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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20230502BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230502BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F17/04 A
H01F41/04 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020523136
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022284
(87)【国際公開番号】W WO2019235510
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018110141
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095860(JP,A)
【文献】特開2008-140858(JP,A)
【文献】特開昭57-111008(JP,A)
【文献】特開昭60-187004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0364241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のスパイラル導体パターンと、
前記複数のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う絶縁樹脂層と、を備え、
前記複数のスパイラル導体パターンは、前記積層方向に隣接する第1及び第2のスパイラル導体パターンを含み、
前記第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、
前記第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て前記第1のターンと重なる第2のターンを含み、
前記第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、前記第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有しており、
前記第1のターンの径方向における内側壁面を構成する第1の内側壁面部と、前記第2のターンの径方向における内側壁面を構成する第2の内側壁面部は、互いに径方向位置が一致していることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1のターンは前記第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、前記第2のターンは前記第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2の外側壁面部は、積層方向から見て前記第1のスパイラル導体パターンの前記最外周ターンと重なりを有しており、
前記第1の電極パターンの内側壁面部は、積層方向から見て前記第2の電極パターンと重なりを有していることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の外側壁面部は、積層方向から見て前記第2の電極パターンと重なりを有していることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1の電極パターンと前記第1の外側壁面部の間に埋め込まれた前記絶縁樹脂層の径方向における厚さは、前記第2の電極パターンと前記第2の外側壁面部の間に埋め込まれた前記絶縁樹脂層の径方向における厚さと等しいことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記複数のスパイラル導体パターンは、前記第2のスパイラル導体パターンと前記積層方向に隣接する第3のスパイラル導体パターンをさらに含み、
前記第2の外側壁面部と、前記第3のスパイラル導体パターンの最外周ターンの径方向における外側壁面を構成する第3の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有していることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第2の外側壁面部は、積層方向から見て前記第3のスパイラル導体パターンの前記最外周ターンと重なりを有していることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1の外側壁面部と前記第3の外側壁面部は、互いに径方向位置が一致する部分を有していることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1のスパイラル導体パターンと前記第2のスパイラル導体パターンのターン数が1ターン以上異なることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
積層された複数のスパイラル導体パターンと、
前記複数のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う絶縁樹脂層と、を備え、
前記複数のスパイラル導体パターンは、前記積層方向に隣接する第1及び第2のスパイラル導体パターンを含み、
前記第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、
前記第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て前記第1のターンと重なる第2のターンを含み、
前記第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、前記第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有しており、
前記第1のターンは前記第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、前記第2のターンは前記第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、
前記第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンをさらに備え、
前記第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに備え、
