(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】開口部開閉装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/00 20060101AFI20230502BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20230502BHJP
A44B 19/32 20060101ALI20230502BHJP
E06B 9/56 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
E06B9/00 Z
E06B9/17 P
A44B19/32
E06B9/56 Z
(21)【出願番号】P 2019120826
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077710(JP,A)
【文献】特開2000-189218(JP,A)
【文献】実開昭56-003996(JP,U)
【文献】特開2001-182452(JP,A)
【文献】特開2018-023668(JP,A)
【文献】中国実用新案第208203055(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 - 9/92
A44B 19/00 - 19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に設けた開口部を自動で開閉する開閉装置であって、
開口枠と、
前記開口枠内の空間を塞ぐシート状物と、
前記シート状物の外周部の正面視略U字状経路に沿ってスライダーが移動するスライドファスナーと、
前記略U字状経路の外方に、前記開口枠に設けたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動する可撓性長尺部材と、
前記長尺部材を前記ガイドレールに沿って進退させる駆動装置と、
前記スライダー及び前記長尺部材を繋ぐ連結具と、
を備える、
開口部開閉装置。
【請求項2】
前記連結具は、
前記スライダー側のスライダー連結体と、
前記長尺部材側の長尺部材連結体と、
前記スライダー連結体と前記長尺部材連結体とを繋ぐ可撓性部材と、
を有する、
請求項1に記載の開口部開閉装置。
【請求項3】
前記長尺部材連結体は、
その進退方向に離間した第1連結体及び第2連結体からなり、
前記可撓性部材は、
前記スライダー連結体と前記第1連結体とを繋ぐ第1可撓性部材、及び前記スライダー連結体と前記第2連結体とを繋ぐ第2可撓性部材からなる、
請求項2に記載の開口部開閉装置。
【請求項4】
前記シート状物、及び前記スライドファスナーは、
気密性及び/又は水密性を有する、
請求項1~3の何れか1項に記載の開口部開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に設けた開口部を自動で開閉する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に設けた開口部を自動で開閉する開閉装置として、扉の昇降により前記開口部を開閉するもの(例えば、特許文献1参照)、扉の左右方向へのスライドにより前記開口部を開閉するもの(例えば、特許文献2参照)、扉の水平軸まわりの回動により前記開口部を開閉するもの(例えば、特許文献3参照)がある。
【0003】
また、前記開閉装置として、ドラムから巻き出される多数のスラットを連接したシャッターカーテンの昇降により前記開口部を開閉するもの(例えば、特許文献4参照)、ドラムから巻き出されるシートの昇降より前記開口部を開閉するもの(例えば、特許文献5参照)がある。
【0004】
建築物の開口部を開閉するものではないが、テントや漁網等の連結部の開閉を自動で行うものとして、スライドファスナーのスライダーを駆動してエレメント列を噛合又は分離することにより、自動で開閉を行う電動ファスナーがある(例えば、特許文献6及び7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-266700号公報
