(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20230502BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230502BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20230502BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
F16H57/04 K
(21)【出願番号】P 2021512083
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014357
(87)【国際公開番号】W WO2020203909
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019066933
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮平
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057243(JP,A)
【文献】特開2008-312343(JP,A)
【文献】特開2013-162674(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030372(WO,A1)
【文献】特開2018-026974(JP,A)
【文献】特開2017-114477(JP,A)
【文献】特開2019-048549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア、前記ステータコアに対して回転可能に支持されたロータコア、及び前記ロータコアと一体的に回転するように連結された筒状のロータ軸を有し、車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記ロータ軸と前記車輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構と、
前記動力伝達経路を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプと、
前記動力伝達経路から独立した駆動力源により駆動される第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプから吐出された油を、前記ロータ軸を回転可能に支持するロータ軸受に供給する第1油路と、
前記第2油圧ポンプから吐出された油を、前記ロータ軸の内周面に供給する第2油路と、を備えている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1油路は、前記第1油圧ポンプから吐出された油を、前記駆動伝達機構が備える複数の回転部材を回転可能に支持する複数の軸受に供給する油路を含む、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機及び前記駆動伝達機構を収容するケースを更に備え、
前記ケースは、前記回転電機及び前記駆動伝達機構の径方向の外側を囲む筒状に形成された周壁部と、前記周壁部の軸方向の一方側の開口を閉塞するように配置された第1側壁部と、前記周壁部の前記軸方向の他方側の開口を閉塞するように配置された第2側壁部と、を備え、
前記第1油路は、前記第1側壁部に形成された油路と、前記第2側壁部に形成された油路と、を含む、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第2油路は、前記第2油圧ポンプから吐出された油を、前記ステータコアの外周面に供給する油路を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ロータ軸は、前記ロータコアから軸方向の両側に突出するように配置され、
前記ロータ軸受は、前記ロータ軸における前記ロータコアから前記軸方向の一方側に突出した部分を回転可能に支持する第1ロータ軸受と、前記ロータ軸における前記ロータコアから前記軸方向の他方側に突出した部分を回転可能に支持する第2ロータ軸受と、を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
油を貯留する油貯留部が内部に形成され、前記回転電機及び前記駆動伝達機構を収容するケースを更に備え、
前記駆動伝達機構が備える複数のギヤのギヤ噛み合い部に、前記第1油路の油、及び、複数の前記ギヤに含まれる掻き上げギヤによって掻き上げられた前記油貯留部の油の少なくとも一方が供給される、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記駆動伝達機構は、前記車輪に駆動連結された出力部材を一対備えると共に、前記回転電機の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構を備え、
前記差動歯車機構は、中空の差動ケースを備え、
前記第1油圧ポンプが前記差動ケースの回転により駆動される、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記駆動伝達機構は、前記車輪に駆動連結された出力部材を一対備えると共に、前記回転電機の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構を備え、
前記出力部材の軸方向及び径方向を基準として、
前記回転電機は、前記差動歯車機構における前記径方向の寸法が最も大きい部分である最大径部に対して前記軸方向の一方側に配置され、
前記第1油圧ポンプは、前記軸方向に沿う軸方向視で、前記差動歯車機構と重複するように配置されていると共に、前記差動歯車機構の前記最大径部よりも前記軸方向における前記回転電機の側であって、前記回転電機の前記軸方向の中央部よりも前記軸方向における前記差動歯車機構の側に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記第2油圧ポンプは、前記ロータ軸の前記内周面の温度が規定値以下である場合に停止される、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記第2油路には、油を冷却するオイルクーラが設けられ、
前記第1油路には、前記オイルクーラが設けられていない、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源となる回転電機と、回転電機と車輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構と、動力伝達経路を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプと、当該動力伝達経路から独立した駆動力源により駆動される第2油圧ポンプと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(1)は、第1油圧ポンプ(51)から吐出された油が流動する第1油路(91)と、第2油圧ポンプ(52)から吐出された油が流動する第2油路(92)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/061443号(
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両用駆動装置(1)では、第1油路(91)は、回転電機(10)を径方向(R)の内側から冷却する内側冷却油路(93)を含むと共に、第2油路(92)は、回転電機(10)を径方向(R)の外側から冷却する外側冷却油路(65)を含む。つまり、第1油路(91)と第2油路(92)とのそれぞれが、回転電機(10)を冷却するための油路を含んでいる。そのため、回転電機(10)の冷却が不要な状況であっても、内側冷却油路(93)及び外側冷却油路(65)の少なくとも一方に油が供給される。
【0006】
更に、特許文献1の車両用駆動装置(1)では、回転電機(10)のロータ軸(16)等の回転部材を回転可能に支持する軸受(B)に対して潤滑用の油が供給されるが、軸受(B)の潤滑のタイミングについては規定されていない。つまり、特許文献1の車両用駆動装置(1)では、軸受(B)の潤滑が不要な状況であっても、軸受(B)に油が供給される場合がある。
【0007】