前記第2の外側壁面部は、積層方向から見て前記第1のスパイラル導体パターンの前記最外周ターンと重なりを有しており、
前記第1の電極パターンの内側壁面部は、積層方向から見て前記第2の電極パターンと重なりを有していることを特徴とするコイル部品。
【請求項13】
積層された複数のスパイラル導体パターンと、
前記複数のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う絶縁樹脂層と、を備え、
前記複数のスパイラル導体パターンは、前記積層方向に隣接する第1及び第2のスパイラル導体パターンを含み、
前記第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、
前記第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て前記第1のターンと重なる第2のターンを含み、
前記第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、前記第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有しており、
前記第1のターンは前記第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、前記第2のターンは前記第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、
前記第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンをさらに備え、
前記第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに備え、
前記第1の電極パターンと前記第1の外側壁面部の間に埋め込まれた前記絶縁樹脂層の径方向における厚さは、前記第2の電極パターンと前記第2の外側壁面部の間に埋め込まれた前記絶縁樹脂層の径方向における厚さと等しいことを特徴とするコイル部品。
【請求項14】
第1のスパイラル導体パターンを形成する第1の工程と、
前記第1のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う第1の絶縁樹脂層を形成する第2の工程と、
前記第1の絶縁樹脂層の表面に前記第1のスパイラル導体パターンと重なる第2のスパイラル導体パターンを形成する第3の工程と、
前記第2のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う第2の絶縁樹脂層を形成する第4の工程と、を備え、
前記第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、
前記第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て前記第1のターンと重なる第2のターンを含み、
前記第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、前記第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有しており、
前記第1のターンの径方向における内側壁面を構成する第1の内側壁面部と、前記第2のターンの径方向における内側壁面を構成する第2の内側壁面部は、互いに径方向位置が一致しているいることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項15】
前記第1のターンは前記第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、前記第2のターンは前記第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであることを特徴とする請求項14に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項16】
前記第1の工程においては、前記第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンを前記第1のスパイラル導体パターンと同時に形成することを特徴とする請求項15に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項17】
前記第3の工程においては、前記第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、前記第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンを前記第2のスパイラル導体パターンと同時に形成することを特徴とする請求項16に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項18】
前記第1のスパイラル導体パターンと前記第2のスパイラル導体パターンのターン数が1ターン以上異なることを特徴とする請求項14乃至17のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、複数のスパイラル導体パターンと複数の絶縁樹脂層が交互に積層されてなる積層型のコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスパイラル導体パターンと複数の絶縁樹脂層が交互に積層されてなる積層型のコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、スパイラル導体パターンを4層備え、第1の電極パターンを介して最下層のスパイラル導体パターンが一方の外部端子に接続され、第2の電極パターンを介して最上層のスパイラル導体パターンが他方の外部端子に接続された構成を有している。
【0003】
また、特許文献1に記載されたコイル部品は、積層されたスパイラル導体パターンの上方、下方及び内径部に磁性層を配置することによって、インダクタンスが高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-98544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スパイラル導体パターンや電極パターンを構成する導電材料と絶縁樹脂層を構成する樹脂材料は熱膨張係数が大きく異なるため、温度変化によって両者の界面部分にストレスがかかることがあった。特に、スパイラル導体パターンを径方向の外側から覆う絶縁樹脂層は、そのボリュームが比較的大きくなることがあり、この場合には、スパイラル導体パターンの最外周ターンの径方向における外側壁面と、これに接する絶縁樹脂層との間に強いストレスがかかってしまう。また、電極パターンは、スパイラル導体パターンを構成する各ターンよりもパターン幅が太いことから、電極パターンと絶縁樹脂層の界面部分にも強いストレスがかかりやすい。