【文献】特許第6430055号公報
【文献】特開第6494850号公報
【文献】特開2018-104896号公報
【文献】特開2018-172909号公報
【文献】国際公開第2018/051401号
【文献】特開2000-189218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし3のように建築物に設けた開口部を扉により開閉する開口部開閉装置では、重量物である扉により開口部を開閉することから、駆動装置の容量が大きくなるとともに、省スペース化を図り難い。
特許文献4及び5のように前記開口部をシャッターカーテンやシートの昇降により開閉する開口部開閉装置においても、多数のスラットを連接したシャッターカーテン等を重量に抗して上昇させるように巻き取る駆動力が必要であるので、駆動装置の容量が大きくなる。
【0007】
また、特許文献1ないし5の何れの開口部開閉装置においても、停電や故障等により駆動装置が動作しなくなった場合に、前記開口部を手動で迅速に開けることが困難である。
さらに、特許文献1ないし5の何れの開口部開閉装置においても、開口部を閉じた際に気密性及び/又は水密性が要求される用途に用いる場合、隙間を塞いでシールする構造が複雑になる。
【0008】
特許文献6の電動ファスナーは、スライダー6自体を電動にしており、スライダー6にモータ64a、減速機64b、回転体65、及び電源部68等を組み込む必要があるので、スライダー6が大型化する。
【0009】
特許文献6の電動ファスナーは、電力が不足した場合やモータの故障時には、引手7により電動スライダー6を移動できるとしている([0040])。しかしながら、モータ64aの故障時に引手7により電動スライダー6を移動させるように操作する際には、減速機64bの負荷側からモータ64aを手動で動かす必要があることから、大きな操作力が必要になるので操作性が低下する。
【0010】
特許文献7の電動ファスナーは、特許文献6のようにスライダーにモータや電源を備えることなく、通常のスライダー3を用いるとともに、モータMや電源等を固定側に設けている。ファスナーの長手方向に沿ってフレキシブル杆1を配設し、フレキシブル杆1の端部をモータMで回転させ、フレキシブル杆1の周面に設けた螺旋条1Aによってフレキシブル杆1の長手方向に移動する連動駒2をスライダー3に連結している。
【0011】
特許文献7の電動ファスナーを建築物に設けた開口部の開閉に用いる場合、スライダーを、屈曲経路を含む全長が長い経路を移動させるように駆動する必要がある。その場合、フレキシブル杆1の回転により、螺旋条1Aに係合する連動駒2を移動させ、連動駒2でスライダー3を駆動する構成では、信頼性の高い開閉動作を行うことは困難である。
【0012】
特許文献7の電動ファスナーは、連動駒2の摺接部2Aを、フレキシブル杆1の螺旋条1Aに出没自在に設けることにより、モータMが作動しない場合でも、手動で開閉できるとしている([0018])。しかしながら、引手6を持って手動で操作する際には、コイルスプリング2Cに弾性付勢力でフレキシブル杆1Aに押圧されて螺旋条1Aに係合している摺接部2Aを、前記弾性付勢力に抗して次々に隣の螺旋状1Aへ移動させる必要があるので操作性が低下する。
【0013】
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、建築物に設けた開口部を自動で開閉する開閉装置において、駆動装置の容量を大きくすることなく、省スペース化を図りながら、開閉動作の信頼性を向上することを第1の目的とする。
また、停電や故障等により駆動装置が動作しなくなった場合に、前記開口部を手動で迅速に開けることができるようにすることを第2の目的とする。
さらに、気密性及び/又は水密性が要求される用途への適用を容易にすることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために、以下に構成する開口部開閉装置を提供する。
【0015】
(1)
建築物に設けた開口部を自動で開閉する開閉装置であって、
開口枠と、
