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特許7272308ショット処理装置およびショット処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ショット処理装置およびショット処理方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20230502BHJP
   B24C 3/14 20060101ALI20230502BHJP
   B24C 1/10 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B24C9/00 H
B24C9/00 Z
B24C9/00 J
B24C3/14
B24C1/10 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020062918
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160019
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】家守 修一
(72)【発明者】
【氏名】見城 維佐久
(72)【発明者】
【氏名】北河 理宏
(72)【発明者】
【氏名】神山 拓哉
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030313(JP,A)
【文献】特表2012-531315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 9/00
B24C 3/14
B24C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをショット処理する投射機構と、前記投射機構が内包されるキャビネットと、を備えるショット処理装置であって、
前記ワーク上面の高さ位置を検知する高さセンサと、
前記ワークを搬送する搬送機構と、
前記キャビネットの一壁面に設けられた搬入口からのショット材の飛散を防止する飛散防止カバーと、
前記飛散防止カバーを上下動させる駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記高さセンサの出力に基づいて、前記飛散防止カバーの下端部の位置を、前記ワーク上面に対して間隙をあけて設定する、ショット処理装置。
【請求項2】
前記ワーク上のショット材を吹き飛ばすブロア機構を更に備え、
前記制御部は、前記駆動機構により、前記飛散防止カバーの上下動に連動して前記ブロア機構を上下動させる、請求項1に記載のショット処理装置。
【請求項3】
前記搬入口または、前記搬入口に対向する位置に開口された搬出口、の少なくともいずれかには、前記ショット材の飛散を防止する飛散防止部材を備え、
前記飛散防止部材は、通過する前記ワークを挟むとともに、前記ワークに向かって突出する方向に植設された可撓性を有する複数の線状体からなる、請求項1または2に記載のショット処理装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、
第1のローラと、
前記第1のローラを回転駆動させる駆動源と、
前記第1のローラに同期して駆動される第2のローラと、
一端を前記飛散防止カバーに固定され、他端を第2のローラに巻回されるカバーワイヤと、
一端を前記ブロア機構に固定され、他端を前記第1のローラに巻回されるブロアワイヤと、を備える、請求項に記載のショット処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、記録部を備え、
前記制御部は、
前記高さセンサによって検知した前記ワーク上面の高さ位置に基づいて、前記ワークの種別を特定し、
前記特定されたワークの種別に対応したショット処理条件を前記投射機構、前記駆動機構、及び前記搬送機構を含むショット処理装置の機構の少なくともいずれかに設定し、
前記特定されたワークの種別と設定し実行されたショット処理条件を前記記録部に記録する、請求項1から4のいずれか1項に記載のショット処理装置。
【請求項6】
前記ワークの先端を検知する先端センサを備え、
前記制御部は、前記先端センサの出力に基づいてショット処理装置の各部の動作を制御し、