【0006】
したがって、本発明は、複数のスパイラル導体パターンと複数の絶縁樹脂層が交互に積層されてなる積層型のコイル部品において、導電材料と樹脂材料の界面部分にかかるストレスを緩和することを目的とする。また、本発明は、このようなコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコイル部品は、積層された複数のスパイラル導体パターンと、複数のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う絶縁樹脂層とを備え、複数のスパイラル導体パターンは、積層方向に隣接する第1及び第2のスパイラル導体パターンを含み、第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て第1のターンと重なる第2のターンを含み、第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の外側壁面部と第2の外側壁面部の径方向位置がずれていることから、第1の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりを低減することができる。これにより、この部分における絶縁樹脂層の積層方向への熱膨張または収縮が抑制されることから、第1及び第2の外側壁面部と絶縁樹脂層の界面部分に加わるストレスを緩和することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1のターンの径方向における内側壁面を構成する第1の内側壁面部と、第2のターンの径方向における内側壁面を構成する第2の内側壁面部は、互いに径方向位置が一致していても構わない。これによれば、第1のターンと第2のターンの幅を異ならせることによって、第1の外側壁面部と第2の外側壁面部の径方向位置をずらすことが可能となる。
【0010】
本発明において、第1のターンは第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、第2のターンは第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであっても構わない。これによれば、導電材料と樹脂材料の界面部分にかかるストレスが最も大きい部分において、ストレスを緩和することが可能となる。
【0011】
本発明によるコイル部品は、第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンをさらに備えるものであっても構わない。これによれば、第1の電極パターンと絶縁樹脂層の界面部分に加わるストレスを緩和することが可能となる。
【0012】
本発明によるコイル部品は、第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに備えるものであっても構わない。これによれば、第2の電極パターンと絶縁樹脂層の界面部分に加わるストレスを緩和することが可能となる。
【0013】
本発明において、第2の外側壁面部は、積層方向から見て第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンと重なりを有しており、第1の電極パターンの内側壁面部は、積層方向から見て第2の電極パターンと重なりを有していても構わない。これによれば、第1の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりをより低減することが可能となる。
【0014】
本発明において、第1の外側壁面部は、積層方向から見て第2の電極パターンと重なりを有していても構わない。これによれば、第1の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりをよりいっそう低減することが可能となる。
【0015】
本発明において、第1の電極パターンと第1の外側壁面部の間に埋め込まれた絶縁樹脂層の径方向における厚さは、第2の電極パターンと第2の外側壁面部の間に埋め込まれた絶縁樹脂層の径方向における厚さと等しくても構わない。これによれば、コイル部品の平面サイズの大型化を抑制することが可能となる。
【0016】
本発明において、複数のスパイラル導体パターンは、第2のスパイラル導体パターンと積層方向に隣接する第3のスパイラル導体パターンをさらに含み、第2の外側壁面部と、第3のスパイラル導体パターンの最外周ターンの径方向における外側壁面を構成する第3の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有していても構わない。これによれば、第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第3の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりを低減することができる。これにより、この部分における絶縁樹脂層の積層方向への熱膨張が抑制されることから、第1~第3の外側壁面部と絶縁樹脂層の界面部分に加わるストレスを緩和することが可能となる。
【0017】
本発明において、第2の外側壁面部は、積層方向から見て第3のスパイラル導体パターンの最外周ターンと重なりを有していても構わない。これによれば、第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第3の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりをより低減することが可能となる。
【0018】
本発明において、第1の外側壁面部と第3の外側壁面部は、互いに径方向位置が一致する部分を有していても構わない。これによれば、コイル部品の平面サイズの大型化を抑制することが可能となる。
【0019】
本発明において、第1のスパイラル導体パターンと第2のスパイラル導体パターンのターン数は、1ターン以上異なっていても構わない。これによれば、ターン数の相違によって、積層方向に隣接する壁面部の径方向位置にズレを生じさせることができる。
【0020】
