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特許7272364レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、パターン形成方法並びに化合物及びその製造方法
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  • 特許-レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、パターン形成方法並びに化合物及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、パターン形成方法並びに化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20230502BHJP
   C08G 65/34 20060101ALI20230502BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08G65/34
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020536462
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2019029310
(87)【国際公開番号】W WO2020031733
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018150401
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】中藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中津 大貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智章
(72)【発明者】
【氏名】小田 智博
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C08G 65/34
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の下記式(1)で表される部分構造を有する化合物と、
溶媒と
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。R、置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される部分構造以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。)
【請求項2】
上記化合物が複数の上記部分構造を有する請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項3】
上記化合物における炭素原子の含有率が93質量%以上である請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
上記化合物における水素原子の含有率が7質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
上記化合物の分子量が300以上10,000以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
上記化合物が、上記式(1)のpが1である部分構造を繰り返し単位とする重合体である請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
多層レジストプロセスに用いられる請求項1から請求項のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項8】
レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜であって、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
1又は複数の下記式(1)で表される部分構造を有する化合物と、
溶媒と
を含有するレジスト下層膜。
【化2】
(式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。R、置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される部分構造以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。)
【請求項9】
基板に直接又は間接に1又は複数の下記式(1)で表される部分構造を有する化合物及び溶媒を含有するレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程
を備えるレジスト下層膜の形成方法。
【化3】
(式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。R、置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される部分構造以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。)
【請求項10】
基板に直接又は間接に1又は複数の下記式(1)で表される部分構造を有する化合物及び溶媒を含有するレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程と、
上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
を備えるパターン形成方法。
【化4】
(式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。R、置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記化合物における上記式(1)で表される部分構造以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。)
【請求項11】
上記レジスト膜形成用組成物塗工工程前に、
上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程
をさらに備える請求項10に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、パターン形成方法並びに化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあたっては、基板に直接又は間接にレジスト下層膜形成用組成物により、レジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物等を用いてレジストパターンを形成する方法が用いられている。このレジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクとしてさらに基板をエッチングすることができる。
【0003】