前記制御は、前記搬送機構及び前記投射機構の少なくともいずれかを含む請求項1から5のいずれか1項に記載のショット処理装置。
【請求項7】
ワークをショット処理する投射機構と、前記投射機構が内包されるキャビネットと、を備えるショット処理装置によるショット処理方法であって、
前記ワーク上面の高さ位置を検知すること、
前記ワークを搬送しながらショット処理をすること、
前記キャビネットの一壁面に設けられた搬入口からのショット材の飛散を防止する飛散防止カバーの下端部の位置を、前記ワーク上面に対して間隙をあけて、前記ワーク上面の高さ位置に基づいて設定すること、
前記ワークのショット材を吹き飛ばすブロア機構の位置を、前記飛散防止カバーに同期して設定すること、を含むショット処理方法。
【請求項8】
前記ワーク上面の高さ位置に基づいて前記ワークの種別を特定すること、
前記特定されたワークの種別に対応してショット処理を設定すること、
前記設定されたショット処理を実行すること、
前記特定されたワークの種別と実行されたショット処理を記録すること、を含む請求項7に記載のショット処理方法。
【請求項9】
前記ワークの先端を検知すること、
前記検知された先端の位置に基づいてショット処理方法の各動作を制御し、
前記制御は、前記ワークの搬送の制御、及び前記ワークのショット処理の制御、の少なくともいずれかを含む請求項7または8に記載のショット処理方法。
【請求項10】
前記ワークは、ウェブを上下方向に位置させて搬送されるH形鋼である請求項7から9のいずれか1項に記載のショット処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショット処理装置およびショット処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼材などのワークのスケール落としやバリ取りや表面粗し等を行うショットブラスト加工、疲労強度向上等を行うショットピーニング処理、等の表面加工には、ショット材をワークの表面に投射または噴射してワークを加工するショット処理装置が用いられる。ワークが長尺である場合は、ショット処理室に搬入口と搬出口を設け、ワークを搬入口から搬出口に向かって通過させながらショット処理を行う装置が用いられる。搬入口及び搬出口は開口されているので、ショット処理に使用されたショット材が、ショット処理装置の外部に散らばってしまうことがある。そこで、ショット材のショット装置外部への漏出を防止する機構が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、H形鋼のショット処理を行うショットブラスト装置が開示されている。この文献には、ワークに衝突したショットの飛散を防止するために、H形鋼の上面に気体を吹き付けるエアブロー装置を設け、H形鋼の上面に残留した投射材を吹き飛ばすことで、投射材が飛散するのを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-030313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の装置においてもショット材の飛散を抑えることができるが、作業環境のさらなる改善のために、ショット材の飛散防止性能を更に向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ショット材の飛散防止機能をさらに向上させることができるショット処理装置およびショット処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のショット処理装置は、ワークをショット処理する投射機構と、投射機構が内包されるキャビネットと、を備えるショット処理装置である。このショット処理装置は、ワーク上面の高さ位置を検知する高さセンサと、ワークを搬送する搬送機構と、キャビネットの一壁面に設けられた搬入口からのショット材の飛散を防止する飛散防止カバーと、飛散防止カバーを上下動させる駆動機構と、駆動機構を制御する制御部と、を備える。そして、この制御部は、高さセンサの出力に基づいて、飛散防止カバーの位置を設定する。
このような発明によれば、ワーク上面の高さに基づいて搬入口の飛散防止カバーを位置決めするので、搬入口からのショット材の飛散を防止することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、ワーク上のショット材を吹き飛ばすブロア機構を更に備え、制御部は、駆動機構により、飛散防止カバーの上下動に連動してブロア機構を上下動させる。
