(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、フォトスペーサおよび液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20230502BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20230502BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230502BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20230502BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/038 501
G02B5/20 101
G02F1/1339 500
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2019520161
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015803
(87)【国際公開番号】W WO2019216107
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018091944
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昇太
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】脇田 和明
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/072533(WO,A1)
【文献】特開2017-097320(JP,A)
【文献】特開2017-049369(JP,A)
【文献】特開2010-002569(JP,A)
【文献】特開2010-072589(JP,A)
【文献】特開2014-114340(JP,A)
【文献】特開2009-031778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0179004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/038
G02B 5/20
G02F 1/1339
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤および重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、該樹脂組成物の固形分において求められる
ウレタン当量が1000~50000g/molであり、かつ、
エチレン性不飽和基当量が100~155g/molであ
り、
前記アルカリ可溶性樹脂として、
A)下記一般式(5)で表される構造単位と、
B)下記一般式(6)で表される構造単位と、
C)下記一般式(7)で表される構造単位を有する樹脂を含有することを特徴とする
感光性樹脂組成物。
【化1】
(R
15
は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(R
16
およびR
17
はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。Xは-CH
2
CH(OH)CH
2
O(C=O)-、を示す。)
【化3】
(Yは置換基を有していてもよい骨格炭素数が6~11のアリール基、置換基を有していてもよい骨格炭素数が7~10のアラルキル基または置換基を有していてもよい骨格炭素数が3~10のシクロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記重合性化合物の少なくとも一成分が、1分子中にエチレン性不飽和基を6以上有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合性化合物の少なくとも一成分が、1分子中にエチレン性不飽和基を6以上25以下有することを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合性化合物の分子量が700~3000の範囲内であり、かつ、該重合性化合物はウレタン結合を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物として、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される重合性化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
ここで、一般式(1)および(2)中、R
1~R
3、R
7~R
8は各々独立に、置換基を有していても良い骨格炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有していても良い骨格炭素数1~20のアルキレンオキサイド基、置換基を有していても良い骨格炭素原子数7~30のアリーレン基を表す。R
4~R
6、R
9~R
10は各々独立に一般式(3)で表される一価の基を示す。
【化5】
ここで、nは1~7の整数であり、R
11~R
13は各々下記一般式(4)で表される一価の基を示す。
【化6】
ここで、R
14は水素原子、または、メチル基を示す。
【請求項6】
前記重合性化合物の固形分において求められるイソシアネート当量が50000g/mol以上である請求項1~
5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性化合物の固形分において求められるイソシアネート当量が50000g/mol以上5000000g/mol以下である請求項1~
5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ウレタン当量を前記エチレン性不飽和基当量で除した値が10~200であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物を加熱処理後厚み3μmで塗布し、25℃、45Paで200秒間減圧処理後、105℃で10分間加熱乾燥して得られる膜の23℃における粘度が1×10
3~1×10
8Pa・sである、請求項1~8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項記載の感光性樹脂組成物用いて得られたフォトスペーサ。
【請求項11】
対向して配置されたカラーフィルタ基板と駆動素子側基板、前記カラーフィルタ基板と駆動素子側基板との間に配置された請求項
10記載のフォトスペーサ、および、前記カラーフィルタ基板と駆動素子側基板間に封入された液晶化合物を有する液晶表示装置。
【請求項12】
さらに光配向膜を有する請求項
11に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それを用いたフォトスペーサおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力等の特性を活かし、ノートパソコン、携帯情報端末、スマートフォン、デジタルカメラおよびデスクトップモニタ等の様々な用途で使用されている。
【0003】
液晶表示装置は、カラーフィルタ基板とTFT(Thin Film Transistor)アレイ基板との間に、電場による配向によって画素単位での光の透過を制御し、以て画像の表示を可能とする液晶層を備えており、これらの基板の間隔(セルギャップ)を均一に保つことは、画質を左右する重要な要素の一つである。
【0004】
セルギャップを均一に保つ手段として、基板上の非表示領域にセルギャップに対応する高さを有するスペーサを形成することが従来行われてきた。係るスペーサは、例えば基板上に感放射線性樹脂を均一に塗布し、パターン露光し、その後アルカリ現像するフォトリソグラフィーによって形成される(感放射線性樹脂を用いて形成されるスペーサをフォトスペーサともいう)。
【0005】
しかしながら、液晶表示パネルの製造時、カラーフィルタとTFTアレイ基板とは圧着されるところ、樹脂製のスペーサは圧着時の圧力によって塑性変形し易く、また一方、圧着時の圧力は液晶パネル面内で均一で無いために、スペーサの高さはばらつき、その結果画素において表示ムラが生じやすい課題があった。
【0006】
スペーサの塑性変形を抑制する技術として、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、及び重合性モノマーを主成分とするスペーサ用感光性樹脂組成物であって、これら感光性樹脂組成物全体のアクリル当量が200以下であることを特徴とするスペーサ用感光性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
【0007】
また近年、歩留まり向上のため、ラビングの不要な光配向用液晶配向剤を用いる技術(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0008】
また樹脂組成物にイソシアネートを配合し、樹脂組成物の熱硬化時にウレタン結合を形成させる技術も知られている(例えば、特許文献3参照)が、熱硬化条件の選択における制約から、反応を十分に完結させることはできず、このため最適な特性を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-292269号公報
【文献】特開2017-203980号公報
【文献】特開2006-276159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1記載の発明において、弾性変形率を小さくする手段としては、樹脂組成物中のエチレン性不飽和基当量を少なくすることが示されている。樹脂組成物中のエチレン性不飽和基当量を少なくするとスペーサは固いものとなる。一方、液晶の配向方向を制御するために基板上には液晶配向膜が設けられる。しかし、液晶配向膜は機械的強度が弱く、引っ掻き傷が入りやすいという問題を有しており、特に近年布ラビング配向剤に代わって使われるようになった光配向用液晶配向剤においてその傾向は顕著である。
【0011】
すなわち、エチレン性不飽和基当量を小さくするという前記特許文献1の技術では固くなったスペーサが対向する基板に設けられた配向膜を削ってしまうという、トレードオフの関係があった。
【0012】
そこで、本発明は、スペーサとして用いた際、塑性変形が抑制された高復元率のフォトスペーサでありながら、対向する基板に設けられた液晶配向膜を削ることが極めて抑制される感光性樹脂組成物と、これを用いたフォトスペーサおよび液晶表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は主として以下の構成を有する。
【0014】
すなわち、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤および重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物であって、該樹脂組成物の固形分において求められる
ウレタン当量が1000~50000g/molであり、かつ、
エチレン性不飽和基当量が100~155g/molであ
り、
前記アルカリ可溶性樹脂として、
A)下記一般式(5)で表される構造単位と、
B)下記一般式(6)で表される構造単位と、
C)下記一般式(7)で表される構造単位を有する樹脂を含有することを特徴とする
感光性樹脂組成物、である。
【化7】
(R
15
は水素原子またはメチル基を示す。)
【化8】
(R
16
およびR
17
はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。Xは-CH
2
CH(OH)CH
2
O(C=O)-、を示す。)
【化9】
(Yは置換基を有していてもよい骨格炭素数が6~11のアリール基、置換基を有していてもよい骨格炭素数が7~10のアラルキル基または置換基を有していてもよい骨格炭素数が3~10のシクロアルキル基を示す。)
【0015】