前記開口枠内の空間を塞ぐシート状物と、
前記シート状物の外周部の正面視略U字状経路に沿ってスライダーが移動するスライドファスナーと、
前記略U字状経路の外方に、前記開口枠に設けたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動する可撓性長尺部材と、
前記長尺部材を前記ガイドレールに沿って進退させる駆動装置と、
前記スライダー及び前記長尺部材を繋ぐ連結具と、
を備える、開口部開閉装置。
【0016】
(2)
前記連結具は、
前記スライダー側のスライダー連結体と、
前記長尺部材側の長尺部材連結体と、
前記スライダー連結体と前記長尺部材連結体とを繋ぐ可撓性部材と、
を有する、(1)に記載の開口部開閉装置。
【0017】
(3)
前記長尺部材連結体は、
その進退方向に離間した第1連結体及び第2連結体からなり、
前記可撓性部材は、
前記スライダー連結体と前記第1連結体とを繋ぐ第1可撓性部材、及び前記スライダー連結体と前記第2連結体とを繋ぐ第2可撓性部材からなる、(2)に記載の開口部開閉装置。
【0018】
(4)
前記シート状物、及び前記スライドファスナーは、
気密性及び/又は水密性を有する、(1)~(3)の何れかに記載の開口部開閉装置。
【発明の効果】
【0019】
以上における本発明に係る開口部開閉装置は、以下に示す効果を奏する。
【0020】
(1)の構成によれば、駆動装置の容量を大きくすることなく、省スペース化を図りながら、開口部開閉装置の開閉動作の信頼性を向上できる。
【0021】
(2)の構成によれば、開口部開閉装置の開閉動作の信頼性をより向上できる。その上、停電や故障等により駆動装置が動作しなくなった場合に、所要の簡単な操作を行った後、手動でスライドファスナーを迅速に開けることができる。
【0022】
(3)の構成によれば、スライドファスナーの開閉方向の切り替えを迅速に、安定かつ確実に行うことができる。その上、自動で行う開口部開閉装置の開閉動作の信頼性をより一層向上できる。
【0023】
(4)の構成によれば、建築物に設けた開口部を閉じた際に気密性及び/又は水密性が要求される用途に開口部開閉装置を容易に適用できる。その上、耐ガス性、耐熱性、耐圧性等が要求される用途に対する開口部開閉装置の適用も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係る開口部開閉装置を示す概略斜視図であり、スライドファスナーを閉じた状態を示している。
【
図2】本発明の実施の形態に係る開口部開閉装置を示す概略正面図であり、スライドファスナーを閉じた状態を示している。
【
図3】本発明の実施の形態に係る開口部開閉装置を示す概略正面図であり、スライドファスナーを開けた状態を示している。
【
図4】シート状物に取り付けたスライドファスナー、ガイドレールに沿って移動する可撓性長尺部材、並びにスライドファスナーのスライダー及び前記長尺部材を繋ぐ連結具を示す要部拡大横断平面図である。
【
図5】(a)はスライドファスナーを開ける動作を示す要部拡大正面図であり、(b)はスライドファスナーを閉じる動作を示す要部拡大正面図である。
【
図6】ローラーチェーンに設けたドグがリミットスイッチのレバーに当接して、リミットスイッチにより、スライドファスナーを閉じる方向への移動端を検出した状態を示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
本明細書においては、
図1の矢印FWの方向を前方とし、前方へ向かって左右を定義し、前方から見た図を正面図とする。
【0026】
<開口部開閉装置>
図1の概略斜視図、並びに
図2及び
図3の概略正面図に示す本発明の実施の形態に係る開口部開閉装置1は、建築物に設けた開口部を自動で開閉するものであり、開口枠F、シート状物2、スライドファスナー3、ガイドレール4、可撓性長尺部材Aであるローラーチェーン5、駆動装置M、及び連結具G等を備える。
開口枠Fは、正面視略「ロ」の字状であり、例えば形鋼を組み合わせて製造する。
【0027】
建築物に設けた開口部は、
図1及び
図2のようにスライドファスナー3を閉じた状態では閉じており、
