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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】電気機器システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20230502BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230502BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230502BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
H02J7/02 B
H02J7/00 301B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020558194
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041961
(87)【国際公開番号】W WO2020110541
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018224429
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一彦
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130174(JP,A)
【文献】特開2015-196196(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129416(WO,A1)
【文献】特開2017-216861(JP,A)
【文献】特開2012-143020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル、電池側制御部、及び電池側信号端子を備える電池パックと、
機器側制御部及び前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、
を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記電気機器本体は、前記切替回路が前記第2モードに切り替わると前記電池側制御部を起動する起動信号を出力するよう構成され、
前記機器側制御部は、前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を介して前記起動信号を前記電池パックに送信するよう構成され
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で、前記電池パックの情報、状態又は接続有無を示す信号を前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を介して取得可能である、電気機器システム。
【請求項2】
電池セル、電池側制御部、及び電池側信号端子を備える電池パックと、
機器側制御部及び前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、
を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記電気機器本体は、前記切替回路が前記第2モードに切り替わると前記電池側制御部を起動する起動信号を出力するよう構成され、
前記電池パックは、起動信号を受けて前記電池側制御部を起動させる起動回路を備え、
前記起動回路は、前記電池側制御部が起動されると、前記電池側制御部からの信号により前記電池側制御部の駆動状態を維持する、電気機器システム。
【請求項3】
前記電池パックは、電池側報知用端子を備え、
前記電気機器本体は、前記電池側報知用端子に接続可能な機器側報知用端子を備え、
前記機器側制御部は、前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を使用して前記第1モード及び前記第2モードを切り替え、前記電池側報知用端子及び前記機器側報知用端子を使用して前記電気機器本体の動作を制御する、
請求項1又は2に記載の電気機器システム。
【請求項4】
前記第1モードは、前記電池パックが前記電気機器本体に接続されているか否かを検出する電池接続検出モードであり、
前記第2モードは、前記機器側制御部と前記電池側制御部との間で通信を行う通信モードである、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機器システム。
【請求項5】