また、本発明の別の態様は、係る感光性樹脂組成物を用いて形成したフォトスペーサであり、また、該フォトスペーサを具備した液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フォトスペーサとして用いた際、塑性変形が抑制された高い復元率のフォトスペーサとすることができ、また、対向する基板に設けられた液晶配向膜を削るという現象が極めて抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フォトスペーサの弾性特性を表す荷重-変形量ヒステリシス曲線の一例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくともアルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤および重合性化合物を含有する。光重合開始剤および重合性化合物が含有されることで、光重合によって露光部は光硬化され、アルカリ現像液に対して不溶化させることができ、また、アルカリ可溶性樹脂を含有することで、アルカリ現像液による現像工程を通じて未露光部を除去することができることから、いわゆる光リソグラフィー技術が適用可能であり、露光および現像により所望のパターンを形成することができる。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物においては、該樹脂組成物の固形分において求められる、ウレタン当量が1000~50000g/molであり、かつ、エチレン性不飽和基当量が100~155g/mol、である。
【0020】
ここでいう固形分とは、感光性樹脂組成物に含まれる溶媒を除く成分をいう。各成分に分離不能な樹脂組成物の場合の固形分は、130℃で1時間加熱して溶媒を飛散させ、残分の質量を測定することでもって求めることができる。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物はその固形分において所定のエチレン性不飽和基当量を有することから理解されるとおり、エチレン性不飽和基を含む化合物が含有されている。
【0022】
ここで、エチレン性不飽和基当量とは、エチレン性不飽和基1モルを与えるために必要な化合物のグラム数のことをいい、その値が小さいほど、単位質量あたりに含まれるエチレン性不飽和基の量が多いことを表す。エチレン性不飽和基を有さない化合物においてエチレン性不飽和基当量は無限大である。また、本発明の感光性樹脂組成物の固形分においては複数の化合物が含有されうるところ、例えば、固形分が三成分系であり、その一成分であるA成分のエチレン性不飽和基当量をEa、その固形分中の質量分率をWaとし、同様にB成分のエチレン性不飽和基当量をEb、その固形分中の質量分率をWbとし、C成分のエチレン性不飽和基当量をEc、その固形分中の質量分率をWcとしたとき、固形分としてのエチレン性不飽和基当量(Etotal)は、下式を用いて求められる。なおここで、この例の系は三成分系なので、Wa+Wb+Wc=1である。なお、3成分系以外の場合でも同様にして複数の成分が含まれた場合の固形分のエチレン性不飽和基当量は求めることができる。
【0023】
(1/Etotal)=(1/Ea×Wa+1/Eb×Wb+1/Ec×Wc) 。
【0024】
但し、固形分を構成する成分のそれぞれのエチレン性不飽和基当量を求めることが困難である場合には、固形分の質量を求め、また、該固形分に含まれるエチレン性不飽和基の総量を分光学的方法や化学的方法によって求めることで求め、固形分のエチレン性不飽和基当量を求めることができる。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物の固形分において求められるエチレン性不飽和基当量は、100~155g/molである。155g/molを超える場合はスペーサとしたときの塑性変形は低下するものとなる。一方、100g/mol未満である場合はスペーサとしたときの体積収縮が液晶の体積収縮より著しく小さくなり、その結果、液晶パネルを低温保存したときに液晶の発泡が起こり表示品位に劣るものとなりやすく、また、現像時にスペーサが欠落する現象を起こすことがある。
【0026】
樹脂組成物の固形分において求められるエチレン不飽和基当量を低くする方法としては、エチレン不飽和基当量が低い重合性化合物を用いることや、アルカリ可溶性樹脂にエチレン性不飽和基を導入する方法や、エチレン性不飽和基が導入された添加剤として密着改良剤や界面活性剤を用いる方法が挙げられる。本発明に規定する範囲に調整するにあたっては、各成分のエチレン性不飽和基当量とその質量分率を調整すれば良いことはいうまでもない。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物はその固形分において所定のウレタン当量を有することから理解されるとおり、ウレタン結合を含む化合物が含有されている。
【0028】
ここで、ウレタン当量とは、ウレタン結合1モルを与えるために必要な化合物のグラム数のことをいい、その値が小さいほど、単位質量あたりに含まれるウレタン結合の量が多いことを表す。ウレタン結合を有さない化合物においてウレタン当量は無限大である。また、本発明の感光性樹脂組成物の固形分においては複数の化合物が含有されうるところ、係る場合のウレタン当量の求め方は前記のエチレン性不飽和基当量と同様の考え方によって求められる。なお、固形分を構成する成分のそれぞれのウレタン当量を求めることが困難である場合についての求め方についても上記と同様に理解される。ちなみに、ウレタン結合は赤外分光分析において1550cm-1付近にピークを有することから検量線法でウレタン結合の量を求めることが可能である。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物の固形分において求められるウレタン当量は、1000~50000g/molである。ウレタン当量が50000g/molを超える場合は対向する基板に設けられた液晶配向膜に対する傷の抑制が十分でなく、また、1000未満である場合は、スペーサとする際に現像性が低下し、スペーサの形状や高さを整えることが困難である。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物において、前記したウレタン結合を含む化合物としては、分子量3000以下のものを用いることで、現像マージンが広くなりやすく好ましい。
【0031】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、ウレタン当量をエチレン性不飽和基当量で除した値として5~200であることが望ましく、係る範囲とすることによって、弾性復元率と配向膜の傷つけにくさが両立しやすい。
【0032】
樹脂組成物の固形分において求められるウレタン当量の調整は用いるウレタン結合を有する化合物のウレタン当量と固形分中の質量分率によってはかることが可能であるが、ウレタン結合は、アルカリ可溶性樹脂の主鎖もしくは側鎖に導入することもできるし、重合性化合物の調製時においてイソシアネート化合物とアクリルモノマーとを反応させることで重合性化合物中に導入することができる。また別の方法としては、後述するように、ウレタン結合を含有したシランカップリング剤を用いることもできる。
【0033】
本発明における重合性化合物とは、共に用いる光重合開始剤の作用によって重合反応を起こす化合物であり、典型的な光重合性の官能基としてはエチレン性不飽和基が挙げられる。また、本発明における重合性化合物はその分子量は3000以下である。本発明に用いられる重合性化合物としては、例えば、単官能または多官能のモノマーやオリゴマーなどが挙げられる。本発明に用いられる重合性化合物は一分子中になお架橋密度が高まり弾性復元率が向上することから、多官能モノマーが好ましい。特に、スペーサに加工した場合の弾性復元率が上がりやすいことから1分子中にエチレン性不飽和基を6以上有するものを用いることが好ましい。さらに好ましくは、1分子中にエチレン性不飽和基を6以上であり25以下有するものを用いることが好ましい。多官能の重合性モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-メチル-4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[3-クロロ-4-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートと無水コハク酸との反応物などが挙げられる。重合性化合物としては、1種を用いても、2種以上を用いても良い。
【0034】
また、重合性化合物はその分子量が700~3000の範囲であり、かつ、ウレタン結合を含有していることが好ましい。そのような化合物の具体的な例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(765(数字は分子量を示す。以下、本段落において同様))、ヘキサメチレンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1217)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1670)、ヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン体のペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(905)、ヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン体のジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1357)、ヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン体のトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1810)、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体のアクリル酸付加物(721)、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体のペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(1399)、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体のジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(2078)、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体のトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(2757)、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート体のジペンタエリスリトールトリアクリレート・アルキレンオキサイド変成物付加物(2927)、フェニレンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(757)、フェニレンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1209)、フェニレンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1662)、トリレンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(771)、トリレンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1223)、トリレンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1676)、イソホロンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(819)、イソホロンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1271)、イソホロンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1724)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(859)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1311)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1764)、ジフェニルメタンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(847)、ジフェニルメタンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1299)、ジフェニルメタンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1752)、ノルボルネンジイソシアネートのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物(801)、ノルボルネンジイソシアネートのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物(1253)、ノルボルネンジイソシアネートのトリペンタエリスリトールオクタアクリレート付加物(1706)等が挙げられる。係る重合性化合物を用いると、ウレタン現像残渣を発生しにくい。重合性化合物はその分子量が1000~3000の範囲であり、かつ、ウレタン結合を含有していることが配向膜の傷つけにくさのためにさらに好ましい。ここで、イソシアネート基とカルボキシル基とを反応させて重合性化合物中にウレタン結合を導入しようとするときは、残存するイソシアネート基を少なくすることが弾性復元率を最大限に発揮できることから好ましい。さらには樹脂組成物の安定性の面からも、重合性化合物においてイソシアネート当量は50000g/molが以上好ましい。上限としては特に制限は無く、イソシアネート当量として無限大、すなわちイソシアネート基が検出されないことが最も望ましいが、500000g/mol以下の程度が実際的である。なお、イソシアネート基当量は実施例の項に記載した方法によって求められる。測定が困難である場合には、赤外分光測定を行い2260cm-1のピークを基に検量線法で算出することもできる。
