(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】クリーナ
(51)【国際特許分類】
A47L 5/24 20060101AFI20230502BHJP
A47L 9/32 20060101ALI20230502BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20230502BHJP
A47L 9/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
A47L5/24 A
A47L9/32 Z
A47L9/28 U
A47L9/16
(21)【出願番号】P 2022199095
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2022167268の分割
【原出願日】2020-06-26
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019132606
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】一橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】田上 寛之
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065085(WO,A1)
【文献】特開2006-043203(JP,A)
【文献】特開2016-129564(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109820452(CN,A)
【文献】中国実用新案第205514361(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 5/24 - 5/28
A47L 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動力を受けて回転するファンと、
前記モータ及び前記ファンを収容し、吸気口と、被取付部と、ハンドルと、を有する本体ハウジングと、
前記本体ハウジン
グに着脱可能に取付けられ
る電池パックと、
前記吸気口を覆うようにして前記本体ハウジングの前記被取付部に着脱可能なサイクロンユニットと、を有し、
前記サイクロンユニットは、
前記被取付部に取り付けられる取付部と、
外部から空気流が進入する吸入口を前端に有し、前記吸入口から前記取付部側へ前後方向に延びる接続管と、
前記取付部を有し、前記接続管が接続される、筒状の本体ケース部と、からなり、
前記本体ケース部は、
前記接続管と連通する流入口を有し、前記流入口よりも前記吸入口側へ前後方向に延びる形状を有する旋回室と、
前記旋回室内に設けられ、中心軸が前後方向に延びる筒形状で、前記流入口から前記旋回室内に流入した空気流が前記本体ハウジングに向かって通過する内筒部と、
を有し、前記旋回室内部において空気流が前記内筒部の周囲を旋回することで粉塵を遠心分離して前記旋回室内に蓄積し、
前記ハンドルは、前記ファンの回転軸線よりも上方に位置し、
前記接続管は、前記回転軸線よりも上方に位置し、前後方向視において前記取付部の範囲と重なり、
前記内筒部は、前記中心軸が前記回転軸線よりも下方に位置するように配置されることを特徴とするクリーナ。
【請求項2】
前記電池パックは、前後方向における位置が前記ハンドルと重なるように、前記ハンドルよりも下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のクリーナ。
【請求項3】
前記電池パックは、上下方向における位置が前記旋回室と重なるように、前記接続管よりも下方に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のクリーナ。
【請求項4】
前記電池パックは、前記本体ハウジングに対して前方にスライドすることで前記本体ハウジングに装着され、前記本体ハウジングに対して後方にスライドすることで前記本体ハウジングから取り外されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のクリーナ。
【請求項5】
前記サイクロンユニットを前記本体ハウジングから取り外したときに、前記内筒部は前記旋回室内に設けられた状態を維持することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のクリーナ。
【請求項6】
前記ハンドルの上側に、前記モータのオンオフを切り替えるスイッチパネルが設けられることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のクリーナ。
【請求項7】
前記旋回室は、前記接続管の軸線方向視において前
記取付部の範囲内に位置することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載
のクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯可能な小型のクリーナに関し、複数の集塵ユニットを着脱可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
電池パックを用いたコードレス式の小型のクリーナが広く用いられている。従来の小型軽量のハンディクリーナは、例えば特許文献1に記載され、全体の筐体が筒状に形成され、筒状の長手方向中心線(軸線)の一方側に開口(吸込口)を有するダストケースが取り付けられ、長手方向の反対側にハンドル部を有し、モータとファンを収容する本体ハウジングが設けられる。ダストケースの内部には、紙パック式のフィルタや、軸線方向に延びる筒状のフィルタ等が設けられ、ファンの吸引力によってダストケース内に進入した塵埃は、フィルタによって捕集される。ダストケースは、着脱機構によって本体ハウジングに固定される。着脱機構の一例としては、ダストケースを軸線の周方向に一定回転角だけ、例えば約120度程度回動させることで、本体ハウジングに取り付けるものがある。