このような構成によれば、ワークの上面の高さに基づいて位置決めされた飛散防止カバーに連動してブロア機構が位置決めされるので、ショット処理後のワーク上のショット材を吹き飛ばすことができ、ショット処理装置の外部にショット材が飛散するのを防止することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、搬入口または搬出口(搬入口に対向する位置に開口された搬出口)の少なくともいずれかには、前記ショット材の飛散を防止する飛散防止部材を備える。この飛散防止部材は、通過するワークを挟むとともに、ワークに向かって突出する方向に植設された可撓性を有する複数の線状体からなる。
このような構成によれば、飛散防止カバーに加えて飛散防止部材を備えるので、搬入口側から飛散するショット材を確実に防止することができる。
【0010】
本発明の一態様においては、駆動機構は、第1のローラと、該第1のローラを回転駆動させる駆動源と、第1のローラに同期して駆動される第2のローラと、一端を飛散防止カバーに固定され、他端を第2のローラに巻回されるカバーワイヤと、一端をブロア機構に固定され、他端を第1のローラに巻回されるブロアワイヤと、を備える。
このような構成によれば、駆動機構により飛散防止カバーとブロア機構を連動させて上下動させるので、本発明を適切に実施することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、制御部は、記録部を備え、この制御部は、高さセンサによって検知したワーク上面の高さ位置に基づいて、ワークの種別を特定し、特定されたワークの種別に対応したショット処理条件を投射機構、駆動機構、及び搬送機構を含むショット処理装置の機構の少なくともいずれかに設定し、特定されたワークの種別と設定し実行されたショット処理条件を記録部に記録する。
このような構成によれば、ワーク上面の高さに基づいてワークの種別を特定し、ワークの種別に対応したショット処理設定が投射機構に設定されるので、ショット処理の条件を適切に選択することができる。また、特定されたワークの種別と設定し実行されたショット処理条件を記録部に記録するので、ショット処理装置の運転の履歴を記録することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、ワークの先端を検知する先端センサを備え、制御部は、先端センサの出力に基づいて、搬送機構、投射機構のいずれかまたは双方を含むショット処理装置の各部の動作を制御する。
このような構成によれば、ワークの先端からの位置を特定してワークの必要な部分にショット処理を施すことができる。
【0013】
本発明のショット処理方法は、ワークをショット処理する投射機構と、投射機構が内包されるキャビネットと、を備えるショット処理装置によるショット処理方法である。このショット処理方法は、以下の(1)~(4)を含む。
(1)ワーク上面の高さ位置を検知すること。
(2)ワークを搬送しながらショット処理をすること。
(3)キャビネットの一壁面に設けられた搬入口からのショット材の飛散を防止する飛散防止カバーの位置を、ワーク上面の高さ位置に基づいて設定すること。
(4)ワークのショット材を吹き飛ばすブロア機構の位置を、飛散防止カバーに連動して設定すること。
このような発明によれば、ワーク正面の高さに基づいて搬入口の飛散防止カバーを位置決めするので、搬入口からのショット材の飛散を防止することができる。また、ワークの上面の高さに基づいて位置決めされた飛散防止カバーに連動してブロア機構が位置決めされるので、ショット処理後のワーク上のショット材を吹き飛ばすことができ、ショット処理装置の外部にショット材が飛散するのを防止することができる。
【0014】
本発明の一態様においては、
ワーク上面の高さ位置に基づいてワークの種別を特定すること、
特定されたワークの種別に対応してショット処理を設定すること、
設定されたショット処理を実行すること、
特定されたワークの種別と実行されたショット処理を記録すること、を含む。
