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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230502BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230502BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J7/38
C09J11/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019170247
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046499
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
(72)【発明者】
【氏名】戸根 嘉孝
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05902603(US,A)
【文献】特開2018-131500(JP,A)
【文献】特開2016-132748(JP,A)
【文献】特開2018-002805(JP,A)
【文献】特開2001-253819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(x)およびポリイソシアネート(y)の反応生成物であるポリウレタンポリオール(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)と、水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)(但し、テストステロンを除く)とを含む粘着剤。
【請求項2】
ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)(但し、テストステロンを除く)を0.5~20質量部含むことを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)(但し、テストステロンを除く)が、1分子中に1つの水酸基を有することを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
基材シートと、請求項1~3いずれか1項記載の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種部材の表面保護シートとして、基材シート上に粘着層が形成された粘着シートが広く用いられている。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびウレタン系粘着剤等がある。アクリル系粘着剤は粘着力に優れるが、粘着力が強いために被着体に貼着した後の再剥離性が良くない。特に、高温高湿環境下での経時後には、粘着力の上昇により再剥離性が一層低下して、再剥離後に被着体の表面に粘着剤が残る被着体汚染を生じやすい傾向がある。シリコーン系粘着剤は、被着体に汚染を生じやすく、さらに分子量の比較的低いシリコーン樹脂が揮発して電子デバイス等の機器の表面に吸着して不具合を起こす恐れもある。これに対して、ウレタン系粘着剤は、被着体に対して良好な密着性を有しつつ、再剥離性にも比較的優れ、揮発もし難い。
【0003】
特許文献1には、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとを2種類の触媒の存在下に反応させて得られるポリウレタンポリオールに、多官能イソシアネート化合物を配合したウレタン系粘着剤が開示されている(請求項1)。このウレタン系粘着剤は、被着体に貼着した後に40℃-65%RHの条件下で放置した後の再剥離性が良好であることが記載されている(段落0051および表2の実施例1~6等)。
本明細書において、特に明記しない限り、「RH」は相対湿度を示す。
【0004】
特許文献2には、ポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート化合物と炭素数が10~30である脂肪酸エステルとを含むウレタン系粘着剤が開示されている(請求項1)。このウレタン系粘着剤は、被着体に貼着した後に40℃-80%RHの条件下で24時間放置した後の再剥離性が良好であることが記載されている(段落0049および表1の実施例1~4等)。
【0005】
特許文献3には、ポリウレタンポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含むウレタン系粘着剤が開示されている(請求項1)。このウレタン系粘着剤は、被着体に貼着した後に60℃-90%RHの条件下で96時間放置した後の再剥離性が良好であることが記載されている(段落0061および表1の実施例1~18等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-73040号公報
【文献】特開2011-190420号公報
【文献】特開2015-7226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶ディスプレイ(LCD)および有機エレクトロルミネセンスディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ、並びに、かかるフラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイは、テレビ、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、および携帯情報端末等の電子機器に広く使用されている。
ウレタン系粘着シートは、フラットパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ、並びに、これらの製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護シートとして好適に用いられる。
上記電子機器の利用範囲は広がってきており、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれる可能性が生じつつある。
【0008】
OELD等のディスプレイでは、基板としてプラスチックフィルムを用いることでフレキシブル化も可能である。かかる用途では、粘着シートをフレキシブルな被着体に貼着した構造体が繰り返し湾曲された場合も、粘着層が基材シートから剥離しない、良好な湾曲性を有することが好ましい。また、粘着シート剥離時の光学部材へのダメージを避けるため、粘着シートは低い粘着性であることが好ましい。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することが可能な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
本発明はまた、優れた湾曲性かつ低い粘着性を有する粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。
すなわち、本発明は、ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)との反応生成物であるポリウレタンポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および、水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)を含む粘着剤に関する。