【0003】
一方、小型のクリーナにおいて、モータの回転によって生ずる空気流によって、吸引口から粉塵混じりの空気を円筒状の旋回室の外周側から接線方向に向けて吸い込み、旋回室内にて形成される強力な旋回流によって空気中に含まれる粉塵を遠心分離する、いわゆるサイクロン方式のクリーナも普及してきた。サイクロン方式のクリーナは、本体ハウジングの先端に円柱状の内部空間(サイクロン空間)を有するダストケースを装着する。ダストケースの内部に開口(吸込口)から粉塵混じりの空気を吸い込み、この吸い込まれた空気を円柱空間内において周方向の旋回流とし、旋回流による遠心力によって粉塵と空気を分離する。吸い込まれた粉塵は、旋回流によってダストケースの外壁内側に衝突して外壁内面に沿って落下して外筒の底部に移動する。旋回室の軸心付近の粉塵と分離された空気は、排気筒(内筒)を介して軸方向に排出されることにより遠心力による連続的な集塵を可能とする。このようなサイクロン方式のクリーナとして特許文献2の技術が知られている。特許文献2では、吸入空気を接線方向に旋回室内に導き、旋回室内にてトルネード状の旋回流を発生させる。旋回室には、軸方向の外側と内側を連通させる排気管が設けられ、排気管の外周面の一部に設けられた開口から空気を吸引するようにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-67664号公報
【文献】国際公開2019/065085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のダストケース式の小型のクリーナは、軽量かつ簡易な構造であるというメリットを有する一方、フィルタ外周に塵埃が蓄積するため、塵埃の多い環境下での作業の継続と共にフィルタの目づまりがおきやすい。また、ゴミ捨て時にはフィルタの表面についた粉塵を落とさねばならず、その作業が煩雑であるというデメリットがあった。これらのデメリットを解消するために、従来のダストケース式の小型のクリーナに別体式のサイクロンユニットを追加する構成実現の要望があったが、従来のダストケース式の小型のクリーナの先端に、サイクロンユニットを設けると、製品が大きくなる上に、全体重量が増加してしまうので、携帯性、作業性を損なうことになる。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、作業に応じてフィルタで吸引する従来型のクリーナと、サイクロン方式のクリーナを使い分けることを可能とした携帯型のクリーナを提供することにある。本発明の他の目的は、複数の集塵ユニットを選択して装着可能な取付部を有する携帯型のクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。本発明の一つの特徴によれば、モータと、モータにより駆動されるファンと、前後方向に延びる筒形状であって、モータ及びファンを収容し、ファンによる空気流が内部に進入するための吸気口を有する本体ハウジングと、吸気口を覆うようにして本体ハウジングに着脱可能な集塵ユニットを有するクリーナにおいて、集塵ユニットとして、(1)吸気口を覆うように本体ハウジングに取付け可能であり、筒形状を有する旋回室と、旋回室の側壁に設けられて内外を連通するとともに、旋回室内部へ進入する空気流を旋回室の中心軸を中心とした周方向に指向させる流入口と、を有し、空気流を旋回室内で周方向に回転させることで粉塵を遠心分離するようにした第一の集塵ユニットと、(2)粉塵混じりの空気を吸い込むための吸込口を有し、吸込口から吸気口に至る前後方向に延びる筒形状の集塵室を有し、集塵室内を流れる空気流の途中にフィルタを配置することにより空気流の遠心力を用いずに集塵を行うようにした第二の集塵ユニットとを、本体ハウジングに対して択一的に着脱可能とした。本体ハウジングの吸気口の周囲には、同一の着脱操作で第一及び第二の集塵ユニットのいずれも取付け可能とする被取付部を有し、第一及び第二の集塵ユニットには、被取付部に装着可能な取付部が形成され、第一及び第二の集塵ユニットの取付部がそれぞれ共通の形状とされる。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、第一及び第二の集塵ユニットは、それぞれを本体ハウジングに対して相対回転させることで着脱可能である。第一の集塵ユニットはサイクロン方式であり、第一の集塵ユニットはサイクロン方式であり、旋回室を形成するダストケースと、ダストケースに装着されるフィルタを含んで構成され、ダストケースは流入口が設けられる接続管を含み、接続管から旋回室内部に吸気される塵埃まじりの空気を、旋回室内で回転させる。また、第一の集塵ユニットにおいて、円筒状の旋回室の中心軸B1を、着脱操作における回転動作の中心軸A1に対してA1の径方向上側にオフセットさせ、中心軸A1に対して旋回室の中心軸B1から反対となる下側に接続管を配置するようにした。ハンドルは、ファンの回転軸線よりも上方に位置し、接続管は回転軸線よりも上方に位置し、前後方向視において取付部の範囲と重なるように配置される。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、第一の集塵ユニットのダストケースは、合成樹脂の一体成形で製造され、接続管を回転動作における被取付部の回転範囲より径方向外に突出するように形成した。また、第一の集塵ユニットのフィルタは、本体ハウジングの吸気口を覆うように位置づけられ、フィルタおよびダストケースのそれぞれに、本体ハウジングへの取り付け時にお互いに相対回転不可能とする規制手段を設け、フィルタには、吸気口から本体ハウジング側に円筒状の突出部を設けた。