(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】開閉体駆動装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/63 20150101AFI20230502BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20230502BHJP
B60J 5/10 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
E05F15/63
E05F11/54 A
B60J5/10 K
(21)【出願番号】P 2019176981
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】飯川 大志
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183523(JP,A)
【文献】特開2004-98913(JP,A)
【文献】特表2014-531885(JP,A)
【文献】特開2019-122216(JP,A)
【文献】特開2010-161914(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066550(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0185941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/63
E05F 11/54
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体を開動作または閉動作させるモータと、
前記モータを回転させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、電源の正極側および負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの一方の端子に接続される第1,第2スイッチング素子を有する第1集積回路と、前記正極側および前記負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの他方の端子に接続される第3,第4スイッチング素子を有する第2集積回路とを備え、
前記第1~第4スイッチング素子には、第1~第4還流ダイオードが内蔵されまたは並列に取り付けられ、
前記第1集積回路は、前記第1スイッチング素子のオン駆動中に前記第1スイッチング素子の過電流を検知すると前記第2スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第2スイッチング素子のオン駆動中に前記第2スイッチング素子の過電流を検知すると前記第1スイッチング素子のオン駆動に切り替える第1保護機能を有し、
前記第2集積回路は、前記第3スイッチング素子のオン駆動中に前記第3スイッチング素子の過電流を検知すると前記第4スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第4スイッチング素子のオン駆動中に前記第4スイッチング素子の過電流を検知すると前記第3スイッチング素子のオン駆動に切り替える第2保護機能を有し、
前記制御部は、前記モータを正転駆動する際には、前記第1,第4スイッチング素子をオン駆動し、前記モータを逆転駆動する際には、前記第2,第3スイッチング素子をオン駆動する、
開閉体駆動装置であって、
前記制御部は、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する、
開閉体駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の開閉体駆動装置であって、
前記制御部は、前記モータの逆転中に前記モータを制動させる際には、前記第1,第4スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する、
開閉体駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の開閉体駆動装置であって、
前記制御部は、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第3スイッチング素子をオン駆動し、前記モータの逆転中に前記モータを制動させる際には、前記第4スイッチング素子をオン駆動する、
開閉体駆動装置。
【請求項4】
開閉体を開動作または閉動作させるモータと、
前記モータを回転させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、電源の正極側および負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの一方の端子に接続される第1,第2スイッチング素子を有する第1集積回路と、前記正極側および前記負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの他方の端子に接続される第3,第4スイッチング素子を有する第2集積回路とを備え、
前記第1~第4スイッチング素子には、第1~第4還流ダイオードが内蔵されまたは並列に取り付けられ、