図3のようにスライドファスナー3を開けた状態では開いている。
図3のようにスライドファスナー3を開けた状態では、スライドファスナー3が設けられた正面視略U字状経路Cの内方に位置するシート状物2の舌片2Aは、前後方向へ自由に移動できる。よって、建築物の開口部を前後方向へ通行できる。
舌片2Aは、図示しない装置により、ドラム等に巻き取り可能、かつドラム等から繰り出し可能に構成してもよい。
【0028】
<駆動装置>
駆動装置Mは、開口枠Fに取り付けられた、ギヤドモータ6、並びにスプロケット7A,7B,7C,7D及び7E等を有する。
【0029】
<シート状物>
シート状物2は、開口枠F内の空間を塞ぐように設ける。
シート状物2は、例えば、合成樹脂フィルム、織布又は不織布等を用い、所要の可撓性を有するものとする。シート状物2に用いる合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリウレタン系又はポリエチレン系のフィルムがある。
【0030】
シート状物2において、開口枠F内の空間の上下左右方向の位置等により、材質や厚みを変えるようにしてもよい。例えば、シート状物2のスライドファスナー3を設ける部分やその外方部分(例えば、舌片2A以外の部分)は、それ以外の部分(例えば、舌片2A)よりも剛性を高くするのが好ましい実施態様である。
また、シート状物2に以下に示す凸状部Eを設けた構成においては、凸状部Eが保形性を有するように、少なくとも凸状部Eの前後方向の面(以下の側面11A,11B、上面12A、下面12B、及び円弧面13A,13B)は厚くし、所要の剛性を確保する。
【0031】
シート状物2は、前方(ガイドレール4の開口4A側)へ突出する凸状部Eとして、上下方向に延びる左右の見込み方向左側面11A及び見込み方向右側面11B、並びに左右方向に延びる上下の見込み方向上面12A及び見込み方向下面12Bを有する。
また、見込み方向左側面11Aと見込み方向下面12Bとの間は、正面視円弧状の見込み方向左円弧面13Aであり、見込み方向右側面11Bと見込み方向下面12Bとの間は、正面視円弧状の見込み方向右円弧面13Bである。
なお、シート状物2において、凸状部Eを設けない構成としてもよい。
【0032】
<スライドファスナー>
図3に示すように、スライドファスナー3は、スライダー3A及びエレメント3Bからなる。
スライドファスナー3は、シート状物2の凸状部Eの側面に、すなわち見込み方向左側面11A、見込み方向左円弧面13A、見込み方向下面12B、見込み方向右円弧面13B、及び見込み方向右側面11Bに設けている。したがって、スライドファスナー3のスライダー3Aは、シート状物2の外周部の正面視略U字状経路Cに沿って移動する。
なお、シート状物2において、凸状部Eを設けない構成とした場合、スライドファスナー3は、シート状物2の面内の外周部に設ける。
【0033】
<ガイドレール及び可撓性長尺部材>
ガイドレール4は、開口枠Fに設けられ、正面視略U字状であり、シート状物2の正面視略U字状経路Cの外方に位置し、可撓性長尺部材Aであるローラーチェーン5をガイドする。
可撓性長尺部材Aであるローラーチェーン5は、無端状であり、キヤドモータ6の出力軸に固定されたスプロケット7A、スプロケット7B及び7Cに架け渡され、ガイドレール4にガイドされ、スプロケット7D及び7Eに架け渡される。
可撓性長尺部材Aは、ローラーチェーンに限定されるものではなく、他の種類のコンベヤチェーンであってもよい。
【0034】
<駆動装置による可撓性長尺部材の駆動>
駆動装置Mのギヤドモータ6を駆動することにより、キヤドモータ6の出力軸に固定されたスプロケット7Aが回転する。
それにより、無端状の可撓性長尺部材Aであるローラーチェーン5が駆動され、ローラーチェーン5はガイドレール4に沿って進退する(
図5(a)の矢印H1、及び
図5(b)の矢印H2参照)。
【0035】
<連結具>
図2の概略正面図、
図4の要部拡大横断平面図、並びに
図5(a)及び(b)の要部拡大正面図に示すように、可撓性長尺部材Aであるローラーチェーン5、及びスライダー3Aは、連結具Gにより繋がれる。