【0011】
また、本発明はポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記化合物(C)を0.5~20質量部含むことを特徴とする前記粘着剤に関する。
【0012】
また、本発明は前記化合物(C)が、1分子中に1つの水酸基を有することを特徴とする前記粘着剤に関する。
【0013】
また、本発明は基材シートと、前記粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む、粘着シートに関する。
【0014】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することが可能な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
本発明によればまた、優れた湾曲性かつ低粘着性の両立を可能とする粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0017】
≪粘着剤≫
本発明の粘着剤は、ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)との反応生成物であるポリウレタンポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)を含む。
これにより、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有し、低粘着性かつ湾曲性にも優れた粘着剤とすることができる。
【0018】
<ポリウレタンポリオール(A)>
ポリウレタンポリオール(A)は、1種以上のポリオール(x)と1種以上のポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて得られる反応生成物である。共重合反応は必要に応じて、1種以上の触媒存在下で行うことができる。共重合反応には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。
【0019】
[ポリオール(x)]
ポリオール(x)は、2つ以上の水酸基を有する公知のポリオールが好ましい。ポリオール(x)は、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエン変性ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらの中でもポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールがより好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールは、公知のポリエステルポリオールが用いられる。ポリエステルポリオールは、例えば、酸成分およびグリコール成分を必須とし、必要に応じてポリオール成分を用いてエステル化反応により合成できる。酸成分としてコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。また、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオール成分として、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0021】
ポリエステルポリオールの分子量は、特に制限無く使用できるところ、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量500~5,000を使用すると適度な反応性が得られ、凝集力がより良好な樹脂が得易い。ポリオール(x)を2種類以上使用する場合、ポリエステルポリオールは、ポリオール(a)100モル%中の0~100モル%が好ましく、30~80モル%がより好ましい。
【0022】
ポリエーテルポリオールは、公知のポリエーテルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールは、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られる。ポリエーテルポリオールは、例えば2つ以上の水酸基を有する、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましい。
ポリプロピレングリコールは、プロピレンオキシドを付加重合させることで得られるが、大部分のプロピレンオキシドがβ開裂して末端がイソシアネートと反応性の低い2級水酸基になる。そこで、多官能イソシアネート化合物(B)との反応性を上げるため、エチレンオキシドを付加重合する方法や、プロピレンオキシドを特定の触媒によってα開裂する方法で、末端1級水酸基のポリプロピレングリコールを得る公知の方法がある。
ポリエーテルポリオールの分子量は、特に制限無く使用できるところ、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量500~5,000を使用すると適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。ポリオール(a)を2種類以上使用する場合、ポリエーテルポリオールは、ポリオール(a)100モル%中の10~100モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましい。
【0023】
また、本発明では必要に応じてポリエーテルポリオールの一部をエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類に置き換えて併用することができる。
【0024】
ポリブタジエン変性ポリオールは、例えば、2つ以上の水酸基末端を有し、1,2-ビニル部位、1,4-シス部位、1,4-トランス部位またはそれらが水素化された構造を有し、直鎖状若しくは分岐状のポリブタジエンである。
【0025】
ポリブタジエン変性ポリオールの数平均分子量(Mn)は、200~6,000が好ましく、500~6,000がより好ましく、500~4,000がさらに好ましく、500~3,000が特に好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。
【0026】
ポリブタジエン変性ポリオールを水素化する程度は、水素化する前に存在する二重結合部位の全てが水素化されていることが好ましいが、本発明においては、若干の二重結合部位が残存していても良い。
【0027】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオール等が好ましい。
【0028】
ポリカプロラクトンポリオールの分子量は、特に制限無く使用できるところ、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、粘着力と凝集力をさらに向上できる。ポリオール(x)を2種類以上使用する場合、ポリカプロラクトンポリオールは、ポリオール(a)100モル%中の0~80モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましい。
【0029】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
【0030】
ポリカーボネートポリオールの分子量は、特に制限無く使用できるところ、数平均分子量500~5,000が好ましい。数平均分子量を前記範囲にすることで適度な反応性が得られ、凝集力が良好な樹脂が得易い。ポリオール(x)を2種類以上使用する場合、ポリカーボネートポリオールは、ポリオール(a)100モル%中の0~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましい。