前記第1集積回路は、前記第1スイッチング素子のオン駆動中に前記第1スイッチング素子の過電流を検知すると前記第2スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第2スイッチング素子のオン駆動中に前記第2スイッチング素子の過電流を検知すると前記第1スイッチング素子のオン駆動に切り替える第1保護機能を有し、
前記第2集積回路は、前記第3スイッチング素子のオン駆動中に前記第3スイッチング素子の過電流を検知すると前記第4スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第4スイッチング素子のオン駆動中に前記第4スイッチング素子の過電流を検知すると前記第3スイッチング素子のオン駆動に切り替える第2保護機能を有する、
開閉体駆動装置の制御方法であって、
前記モータを正転駆動する際には、前記第1,第4スイッチング素子をオン駆動し、前記モータを逆転駆動する際には、前記第2,第3スイッチング素子をオン駆動し、
更に、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する、
開閉体駆動装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体駆動装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の開閉体駆動装置としては、便座を開閉させるモータと、電源からの電力をモータに供給してモータを正転または逆転させる駆動部と、駆動部を制御するマイコンとを備えるもの提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、駆動部は、第1~第4スイッチング素子を有するHブリッジ回路を備える。直列に接続された第1,第2スイッチング素子の組と直列に接続された第3,第4スイッチング素子の組とが並列に接続されており、第1,第2スイッチング素子の接続点と第3,第4スイッチング素子の接続点とがモータの両端子に接続されており、第1,第3スイッチング素子の接続点には、電源からの電圧が印加され、第2,第4スイッチング素子の接続点は接地されている。この開閉体駆動装置では、第1,第4スイッチング素子をオンする(導通させる)ことにより、モータを正転駆動することができる。また、第2,第3スイッチング素子をオンすることにより、モータを逆転駆動することができる。さらに、第2,第4スイッチング素子をオン駆動することにより、モータの両端子間を短絡させてモータの回転にブレーキ(ショートブレーキ)をかけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動部として、第1,第2スイッチング素子を有すると共に保護機能を有する第1集積回路と、第3,第4スイッチング素子を有すると共に保護機能を有する第2集積回路とが用いられる場合がある。保護機能は、第1,第2集積回路のそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子のうちの一方のオン駆動中にその一方のスイッチング素子の過電流を検知すると他方のスイッチング素子のオン駆動に切り替える機能である。こうした駆動部が用いられる場合、第2,第4スイッチング素子のオン駆動によりモータを制動させている最中に、第1集積回路の保護機能が作動すると、第1,第4スイッチング素子のオン駆動によりモータが正転駆動されてしまい、第2集積回路の保護機能が作動すると、第2,第3スイッチング素子のオン駆動によりモータが逆転駆動されてしまう。これらを踏まえて、モータに対して制動が要求されるときにモータが駆動されてしまうのを抑制することが求められている。
【0005】
本発明の開閉体駆動装置およびその制御方法は、モータに対して制動が要求されるときにモータが駆動されてしまうのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開閉体駆動装置およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の開閉体駆動装置は、
開閉体を開動作または閉動作させるモータと、
前記モータを回転させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記駆動部は、電源の正極側および負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの一方の端子に接続される第1,第2スイッチング素子を有する第1集積回路と、前記正極側および前記負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの他方の端子に接続される第3,第4スイッチング素子を有する第2集積回路とを備え、
前記第1~第4スイッチング素子には、第1~第4還流ダイオードが内蔵されまたは並列に取り付けられ、
前記第1集積回路は、前記第1スイッチング素子のオン駆動中に前記第1スイッチング素子の過電流を検知すると前記第2スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第2スイッチング素子のオン駆動中に前記第2スイッチング素子の過電流を検知すると前記第1スイッチング素子のオン駆動に切り替える第1保護機能を有し、