本発明によるコイル部品の製造方法は、第1のスパイラル導体パターンを形成する第1の工程と、第1のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う第1の絶縁樹脂層を形成する第2の工程と、第1の絶縁樹脂層の表面に第1のスパイラル導体パターンと重なる第2のスパイラル導体パターンを形成する第3の工程と、第2のスパイラル導体パターンを構成する各ターンの表面を覆う第2の絶縁樹脂層を形成する第4の工程とを備え、第1のスパイラル導体パターンは第1のターンを含み、第2のスパイラル導体パターンは、積層方向から見て第1のターンと重なる第2のターンを含み、第1のターンの径方向における外側壁面を構成する第1の外側壁面部と、第2のターンの径方向における外側壁面を構成する第2の外側壁面部は、互いに径方向位置が異なる部分を有していることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1の外側壁面部と第2の外側壁面部の径方向位置がずれていることから、第1の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層と第2の外側壁面部を覆う絶縁樹脂層の積層方向における重なりを低減することができる。これにより、この部分における絶縁樹脂層の積層方向への熱膨張が抑制されることから、第1及び第2の外側壁面部と絶縁樹脂層の界面部分に加わるストレスを緩和することが可能となる。
【0022】
本発明において、第1のターンの径方向における内側壁面を構成する第1の内側壁面部と、第2のターンの径方向における内側壁面を構成する第2の内側壁面部は、互いに径方向位置が一致していても構わない。これによれば、第1のターンと第2のターンの幅を異ならせることによって、第1の外側壁面部と第2の外側壁面部の径方向位置をずらすことが可能となる。
【0023】
本発明において、第1のターンは第1のスパイラル導体パターンの最外周ターンであり、第2のターンは第2のスパイラル導体パターンの最外周ターンであっても構わない。これによれば、導電材料と樹脂材料の界面部分にかかるストレスが最も大きい部分において、ストレスを緩和することが可能となる。
【0024】
第1の工程においては、第1の外側壁面部の径方向における外側に位置し、第1のスパイラル導体パターンの外周端に接続された第1の電極パターンを第1のスパイラル導体パターンと同時に形成しても構わない。これによれば、第1の外側壁面部と第1の電極パターンの間に埋め込まれた絶縁樹脂層の剥離等を防止することが可能となる。
【0025】
第3の工程においては、第2の外側壁面部の径方向における外側に位置し、第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンを第2のスパイラル導体パターンと同時に形成しても構わない。これによれば、第2の外側壁面部と第2の電極パターンの間に埋め込まれた絶縁樹脂層の剥離等を防止することが可能となる。
【0026】
本発明において、第1のスパイラル導体パターンと第2のスパイラル導体パターンのターン数は、1ターン以上異なっていても構わない。これによれば、ターン数の相違によって、積層方向に隣接する壁面部の径方向位置にズレを生じさせることができる。
【発明の効果】
【0027】
このように、本発明によれば、スパイラル導体パターンを構成する導電部材とこれを覆う絶縁樹脂層の界面部分にかかるストレスを緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、コイル部品1を回路基板80に実装した状態を示す側面図であり、積層方向から見た図である。
図3図3は、コイル部品1の断面図である。
図4図4は、第1の例による導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
図5図5は、第2の例による導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
図6図6は、第3の例による導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
図7図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、各工程におけるパターン形状を説明するための平面図である。
図10図10は、第1の変形例によるコイル部品1Aの断面図である。
図11図11は、第2の変形例によるコイル部品1Bの断面図である。
図12図12は、第3の変形例によるコイル部品1Cの断面図である。
図13図13は、第4の変形例によるコイル部品1Dの断面図である。
図14図14は、第5の変形例によるコイル部品1Eの断面図である。
図15図15は、第6の変形例によるコイル部品1Fの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
【0031】
本実施形態によるコイル部品1は電源回路用のインダクタとして用いることが好適な表面実装型のチップ部品であり、図1に示すように、第1及び第2の磁性体層M1,M2を含む磁性素体Mと、第1及び第2の磁性体層M1,M2に挟まれたコイル部Cとを備える。コイル部Cの構成については後述するが、本実施形態においてはスパイラル導体パターンを有する導体層が4層積層され、これによって1つのコイル導体が形成される。そして、コイル導体の一端が第1の外部端子E1に接続され、コイル導体の他端が第2の外部端子E2に接続される。
【0032】
磁性体層M1,M2を含む磁性素体Mは、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材であり、コイルに電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
本実施形態によるコイル部品1は、一般的な積層コイル部品とは異なり、積層方向であるz方向が回路基板と平行となるよう立てて実装される。具体的には、xz面を構成する磁性素体Mの表面2が実装面として用いられる。そして、表面2には、第1の外部端子E1及び第2の外部端子E2が設けられる。第1の外部端子E1は、コイル部Cに形成されるコイル導体の一端が接続される端子であり、第2の外部端子E2は、コイル部Cに形成されるコイル導体の他端が接続される端子である。
【0034】
図1に示すように、第1の外部端子E1は、表面2からyz面を構成する表面3に亘って連続的に形成され、第2の外部端子E2は、表面2からyz面を構成する表面4に亘って連続的に形成される。外部端子E1,E2は、コイル部Cに含まれる電極パターンの露出面に形成されたニッケル(Ni)とスズ(Sn)の積層膜によって構成される。
【0035】
図2は、本実施形態によるコイル部品1を回路基板80に実装した状態を示す側面図であり、積層方向から見た図である。
【0036】
図2に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、回路基板80に立てて実装される。具体的には、磁性素体Mの表面2が回路基板80の実装面と対向するよう、つまり、コイル部品1の積層方向であるz方向が回路基板80の実装面と平行となるよう、実装される。