【0035】
本発明において用いる重合性化合物としては、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。
【0036】
【0037】
ここで、一般式(1)と一般式(2)中、R1~R3、R7~R8は各々独立に、置換基を有していても良い骨格炭素数1~20のアルキレン基、置換基を有していても良い骨格炭素数1~20のアルキレンオキサイド基、または、置換基を有していても良い骨格炭素原子数7~30のアリーレン基を表す。ここで、置換基は炭素数3以下のアルコキシ基、炭素数4以下のカルボニル基、炭素数4以下のエステル基、炭素数4以下のアミド基、ビニル基、アクリル基、メタアクリル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、ハロゲン基、イソシアネート基およびニトリル基からなる群から選ばれる。R4~R6、R9~R10は各々独立に一般式(3)で表される基を示す。
【0038】
【0039】
ここで、nは1~7の整数であり、R11~R13は各々一般式(4)で表される一価の基を示す。弾性復元率を高めやすいことから、望ましく、nは2~7である。
【0040】
【0041】
ここで、R14は水素原子、または、メチル基を示す。
【0042】
重合性化合物として、一般式(1)または一般式(2)で表される化合物をもちいるとこれらは化学構造中に屈曲しにくい環構造を含むため、フォトスペーサとした場合にウレタンとエチレン性不飽和基が偏在せず均一に分布し性能を発揮しやすい。特に一般式(1)で表される重合性化合物は1分子中にウレタン結合を3つふくむため、柔軟性能を最大限に発揮しやすい
本発明に用いられるアルカリ可溶性樹脂とは、構造単位にカルボキシル基や水酸基などの酸性基を有してアルカリ現像液に溶解するものをさし、その分子量としては3000を超えるものをいう。さらにフォトスペーサとしての弾性復元率を高めるために側鎖にエチレン性不飽和基を含むことが好ましい。配向膜の傷つけにくさのためにウレタン結合を含んでもよい。
【0043】
エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。エチレン性不飽和基をアルカリ可溶性樹脂に導入する方法としては、カルボキシル基や水酸基を有する基となる樹脂にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどを付加反応させて導入する方法が挙げられる。ウレタン結合を導入する方法としては、イソシアネートを利用してウレタン基を付加させる方法などが挙げられる。またイソシアネートを利用してエチレン性不飽和基を有する化合物を付加させる場合はウレタンとエチレン性不飽和基を同時に導入することができる。
【0044】
側鎖にエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45質量%溶液、酸価110mgKOH/g、重量平均分子量20,000)、ADEKA(株)製、“アデカアークルズ”WR301(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45質量%溶液、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量5,900)、KRX-3802(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45質量%溶液、酸価80mgKOH/g、重量平均分子量5,500)アルカリ可溶性カルド樹脂などが挙げられる。
【0045】
ウレタン結合を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、大成ファインケミカル(株)製、“アクリット(登録商標)”8UA-017(酢酸エチル50質量%溶液、11mgKOH/g、重量平均分子量40000)が挙げられる。
【0046】
本発明において、アルカリ可溶性樹脂は、A)下記一般式(5)で表される構造単位と、B)下記一般式(6)で表される構造単位と、C)下記一般式(7)で表される構造単位を有していることが好ましい。一般式(5)で表される構造単位を有することにより、アルカリ現像液に対する樹脂の溶解性を向上させることができ、また、露光工程におけるムラが抑制される。また、一般式(6)で表される構造単位を有することにより、側鎖に導入されたエチレン性不飽和基によって露光および現像における感度とフォトスペーサの弾性復元率を向上させることができる。また、一般式(7)で表される構造単位を有することにより、レンズスキャン露光によるフォトスペーサの高さのばらつきを抑制することができる。
【0047】
【0048】
ここで、R15は水素原子またはメチル基を示す。
【0049】
【0050】
ここで、R16およびR17はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。Xは-CH2CH(OH)CH2O(C=O)-、-CH2CH2NH(C=O)O(CH2)mO(C=O)-または-(CH2)nO(C=O)NHCH2CH2O(C=O)-を示す。なお、mおよびnはそれぞれ独立に1~4の整数を示す。なかでは、Xは-CH2CH(OH)CH2O(C=O)-が好ましい。
【0051】
【0052】
ここで、Yは置換基を有していてもよい骨格炭素数6~11のアリール基、置換基を有していてもよい骨格炭素数7~10のアラルキル基または置換基を有していてもよい骨格炭素数3~10のシクロアルキル基を示す。ここで、用いうる置換基は一般式(1)及び一般式(2)のR1~R3、R7~R8において説明した置換基と同じである。また、アルカリ可溶性樹脂の全構造単位中、繰り返し単位としてみた、一般式(5)、一般式(6)および一般式(7)は70モル%以上100モル%以下を占めることが好ましい。
【0053】
係る一般式(5)、一般式(6)および一般式(7)で表される構造単位を有したアルカリ可溶性樹脂は、対応する側鎖構造を有した不飽和二重結合単位を持つ化合物を用いて重合させることで得ることができる。さらに他の成分を共重合してもよい。
【0054】
前記一般式(6)で表される構造単位を与える共重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸;グリシジル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレートや2-ヒドロキシエチル(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは2種以上用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸にグリシジル(メタ)アクリレートを付加することが好ましい。
【0055】
前記一般式(7)で表される構造単位を与える共重合成分としては、例えば、N-ベンジルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。これらは2種以上用いてもよい。これらの中でもN-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0056】
他の共重合成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル;アミノエチルアクリレート等の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステル;スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリロニトリル、α-クロル(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;1,3-ブタジエン、イソプレン等の脂肪族共役ジエン;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどのトリシクロデカン骨格またはジシクロペンタジエン骨格を有するエチレン性不飽和化合物;クロトン酸、ビニル酢酸などのモノカルボン酸またはその酸無水物;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのジカルボン酸またはその酸無水物などが挙げられる。
【0057】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂において、そのエチレン性不飽和基当量は、400g/mol以下であることが弾性復元率が向上しやすいので好ましい。アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和基当量は、360g/mol以下がさらに好ましい。例えば、エチレン性不飽和基を有するB)前記一般式(6)で表される構造単位の含有比率が高いほど、エチレン性不飽和基当量は小さくできる。アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和基当量は、エチレン性不飽和基を有する化合物の共重合比により所望の範囲に調整することができる。なお、エチレン性不飽和基当量は、JIS K 0070:1992の試験方法第6.0項に記載の方法によりヨウ素価を測定することによって算出することができる。
【0058】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂において、その重量平均分子量(「Mw」)は、3,000~100,000であることが好ましい。Mwを3,000以上とすることにより、プリベイク膜の粘度を高め、レンズスキャン方式で露光した場合においても、高さのばらつきをより抑制することができる。Mwは20,000以上がより好ましい。一方、Mwを100,000以下とすることにより、パターン表面の凹凸を抑制し、パターンの表面形状を向上させることができる。Mwは80,000以下がより好ましい。ここで、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂のMwは、標準ポリスチレンによる換算値であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0059】
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂において、その酸価は、60~100mgKOH/gであることが好ましい。酸価を60mgKOH/g以上とすることにより、高さばらつきをより低減することができる。酸価は65mgKOH/g以上がより好ましい。一方、酸価を100mgKOH/g以下とすることにより、パターン表面の凹凸を抑制し、パターンの表面形状を向上させることができる。酸価は95mgKOH/g以下がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、カルボキシル基を有する化合物の共重合比により所望の範囲に調整することができる。ここで、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の試験方法第3.1項の中和滴定法により求めることができる。なお、固形分濃度30質量%程度のアルカリ可溶性樹脂溶液を用いて測定する場合には、アルカリ可溶性樹脂溶液5gをアルミ製カップ(φ45mm)に入れ、130℃で1時間加熱して溶剤を除去することにより、測定に必要な量のアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、固形分中10~45質量%とすることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の係る含有量を10質量%以上とすることにより、スペーサの高さのばらつきをより抑制することができる。一方、アルカリ可溶性樹脂の係る含有量を45質量%以下とすることにより、弾性復元率をより向上させることができる。