前記第2集積回路は、前記第3スイッチング素子のオン駆動中に前記第3スイッチング素子の過電流を検知すると前記第4スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第4スイッチング素子のオン駆動中に前記第4スイッチング素子の過電流を検知すると前記第3スイッチング素子のオン駆動に切り替える第2保護機能を有し、
前記制御部は、前記モータを正転駆動する際には、前記第1,第4スイッチング素子をオン駆動し、前記モータを逆転駆動する際には、前記第2,第3スイッチング素子をオン駆動する、
開閉体駆動装置であって、
前記制御部は、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の開閉体駆動装置では、第1,第2スイッチング素子を有する第1集積回路は、第1スイッチング素子のオン駆動中に第1スイッチング素子の過電流を検知すると第2スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に第2スイッチング素子のオン駆動中に第2スイッチング素子の過電流を検知すると第1スイッチング素子のオン駆動に切り替える第1保護機能を有する。第3,第4スイッチング素子を有する第2集積回路は、第3スイッチング素子のオン駆動中に第3スイッチング素子の過電流を検知すると第4スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に第4スイッチング素子のオン駆動中に第4スイッチング素子の過電流を検知すると第3スイッチング素子のオン駆動に切り替える第2保護機能を有する。そして、モータを正転駆動する際には、第1,第4スイッチング素子をオン駆動し、モータを逆転駆動する際には、第2,第3スイッチング素子をオン駆動する。さらに、モータの正転中にモータを制動させる際には、第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する。第2スイッチング素子をオン駆動すると、第2スイッチング素子、第4還流ダイオード、モータ、第2スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第1保護機能が作動して第1スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。また、第3スイッチング素子をオン駆動すると、第3スイッチング素子、モータ、第1還流ダイオード、第3スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第2保護機能が作動して第4スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。これらの結果、モータの正転中にモータに対して制動が要求されるときに、モータが駆動されてしまうのを抑制することができる。
【0009】
本発明の開閉体駆動装置において、前記制御部は、前記モータの逆転中に前記モータを制動させる際には、前記第1,第4スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動するものとしてもよい。第1スイッチング素子をオン駆動すると、第1スイッチング素子、モータ、第3還流ダイオード、第1スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第1保護機能が作動して第2スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。また、第4スイッチング素子をオン駆動すると、第4スイッチング素子、第2還流ダイオード、モータ、第4スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第2保護機能が作動して第3スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。これらの結果、モータの逆転中にモータに対して制動が要求されるときに、モータが駆動されてしまうのを抑制することができる。
【0010】
この場合、前記制御部は、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第3スイッチング素子をオン駆動し、前記モータの逆転中に前記モータを制動させる際には、前記第4スイッチング素子をオン駆動するものとしてもよい。こうすれば、モータを制動させる際に、第2集積回路の第3,第4スイッチング素子のうちの何れかだけをオン駆動すればよい。
【0011】
本発明の開閉体駆動装置において、前記モータの正転は、前記開閉体を閉動作させる回転方向であるものとしてもよい。
【0012】
本発明の開閉体駆動装置の制御方法は、
開閉体を開動作または閉動作させるモータと、
前記モータを回転させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、電源の正極側および負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの一方の端子に接続される第1,第2スイッチング素子を有する第1集積回路と、前記正極側および前記負極側に対して互いに直列に接続されると共に両者の接続点が前記モータの他方の端子に接続される第3,第4スイッチング素子を有する第2集積回路とを備え、
前記第1~第4スイッチング素子には、第1~第4還流ダイオードが内蔵されまたは並列に取り付けられ、