【0037】
回路基板80にはランドパターン81,82が設けられており、これらランドパターン81,82にコイル部品1の外部端子E1,E2がそれぞれ接続される。ランドパターン81,82と外部端子E1,E2との電気的・機械的接続は、ハンダ83によって行われる。外部端子E1,E2のうち、コイル部Cの表面3,4に形成された部分には、ハンダ83のフィレットが形成される。外部端子E1,E2はニッケル(Ni)とスズ(Sn)の積層膜からなり、これによりハンダの濡れ性が高められている。
【0038】
図3は、本実施形態によるコイル部品1の断面図である。
【0039】
図3に示すように、コイル部品1に含まれるコイル部Cは、2つの磁性体層M1,M2に挟まれており、絶縁樹脂層50~54と導体層10,20,30,40が交互に積層された構成を有している。導体層10,20,30,40はそれぞれスパイラル導体パターンS1~S4を有しており、スパイラル導体パターンS1~S4を構成する各ターンの表面が絶縁樹脂層50~54で覆われている。
【0040】
スパイラル導体パターンS1~S4は、絶縁樹脂層51~53に形成されたスルーホールを介して互いに接続されることにより、コイル導体を構成している。導体層10,20,30,40の材料としては、銅(Cu)を用いることが好ましい。コイルの内径部分には、磁性体層M2と同じ材料からなる磁性部材M3が埋め込まれている。磁性部材M3も磁性体層M1,M2とともに磁性素体Mの一部を構成する。絶縁樹脂層50~54のうち、少なくとも絶縁樹脂層51~53については非磁性材料が用いられる。最下層に位置する絶縁樹脂層50及び最上層に位置する絶縁樹脂層54については、磁性材料を用いても構わない。
【0041】
導体層10は、磁性体層M1の上面に絶縁樹脂層50を介して形成された1層目の導体層である。導体層10には、スパイラル状に3ターン巻回されたターン11~13からなるスパイラル導体パターンS1と、2つの電極パターン14,15が設けられている。図3に示す断面においては、スパイラル導体パターンS1と電極パターン14が分離しているが、後述するように、異なる断面において、スパイラル導体パターンS1と電極パターン14は接続されている。これに対し、電極パターン15はスパイラル導体パターンS1とは独立して設けられている。電極パターン14は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E1が形成されている。また、電極パターン15は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E2が形成されている。
【0042】
また、導体層10においては、スパイラル導体パターンS1の最外周ターン13のうち、電極パターン14に隣接する部分のパターン幅が部分的に拡大され、この部分が拡幅部13aを構成している。これに伴い、電極パターン14の内側壁面部は、一部が径方向に外側セットバックされ、これによって最外周ターン13の拡幅部13aと電極パターン14の干渉が防止されている。これに対し、スパイラル導体パターンS1の最外周ターン13のうち、電極パターン15に隣接する部分はパターン幅が実質的に一定であり、拡幅部は設けられていない。
【0043】
導体層20は、導体層10の上面に絶縁樹脂層51を介して形成された2層目の導体層である。導体層20には、スパイラル状に3ターン巻回されたターン21~23からなるスパイラル導体パターンS2と、2つの電極パターン24,25が設けられている。電極パターン24,25は、いずれもスパイラル導体パターンS2とは独立して設けられている。電極パターン24は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E1が形成されている。また、電極パターン25は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E2が形成されている。
【0044】
また、導体層20においては、スパイラル導体パターンS2の最外周ターン23のうち、電極パターン25に隣接する部分のパターン幅が部分的に拡大され、この部分が拡幅部23aを構成している。これに伴い、電極パターン25の内側壁面部は、一部が径方向に外側セットバックされ、これによって最外周ターン23の拡幅部23aと電極パターン25の干渉が防止されている。これに対し、スパイラル導体パターンS2の最外周ターン23のうち、電極パターン24に隣接する部分はパターン幅が実質的に一定であり、拡幅部は設けられていない。
【0045】
導体層30は、導体層20の上面に絶縁樹脂層52を介して形成された3層目の導体層である。導体層30には、スパイラル状に3ターン巻回されたターン31~33からなるスパイラル導体パターンS3と、2つの電極パターン34,35が設けられている。電極パターン34,35は、いずれもスパイラル導体パターンS3とは独立して設けられている。電極パターン34は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E1が形成されている。また、電極パターン35は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E2が形成されている。
【0046】
また、導体層30においては、スパイラル導体パターンS3の最外周ターン33のうち、電極パターン34に隣接する部分のパターン幅が部分的に拡大され、この部分が拡幅部33aを構成している。これに伴い、電極パターン34の内側壁面部は、一部が径方向に外側セットバックされ、これによって最外周ターン33の拡幅部33aと電極パターン34の干渉が防止されている。これに対し、スパイラル導体パターンS3の最外周ターン33のうち、電極パターン35に隣接する部分はパターン幅が実質的に一定であり、拡幅部は設けられていない。
【0047】
導体層40は、導体層30の上面に絶縁樹脂層53を介して形成された4層目の導体層である。導体層40には、スパイラル状に3ターン巻回されたターン41~43からなるスパイラル導体パターンS4と、2つの電極パターン44,45が設けられている。図3に示す断面においては、スパイラル導体パターンS4と電極パターン45が分離しているが、後述するように、異なる断面において、スパイラル導体パターンS4と電極パターン45は接続されている。これに対し、電極パターン44はスパイラル導体パターンS4とは独立して設けられている。電極パターン44は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E1が形成されている。また、電極パターン45は、コイル部Cから露出しており、その表面には外部端子E2が形成されている。