電池セル及び電池側制御部を備える電池パックと、機器側制御部を備え前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記電池パックは電池側信号端子を備え、
前記電気機器本体は前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記切替回路は、一端が前記機器側信号端子に接続された互いに抵抗値の異なる第1及び第2抵抗と、前記第1及び第2抵抗のいずれかを選択して接続する選択回路と、を有し、
前記機器側制御部は、前記切替回路による前記第1及び第2モードを切り替える際に、前記選択回路による前記第1及び第2抵抗の選択を切り替える、電気機器システム。
【請求項6】
前記機器側信号端子は、前記選択回路が前記第1抵抗を選択すると、前記電池側制御部が起動しない第1レベルの電圧となり、前記選択回路が前記第2抵抗を選択すると、前記電池側制御部が起動する第2レベルの電圧となる、請求項5に記載の電気機器システム。
【請求項7】
前記電池パックは、一端が前記電池側信号端子に接続され、他端がグランド電位に接続された第3抵抗を有し、
前記第1及び第2抵抗と前記第3抵抗の接続状態に応じて前記機器側信号端子の電圧が切り替わる、請求項6に記載の電気機器システム。
【請求項8】
前記機器側制御部は、前記機器側信号端子の電圧が前記第2レベルの場合に、一時的に第1レベルの電圧に切り替える、請求項6又は7に記載の電気機器システム。
【請求項9】
前記電気機器本体は充電装置であって、
前記機器側制御部は、前記第2モードで前記電池パックを充電し、前記電池パックの充電が完了すると、前記第1モードに移行する、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気機器システム。
【請求項10】
電池セル及び電池側制御部を備える電池パックと、機器側制御部を備え前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側制御部は、前記第2モードで前記電池パックを充電中に、一時的に前記第1モードに切り替える、電気機器システム。
【請求項11】
前記電池側制御部は、前記電池セルから電力供給を受けて動作する、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御部を有する電池パックと電池パックを接続可能な電気機器本体を備えた電気機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、制御部(マイコン)を有する電池パックを充電装置により充電する充電システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-72945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は電池パックの制御部が常に起動しているため、電池パックの電力を無駄に消費してしまう。また、電池パックの制御部を起動するための専用の端子を設けると端子数が多くなり電池パックや電気機器本体の大型化を招いてしまう。更に、端子数を節約するために、電池パックの制御部を起動するための端子に他の機能を持たせる場合、他の機能のために電池パックの制御部が不要に起動すると、電池パックの電力を無駄に消費する。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、電池パックの電力消費を抑制することの可能な電気機器システムを提供することにある。また他の目的は、端子数を抑えた電気機器システムを提供することにある。更に他の目的は、端子数を削減しながら電池パックの電力消費の増大を抑制することの可能な電気機器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電気機器システムである。この電気機器システムは、
電池セル、電池側制御部、及び電池側信号端子を備える電池パックと、
機器側制御部及び前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、
を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記電気機器本体は、前記切替回路が前記第2モードに切り替わると前記電池側制御部を起動する起動信号を出力するよう構成され
前記機器側制御部は、前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を介して前記起動信号を前記電池パックに送信するよう構成し、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で、前記電池パックの情報、状態又は接続有無を示す信号を前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を介して取得可能である。