このようなレジスト下層膜形成用組成物に用いられる材料について、種々の検討が行われている(特開2013-83833号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-83833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、複数種のトレンチ、特に互いに異なるアスペクト比を有するトレンチを有する基板が用いられている。この場合、レジスト下層膜形成用組成物には、平坦性に優れるレジスト下層膜を形成できることが必要である。また、最近では、レジスト下層膜上に中間層としてケイ素含有膜を形成する多層レジストプロセスが検討されている。この場合、レジスト下層膜は、ケイ素含有膜の表面にひび割れ、剥がれ等の欠陥の発生を防ぐことができ、膜欠陥抑制性に優れることも必要である。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜、レジスト下層膜の形成方法、パターン形成方法、化合物及び化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、1又は複数の下記式(1)で表される部分構造(以下、「部分構造(I)」ともいう)を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)と、溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)とを含有するレジスト下層膜形成用組成物(以下、「組成物(I)」ともいう)である。
【化1】
(式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。Rは、エチンジイル基又は置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記[A]化合物における部分構造(I)以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。)
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、下記式(A)で表される化合物及び下記式(B)で表される化合物の酸触媒縮合反応生成物(以下、「[A’]縮合反応生成物」ともいう)と、溶媒([B]溶媒)とを含有するレジスト下層膜形成用組成物(以下、「組成物(II)」ともいう)である。
【化2】
(式(A)中、Ar1Aは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーン又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンである。
式(B)中、Ar2Aは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、R2Aは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr2A及びR2Aは、Ar2AとR2Aとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜である。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に1又は複数の上記式(1)で表される部分構造を有する化合物及び溶媒を含有するレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程を備えるレジスト下層膜の形成方法である。
【0011】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板に直接又は間接に1又は複数の上記式(1)で表される部分構造を有する化合物及び溶媒を含有するレジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程と、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備えるパターン形成方法である。
【0012】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、1又は複数の上記式(1)で表される部分構造を有する化合物である。
【0013】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上記式(A)で表される化合物と上記式(B)で表される化合物とを酸触媒の存在下で縮合反応させる工程を備える化合物の製造方法である。
【0014】
ここで、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物によれば、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のレジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れている。本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターン形成方法によれば、このような優れたレジスト下層膜を用いることにより、良好な形状を有するパターンを得ることができる。本発明の化合物は、当該レジスト下層膜形成用組成物の成分として好適に用いることができる。本発明の化合物の製造方法によれば、当該化合物を製造することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】平坦性の評価方法を説明するための模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<レジスト下層膜形成用組成物>
当該レジスト下層膜形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう)の態様としては、以下に示す組成物(I)及び組成物(II)が挙げられる。
組成物(I):[A]化合物と[B]溶媒とを含有する
組成物(II):[A’]縮合反応生成物と[B]溶媒とを含有する
【0018】
当該組成物は、[A]化合物又は[A’]縮合反応生成物を含有することで、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。当該組成物が、上記構成を備えることで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[A]化合物及び[A’]縮合反応生成物は、上記式(1)におけるArの芳香環と、Arの芳香環が結合する炭素原子とを、エテンジイル基又はエチンジイル基で結合させた特定の部分構造を有している。[A]化合物等がこのような構造を有するので、形成されるレジスト下層膜の平坦性が向上し、また、エッチング耐性、耐熱性及び膜欠陥抑制性が向上すると考えられる。当該組成物は、多層レジストプロセスにおいて特に好適に用いることができる。
以下、組成物(I)、組成物(II)の順に説明する。
【0019】
<組成物(I)>
組成物(I)は、[A]化合物と[B]溶媒とを含有する。組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
以下、各成分について説明する。
【0020】
<[A]化合物>
[A]化合物は、部分構造(I)を有する化合物である。部分構造(I)は、下記式(1)で表される。
【0021】
【化3】
【0022】
上記式(1)中、pは、0~17の整数である。Arは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンから芳香族炭素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンから芳香族複素環上の(p+1)個の水素原子を除いた基である。Arは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr及びRは、ArとRとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。Rは、エチンジイル基又は置換若しくは非置換のエテンジイル基である。*及び**は、上記[A]化合物における部分構造(I)以外の部分又は他の上記式(1)で表される部分構造に結合する部位を示す。