【0048】
また、導体層40においては、スパイラル導体パターンS4の最外周ターン43のうち、電極パターン45に隣接する部分のパターン幅が部分的に拡大され、この部分が拡幅部43aを構成している。これに伴い、電極パターン45の内側壁面部は、一部が径方向に外側セットバックされ、これによって最外周ターン43の拡幅部43aと電極パターン45の干渉が防止されている。これに対し、スパイラル導体パターンS4の最外周ターン43のうち、電極パターン44に隣接する部分はパターン幅が実質的に一定であり、拡幅部は設けられていない。
【0049】
そして、スパイラル導体パターンS1~S4は、絶縁樹脂層51~53を貫通して設けられた図示しないビア導体を介して接続される。これにより、スパイラル導体パターンS1~S4によって12ターンのコイル導体が形成され、その一端が外部端子E1に接続され、他端が外部端子E2に接続された構成となる。
【0050】
図4は、導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
【0051】
図4に示すように、導体層10,20,30,40の最内周ターン11,21,31,41は積層方向から見た位置が互いに一致しており、且つ、導体層10,20,30,40の中間ターン12,22,32,42は積層方向から見た位置が互いに一致している。これに対し、導体層10,20,30,40の最外周ターン13,23,33,43は、電極パターン14,24,34,44と隣接する部分において、外側壁面部の径方向位置がジグザグにレイアウトされている。図4には示されていないが、電極パターン15,25,35,45と隣接する部分においても、最外周ターン13,23,33,43の外側壁面部の径方向位置がジグザグにレイアウトされている。
【0052】
より具体的に説明すると、図4に示す断面においては、最外周ターン13,33に含まれる拡幅部13a,33aの外側壁面部の径方向位置R1は、最外周ターン23,43の外側壁面部の径方向位置R2よりも径方向における外側に位置している。これに伴って、電極パターン14,34の内側壁面部の径方向位置R3は、電極パターン24,44の内側壁面部の径方向位置R4よりも径方向における外側に位置している。これにより、最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,24,34,44の間に位置する絶縁樹脂層51~54の積層方向における重なりが低減されることから、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なることに起因する応力の集中を緩和することが可能となる。
【0053】
つまり、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なると、この部分において、温度変化による絶縁樹脂層51~54の積層方向への膨張または収縮が大きくなり、その結果、導体層10,20,30,40との界面部分にストレスが加わり、場合によっては界面部分にクラックが発生してしまう。特に、電極パターン14,24,34,44(電極パターン15,25,35,45)は、スパイラル導体パターンS1~S4と比べてパターン幅が大きいことから、温度変化が生じると、絶縁樹脂層51~54との界面に加わる応力が強く働く。
【0054】
しかしながら、本実施形態においては、最外周ターン13,23,33,43の外側壁面部がジグザグにレイアウトされていることから、最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,24,34,44(電極パターン15,25,35,45)の間に位置する絶縁樹脂層51~54の積層方向における重なりが低減され、これにより、温度変化に起因するクラックの発生などを防止することが可能となる。これに対し、最外周ターン13,23,33,43の内側壁面部については、互いに径方向位置が一致している。
【0055】
最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,24,34,44の間に埋め込まれた絶縁樹脂層51~54の径方向における厚さは、ほぼ一定である。つまり、R1とR3の差分と、R2とR4の差分はほぼ同じである。R1とR3の差分及びR2とR4の差分を例えば製造プロセスにおける最小スペースとすれば、コイル部品1の外形寸法を縮小することが可能となる。
【0056】
図4に示す第1の例では、内側から外側に向かって径方向位置R2,R4,R1,R3の順に配列されている。これにより、最外周ターン13,33の外側壁面部(R1)及び電極パターン14,34の内側壁面部(R3)は、いずれも電極パターン24,44と重なりを有しており、且つ、最外周ターン23,43の外側壁面部(R2)及び電極パターン24,44の内側壁面部(R4)は、いずれも最外周ターン13,33と重なりを有している。その結果、図4に示す断面においては、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なりを持たなくなる。
【0057】
一例として、最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,24,34,44のスペースを15μmとした場合、R1とR4の差分、つまり、積層方向から見た最外周ターン13,33と電極パターン24,44の重なり幅を2μm程度とすることができる。
【0058】
図4に示す第1の例のように、積層方向から見て最外周ターン13,33と電極パターン24,44が重なるよう、最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,24,34,44(電極パターン15,25,35,45)をジグザグにレイアウトすれば、製造プロセスにおいて多少のアライメントずれが生じても、図4に示す断面において絶縁樹脂層51~54が重なることがない。これにより、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なることに起因する応力の集中を防止することが可能となる。
【0059】
図5は、第2の例による導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
【0060】
図5に示す第2の例では、最外周ターン13,33の外側壁面部の径方向位置R1と、電極パターン24,44の内側壁面部の径方向位置R4が一致している。この場合であっても、図4に示す断面においては、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重ならないことから、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なることに起因する応力の集中を防止することが可能となる。