【0061】
本発明に用いられる光重合開始剤とは、放射線(可視光、紫外線および電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させる化合物をいう。光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0062】
オキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)、“アデカアークルズ”(商標登録)N-1919、NCI-831、NCI-930(以上、いずれも(株)ADEKA製)、“IRGACURE”(商標登録)OXE01、OXE02、OXE03、OXE04(以上、いずれもBASFジャパン(株)製)などが挙げられる。アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、“IRGACURE”(商標登録)907(BASFジャパン(株)製)などが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体などが挙げられる。ベンゾチアゾール系化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。ベンゾオキサゾール系化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾオキサゾールなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系化合物としては、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。これらの中でも、感度をより向上させる観点から、オキシムエステル系化合物、アルキルフェノン系化合物が好ましい。オキシムエステル系化合物の中でも“アデカアークルズ”(商標登録)N-1919がより好ましく、アルキルフェノン系化合物の中でも“IRGACURE”(商標登録)907がより好ましい。
【0063】
本発明において、感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の含有量は、固形分中1~30質量%とすることが好ましく、2~25質量%がさらに好ましい。30質量%以下であるとエチレン性不飽和基当量とウレタン当量を高めやすい。1質量%以上であると感度を高めやすい。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物は、フィラー、増感助剤、紫外線吸収剤、密着改良剤、界面活性剤、重合禁止剤、前述のアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、有機酸、有機アミノ化合物、硬化剤などの添加剤や溶剤を含有してもよい。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物は、フィラーを含有することにより、プリベイク膜の乾燥後の粘度をより高めて、高さばらつきをより抑制することができる。フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、硫酸バリウム等の無機酸化物粒子;金属粒子;アクリル、スチレン、シリコーン、フッ素含有ポリマー等の樹脂粒子などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、粒子径と分散性の観点から、シリカ粒子を用いることが好ましい。フィラーの比表面積換算での平均粒子径は、4~120nmが好ましい。フィラーの平均粒子径が4nm以上であると、スペーサとしたときの高さのばらつきをより抑制することができる。一方、粒子径が120nm以下であると、光リソグラフィー工程を経て得たスペーサパターンの表面の凹凸を抑制し、パターンの表面形状を向上させることができる。
【0066】
フィラーを含有しない場合は、樹脂中のエチレン性不飽和基当量およびウレタン当量を高めやすく好ましい。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、増感助剤を含有することにより、感度を向上させることができる。増感助剤としては、例えば、芳香族または脂肪族の第三級アミン等が挙げられる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することにより、透明性が高く、微細でテーパーの短いフォトスペーサを容易に形成することができる。紫外線吸収剤としては、透明性および非着色性の観点から、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物などの有機化合物系紫外線吸収剤が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
【0069】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチルフェノール)、2,4ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0070】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、オクタベンゾン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0071】
トリアジン系化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールが挙げられる。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物に含みうる紫外線吸収剤の含有量は、固形分中0.3~10質量%が好ましい。紫外線吸収剤の含有量を0.3質量%以上とすることにより、テーパー部をより短くすることができる。紫外線吸収剤の含有量は、2質量%以上がより好ましい。一方、紫外線吸収剤の含有量を10質量%以下とすることにより、感度を高く維持することができる。紫外線吸収剤の含有量は、8質量%以下がより好ましい。なお、固形分とは、感光性樹脂組成物に含まれる溶媒を除く成分をいう。
【0073】
前記した密着改良剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランの等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは2種以上含有してもよい。また、ウレタン結合を有し、または、ウレタン結合形成能を有する化合物を用いることが好ましく、そのような化合物としては、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランのペンタエリスリトールテトラアクリレート付加物を挙げることができる。
【0074】
本発明の感光性樹脂組成物に含みうる密着改良剤の含有量は、固形分中0.1~20質量%が好ましい。密着改良剤の含有量を0.1質量%以上とすることにより、現像密着性を向上させることができる。密着改良剤の含有量は、0.5質量%以上がより好ましい。一方、密着改良剤の含有量を20質量%以下とすることにより、アルカリ可溶性樹脂や重合性化合物の凝集を抑制することができる。密着改良剤の含有量は、10質量%以下がより好ましい。
【0075】
前記した界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレート等の非イオン界面活性剤;パーフルオロブチルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有トリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル、若しくはパーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等のフッ素系界面活性剤;ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン“BYK”(登録商標)333(ビックケミー社製)が好ましい。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物に含みうる界面活性剤の含有量は、固形分中0.001~10質量%が好ましい。界面活性剤の含有量を0.001質量%以上とすることにより、感光性樹脂組成物の塗布性を向上させることができる。界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上がより好ましい。一方、界面活性材の含有量を10質量%以下とすることにより、パターン表面の凹凸を抑制し、パターンの表面形状を向上させることができる。界面活性剤の含有量は、1質量%以下がより好ましい。
【0077】
前記した重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)などのヒドロキノンヒドロキノン系重合禁止剤;カテコール、tert-ブチルカテコールなどのカテコール系重合禁止剤などが挙げられる。重合禁止剤は2種以上含有してもよい。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物に含みうる重合禁止剤の含有量は、固形分中0.01~0.5質量%が好ましい。重合禁止剤の含有量を0.01質量%以上とすることにより、感光性樹脂組成物の経時保存安定性を向上することができる。一方、重合禁止剤の含有量を0.5質量%以下とすることにより、極性溶媒浸漬時の感度低下による膜表面の浸食やシミの発生を抑制することができる。
【0079】
前記したアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物としては、例えば、それ単独ではアルカリ現像液に対して殆ど溶解しない、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリイミド前駆体などが挙げられる。係る高分子化合物は2種以上を用いてもよい。
【0080】
前記した溶剤としては、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサなどが挙げられる。溶剤は2種以上を用いてもよい。
【0081】
エーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルが好ましい。
【0082】
エステル系溶剤としては、例えば、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、γ-ブチロラクトン、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチルなどが挙げられる。これらの中でも、3-メトキシ-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートなどが好ましい。
【0083】
アルコール系溶剤としては、例えば、ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノールが挙げられる。
【0084】
ケトン系溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、上底面の直径が6μm、下底面の直径が9μm、高さが3μmの円錐台状に成形し、50mNの荷重をかけたときの弾性復元率が60%以上であることが好ましい。なお、詳細な成形条件は実施例の項に記したとおりである。係る弾性復元率が60%以上であると、セル圧着時のスペーサの高さのばらつきがより抑制され、フォトスペーサの塑性変形による表示ムラをより低減することができる。この弾性復元率は70%以上がより好ましい。弾性復元率が100%に近いほど、フォトスペーサの変形によるセルギャップへの影響と、それによる表示ムラをより抑制することができる。上記形状は、フォトスペーサの代表的な形状であり、上記荷重は、フォトスペーサが製造または使用時に受ける荷重の一例である。かかる方法により、フォトスペーサを形成するために用いた感光性樹脂組成物の塑性変形のしにくさを相対的に評価することができる。