【0023】
「環員数」とは、脂環構造、芳香環構造、脂肪族複素環構造及び芳香族複素環構造の環の骨格を構成する原子の数をいう。具体的には、環構造が単環の場合には、その単環の骨格を構成する原子の数をいい、環構造が縮合環、橋架け環等の多環の場合は、この多環の骨格を構成する原子の数の総和をいう。例えば、ナフタレン構造の環員数は10であり、フルオレン構造の環員数は13であり、アダマンタン構造の環員数は10である。
【0024】
Arを与える環員数6~30のアレーンとしては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペンタセン、コロネン、ペリレン、ビフェニル、ジメチルビフェニル、ジフェニルビフェニル、フルオレン、9,9-ジフェニルフルオレン等が挙げられる。
【0025】
Arを与える環員数5~30のヘテロアレーンとしては、例えばピロール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等の窒素原子含有芳香族複素環化合物、フラン、ピラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン等の酸素原子含有芳香族複素環化合物、チオフェン、ベンゾチオフェン等の硫黄原子含有芳香族複素環化合物などが挙げられる。
【0026】
Arにおけるアレーン及びヘテロアレーンの置換基としては、例えば炭素数1~20の1価又は2価の有機基、ヒドロキシ基、スルファニル基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0027】
炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を有する基、上記炭化水素基及び上記2価のヘテロ原子含有基を有する基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0028】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの鎖状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の橋かけ環炭化水素基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0029】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-CO-、-CS-、-NH-、-O-、-S-、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0030】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えばヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0031】
炭素数1~20の2価の有機基としては、例えば上記炭素数1~20の1価の有機基として例示した基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0032】
Arにおけるアレーン及びヘテロアレーンの置換基の数としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0033】
Arとしては、置換又は非置換のアレーンに由来する基が好ましい。アレーンとしては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン又はペリレンが好ましい。Arにおける置換基としては、1価若しくは2価の有機基、ハロゲン原子又はニトロ基が好ましく、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、-OR’、-NR’又は-NR’-(R’は炭素数1~20の1価の有機基)がより好ましい。Arにおける置換基としては酸素原子を含まない基がさらに好ましい。Arにおける置換基が酸素原子を含まない基であると、エッチング耐性をより向上させることができる。酸素原子を含まない基としては、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基がより好ましく、アルケニル基又はアルキニル基がさらに好ましく、エテニル基、プロペニル基、エチニル基又はプロピニル基が特に好ましい。
【0034】
pとしては、0~5が好ましく、0~3がより好ましく、0~2がさらに好ましく、0又は1が特に好ましく、1がさらに特に好ましい。
【0035】
Arで表される置換又は非置換の環員数6~30のアリール基及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアリール基としては、例えば上記Arを与える置換又は非置換の環員数6~30のアレーン及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアレーンとして例示した化合物から芳香族炭素環上又は芳香族複素環上の1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0036】
で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記Arにおけるアレーン及びヘテロアレーンの置換基として例示した炭素数1~20の1価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0037】
ArとRとが構成する環員数3~20の環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の脂環構造、フルオレン構造等の芳香環構造などが挙げられる。
【0038】
Ar及びRとしては、Ar及びRが1価の芳香族炭化水素基であるか、又はAr及びRが互いに合わせられ芳香環構造を表すことが好ましく、Ar及びRがフェニル基であるか、又はAr及びRが互いに合わせられフルオレン構造を表すことがより好ましい。
【0039】
で表されるエテンジイル基の置換基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、鎖状炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0040】
としては、非置換のエテンジイル基又はエチンジイル基が好ましい。
【0041】
部分構造(I)としては、例えば下記式(1-1)~(1-15)で表される構造(以下、「部分構造(I-1)~(I-15)」ともいう)等が挙げられる。
【0042】
【化4】
【0043】
【化5】
【0044】
上記式(1-1)~(1-15)中、*及び**は、上記式(1)と同義である。
【0045】
部分構造(I)としては、部分構造(I-1)~(I-10)が好ましい。
【0046】
[A]化合物は、部分構造(I)を1個有していてもよく、複数個有していてもよい。[A]化合物は、1種の部分構造(I)のみを有してもよく、2種以上の部分構造(I)を有してもよい。また、[A]化合物は、部分構造(I)以外に、他の部分構造を有していてもよい。他の部分構造としては、例えばフェノール化合物とアルデヒド化合物とに由来する部分構造等が挙げられる。
【0047】