【0061】
図6は、第3の例による導体層10,20,30,40の部分拡大図である。
【0062】
図6に示す第3の例では、内側から外側に向かって径方向位置R2,R1,R4,R3の順に位置している。これにより、電極パターン14,34の内側壁面部(R3)は、いずれも電極パターン24,44と重なりを有しており、且つ、最外周ターン23,43の外側壁面部(R2)は、いずれも最外周ターン13,33と重なりを有している。この場合、図4に示す断面において絶縁樹脂層51~54が部分的に重なるが、その重なり量はR1とR4の差分によって決まり、ジグザグにレイアウトしない場合と比べて重なり量が低減されることから、絶縁樹脂層51~54が積層方向に重なることに起因する応力の集中を緩和することが可能となる。
【0063】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0064】
図7及び図8は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。また、図9は、各工程におけるパターン形状を説明するための平面図である。
【0065】
まず、図7(a)に示すように、所定の強度を有する支持基板60を用意し、その上面にスピンコート法によって樹脂材料を塗布することによって絶縁樹脂層50を形成する。次に、図7(b)に示すように、絶縁樹脂層50の上面に導体層10を形成する。導体層10の形成方法としては、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成した後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚まで銅(Cu)をメッキ成長させることが好ましい。以降に形成する導体層20,30,40の形成方法も同様である。
【0066】
導体層10の平面形状は図9(a)に示すとおりであり、スパイラル状に3ターン巻回されたスパイラル導体パターンS1と、2つの電極パターン14,15からなる。尚、図9(a)に示すA-A線は図3の断面位置を示しており、符号Bは最終的にコイル部品1となる製品領域を示している。図9(a)に示すように、スパイラル導体パターンS1の最外周ターン13のうち、電極パターン14に隣接する拡幅部13aは、径方向位置における外側に向かって拡幅されている。
【0067】
次に、図7(c)に示すように、導体層10を覆う絶縁樹脂層51を形成する。絶縁樹脂層51の形成は、スピンコート法によって樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィー法によってパターニングすることによって行うことが好ましい。以降に形成する層間絶縁層52~54の形成方法も同様である。また、絶縁樹脂層51には図示しない3つのスルーホールが設けられており、この部分において導体層10が露出している。図9(a)に示す符号71~73は、絶縁樹脂層51に設けられたスルーホールによって露出する箇所であり、それぞれスパイラル導体パターンS1の内周端、電極パターン14、電極パターン15に位置する。
【0068】
次に、図7(c)に示すように、絶縁樹脂層51の上面に導体層20を形成する。導体層20の平面形状は図9(b)に示すとおりであり、スパイラル状に3ターン巻回されたスパイラル導体パターンS2と、2つの電極パターン24,25からなる。これにより、絶縁樹脂層51に設けられた3つのスルーホールを介して、スパイラル導体パターンS2の内周端がスパイラル導体パターンS1の内周端に接続され、電極パターン24が電極パターン14に接続され、電極パターン25が電極パターン15に接続される。図9(b)に示すように、スパイラル導体パターンS2の最外周ターン23のうち、電極パターン25に隣接する拡幅部23aは、径方向位置における外側に向かって拡幅されている。
【0069】
次に、図7(d)に示すように、導体層20を覆う絶縁樹脂層52を形成する。絶縁樹脂層52には図示しない3つのスルーホールが設けられており、この部分において導体層20が露出している。図9(b)に示す符号74~76は、絶縁樹脂層52に設けられたスルーホールによって露出する箇所であり、それぞれスパイラル導体パターンS2の外周端、電極パターン24、電極パターン25に位置する。
【0070】
次に、図7(d)に示すように、絶縁樹脂層52の上面に導体層30を形成する。導体層30の平面形状は図9(c)に示すとおりであり、スパイラル状に3ターン巻回されたスパイラル導体パターンS3と、2つの電極パターン34,35からなる。これにより、絶縁樹脂層52に設けられた3つのスルーホールを介して、スパイラル導体パターンS3の外周端がスパイラル導体パターンS2の外周端に接続され、電極パターン34が電極パターン24に接続され、電極パターン35が電極パターン25に接続される。図9(c)に示すように、スパイラル導体パターンS3の最外周ターン33のうち、電極パターン34に隣接する拡幅部33aは、径方向位置における外側に向かって拡幅されている。
【0071】
次に、図7(e)に示すように、導体層30を覆う絶縁樹脂層53を形成する。絶縁樹脂層53には図示しない3つのスルーホールが設けられており、この部分において導体層30が露出している。図9(c)に示す符号77~79は、絶縁樹脂層53に設けられたスルーホールによって露出する箇所であり、それぞれスパイラル導体パターンS3の内周端、電極パターン34、電極パターン35に位置する。
【0072】
次に、図7(e)に示すように、絶縁樹脂層53の上面に導体層40を形成する。導体層40の平面形状は図9(d)に示すとおりであり、スパイラル状に3ターン巻回されたスパイラル導体パターンS4と、2つの電極パターン44,45からなる。これにより、絶縁樹脂層53に設けられた3つのスルーホールを介して、スパイラル導体パターンS4の内周端がスパイラル導体パターンS3の内周端に接続され、電極パターン44が電極パターン34に接続され、電極パターン45が電極パターン35に接続される。図9(d)に示すように、スパイラル導体パターンS4の最外周ターン43のうち、電極パターン45に隣接する拡幅部43aは、径方向位置における外側に向かって拡幅されている。
【0073】
次に、図8(a)に示すように、導体層40を覆う絶縁樹脂層54を全面に形成した後、図8(b)に示すように、スパイラル導体パターンS1~S4の内径領域に形成された絶縁樹脂層51~54を除去する。これにより、スパイラル導体パターンS1~S4の内径領域に空間が形成される。