【0007】
本発明のもう1つの態様は、電気機器システムである。この電気機器システムは、
電池セル、電池側制御部、及び電池側信号端子を備える電池パックと、
機器側制御部及び前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、
を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記電気機器本体は、前記切替回路が前記第2モードに切り替わると前記電池側制御部を起動する起動信号を出力するよう構成され、
前記電池パックは、起動信号を受けて前記電池側制御部を起動させる起動回路を備え、
前記起動回路は、前記電池側制御部が起動されると、前記電池側制御部からの信号により前記電池側制御部の駆動状態を維持する。
前記電池パックは、電池側報知用端子を備え、
前記電気機器本体は、前記電池側報知用端子に接続可能な機器側報知用端子を備え、
前記機器側制御部は、前記電池側信号端子及び前記機器側信号端子を使用して前記第1モード及び前記第2モードを切り替え、前記電池側報知用端子及び前記機器側報知用端子を使用して前記電気機器本体の動作を制御してもよい
【0009】
前記第1モードは、前記電池パックが前記電気機器本体に接続されているか否かを検出する電池接続検出モードであり、前記第2モードは、前記機器側制御部と前記電池側制御部との間で通信を行う通信モードであってもよい。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、電気機器システムである。この電気機器システムは、
電池セル及び電池側制御部を備える電池パックと、機器側制御部を備え前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記電池パックは電池側信号端子を備え、
前記電気機器本体は前記電池側信号端子に接続可能な機器側信号端子を備え、
前記機器側信号端子に接続され、前記第1モードと前記第2モードとを切替可能な切替回路を備え、
前記切替回路は、一端が前記機器側信号端子に接続された互いに抵抗値の異なる第1及び第2抵抗と、前記第1及び第2抵抗のいずれかを選択して接続する選択回路と、を有し、
前記機器側制御部は、前記切替回路による前記第1及び第2モードを切り替える際に、前記選択回路による前記第1及び第2抵抗の選択を切り替える。
【0012】
前記機器側信号端子は、前記選択回路が前記第1抵抗を選択すると、前記電池側制御部が起動しない第1レベルの電圧となり、前記選択回路が前記第2抵抗を選択すると、前記電池側制御部が起動する第2レベルの電圧となってもよい。
【0013】
前記電池パックは、一端が前記電池側信号端子に接続され、他端がグランド電位に接続された第3抵抗を有し、前記第1及び第2抵抗と前記第3抵抗の接続状態に応じて前記機器側信号端子の電圧が切り替わるようにしてもよい。
【0014】
前記機器側制御部は、前記機器側信号端子の電圧が前記第2レベルの場合に、一時的に第1レベルの電圧に切り替えるようにしてもよい。
【0015】
前記電気機器本体は、充電装置であって、前記機器側制御部は、前記第2モードで前記電池パックを充電し、前記電池パックの充電が完了すると、前記第1モードに移行してもよい。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、電気機器システムである。この電気機器システムは、
電池セル及び電池側制御部を備える電池パックと、機器側制御部を備え前記電池パックと接続可能な電気機器本体と、を有する電気機器システムであって、
前記機器側制御部は、前記電池側制御部が起動していない状態で動作する第1モードと、前記電池側制御部が起動した状態で動作する第2モードと、を有し、
前記機器側制御部は、前記第2モードで前記電池パックを充電中に、一時的に前記第1モードに切り替え
【0017】
前記電池側制御部は、前記電池セルから電力供給を受けて動作してもよい。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電池パックの電力消費を抑制することの可能な電気機器システムを提供することができる。また端子数を抑えた電気機器システムを提供することができる。また端子数を削減しながら電池パックの電力消費の増大を抑制することの可能な電気機器システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る電気機器システム(充電システム)1の回路ブロック図。
図2】電気機器システム(充電システム)1の動作の一例を示すタイムチャート。
図3】電気機器システム(充電システム)1の全体動作のフローチャート。
図4】充電装置10の待機モードの動作のフローチャート。
図5】充電装置10の充電中モードの動作のフローチャート。