[A]化合物としては、炭素原子及び水素原子のみからなる化合物が好ましい。[A]化合物が炭素原子及び水素原子のみからなる化合物であると、レジスト下層膜のエッチング耐性をさらに向上させることができる。このような[A]化合物としては、部分構造(I)のみからなり、かつ上記式(1)におけるAr及びArが炭化水素基置換又は非置換のアレーンに由来し、Rが水素原子又は炭化水素基であり、Rが非置換のエテンジイル基又はエチンジイル基である化合物等が挙げられる。
【0048】
[A]化合物としては、例えば上記式(1)のpが1である部分構造を繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(I)」ともいう)とする重合体等が挙げられる。すなわち、[A]化合物としては、例えば下記式(i)で表される繰り返し単位(I)を有する重合体等が挙げられる。[A]化合物は、繰り返し単位(I)以外に、他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、例えばフェノール化合物とアルデヒド化合物とに由来する繰り返し単位等が挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
上記式(i)中、Ar11は、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーンジイル基又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンジイル基である。Ar、R及びRは、上記式(1)と同義である。
【0051】
Ar11で表される置換又は非置換の環員数6~30のアレーンジイル基及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアレーンジイル基としては、例えば上記Arとして例示した置換又は非置換の環員数6~30のアリール基及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアリール基の芳香族炭素環上又は芳香族複素環上の1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0052】
[A]化合物の分子量の下限としては、300が好ましく、500がより好ましく、1,000がさらに好ましく、1,500が特に好ましい。上記分子量の上限としては、100,000が好ましく、50,000がより好ましく、10,000がさらに好ましく、8,000が特に好ましく、5,000がさらに特に好ましく、3,000が最も好ましい。[A]化合物の分子量を上記範囲とすることで、レジスト下層膜の平坦性をより向上させることができる。[A]化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。[A]化合物が2種以上である場合、[A]化合物の分子量は、重量平均の分子量をいう。
【0053】
[A]化合物における炭素原子の含有率の下限としては、85質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、93質量%がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。上記炭素原子含有率の上限としては、例えば99.9質量%であり、99質量%が好ましく、97質量%がより好ましい。
【0054】
[A]化合物における水素原子の含有率の上限としては、7質量%が好ましく、6質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、4質量%が特に好ましい。上記水素原子の含有率の下限としては、例えば0.1質量%であり、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。
【0055】
[A]化合物における酸素原子の含有率の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。上記酸素原子の含有率は、0質量%であってもよい。
【0056】
[A]化合物における炭素原子、水素原子又は酸素原子の含有率を上記範囲とすることで、エッチング耐性をより向上させることができる。
【0057】
[A]化合物の含有量の下限としては、組成物(I)の[B]溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限は、例えば100質量%である。
【0058】
組成物(I)における[A]化合物の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。
【0059】
[化合物の製造方法]
[A]化合物は、例えば下記式(A)で表される化合物(以下、「化合物(A)」ともいう)と下記式(B)で表される化合物(以下、「化合物(B)」ともいう)とを酸触媒の存在下で、縮合反応させる工程を備える化合物の製造方法等により製造することができる。
【0060】
【化7】
【0061】
上記式(A)中、Ar1Aは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーン又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンである。
上記式(B)中、Ar2Aは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、R2Aは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr2A及びR2Aは、Ar2AとR2Aとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0062】
Ar1Aで表される置換又は非置換の環員数6~30のアレーン及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアレーンとしては、例えば上記Arを与える置換又は非置換の環員数6~30のアレーン及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアレーンとして例示した化合物と同様の化合物等が挙げられる。
【0063】
Ar2Aで表される置換又は非置換の環員数6~30のアリール基及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアリール基としては、例えば上記式(1)におけるArとして例示した置換又は非置換の環員数6~30のアリール基及び置換又は非置換の環員数5~30のヘテロアリール基と同様の基等が挙げられる。
【0064】
2Aで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(1)におけるRとして例示した炭素数1~20の1価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0065】
Ar2AとR2Aとが構成する環員数3~20の環構造としては、例えば上記式(1)におけるArとRとが構成する環構造として例示した環員数3~20の環構造と同様の構造等が挙げられる。
【0066】
で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(1)におけるRとして例示した炭素数1~20の1価の有機基と同様の基等が挙げられる。
としては、水素原子が好ましい。
【0067】
縮合反応の反応条件としては、酸触媒の存在下で行う従来公知の縮合反応の条件を採用することができる。
【0068】
酸触媒としては、プロトン酸、ブレンステッド酸及びルイス酸のいずれであってもよい。酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0069】