【0086】
図1に、フォトスペーサの弾性特性を表すヒステリシス曲線の一例の概略図を示す。フォトスペーサに荷重をかけ、また、荷重を取り除くと、
図1に示すような、フォトスペーサに印加された荷重と、フォトスペーサの変形量とのヒステリシス曲線が得られる。ヒステリシス曲線からフォトスペーサの総変形量Ha[μm]、塑性変形量Hb[μm]および弾性変形量を求めることにより、フォトスペーサの弾性復元率(((Ha-Hb)/Ha)×100)(%)を算出することができる。ここで、ヒステリシス曲線は、硬度計フィッシャー(Fischerscope H100;Helmut Fischer GmbH & Co社製)とφ50μmの平型圧子を用いて、速度2.5mN/秒で荷重50mNに到達するまで圧力を加えた後、速度2.5mN/秒で開放することにより得られる。
【0087】
フォトスペーサを形成したときの弾性復元率を上記範囲にするためには、エチレン性不飽和基当量が前述の好ましい範囲にある感光性樹脂組成物を用いることが好適である。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤および重合性化合物と、必要に応じて界面活性剤、重合禁止剤、溶剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤を任意の割合で混合することにより得ることができる。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物は、フォトスペーサの形成に好ましく用いることができる。
【0090】
フォトスペーサの形状は、カラーフィルタの高精細化のため、円錐台形状が好ましく、上底の直径は15μm以下が好ましい。また、下低の直径に対する上底の直径の比(上底/下低)は、0.3~2.0が好ましい。
【0091】
次に、本発明のフォトスペーサの製造方法について、基板上に形成する場合を例に説明する。前述の本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥してプリベイク膜を得て、プリベイク膜をレンズスキャン露光および現像することによりフォトスペーサを形成することが好ましい。さらに、現像後の塗布膜パターンを加熱処理して硬化させることが好ましい。なお、本発明のフォトスペーサは基板に直接接して設ける場合のみならず、基板上に構成された各種の要素(例えば、ブラックマトリクス、平坦化膜、電極、液晶配向膜)の上に設けることができる。
【0092】
基板としては、ガラス、高分子フィルム等の透明基板が挙げられる。
【0093】
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、ディップ法、ロールコーター法、スピナー法、ダイコーティング法、ワイヤーバーコーティング法などが挙げられる。
【0094】
乾燥方法としては、減圧乾燥、オーブンやホットプレートを用いた加熱乾燥(プリベイク)などが挙げられる。減圧乾燥の場合、加熱温度は、乾燥溶媒の減圧チャンバー内壁への再凝縮を抑制する観点から、100℃以下が好ましい。減圧乾燥圧力は、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の蒸気圧以下が好ましく、1~1000Paが好ましい。減圧乾燥時間は、10~600秒間が好ましい。プリベイクの場合、加熱温度は60~200℃、加熱時間は1~60分間が一般的である。
【0095】
本発明においては、下記する調製方法にて得られるプリベイク膜の23℃における粘度が1×103~1×108Pa・sであることが好ましい。23℃における粘度が1×103Pa・s以上であるプリベイク膜に露光することにより、プリベイク膜の流動性を適度に抑え、プリベイク膜の搬送工程や、露光工程、加熱乾燥(ポストベイク)工程におけるムラの発生をより抑制することができる。23℃における粘度が1×105Pa・s以上がより好ましい。一方、23℃における粘度が1×108Pa・s以下であるプリベイク膜に露光することにより、現像性を向上させることができる。ここで、プリベイク膜の23℃における粘度とは、プリベイク膜90mm3以上を採取し、レオメーター(MCR-302;アントンパール(株)製)とφ15mmのプレートを用いて、測定厚み:0.5mm、周波数:1Hz、歪み:0.5%の条件で、20℃から110℃まで0.083℃/秒の昇温速度で昇温しながら測定したときの23℃における粘度をいう。なお、カラーフィルタ基板上へのフォトスペーサの製造工程において、プリベイク膜の温度は乾燥工程で100℃程度まで加熱されるが、露光前の冷却により室温(約23℃)程度となることが一般的である。このため、本発明においては、一般的な露光時のプリベイク膜温度として、23℃における粘度に着目した。
【0096】
得られたプリベイク膜に、マスクを介して露光することにより露光部分を硬化させ、アルカリ現像液により現像することにより未露光部分を除去し、パターン形成することが好ましい。
【0097】
露光方式としては、例えば、プロキシミティ露光、レンズスキャン露光、ミラープロジェクション露光、ステッパー露光などが挙げられる。本発明においては、大型基板への高精細パターン加工に優れたレンズスキャン露光が好ましく用いられる。本発明の感光性樹脂組成物は高さのばらつきを抑制することができることから、装置構成として1stレンズと2ndレンズの二列のレンズが並び、このレンズの継目で露光時間差があり、プリベイク膜が流動することで、高さのばらつきが生じやすいレンズスキャン露光であっても好適に用いることができる。レンズスキャン露光装置としては、例えば、FX-65S((株)ニコン製)が挙げられる。
【0098】
現像工程としては、アルカリ現像液による現像が好ましい。アルカリ現像液としては、有機アルカリ現像液、無機アルカリ現像液などが挙げられる。無機アルカリ現像液としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液などが好ましい。有機アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、メタノールアミンなどのアミン系水溶液が好ましい。アルカリ現像液中におけるアルカリ性物質の含有量は、未露光部の現像溶解性の観点から、0.02質量%以上が好ましい。一方、露光部のパターン加工性をより向上させる観点から、2.0質量%以下が好ましい。現像液は、現像の均一性を高めるために、界面活性剤を含有することが好ましい。現像液の温度により現像速度が変化するため、現像液温度は18~40℃の範囲で適宜選択することが好ましい。
【0099】
現像方法としては、例えば、ディップ現像、シャワー現像、パドル現像などが挙げられる。現像液の温度、流量およびシャワー噴射圧力、現像後の水洗温度、流量およびシャワー噴射圧力条件を適宜選択することが好ましい。基板上の残渣を除去するためには、現像液または水洗水を高圧で噴射することが好ましく、噴出圧力は0.01MPa~20MPaが好ましい。
【0100】
現像後の塗布膜パターンの加熱処理装置としては、熱風オーブン、ホットプレートなどが挙げられる。加熱温度は180~300℃が好ましく、加熱時間は5~90分間が好ましい。
【0101】
次に、本発明のフォトスペーサを有するカラーフィルタ基板と液晶表示装置を例に挙げて説明する。
【0102】
一態様では、カラーフィルタ基板は、基板上に、本発明のフォトスペーサおよび画素を有する。必要に応じて、ブラックマトリックス、平坦化膜、透明電極、配向膜などを有してもよい。なお、本発明のフォトスペーサはTFTアレイ基板の側に形成することもできる。
【0103】
基板としては、フォトスペーサを形成する基板として例示したものが挙げられる。
【0104】
画素としては、例えば、赤色画素、緑色画素、青色画素などが挙げられる。画素は、着色剤、樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、その他の添加剤などを含有してもよく、それらの1種以上を含む組成物の硬化物から形成されていてもよい。着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料が挙げられる。樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、その他の添加剤としては、例えば、本発明の透明感光性樹脂組成物の成分として例示したものが挙げられる。
【0105】
画素の形状としては、例えば、矩形、ストライプ、正方形、多角形、波型などが挙げられる。開口部面積を大きくして透過率を向上させる観点から、画素幅は、1μm以上が好ましい。一方、より緻密な画像を表示する観点から、画素幅は、100μm以下が好ましい。画素の膜厚は、1~5μm程度が好ましい。
【0106】
隣接画素間には、ブラックマトリックス(以下、「BM」)を有することが好ましい。BMは、画素間を遮光することにより、表示画像のコントラストを向上させる作用を有する。BMは、互いに隣接する画素の一部を重ねることにより形成された色重ねBMであってもよいが、画素の段差を抑制して表示画像をより向上させ、高い遮光性を得るため、樹脂および遮光材を含有することが好ましい。樹脂としては、ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂が好ましい。遮光剤としては、例えば、チタンブラック、窒化チタン、炭化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。さらに、密着改良剤、高分子分散剤、重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、界面活性剤等を含有してもよい。
【0107】
BMの膜厚は、遮光性と抵抗値を向上させる観点から、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましい。一方、BMの膜厚は、平坦性を向上させる観点から、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
【0108】
画素やBMを有するカラーフィルタ基板が段差を有する場合、平坦化膜を有することが好ましい。平坦化膜は、画素やBM上の全面に形成されていてもよいし、平坦化したい部分に選択的に形成されていてもよい。平坦化膜が画素やBM上の全面に形成される場合、平坦化膜は熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましく、平坦化膜が選択的に形成される場合、平坦化膜は感光性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0109】
平坦化膜は、樹脂を含有することが好ましく、さらに、密着改良剤、高分子分散剤、重合開始剤、酸発生剤、塩基発生剤、界面活性剤等を含有してもよい。
【0110】
平坦化膜の膜厚は、平坦性と画素からの不純物の溶出を抑制する観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。一方、平坦化膜の膜厚は、透明性を向上させる観点から、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
【0111】
本発明のカラーフィルタ基板は、基板上に、本発明のフォトスペーサおよび画素、必要に応じてブラックマトリックスや平坦化膜などを形成することにより得ることができる。画素やブラックマトリックス、平坦化膜の形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法、印刷法、電着法などが挙げられる。
【0112】
本発明の液晶表示装置は、対向して配置されたカラーフィルタ基板と駆動素子側基板、前記カラーフィルタ基板および該駆動素子側基板との間に配置された本発明の樹脂組成物を用いて形成されたフォトスペーサ、また、両基板の間に充填された液晶化合物を具備する。カラーフィルタ-基板および駆動素子側基板は、通常、液晶の配向方向を制御するための液晶配向膜を有している。例えば、ブラックマトリックスを有するカラーフィルタ基板を用いる場合、フォトスペーサを、非表示領域すなわちブラックマトリックスの上方に有することが好ましい。なお、駆動素子側基板にフォトスペーサを有してもよく、この場合も、駆動素子側基板上の非表示領域の上方にフォトスペーサを有することが好ましい。フォトスペーサは、対向する2枚の基板間を均一な間隔とし、これを保つ目的に設けられるので、ガラスのような硬質基板にもフィルムのような軟質な基板にも区別なく作製することができる。液晶表示装置やエレクトロウェッティングデバイスのような用途にも使用することができる。液晶配向膜としては、ポリイミド等の樹脂膜が好ましい。