【0031】
本発明に用いるポリオール(a)は、2種類以上のポリオール(a)を使用することが好ましい。ポリオールを2種類以上使用すると、分子量分布の調整が容易になるため凝集力を任意の調整ができるので、粘着力と湾曲性を高いレベルでバランスが取れる。
【0032】
また本発明においてポリオール(x)は、3つ以上の水酸基を有するポリオールを併用することが好ましい。3つ以上の水酸基を有するポリオールは、ポリオール(x)100質量%中に、10~95質量%含むことが好ましい。3つ以上の水酸基を有するポリオールを所定の範囲にすると、粘着剤の塗工性がより向上し、形成した粘着剤層の良好な架橋密度がより向上する上、再剥離性がより向上する。
【0033】
[ポリイソシアネート(y)]
ポリイソシアネート(y)としては公知のものを使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0037】
その他、ポリイソシアネートとしては、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネート(y)としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0039】
[触媒]
触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
【0040】
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0041】
有機金属系化合物としては、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。
錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系が挙げられる。
【0042】
触媒は、1種または2種以上用いることができる。
反応性の異なる複数種のポリオール(x)を併用する場合、これらの反応性の相違により、単一触媒の系では重合安定性の不良または反応溶液の白濁が生じやすくなる恐れがある。この場合、2種以上の触媒を用いることにより、反応(例えば反応速度等)を制御しやすく、上記問題を解決することができる。反応性の異なる複数種のポリオール(x)を併用する系では、2種以上の触媒を用いることが好ましい。2種以上の触媒の組合せは特に制限されず、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、および錫系/錫系等が挙げられる。好ましくは錫系/錫系、より好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫である。
2-エチルヘキサン酸錫とジブチル錫ジラウレートとの質量比(2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレート)は特に制限されず、好ましくは0超1未満、より好ましくは0.2~0.6である。当該質量比が1未満であれば、触媒活性のバランスが良く、反応溶液のゲル化および白濁を効果的に抑制し、重合安定性がより向上する。
【0043】
1種以上の触媒の使用量は特に制限されず、1種以上のポリオール(x)と1種以上のポリイソシアネート(y)との合計量に対して、好ましくは0.01~1.0質量部である。
【0044】
[溶剤]
ポリウレタンポリオール(A)の重合には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ポリウレタンポリオール(A)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0045】
[重合方法]
ポリウレタンポリオール(A)の重合方法としては特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知重合方法を適用することができる。
重合手順は特に制限されず、
手順1)1種以上のポリオール(x)、1種以上のポリイソシアネート(y)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)1種以上のポリオール(x)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上の有機ポリイソシアネ-ト(y)を滴下添加する手順が挙げられる。
反応を制御しやすいことから、手順2)が好ましい。
【0046】
触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは100℃未満、より好ましくは85~95℃である。反応温度が100℃以上では、反応速度および重合安定性等の制御が困難となり、所望の分子量を有するポリウレタンポリオール(A)の生成が困難となる恐れがある。
触媒を使用しない場合の反応温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。触媒を使用しない場合の反応時間は、好ましくは3時間以上である。
【0047】
ポリウレタンポリオール(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~50万、より好ましくは3万~40万、特に好ましくは5万~35万である。ポリウレタンポリオール(A)のMwが適切な範囲にあることで良好な塗工性が得易い。分子量の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1~15、より好ましくは4~12である。
【0048】
<多官能イソシアネート化合物(B)>
多官能イソシアネート化合物(B)としては公知のものを使用でき、ポリウレタンポリオール(A)の原料であるポリイソシアネート(y)として例示した化合物(具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、これらのトリメチロールプロパンアダクト体/ビュウレット体/3量体)を用いることができる。
【0049】
<水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)>
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)とは、水酸基を有し、シクロペンタノ-ペルヒドロフェナントレン核(ステロイド核と同義)を基本骨格とする化合物であり、一般的にホルモン等が多いが、置換基によって多様な構造を有することができ、植物に存在するものも多数ある。
【0050】
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)としては、例えば水酸基を有するシクロペンタノ-ペルヒドロフェナントレン核を有する化合物、前記核の脂肪環に二重結合を有する化合物、およびこれらに置換基を有する化合物等が挙げられ、化合物(C)の具体例としては、下記式[1]~[9]等で表される化合物等が挙げられる。(下記式中、破線はC=C二重結合であっても良いことを示す。)
【0051】
【化1】
【0052】
【化2】
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】

(式中、nは1~50を表す。)
【0060】
上記式[1]~[9]中、Ra~Riは、それぞれ独立に、
水素原子、酸素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、ホルミル基、