このように構成することにより、第一の集塵ユニットは、ダストケースの着脱操作によってフィルタも本体ハウジングから同時に取り外し可能となった。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、第二の集塵ユニットは、吸込口を有しフィルタを収容すると共に粉塵を溜めるダストケースを含み、吸込口から集塵ユニット内に吸気された塵埃をフィルタのみで濾過する、従来型の濾過方式とした。ここで用いるフィルタは、頻繁な交換が不要な網状のフィルタ等であっても良いし、頻繁な交換を前提とする紙パック方式であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クリーナの本体ハウジングに、サイクロン式の集塵ユニットを取り付けることができるので、ユーザは作業に応じて従来型のクリーナと、サイクロン方式のクリーナを使い分けることができるようになった。特に、従来型のクリーナを保有するユーザは、サイクロン方式の集塵ユニットを買い増すことでサイクロン方式のクリーナへ容易に切り替えることができる。また、いずれの集塵ユニットも本体ハウジングへの取付方法が同じであるので、ユーザにとっては使いやすいクリーナを実現できた。さらに、サイクロン方式の実現に当たって、従来型のダストケース式のクリーナに別体式のサイクロン集塵ユニットを挿入する方式ではなくて、集塵ユニット自体をフィルタ濾過方式の集塵ユニットからサイクロン集塵ユニットへと取り替えるようにしたので、小型軽量のサイクロン方式のクリーナを実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係るサイクロンクリーナ1の側面図である。
【
図2】本実施例に係るサイクロンクリーナ1の鉛直断面図である。
【
図4】本実施例に係るサイクロンクリーナ1のサイクロンユニット50を取り外した状態の展開図である。
【
図5】本実施例に係るサイクロンクリーナ1の本体ハウジング10の斜視図である。
【
図6】
図1のサイクロンユニット50の縦断面図である。
【
図8】
図4のフィルタホルダ70とフィルタ80の展開斜視図である。
【
図9】
図4のフィルタホルダ70にフィルタ80を装着した状態の側面図である。
【
図10】
図4のフィルタホルダ70の背面図である。
【
図11】
図1のサイクロンユニット50の背面図である。
【
図12】
図1のサイクロンユニット50の本体ハウジング10への取付方法を説明する図であって、
図1のB-B断面図である。
【
図13】
図1のサイクロンユニット50の本体ハウジング10への別の取付方法を説明するための図である。
【
図14】フィルタ濾過方式のクリーナ101の斜視図である(ダストケース151を取り外した状態)。
【
図15】フィルタ濾過方式のクリーナ101の縦断面図である。
【
図16】本発明の変形例に係るサイクロンユニット50Aを取り付けたサイクロンクリーナ1Aの側面図である。
【
図17】2段式サイクロンクリーナ201の側面図である。
【
図18】2段式サイクロンクリーナ201の鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係るサイクロンクリーナ1の側面図である。サイクロンクリーナ1は、本体ハウジング10とサイクロンユニット50と電池パック40によって構成される。サイクロンユニット50は本体ハウジング10に対して装着又は取り外しが可能である。本体ハウジング10は、その内部に後述するモータやファンを収容すると共に、作業者が片手で把持するのに好適なようにハンドル部14が形成される。本体ハウジング10のハンドル部14の下側には、作業者が手を入れるための中空部15が形成される。本実施例においては、本体ハウジング10の形状は、サイクロンユニット50の装着機構(
図5で後述する被取付部30)の形状を除いて任意であり、作業者が持ちながら作業を行うことができる形状であれば、
図1に示す形状だけでなくてそれ以外の形状であっても良い。
【0015】
本体ハウジング10の下側には電池パック40が装着される。電池パック40は二次電池たるリチウムイオンセルを複数本収容したものであり、電動工具等で広く用いられるものを流用できる。ここでは電池パック40として定格18Vのものを利用するが、電池パック40の電圧や、使用する二次電池の形状、電池パック40の外観形状等は任意である。電池パック40は
図1の状態から、左右に位置するラッチボタン41を押しながら本体ハウジング10に対して後方側にスライドさせることで、本体ハウジング10から取り外しできる。電池パック40の前側には、電池パック40の前面を覆うような電池パックガード19が設けられる。電池パック40を充電するには図示しない外部充電器を用いて行う。充電が完了した電池パック40は、後方から前方側にスライドさせるようにして本体ハウジング10に装着することができる。
【0016】
本体ハウジング10の前方側には、本体ハウジング10に対して着脱可能に構成されたサイクロンユニット50が装着される。サイクロンユニット50は、接続部62の前方側に図示しない延長用のパイプが接続され、そのパイプの先端には床用ノズル等が接続される。サイクロンユニット50は、本体ハウジング10の内部に収容されたファン(
図2で後述)によって強い空気流(吸引風)を発生させることによって、先端の図示しないノズルや延長パイプを介して、粉塵混じりの空気流を、ダストケース51の内部に吸引する。ダストケース51には吸入口60aを介して内部に粉塵混じりの空気を吸いこまれ、外筒部52で画定される円筒形の旋回室(符号は後述の
図2を参照)の内部に案内される。ダストケース51の外筒部52の径方向の側方(ここでは上方)には、外筒部52と平行方向に延びる軸線を有する接続管60が形成される。接続管60は、一端側(前方側)が、図示しない延長パイプを接続するための吸入口60aとなり、他端側、即ち吸入口60aと反対側の端部は閉鎖された壁面(湾曲部60b)となる。