図6】充電装置10の充電終了モードの動作のフローチャート。
図7】電池パック50の動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る電気機器システム(充電システム)1の回路ブロック図である。電気機器システム(充電システム)1は、電気機器本体となる充電装置10と、電池パック50と、を備える。充電装置10は、電池パック50との接続用に、機器側プラス端子21と、機器側信号端子としての機器側D端子22と、機器側報知用端子としての機器側LD端子23と、機器側マイナス端子24と、を有する。電池パック50は、電池側プラス端子(充電用プラス端子)61と、電池側信号端子としての電池側D端子62と、電池側報知用端子としての電池側LD端子63と、電池側マイナス端子64と、を有する。図示は省略したが、電池パック50は、放電用プラス端子を電池側プラス端子61とは別に有してもよいし共通の端子としてもよい。機器側プラス端子21と電池側プラス端子61が互いに接続される。機器側D端子22と電池側D端子62が互いに接続される。機器側LD端子23と電池側LD端子63が互いに接続される。機器側マイナス端子24と電池側マイナス端子64が互いに接続される。
【0026】
充電装置10は、電源回路11と、制御部(機器側制御部)13と、通信回路15と、切替回路17と、スイッチ19と、を有する。電源回路11は、商用電源等の外部の交流電源5から供給される交流電圧を電池パック50の充電用の直流電圧に変換して機器側プラス端子21に出力すると共に、前記交流電圧を制御用の直流電圧VDD2に変換して充電装置10の各回路に供給する。制御部13は、充電装置10の全体の動作を制御する。通信回路15は、機器側D端子22に接続され、制御部13の制御に従い電池パック50の通信回路57との間で通信信号の送受信を行う。スイッチ19は、例えばリレーであり、制御部13の制御によって開閉される。充電装置10は、充電電流の経路に抵抗R5を有する。抵抗R5の両端の電圧により、制御部13が充電電流を検出する。制御部13は、機器側プラス端子21の電圧により、電池パック50の電圧を検出する。
【0027】
切替回路17は、第1抵抗R1と、第2抵抗R2と、選択回路となる選択スイッチSW4と、を有する。第1抵抗R1及び第2抵抗R2の一端は、機器側D端子22に接続される。第1抵抗R1及び第2抵抗R2の他端は、選択スイッチSW4の一端に接続される。選択スイッチSW4の他端は、電源電圧VDD2が供給される電源ラインに接続される。第1抵抗R1の抵抗値は、第2抵抗R2の抵抗値よりも大きい。選択スイッチSW4は、制御部13の制御により、第1抵抗R1及び第2抵抗R2のいずれを電源ラインに接続するかを切り替える。選択スイッチSW4は、FET等のスイッチング素子で構成できる。
【0028】
選択スイッチSW4が第1抵抗R1を電源ラインに接続すると、機器側D端子22の電圧は、電源電圧VDD2を第1抵抗R1と電池パック50の判別抵抗R3とで分圧した電圧レベルであって、グランド電位(0V)より高いが電池パック50の後述のスイッチング素子SW2をオンできない電圧レベル(図2のVD1)となる。選択スイッチSW4が第2抵抗R2を電源ラインに接続すると、機器側D端子22の電圧は、電源電圧VDD2を第2抵抗R2と電池パック50の判別抵抗R3とで分圧した電圧レベルであって、電池パック50のスイッチング素子SW2をオンできる電圧レベル(図2のVD2)となる。
【0029】
制御部13は、第1モードとしての接続検出モードでは、第1抵抗R1を選択するように選択スイッチSW4を制御し、そのときの機器側D端子22の電圧VD1により、電池パック50が接続されたことを検出すると共に、電池パック50の種別(定格電圧や接続セル数、セルの接続形態等)に関する情報を取得する。制御部13は、第2モードとしての通信モードでは、第2抵抗R2を選択するように選択スイッチSW4を制御し、電池パック50のスイッチSW2をオンさせる。すると、後述のように、電池パック50の制御部53が起動する。その後、通信回路15は、電池パック50の通信回路57と通信する。
【0030】
電池パック50は、電源回路51と、制御部(電池側制御部)53と、電池セル群55と、通信回路57と、接続検出回路59と、温度検出素子67と、切替回路69と、を有する。電源回路51は、電池セル群55の出力電圧を制御用の直流電圧VDD1に変換して電池パック50の各回路に供給する。充電装置10のスイッチ19がオンの場合、電源回路51は、充電装置10の電源回路11の出力電圧を制御用の直流電圧VDD1に変換して電池パック50の各回路に供給する。制御部53は、電池パック50の全体の動作を制御する。電池セル群55は、複数の電池セルを有する。通信回路57は、電池側D端子62に接続され、制御部53の制御に従い充電装置10の通信回路15との間で通信信号の送受信を行う。接続検出回路59は、電池側D端子62に接続され、充電装置10あるいは他の電気機器本体の接続検出の有無を検出する。電池パック50は、電池側D端子62とグランドとの間に判別抵抗R3を有する。判別抵抗R3は、電池パック50の情報及び接続有無を示すための素子の例示である。判別抵抗R3の抵抗値は、電池パック50の情報(定格電圧や接続セル数、セルの接続形態等)に応じた値である。