アルキルカルボニル基、ヒドロキシアルキルカルボニル基、カルボキシアルキルカルボニル基、ホルマートアルキルカルボニル基、アセトキシアルキルカルボニル基、
アルキルカルボキシ基、ヒドロキシアルキルカルボキシ基、カルボキシアルキルカルボキシ基、ホルマートアルキルカルボキシ基、アセトキシアルキルカルボキシ基、
アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、カルボキシアルコキシ基、ホルマートアルコキシ基、アセトキシアルコキシ基、
ベンゾイルオキシ基または下記式[10]のいずれかで表される基である。
アルキル基としては、メチル基やエチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基やアリル基等が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基やプロパ-2-イン-1-イル基等が挙げられる。
(「ホルマート」とは、「-O-CH=O」を意味する。下記式中、|*|は、結合手であることを示す。)
【0061】
【化10】
【0062】
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)は、水酸基を有するシクロペンタノペルヒドロフェナントレン核を有する化合物であれば制限されないが、なかでも、1分子中に1つの水酸基を有する化合物であることが好ましい。1分子中に1つの水酸基を有することによって、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との架橋反応を制御でき高い湾曲性を得ることができる。
【0063】
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)の水酸基としては、第一級水酸基および/または第二級水酸基であることが好ましい。第一級水酸基および/または第二級水酸基であることによって、ポリイソシアネート成分(B)との反応性が向上し、高い耐湿熱性と湾曲性を得ることができる。
【0064】
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)の分子量は、250~800であることが好ましく、300~500であることがより好ましい。分子量が250以上であると、十分な凝集力が得られ、高温高湿度環境下に対する再剥離性を向上することができる。分子量が800以下であると、過度な凝集力を抑制でき、湾曲性の低下を抑制できる。
【0065】
その他、好ましい態様としては、前記式[1]~[9]中の置換基である、Ra~Riが、炭素数が5つ以上の、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基であることが好ましい。置換基として炭素数が5つ以上の、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を有する場合、接着力と耐湿熱性を向上することができ、さらに、ポリウレタンポリオール(A)との相溶性が向上する。
【0066】
以上述べた水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)の具体例としては、
デスオキシコルチコステロン、11-デヒドロコルチコステロン、日光ケミカルズ(株)より入手できる、NIKKOL BPS-X(ただしXは、5、10、20、30)、NIKKOL BPSH-25、NIKKOL DHC-30等の第一級水酸基を有するステロイド骨格を有する化合物;
コレステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、ラノステロール、エルゴステロール、β-コレスタノール、テストステロン、エストロン、デヒドロエピアンドロステロン、コプロスタノール、プレグネノロン、エピコレスタノール、7-デヒドロコレステロール、チゴゲニン、ヘコゲニン等の第二級水酸基を有するステロイド骨格を有する化合物;
メタンジエノン、酢酸コルチゾン、ステノロン等の第三級水酸基を有するステロイド骨格を有する化合物;
β-エストラジオール、α-エストラジオール、ボランジオール、コルチゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、アルドステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、4-アンドロステン-11α, 17β-ジオール-3-オン等の多官能水酸基を有するステロイド骨格を有する化合物等が挙げられる。
これらの内、コレステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、ラノステロール、エルゴステロール、β-コレスタノール、コプロスタノール、エピコレスタノール、7-デヒドロコレステロールが、1分子中に1つの水酸基を有し、分子量が300~500であり、置換基の炭素数が5つ以上である点からより好ましい。
【0067】
これらの水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の混合物としては、例えば、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール等の混合物である、フィトステロールが挙げられる。
【0068】
本発明の接着剤組成物は、多官能イソシアネート(B)中のイソシアナト基と、ポリウレタンポリオール(A)中の水酸基および、水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)中の水酸基の当量比(イソシアナト基/水酸基)が0.6~5.0であることが好ましく、0.8~2.5であることがより好ましい。イソシアナト基/水酸基比が0.6以上であると、高い再剥離性が得られ、イソシアナト基/水酸基比が5.0以下であると、過度な凝集力に伴う湾曲性の低下が抑制できる。
【0069】
<可塑剤>
濡れ性を向上できることから、本発明の粘着剤はさらに1種以上可塑剤を含むことができる。可塑剤としては、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤、およびリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0070】
脂肪酸エステルとしては、炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステル、炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステル、および、炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル等が挙げられる。
【0071】
炭素数6~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0072】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸としては、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸等が挙げられる。4価以下のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタン等が挙げられる。
【0073】
ポリエーテルエステル系可塑剤としては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0074】