以上のように、特許文献1の車両用駆動装置(1)では、不要な油の供給を行うための油圧ポンプ(51,52)の駆動に要するエネルギは不要な損失となり、車両用駆動装置(1)のエネルギ効率がその分低下するという課題があった。
【0008】
そこで、不要な油圧ポンプの駆動によるエネルギ損失を小さく抑え、エネルギ効率を高くすることができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
ステータコア、前記ステータコアに対して回転可能に支持されたロータコア、及び前記ロータコアと一体的に回転するように連結された筒状のロータ軸を有し、車輪の駆動力源となる回転電機と、
前記ロータ軸と前記車輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構と、
前記動力伝達経路を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプと、
前記動力伝達経路から独立した駆動力源により駆動される第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプから吐出された油を、前記ロータ軸を回転可能に支持するロータ軸受に供給する第1油路と、
前記第2油圧ポンプから吐出された油を、前記ロータ軸の内周面に供給する第2油路と、を備えている点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、回転電機のロータ軸を回転可能に支持するロータ軸受に油を供給する潤滑用の油圧回路として第1油路及び第1油圧ポンプが設けられ、ロータ軸の内周面に油を供給する冷却用の油圧回路として第2油路及び第2油圧ポンプが設けられている。これにより、ロータ軸受の潤滑とロータ軸の内周面の冷却とを独立して行うことができる。そのため、車両の停止中である場合等、ロータ軸受の潤滑が不要である場合には、第1油圧ポンプからロータ軸受への油の供給を停止し、回転電機の温度が低い場合等、ロータ軸の内周面の冷却が不要である場合には、第2油圧ポンプからロータ軸の内周面への油の供給を停止することが可能となる。つまり、ロータ軸の内周面とロータ軸受とのうちのいずれか一方に対する油の供給が不要である場合に、それらの双方に油が供給されることを回避できる。その結果、不要な油圧ポンプの駆動によるエネルギ損失を小さく抑えることができ、延いては、車両用駆動装置のエネルギ効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
【
図2】実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の第1油路の一部及び第2油路を示す図
【
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の第1油路の一部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路Pに設けられた駆動伝達機構10と、を備えている。本実施形態では、回転電機1及び駆動伝達機構10は、ケース2に収容されている。また、本実施形態では、駆動伝達機構10は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、第1出力部材61及び第2出力部材62と、を備えている。
【0013】
回転電機1は、その回転軸心としての第1軸A1上に配置されている。本実施形態では、入力部材3も第1軸A1上に配置されている。カウンタギヤ機構4は、その回転軸心としての第2軸A2上に配置されている。差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置されている。本実施形態では、第1出力部材61及び第2出力部材62も第3軸A3上に配置されている。第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。
【0014】
以下の説明では、上記の軸A1~A3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、入力部材3に対して回転電機1が配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0015】
図1に示すように、本実施形態では、ケース2は、周壁部21と、第1側壁部22及び第2側壁部23と、隔壁部24と、を有している。周壁部21は、回転電機1及び駆動伝達機構10の径方向Rの外側を囲む筒状に形成されている。第1側壁部22及び第2側壁部23は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。第1側壁部22は、周壁部21の軸方向第1側L1の開口を閉塞するように、周壁部21の軸方向第1側L1の端部に固定されている。第2側壁部23は、周壁部21の軸方向第2側L2の開口を閉塞するように、周壁部21の軸方向第2側L2の端部に固定されている。
【0016】
隔壁部24は、周壁部21の径方向Rの内側の空間であって、第1側壁部22と第2側壁部23との間の空間を軸方向Lに区画するように形成されている。本実施形態では、隔壁部24と第1側壁部22との間には、回転電機1が配置されている。そして、隔壁部24と第2側壁部23との間には、駆動伝達機構10が配置されている。
【0017】
回転電機1は、ステータ11とロータ12とを有している。ここで、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0018】
ステータ11は、非回転部材(例えば、ケース2)に固定されたステータコア111を有している。ロータ12は、ステータ11(ステータコア111)に対して回転可能なロータコア121と、ロータコア121と一体的に回転するように連結されたロータ軸122と、を有している。本実施形態では、回転電機1は回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコア111には、当該ステータコア111から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部112が形成されるようにコイルが巻装されている。そして、ロータコア121には、永久磁石123が設けられている。また、本実施形態では、回転電機1はインナロータ型の回転電機であるため、ステータコア111よりも径方向Rの内側にロータコア121が配置されている。そして、ロータコア121の内周面に、ロータ軸122が連結されている。
【0019】
ロータ軸122は、第1軸A1回りに回転する回転部材である。ロータ軸122は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成されている。ロータ軸122は、ロータ軸受B1によって回転可能に支持されている。本実施形態では、ロータ軸122は、ロータコア121から軸方向Lの両側に突出するように配置されている。そして、ロータ軸受B1は、ロータ軸122におけるロータコア121から軸方向第1側L1に突出した部分を回転可能に支持する第1ロータ軸受B1aと、ロータ軸122におけるロータコア121から軸方向第2側L2に突出した部分を回転可能に支持する第2ロータ軸受B1bと、を含む。図示の例では、ロータ軸122の軸方向第1側L1の端部が、第1ロータ軸受B1aを介して、ケース2の第1側壁部22に対して回転可能に支持されている。そして、ロータ軸122の軸方向第2側L2の端部が、第2ロータ軸受B1bを介して、ケース2の隔壁部24に対して回転可能に支持されている。
【0020】
また、本実施形態では、ロータ軸122は、その軸方向Lの両端面が開放している。そして、ロータ軸122の内部空間が、油が流動するロータ軸油路122aとして機能する。
【0021】
入力部材3は、駆動伝達機構10の入力要素である。入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有している。
【0022】
入力軸31は、第1軸A1回りに回転する回転部材である。入力軸31は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、入力軸31は、ケース2の隔壁部24を軸方向Lに貫通する貫通孔に挿通されている。そして、入力軸31の軸方向第1側L1の端部が、ロータ軸122の軸方向第2側L2の端部と連結されている。図示の例では、ロータ軸122の径方向Rの内側に入力軸31が位置するように、入力軸31の軸方向第1側L1の端部がロータ軸122の軸方向第2側L2の端部に挿入され、これらの端部同士がスプライン係合によって連結されている。