【0031】
温度検出素子67は、例えばサーミスタであり、電池セル群55の近傍に配置され、電池セル群55の温度を検出する。なお、電池セルの中の1つのセル温度を検出してもよい。制御部53は、電池セル群55の各セルの電圧を監視する。また制御部53は、電池セル群55の温度を監視する。電池パック50は、放電電流の経路に抵抗R4を有する。抵抗R4の両端の電圧により、制御部53が放電電流を検出する。起動回路となる切替回路69は、FET等のスイッチング素子SW1~SW3と、抵抗R6と、を有する。切替回路69は、電池セル群55から電源回路51への電圧入力の有無を切り替える回路である。切替回路69を制御部53とは別にアナログ回路で構成することにより、安価な制御部53を使用することができる。電池側D端子62の電圧が、スイッチング素子SW2をオンできるレベルになると、スイッチング素子SW2がターンオンし、スイッチング素子SW1がターンオンし、電池セル群55から電源回路51に電圧が供給される。充電装置10において選択スイッチSW4が第2抵抗R2を選択すると、スイッチング素子SW2をオンできるレベルの電圧VD2(起動信号)が電池側D端子62からスイッチング素子SW2の制御端子(ゲート)に入力され、スイッチング素子SW2がターンオンする。電源回路51に電圧が供給されると、制御部53が起動する。制御部53は、スイッチング素子SW3をオンすることで、スイッチング素子SW2の状態にかかわらず、スイッチング素子SW1のオン状態を維持できる。
【0032】
図2は、充電システム1の動作の一例を示すタイムチャートである。時刻t1以前は、充電装置10に電池パック50が接続されておらず、制御部13は待機モード(図4)かつ接続検出モードである。機器側D端子22は開放であるため、機器側D端子22の電圧は、選択スイッチSW4により選択されている第1抵抗R1によってプルアップされ、電源電圧VDD2である。電池側D端子62は開放であるため、電池側D端子62の電圧は、判別抵抗R3によってプルダウンされ、グランド電位である。電池パック50の電源回路51は、切替回路69により電池セル群55からの電圧供給遮断されており、オフである。
【0033】
時刻t1において充電装置10に電池パック50が接続されると、制御部13は充電中モード(図5)となる。機器側D端子22及び電池側D端子62が互いに接続されるため、機器側D端子22及び電池側D端子62の電圧は、電源電圧VDD2を第1抵抗R1と判別抵抗R3で分圧した電圧VD1となる。機器側D端子22の電圧がVD1となったことにより、時刻t1から所定時間経過後の時刻t2において制御部13は充電装置10に電池パック50が接続されたことを検出し、接続検出モードから通信モードに移行し、選択スイッチSW4による選択を第1抵抗R1から第2抵抗R2に切り替える。すると、機器側D端子22及び電池側D端子62の電圧は、電源電圧VDD2を第2抵抗R2と判別抵抗R3で分圧した電圧VD2となる。これによりスイッチング素子SW2がターンオンし、電池パック50の電源回路51が起動する。
【0034】
時刻t2以降、充電装置10の電源回路11から電池パック50の電池セル群55に充電電圧及び充電電流が供給され、電池パック50の充電が進められる。充電期間中、通信回路15、57による通信が行われ、また間欠的に制御部13は接続検出モードに移行する。通信では、電池セル群55の温度、各セルの電圧等が、制御部53から制御部13に送信される。制御部13が間欠的(一時的)に接続検出モードに移行するのは、充電装置10に電池パック50が接続されていることを充電中に簡易的かつ確実に検出するためである。制御部13は、通信により電池パック50が接続されていることを検出してもよい。ただしこの場合、例えば通信ができないときに、通信の異常なのか電池パック50が外されたのかを区別する必要があるため、簡易性と確実性の点で、間欠的に接続検出モードに移行するほうが有利である。
【0035】
時刻t3において充電が完了すると、制御部13は充電終了モード(図6)かつ接続検出モードとなる。機器側D端子22及び電池側D端子62の電圧は、選択スイッチSW4の選択が第2抵抗R2から第1抵抗R1に切り替わることで、VD2からVD1に降下する。時刻t3から電源維持時間が経過した時刻t4において、制御部53はスイッチング素子SW3をターンオフし、電源回路51が停止する。その後の時刻t5において充電装置10から電池パック50が外されると、制御部13は待機モード(図4)に移行する。機器側D端子22は開放されるため、機器側D端子22の電圧は電源電圧VDD2となる。電池側D端子62は開放されるため、電池側D端子62の電圧はグランド電位となる。