【0017】
接続管60の吸入口60aの近傍には、内径が段差状にやや太くされた接続部62が形成される。長手方向にみて接続管60の後方の内壁部分は湾曲するように形成され、湾曲された部分から流入部66に接続される。流入部66は、旋回室53の側壁に設けられて旋回室53の内外を連通するとともに、旋回室53内部へ進入する空気流を旋回室53の中心軸B1を中心とした周方向に指向させるものである。本体ハウジング10とサイクロンユニット50は、分割面によって前後に接続される。吸入口60aから吸引された空気は、分割面をサイクロンユニット50側から本体ハウジング10側に流れ、モータ収容部12の内部空間を通って本体ハウジングの左右両側に設けられた第一の排気口28と第二の排気口29から外部に排出される。
【0018】
図2は本実施例に係るサイクロンクリーナ1の鉛直断面図である。本体ハウジング10は合成樹脂の成形により構成され、鉛直方向に分割面を有する左右2分割形式とされる。本体ハウジング10の左右の分割部品は、複数のネジ穴(図では見えない)やネジボス26a~26dを有して、図示しないネジ等の固定要素によって固定される。一方、サイクロンユニット50の外郭(外側部分たるダストケース51)は合成樹脂の一体成形によって製造され、鉛直方向に分割面を持たない構造である。サイクロンユニット50は、本体ハウジング10に対して位置合わせをして軸線A1方向後方に押しつけた後に、軸線A1を中心に所定角度だけ回すことによって装着できる。サイクロンユニット50の取り外し時には、取り付け時とは逆の操作をすれば良い。
【0019】
サイクロンユニット50の吸入口60aから吸い込まれた空気は、点線矢印AIR1に示すように、接続管60の内部の接続通路61を軸方向後方に流れ、流入部66から外筒部52の筒内に流入する。接続管60と近接する部分は、流入部66によって接続されている。外筒部52の内側には、円筒形のフィルタ80を外側にフィルタホルダ70が設けられ、流入した空気AIR1は軸線B1の接線方向に向けて旋回室53内に導かれ、旋回室53内にてトルネード状の旋回流となり、底面52a側に移動しながら回転する。このトルネード状の旋回流(空気流)を旋回室53内で発生させることによって空気と共に吸い込まれた粉塵を遠心分離する。フィルタ80は径方向外側から内側に空気が通過でき、空気よりも比重が大きく遠心力によって分離された粉塵は、旋回室53の底面52a側に移動して蓄積される。ここで、フィルタホルダ70はフィルタ80を保持するフィルタ枠75と、フィルタ枠75の後方側に接続される円板状の閉鎖壁71を含んで構成される。本実施例では、フィルタホルダ70とフィルタ80の結合体が、請求項で規定する広義の“フィルタ”を構成する。フィルタホルダ70はダストケース51に対して着脱可能に構成される。フィルタ80の外周側から内周側に、底面外部から底面内部に通過した空気は、吸気室16に流れて、吸気口17から本体ハウジング10の内部に到達する。
【0020】
ダストケース51の後端部は、円筒部56と、円筒部56の内周面に形成される凸部(
図4にて後述)により構成される取付部55が形成される。ダストケース51の外筒部52と接続管60と取付部55は、合成樹脂の成形によって一体構造で製造される。この一体成形を容易とするために、被取付部30の回転中心(軸線A1と一致)と、旋回室53の回転中心(サイクロン軸線、フィルタ80の軸線B1と同じ)がオフセットされた形状とされる。接続管60の中心軸線C1は、軸線B1に対して平行、又は、ほぼ平行に形成される。このようにそれぞれの軸線A1、B1、C1が径方向にずれるように配置されることで、ダストケース51の一体成形後の強度を向上させることができる(この原理については、
図7にて後述する)。
【0021】
本体ハウジング10の右側の内側部分と、左側の内側部分による内部空間で、吸気口17から排気口28、29に至る空気流AIR2で示す風路が形成される。ここでは排気口29付近から排気口28付近に至る空気の流れの点線矢印の図示を省略している。本体ハウジング10の後方側には、作業者の人差し指から小指までの4本の指を挿入させるために左側から右側までを貫通させた中空部15が形成され、側面視で本体ハウジング10を見ると90度回転させた略D字状の形状となる。D字の空洞部分(中空部15)を隔てた一方側(上側)は作業者により把持されるハンドル部14となり、ハンドル部14を除く本体ハウジング10の残り部分がモータ収容部12となる。ハンドル部14の後端部分と、モータ収容部12の後端付近は接続され、モータ収容部12の内側の内部空間13からハンドル部14の内側空間は連通するように形成される。よって、空気流AIR2は、第二の排気口29からすべて排出されるのではなく、第二の排気口29から排出されない空気がハンドル部14の内部空間を介して前方側に流れて、第一の排気口28から外部に排出される。ハンドル部14の内側前方側には、仕切板27が形成され、仕切板27によってハンドル部14の内部空間とモータ21の収容する空間は隔離される。
【0022】
本体ハウジング10の軸線A1に沿ってモータ21が収容される。モータ21の出力軸(図示省略)は、サイクロンユニット50の取付時の回転軸線(取付軸線)A1に沿った方向となるように配置される。モータ21は、金属製のモータケース内にロータを収容した直流モータである。ここではモータ21の内部構造の図示を省略しているが、モータ21の全体がほぼ円筒形をなした磁性材、例えば2~3ミリ厚の鉄材で覆われ、そのケースがステータの一部を兼ねる。モータ21の前端付近の外周部は、円筒形の内筒部を有するモータホルダ24によって保持される。モータホルダ24は、上側、下側の4箇所において本体ハウジング10に接続されるもので、モータ21を収容する内筒部とその前面の円板状の壁面を有し、壁面と外筒部との間に、放射状に延びる数本のリブが形成され、リブの間に軸方向に連通する開口が形成される。ファン22の前方にはファンガイド23が配置される。ファンガイド23とモータホルダ24によって画定される空間がファン収容室25となる。ファンガイド23の軸線A1に近い部分は、前側に開口する吸気口17が形成される。また、吸気口17には、内部に異物が入らないようにガードする開口ガード18が形成される。ファン22はモータ21の出力軸(図示せず)に固定され、モータ21の回転に同期して軸線A1を中心に回転する。ファン22は遠心ファンであり、軸線A1に沿って前方側から風を吸引して、ファン22の径方向外側に排出する。