酸触媒の使用量の下限としては、化合物(A)及び化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.1質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。上記使用量の上限としては、1,000質量部が好ましく、500質量部がより好ましく、200質量部がさらに好ましく、100質量部が特に好ましい。
【0070】
縮合反応における反応温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましく、70℃が特に好ましい。上記反応温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましく、130℃がさらに好ましく、100℃が特に好ましい。
【0071】
縮合反応における反応時間の下限としては、5分が好ましく、30分がより好ましく、1時間がさらに好ましく、2時間が特に好ましい。上記反応時間の上限としては、100時間が好ましく、50時間がより好ましく、24時間がさらに好ましく、12時間が特に好ましい。
【0072】
縮合反応に用いる反応溶媒としては、例えば後述の[B]溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒等が挙げられる。これらの中で、エーテル系溶媒が好ましく、環状エーテル系溶媒がより好ましく、1,4-ジオキサンがさらに好ましい。
【0073】
上記式(B)におけるRが水素原子の場合、上記縮合反応により、上記式(1)のRが非置換のエテンジイル基又はエチンジイル基である[A]化合物が生成する。
【0074】
上記縮合反応の反応液を、公知の方法で適切に処理し、蒸留、再結晶等の精製を行うことにより、[A]化合物を単離することができる。
【0075】
<[B]溶媒>
[B]溶媒は、[A]化合物及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。
【0076】
[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。[B]溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0078】
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒などが挙げられる。
【0079】
エーテル系溶媒としては、例えばn-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル系溶媒などの多価アルコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0080】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0081】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒などが挙げられる。
【0082】
[B]溶媒としては、ケトン系溶媒が好ましく、環状ケトン系溶媒がより好ましく、シクロヘキサノンがさらに好ましい。
【0083】
<任意成分>
組成物(I)は、任意成分として、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤、密着助剤等を含有してもよい。これらの任意成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
[酸発生剤]
酸発生剤は、熱や光の作用により酸を発生し、[A]化合物の架橋を促進する成分である。組成物(I)が酸発生剤を含有することで[A]化合物の架橋反応が促進され、形成されるレジスト下層膜の硬度をより高めることができ、また、レジスト下層膜の耐熱性をより高めることができる。
【0085】
酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。
【0086】
[架橋剤]
架橋剤は、熱や酸の作用により、組成物(I)中の[A]化合物等の成分同士の架橋結合を形成するか、又は自らが架橋構造を形成する成分である。組成物(I)が架橋剤を含有する場合、形成されるレジスト下層膜の硬度を高めることができ、また、レジスト下層膜の耐熱性をより高めることができる。
【0087】
架橋剤としては、例えば多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0088】
<組成物(II)>
組成物(II)は、[A’]縮合反応生成物と、[B]溶媒とを含有する。組成物(II)は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
以下、各成分について説明する。
【0089】
[[A’]縮合反応生成物]
[A’]縮合反応生成物は、下記式(A)で表される化合物(化合物(A))及び下記式(B)で表される化合物(化合物(B))の酸触媒縮合反応生成物である。
【0090】
【化8】
【0091】
上記式(A)中、Ar1Aは、置換若しくは非置換の環員数6~30のアレーン又は置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアレーンである。
上記式(B)中、Ar2Aは置換若しくは非置換の環員数6~30のアリール基若しくは置換若しくは非置換の環員数5~30のヘテロアリール基であり、R2Aは水素原子若しくは炭素数1~20の1価の有機基であるか、又はAr2A及びR2Aは、Ar2AとR2Aとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。Rは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
【0092】
[A’]縮合反応生成物は、上記「[A]化合物の製造方法」の項に記載した化合物(A)と化合物(B)とを酸触媒の存在下で縮合反応させる工程を備える化合物の製造方法により、縮合反応の生成物として製造することができる。
【0093】
組成物(II)における[B]溶媒及び任意成分としては、上述の組成物(I)における[B]溶媒及び任意成分と同様である。
【0094】
[組成物の調製方法]
当該組成物は、[A]化合物又は[A’]縮合反応生成物、[B]溶媒及び必要に応じて任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.1μm以下のメンブランフィルター等で濾過することにより調製することができる。当該組成物の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、15質量%が特に好ましい。上記固形分濃度は、当該組成物0.5gを30分間250℃で焼成することで、当該組成物0.5gに対する固形分の質量を測定することにより算出した。
【0095】
<レジスト下層膜>
当該レジスト下層膜は、当該組成物(組成物(I)又は組成物(II))から形成される。当該レジスト下層膜は、上述の当該組成物から形成されるので、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れている。
【0096】
<レジスト下層膜の形成方法>
当該レジスト下層膜の形成方法は、基板に直接又は間接に当該組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)を備える。
【0097】
当該レジスト下層膜の形成方法によれば、上述の当該組成物を用いるので、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0098】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該組成物を塗工する。