【0023】
本実施形態では、入力軸31は、第1入力軸受B3a及び第2入力軸受B3bを介して、ケース2に対して回転可能に支持されている。具体的には、入力軸31における、軸方向Lの中心部よりも軸方向第1側L1の部分であって、ロータ軸122との連結部分よりも軸方向第2側L2の部分が、第1入力軸受B3aを介して、ケース2の隔壁部24に対して回転可能に支持されている。そして、入力軸31の軸方向第2側L2の端部が、第2入力軸受B3bを介して、ケース2の第2側壁部23に対して回転可能に支持されている。
【0024】
また、本実施形態では、入力軸31は、その軸方向第2側L2の端面が開放した筒状に形成されている。そして、入力軸31の内部空間が、油が流動する入力軸油路31aとして機能する。
【0025】
入力ギヤ32は、回転電機1からの駆動力をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力軸31と一体的に回転するように、入力軸31に連結されている。本実施形態では、入力ギヤ32は、入力軸31と一体的に形成されている。また、本実施形態では、入力ギヤ32は、第1入力軸受B3aと第2入力軸受B3bとの間に配置されている。
【0026】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路Pにおいて、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置されている。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有している。
【0027】
カウンタ軸41は、第2軸A2回りに回転する回転部材である。カウンタ軸41は、軸方向Lに沿って延在するように形成されている。本実施形態では、カウンタ軸41は、第1カウンタ軸受B4a及び第2カウンタ軸受B4bを介して、ケース2に対して回転可能に支持されている。具体的には、カウンタ軸41の軸方向第1側L1の端部が、第1カウンタ軸受B4aを介して、ケース2の隔壁部24に対して回転可能に支持されている。そして、カウンタ軸41の軸方向第2側L2の端部が、第2カウンタ軸受B4bを介して、ケース2の第2側壁部23に対して回転可能に支持されている。
【0028】
本実施形態では、カウンタ軸41は、その軸方向Lの両端面が開放した筒状に形成されている。そして、カウンタ軸41の内部空間が、油が流動するカウンタ軸油路41aとして機能する。
【0029】
第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合っている。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結されている。本実施形態では、第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41に対してスプライン係合によって連結されている。また、本実施形態では、第1カウンタギヤ42は、第1カウンタ軸受B4aと第2カウンタ軸受B4bとの間であって、第2カウンタギヤ43よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0030】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施形態では、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成されている。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結されている。本実施形態では、第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に形成されている。また、本実施形態では、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタ軸受B4aと第2カウンタ軸受B4bとの間であって、第1カウンタギヤ42よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0031】
差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、第1出力部材61と第2出力部材62とに分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51と、差動ケース52と、ピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ54と、第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56と、を備えている。本実施形態では、一対のピニオンギヤ54、並びに第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、いずれも傘歯車である。
【0032】
差動入力ギヤ51は、差動歯車機構5の入力要素である。差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合っている。差動入力ギヤ51は、差動ケース52と一体的に回転するように、差動ケース52に連結されている。本実施形態では、差動入力ギヤ51の外周縁部が、差動歯車機構5における径方向Rの寸法が最も大きい部分である「最大径部」に相当する。そして、本実施形態では、差動入力ギヤ51に対して軸方向第1側L1に、回転電機1が配置されている。
【0033】
本実施形態では、差動入力ギヤ51は、ケース2の内部に形成された油貯留部2aの油を掻き上げる「掻き上げギヤG」に相当する。差動入力ギヤ51の回転により、油貯留部2aに貯留された油が掻き上げられる。そして、差動入力ギヤ51によって掻き上げられた油は、駆動伝達機構10が備える複数のギヤのギヤ噛み合い部に供給される。本実施形態では、駆動伝達機構10が備える複数のギヤのギヤ噛み合い部は、入力ギヤ32と第1カウンタギヤ42との噛み合い部、第2カウンタギヤ43と差動入力ギヤ51との噛み合い部、一対のピニオンギヤ54と第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56との噛み合い部を含む。
【0034】
差動ケース52は、第3軸A3回りに回転する回転部材である。本実施形態では、差動ケース52は、第1差動軸受B5a及び第2差動軸受B5bを介して、ケース2に対して回転可能に支持されている。具体的には、差動ケース52の軸方向第1側L1の端部が、第1差動軸受B5aを介して、ケース2の隔壁部24に対して回転可能に支持されている。そして、差動ケース52の軸方向第2側L2の端部が、第2差動軸受B5bを介して、ケース2の第2側壁部23に対して回転可能に支持されている。
【0035】
差動ケース52は、中空の部材である。差動ケース52の内部には、ピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ54と、第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56とが収容されている。
【0036】
ピニオンシャフト53は、第3軸A3を基準とした径方向Rに沿って延在している。ピニオンシャフト53は、一対のピニオンギヤ54に挿通され、それらを回転可能に支持している。ピニオンシャフト53は、差動ケース52を貫通するように配置されている。ピニオンシャフト53は、係止部材53aにより差動ケース52に係止され、差動ケース52と一体的に回転する。図示の例では、係止部材53aは、差動ケース52とピニオンシャフト53との双方に挿通される棒状のピンである。
【0037】
一対のピニオンギヤ54は、第3軸A3を基準とした径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態で、ピニオンシャフト53に取り付けられている。一対のピニオンギヤ54は、ピニオンシャフト53を中心として回転(自転)可能、かつ、第3軸A3を中心として回転(公転)可能に構成されている。
【0038】