【0023】
図3は
図1のA-A部の断面図である。接続管60は図示しない延長パイプに合わせた内径を有し、外筒部52は接続管60よりも大きな外径を有する。外筒部52の内側には、フィルタ80を保持するためのフィルタホルダ70が配置される。フィルタホルダ70と外筒部52は、軸線B1を中心に同軸に配置され、フィルタ80と外筒部52の内壁面の間が、空気AIR1が回転する旋回室53となる。接続管60の後方端部(
図2の湾曲部60b)から旋回室53には流入通路67が形成される。流入通路67は、接続開口66aと流入口66bが、軸線B1及びC1を通る鉛直面から左側半分だけに形成され、接続管60から旋回室53に流入する空気AIR1が、旋回室53の接線方向に流れるように向けられ、その結果、空気AIR1は旋回室53内でフィルタ80の周囲を旋回しながら底面52a(
図2参照)方向に近づくというトルネード状の流れとなる。接続開口66aから吸引される空気は、連続的に旋回室53の内部に流入するため、その分の空気がフィルタ80の外側から内側に吸引され、フィルタ枠75の内側空間から開口部77を通過して軸線B1に沿ってファン22側に流れ、本体ハウジング10とサイクロンユニット50の間に形成される吸気室16(
図2参照)に流入する。ダストケース51は合成樹脂の一体成形とされるが、流入通路67部分の外側にて、接続部62の壁面(62a、62b)が接続管60と外筒部52の外周面を連結するように形成されることにより、双方の強度を高めている。
【0024】
図4は本実施例に係るサイクロンクリーナ1のサイクロンユニット50を取り外した状態の展開図である。サイクロンユニット50は、ダストケース51とフィルタホルダ70の2つの主要パーツにより構成される。フィルタホルダ70は合成樹脂の一体成形とされ、フィルタホルダ70にフィルタ80が装着される。ダストケース51の後方側が円形の開口になっており、その開口の周囲には円筒状の取付部55が形成される。取付部55は本体ハウジング10の被取付部30と嵌合される部分であり、内周面の周方向の二カ所に、円筒部56の内壁部分から内側に突出する凸部57a、57bが形成される。
図4では凸部57bしか見えないが、周方向に180度離れた位置にもう一つの凸部57aが設けられる。
図4で見えている凸部57bの近くには、フィルタホルダ70がダストケース51に対して相対回転しないように規制する回転規制突出部58が設けられる。回転規制突出部58の設けられる位置は、2つの凸部57a、57bに比べて段差面59に十分近い位置とされ、ダストケース51の本体ハウジング10の装着時に、本体ハウジング10の被取付部30に回転規制突出部58が干渉しないように構成される。
【0025】
フィルタホルダ70は、フィルタ80を取り付けた後に、ダストケース51側に装着し、フィルタホルダ70が取り付けられた状態のダストケース51を、本体ハウジング10の被取付部30に取り付ける。この際、ダストケース51の凸部57a、57bが、本体ハウジング10の軸方向溝31と一致するように周方向位置を合わせてから、ダストケース51を軸線A1方向に向けて本体ハウジング10に近づくように移動させ、その状態でダストケース51を本体ハウジング10に対して軸線A1を中心に周方向に約120度回転させる。すると、ダストケース51の凸部57a、57bが周方向溝32内を移動し、ストッパ面32aに突き当たるか、又は、近接する位置にて保持される。周方向溝32は、ストッパ面32aに近づくにつれて前後方向の幅が徐々に狭くなるように形成されており、凸部57a、57bがストッパ面32aに突き当っている状態では、凸部57a、57bがロック部材34によって後方に押圧されて周方向溝32内に挟持される状態が維持されるため、ダストケース51が本体ハウジング10に安定的に保持される。ロック部材34は合成樹脂製である。尚、凸部57a、57bがロック部材34に当接している際に、安定的に保持するロック機構は、ロック部材34のような周方向溝32の軸方向幅を狭めた形状だけに限られずに、公知のロック機構や、ストッパ機構を用いて実現しても良い。
【0026】
ダストケース51を本体ハウジング10から取り外すときは逆の手順で行う。つまり、ダストケース51を本体ハウジング10に対して軸線A1を中心軸に装着時とは逆方向に約120度回転させ、凸部57a、57bが軸方向溝31と一致する位置まで来たら、ダストケース51を軸線A1方向に、本体ハウジング10と離れる方向に移動させる。すると、ダストケース51が本体ハウジング10から取り外されるが、この際、フィルタ80が装着された状態のフィルタホルダ70はダストケース51側に装着された状態のままとなる。このように構成したことで、ダストケース51とフィルタホルダ70をワンタッチで本体ハウジング10から取り外すことができる。作業者は、取り外したダストケース51からフィルタホルダ70を軸線A1方向後方に引き出すことによって、ダストケース51の外筒部52の内部の空間、即ち、集塵された粉塵が蓄積している空間を露出させることができる。その後、作業者はダストケース51の開口が下を向くように傾けることによって、集塵された粉塵をゴミ箱やゴミ袋の内部等に廃棄できる。
【0027】