【0099】
基板としては、例えばシリコンウエハ、アルミニウムで被覆したウエハ等が挙げられる。また、当該組成物の塗工方法は特に限定されず、例えば回転塗工、流延塗工、ロール塗工等の適宜の方法で実施することができ、これにより塗工膜を形成することができる。
【0100】
上記塗工膜を加熱してもよい。上記塗工膜の加熱は、通常、大気下で行われるが、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱における温度の下限としては、200℃が好ましく、250℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0101】
上記塗工膜の加熱の前に、60℃以上150℃以下の温度で予備加熱してもよい。予備加熱における時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、300秒が好ましく、180秒がより好ましい。
【0102】
以上のようにして、レジスト下層膜を形成することができる。
【0103】
なお、当該レジスト下層膜の形成方法においては、上記塗工膜を加熱して膜を形成するが、当該組成物が酸発生剤を含有し、酸発生剤が感放射線性酸発生剤である場合には、露光と加熱とを組み合わせることにより塗工膜を硬化させてレジスト下層膜を形成することもできる。この露光に用いられる放射線としては、酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線から適宜選択される。
【0104】
形成されるレジスト下層膜の平均厚みとの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、3,000nmが好ましく、2,000nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。
【0105】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、基板に直接又は間接に当該組成物を塗工する工程(以下、「レジスト下層膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「レジスト膜形成用組成物塗工工程」ともいう)と、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0106】
当該パターン形成方法は、上記現像工程後に、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)をさらに備えることができる。
【0107】
当該パターン形成方法によれば、上述のエッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れたレジスト下層膜を用いるので、良好な形状を有するパターンを得ることができる。
【0108】
当該パターン形成方法は、必要に応じて、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程前に、上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」ともいう)を備えていてもよい。以下、各工程について説明する。
【0109】
[レジスト下層膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該組成物を塗工する。これによりレジスト下層膜が形成される。本工程は、上述の当該レジスト下層膜の形成方法における塗工工程と同様である。
【0110】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にケイ素含有膜を形成する。
【0111】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物を上記レジスト下層膜に直接又は間接に塗工して形成された塗膜を、通常、露光及び/又は加熱することにより硬化等させることにより形成される。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば、JSR(株)の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」等を用いることができる。
【0112】
上記露光に用いられる放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線などが挙げられる。
【0113】
塗膜を加熱する際の温度の下限としては、90℃が好ましく、150℃がより好ましく、180℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、550℃が好ましく、450℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。形成されるケイ素含有膜の平均厚みの下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましく、20nmがさらに好ましい。上記上限としては、20,000nmが好ましく、1,000nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。
【0114】
このようにして、ケイ素含有膜が形成される。得られたケイ素含有膜は、さらに、例えば350℃以上550℃以下の温度で5秒以上600秒以下の時間、加熱(焼成)を行うことが好ましい。
【0115】
[レジスト膜形成用組成物塗工工程]
本工程では、上記レジスト下層膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト下層膜に直接又は間接にレジスト膜形成用組成物を塗工する。上記ケイ素含有膜形成工程を行った場合には、上記レジスト膜形成用組成物を上記ケイ素含有膜に直接又は間接に塗工する。
【0116】
本工程では、具体的には、得られるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト膜形成用組成物を塗工した後、プレベークすることによって塗膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0117】
上記レジスト膜形成用組成物としては、例えば感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0118】
上記レジスト膜形成用組成物の固形分濃度の下限としては、0.3質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。また、上記レジスト膜形成用組成物は、一般に、例えば孔径0.2μm以下のフィルターで濾過して、レジスト膜の形成に供される。なお、本工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0119】
レジスト膜形成用組成物の塗工方法としては特に限定されず、例えば回転塗工法等が挙げられる。また、プレベークの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、上記温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。プレベークの時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0120】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成用組成物塗工工程により形成されたレジスト膜を放射線により露光する。