第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、差動歯車機構5における分配後の回転要素である。第1サイドギヤ55と第2サイドギヤ56とは、互いに軸方向Lに間隔を空けて、ピニオンシャフト53を挟んで対向するように配置されている。第1サイドギヤ55は、第2サイドギヤ56よりも軸方向第1側L1に配置されている。第1サイドギヤ55と第2サイドギヤ56とは、差動ケース52の内部空間において、それぞれ周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、一対のピニオンギヤ54に噛み合っている。第1サイドギヤ55は、第1出力部材61と一体的に回転するように連結されている。一方、第2サイドギヤ56は、第2出力部材62と一体的に回転するように連結されている。
【0039】
第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、車輪Wに駆動連結されている。第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。
【0040】
本実施形態では、第1出力部材61は、第1車軸611と、中継部材612と、を含む。第1車軸611は、軸方向第1側L1の車輪Wに駆動連結されている。中継部材612は、第3軸A3回りに回転する回転部材である。中継部材612は、軸方向Lに延在する軸部材である。中継部材612は、ケース2の隔壁部24を軸方向Lに貫通する貫通孔に挿通されている。中継部材612は、出力軸受B6を介して、ケース2の第1側壁部22に対して回転可能に支持されている。中継部材612の軸方向第1側L1の端部は、ケース2の第1側壁部22を軸方向Lに貫通する貫通孔を通してケース2の外部に露出している。中継部材612の軸方向第1側L1の端部は、第1車軸611と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、中継部材612は、その軸方向第1側L1の端面が開放した筒状に形成されている。そして、中継部材612の内周面と、第1車軸611の軸方向第2側L2の端部の外周面とのそれぞれに、対応するスプラインが形成されており、それらのスプライン同士が係合することにより、中継部材612と第1車軸611とが一体的に回転するように連結されている。一方、中継部材612の軸方向第2側L2の端部は、差動歯車機構5の第1サイドギヤ55と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、中継部材612の軸方向第2側L2の端部の外周面と、第1サイドギヤ55の内周面とのそれぞれに、対応するスプライン形成されており、それらのスプライン同士が係合することにより、中継部材612と第1サイドギヤ55とが一体的に回転するように連結されている。
【0041】
本実施形態では、第2出力部材62は、第2車軸621を含む。第2車軸621は、軸方向第2側L2の車輪Wに駆動連結されている。第2車軸621は、第2サイドギヤ56と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2車軸621の軸方向第1側L1の端部の外周面と、第2サイドギヤ56の内周面とのそれぞれに、対応するスプライン形成されており、それらのスプライン同士が係合することにより、第2車軸621と第2サイドギヤ56とが一体的に回転するように連結されている。
【0042】
図1及び
図3に示すように、車両用駆動装置100は、動力伝達経路Pを伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプ71と、動力伝達経路Pから独立した専用の駆動力源により駆動される第2油圧ポンプ72と、を備えている。第1油圧ポンプ71及び第2油圧ポンプ72のそれぞれは、ケース2内の油貯留部2aに貯留された油を汲み上げ、当該汲み上げた油を吐出するポンプである。
【0043】
本実施形態では、第1油圧ポンプ71は、ケース2に収容されている。また、本実施形態では、第1油圧ポンプ71は、駆動伝達機構10が備える回転部材の回転によって駆動される、いわゆる機械式の油圧ポンプである。そして、第1油圧ポンプ71は、ポンプ入力ギヤ711と、ポンプ駆動軸712と、インナロータ713と、アウタロータ714と、ポンプカバー715と、を備えている。
【0044】
ポンプ入力ギヤ711は、第1油圧ポンプ71の入力要素である。ポンプ入力ギヤ711は、差動ケース52と一体的に回転するように連結されたポンプ駆動ギヤ57に噛み合っている。ポンプ駆動軸712は、ポンプ入力ギヤ711と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、ポンプ駆動軸712の軸方向第2側L2の端部にポンプ入力ギヤ711が配置されている。インナロータ713は、ポンプ駆動軸712と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、ポンプ駆動軸712の軸方向第1側L1の端部にインナロータ713が配置されている。アウタロータ714は、インナロータ713に対して径方向Rの外側に配置されている。アウタロータ714の内周面に形成された内歯は、インナロータ713の外周面に形成された外歯に噛み合っており、インナロータ713の回転に伴ってアウタロータ714が回転する。ポンプカバー715は、インナロータ713及びアウタロータ714を覆うように配置されている。ポンプカバー715は、ポンプ駆動軸712を回転可能に支持している。具体的には、ポンプカバー715を軸方向Lに貫通する貫通孔に、ポンプ駆動軸712が挿通されている。
【0045】
このように、本実施形態では、第1油圧ポンプ71は、差動歯車機構5の差動ケース52の回転により駆動される。差動ケース52の回転速度は、回転電機1の回転速度及びカウンタギヤ機構4の回転速度よりも小さい。そのため、第1油圧ポンプ71が差動ケース52の回転により駆動される構成によれば、第1油圧ポンプ71が回転電機1又はカウンタギヤ機構4により駆動される構成と比較して、第1油圧ポンプ71の回転速度を低く抑えることができる。これにより、第1油圧ポンプ71の高速回転によるエネルギ損失を小さく抑えることができ、延いては、車両用駆動装置100のエネルギ効率を高くすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1油圧ポンプ71は、軸方向Lに沿う軸方向視で、差動歯車機構5と重複する位置に配置されている。具体的には、第1油圧ポンプ71のポンプロータであるインナロータ713及びアウタロータ714が、軸方向視で差動歯車機構5と重複する位置に配置されている。更に、本実施形態では、第1油圧ポンプ71は、差動歯車機構5の差動入力ギヤ51よりも軸方向Lにおける回転電機1の側(軸方向第1側L1)であって、回転電機1の軸方向Lの中央部よりも軸方向Lにおける差動歯車機構5の側(軸方向第2側L2)に配置されている。具体的には、第1油圧ポンプ71を構成する部材(ここでは、ポンプ入力ギヤ711、ポンプ駆動軸712、インナロータ713、アウタロータ714、及びポンプカバー715)が、軸方向Lにおける、差動入力ギヤ51と回転電機1の軸方向Lの中央部との間に配置されている。ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0047】
図3に示すように、本実施形態では、第2油圧ポンプ72は、電動モータ72aにより駆動される電動式の油圧ポンプである。つまり、本実施形態では、電動モータ72aが、動力伝達経路Pから独立した駆動力源に相当する。電動モータ72aとしては、例えば、複数相の交流電力で駆動される交流回転電機を用いることができる。この場合、図示は省略するが、電動モータ72aは、直流電力と交流電力との間で電力変換を行うインバータを介して直流電源に接続されており、インバータを介して電動モータ72aの駆動が制御される。
【0048】
本実施形態では、第2油圧ポンプ72は、ロータ軸122の内周面122dの温度が規定値以下である場合に停止される。
【0049】
図3及び
図4に示すように、車両用駆動装置100は、互いに独立した第1油路91と第2油路92とを備えている。
【0050】