フィルタホルダ70は、円筒形のフィルタ80を装着すると共に、フィルタ80をダストケースの旋回室53(
図2参照)の軸線B1上の所定の位置に配置するための位置決め部材となる。フィルタホルダ70の後方部分には、ダストケース51の後側開口を閉鎖する蓋となる円板状の閉鎖壁71が形成される。閉鎖壁71の外周面には、段差状に軸方向にずらした円環状のフランジ部72が形成される。フランジ部72は、ダストケース51の段差面59に当接することによってフィルタホルダ70のダストケース51に対する軸線B1方向、底面52aに近づく側への移動を制限する。フランジ部72には、フィルタホルダ70のダストケース51への装着時に凸部57a、57bとの干渉を避けるために形成された2カ所の切欠き部73a、73bと、回転規制突出部58と相対することによってフィルタホルダ70の自転を防止するための、一つの切欠き部73cが形成される。閉鎖壁71には、サイクロンユニット50からの空気の出口となる排気口71aが形成される。排気口71aの外縁部分には、後方側に延びるフィルタ枠75が接続される。フィルタ枠75は周方向に等間隔で6本配置され、軸線B1方向前方側に延在する(詳細な形状は
図8で説明する)。
【0028】
図5は本体ハウジング10の斜視図である。本体ハウジング10は、モータ収容部12の上側にハンドル部14が形成され、下側に電池パック40を収容するレール機構(図示せず)が形成される。電池パック40の取付部の前方側には、電池パックガード19がモータ収容部12よりも下方に延在するように形成される。電池パックガード19は、電池パック40に形成された風窓(図では見えない)を閉鎖するために形成される。ハンドル部14の上側には、モータ21のオン又はオフを切り替えるスイッチを配置したスイッチパネル38が設けられる。
【0029】
本体ハウジング10の前方側であって軸線A1を含む中心部に吸気口17が形成される。吸気口17の周囲には水平方向に延在する複数のリブ状の開口ガード18が形成される。開口ガード18の周囲には、径方向に所定の距離を隔てて円筒状のフィルタ取付部36が形成される。フィルタ取付部36は、
図14で後述するフィルタ濾過方式のクリーナ101を用いるときにフィルタ160(
図14参照)を取り付けるために用いられる。尚、本体ハウジング10にサイクロンユニット50を取り付ける際には、フィルタ取付部36はフィルタホルダ70が軸方向後方に移動しないように押さえる部材として機能する。
【0030】
被取付部30は本体ハウジング10の前側開口の外周面に形成される。被取付部30は、同一の着脱操作で本実施例のサイクロンユニット50と、
図14及び
図15で後述の集塵ユニット150のいずれも取付け可能にしたものである。ここでは側面視で略L字状のなる溝状の被取付部30(軸方向溝31と周方向溝32)が2カ所形成され、これらは合成樹脂の一体成形によって本体ハウジング10と一体に製造される。周方向溝32の軸線方向前側には、ダストケース51が軸線方向に移動しないように保持するためのリブ33が形成される。また、リブ33の周方向端部には、ロック部材34が隣接して設けられる。ロック部材34は周方向及び軸方向に中空状の壁面を有し、その壁面のうち周方向に沿った後方壁面が、リブ33の後方壁面よりもわずかに後方側に突出するように形成される。この結果、リブ33付近の周方向溝32の幅(軸方向の間隔)よりも、ロック部材34の中空状の壁面部の幅の方が小さくされる。
【0031】
図6は
図1のサイクロンユニット50の縦断面図である。サイクロンユニット50は、フィルタ80を除くと、ダストケース51とフィルタホルダ70の2部品によって構成される。
図6は、ダストケース51にフィルタホルダ70を取り付けた状態を示している。ここで特徴的なのは、閉鎖壁71よりも前方側にある旋回室53(サイクロン式の粉塵分離を行う空間)の中心軸と、閉鎖壁71よりも後方側(モータ21に近い側)の取付部の中心軸がずれていることである。旋回室53の軸心はB1となり、閉鎖壁71よりも後方側であって取付部55の回転中心の軸心はA1となり、軸線A1とB1は一致しない。従来のサイクロン式のクリーナにおいては、ダストケース51の軸線B1と取付部55の回転中心の軸線A1が一致するように形成していた。しかしながら、本実施例では、小型軽量化のためにダストケース51の外筒部52の直径を小さくすると共に、軸線B1を軸線A1よりも径方向一方側(ここでは下方)にずらすようにして、ずらすことによって確保できた径方向他方側(ここでは上方)のスペースに接続管60の一部を配置するようにした。この結果、ダストケース51の上下方向の高さHが
図14で後述するフィルタ濾過方式のクリーナ101とほぼ同等とすることができた。一方、ダストケース51の外筒部52の内部空間の容積を確保するために、軸線B1方向の長さLを、フィルタ80の軸線B1方向の長さに比べて十分大きくした。この結果、遠心分離された多量の粉塵を底面52a付近に溜めること可能となった。
【0032】
閉鎖壁71よりも後方側(モータ21に近い側)には、二重の円筒部(56、76)が形成される。円筒部56は本体ハウジング10の被取付部30の外周面に位置する。内周側の円筒部76は本体ハウジング10のフィルタ取付部36の外周面に係合することによって、円筒部76とフィルタ取付部36の間に吸気室16(符号は
図2参照)が形成される。
【0033】
図7はダストケース51のみを後方側(モータ21側)から見た背面図である。ここで理解できるように、外筒部52の直径R
1は円筒部56の直径R
3よりも十分小さく形成される。接続管60の直径R
2は、外筒部52の直径R
1よりも更に小さい。このような直径R
1、R
2、R