このような構成によれば、ワーク上面の高さに基づいてワークの種別を特定し、ワークの種別に対応したショット処理設定が投射機構に設定されるので、ショット処理の条件を適切に選択することができる。また、特定されたワークの種別と設定し実行されたショット処理条件を記録部に記録するので、ショット処理装置の運転の履歴を記録することができる。
【0015】
本発明の一態様においては、ワークの先端を検知すること、検知された先端の位置に基づいてショット処理方法の各動作を制御すること、を含む。この制御は、ワークの搬送の制御、及びワークのショット処理の制御、の少なくともいずれかを含む。
このような構成によれば、ワークの先端からの位置を特定してワークの必要な部分にショット処理を施すことができる。
【0016】
本発明の一態様においては、ワークは、ウェブを上下方向に位置させて搬送されるH形鋼である。
このような構成によれば、H形鋼は、ウェブを上下方向に位置させて搬送されるので、H形鋼の凹部分が無い状態で搬送することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ショット材の飛散防止機能をさらに向上させることができるショット処理装置およびショット処理方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るショット処理装置を概略的に示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るショット処理装置を概略的に示す正面図である。
図3図1のB-B断面拡大矢視図である。
図4図1のA-A拡大矢視図である。
図5図4のa-a断面拡大矢視図である。
図6図1のD-D拡大矢視図である。
図7図1のC-C拡大矢視図である。
図8】駆動機構7の構成を概略的に示す模式図である。
図9図1のB-B断面拡大矢視図である。
図10図1のA-A拡大矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るショット処理装置1を概略的に示す側面図で、図2は、その正面図である。
図1に示すように、ショット処理装置1は、キャビネット2、搬送機構3、投射機構4、循環機構5、集塵機6、駆動機構7、ブロア機構8、高さセンサ9、先端センサ10、制御部12、を含む。
【0020】
キャビネット2は、金属等により箱形に形成されたものであり、後述の搬送機構3によって搬送されるワークWの搬送通路を覆うように形成されている。キャビネット2の一壁面には搬入口2aが、該搬入口2aに対向する位置には搬出口2bが、それぞれ開口されている。ワークは搬入口2a及び搬出口2bによって挿通するようにセットされる。
【0021】
搬送機構3は、ワークを搬送する機構である。ここで、本実施形態におけるワークWは、H形鋼であり、ウェブを上下方向に位置させて搬送される。
搬送機構3は、円柱状のローラ3aを複数本有しており、ローラ3aの一方の側端には、チェーンホイール3bが取り付けられている。チェーンホイール3bは、チェーン3cによって連係されており、一個のアクチュエータ3dによって駆動される。
【0022】
投射機構4は、ワークWをショット材によりショット処理するための機構である。投射機構4は、キャビネット2の外周に備えられており、その位置はワークWの搬送通路の略中間である。ここで、本発明における投射機構4とは、羽根車の遠心力によってショット材を投射する投射機、および圧縮空気と共にショット材を噴射する噴射機の双方を含むものである。本実施形態では、投射機構4は、投射機である。図3は、図1のB-B断面拡大矢視図である。図3に示すように、本実施形態では、投射機構4は、キャビネット2の外周部に5基設けられている。
【0023】
循環機構5は、ショット材をキャビネット2内で循環させ、再利用するための機構である。本実施形態では、下部スクリュコンベア5a、バケットエレベータ5b、上部スクリュコンベア5c、およびシュート5dを備えている。図1から図3を参照して、これらの装置のショット材の循環動作について説明する。投射機構4によって、ワークWに投射されたショット材は、キャビネット2の下部に設けられ、下部スクリュコンベア5aに下るように形成された傾斜面2d上を移動し、下部スクリュコンベア5aに集まる。
【0024】