第1油路91は、第1油圧ポンプ71から吐出された油を、ロータ軸122を回転可能に支持するロータ軸受B1に供給する油路である。本実施形態では、第1油路91は、第1油圧ポンプ71から吐出された油を、駆動伝達機構10が備える複数の回転部材を回転可能に支持する複数の軸受に供給する油路を含む。つまり、第1油路91は、ロータ軸122を回転可能に支持する第1ロータ軸受B1a及び第2ロータ軸受B1b、入力軸31を回転可能に支持する第1入力軸受B3a及び第2入力軸受B3b、カウンタ軸41を回転可能に支持する第1カウンタ軸受B4a及び第2カウンタ軸受B4b、差動ケース52を回転可能に支持する第1差動軸受B5a及び第2差動軸受B5b、並びに中継部材612を回転可能に支持する出力軸受B6を潤滑するために、これらの軸受に対して第1油圧ポンプ71から吐出された油を供給する。このように、第1油路91と第1油圧ポンプ71とは、潤滑用の油圧回路を構成している。
【0051】
第2油路92は、第2油圧ポンプ72から吐出された油を、ロータ軸122の内周面122dに供給する油路である。第2油路92と第2油圧ポンプ72とは、回転電機1の冷却用の油圧回路を構成している。このように、第2油路92は、回転電機1の冷却対象部位CPに供給するように構成されている。本実施形態では、冷却対象部位CPは、ロータ軸122の内周面122dに加えて、ステータコア111の外周面111a、及びコイルエンド部112を含む。つまり、本実施形態では、第2油路92は、第2油圧ポンプ72から吐出された油を、ステータコア111の外周面111aに供給する油路、及びコイルエンド部112に供給する油路を含む。
【0052】
以下では、
図3及び
図4を参照して、本実施形態の第1油路91における油の流れについて説明する。なお、
図3及び
図4における実線及び破線の矢印は、油の流れを示している。
【0053】
図3に示すように、第1油圧ポンプ71から吐出された油の一部は、ケース2の周壁部21の内面に沿って、軸方向第1側L1に流動し、出力軸受B6に到達する。また、第1油圧ポンプ71から吐出された油の別の一部は、ケース2の第1側壁部22に形成された潤滑油路22aを通って、第1ロータ軸受B1aに到達する。
【0054】
一方、
図4に示すように、第1油圧ポンプ71から吐出された油の更に別の一部は、軸方向第2側L2に流動し、第1差動軸受B5aに到達する。また、第1油圧ポンプ71から吐出されて軸方向第2側L2に流動した油の一部は、ケース2の第2側壁部23に形成された第1潤滑油路23aと第2潤滑油路23bとのそれぞれに供給される。第1潤滑油路23aに供給された油は、当該第1潤滑油路23aを通って、第2差動軸受B5bに到達する。一方、第2潤滑油路23bに供給された油は、当該第2潤滑油路23bから分岐した、第1分岐油路23cと第2分岐油路23dと第3分岐油路23eとのそれぞれに流入する。
【0055】
第1分岐油路23cは、カウンタ軸41の軸方向第2側L2の開口を介して、カウンタ軸油路41aと連通している。そのため、第1分岐油路23cに流入した油は、当該第1分岐油路23cを通って、カウンタ軸油路41aに供給される。カウンタ軸油路41aに供給された油は、当該カウンタ軸油路41aを軸方向第1側L1に向けて流動し、カウンタ軸41の軸方向第1側L1の開口を介して、カウンタ軸41の外部に流出する。そして、カウンタ軸41の外部に流出した油は、第1カウンタ軸受B4aに到達する。
【0056】
一方、第2分岐油路23dに流入した油は、当該第2分岐油路23dを通って、第2カウンタ軸受B4bに到達する。なお、カウンタ軸油路41aに供給された油の一部も、カウンタ軸41と第2側壁部23との隙間を通って、第2カウンタ軸受B4bに到達する。
【0057】
第3分岐油路23eは、入力軸31の軸方向第2側L2の開口を介して、入力軸油路31aと連通している。そのため、第3分岐油路23eに流入した油は、当該第3分岐油路23eを通って、入力軸油路31aに供給される。
【0058】
入力軸油路31aに供給された油の一部は、当該入力軸油路31aを軸方向第1側L1に向けて流動する。そして、入力軸油路31aの軸方向第1側L1の端部に到達した油は、入力軸31を径方向Rに貫通するように形成された供給油路31bを通って、入力軸31の外部に流出する。ここで、供給油路31bは、第2ロータ軸受B1bと第1入力軸受B3aとケース2と入力軸31とによって囲まれた空間と、入力軸油路31aとを連通するように形成されている。そのため、入力軸31の外部に流出した油は、第2ロータ軸受B1bと第1入力軸受B3aとのそれぞれに到達する。
【0059】
一方、入力軸油路31aに供給された油の残りは、入力軸31と第2側壁部23との隙間を通って、第2入力軸受B3bに到達する。
【0060】
以上のように、本実施形態では、第1油路91は、潤滑油路22aと、第1潤滑油路23aと、第2潤滑油路23bと、第1分岐油路23cと、第2分岐油路23dと、第3分岐油路23eと、カウンタ軸油路41aと、入力軸油路31aと、供給油路31bと、を含む。潤滑油路22aは、「第1側壁部22に形成された油路」に相当する。第1潤滑油路23a、第2潤滑油路23b、第1分岐油路23c、第2分岐油路23d、及び第3分岐油路23eは、「第2側壁部23に形成された油路」に相当する。また、第1潤滑油路23a、第2分岐油路23d、入力軸油路31a、供給油路31b、及びカウンタ軸油路41aは、「第1油圧ポンプ71から吐出された油を、駆動伝達機構10が備える複数の回転部材を回転可能に支持する複数の軸受に供給する油路」に相当する。
【0061】
以下では、
図3を参照して、本実施形態の第2油路92における油の流れについて説明する。
【0062】
図3に示すように、第2油圧ポンプ72から吐出された油は、オイルクーラ73によって冷却される。オイルクーラ73は、例えば、油が流動する配管を備え、当該配管の外部を流動する冷媒(例えば、冷却水、空気等)と配管内の油との間で熱交換を行うことで、油を冷却するように構成されている。このように、本実施形態では、第2油路92には、油を冷却するオイルクーラ73が設けられている。一方、第1油路91には、油を冷却するオイルクーラが設けられていない。
【0063】
オイルクーラ73によって冷却された油は、ケース2の第1側壁部22に形成された冷却油路22bに供給される。冷却油路22bに供給された油は、内側供給油路81aに接続された第1接続油路22cと、外側供給油路82aに接続された第2接続油路22dとのそれぞれに流入する。
【0064】
第1接続油路22cに流入した油は、当該第1接続油路22cを通って、内側供給油路81aに供給される。内側供給油路81aは、内側供給部材81に形成された油路である。内側供給部材81は、回転電機1の径方向Rの内側に配置されている。具体的には、内側供給部材81は、ロータ軸122の径方向Rの内側に配置されている。つまり、内側供給部材81は、ロータ軸油路122aの内部に配置されている。内側供給部材81は、軸方向Lに延在するように形成されている。内側供給部材81は、軸方向第1側L1の端面が開放した筒状に形成されている。そして、内側供給部材81の内部空間が、内側供給油路81aとして機能する。内側供給部材81の軸方向第1側L1の端部は、内側供給油路81aと第1接続油路22cとが連通するように、ケース2の第1側壁部22に固定されている。
【0065】
内側供給油路81aに供給された油は、当該内側供給油路81aを軸方向第2側L2に向けて流動する。そして、内側供給油路81a内の油は、内側供給部材81を径方向Rに貫通するように形成された供給孔81bを通って、内側供給部材81の外部に流出する。供給孔81bは、内側供給油路81aとロータ軸油路122aとを連通するように、内側供給部材81の周方向に間隔を空けて複数配置されている。
【0066】
内側供給部材81の外部に流出した油は、ロータ軸油路122aに供給される。換言すれば、内側供給部材81の外部に流出した油は、ロータ軸油路122aを形成するロータ軸122の内周面122dに供給される。ロータ軸122の内周面122dに供給された油は、ロータ軸122及びロータコア121を介して、永久磁石123との間で熱交換を行うことで、永久磁石123を冷却する。このように、第2油圧ポンプ72から吐出された油が供給される回転電機1の冷却対象部位CPには、ロータ軸122の内周面122dが含まれる。
【0067】