可塑剤は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを縮合させたソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル等の、脂肪酸エステル構造とポリエーテル構造とを含む化合物であってもよい。例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0075】
ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸ブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、およびo-アセチルクエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0076】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、およびトリクレジルホスフェート等が挙げられる。
【0077】
可塑剤の数平均分子量(Mn)は特に制限されず、濡れ速度向上等の観点から、好ましくは200~1,000、より好ましくは230~900、さらに好ましくは250~800、特に好ましくは250~500である。
【0078】
<帯電防止剤>
本発明の粘着剤は、さらに帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤を含むと粘着シートを剥離する際の静電気放電を抑制し、例えば、ディスプレイ等に組み込まれた部品等の破損を防止し易い。帯電防止剤は、例えば、無機塩、イオン性液体、界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン性液体が好ましい。なお、「イオン性液体」は、常温溶融塩ともいい、25℃で液体の性状を示す。
【0079】
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
イオン性液体は、カチオンとアニオンの塩であり、カチオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0081】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0082】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0083】
アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0084】
その他、カチオンがピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびスルホニウム塩等である公知のイオン液体を適宜使用できる。
【0085】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のタイプに分類できる。
【0086】
非イオン性のタイプは、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、肪酸ジエタノールアミド、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性のタイプは、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、およびポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。カチオン性のタイプは、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、および第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型等が挙げられる。
両性のタイプは、例えば、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0087】
帯電防止剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0088】
帯電防止剤の配合量は、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.03~5質量部がより好ましい。
【0089】
<溶剤>
本発明の粘着剤は必要に応じて、1種以上の溶剤を含むことができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ポリウレタンポリオール(A)の溶解性および溶剤の沸点等の観点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0090】
<他の任意成分>
本発明の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、1種以上の他の任意成分を含むことができる。他の任意成分としては、触媒、ウレタン系樹脂以外の他の樹脂、充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、導電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、消泡剤、および滑剤等が挙げられる。
【0091】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、および酸化チタン等が挙げられる。
【0092】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤;硫黄系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤等の過酸化物分解剤等が挙げられる。
【0093】
フェノール系酸化防止剤としては、
2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、およびステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、および3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0094】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0095】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0096】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0097】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、およびビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0098】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’,-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、および[2(2’-ヒドロキシ-5’-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0099】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、およびp-オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0100】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、およびエチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0101】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線安定剤等が挙げられる。