前記第1集積回路は、前記第1スイッチング素子のオン駆動中に前記第1スイッチング素子の過電流を検知すると前記第2スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第2スイッチング素子のオン駆動中に前記第2スイッチング素子の過電流を検知すると前記第1スイッチング素子のオン駆動に切り替える第1保護機能を有し、
前記第2集積回路は、前記第3スイッチング素子のオン駆動中に前記第3スイッチング素子の過電流を検知すると前記第4スイッチング素子のオン駆動に切り替えると共に前記第4スイッチング素子のオン駆動中に前記第4スイッチング素子の過電流を検知すると前記第3スイッチング素子のオン駆動に切り替える第2保護機能を有する、
開閉体駆動装置の制御方法であって、
前記モータを正転駆動する際には、前記第1,第4スイッチング素子をオン駆動し、前記モータを逆転駆動する際には、前記第2,第3スイッチング素子をオン駆動し、
更に、前記モータの正転中に前記モータを制動させる際には、前記第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する、
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の開閉体駆動装置の制御方法では、モータの正転中にモータを制動させる際には、第2,第3スイッチング素子のうちの何れか1つをオン駆動する。第2スイッチング素子をオン駆動すると、第2スイッチング素子、第4還流ダイオード、モータ、第2スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第1保護機能が作動して第1スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。また、第3スイッチング素子をオン駆動すると、第3スイッチング素子、モータ、第1還流ダイオード、第3スイッチング素子の閉回路が形成され、モータを制動させることができる。この場合に第2保護機能が作動して第4スイッチング素子がオン駆動されても、モータは駆動されない。これらの結果、モータの正転中にモータに対して制動が要求されるときに、モータが駆動されてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の開閉体駆動装置としてのバックドア駆動装置20を搭載する車両10の外観図である。
【
図2】バックドア駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】マイコン40により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】バックドア駆動装置20Bの構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の開閉体駆動装置としてのバックドア駆動装置20を搭載する車両10の外観図である。
図2は、バックドア駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の車両10は、図示するように、車体12によりヒンジ13を介して開閉自在に支持される跳ね上げ式のバックドアBDと、伸縮式の支持部材14と、ドアクローザ16と、バックドアBDを開閉するためのバックドア駆動装置20とを備える。ドアクローザ16は、バックドアBDにより開閉される車体12の開口部の下部に固定されたストライカ17と係合可能となるようにバックドアBDの内側下部に内蔵されている。
【0017】
バックドア駆動装置20は、モータ22の回転を直線運動に変換して支持部材14を伸縮させることによりバックドアBDを開閉させる装置として構成されている。このバックドア駆動装置20は、バックドアBDを開閉させるモータ22と、モータ22を回転させる駆動部30と、駆動部30を制御するマイコン(制御部)40とを備える。実施形態では、バックドアBDを閉動作、開動作させるモータ22の回転方向をそれぞれモータ22の正転、逆転とした。
【0018】
駆動部30は、集積回路(Integrated Circuit)31,35を備える。集積回路31は、互いに直列に接続されたスイッチング素子S1,S2を有するハーフブリッジICとして構成されており、集積回路35は、互いに直列に接続されたスイッチング素子S3,S4を有するハーフブリッジICとして構成されている。スイッチング素子S1,S3としては、それぞれ、還流ダイオードとして機能する寄生ダイオード(ボディダイオード)D1,D3が内蔵されたpチャネル電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)が用いられる。また、スイッチング素子S2,S4としては、それぞれ、還流ダイオードとして機能する寄生ダイオードD2,D4が内蔵されたnチャネル電界効果トランジスタ(FET)が用いられる。
【0019】
スイッチング素子S1,S2の組とスイッチング素子S3,S4の組とは、互いに並列に接続されている。スイッチング素子S1,S2の接続点P1には、モータ22の一方の端子が接続されており、スイッチング素子S3,S4の接続点P2には、モータ22の他方の端子が接続されている。スイッチング素子S1,S3の接続点Pvは、電源の正極側に電力ラインを介して接続されており、スイッチング素子S2,S4の接続点Pgは、接地されている(金属製のケースなどの電力ラインを介して電源の負極側に接続されている)。このようにして、スイッチング素子S1~S4により、Hブリッジ回路が構成されている。