【0074】
次に、図8(c)に示すように、層間絶縁層51~54の除去によって形成された空間に、磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材を埋め込む。これにより、導体層10,20,30,40の上方に磁性体層M2が形成されるとともに、スパイラル導体パターンS1~S4に囲まれた内径領域に磁性部材M3が形成される。その後、支持基板60を剥離し、導体層10,20,30,40の下面側にも複合部材を形成することによって磁性体層M1を形成する。
【0075】
次に、図8(d)に示すように、ダイシングによって個片化を行う。これにより、切断面からは、電極パターン14,15,24,25,34,35,44,45の一部が露出することになる。この状態でバレルメッキを行えば、電極パターン14,24,34,44の露出面上に外部端子E1が形成され、電極パターン15,25,35,45の露出面上に外部端子E2が形成されることになる。
【0076】
以上により、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0077】
このように、スパイラル導体パターンS1~S4に含まれる最外周ターン13,23,33,43のうち、電極パターン14,25,34,45に隣接する部分に拡幅部13a,23a,33a,43aが設けられていることから、最外周ターン13,23,33,43のうち、電極パターン14,24,34,44と隣接する部分、並びに、電極パターン15,25,35,45と隣接する部分をジグザグにレイアウトすることが可能となる。
【0078】
そして、上述の通り、最外周ターン13,23,33,43のうち、電極パターン14,24,34,44と隣接する部分、並びに、電極パターン15,25,35,45と隣接する部分をジグザグにレイアウトすることにより、最外周ターン13,23,33,43と電極パターン14,15,24,25,34,35,44,45の間に位置する絶縁樹脂層51~54の積層方向における重なりが低減され、これにより、温度変化に起因するクラックの発生などを防止することが可能となる。
【0079】
また、上述した実施形態によるコイル部品1では、1層目及び3層目に位置する最外周ターン13,33については電極パターン14,34と隣接する位置に拡幅部13a,33aを設け、2層目及び4層目に位置する最外周ターン23,43については電極パターン25,45と隣接する位置に拡幅部23a,43aを設けているため、拡幅部を1層当たり1箇所設ければ足りる。これにより、拡幅部を設けることによるコイル部品1の外形寸法の増大を最小限に抑えることが可能となる。
【0080】
但し、本発明においてこの点は必須でなく、図10に示す第1の変形例によるコイル部品1Aのように、1層目に位置する最外周ターン13に2箇所の拡幅部13aを設け、3層目に位置する最外周ターン33に2箇所の拡幅部33aを設けても構わない。このようなレイアウトであっても、最外周ターン13,23,33,43のうち、電極パターン14,24,34,44と隣接する部分、並びに、電極パターン15,25,35,45と隣接する部分をジグザグにレイアウトすることが可能となる。
【0081】
また、図11に示す第2の変形例によるコイル部品1Bのように、スパイラル導体パターンS4の最外周ターン43のうち電極パターン44に隣接する部分の幅を、スパイラル導体パターンS3の最外周ターン33のうち電極パターン34に隣接する部分の幅よりもさらに拡幅させ、且つ、スパイラル導体パターンS4の最外周ターン43のうち電極パターン45に隣接する部分の幅を、スパイラル導体パターンS3の最外周ターン33のうち電極パターン35に隣接する部分の幅よりも細くすることにより、絶縁樹脂層51~54の積層方向における重なりを低減させても構わない。
【0082】
さらに、図12に示す第3の変形例によるコイル部品1Cのように、電極パターン24,25,34,35,44を省略しても構わない。この場合、スパイラル導体パターンS1~S4の外径領域における絶縁樹脂層51~54のボリュームが大きくなることから、温度変化による絶縁樹脂層51~54の膨張または収縮が顕著となるが、最外周ターン13,23,33,43の一部をジグザグにレイアウトすることにより、温度変化に起因するクラックの発生などを防止することが可能となる。
【0083】
また、図13に示す第4の変形例によるコイル部品1Dのように、最外周ターン13,23,33,43だけでなく、最内周ターン11,21,31,41や中間ターン12,22,32,42についても、積層方向に隣接する壁面部の径方向位置が互いに異なっていても構わない。つまり、積層方向に隣接し、且つ、積層方向に重なる任意の2つのターンの壁面部の径方向位置が異なっていれば足りる。
【0084】
さらに、図14に示す第5の変形例によるコイル部品1Eのように、一部のスパイラル導体パターン、例えば、スパイラル導体パターンS2のターン数が他のスパイラル導体パターンS1,S3,S4のターン数よりも1ターン以上少なくても構わない。逆に、図15に示す第6の変形例によるコイル部品1Fのように、一部のスパイラル導体パターン、例えば、スパイラル導体パターンS2のターン数が他のスパイラル導体パターンS1,S3,S4のターン数よりも1ターン以上多くても構わない。これによれば、ターン数の相違によって、積層方向に隣接する壁面部の径方向位置にズレを生じさせることができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0086】
例えば、上記の実施形態では、コイル部Cが4層の導体層10,20,30,40を含む場合を例に説明したが、本発明において導体層の層数がこれに限定されるものではない。また、各導体層に形成されるスパイラル導体パターンのターン数についても特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0087】
1,1A~1F コイル部品
2~4 表面
10,20,30,40 導体層
11,21,31,41 最内周ターン
12,22,32,42 中間ターン
13,23,33,43 最外周ターン
13a,23a,33a,43a 拡幅部
14,15,24,25,34,35,44,45 電極パターン
50~54 絶縁樹脂層
60 支持基板
71~79 スルーホールによって露出する箇所
80 回路基板
81,82 ランドパターン
83 ハンダ
C コイル部
E1,E2 外部端子
M 磁性素体
M1,M2 磁性体層
M3 磁性部材
S1~S4 スパイラル導体パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15