【0102】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、[ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート]、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、およびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0103】
紫外線安定剤としては、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、およびニッケル-ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0104】
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、およびシリコーン系レベリング剤等が挙げられる。アクリル系レベリング剤としては、ポリフローNo.36、ポリフローNo.56、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.99C(いすれも共栄社化学社製)等が挙げられる。フッ素系レベリング剤としては、メガファックF470N、メガファックF556(いずれもDIC社製)等が挙げられる。シリコーン系レベリング剤としては、グランディックPC4100(DIC社製)等が挙げられる。
【0105】
<配合比>
本発明の粘着剤は、ポリウレタンポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)を必須成分として含む。これらの配合比は特に制限されないが、好ましい配合比は以下の通りである。
【0106】
1種以上のポリウレタンポリオール(A)100質量部に対する1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、好ましくは1~25質量部、より好ましくは3~20質量部である。1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、1質量部以上であれば粘着層の凝集力が良好となり、25質量部以下であれば粘着層の湾曲性が良好となる。
【0107】
水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)の含有量は特に限定されないが、ポリウレタンポリオール(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~20質量部であり、より好ましくは0.5~16質量部である。水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)の含有量が上記範囲であることによって、低粘着力と高い湾曲性、および高温高湿度環境下に対する高い再剥離性を得ることができる。
【0108】
<粘着剤の製造方法>
本発明の粘着剤の製造方法は、特に制限されない。
本発明に係る一態様の粘着剤の製造方法は、
ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて、ポリウレタンポリオール(A)を得る工程と、
ポリウレタンポリオール(A)に対して、イソシアネート化合物(B)と水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)とを混合する工程とを有する。
【0109】
≪粘着シート≫
本発明の粘着シートは、基材シートと、上記の本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む。
粘着層は、基材シートの片面または両面に形成することができる。必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離シートで被覆することができる。なお、剥離シートは、粘着シートを被着体に貼着する際に剥離される。
【0110】
基材シートとしては特に制限されず、樹脂シート、紙、および金属箔等が挙げられる。基材シートは、これら基材シートの少なくとも一方の面に任意の1つ以上の層が積層された積層シートであってもよい。基材シートの粘着層を形成する側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理およびアンカーコート剤塗布等の易接着処理が施されていてもよい。
【0111】
樹脂シートの構成樹脂としては特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等エステル系樹脂;ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む);これらの組合せ等が挙げられる。
ポリウレタンシートを除く樹脂シートの厚みは特に制限されず、好ましくは15~300μmである。ポリウレタンシート(発泡体を含む)の厚みは特に制限されず、好ましくは20~50,000μmである。
【0112】
紙としては特に制限されず、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。
金属箔の構成金属としては特に制限されず、アルミニウム、銅、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0113】
剥離シートとしては特に制限されず、樹脂シートまたは紙等の基材シートの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを用いることができる。
【0114】
粘着シートは、公知方法にて製造することができる。
はじめに、基材シートの表面に本発明の粘着剤を塗工して、本発明の粘着剤からなる塗工層を形成する。塗布方法は公知方法を適用でき、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等が挙げられる。
次に、塗工層を乾燥および硬化して、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成する。加熱乾燥温度は特に制限されず、60~150℃程度が好ましい。粘着層の厚み(乾燥後の厚み)は用途によって異なるが、好ましくは0.1~200μmである。
次に必要に応じて、公知方法により粘着層の露出面に剥離シートを貼着する。
以上のようにして、片面粘着シートを製造することができる。
上記操作を両面に行うことで、両面粘着シートを製造することができる。
【0115】
上記方法とは逆に、剥離シートの表面に本発明の粘着剤を塗工して、本発明の粘着剤からなる塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成し、粘着層の露出面に基材シートを積層してもよい。
【0116】
<用途>
本発明の粘着シートは、テープ、ラベル、シール、および両面テープ等の形態で、使用することができる。本発明の粘着シートは、表面保護シート、化粧用シート、および滑り止めシート等として好適に使用される。