連結具Gは、スライダー3A側のスライダー連結体8と、可撓性長尺部材A側の長尺部材連結体9と、スライダー連結体8と長尺部材連結体9とを繋ぐ可撓性部材Bとを有する。
ここで、長尺部材連結体9は可撓性長尺部材Aと着脱可能に構成してもよく、可撓性部材Bは長尺部材連結体9及び/又はスライダー連結体8と着脱可能に構成してもよい。
【0036】
本実施の形態では、長尺部材連結体9は、その進退方向に離間した第1連結体9A及び第2連結体9Bからなり、可撓性部材Bは、スライダー連結体8と第1連結体9Aとを繋ぐ第1可撓性部材B1である第1ワイヤーロープ10A、及びスライダー連結体8と第2連結体9Bとを繋ぐ第2可撓性部材B1である第2ワイヤーロープ10Bからなる。
第1ワイヤーロープ10A及び第2ワイヤーロープ10Bは、例えばステンレス鋼線を撚って形成したものである。
第1可撓性部材B1及び第2可撓性部材B2は、ワイヤーロープに限定されるものではなく、アラミド繊維等からなる有機繊維ロープ等であってもよい。
【0037】
<スライドファスナーの開閉動作>
次に、建築物に設けた開口部を自動で開閉する開口部開閉装置1の動作について説明する。
【0038】
(スライドファスナーを開ける動作)
図2の概略正面図に示すスライドファスナー3を閉じた状態から、駆動装置Mにより可撓性長尺部材Aを駆動し、
図5(a)の要部拡大正面図に示すように、可撓性長尺部材Aを矢印H1のように移動させると、可撓性部材Bは矢印I1のように移動する。
それにより、可撓性部材Bの移動方向前側の第1可撓性部材B1の張力によりスライダー連結体8が牽引されるので、スライダー3Aは矢印J1のように移動する。
よって、スライダー3Aの移動によりスライドファスナー3のエレメント3Bが開くので、スライドファスナー3を自動的に開けることができる。
【0039】
(スライドファスナーを閉じる動作)
図3の概略正面図に示すスライドファスナー3を開けた状態から、駆動装置Mにより可撓性長尺部材Aを駆動し、
図5(b)の要部拡大正面図に示すように、可撓性長尺部材Aを矢印H2のように移動させると、可撓性部材Bは矢印I2のように移動する。
それにより、可撓性部材Bの移動方向前側の第2可撓性部材B2の張力によりスライダー連結体8が牽引されるので、スライダー3Aは矢印J2のように移動する。
よって、スライダー3Aの移動によりスライドファスナー3のエレメント3Bが閉じるので、スライドファスナー3を自動的に閉じることができる。
【0040】
図2の概略正面図、及び
図4の要部拡大横断平面図に示すように、シート状物2に凸状部Eを設けた構成である場合、スライドファスナー3のスライダー3Aは、前記の通り、凸状部Eの側面(見込み方向右側面11B、見込み方向右円弧面13B、見込み方向下面12B、見込み方向左円弧面13A、及び見込み方向左側面11A)を移動する。
それにより、スライダー3Aを可撓性部材Bで牽引する際に、
図4に示すように、凸状部Eの側面に装着されたスライドファスナー3に対して、スライドファスナー3の装着面に略垂直な面内を可撓性部材Bが移動するように可撓性部材Bの牽引方向を設定することができる。よって、可撓性部材Bで牽引する力(可撓性部材Bの張力)がスライドファスナー3に対してバランス良く作用するので、スライドファスナー3の開閉を円滑に行うことができる。
【0041】
<スライドファスナーの開閉端におけるリミットスイッチの動作>
図5(b)の要部拡大正面図のように可撓性長尺部材Aが矢印H2のように移動してスライドファスナー3を自動的に閉じる動作を行っている際における移動端の検出は、
図2の概略正面図に示すリミットスイッチL1及びドグD1で行う。
すなわち、ドグD1が
図2の概略正面図及び
図6の要部拡大正面図に示すように、リミットスイッチL1のレバーに当接してリミットスイッチL1を操作すると、リミットスイッチL1により移動端を検出する。それにより、駆動装置Mを停止させる。
【0042】
同様に、
図5(a)の要部拡大正面図のように可撓性長尺部材Aが矢印H1のように移動してスライドファスナー3を自動的に開ける動作を行っている際における移動端の検出は、
