩形の突出部35が形成されている。
【0035】
発光素子10は、上記のようなレンズ部材30の上下端の中間、且つ、左右端の中間となる位置に配置されている。回路基板20は、正面視状態で、略四角形状の平板のうち左右の下隅部(端部の一例)が削り取られるようにして第1及び第2回避部(回避切り欠き)23a,23bが形成された結果、全体形状が略T形状となっている。
【0036】
第1回避部23aは、第2ホルダ41b及び第2開口部34bを回避するように形成された凹部であり、第2回避部23bは、第3ホルダ41c及び第3開口部34cを回避するように形成された凹部である。
【0037】
また、レンズ部材30は、回路基板20の左右端の近傍位置に対応して、前方に突出する円柱形状の取付部32を有している。第2実施形態においてネジ33は、回路基板20の後方からレンズ部材30の取付部32に掛けて挿入固定するようになっている。
【0038】
このような構成であることから、第2実施形態に係るユニットUはレンズ部材30を回動させることで回路基板20についても回動させて光軸調整するようになっている。
【0039】
ここで、レンズ部材30は、前後方向に延びるリブ36を備えている。サブエイミング機構部40によりレンズ部材30を回動させる際にはレンズ部材30に撓みが生じる可能性がある。しかし、前後方向に延びるリブ36を備えることで、エイミングによるレンズ部材30の撓みが抑えられることとなる。このようなリブ36は、略L形状となるレンズ部材30の周縁部から後方に延びて形成されている。また、リブ36は、
図7に示すように、回路基板20の後面よりも後方に突出する高さとされており、好ましくはネジ33のネジ山よりも後方に突出する高さとされている。
【0040】
次に、第2実施形態に係る車両用灯具1の作用を説明する。第2実施形態に係る車両用灯具1は、サブエイミング機構部40によりレンズ部材30を上下左右に回動することができる。このため、レンズ部材30にネジ33を介して取り付けられる回路基板20も同様に回動可能であり、光軸調整を行うことができる。
【0041】
この際、レンズ部材30にはリブ36が設けられていることから、回動時における撓みが抑えられることとなり、光軸調整が適切に行えなくなってしまう事態を抑制することとなる。
【0042】
また、回路基板20は、左右の下隅部に第2及び第3開口部34b,34cを回避する第1及び第2回避部23a,23bが形成されているため、ユニットUの小型化に寄与することとなる。すなわち、回路基板20が矩形状であると、矩形の外側に第2及び第3開口部34b,34cが位置する大きい面積を有するレンズ部材30とする必要がある。しかし、第1及び第2回避部23a,23bが形成されている場合には、凹部となる回避部23a,23bに第2及び第3開口部34b,34cを対応させることで、矩形の外側に第2及び第3開口部34b,34cが位置する大きい面積を有するレンズ部材30とする必要がなく、小型化が図られている。
【0043】
このようにして、第2実施形態に係る車両用灯具1によれば、第1実施形態と同様に、サブエイミング機構部40を有したままで構成を簡素化することができる車両用灯具1を提供することができる。
【0044】
さらに、第2実施形態によれば、サブエイミング機構部40は、レンズ部材30に対して取り付けられて光軸調整を行うものであって、レンズ部材30は、光軸調整時におけるレンズ部材30の撓みを抑えるリブ36を有するため、光軸調整を行う際にレンズ部材30に回動させる力が付与されたときにレンズ部材30が撓み難くなり、より適切に光軸調整を行うことができる。
【0045】
また、回路基板20は、正面視状態でその左右の下隅部に第2及び第3開口部34b,34cを回避するための第1及び第2回避部23a,23bが形成されているため、小型化を図ることができる。
【0046】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、実施形態同士の技術や公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0047】
例えば、本実施形態に係る車両用灯具1はブラケット50を有してサブエイミング機構部40により回路基板20又はレンズ部材30を回動させているが、これに限らず、例えばブラケット50を有さず、ハウジング70に対してエイミング機構部が設けられると共にこのエイミング機構部が回路基板20又はレンズ部材30を回動させるようになっていてもよい。
【0048】
さらに、第1実施形態においては、回路基板20が撓まない程度に剛性を有するもの、又は、撓みを抑制するように補強部材が設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 :車両用灯具
10 :発光素子
20 :回路基板
22a~22c:開口部
23a,23b:回避部(回避切り欠き)
30 :レンズ部材
33 :ネジ(取付部材)
34a~34c:開口部(取付孔)
36 :リブ
40 :サブエイミング機構部(エイミング機構部)
U :ユニット