【0113】
フォトスペーサを形成するために用いられる感光性樹脂組成物は、基板上に均一に塗布される。塗布厚みは0.5μmから500μmが好ましく、弾性復元率を高める観点からは1μm以上とすることが好ましく、また、塗布の均一性の観点からは5μm以下がとすることが好ましい。引き続き、所定のパターンで露光・現像・乾燥され、必要に応じて硬化処理を行って、フォトスペーサは形成される。基板上方からフォトスペーサの形状を観察したとき観察される形状としては、ストライプ形状、多角形や円形が好ましい。八角形以上の多角形や円形であるとサイズのばらつきが小さくなり好ましい、四角形であると位置ずれが起こりにくく好ましい。双方の基板に直行するストライプ状のフォトスペーサを作成すると、接触面積がばらつきを受けにくく好ましい。断面形状としては矩形、下辺が広い台形、上辺が広い台形、半球状が好ましい。有効体積を最大化するために矩形が好ましく、配向膜を傷つけにくくするために半球状が好ましい。多段露光、ハーフトーン露光を利用して、複数の高さを設けることも好ましい。ギャップを主に支えるメインスペーサ、メインスペーサよりわずかに低いサブスペーサを同時に設けることも工程数を減らすことができて好ましい。平坦化膜を同時に設けることもさらに好ましい。
【0114】
次に、前述のカラーフィルタ基板を用いた液晶表示装置の製造方法の例について説明する。カラーフィルタ基板および/または駆動素子側基板上に前述の製造方法によりフォトスペーサを製造する工程を有することが好ましい。具体的には、前述のカラーフィルタ基板と駆動素子側基板とを対向させて、フォトスペーサを介して貼り合わせ、シール部に設けられた注入口から液晶を注入してから注入口を封止し、最後にICドライバー等を実装することが好ましい。液晶表示装置が液晶配向膜を有する場合、ポリイミド液を塗布・熱処理した後、ラビング処理や紫外線処理により表面処理することが好ましい。微細な粉塵や静電気の発生を抑制し、液晶分子を均一に高精細に配向させる観点から、紫外線処理により表面処理することが好ましい。
【実施例】
【0115】
以下に本発明をその実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定して解釈されるものではない。
【0116】
各物性および特性は、以下の方法により測定し、または、評価した。
【0117】
(エチレン性不飽和基当量)
各成分のエチレン性不飽和基当量は、JIS K 0070:1992の試験方法第6.0項に記載の方法により、ヨウ素価を測定することで算出した。なお、樹脂組成物の固形分のエチレン性不飽和基当量は、固形分を構成する各成分の質量比とその成分のエチレン性不飽和基当量とから求めた。
【0118】
(イソシアネート基当量)
イソシアネート基当量は、JIS K 1556:2006の試験方法に記載の方法により求めた。
【0119】
(ウレタン当量)
製造例1~10、12で得たイソシアネートと水酸基を原料とする重合性化合物U-1~10とアクリル可溶性樹脂AC-2については、赤外分光測定によってイソシアネートのピークである2260cm-1のピークに着眼し、その強度が0.000001以下になっていること確認した。全てのイソシアネート基がウレタン結合に転化されていることから、仕込み組成からウレタン当量を算出した。また、分子量の測定は、既知である場合を除いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0120】
製造例11得たアルカリ可溶性樹脂AC-1については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算値として分子量を求め、原材料に含まれるウレタン結合の量から算出した。
【0121】
(酸価)
JIS K 0070:1992の試験方法第3.1項の中和滴定法により、酸価を測定した。
【0122】
製造例1(重合性化合物 U-1)
冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌル体 168.2質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、50℃に昇温した後、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部を1時間かけて滴下した後、90℃で5時間攪拌して反応を行なった。この反応液中の残存イソシアネート量を測定したところ、イソシアネート量が検出限界以下になり、ウレタン化反応が行われた重合性化合物(U-1)を得た。U-1の分子量は2078.2であり、イソシアネート当量は無限大(すなわち、イソシアネート基を検出できなかった。無限大の意味は以下同じ)あり、ウレタン当量は692.6g/molであり、エチレン性不飽和基当量は138.5であった。1分子中のエチレン性不飽和基数は15であった。
【0123】
以下に示す製造例1~10、製造例12の重合性化合物の特性値を表1に示した。
【0124】
【0125】
製造例2(重合性化合物 U-2)
製造例1のジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部に代えてペンタエリスリトールトリアクリレート298.29質量部とした以外は製造例1と同様の方法で重合性化合物(U-2)を得た。
【0126】
製造例3(重合性化合物 U-3)
製造例1のジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部に代えてトリペンタエリスリトールヘプタアクリレート750.75質量部とした以外は製造例1と同様の方法で重合性化合物(U-3)を得た。
【0127】
製造例4(重合性化合物 U-4)
製造例1のヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌル体 168.2質量部に代えてヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン体 154.17質量部とし、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部に代えてアクリル酸72.06質量部とした以外は製造例1と同様の方法で重合性化合物(U-4)を得た。
【0128】
製造例5(重合性化合物 U-5)
製造例4のアクリル酸72.06質量部に代えてペンタエリスリトールテトラアクリレート298.29質量部とした以外は製造例4と同様の方法で重合性化合物(U-5)を得た。
【0129】
製造例6(重合性化合物 U-6)
製造例4のアクリル酸72.06質量部に代えてジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部とした以外は製造例4と同様の方法で重合性化合物(U-6)を得た。
【0130】
製造例7(重合性化合物 U-7)
製造例4のアクリル酸72.06質量部に代えてトリペンタエリスリトールヘプタアクリレート750.75質量部とした以外は製造例6と同様の方法で重合性化合物(U-7)を得た。
【0131】
製造例8(重合性化合物 U-8)
製造例4のヘキサメチレンジイソシアネートウレトジオン体 154.17質量部に代えてヘキサメチレンジイソシアネート84.1質量部とした以外は製造例4と同様の方法で重合性化合物(U-8)を得た。
【0132】
製造例9(重合性化合物 U-9)
冷却管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌル体 168.2質量部およびジブチル錫ジラウレート0.1質量部を仕込み、25℃にした後、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部を1時間かけて滴下した後、25℃で1日間攪拌して反応を行い、重合性化合物群U-9を得た。
【0133】
このU-9をGPCにて測定を行ったところ、これはU-9-1、U-9-2、U-9-3の3種の混合物であり、分取し測定値を測定したところイソシアネート残基が存在しウレタン反応は完結していなかった。U-9-1(構成比25%、分子量2078.2、イソシアネート当量 無限大、ウレタン当量692.7g/mol、エチレン性不飽和基当量138.55 1分子のエチレン性不飽和基数15)、U-9-2(構成比30%、分子量1553.63、イソシアネート当量1553.6g/mol、ウレタン当量776.8g/mol、エチレン性不飽和基当量155.36 1分子のエチレン性不飽和基基数10)、U-9-3(構成比45%、分子量1029.11、イソシアネート当量514.6g/mol、ウレタン当量1029.1g/mol、エチレン性不飽和基当量205.82 1分子のエチレン性不飽和基数5)であった、U-9全体としての重量平均分子量、イソシアネート当量、エチレン性不飽和基当量およびウレタン当量は表1に示すとおりであった。
【0134】
以下に、重合性化合物 U-1ないしU-9-3の構造式を示した。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
製造例10(重合性化合物 U-10)
製造例1のジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.52質量部に代えてジペンタエリスリトールトリアクリレート・アルキレンオキサイド変成物(日本化薬(株)製“KAYARAD”(登録商標)DPCA-20)807質量部とした以外は製造例1と同様の方法で重合性化合物(U-10)を得た。
【0140】
製造例11 (アルカリ可溶性樹脂 AC-1)
72gのメタクリル酸(MA)、40gのN-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)、30gのメタクリル酸メチル(MMA)、3gの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、0.5gのラウリルメルカプタンおよび220gのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を重合容器中に仕込み、窒素雰囲気下で90℃にて2時間撹拌した後、液温を100℃に上げ、さらに5時間加熱撹拌して反応させた。次に、重合容器内を空気置換し、得られた反応溶液に97gのメタクリル酸グリシジル(GMA)、1.2gのジメチルベンジルアミンおよび0.2gのp-メトキシフェノールを添加して、110℃で6時間撹拌した後、PGMEを追加して固形分濃度25.0質量%のアルカリ可溶性樹脂1(AC-1)の溶液を得た。得られたAC-1のMwは40,000、エチレン性不飽和基当量は350g/mol、酸価は85mgKOH/gであった。なお、アルカリ可溶性樹脂 AC-1において、MAが一般式(3)で表される構造単位を構成し、GMAが一般式(4)で表される構造単位を与え、CHMIが一般式(5)で表される構造単位を与える。
【0141】
製造例12 (アルカリ可溶性樹脂 AC-2)
内容量が2 リットルの5つ口反応容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)686g、グリシジルメタクリレート(GMA)332g、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)6.6g を加え、窒素を吹き込みながら8 0 ℃ で6時間加熱し、GMAのポリマー溶液を得た。
【0142】
次に、得られたGMAのポリマー溶液に、アクリル酸(AA)168g、メトキノン(MQ)0.05g、トリフェニルフォスフィン(TPP)0.5gを加え、空気を吹き込みながら100℃ で24時間加熱し、GMA樹脂のアクリル酸付加物溶液を得た。
【0143】
更に、得られた樹脂のアクリル酸付加物溶液に、テトラヒドロフタル酸無水物1 86g を加え、7 ℃で10時時間加熱した。
【0144】
さらにメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製「カレンズMOI」)117.22g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)117.22 g を加え、空気を吹き込みながら60℃で12時間加熱し、PGMEを追加して固形分濃度25.0質量%の、アルカリ可溶性樹脂(AC-2)溶液を得た。得られたAC-2のMwは16,000、エチレン性不飽和基当量は260g/molである。ウレタン当量は1061.94g/molであった。1分子あたりのエチレン性不飽和基の数は61.5であり、ウレタン当量は1061.9g/molであった。