液晶ディスプレイ(LCD)および有機エレクトロルミネセンスディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ、並びに、かかるフラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイは、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、および携帯情報端末等の電子機器に広く使用されている。
【0117】
本発明の粘着シートは、フラットパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ、並びに、これらの製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護シートとして好適に用いられる。
上記電子機器の利用範囲は広がってきており、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれる可能性が生じつつある。
本発明の粘着シートは、良好な粘着性を有し、かつ、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれても、良好な再剥離性を有することができ、好ましい。
【0118】
本発明の粘着シートは、従来よりも湾曲性に優れる。そのため、本発明の粘着シートは、基板としてプラスチックフィルムを用いたOELD等のフレキシブルなディスプレイ、および、この製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護シートとして、好適に用いることができる。
【0119】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することが可能な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
本発明によればまた、優れた湾曲性かつ低粘着性を有する粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
【実施例
【0120】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0121】
<不揮発分の測定>
試料溶液約1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥して、残分を秤量して残率計算をし、不揮発分(不揮発分濃度)とした。
【0122】
<Mwの測定>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りとした。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.5mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.1%、
試料注入量:100μL。
【0123】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、ピリジンを100ml加えて溶解した。さらに、アセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、1時間攪拌した後、0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。水酸基価(単位:mgKOH/g)は次式により求めた。水酸基価は乾燥した試料の数値とした。
水酸基価=[{(b-a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
D:酸価(mgKOH/g)
【0124】
<イソシアナト価(NCO価)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料10gを精密に量り採り、オルトジクロロベンゼン25ml、ジ-n-ブチルアミン/o-ジクロロベンゼン(質量比:ジ-n-ブチルアミン/o-ジクロロベンゼン=1/24.8)混合液10mlを加えて溶解した。この溶液に、メタノール80g、ブロムフェノールブルー試薬を指示薬として加え、0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定した。溶液が黄緑色を呈して30秒間以上保持したところを終点とした。NCO価(単位:%)は次式により求めた。
NCO価={0.42×(B-C)×F}/W
W:試料の採取量(g)
B:試料滴定に要した0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(ml)
C:空試験の滴定に要した0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液のファクター
【0125】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<ポリオール(x)>
(x-1):P-1010(クラレ社製)、2官能ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数2、
(x-2):P-2010(クラレ社製)、2官能ポリエステルポリオール、Mn2000、水酸基数2、
(x-3):PP-1000(三洋化成社製)、2官能ポリエーテルポリオール、Mn1000、水酸基数2、
(x-4):GI1000(日本曹達社製)、両末端水酸基水素化 ポリブタジエン、Mn1500、水酸基数2、
(x-5):AM302(アデカ社製)、3官能ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、
(x-6):F-3010(クラレ社製)、3官能ポリエステルポリオール、Mn3000、水酸基数3。
【0126】
<ポリイソシアネート(y)>
(y-1):デスモジュールH(東ソー社製)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、
(y-2):タケネート500(三井化学社製)、1,3-キシリレンジイソシアネート、
(y-3):VESTANAT IPDI(EVONIK社製)、イソホロンジイソシアネート。
【0127】
<多官能イソシアネート化合物B>
(B-1):TDI-TMPアダクト(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアナト基数=3、NCO価=6.5%、不揮発分=37.5%)
(B-2):IPDIヌレート(イソホロンジイソシアネートのヌレート体、イソシアナト基数=3、NCO価=11.8%、不揮発分=70.0%)
【0128】
<水酸基およびステロイド骨格を有する化合物(C)>
フィトステロール:(製品名「フィトステロールCO」、タマ生化学社製)、水酸基数1(第二級水酸基)
コレステロール:分子量386.7、水酸基数1(第二級水酸基)
デスオキシコルチコステロン:分子量330.5、水酸基数1(第一級水酸基)
デヒドロエピアンドロステロン:分子量288.4、水酸基数1(第二級水酸基)
ボランジオール:分子量276.4、水酸基数2(第二級水酸基)
ステノロン:分子量300.44、水酸基数1(第三級水酸基)
【0129】
<その他の化合物>
IPM:ミリスチン酸イソプロピル
W-260:ポリアルキレングリコール系化合物、DIC製
酢酸コレステロール:分子量428.7
【0130】