下部スクリュコンベア5aは、傾斜面2dを移動してきたショット材を、軸方向に回転することによりバケットエレベータ5bへ搬送する。バケットエレベータ5bは、下部スクリュコンベア5aで回収されたショット材を掬い上げ、装置下部から装置上部へショット材を搬送する。装置上部に搬送されたショット材は、バケットエレベータ5cの上端部からシュート5dに投げ出され、シュート5dを介して上部スクリュコンベア5cに搬送される。上部スクリュコンベア5cは、軸方向にショット材を搬送し、各投射機構4の投射材導入ホース5eを介して各投射機構4にショット材を供給する。
【0025】
集塵機6は、ショット処理、およびショット材除去が行われる際に発生した粉塵を風力分級でショット材と粉塵に分級し、粉塵のみを吸引する。
【0026】
駆動機構7は、飛散防止カバー2cを駆動させる機構である。図1に示すように、搬入口2aには、飛散防止カバー2cが設けられている。詳細は後述するが、この飛散防止カバー2cは、駆動機構7により、搬入口2aを塞ぐように上下動される。
【0027】
ブロア機構8は、ショット処理後のワークWの上面に残っているショット材を吹き飛ばす機構である。ブロア機構8は、キャビネット2内部の投射機構4の搬送下流側(即ち、搬送通路において、基準位置(この場合はショット材が打ち付けられる箇所)に対して搬出口2b側)に設けられている。そして、前述の駆動機構7は、飛散防止カバー2cの上下動に連動して同一の移動量で、ブロア機構8を上下動させる。
【0028】
ブロア機構8は、吹き出し部8aと、導管8bと、有底円筒状の管体8c、および圧縮空気供給管8dで構成されている。導管8bは、駆動機構7によって、管体8c内で上下に可動に設けられており、H型鋼Wの高さにあわせて吹き出し部8aと共に高さの位置を制御部12の指令を受信した駆動機構7によって設定される。
【0029】
高さセンサ9は、ワークW上面の高さを検知するセンサである。高さセンサ9は、図1図2に示すように、キャビネット2の搬入口2aの上部に設けられている。本実施形態においては、高さセンサ9は、レーザをワークW上面に向け鉛直下方に照射し、その照射されたレーザの反射を検知することによって、ワークWの上面までの距離を検知している。
【0030】
先端センサ10は、ワークWの先端を検知するセンサであり、搬入口2a下部近傍における搬送通路の左右に設けられている。先端センサ10は、左右に設けられた1方を発光器、他方を受光器で構成され、発光器で照射された光が受光器で受光されたか否かで、先端センサ10が設けられた位置に、ワークWが位置しているか否かを検知する。
【0031】
制御部12は、高さセンサ9及び先端センサ10から送信された出力に基づいて、ショット処理装置1を制御する。制御については後述する。制御部12は、図示しないCPU、メモリ、コネクタ、バッファ、ネットワーク接続装置、各種記録装置等から構成されており、以下に示す個別の動作処理を統合的に制御している制御基板上の一領域のことである。なお、制御基板は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのモーションコントローラ、パーソナルコンピュータ(PC)などの各種演算装置、等ショット処理装置1の動作を制御する装置に含まれる。なお、制御については後述する。
【0032】
ショット処理装置1に構成及びショット処理方法について、更に詳細に説明する。
図4は、図1のA-A拡大矢視図であって、搬入口2aの要部を示している。
前述したように、ワークWは、ウェブWaを上下方向に位置させて搬送されるH形鋼である。ワークWが搬送される搬送通路の両側2e、2eには、ワークWの左右側面方向に向かう方向に突出するように植設された複数の線状体2fからなる飛散防止部材2gを備えている。この線状体2fは可撓性を有しており、ワークWの通過時にその搬送方向に撓むように設けられている。即ち、飛散防止部材2gは、通過するワークWを挟み、且つ撓むように植設された線状体2fによって、ショット材の飛散を防止する部材である。本実施形態では、飛散防止部材2gは、飛散防止カバー2cの搬送方向下流側に隣接して配設されている。即ち、搬入口2a、飛散防止カバー2c、飛散防止部材2gの順に配置されている。
【0033】
図5は、図4のa-a拡大矢視図である。図5に示すように、飛散防止カバー2cは、ワイヤ固定具2h、弾性変形可能な幕体2i、錘板2jを備えている。幕体2iは、ゴムシート等で形成され、その上部をワイヤ固定具2hによって、詳細は後述するカバーワイヤ7eに吊下されている。幕体2iの下部には、錘板2jがボルト2kで固定されている。このような構成において、飛散防止カバー2cは、軸体2mに摺動可能に吊下されており、軸体2mから斜め上方に、カバーワイヤ7eによって牽引されており、軸体2mから、鉛直下方に錘板2hの重量によって、垂下している。