ロータ軸油路122aに供給された油の一部は、ロータ軸122を径方向Rに貫通するように形成された第1供給油路122bと第2供給油路122cとのそれぞれに流入する。ここで、第1供給油路122bは、ロータ軸122の径方向Rに沿う径方向視で、軸方向第1側L1のコイルエンド部112と重複する位置に形成されている。また、第2供給油路122cは、ロータ軸122の径方向Rに沿う径方向視で、軸方向第2側L2のコイルエンド部112と重複する位置に形成されている。そのため、ロータ軸122の回転に伴い、第1供給油路122bと第2供給油路122cとのそれぞれから、対応するコイルエンド部112に向けて油が噴射される。そして、コイルエンド部112に付着した油によってコイルエンド部112が冷却される。このように、第2油圧ポンプ72から吐出された油が供給される回転電機1の冷却対象部位CPには、コイルエンド部112が含まれる。
【0068】
一方、第2接続油路22dに流入した油は、当該第2接続油路22dを通って、外側供給油路82aに供給される。外側供給油路82aは、外側供給部材82に形成された油路である。外側供給部材82は、回転電機1に対して鉛直方向の上側に配置されている。具体的には、外側供給部材82は、コイルエンド部112及びステータコア111における鉛直方向視で外側供給部材82と重複する部分よりも鉛直方向の上側に配置されている。外側供給部材82は、軸方向Lに延在するように形成されている。外側供給部材82は、軸方向第1側L1の端面が開放した筒状に形成されている。そして、外側供給部材82の内部空間が、外側供給油路82aとして機能する。外側供給部材82の軸方向第1側L1の端部は、外側供給油路82aと第2接続油路22dとが連通するように、ケース2の第1側壁部22に支持されている。一方、外側供給部材82の軸方向第2側L2の端部は、ケース2の隔壁部24に支持されている。
【0069】
外側供給油路82aに供給された油は、当該外側供給油路82aを軸方向第2側L2に向けて流動する。そして、外側供給油路82a内の油は、外側供給部材82を径方向Rに貫通するように形成された第1供給孔82b及び第2供給孔82cを通って落下する。
【0070】
第1供給孔82bは、鉛直方向視で、軸方向第1側L1のコイルエンド部112と軸方向第2側L2のコイルエンド部112とに重複するように、軸方向Lの複数箇所(図示の例では、2箇所)に配置されると共に、外側供給部材82の周方向に間隔を空けて複数配置されている。そのため、外側供給油路82a内の油の一部は、第1供給孔82bを通って、コイルエンド部112に滴下される。そして、コイルエンド部112に付着した油によってコイルエンド部112が冷却される。
【0071】
また、第2供給孔82cは、鉛直方向視で、ステータコア111と重複する位置に配置されている。図示の例では、第2供給孔82cは、軸方向Lの複数箇所(図示の例では、2箇所)に配置されると共に、外側供給部材82の周方向に間隔を空けて複数配置されている。そのため、外側供給油路82a内の油の一部は、第2供給孔82cを通って、ステータコア111の外周面111aに滴下される。ステータコア111の外周面111aに滴下された油は、ステータコア111を介して、ステータコア111に巻装されたコイルとの間で熱交換を行うことで、当該コイルを冷却する。このように、第2油圧ポンプ72から吐出された油が供給される回転電機1の冷却対象部位CPには、ステータコア111の外周面111aが含まれる。
【0072】
以上のように、本実施形態では、第2油路92は、冷却油路22bと、第1接続油路22cと、第2接続油路22dと、内側供給油路81aと、供給孔81bと、ロータ軸油路122aと、第1供給油路122bと、第2供給油路122cと、外側供給油路82aと、第1供給孔82bと、第2供給孔82cと、を含む。外側供給油路82a、第1供給孔82b、及び第2供給孔82cは、「第2油圧ポンプ72から吐出された油を、ステータコア111の外周面111aに供給する油路」に相当する。
【0073】
上記のように、第1油路91と第2油路92とは、油貯留部2a以外で互いに独立して設けられている。換言すれば、第1油路91と第2油路92とは、油貯留部2a以外で互いに接続されておらず、分離されている。そのため、車両用駆動装置100では、潤滑用の油圧回路と冷却用の油圧回路とが互いに独立している。これにより、回転電機1の冷却対象部位CPと、複数の軸受B1a,B1b,B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6とのうちのいずれか一方に対する油の供給が不要である場合に、それらの双方に油が供給されることを回避できる。例えば、車両用駆動装置100を搭載した車両が高速で走行中、回転電機1が低負荷である場合には、第2油圧ポンプ72から冷却対象部位CPへの油の供給を停止することができる。その結果、第2油圧ポンプ72の不要な駆動によるエネルギ損失を小さく抑えることができ、延いては、車両用駆動装置100のエネルギ効率を高くすることができる。
【0074】
ところで、一般的に、第2油圧ポンプ72を駆動する電動モータ72aは、車輪Wの駆動用の回転電機1より小型の回転電機であり、回転電機1に比べて出力可能なトルクの最大値が小さい。そのため、油の粘性が高い低温環境では、車両用駆動装置100を搭載した車両の走行開始直後等に、第2油圧ポンプ72が適切に油を汲み上げることができない可能性がある。特に、車両用駆動装置100のエネルギ効率を高めるために、第2油圧ポンプ72用の電動モータ72aとして小型のものを用いている場合に、そのような問題が生じやすい。しかし、通常、油の粘性が高い低温環境では、回転電機1の冷却対象部位CPの温度も低く、冷却対象部位CPを冷却する必要性は低い。そのため、本実施形態のような構成としても、第2油圧ポンプ72が適切に油を汲み上げることができないことによる影響はほとんどない。
【0075】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、駆動伝達機構10が備える複数の回転部材を回転可能に支持する複数の軸受の全てに、第1油路91を通して油が供給される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駆動伝達機構10が備える複数の回転部材を回転可能に支持する複数の軸受の一部又は全部に、第1油路91を通して油が供給されない構成としても良い。
【0076】
(2)上記の実施形態では、第1油路91が、第1側壁部22に形成された油路(潤滑油路22a)と、第2側壁部23に形成された油路(第1潤滑油路23a、第2潤滑油路23b、第1分岐油路23c、第2分岐油路23d、第3分岐油路23e)と、を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1油路91が、第1側壁部22に形成された油路、及び第2側壁部23に形成された油路のいずれか一方のみを含む構成としても良い。或いは、第1油路91が、第1側壁部22に形成された油路、及び第2側壁部23に形成された油路のいずれも含まない構成としても良い。
【0077】
(3)上記の実施形態では、冷却対象部位CPがコイルエンド部112とステータコア111の外周面111aとロータ軸122の内周面122dとを含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、冷却対象部位CPがコイルエンド部112及びステータコア111の外周面111aの一方又は双方を含まない構成としても良い。また、冷却対象部位CPに、例えば、永久磁石123の近傍を通るようにロータコア121の内部に形成された油路を構成する面が含まれていても良い。
【0078】
(4)上記の実施形態では、ロータ軸受B1が、ロータ軸122におけるロータコア121から軸方向第1側L1に突出した部分を回転可能に支持する第1ロータ軸受B1aと、ロータ軸122におけるロータコア121から軸方向第2側L2に突出した部分を回転可能に支持する第2ロータ軸受B1bと、を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1ロータ軸受B1a及び第2ロータ軸受B1bの少なくとも一方が、径方向Rに沿う径方向視でロータ軸122におけるロータコア121と重複する部分を径方向Rの内側から支持する構成としても良い。また、ロータ軸受B1が1つの軸受のみで構成され、或いは3つ以上の軸受を含む構成としても良い。
【0079】
(5)上記の実施形態では、掻き上げギヤGとしての差動入力ギヤ51が掻き上げた油貯留部2aの油が、駆動伝達機構10が備える複数のギヤのギヤ噛み合い部に供給される構成を例として説明した。しかし、当該構成に代えて又は加えて、第1油路91の油がギヤ噛み合い部に供給される構成としても良い。また、掻き上げギヤGが差動入力ギヤ51以外のギヤであっても良い。