[ポリウレタンポリオールAの合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下漏斗を備えた4口フラスコに、ポリオール(x-1)(「P-1010」(クラレ社製))を100部仕込んだ。これに、溶剤としてトルエン77部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03部および2-エチルヘキサン酸錫0.01部を加えた後、窒素雰囲気下で90℃まで徐々に昇温した。これにポリイソシアネート(y-1)(「デスモジュールH」(東ソー社製))を15部滴下し、滴下終了後から2時間反応を行った。赤外吸収スペクトル(IR)で残存イソシアネート基の消滅を確認した上で反応液を冷却し、反応を終了した。以上のようにして、ポリウレタンポリオール(A-1)の溶液(不揮発分:60%)を得た。得られたポリウレタンポリオール(A-1)のMwは、43,000であり、水酸基価は10.7mgKOH/gであった。
【0131】
(合成例2~6)
合成例2~6においては、用いたポリオールとポリイソシアネートの種類とこれらの配合比を表1に示すように変更した以外は合成例1と同様にして、ポリウレタンポリオールル(A-2~6)を得た。各合成例において、得られたポリウレタンポリオールのMwと水酸基価を表1に示す
【0132】
【表1】
【0133】
[ウレタン系粘着剤の製造]
(実施例1)
合成例1で得られたポリウレタンポリオール(A-1)100部、多官能イソシアネート化合物(B-1)5.6部、化合物(C)として、フィトステロール1部および、溶剤として酢酸エチル50部を配合し、ディスパーで攪拌することで、ウレタン系粘着剤を得た。なお、溶剤を除く各材料の配合量は、不揮発分換算値を示す(他の実施例および比較例においても、同様)。用いた材料の種類と配合比を表2に示す。
【0134】
(実施例2~12、比較例1~6)
実施例2~12、比較例1~6の各例においては、用いた材料の種類と配合比を表2、3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン系粘着剤を得た。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
[粘着シートの製造と評価]
得られた粘着剤を用い、以下のようにして粘着シートの製造と評価を実施した。
(粘着シートの製造)
基材シートして、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(東レ社製「ルミラーT-60」、厚さ50μm)を用意した。コンマコーター(登録商標)を用いて、基材シートの片面に、得られたウレタン系粘着剤を、塗工速度3m/分で、乾燥後厚み)が12μmになるように、塗工した。次に、形成された塗工層を100℃で2分間乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層の上に、厚さ38μmの剥離シート(リンテック社製「スーパーステックSP-PET38」)を貼着して、粘着シートを得た。得られた粘着シートを23℃-50%RHの条件下で1週間養生した後、粘着力、再剥離性(被着体汚染抑制性)、および湾曲性の評価に供した。
【0138】
[評価項目および評価方法]
評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(粘着力)
粘着シートから幅25mm長さ100mmの2枚の試験片を切り出した。2枚の試験片についてそれぞれ、23℃-50%RHの雰囲気下で、剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面にソーダガラス板を貼着し、2kgロールで圧着した。
得られた2枚の積層体のうち一方の積層体は、23℃-50%RHの雰囲気下で24時間放置した(温湿度条件1)。
他方の積層体は、85℃-85%RHのオーブン内に24時間放置した(温湿度条件2)後、オーブンから取り出し、23℃-50%RHの雰囲気下で1時間空冷した。
各積層体について、JIS Z 0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。評価基準は以下の通りである。

○:20mN/25mm未満、良好。
△:20~100mN/25mm、実用可。
×:100mN/25mm超、実用不可。
【0139】
(再剥離性(被着体汚染抑制性))
粘着シートから幅70mm長さ100mmの3枚の試験片を切り出した。3枚の試験片についてそれぞれ、23℃-50%RHの雰囲気下で、剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面に苛性ソーダガラス板を貼着し、ラミネータで圧着した。
得られた3枚の積層体をそれぞれ、40℃-90%RH(温湿度条件1)、60℃-90%RH(温湿度条件2)、85℃-85%RH(温湿度条件3)にセットしたオーブン内に72時間放置した。
3枚の積層体をそれぞれ、オーブンから取り出し、23℃-50%RHの雰囲気下で1時間空冷した後、ガラス板から粘着シートを剥離し、再剥離性を評価した。暗室内で粘着シートを貼ってあった側のガラス板の表面にLEDランプ光を照射し、目視観察にて評価した。評価基準は以下の通りである。

◎:ガラス表面に粘着層成分の付着が一切見られない、優。
○:ガラス表面の1~2箇所に薄い粘着層成分の付着が見られる、良好。
△:ガラス表面の3箇所に薄い粘着層成分の付着が見られる、実用可。
×:ガラス表面の4箇所以上に薄い粘着層成分の付着が見られる/もしくはガラス表面の1~2箇所に濃い粘着層成分の付着が見られる、実用不可。
【0140】
(湾曲性)
粘着シートから幅20mm長さ15mmの試験片を切り出した。23℃-50%RHの雰囲気下で、試験片から剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面を長さ30cm直径60mmφのポリプロピレン(PP)製の丸棒の周囲に貼着し、指で強く圧着した。この際、試験片の幅方向を、丸棒の長さ方向に対して平行方向とした。この試料を23℃-50%RHの雰囲気下に24時間放置した。その後、粘着シートの両端部についてそれぞれ丸棒からの剥離範囲の長さを測定し、剥離範囲の大きい方の端部について、以下の基準にて評価した。

◎:剥離範囲なし/または剥離範囲が1mm未満、優。
○:剥離範囲が1mm以上2mm未満、良好。
△:剥離範囲が2mm以上5mm未満、実用可。
×:剥離範囲が5mm以上、実用不可。
【0141】
[評価結果]
評価結果を、表4に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
比較例1では、湾曲性に優れるが、粘着力が高く、再剥離性が不良であった。比較例2では、ポリウレタンポリオール(A)の原料として3官能ポリオールを用いることで、粘着シートの架橋密度が増大し、粘着力および再剥離性が良好となった。しかしその一方で、湾曲性が不良であった。比較例3および4では、可塑剤としてミリスチン酸イソプロピルおよびW-260を用いることで、再剥離性が良好となったが、湾曲性が不良であった。比較例5および6では、水酸基価を有さずステロイド骨格を有する化合物を添加したが、再剥離性と湾曲性の両立は出来なかった。
【0144】
その一方、実施例1~14で得られた粘着シートはいずれも、すべての評価項目において、結果が良好または比較的良好であった。また、化合物(C)が1分子中に1つの水酸基価を有する場合、湾曲性がより良好な結果であった。また、化合物(C)が第一級または第二級の水酸基を有する場合、より優れた粘着性・再剥離性・湾曲性を示す結果となった。さらに、化合物(C)の含有量が1質量部以上の場合、優れた粘着性を示し、また、16質量部以下の場合、60℃-90%や85℃-85%といったより厳しい条件でも優れた再剥離性を示す結果となった。