【0034】
図6は、図1のD-D拡大矢視図であり、図7は、図1のC-C拡大矢視図である。図6図7は、それぞれ、駆動機構7の要部を示している。図8は、駆動機構7の構成を概略的に示す模式図である。図6から図8を参照して、駆動機構7の構成について説明する。
【0035】
駆動機構7は、第1のローラ7aと、この第1のローラ7aを回転駆動させる駆動源7bと、第1のローラ7aの回転を検知するエンコーダ7cと、第1のローラ7aに同期して駆動される第2のローラ7dと、一端を飛散防止カバー2cに固定され、他端を第2のローラ7dに巻回されるカバーワイヤ7eと、一端をブロア機構8に固定され、他端を第1のローラ7aに巻回されるブロアワイヤ7fと、を備えている。第1のローラ7aと第2のローラ7dとは、駆動ワイヤ7gによって連結されている。この駆動ワイヤ7gは、第1のローラ7aの回転を、第2のローラ7bに同期して伝達するために、双方のローラ7a、7dに巻回されている。
【0036】
本実施形態においては、駆動源7bは、減速機とブレーキ付きのモータである。エンコーダ7cは、パルスカウントエンコーダであって、回転角度に対応するパルスを出力する。エンコーダ7cの出力は、制御部12に送信され、制御部12は、エンコーダ7cの出力に基づいて、駆動源7bを制御する。駆動源7bに駆動されて第1のローラ7aが回転すると、その回転に対応して、第1のローラ7aにブロアワイヤ7fが巻き取られ、あるいは、第1のローラ7aから巻き出され、その巻き取られ/巻き出されたブロアワイヤ7fの長さに対応して、ブロア機構8が上下に移動する。
【0037】
駆動ワイヤ7gは、第1のローラ7aの回転を、その回転に同期して、第2のローラ7dに伝達し、第2のローラ7dを駆動する。駆動された第2のローラ7dが回転すると、その回転に対応して、第2のローラ7dにカバーワイヤ7eが巻き取られ、あるいは、第2のローラ7dから巻き出され、その巻き取られ/巻き出されたカバーワイヤ7eの長さに対応して、飛散防止カバー2cが上下に移動する。ここで、駆動機構7においては、飛散防止カバー2cとブロア機構8の上下動は、同一の移動距離となるように構成されている。
【0038】
この構成において、例えば、飛散防止カバー2cの下端部2pと、ブロア機構8の下端部8pの位置を予め同じ高さになるように、カバーワイヤ7eとブロアワイヤ7fの長さを設定しておく。このとき、飛散防止カバー2cとブロア機構8の任意の上下動の後の、ワークWの上面(H形鋼Wの上側フランジの上面)から、それぞれ飛散防止カバー2cの下端部2pまでの距離Lと、ブロア機構8の下端部8pまでの距離Mとは、いつでも同一の距離となる(M=L)。
【0039】
もちろん、ブロア機構8に高さのオフセットd(図示せず)を設けてもよい。すなわち、ブロア機構8の下端部8pの高さを、飛散防止カバー2cの下端部2pの高さより距離dだけ高い位置に設定することもできる。この場合は、飛散防止カバー2cとブロア機構8の任意の上下動の後の、距離MとLの関係は、いつでも、M=L+dとすることができる。
【0040】
図1図2に示すように、本実施形態における制御部12は、記録部12aと条件テーブル12bを備えている。この制御部12は、高さセンサ9によって検知したワークW上面の高さに基づいて、ワークWの種別を特定し、特定されたワークWの種別に対応したショット処理条件を投射機構4、駆動機構7、及び搬送機構3を含むショット処理装置1の機構の少なくともいずれかに設定し、特定されたワークWの種別と設定し実行されたショット処理条件を記録部12aに記録する。ここでショット処理条件を設定される機構は、いずれか1つ又は2以上のいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0041】
条件テーブル12bには、ワークWの種別に紐付いて、ワークWの上面の高さ情報とショット処理条件が予め記録されている。制御部12は、高さセンサ9から、現在のワークW上面の高さ検知の結果を受信し、得られた高さに基づいて、条件テーブル12bに登録された高さに対応するワークWの種別を照合し、ワークWの種別を特定する。制御部12は、さらに、このワークWの種別に対応するショット処理条件を条件テーブル12bから読み出し、投射機構4にその条件を設定する。ここでショット処理条件とは、個別の投射機構4の使用/不使用、ショット材の投射量、ショット材の投射角度、ショット材の投射速度のいずれかまたはいずれかの組み合わせを含む設定条件のことである。