【0036】
図3は、電気機器システム(充電システム)1の全体動作のフローチャートである。充電装置10に電池パック50が接続されると(S1のYES)、制御部13は、選択スイッチSW4による選択を第1抵抗R1から第2抵抗R2に切り替え、機器側D端子22を通信モードに設定する(S3)。すると、電源回路51が起動し、制御部53が起動する(S5)。電池パック50が充電可能な状態であれば(S7のYES)、充電装置10による電池パック50の充電が開始、継続される(S9)。電池パック50が充電可能な状態でなければ(S7のNO)、充電が停止され(S11)、制御部13は、選択スイッチSW4による選択を第2抵抗R2から第1抵抗R1に切り替え、機器側D端子22を接続検出モードに設定する(S13)。その後、制御部53は、所定時間が経過すると(S15のYES)、スイッチング素子SW3をターンオフし、電源回路51を停止させ、シャットダウンする(S17)。充電装置10は、電池パック50が外されると(S19のNO)、待機状態となる(S1)。
【0037】
図4は、充電装置10の待機モードの動作のフローチャートである。制御部13は、選択スイッチSW4による選択を第1抵抗R1とし、機器側D端子22を接続検出モードに設定する(S31)。制御部13は、機器側D端子22の電圧がV1未満になると(S33のYES)、充電中モードに移行する。V1は、電源電圧VDD2よりも低く、電源電圧VDD2を第1抵抗R1及び判別抵抗R3で分圧した電圧VD1よりも大きい所定値である。充電装置10に電池パック50が接続されると、機器側D端子22の電圧はV1未満となる。
【0038】
図5は、充電装置10の充電中モードの動作のフローチャートである。制御部13は、選択スイッチSW4による選択を第2抵抗R2とし、機器側D端子22を通信モードに設定する(S35)。制御部13は、通信回路15から電池状態情報要求を機器側D端子22及び電池側D端子62を介して電池パック50(通信回路57)に送信する(S37)。制御部13は、通信回路15が機器側D端子22及び電池側D端子62を介して電池パック50(通信回路57)から電池状態情報を受信すると(S39のYES)、電池パック50の状態(温度等)に問題がなく(S41のYES)、充電電流が所定値あるいは所定範囲であり(S43のYES)、電池パック50の電圧が満充電電圧V2未満であり(S45のYES)、かつ機器側LD端子23及び電池側LD端子63を介して電池パック50から充電禁止信号を受信しない場合(S47のYES)、電池パック50の充電を開始、継続する(S49)。制御部13は、充電中に選択スイッチSW4による選択を第1抵抗R1に切り替え、機器側D端子22を接続検出モードに設定する(S51)。制御部13は、機器側D端子22の電圧がV1未満であれば(S52のYES)、選択スイッチSW4による選択を第2抵抗R2に切り替え、通信モードに戻る(S35)。制御部13は、機器側D端子22の電圧がV1以上の場合(S52のNO)、充電装置10から電池パック50が外されたと判断し、待機モード(図4)に移行する。制御部13は、ステップS39において電池パック50から電池状態情報を所定時間受信しない場合(S39のNO、S55のYES)、電池パック50の状態に問題がある場合(S41のNO)、充電電流が所定値あるいは所定範囲でない場合(S43のNO)、電池パック50の電圧が満充電電圧V2以上の場合(S45のNO)、あるいは電池パック50から充電禁止信号を受信した場合(S47のNO)、電池パック50の充電を停止し(S57)、充電終了モード(図6)に移行する。
【0039】
図6は、充電装置10の充電終了モードの動作のフローチャートである。制御部13は、選択スイッチSW4による選択を第1抵抗R1とし、機器側D端子22を接続検出モードに設定する(S59)。制御部13は、機器側D端子22の電圧がV1以上になると(S61のNO)、充電装置10から電池パック50が外されたと判断し、待機モード(図4)に移行する。
【0040】
図7は、電池パック50の動作のフローチャートである。制御部53は、起動すると、信号を出力してスイッチング素子SW3をオンし、電源回路51を駆動状態に保持する(S71)。制御部53は、電池セル群55の温度が所定値以下であり(S73のNO)、各電池セルの電圧が第1所定値以下の場合(S75のNO)、充電許可信号を電池側LD端子63に出力する(S77)。言い換えると充電禁止信号を電池側LD端子63出力しない。制御部53は、電池セル群55の温度が所定値を超えている場合(S73のYES)、又は少なくとも1つの電池セルの電圧が第1所定値を超えている場合(S75のYES)、充電禁止信号を電池側LD端子63に出力する(S79)。なお、電池セルの電圧が第1所定値以下とは電池セルが過充電又は過電圧又は満充電になっていない状態を示している。