図3の概略正面図に示すリミットスイッチL2及びドグD2で行う。
すなわち、ドグD2が
図3の概略正面図に示すように、リミットスイッチL2のレバーに当接してリミットスイッチL2を操作すると、リミットスイッチL2により移動端を検出する。それにより、駆動装置Mを停止させる。
【0043】
<気密性及び/又は水密性等を持たせる方法>
建築物に設けた開口部を閉じた際に気密性及び/又は水密性が要求される用途に開口部開閉装置1を用いる場合、シート状物2、及びスライドファスナー3を気密性及び/又は水密性を有するものとすればよい。
それにより、隙間を塞ぐシール装置等を付加することなく、建築物に設けた開口部を閉じた際に気密性及び/又は水密性が要求される用途に開口部開閉装置1を容易に適用できる。その上、耐ガス性、耐熱性、耐圧性等が要求される用途に対する開口部開閉装置1の適用も容易になる。
【0044】
<作用効果>
以上のような開口部開閉装置1の構成によれば、開口枠F内の空間を塞ぐシート状物2の外周部の正面視略U字状経路Cをスライドファスナー3により開閉可能にし、開口枠Fに設けたガイドレール4に沿って移動する可撓性長尺部材Aとスライドファスナー3のスライダー3Aとを連結具Gにより繋いでいる。そして、駆動装置Mにより可撓性長尺部材Aを駆動し、その駆動力をスライダー3Aに伝えてスライダー3Aを進退させる。
それにより、駆動装置Mの容量を大きくすることなく、省スペース化を図りながら、開口部開閉装置1の開閉動作の信頼性を向上できる。
【0045】
また、駆動装置Mにより駆動される可撓性長尺部材Aの駆動力が、可撓性部材Bの張力によりスライダー3Aに伝えられ、スライダー3Aが牽引される。
それにより、屈曲経路を含む全長が長い経路を移動させるようにスライダー3Aを駆動する必要がある開口部開閉装置1の開閉動作の信頼性をより向上できる。
【0046】
さらに、停電や故障等により駆動装置Mが動作しなくなった場合には、ワイヤーロープカッターやニッパー等の工具を用いて可撓性部材Bを切断する。あるいは、着脱可能に構成した長尺部材連結体9及び/又は可撓性部材Bの着脱部を取り外す。
それにより、可撓性長尺部材Aとスライダー3Aとの連結が解除されるので、スライダー連結体8を持って手動でスライドファスナー3を迅速に開けることができる。
【0047】
さらにまた、可撓性長尺部材Aの駆動力をスライダー3Aに伝える可撓性部材Bが、進退方向に離間した第1可撓性部材B1及び第2可撓性部材B2からなる。
それにより、スライダー3Aを移動させる際の張力による牽引を、スライダー3Aの移動方向に応じて第1可撓性部材B1及び第2可撓性部材B2の一方が行いながら、開閉方向の切り替えを迅速に、安定かつ確実に行うことができる。
【0048】
また、可撓性部材Bを2本の可撓性部材B1,B2により構成していることから、2本の可撓性部材B1,B2の一方が切断した場合であっても、開口部開閉装置1の開閉動作を行うことができるので、このような冗長性により、自動で行う開口部開閉装置1の開閉動作の信頼性をより一層向上できる。
【0049】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 開口部開閉装置
2 シート状物
2A 舌片部
3 スライドファスナー
3A スライダー
3B エレメント
4 ガイドレール
4A 開口
5 ローラーチェーン
6 ギヤドモータ
7A,7B,7C,7D,7E スプロケット
8 スライダー連結体
9 長尺部材連結体
9A 第1連結体
9B 第2連結体
10A 第1ワイヤーロープ
10B 第2ワイヤーロープ
11A 見込み方向左側面
11B 見込み方向右側面
12A 見込み方向上面
12B 見込み方向下面
13A 見込み方向左円弧面
13B 見込み方向右円弧面
A 可撓性長尺部材
B 可撓性部材
B1 第1可撓性部材
B2 第2可撓性部材
C 正面視略U字状経路
D1,D2 ドグ
E 凸状部
F 開口枠
FW 前方
G 連結具
H1,H2 可撓性長尺部材の移動方向
I1,I2 可撓性部材の移動方向
J1,J2 スライダーの移動方向
L1,L2 リミットスイッチ
M 駆動装置