【0020】
集積回路31は、スイッチング素子S1,S2に加えて、スイッチング素子S1,S2の過電流を検知するための過電流検知部32a,32bと、処理部33と、通信ポート(例えば、INH1信号やIN1信号用のポートなど)を備える。処理部33は、マイコン40からのINH1信号やIN1信号に基づいてスイッチング素子S1,S2をオン駆動する。詳細には、INH1信号がオフのときには、スイッチング素子S1,S2を何れもオフとし(オン駆動せずに)、INH1信号およびIN1信号が何れもオンのときには、スイッチング素子S1をオン駆動し、INH1信号がオンで且つIN1信号がオフのときには、スイッチング素子S2をオン駆動する。ここで、「オン駆動」には、オンで保持する駆動と、パルス幅変調(PWM)制御によりオンオフする駆動とが含まれる。また、処理部33は、第1保護機能を有する。第1保護機能は、スイッチング素子S1のオン駆動中にスイッチング素子S1の過電流を検知すると、IN1信号に拘わらずにスイッチング素子S2のオン駆動に切り替えると共に、スイッチング素子S2のオン駆動中にスイッチング素子S2の過電流を検知すると、IN1信号に拘わらずにスイッチング素子S1のオン駆動に切り替える機能である。
【0021】
集積回路35は、スイッチング素子S3,S4に加えて、スイッチング素子S3,S4の過電流を検知するための過電流検知部36a,36bと、処理部37と、通信ポート(例えば、INH2信号やIN2信号用のポートなど)を備える。処理部37は、マイコン40からのINH2信号やIN2信号に基づいてスイッチング素子S3,S4をオン駆動する。詳細には、INH2信号がオフのときには、スイッチング素子S3,S4を何れもオフとし、INH2信号およびIN2信号が何れもオンのときには、スイッチング素子S3をオン駆動し、INH2信号がオンで且つIN2信号がオフのときには、スイッチング素子S4をオン駆動する。また、処理部37は、第2保護機能を有する。第2保護機能は、スイッチング素子S3のオン駆動中にスイッチング素子S3の過電流を検知すると、IN2信号に拘わらずにスイッチング素子S4のオン駆動に切り替えると共に、スイッチング素子S4のオン駆動中にスイッチング素子S4の過電流を検知すると、IN2信号に拘わらずにスイッチング素子S3のオン駆動に切り替える機能である。
【0022】
マイコン40は、CPUやROM、RAM、入出力ポートを有するマイクロコンピュータとして構成されている。マイコン40には、モータ22の回転数を検出する回転数センサ23からのモータ22の回転数Nmなどが入力ポートを介して入力される。マイコン40からは、集積回路31へのINH1信号やIN1信号、集積回路35へのINH2信号やIN2信号などが出力ポートを介して出力される。
【0023】
こうして構成された実施形態のバックドア駆動装置20では、マイコン40は、ユーザによるバックドアBDを閉動作させるためのスイッチ操作(スイッチは図示省略)などに応じて、モータ22を正転駆動させてバックドアBDを閉動作させる際には、スイッチング素子S1,S4がオン駆動されるようにINH1信号、IN1信号、INH2信号、IN2信号を制御する。また、ユーザによるバックドアBDを開動作させるためのスイッチ操作などに応じて、モータ22を逆転駆動させてバックドアBDを開動作させる際には、スイッチング素子S2,S3がオン駆動されるようにINH1信号、IN1信号、INH2信号、IN2信号を制御する。なお、ユーザによるバックドアBDの閉方向や開方向の操作やバックドアBDの自重により、バックドアBDが閉方向または開方向に移動するときにも、モータ22は正転または逆転する。
【0024】
次に、こうして構成された実施形態のバックドア駆動装置20の動作、特に、モータ22を制動させる際の動作について説明する。
図3は、マイコン40により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータ22が回転(正転または逆転)を開始したときに実行される。
【0025】
図3の処理ルーチンが実行されると、マイコン40は、最初に、制動条件が成立しているか否かを判定し(ステップS100)、制動条件が成立していないと判定したときには、制動条件が成立するのを待つ。ここで、制動条件としては、モータ22の回転数Nmの絶対値が閾値Nmref以上である条件や、バックドアBDの位置が目標停止位置(全閉位置または全開位置)よりも若干手前(若干開側または若干閉側)の所定位置から目標停止位置までの間である条件などが用いられる。閾値Nmrefは、モータ22の回転数Nmの絶対値が比較的大きいか否かを判定するのに用いられる。バックドアBDの位置は、図示しないセンサにより検出された支持部材14の長さ(伸縮量)などに基づいて推定される。所定位置は、モータ22の制動によりバックドアBDが目標停止位置に停止可能となるように定められる。実施形態では、これらの条件のうちの少なくとも1つが成立しているときに、制動条件が成立していると判定するものとした。
【0026】