【0080】
(6)上記の実施形態では、第1油圧ポンプ71が差動ケース52の回転により駆動される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1油圧ポンプ71が入力軸31の回転により駆動されても良いし、カウンタ軸41の回転により駆動されても良い。
【0081】
(7)上記の実施形態では、差動入力ギヤ51が差動歯車機構5の最大径部である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、差動ケース52の一部が差動歯車機構5の最大径部であっても良い。
【0082】
(8)上記の実施形態では、第1油圧ポンプ71が軸方向Lに沿う軸方向視で差動歯車機構5と重複する位置に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1油圧ポンプ71が軸方向視で差動歯車機構5と重複しない位置に配置されても良い。その場合において、第1油圧ポンプ71が、差動歯車機構5の径方向Rに沿う径方向視で差動歯車機構5と重複する位置に配置された構成としても良い。
【0083】
(9)上記の実施形態では、第1油圧ポンプ71が、差動歯車機構5の差動入力ギヤ51よりも軸方向Lにおける回転電機1の側(軸方向第1側L1)であって、回転電機1の軸方向Lの中央部よりも軸方向Lにおける差動歯車機構5の側(軸方向第2側L2)に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1油圧ポンプ71が差動入力ギヤ51よりも軸方向第2側L2に配置されても良いし、回転電機1の軸方向Lの中央部よりも軸方向第1側L1に配置されても良い。
【0084】
(10)上記の実施形態では、第2油圧ポンプ72が、ロータ軸122の内周面122dの温度が規定値以下である場合に停止される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、回転電機1の冷却対象部位CPの温度が規定値以下である場合に停止される構成としても良い。ここで、「冷却対象部位CPの温度」は、冷却対象部位CPに複数の部位が含まれている場合、それらの平均値、最大値等を採用可能である。また、第2油圧ポンプ72が常に駆動していても良い。この場合において、例えば、回転電機1の冷却対象部位CPの温度が規定値以下であれば、第2油圧ポンプ72からの油の吐出量を少なくするように制御されても良い。
【0085】
(11)上記の実施形態では、第2油路92にはオイルクーラ73が設けられ、第1油路91には油を冷却するオイルクーラが設けられていない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1油路91に油を冷却するオイルクーラが設けられた構成としても良い。なお、第2油路92は回転電機1の冷却対象部位CPを冷却するための油路であるため、少なくとも第2油路92にオイルクーラ73を設けることが好ましい。
【0086】
(12)上記の実施形態では、回転電機1及び入力部材3が第1軸A1上に配置され、カウンタギヤ機構4が第2軸A2上に配置され、差動歯車機構5並びに第1出力部材61及び第2出力部材62が第3軸A3上に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、これらの一部又は全部が共通の軸上に配置された構成としても良い。例えば、回転電機1、入力部材3、カウンタギヤ機構4、差動歯車機構5、並びに第1出力部材61及び第2出力部材62が、同軸に配置された構成としても良い。
【0087】
(13)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0088】
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について説明する。
【0089】
車両用駆動装置(100)は、
ステータコア(111)、前記ステータコア(111)に対して回転可能に支持されたロータコア(121)、及び前記ロータコア(121)と一体的に回転するように連結された筒状のロータ軸(122)を有し、車輪(W)の駆動力源となる回転電機(1)と、
前記ロータ軸(122)と前記車輪(W)とを結ぶ動力伝達経路(P)に設けられた駆動伝達機構(10)と、
前記動力伝達経路(P)を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプ(71)と、
前記動力伝達経路(P)から独立した駆動力源(72a)により駆動される第2油圧ポンプ(72)と、
前記第1油圧ポンプ(71)から吐出された油を、前記ロータ軸(122)を回転可能に支持するロータ軸受(B1)に供給する第1油路(91)と、
前記第2油圧ポンプ(72)から吐出された油を、前記ロータ軸(122)の内周面(122d)に供給する第2油路(92)と、を備えている。
【0090】
この構成によれば、回転電機(1)のロータ軸(122)を回転可能に支持するロータ軸受(B1)に油を供給する潤滑用の油圧回路として第1油路(91)及び第1油圧ポンプ(71)が設けられ、ロータ軸(122)の内周面(122d)に油を供給する冷却用の油圧回路として第2油路(92)及び第2油圧ポンプ(72)が設けられている。これにより、ロータ軸受(B1)の潤滑とロータ軸(122)の内周面(122d)の冷却とを独立して行うことができる。そのため、車両の停止中である場合等、ロータ軸受(B1)の潤滑が不要である場合には、第1油圧ポンプ(71)からロータ軸受(B1)への油の供給を停止し、回転電機(1)の温度が低い場合等、ロータ軸(122)の内周面(122d)の冷却が不要である場合には、第2油圧ポンプ(72)からロータ軸(122)の内周面(122d)への油の供給を停止することが可能となる。つまり、ロータ軸(122)の内周面(122d)とロータ軸受(B1)とのうちのいずれか一方に対する油の供給が不要である場合に、それらの双方に油が供給されることを回避できる。その結果、不要な油圧ポンプの駆動によるエネルギ損失を小さく抑えることができ、延いては、車両用駆動装置(100)のエネルギ効率を高くすることができる。
【0091】
ここで、前記第1油路(91)は、前記第1油圧ポンプ(71)から吐出された油を、前記駆動伝達機構(10)が備える複数の回転部材(31,41,52,612)を回転可能に支持する複数の軸受(B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6)に供給する油路(31a,31b,41a,23a,23d)を含むと好適である。
【0092】
この構成によれば、車両の走行中に回転する複数の回転部材(31,41,52,612)を回転可能に支持する複数の軸受(B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6)に対して、車両の走行中に油を供給することができる。つまり、複数の軸受(B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6)の潤滑が必要な場合に、それらを適切に潤滑することができる。一方で、車両の停止中である場合等、複数の軸受(B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6)の潤滑が不要である場合には、それらに対する油の供給を停止することができる。したがって、不要な油圧ポンプの駆動によるエネルギ損失を更に小さく抑えることができる。
【0093】
また、前記回転電機(1)及び前記駆動伝達機構(10)を収容するケース(2)を更に備え、
前記ケース(2)は、前記回転電機(1)及び前記駆動伝達機構(10)の径方向(R)の外側を囲む筒状に形成された周壁部(21)と、前記周壁部(21)の軸方向(L)の一方側の開口を閉塞するように配置された第1側壁部(22)と、前記周壁部(21)の前記軸方向(L)の他方側の開口を閉塞するように配置された第2側壁部(23)と、を備え、
前記第1油路(91)は、前記第1側壁部(22)に形成された油路(22a)と、前記第2側壁部(23)に形成された油路(23a,23b,23c,23d,23e)と、を含むと好適である。
【0094】
この構成によれば、ロータ軸受(B1)を含む潤滑対象が、ケース(2)の内部における軸方向(L)の両側領域に配置されている構成であっても、第1油路(91)から潤滑対象に対して油を供給することが容易となる。