【0042】
次に、図1図3図4図8図9図10を参照して、本実施形態におけるショット処理装置1の動作を以下(1)~(6)の順に説明する。
(1)ショット処理装置1が、始動されると、搬送機構3が搬送を開始し、下部スクリュコンベア5a、バケットエレベータ5b、上部スクリュコンベア5cもショット材の循環を開始する。この状態でH形鋼Wが搬入口2aに向けて搬送されてくる。
【0043】
(2)搬送されてきたH形鋼Wの先端が、先端センサ10によって検出されると、制御部12は、その先端位置から、高さセンサ9が照射H形鋼Wの上面の高さを検出できる位置までH形鋼Wを移動させ、停止させるように搬送機構3を制御する。その位置で、高さセンサ9は、H形鋼Wの上面にむけてレーザを照射し、H形鋼Wの高さ位置を検知する。
【0044】
(3)制御部12は、高さセンサ9から受信したH形鋼Wの上面の高さに基づいて、駆動機構7を制御し、飛散防止カバー2cとブロア機構8の高さを設定する。このとき、図8において、飛散防止カバー2cの下端部2pの高さとブロア機構8の下端部8pの高さが同一となるように予め設定されている場合は、ショット処理中のH形鋼Wの上面からそれぞれの下端部2p、8pまでの高さL、Mは、同一となる。実際の設定としては、L、Mは、mmのオーダーで、各下端部2p、8pは、H形鋼の上面から隙間をあけて位置決めされている。
【0045】
(4)制御部12は、次に、得られたH形鋼の高さに基づいて、条件テーブル12bを参照し、H形鋼Wの種別を特定する。制御部12は、この特定されたH形鋼Wの種別に紐付いているショット処理条件を、条件テーブル12bから読み出し、ショット処理装置1の各部にショット処理の条件を設定する。この条件は、上述したように、個別の投射機構4の使用/不使用、ショット材の投射量、ショット材の投射角度、ショット材の投射速度のいずれかまたはいずれかの組み合わせを含む。
【0046】
例えば、図3に示すような、高さがあるH形鋼Wの場合は、キャビネット2の外周部に設けられた5基の投射機構4は、すべて駆動される。図4に示す通り、このとき飛散防止カバー2cの下端部2pは、H形鋼Wの上側フランジWbの上面に僅かの隙間をあけて位置決めされている。
【0047】
図9は、図1のB-B断面拡大矢視図である。図10は、図1のA-A拡大矢視図である。図9図10に示すのは、H形鋼Wの高さが図3図4よりも低い場合である。
図10に示す通り、高さセンサ9は、図4の動作と同様に、レーザ9aをH形鋼Wの上側フランジWbの上面に向けて照射し、レーザ9aのフランジWb上面からの反射を検知することによって、ワーク(H形鋼)Wの高さ位置を検知する。高さセンサ9は、図4のH形鋼Wの高さ位置とは異なる、図10におけるH形鋼Wの高さ位置を検知する。
図9に示す通り、この場合は、H形鋼Wの高さが低いので、上部にある投射機構4a以外の4基の投射機構4によるショット処理により充分ショット加工が可能である。したがって、上部にある投射機構4aを使用しない設定となる。このときも図10に示す通り、飛散防止カバー2cの下端部2pは、図4よりも低い位置で、H形鋼Wの上側フランジWbの上面に僅かの隙間をあけて位置決めされている。
【0048】
(5)制御部12は、上述の手順によって設定されたショット処理条件にしたがって、ショット処理装置1を制御する。制御部12は、先端センサ10によって、検知したH形鋼Wの先端位置からショット処理を施す位置まで搬送機構3を駆動して、H形鋼Wを搬送通路内を移動させ投射機構4によってショット処理を行う。
【0049】
このとき、ショット処理において、特に図3に示すように5基の投射機構4をすべて駆動してショット処理を行う場合、H形鋼Wに投射されたショット材がH形鋼Wや、キャビネット2の内壁にはね返り、搬入口2c方向にもショット材が多量に飛散する場合がある。このように飛散するショット材の量が多くても、飛散防止カバー2cは、H形鋼Wの上面を通過してくるショット材の飛散を確実に阻止することができる。飛散防止部材2gは、H形鋼Wの断面形状に沿うように搬入口2aとH形鋼Wの隙間を塞ぐので、飛散防止カバー2cの下部のショット材の飛散も防止することができる。飛散防止部材2gは、ワーク下面を伝ってくるショット材の飛散も防止することができる。