【0121】
露光に用いられる放射線としては、レジスト膜形成用組成物に使用される感放射線性酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線から適切に選択される。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、Krエキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)又は極端紫外線(波長13.5nm等、EUV)がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVがさらに好ましい。
【0122】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるためポストベークを行うことができる。このポストベークの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、上記温度の下限としては、50℃が好ましく、70℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。ポストベークの時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0123】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等の塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の組成物の[B]溶媒として例示した種々の有機溶媒等が挙げられる。
【0124】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0125】
[エッチング工程]
本工程では、上記現像工程により形成されたレジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。これにより、基板にパターンが形成される。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、ケイ素含有膜、レジスト下層膜、基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等が挙げられる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。このドライエッチングには、例えば酸素プラズマ等のガスプラズマ等が用いられる。上記エッチングの後、所定のパターンを有するパターニングされた基板が得られる。
【実施例
【0126】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0127】
[平均分子量]
化合物の平均分子量(重量平均分子量(Mw))は、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本及び「G3000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0128】
[レジスト下層膜の平均厚み]
レジスト下層膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した。
【0129】
<[A]化合物の合成>
[A]化合物としての下記式(A-1)~(A-10)で表される部分構造を繰り返し単位として有する重合体(以下、「化合物(A-1)~(A-10)」ともいう)を、以下に示す手順により合成した。
【0130】
【化9】
【0131】
[実施例1-1]
反応容器に、窒素雰囲気下、ピレン20.0g、p-トルエンスルホン酸・一水和物37.6g、9-エチニル-9-フルオレノール40.8g及び1,4-ジオキサン220.36gを加え、80℃で3時間反応させることで、上記化合物(A-1)を得た。得られた化合物(A-1)の重量平均分子量(Mw)は、2,800であった。
【0132】
[実施例1-2]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-2)を得た。得られた化合物(A-2)の重量平均分子量(Mw)は、2,500であった。
【0133】
[実施例1-3]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-3)を得た。得られた化合物(A-3)の重量平均分子量(Mw)は、2,400であった。
【0134】
[実施例1-4]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-4)を得た。得られた化合物(A-4)の重量平均分子量(Mw)は、2,300であった。
【0135】
[実施例1-5]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-5)を得た。得られた化合物(A-5)の重量平均分子量(Mw)は、2,400であった。
【0136】
[実施例1-6]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-6)を得た。得られた化合物(A-6)の重量平均分子量(Mw)は、2,100であった。
【0137】
[実施例1-7]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-7)を得た。得られた化合物(A-7)の重量平均分子量(Mw)は、1,800であった。
【0138】
[実施例1-8]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-8)を得た。得られた化合物(A-8)の重量平均分子量(Mw)は、2,000であった。
【0139】
[実施例1-9]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-9)を得た。得られた化合物(A-9)の重量平均分子量(Mw)は、2,200であった。
【0140】
[実施例1-10]
実施例1-1と同様にして、上記化合物(A-10)を得た。得られた化合物(A-10)の重量平均分子量(Mw)は、1,500であった。
【0141】
[合成例1-1]
反応容器に、窒素雰囲気下、p-クレゾール250.0g、37質量%ホルマリン125.0g及び無水シュウ酸2gを加え、100℃で3時間、さらに180℃で1時間反応させた後、減圧下にて未反応モノマーを除去し、下記式(a-1)で表される樹脂を得た。得られた樹脂(a-1)の重量平均分子量(Mw)は、11,000であった。
【0142】
【化10】
【0143】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
レジスト下層膜形成用組成物の調製に用いた[A]化合物、[B]溶媒、[C]酸発生剤及び[D]架橋剤について以下に示す。
【0144】
[[A]化合物]
実施例:上記合成した化合物(A-1)~(A-10)
比較例:上記合成した樹脂(a-1)
【0145】
[[B]溶媒]
B-1:シクロヘキサノン
【0146】
[[C]酸発生剤]
C-1:ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート(下記式(C-1)で表される化合物)
【0147】
【化11】
【0148】
[[D]架橋剤]
D-1:1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(下記式(D-1)で表される化合物)
【0149】
【化12】
【0150】