【0145】
製造例13 (光配向用配向膜の作製)
攪拌翼、窒素導入管を装着した500mL3つ口フラスコに、式(8)で表される化合物2.2636g、N-メチル-2-ピロリドンを104.0g加えた。その溶液を氷冷させ液温を5℃とした後、式(9)で表される化合物3.7364gを加え、12時間室温で攪拌させた。そこにγ-ブチロラクトン10.0gおよびブチルセロソルブ80.0gを加え、溶液を60℃で加熱攪拌し、溶質の重量平均分子量が16,000であり樹脂分濃度が3質量%である光配向用配向膜用組成物を得た。
【0146】
【0147】
製造例14 (アルカリ可溶性樹脂 AC-3)
95.3gのメタクリル酸(MA)、3.0gの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、0.5gのラウリルメルカプタンおよび239gの3-メトキシ-1-ブタノール溶液を重合容器中に仕込み、窒素雰囲気下で90℃にて2時間撹拌した後、液温を100℃に上げ、さらに5時間加熱撹拌して反応させた。次に、重合容器内を空気置換し、得られた反応溶液に143.7gのメタクリル酸グリシジル(GMA)、1.2gのジメチルベンジルアミンおよび0.2gのp-メトキシフェノールを添加して、110℃で6時間撹拌した後、3-メトキシ-1-ブタノールを追加して固形分濃度40.0質量%のアルカリ可溶性樹脂3(AC-3)の溶液を得た。得られたAC-3のMwは10,000、エチレン性不飽和基当量は250g/mol)であった。
【0148】
(プリベイク膜の粘度)
塗布対象として無アルカリガラス基板(OA-10;日本電気硝子(株)製;50mm×70mm、厚さ0.7mm)を用いた以外は、各実施例に記載の条件と条件を同じくしてプリベイク膜を作製した。得られたプリベイク膜を、スパーテルを用いて90mm3以上集め、レオメーター(MCR-302;アントンパール(株)製)とφ15mmのプレートを用いて、測定厚み:0.5mm、周波数:1Hz、歪み:0.5%の条件で、20℃から110℃まで0.083℃/secの昇温速度で昇温しながら、23℃における粘度を測定した。
【0149】
(フォトスペーサの弾性復元率、弾性復元率評価)
各実施例、参考例および比較例(以下、「各実施例および比較例」とあるのは、「各実施例、参考例および比較例」と読み替える)において形成した円錐台状のフォトスペーサに、硬度計フィッシャー(Fischerscope H100;Helmut Fischer GmbH & Co社製)とφ50μmの平型圧子を用いて、速度2.5mN/secで荷重50mNに到達するまで圧力を加え5秒間保持した後、速度2.5mN/secで開放し0mNに到達してから5秒間保持したときのヒステリシス曲線を作成した。得られたヒステリシス曲線から、総変形量Ha[μm]、塑性変形量Hb[μm]を求め、フォトスペーサの弾性復元率(((Ha-Hb)/Ha)×100)(%)を算出した。5箇所について測定した数平均値を算出し、弾性復元率評価として、下記基準により評価した。B判定以上を合格とした。
E :弾性復元率が50%未満
D :弾性復元率が50%以上55%未満
C :弾性復元率が55%以上60%未満
B :弾性復元率が60%以上65%未満
A :弾性復元率が65%以上70%未満
AA :弾性復元率が70%以上75%未満
AAA:弾性復元率が75%以上。
【0150】
(フォトスペーサの耐摺動回数)
液晶パネルを、毎秒2cmで往復運動する台座に固定し、荷重240gをかけた曲率半径5mmのステンレス球でおす摺動試験機にかけ、500回から500回刻みで15000回まで試験したパネルを作製した。このパネルを解体して対向する配向膜を観察し、傷が確認されるまで摺動試験機での操作を継続し、傷が観測されなかった最高回数を耐摺動回数とした。また、摺動性評価として以下の基準で評価した。B判定以上を合格とした。
E :耐摺動回数が500回以下
D :耐摺動回数が500回を超え2000回未満
C :耐摺動回数が2000回を超え3000回未満
B :耐摺動回数が3000回を超え6000回未満
A :耐摺動回数が6000回を超え10000回未満
AA :耐摺動回数が10000回を超え15000回未満
AAA:耐摺動回数が15000回以上。
【0151】
(粘度安定性評価)
樹脂組成物の粘度をE型粘度計で測定し、調整初日に対して40℃1週間保管した後の粘度の比で以下判定した。B判定以上を合格とした。
E :粘度変化が±90%以上
D :粘度変化が±90%未満で±10%以上
C :粘度変化が±10%未満で±3%以上
B :粘度変化が±3%未満で±2%以上
A :粘度変化が±2%未満で±1%以上
AA :粘度変化が±1%未満で±0.1%以上
AAA:粘度変化が±0.1%未満。
【0152】
(フォトスペーサの高さばらつき)
各実施例および比較例において形成した円錐台状のフォトスペーサのうち、基板面内20mm角の範囲において、レンズスキャン露光装置に具備された複数枚のレンズとレンズとの継目部分に対応する箇所に設けられ、該複数のレンズが二列に並ぶ方向に対して直行する方向に一定の間隔で20個のフォトスペーサを選択して、段差測定器を用いて高さのばらつき(最大高さ-最小高さ)を測定し、以下の基準によりフォトスペーサの高さばらつきを評価した。
E :高さのばらつきが0.060μm以上
D :高さのばらつきが0.050μm以上0.060μm未満
C :高さのばらつきが0.040μm以上0.050μm未満
B :高さのばらつきが0.020μm以上0.040μm未満
A :高さのばらつきが0.010μm以上0.020μm未満
AA :高さのばらつきが0.005μm以上0.010μm未満
AAA:高さのばらつきが0.005μm未満。
【0153】
(現像マージンの評価)
各実施例および比較例において現像時間を20秒から5秒刻みで100秒まで増減したカラーフィルタ基板のフォトスペーサで、現像欠けも残渣もない時間範囲で評価した。
E :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が10秒以下
D :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が15秒
C :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が20秒
B :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が25秒
A :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が30秒
AA :欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が35秒
AAA:欠けのない現像時間―残渣がない現像時間が40秒以上。
【0154】
(比較感光性樹脂組成物1(HK-1)の調製)
アルカリ可溶性樹脂溶液として、AC-3(エチレン性不飽和基当量250g/mol、ウレタン当量 無限大(すなわち、ウレタン結合を検出できなかった。無限大の意味は以下同じ)):50.07質量部、重合性化合物として、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(“KAYARAD”(登録商標)DPHA;日本化薬;以下、「DPHA」)(エチレン性不飽和基当量101.6、分子量559、ウレタン当量 無限大):8.58質量部、光重合開始剤“アデカアークルズ”(商標登録)N-1919;以下、「N1919」:0.18質量部(エチレン性不飽和基当量 無限大(すなわち、エチレン性不飽和基を検出できなかった。無限大の意味は以下同じ)、ウレタン当量 無限大)、“IRGACURE”(商標登録)907(BASFジャパン(株)製);以下、「IC907」:0.27質量部(エチレン性不飽和基当量 無限大、ウレタン当量 無限大)、2,4-ジエチルチオキサントン(“KAYACURE”(登録商標)DETX-S;日本化薬(株)製;以下、「DETX」):0.45質量部(エチレン性不飽和基当量 無限大、ウレタン当量 無限大)、界面活性剤“BYK”(登録商標)-333(ビックケミージャパン(株)製):以下「BYK-333」)0.11質量部(エチレン性不飽和基当量 無限大、ウレタン当量 無限大)、重合禁止剤2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製;以下、「DOHQ」):0.07質量部(エチレン性不飽和基当量 無限大、ウレタン当量 無限大)およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PMA 40質量部を室温で撹拌し、比較感光性樹脂組成物(HK-1)を得た。
【0155】
この比較感光性樹脂組成物(HK-1)は、エチレン性不飽和基当量が250g/molであるアルカリ可溶性樹脂 AC-3を固形成分中に66.77質量%含み、エチレン性不飽和基当量が101.6g/molである重合性化合物 DPHAを固形成分中に28.61質量%含む、この樹脂組成物のエチレン性不飽和基当量は182.3g/molであった。
【0156】
(比較感光性樹脂組成物HK-2~HK-3、実施感光性樹脂組成物JK-1~JK-17の作製)
比較感光性樹脂組成物HK-1と同様の手順により、但し、質量配合比を表2~表4に記載したとおりに作製した。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
(比較例1)
(ブラックマトリクス用樹脂組成物の作製)
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100)150g、高分子分散剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)6919、60質量%溶液) 75g、“サイクロマー”(登録商標)P(ACA)Z250(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル45質量%溶液、酸価110mgKOH/g、分子量20,000) 100g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA) 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ブラックマトリクス用分散液(BMD-1)を作製した。
【0161】
BMD-1 56.54、“サイクロマー”P(ACA)Z250 3.14g、重合性化合物としてDPHAモノマー(日本化薬(株)製“カヤラッド”(登録商標)DPHA)2.64g、光重合開始剤((株)ADEKA製“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831(以下NCI-831))0.330g、界面活性剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)-333(以下BYK-333))0.04g、重合禁止剤(DIC(株)製ターシャリブチルカテコール(TBC))0.01gPMA37.30gを添加し、ブラックマトリクス用のブラックマトリクス用樹脂組成物1(BM-1)を作製した。
【0162】
(赤色樹脂組成物の作製)
C.I.ピグメントレッド177(チバスペシャリティケミカル(株)製“クロモフタール”レッド(登録商標) A2B)150g、“BYK”6919 75g、“サイクロマー”P(ACA)Z250 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、赤用分散液(RD-1)を作製した。
【0163】
RD-1 56.54、“サイクロマー”P(ACA)Z250 3.14g、DPHAモノマー 2.64g、光重合開始剤(NCI-831)0.330g、界面活性剤(BYK-333)0.04g、重合禁止剤(TBC)0.01gPMA37.30gを添加し、赤色樹脂組成物(R-1)を作製した。
【0164】
(青色樹脂組成物の作製)
C.I.ピグメントブルー15:6(DIC(株)製 EP193)150g、“BYK”6919 75g、“サイクロマー”P(ACA)Z250 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、青用分散液(BD-1)を作製した。
【0165】
BD-1 29.02、“サイクロマー”P(ACA)Z250 12.70g、DPHAモノマー 4.68g、光重合開始剤(NCI-930)0.585g、界面活性剤(BYK-333)0.04g、重合禁止剤(TBC)0.01g、PMA 52.96gを添加し、青色樹脂組成物(B-1)を作製した。