3の大小関係に加えて、軸線A1方向に見て接続管60の軸心C1付近に円筒部56が交差するような位置関係となる。接続管60と外筒部52の外側であって、円筒部56の内側に位置する部分には、径方向に延在する壁面、即ち接続壁54が形成される。このような形状とすることでダストケース51は2つの金型を用いて合成樹脂の射出成形によって容易に製造できる上に、成型後のダストケース51の剛性を高くすることが可能となった。
【0034】
図8は、フィルタホルダ70とフィルタ80の展開斜視図であり、
図9はフィルタホルダ70にフィルタ80を装着した状態の側面図である。フィルタホルダ70は、閉鎖壁71によって外筒部52を閉鎖する蓋の役割を果たすと共に、フィルタ枠75によって閉鎖壁71から外筒部52の内部に延在するように内筒部を形成する役割を果たす。フィルタホルダ70は合成樹脂の一体成形によって製造される。サイクロン方式の旋回室53(
図5参照)の内部では、旋回室53で回転する空気流AIR1(
図2参照)の内側部分にカップ状のフィルタ80が位置づけられ、粉塵に比べて軽い内周側の空気がフィルタ80を通って径方向内側に移動する。フィルタ枠75の間には大きな開口部77が形成され、この開口部77は軸線方向に細長い形状である。フィルタ80及び開口部77を通って、フィルタ枠75の内側に到達した空気は、閉鎖壁71の中央近くに形成された排気口71a(
図4参照)を通って、本体ハウジング10側に吸引される。
【0035】
フィルタ80は、太さの異なる数種類の繊維でできた不織布にてカップ状に形成されたもので、市販されている公知のフィルタ素材を用いて製造できる。また、フィルタ80フィルタホルダ70に対して容易に装着又は取り外し可能とした。フィルタ枠75は周方向に等間隔で6本形成され、軸線B1方向に延びるように配置される。また、フィルタ枠75の前方端部には、円錐状に広がる拡径部78が形成され、拡径部78の外縁部が、フィルタ80の円筒面81aと底面81bの接続部分に接触することによって、フィルタ80を安定的に保持する。拡径部78の内側は、軸線B1方向に空気が流れるように軸方向開口79が形成される。フィルタ80は、円筒面81aと底面81bがフィルタ枠75とは接触せずに、拡径部78とも外縁の一部分しか接触しない。このようにフィルタ80とフィルタ枠75が密着しないことにより、フィルタの有効濾過面積が増大するので、濾過性能を向上できる。フィルタ80の開口81cの外縁付近には、収縮性のある取付部82が形成され、取付部82を固定リブ74の外周側に位置づけることによってフィルタホルダ70の固定リブ74に安定的に保持される。
【0036】
図10は、フィルタホルダ70の背面図である。ここで、フィルタ枠75による円筒空間は、軸線B1を中心に形成される。軸線B1はサイクロンユニット50の本体ハウジング10への取付けのための回転軸線A1に対して、一方向にずれるように配置される。別言すると、サイクロンユニット50の旋回室53の回転中心(=軸線B1)は、取付軸線A1とずれている。フィルタホルダ70のフランジ部72には、2カ所の切欠き部73a、73bが軸心A1を中心に回転対称位置に設けられる。切欠き部73a、73bは、フィルタホルダ70のダストケース51への取付時に、凸部57a、57bとの干渉を避けるために形成されるものである。また、切欠き部73bの近傍にはダストケース51への取付時の周方向の位置決めをすると共に、ダストケース51とフィルタホルダ70の相対回転を阻止するための切欠き部73cが形成される。
【0037】
図11は、フィルタホルダ70をダストケース51に装着した状態の背面図(
図1のサイクロンユニット50の背面図)である。ダストケース51の円筒部56の内周側には、2つの凸部57a、57bと一つの回転規制突出部58が形成される。回転規制突出部58は、凸部57a、57bよりも周方向に長さが小さく、軸線A1方向位置では、凸部57a、57bよりも後方側に形成される突起であり、フィルタホルダ70のダストケース51に対する周方向の位置合わせをするために設けられる。従って、フィルタホルダ70を取り付けると、フィルタ枠75による円筒空間は必ず外筒部52の中心に位置づけられる。また、フィルタ枠75による円筒空間は、軸線A1からみて下側にオフセットされており、接続管60が位置する上側とは反対側に位置する。フィルタホルダ70のダストケース51への取付は、凸部57a、57b、回転規制突出部58の位置に、切欠き部73a~73cが合うようにフィルタホルダ70を位置決めして、フィルタホルダ70を軸線A1方向の底面52a(
図6参照)に近づける側に移動させ、フィルタホルダ70のフランジ部72が、ダストケース51の段差面59(
図6参照)に当接する位置にする。その後、ダストケース51を本体ハウジング10に装着すると、フィルタホルダ70は、本体ハウジング10の円筒状のフィルタ取付部36(
図5参照)と段差面59(
図6参照)によって前後方向への移動が制限される。
【0038】
図12は、サイクロンユニット50の本体ハウジング10への取付方法を説明する図であって、
図1のB-B断面図である。サイクロンユニット50を本体ハウジング10に取り付けるには、
図12(A)のように、2つの凸部57a、57bが本体ハウジング10の軸方向溝31に対向するように周方向の位置合わせをし、その状態でサイクロンユニット50を本体ハウジング10側に押しつけて、
図12(B)のように軸線A1方向後方から見て矢印90に示すように反時計回りに回転させることで、2つの凸部57a、57bを
図5にて示した周方向溝32内を摺動させ、ストッパ面32aに接近する方向に回転させる。この際の矢印90の回転角度は約120度である。また、このように回転させると、接続管60の位置が真上(
図12の状態)又は真下(
図13参照)のいずれかに位置する。2つの凸部57a、57bが、
図5にて示した周方向溝32内のストッパ面32aに隣接又は当接する位置に達する。ストッパ面32aの近傍は、軸方向前方側の側面にロック部材34(