[実施例2-1]
[A]化合物としての(A-1)10質量部を[B]溶媒としての(B-1)90質量部に溶解した。得られた溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過して、レジスト下層膜形成用組成物(J-1)を調製した。
【0151】
[実施例2-2~2-12及び比較例2-1]
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を使用した以外は実施例2-1と同様に操作して、レジスト下層膜形成用組成物(J-2)~(J-12)及び(CJ-1)を調製した。表1中の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0152】
【表1】
【0153】
<レジスト下層膜の形成>
[実施例3-1~3-12及び比較例3-1]
上記調製したレジスト下層膜形成用組成物を、シリコンウエハ(基板)上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を用い、回転塗工法により塗工した。次に、大気雰囲気下にて、下記表2に示す加熱温度(℃)及び加熱時間(sec)で加熱(焼成)した後、23℃で60秒間冷却することにより、平均厚み200nmのレジスト下層膜を形成して、基板上にレジスト下層膜が形成されたレジスト下層膜付き基板を得た。
【0154】
<評価>
上記得られたレジスト下層膜形成用組成物及びレジスト下層膜付き基板を用い、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性について下記方法により評価を行った。評価結果を下記表2に合わせて示す。
【0155】
[エッチング耐性]
上記得られたレジスト下層膜付き基板におけるレジスト下層膜を、エッチング装置(東京エレクトロン(株)の「TACTRAS」)を用いて、CF/Ar=110/440sccm、PRESS.=30MT、HF RF(プラズマ生成用高周波電力)=500W、LF RF(バイアス用高周波電力)=3000W、DCS=-150V、RDC(ガスセンタ流量比)=50%、30secの条件にて処理し、処理前後のレジスト下層膜の平均厚みからエッチング速度(nm/分)を算出し、比較例3-1に対する比率を算出し、エッチング耐性の尺度とした。エッチング耐性は、上記比率が1.00未満の場合は「A」(良好)と、1.00以上の場合は「B」(不良)と評価した。表2のエッチング耐性の欄の「-」は評価の基準であることを示す。
【0156】
[耐熱性]
上記調製したレジスト下層膜形成用組成物を、直径8インチのシリコンウエハ上にスピンコート法により塗工し、大気雰囲気下にて、250℃で60秒間焼成(ベーク)してレジスト下層膜を形成し、レジスト下層膜付き基板を得た。次に、このレジスト下層膜付き基板のレジスト下層膜を削ることにより粉体を回収し、レジスト下層膜の粉体をTG-DTA装置(NETZSCH社の「TG-DTA2000SR」)による測定で使用する容器に入れ、加熱前の質量を測定した。次に、TG-DTA装置(NETZSCH社の「TG-DTA2000SR」)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度にて400℃まで加熱し、400℃における粉体の質量を測定した。そして、下記式により質量減少率(%)を測定し、この質量減少率を耐熱性の尺度とした。
={(m1-m2)/m1}×100
上記式中、Mは、質量減少率(%)であり、m1は、加熱前の質量(mg)であり、m2は、400℃における質量(mg)である。
耐熱性は、試料となる粉体の質量減少率が小さいほど、レジスト下層膜の加熱時に発生する昇華物やレジスト下層膜の分解物が少なく、良好である。すなわち、質量減少率が小さいほど、高い耐熱性であることを示す。耐熱性は、質量減少率が5%未満の場合は「A」(極めて良好)と、5%以上10%未満の場合は「B」(良好)と、10%以上の場合は「C」(不良)と評価した。
【0157】
[平坦性]
上記調製したレジスト下層膜形成用組成物を、図1に示すように、深さ100nm、幅10μmのトレンチパターンが形成されたシリコン基板1上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を用い、回転塗工法により塗工した。スピンコートの回転速度は、上記「レジスト下層膜の形成」において、平均厚み200nmの膜を形成する場合と同じとした。次いで、大気雰囲気下にて、下記表2に示す加熱温度(℃)及び加熱時間(sec)で加熱(焼成)し、非トレンチパターンの部分における平均厚み200nmの膜2を形成し、上記シリコン基板が膜で被覆された膜付きシリコン基板を得た。
【0158】
上記膜付きシリコン基板の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「S-4800」)にて観察し、この膜の上記トレンチパターンの中央部分bにおける高さと、上記トレンチパターンの端から5μmの場所の非トレンチパターンの部分aにおける高さとの差(ΔFT)を平坦性の指標とした。平坦性は、このΔFTが40nm未満の場合は「A」(良好)と、40nm以上60nm未満の場合は「B」(やや良好)と、60nm以上の場合は「C」(不良)と評価した。なお、図1で示す高さの差は、実際よりも誇張して記載している。
【0159】
[膜欠陥抑制性]
上記得られたレジスト下層膜付き基板上に、ケイ素含有膜形成用組成物(JSR(株)の「NFC SOG080」)を回転塗工法により塗工した後、大気雰囲気下にて200℃で60秒間加熱(焼成)し、平均厚み50nmのケイ素含有膜を形成し、ケイ素含有膜付き基板を得た。上記得られたケイ素含有膜付き基板を、さらに450℃で60秒間加熱(焼成)した後、光学顕微鏡でケイ素含有膜の表面を観察した。膜欠陥抑制性は、ケイ素含有膜のひび割れ又は剥がれが見られなかった場合は「A」(良好)と、ケイ素含有膜のひび割れ又は剥がれが見られた場合は「B」(不良)と評価した。
【0160】
【表2】
【0161】
表2の結果から分かるように、実施例のレジスト下層膜形成用組成物から形成されたレジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れている。これに対し、比較例のレジスト下層膜形成用組成物から形成されたレジスト下層膜は、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性のいずれもが不良であり、エッチング耐性は劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物によれば、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のレジスト下層膜は、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れている。本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、エッチング耐性、耐熱性、平坦性及び膜欠陥抑制性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明のパターン形成方法によれば、このような優れたレジスト下層膜を用いることにより、良好な形状を有するパターンを得ることができる。本発明の化合物は、当該レジスト下層膜形成用組成物の成分として好適に用いることができる。本発明の化合物の製造方法によれば、当該化合物を製造することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0163】
1 シリコン基板
2 膜
図1