【0041】
制御部53は、電池セル群55の温度が所定値以下であり(S81のNO)、各電池セルの電圧が第2所定値以上であり(S83のNO)、放電電流が所定値以下の場合(S85のNO)、放電許可信号を電池側LD端子63に出力する(S87)。言い換えると放電禁止信号を電池側LD端子63に出力しない。制御部53は、電池セル群55の温度が所定値を超えている場合(S81のYES)、少なくとも1つの電池セルの電圧が第2所定値未満の場合(S83のYES)、又は放電電流が所定値を超えた場合(S85のYES)、放電禁止信号を電池側LD端子63に出力する(S89)。なお、電池セルの電圧が第2所定値以上とは電池セルが過放電になっていない状態を示している。
【0042】
制御部53は、充電装置10(通信回路15)から機器側D端子22、電池側D端子62及び通信回路57を介して電池状態情報要求を受信すると(S91のYES)、通信回路57から充電装置10(通信回路15)に対して電池側D端子62及び機器側D端子22を介して電池状態情報を送信する(S93)。
【0043】
制御部53は、電池側D端子62の電圧が、機器本体の接続があることを示すV3未満場合(S95のYES)、タイマT1をインクリメントする(S97)。制御部53は、電池側D端子62の電圧がV3以上の場合(S95のNO)、スイッチング素子SW3をオンにして電源回路51を駆動状態に保持し(S99)、タイマT1をクリアする(S101)。V3は、グランド電位よりも高く、電源電圧VDD2を第1抵抗R1及び判別抵抗R3で分圧した電圧VD1よりも小さい所定値である。電池パック50を充電装置10に接続すると、電池側D端子62の電圧はV3以上となる。具体的にはVD1となる。制御部53は、タイマT1が所定値を超えていなければ(S103のNO)、ステップS73に戻る。制御部53は、タイマT1が所定値を超えると(S103のYES)、すなわち、電池パック50に電気機器本体が接続されていない状態が所定値(所定時間)を超えて継続すると、スイッチング素子SW3をターンオフし、シャットダウンする(S105)。
【0044】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0045】
(1) 機器側D端子22及び電池側D端子62を、電池パック50の制御部53の起動用端子、通信端子、及び接続検出用として使用するため、端子数を削減できる。
【0046】
(2) 充電装置10の制御部13は、接続検出モードでは選択スイッチSW4により第1抵抗R1を選択することで、機器側D端子22及び電池側D端子62の電圧をスイッチング素子SW2がオンしないレベルの電圧とするので、電池パック50の制御部53を起動せずに電池パック50の接続検出が可能となる。また、電池パック50の制御部53を起動せずに判別抵抗R3によって電池パック50の種別(定格電圧や接続セル数、セルの接続形態等)情報の取得が可能となる。よって、電池パック50の制御部53の不要な起動を抑制でき、電池パック50の電力消費の増大を抑制できる。
【0047】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0048】
判別抵抗R3は、電池セル群55の近傍に設けられたサーミスタであってもよい。この場合、充電装置10の制御部13は、接続検出モードにおいて、電池パック50の制御部53を起動せずに、電池セル群55の温度(状態)を検出できる。電気機器本体は、実施の形態で例示した充電装置10に限定されず、電動工具等の他の種類のものであってもよい。この場合、電池パック50に、制御部53とは別に記憶用等の付加価値を高める制御部を設け、当該制御部の不要な起動を抑制して消費電力の増大を抑制するという変形例が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…電気機器システム(充電システム)、10…充電装置、11…電源回路、13…制御部(機器側制御部)、15…通信回路、17…切替回路、19…スイッチ、21…機器側プラス端子、22…機器側D端子、23…機器側LD端子、24…機器側マイナス端子、50…電池パック、51…電源回路、53…制御部(電池側制御部)、55…電池セル群、57…通信回路、59…接続検出回路、61…電池側プラス端子(充電用プラス端子)、62…電池側D端子、63…電池側LD端子、64…電池側マイナス端子、67…温度検出素子、69…切替回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7