【0166】
(着色材分散液の作製)
C.I.ピグメントグリーン59(FASTGEN Green C100)105g、C.I.ピグメント イエロー45(クラリアント製 “Hostaperm”Yellow HN4G)、高分子分散剤(“BYK”6919) 75g、バインダー樹脂(“アデカアークルズ”WR301) 100g、PMA 675gを混合してスラリーを作製した。スラリーを入れたビーカーをダイノーミルとチューブでつなぎ、メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用して、周速14m/sで8時間の分散処理を行い、ピグメントグリーン59分散液(D-1)を作製した。
【0167】
上記着色材分散液D-1 47.361g、WR301 1.111g DPHAモノマー(日本化薬製“カヤラッド”(登録商標)DPHA 酸価0.1mgKOH/g)1.863g、光重合開始剤((株)ADEKA製“アデカアークルズ”(登録商標)NCI-831)0.192g、連鎖移動剤(昭和電工(株)製“カレンズ”(登録商標)MT-PE1 0.021g)、密着改良剤(信越化学工業(株)製 KBM-503)0.160g、界面活性剤(ビックケミー製“BYK”(登録商標)-333)0.040g、重合禁止剤(DIC製ターシャリブチルカテコール(TBC))0.009g、PMA 7.243g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)42.001gを添加し緑色樹脂組成物を作製した。
【0168】
(カラーフィルタ基板の作製)
無アルカリガラス上に、硬化後膜厚みが1.5μmになるようにブラックマトリクス用樹脂BM-1を塗布し、真空乾燥した。画素ピッチ50μm、ブラックマトリクス幅5μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cm2で露光し、0.3質量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、ブラックマトリクスを形成した。
【0169】
その上に、膜厚が2.5μmになるように赤色樹脂組成物R-1を塗布し、真空乾燥した。50μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cm2で露光し、0.3質量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ50μmの赤色画素を形成した。
【0170】
さらにその上に、膜厚が2.5μmになるように青色樹脂組成物B-1を塗布し、真空乾燥した。50μm幅のストライプ状フォトマスクを介して、i線40mJ/cm2で露光し、0.3質量%テトラメチルアンモニウム水溶液により50秒間現像を行い、230℃30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ50μmの青色画素を形成した。
【0171】
さらにその上に、硬化後膜厚が2.5μmになるように緑色樹脂組成物を塗布し、90℃で10分間加熱乾燥した。50μm幅のストライプ形状フォトマスクを介して、i線100mJ/cm2で露光し、0.3質量%テトラメチルアンモニウム水溶液により60秒間現像を行い、230℃で30分間加熱硬化を行い、画素ピッチ50μmの緑色画素を形成した後、オーバーコート層を作製した。
【0172】
さらにその上に、比較感光性樹脂組成物1を塗布した。温度:25℃、圧力:45Paの条件で200秒間減圧乾燥した後、105℃で10分間加熱乾燥(プリベイク)した後、室温まで冷却し、プリベイク膜を形成した。次に、レンズスキャン露光装置として、FX-65S((株)ニコン製)で、直径7μmの円形フォトマスクを介して、i線:365nm、h線:405nmおよびg線:436nmの各波長を含む紫外線を照射光として、60mJ/cm2の露光量(i線換算)で露光した。
【0173】
次に、0.3質量%のTMAHと、0.3質量%のA-60とをそれぞれ含む23℃の水溶液を現像液として、60秒間シャワー現像し、さらに水洗して液切りをした。最後に、230℃のオーブン内で30分間加熱乾燥(ポストベイク)して、上底6μm、下底9μm、高さ3μmのフォトスペーサを形成したカラーフィルタ基板を複数枚作製した。数枚で弾性復元率評価等の評価を行い、残りは表示装置の作製工程に進んだ。
【0174】
(表示装置の作製)
無アルカリガラス上にTFT素子、透明電極等を形成し、TFTアレイ基板を作製した。前記方法により得られたカラーフィルタ基板とアレイ基板に、製造例12の光配向用配向膜用組成物を硬化後膜厚100nmになる条件で塗布し、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射し、波長365nmで1.3J/cm2で光偏向を行った。230℃にて20分間焼成処理を行った。
【0175】
アレイ基板にマイクロロッドを練り込んだシール剤を印刷し、アレイ基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせた。シール部に設けられた注入口からIPS液晶を注入した後、液晶セルの両面に偏光フィルムを偏光軸が垂直になるようにして貼り合わせ、液晶パネルを得た。この液晶パネルに、バックライト光源を取り付け、TABモジュール、プリント基板等を実装し、液晶表示装置を作製した。
【0176】
この比較感光性樹脂組成物(HK-1)のエチレン性不飽和基当量は176.7であり、弾性復元率は48.1であり弾性復元率評価はEであった。またウレタンはIR測定限界以下しか含んでおらず、ウレタン当量は実質無限大であるが、測定下限値を採用して1.0×109として計算を行った。耐摺動回数は4000回であり評価はBであった。
【0177】
(比較例2~3、実施例2~16、参考例1,2)
感光性樹脂組成物の組成を表2ないし表4に示すとおりに変更したこと以外は比較例1と同様に、プリベイク膜およびフォトスペーサおよび液晶表示装置を作製した。樹脂組成物の質量%、エチレン不飽和性結合当量、ウレタン当量、ウレタン当量/エチレン不飽和性結合当量、弾性復元率、弾性復元率評価、耐摺動回数、摺動性評価を評価した結果を表5~表7に示す。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
(比較例1~3の比較)
比較例1に対して、配合比を変え、エチレン性不飽和結合当量を減らした比較例2~3において、エチレン性不飽和基当量と弾性復元率に相関があり、弾性復元率を合格のB判定以上にするためには155g/mol以下が必要であることがいえる。また弾性復元率の向上に従い、耐摺動回数が減少しており、トレードオフの関係であり、エチレン性不飽和結合当量の増減では両立しないと言える。
【0182】
(参考例1と比較例3の比較)
比較例3に対して、DPHAの一部をウレタン結合を含む重合性化合物U-1に代えて、ウレタン当量を14523g/molに調整した参考例1は、復元率評価がAAを維持したまま耐摺動回数が500回から3500回に増加し、摺動性評価はEからBに向上した。ウレタンを含むことで、復元率評価と摺動性評価を両立することができたといえる。実施例2~16においてもウレタン結合を含む重合性化合物もしくはアルカリ可溶性樹脂を用いることにより弾性復元率評価がAAを維持したまま、摺動性評価がB判定以上になるということが言える。
【0183】
(実施例2~実施例5の比較)
実施例2とそれよりもウレタン当量の値が小さい実施例3~5をみてみると、ウレタン当量と耐摺動回数との相関性が確認される。ウレタン当量が50000g/mol以下であれば弾性復元率評価との両立ができると言える。
【0184】
ウレタン当量をエチレン性不飽和基当量で除した値が、10~200であれば両立しやすいと言える。
【0185】
(実施例7~14、参考例2の比較)
重合性化合物が異なる実施例7~14を比較した場合。1分子中のエチレン性不飽和基が2である実施例10に対して、1分子中のエチレン性不飽和基が6以上であった実施例7~9、11~14は耐摺動回数が多かった。また同じ比較でウレタンを含む重合性化合物の分子量が700~3000であると耐摺動回数が多いと言え1000~3000であると耐摺動回数がさらに多いと言える。
【0186】
(実施例7~9の比較)
一般式(1)の構造をもつという点で共通する重合性化合物を用いた、実施例7~9において1分子中のエチレン性不飽和基が多い方が耐摺動回数が多くなる。
【0187】
(実施例10~13の比較)
一般式(2)の構造をもつという点で共通する重合性化合物を用いた、実施例10~13において1分子中のエチレン性不飽和基が多い方が耐摺動回数が多くなる。
【0188】
(実施例7、12、14の比較)
一般式(2)の構造にジペンタエリスリトールペンタアクリレートを反応させたU-6を使用した実施例12は、ヘキサメチレンイソシアネートにジペンタエリスリトールペンタアクリレートを反応させたU-8を使用した実施例14に比較して耐摺動回数が多かった。同じように一般式(1)の構造にジペンタエリスリトールペンタアクリレートを反応させたU-1を使用した実施例7は、実施例10よりさらに耐摺動回数が多かった。
【0189】
(実施例9と実施例16の比較)
重合性化合物中にアルキレンオキサイド変成物を含む実施例16は実施例9に比較して、同等の弾性復元率を持ちながら耐摺動回数が11000回から18000回へと大幅に改善することができた。
【0190】
(参考例3)
樹脂組成物JK-1の粘度をE型粘度計で測定し、調整初日に対して40℃1週間保管した後の粘度の比を測定し前述の基準に従って評価した。粘度安定性はAAAであり特に優れたものであった。
【0191】
樹脂組成物JK-1において形成した円錐台状パターンフォトスペーサーのうち、レンズとレンズとの継目部分に該当する基板面内20mm角の範囲において、基板面内で複数のレンズが二列に並ぶ方向と直行する方向に一定の間隔で20個のフォトスペーサを選択して、段差測定器を用いて高さのばらつき(最大高さ-最小高さ)を測定し、フォトスペーサの高さばらつきを評価した。高さばらつきはCであった。
【0192】
樹脂組成物JK-1を用いて作成したカラーフィルタ基板において、フォトスペーサ-の現像時間のみ20から5秒刻みで100秒まで変更して作成し、残渣と欠落のない時間の長短で現像マージンを評価した。現像マージンはAAAであった。
【0193】
(実施例19~33、参考例4)
参考例3の樹脂組成物JK-1を各々JK-2~JK-17に代えた以外は全く同様にして19~33、参考例4を実施した。
【0194】
イソシアネート当量、乾燥粘度、高さばらつき評価、粘度安定性を表8~9に記載した。
【0195】
参考例3に対して、一般式(5)の構造を含むアルカリ可溶性樹脂を使用した実施例19は、乾燥粘度を上がることができ、それに伴い高さばらつき評価をCからBに上げることができた。
【0196】
【0197】
【0198】
(実施例19と実施例23の比較)
実施例19に対して一般式(5)の構造を含むアルカリ可溶性樹脂を増量した実施例23は、高さばらつき評価をBからAAAに上げることができた。
【0199】
(参考例3、実施例19~31と32の比較)
イソシアネート当量が50000g/mol以上であると粘度安定性が良好であり、かつ現像マージンが良好と言える。
【0200】
(参考例3、実施例19~31と参考例4の比較)
ウレタンが分子量3000以下の重合性化合物に由来すると現像マージンが良好と言える。
【0201】
(樹脂組成物の分析)
表4記載のとおりに配合した仕込み固形分濃度30.0質量%のJK-16を、5gをアルミ製カップ(φ45mm)に入れ、130℃で1時間加熱して溶剤を除去したところ実測された固形分濃度は30.0質量%であった。またテトラヒドロフランで希釈を行い0.2質量%に調整したサンプルをGPCにて分子量を測定し、また、各成分を分取した。組成比を面積比から求めた。各成分を1H―NMRにて構造を同定し、エチレン不飽和基当量とウレタン当量を算出した。用いた原材料のエチレン不飽和基当量とウレタン当量を基にして樹脂組成物としてのエチレン不飽和基当量とウレタン当量を算出したところ、非常に高い一致性を示すことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の感光性樹脂組成物は、液晶表示装置のフォトスペーサを形成するための材料として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0203】
Ha:フォトスペーサの総変形量[μm]
Hb:フォトスペーサの塑性変形量[μm]