ステップS100で制動条件が成立していると判定したときには、制動条件の成立開始直後であるか否かを判定する(ステップS110)。そして、制動条件の成立開始直後であると判定したときには、スイッチング素子S1~S4の全てがオフになるようにINH1信号、IN1信号、INH2信号、IN2信号を制御する(ステップS120)。これにより、モータ22を正転駆動または逆転駆動しているときには、その駆動を中止することになる。ステップS110で制動条件の成立開始直後でない(制動条件の成立が継続している)と判定したときには、ステップS120の処理を実行しない。
【0027】
続いて、モータ22の回転数Nmに基づいてモータ22の回転方向(バックドアBDの移動方向)を判定する(ステップS130)。なお、ユーザにより、バックドアBDを開動作または閉動作させるためのスイッチ操作が行なわれたときには、そのスイッチ操作に基づいて、モータ22の回転方向を判定するものとしてもよい。
【0028】
ステップS130でモータ22が正転している(バックドアBDが閉動作している)と判定したときには、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S3だけがオン駆動されるようにINH1信号、IN1信号、INH2信号、IN2信号を制御する(ステップS140)。
【0029】
モータ22が正転しているときに、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S3だけをオン駆動すると、スイッチング素子S3、モータ22、寄生ダイオードD1、スイッチング素子S3の閉回路が形成され、モータ22を制動させることができる。スイッチング素子S1,S3をオン駆動することによってもモータ22を制動させることができるものの、この場合、以下の不都合を生じることがある。スイッチング素子S3に過電流が流れて集積回路35の第2保護機能が作動すると、スイッチング素子S1,S4のオン駆動によりモータ22が正転駆動されてしまう。スイッチング素子S1に過電流が流れて集積回路31の第1保護機能が作動すると、スイッチング素子S2,S3のオン駆動によりモータ22が逆転駆動されてしまう。これらに対して、スイッチング素子S3だけをオン駆動することにより、スイッチング素子S3に過電流が流れて集積回路35の第2保護機能が作動してスイッチング素子S4がオン駆動されても、モータ22は駆動されないから、モータ22に対して制動が要求されるときに、モータ22が駆動されてしまうのを抑制することができる。
【0030】
ステップS130でモータ22が逆転している(バックドアBDが開動作している)と判定したときには、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S4だけがオン駆動されるようにINH1信号、IN1信号、INH2信号、IN2信号を制御する(ステップS150)。
【0031】
モータ22が逆転しているときに、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S4だけをオン駆動すると、スイッチング素子S4、寄生ダイオードD2、モータ22、スイッチング素子S4の閉回路が形成され、モータ22を制動させることができる。スイッチング素子S2,S4をオン駆動することによってもモータ22を制動させることができるものの、この場合、以下の不都合を生じることがある。スイッチング素子S4に過電流が流れて集積回路35の第2保護機能が作動すると、スイッチング素子S2,S3のオン駆動によりモータ22が逆転駆動されてしまう。スイッチング素子S2に過電流が流れて集積回路31の第1保護機能が作動すると、スイッチング素子S1,S4のオン駆動によりモータ22が正転駆動されてしまう。これらに対して、スイッチング素子S4だけをオン駆動することにより、スイッチング素子S4に過電流が流れて集積回路35の第2保護機能が作動してスイッチング素子S3がオン駆動されても、モータ22は駆動されないから、モータ22に対して制動が要求されるときに、モータ22が駆動されてしまうのを抑制することができる。
【0032】
そして、モータ22が回転停止したか否かを判定し(ステップS160)、モータ22が回転していると判定したときには、ステップS100に戻る。こうしてステップS100~S160の処理を繰り返し実行して、ステップS160でモータ22が回転停止したと判定すると、本ルーチンを終了する。
【0033】
以上説明した本実施形態のバックドア駆動装置20では、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S3だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S4だけをオン駆動する。これにより、集積回路35の第2保護機能が作動してもモータ22は駆動されないから、制動条件が成立しているときに、モータ22が駆動されてしまうのを抑制することができる。しかも、集積回路31のスイッチング素子S1,S2の何れもオン駆動することなく、モータ22を制動させることができる。
【0034】