【0050】
(6)投射機構4によってショット処理が行われた部分は、さらに搬送通路下流へ搬送され、ブロア機構8によって、H形鋼W表面に残っているショット材を吹き飛ばされ、搬出口2bよりショット処理装置1の外部に搬出される。制御部12は、今ショット処理が行われたH形鋼Wの種別と、ショット処理条件を記録部12aに記録し、一連のショット処理が終了する。
【0051】
以上の(1)~(6)の工程を繰り返すことによって、ショット処理が継続的に行われる。高さセンサ9による検知の結果、H形鋼Wの上面の高さがある一定範囲を含んで前回処理が行われたものと同一と見なされた場合、すなわちH形鋼Wの種別が同一の場合は、前回のショット処理設定を保持して同一の条件でショット処理が行われる。高さが異なる場合、すなわちH形鋼Wの種別が異なる場合は、上述した工程に従って、ショット処理条件が再設定される。
【0052】
以上述べたように、本実施形態においては、ワークWの高さに基づいて、飛散防止カバー2cの高さを位置決めするので、搬入口2aからのショット材の飛散を効果的に防止することができる。飛散防止カバー2cの位置決めに同期するように、同一の移動量でブロア機構8の高さを設定するので、搬出口2bからのショット材の飛散も効果的に防止できる。駆動機構7によって、飛散防止カバー2cとブロア機構8を同時に移動するので、簡便な装置構成でショット材の飛散防止機能を実施できる。また、搬入口2a側に飛散防止カバー2cと飛散防止部材2gを備えるので、搬入口2aからのショット材の飛散をさらに確実に防止できる。飛散防止部材2gは、ワーク下面を伝ってくるショット材の飛散も防止することができる。
【0053】
ショット処理は、H形鋼Wの上面の高さ位置に基づいて、H形鋼Wの種別を特定し、この種別に基づいて、予め工程の評価によって得られている、ショット処理条件を設定するので、ショット処理条件を容易に選択し、工程実績のあるショット処理を行うことができる。ショット処理が行われたH形鋼Wの種別と、ショット処理の条件が履歴として記録されるので、製品履歴を容易に検索することができる。また、ショット処理条件の履歴が蓄積されることによって、ショット処理装置のメンテナンスの時期や、交換部品の交換時期等を適切に設定することができる。
【0054】
本実施形態では、飛散防止カバー2cとブロア機構8の移動距離は、エンコーダ7cによって検知された回転角を演算することによって制御したが、これに限定されず移動距離をレーザ測長センサで直接計測して制御してもよい。
【0055】
本実施形態では、ワークWとしてH型鋼を例として記載したがこれに限定されず、高さが多種存在するワークWに対して、本発明は、検知されたワークWの高さに基づいて、飛散防止カバー2cとブロア機構8を上下移動することによって、有効に活用可能である。
【0056】
本実施形態では、飛散防止カバー2cは、搬入口の一部を覆う制御としたが、これに限定されず、ワークWが、搬入口2aを通過したことを、先端センサにより検出し、飛散防止カバー2cで搬入口2cのすべての開口を塞ぐように制御しても良い。また、飛散防止部材2gは、1層だけではなく、複数の層として形成してもよい。
【0057】
本実施形態では、複数ある投射機構4の使用/不使用の制御は、図9に示された上部にある投射機構4aについて例示したが、これに限定されず、ワークWの形状やショット処理の種類によって、いずれかの組み合わせで投射機構4を使用/不使用に設定するように制御してもよい。
【0058】
本実施形態では、飛散防止部材2gは搬入口2aの近傍に配置したが、搬出口2bの近傍にも配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ショット処理装置
2 キャビネット
2c 飛散防止カバー
2g 飛散防止部材
3 搬送機構
4 投射機構(投射機)
5 循環機構
6 集塵機
7 駆動機構
7a 第1のローラ
7b 駆動源(モータ)
7d 第2のローラ
7e カバーワイヤ
7f ブロアワイヤ
8 ブロア機構
9 高さセンサ
10 先端センサ
12 制御部
12a 記録部
W ワーク(H形鋼)

図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10