【0095】
また、前記第2油路(92)は、前記第2油圧ポンプ(72)から吐出された油を、前記ステータコア(111)の外周面(111a)に供給する油路(82a,82b,82c)を含むと好適である。
【0096】
この構成によれば、ロータ軸(122)の内周面(122d)に加えて、ステータコア(111)の外周面(111a)に対しても、第2油路(92)から油が供給される。つまり、回転電機(1)が径方向(R)の内側と外側との双方から冷却される。したがって、回転電機(1)の冷却が必要な場合に、回転電機(1)を効率的に冷却することができる。
【0097】
また、前記ロータ軸(122)は、前記ロータコア(121)から軸方向(L)の両側に突出するように配置され、
前記ロータ軸受(B1)は、前記ロータ軸(122)における前記ロータコア(121)から前記軸方向(L)の一方側(L1)に突出した部分を回転可能に支持する第1ロータ軸受(B1a)と、前記ロータ軸(122)における前記ロータコア(121)から前記軸方向(L)の他方側(L2)に突出した部分を回転可能に支持する第2ロータ軸受(B1b)と、を含むと好適である。
【0098】
この構成によれば、軸方向(L)に比較的大きく離れた2箇所で、ロータ軸(122)が第1ロータ軸受(B1a)及び第2ロータ軸受(B1b)によって回転可能に支持されている。そして、車両の走行中には、第1油路(91)から第1ロータ軸受(B1a)及び第2ロータ軸受(B1b)の双方に油が供給される。このように、本構成によれば、ロータ軸(122)を第1ロータ軸受(B1a)及び第2ロータ軸受(B1b)によって適切に支持しつつ、それらの双方を必要に応じて適切に潤滑することができる。
【0099】
また、油を貯留する油貯留部(2a)が内部に形成され、前記回転電機(1)及び前記駆動伝達機構(10)を収容するケース(2)を更に備え、
前記駆動伝達機構(10)が備える複数のギヤ(32,42,43,51,54,55,56)のギヤ噛み合い部に、前記第1油路(91)の油、及び、複数の前記ギヤ(32,42,43,51,54,55,56)に含まれる掻き上げギヤ(G)によって掻き上げられた前記油貯留部(2a)の油の少なくとも一方が供給されると好適である。
【0100】
この構成によれば、車両の走行中に、第1油圧ポンプ(71)から吐出された油が流動する第1油路(91)、及び、油貯留部(2a)に貯留された油を掻き上げる掻き上げギヤ(G)の少なくとも一方から、駆動伝達機構(10)が備える複数のギヤ(32,42,43,51,54,55,56)のギヤ噛み合い部に油が供給される。そのため、ギヤ噛み合い部の潤滑が必要な場合に、ギヤ噛み合い部を適切に潤滑することができる。一方で、車両の停止中である場合等、ギヤ噛み合い部の潤滑が不要である場合には、ギヤ噛み合い部に対する油の供給を停止することができる。したがって、ギヤ噛み合い部への不要な油の供給によるエネルギ損失を小さく抑えることができる。
【0101】
また、前記駆動伝達機構(10)は、前記車輪(W)に駆動連結された出力部材(61,62)を一対備えると共に、前記回転電機(1)の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材(61,62)に分配する差動歯車機構(5)を備え、
前記差動歯車機構(5)は、中空の差動ケース(52)を備え、
前記第1油圧ポンプ(71)が前記差動ケース(52)の回転により駆動されると好適である。
【0102】
この構成によれば、車輪(W)の回転中、つまり、車両の走行中、差動ケース(52)が常に回転する。そのため、車両の走行中は、常に第1油圧ポンプ(71)が駆動した状態となる。これにより、車両の走行中、第1油路(91)からロータ軸受(B1)に対して油を供給し、当該ロータ軸受(B1)を適切に潤滑することができる。したがって、車両の走行中にロータ軸受(B1)の潤滑が不足することを回避することができる。
【0103】
また、前記駆動伝達機構(10)は、前記車輪(W)に駆動連結された出力部材(61,62)を一対備えると共に、前記回転電機(1)の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材(61,62)に分配する差動歯車機構(5)を備え、
前記出力部材(61,62)の軸方向(L)及び径方向(R)を基準として、
前記回転電機(1)は、前記差動歯車機構(5)における前記径方向(R)の寸法が最も大きい部分である最大径部(51)に対して前記軸方向(L)の一方側(L1)に配置され、
前記第1油圧ポンプ(71)は、前記軸方向(L)に沿う軸方向視で、前記差動歯車機構(5)と重複するように配置されていると共に、前記差動歯車機構(5)の前記最大径部(51)よりも前記軸方向(L)における前記回転電機(1)の側であって、前記回転電機(1)の前記軸方向(L)の中央部よりも前記軸方向(L)における前記差動歯車機構(5)の側に配置されていると好適である。
【0104】
この構成によれば、軸方向視で差動歯車機構(5)と重複するスペースを利用して、第1油圧ポンプ(71)を配置することができる。これにより、第1油圧ポンプ(71)の配置による車両用駆動装置(100)の径方向(R)への大型化を抑制することができる。
また、本構成によれば、第1油圧ポンプ(71)は、差動歯車機構(5)の最大径部(51)よりも軸方向(L)における回転電機(1)の側であって、回転電機(1)の軸方向(L)の中央部よりも軸方向(L)における差動歯車機構(5)の側に配置されている。つまり、第1油圧ポンプ(71)は、軸方向(L)にずらして配置された回転電機(1)と差動歯車機構(5)の最大径部(51)との間の、車両用駆動装置(100)の中央領域に配置されている。これにより、ロータ軸受(B1)に対して油を供給する第1油路(91)の軸方向(L)の延在距離を小さく抑えることができる。したがって、第1油路(91)をロータ軸受(B1)に対して適切に油を供給し易い構造とすることができる。
【0105】
また、前記第2油圧ポンプ(72)は、前記ロータ軸(122)の前記内周面(122d)の温度が規定値以下である場合に停止されると好適である。
【0106】
この構成によれば、ロータ軸(122)の内周面(122d)の冷却が不要である場合に、第2油圧ポンプ(72)を適切に停止することができる。これにより、不要な第2油圧ポンプ(72)の駆動によるエネルギ損失を小さく抑えることができ、延いては、車両用駆動装置(100)のエネルギ効率を高くすることができる。
【0107】
また、前記第2油路(92)には、油を冷却するオイルクーラ(73)が設けられ、
前記第1油路(91)には、前記オイルクーラ(73)が設けられていないと好適である。
【0108】
この構成によれば、第2油路(92)から回転電機(1)の冷却対象部位(CP)に供給される油を、オイルクーラ(73)によって適切に冷却することができる。したがって、回転電機(1)の冷却対象部位(CP)を効果的に冷却することができる。
一方、ロータ軸受(B1)の潤滑のために供給される油については、ロータ軸(122)の内周面(122d)に供給される油と比較して、低温であることへの要求は低い。そこで、本構成によれば、複数の軸受(B1a,B1b,B3a,B3b,B4a,B4b,B5a,B5b,B6)への油の供給を行う第1油路(91)にオイルクーラ(73)が設けられていないことで、第1油路(91)を流動する油の圧力損失を小さくすることができる。これにより、第1油圧ポンプ(71)の駆動に要するエネルギを小さく抑えることができるため、車両用駆動装置(100)のエネルギ効率を高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示に係る技術は、車輪の駆動力源となる回転電機と、回転電機と車輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構と、動力伝達経路を伝わる駆動力により駆動される第1油圧ポンプと、動力伝達経路から独立した専用の駆動力源により駆動される第2油圧ポンプと、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
100 :車両用駆動装置
1 :回転電機
122 :ロータ軸
10 :駆動伝達機構
61 :第1出力部材
62 :第2出力部材
71 :第1油圧ポンプ
72 :第2油圧ポンプ
91 :第1油路
92 :第2油路
B1 :ロータ軸受
P :動力伝達経路
W :車輪
L :軸方向
R :径方向