実施形態では、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S3だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S4だけをオン駆動するものとした。しかし、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路31のスイッチング素子S2だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路31のスイッチング素子S1だけをオン駆動するものとしてもよい。モータ22が正転しているときに、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S2だけをオン駆動すると、スイッチング素子S2、寄生ダイオードD4、モータ22、スイッチング素子S2の閉回路が形成され、モータ22を制動させることができ、スイッチング素子S2に過電流が流れて集積回路31の第1保護機能が作動してスイッチング素子S1がオン駆動されても、モータ22は駆動されない。また、モータ22が逆転しているときに、スイッチング素子S1~S4のうちスイッチング素子S1だけをオン駆動すると、スイッチング素子S1、モータ22、寄生ダイオードD3、スイッチング素子S1の閉回路が形成され、モータ22を制動させることができ、スイッチング素子S1に過電流が流れて集積回路31の第1保護機能が作動してスイッチング素子S2がオン駆動されても、モータ22は駆動されない。これらの結果、制動条件が成立しているときに、モータ22が駆動されてしまうのを抑制することができる。しかも、集積回路35のスイッチング素子S3,S4の何れもオン駆動することなく、モータ22を制動させることができる。
【0035】
実施形態では、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S3だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S4だけをオン駆動するものとした。しかし、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路31のスイッチング素子S2だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S4だけをオン駆動するものとしてもよい。また、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、集積回路35のスイッチング素子S3だけをオン駆動し、モータ22の逆転中に制動条件が成立しているときには、集積回路31のスイッチング素子S1だけをオン駆動するものとしてもよい。これらの場合、モータ22を正転中に制動させる際と逆転中に制動させる際とで異なる集積回路のスイッチング素子をオン駆動するから、集積回路31,35に作用する熱負荷の蓄積を低減することができる。この結果、集積回路31,35の寿命の低下を抑制することができる。
【0036】
実施形態では、モータ22の正転中(バックドアBDの閉動作中)も逆転中(バックドアBDの開動作中)も、制動条件が成立しているときに、モータ22を制動させるものとした。しかし、モータ22の正転中に制動条件が成立しているときには、モータ22を制動させるものの、モータ22の逆転中には、モータ22を制動させないものとしてもよい。
【0037】
実施形態では、
図2のバックドア駆動装置20に示すように、スイッチング素子S1,S3として、還流ダイオードとして機能する寄生ダイオードD1,D3が内蔵されたpチャネル電界効果トランジスタを用いると共に、スイッチング素子S2,S4として、還流ダイオードとして機能する寄生ダイオードD2,D4が内蔵されたnチャネル電界効果トランジスタを用いるものとした。しかし、
図4のバックドア駆動装置20Bに示すように、スイッチング素子S11~S14として、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)S11~S14を用いると共に、スイッチング素子S11~S14に逆並列に還流ダイオードD11~D14を取り付けるものとしてもよい。なお、バックドア駆動装置20Bは、寄生ダイオードD1~D4が内蔵されたスイッチング素子S1~S4をスイッチング素子S11~S14および還流ダイオードD11~D14に置き換えた点を除いて、バックドア駆動装置20と同一である。
【0038】
実施形態では、開閉体駆動装置として、バックドアBDを開閉させるバックドア駆動装置20について説明したが、これに限定されるものではなく、車両のスライドドアなどを開閉させる駆動装置の形態としてもよい。
【0039】
実施形態では、本発明を開閉体駆動装置の形態として説明したが、開閉体駆動装置の制御方法の形態としてもよい。
【0040】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、モータ22が「モータ」に相当し、駆動部30が「駆動部」に相当し、マイコン40が「制御部」に相当する。
【0041】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、開閉体駆動装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両、12 車体、13 ヒンジ、14 支持部材、16 ドアクローザ、17 ストライカ、20 バックドア駆動装置、22 モータ、23 回転数センサ、30 駆動部、31,35 集積回路、32a,32b,36a,36b 過電流検知部、33,37 処理部、40 マイコン、D1~D4 寄生ダイオード、D11~D14 還流ダイオード、P1,P2 接続点、S1~S4,S11~S14 スイッチング素子。