図45参照)が設けられ、周方向溝32の軸方向の間隔が狭く形成されている。このような周方向溝32の形状によって、2つの凸部57a、57bの前方側側面がロック部材34に当接することになり、ロック部材34と2つの凸部57a、57bとの摩擦力によってサイクロンユニット50が本体ハウジング10に安定的に保持される。
【0039】
図13は、サイクロンユニット50の本体ハウジング10への別の取付方法を説明するための図である。本実施例のサイクロンユニット50は、取付部55の内側において、180度離れた位置に2つの凸部57a、57bが形成される。つまり、凸部57a、57bは軸線A1に対して回転対称の位置に配置されるので、
図1に示すような接続管60がサイクロンユニット50の上側に位置する取付方法に加えて、
図13に示すように接続管60がサイクロンユニット50の下側に位置する取付方法も可能である。このようにサイクロンユニット50を本体ハウジング10に取り付けると、接続管60の前方側に接続される図示しない延長パイプやノズルが、本体ハウジング10の下側に位置するので、ソファと床の間などの高さの低い床面を掃除するような場合に有利である。
【0040】
図14は、フィルタ濾過方式のクリーナ101の斜視図である(ダストケース151を取り外した状態)。集塵ユニット150は、ダストケース151とフィルタ160によって構成される。クリーナ101においては、本体ハウジング10は
図1~
図13で示したサイクロンクリーナ1と共通である。本実施例では共通の本体ハウジング10に、サイクロンユニット50(
図6参照)か、フィルタ濾過方式の集塵ユニット150かのいずれかを装着することで、サイクロンクリーナ1とフィルタ濾過方式の通常のクリーナ101を容易に実現できる。このように、本体ハウジング10をフィルタ濾過方式のクリーナ101と共通にすると共に、サイクロンユニット50の大きさを、集塵ユニット150の大きさとほぼ同等にすることによって、小型軽量で、ユーザにとっては大変使いやすい二方式実現可能なクリーナを実現できた。
【0041】
フィルタ160は、本体ハウジング10側に取り付けられる。よって、
図14に示すようにダストケース151を本体ハウジング10から取り外した場合にフィルタ160は本体ハウジング10側に残ることになる。フィルタ160は、本体ハウジング10に着脱可能である。このダストケース151の取り外しの時に、ダストケース151の内部とフィルタ160の周囲のゴミを、ゴミ箱やゴミ袋の内部等に落下させることができる。
【0042】
ダストケース151は先絞りの略円筒形であって、軸線A1方向の先端にパイプ状のノズル152が形成される。ノズル152の開口は下方向に行くにつれて後退するように斜めにカットされた形状とされる。ノズル152は、図示しない延長パイプを介して床ノズルを、又は直接床ノズルを接続することが可能である。フィルタ160は、カップ状であって、枠部161の間に細かい目の網162が設けられることにより、吸引された空気中の粉塵を濾過する。ここではフィルタ160は網162を鋳込むようにして枠部161を合成樹脂で形成する、一体成形品にて製造されるが、フィルタ160の形状はこれだけに限られずに、フィルタ160を布、紙、又は不織布等から構成される公知のフィルタ装置にて実現しても良い。フィルタ160の先端側(ノズル152に近い側)の底面163(軸線A1と直交する面であって図では見えない)は閉塞されるが、底面163にも同様に網を配置するようにしても良い。
【0043】
図15はフィルタ濾過方式のクリーナ101の縦断面図である。モータ21が回転することによって、モータ21の回転軸に取り付けられるファン22が回転することにより、ノズル152から粉塵混じりの空気が吸引される。ノズル152の後端部には、ゴム製の開閉蓋152bが設けられ、吸引時には開閉蓋152bが後方側に傾くことによって、ノズル152の流路を解放する。ノズル152を通ってダストケース151の内部に吸引された空気は、フィルタ160の外側から内側に流れ、この際に網162(
図14参照)によって粉塵だけが濾過され、内側に到達した空気が、本体ハウジング10の吸気口17からファン収容室25の内部に到達する。カップ状のフィルタ160は内側に設けられたフィルタホルダ171によって保持される。フィルタホルダ171は合成樹脂製のカップ状の内枠であり、吸引する空気流によって変形するフィルタ160の形状を保つ役割を果たす。フィルタ160を通過した空気は吸気口17を通過して後方側に流れ、ファン収容室25に吸い込まれる。ファン収容室25に吸い込まれた空気の流れは、
図2で説明した流れと同じであり、ファン22によって空気が軸線A1近傍から径方向外側に吐出され、モータホルダ24の外筒部よりも外周側を通過して後方側に流れて、モータ21の収容される内部空間13に到達する。
【0044】
ダストケース151には、凸部157が2つ設けられる。凸部157は、
図1~13で示したサイクロンクリーナ1のサイクロンユニット50に設けられた凸部57a,57bと共通の形状を有しており、これと同様の方法で本体ハウジング10の被取付部30に対して固定可能である。
【0045】
モータ21の後方側に流れた空気流AIR4は、点線矢印で示すようにハンドル部14の後端付近でその方向が上側に折り曲げられ、空気流AIR5のようにハンドル部14の内部を後方側から前方側に流れ、第一の排気口28から外部に排出される。本実施例ではハンドル部14の後端下側にも、第二の排気口29が形成されるので、空気流AIR4の一部が第二の排気口29から排出され、残りが第一の排気口28から外部に排出される。
【0046】
図16は本発明の変形例に係るサイクロンユニット50Aを取り付けたサイクロンクリーナ1Aの側面図である。サイクロンユニット50Aは、
図1~
図13にて示したサイクロンユニット50に比べて、接続管60A、接続部62Aが長く伸ばされると共に、接続部62Aの先端の開口たる吸入口60a’が斜めになるように形成したものである。このように形成することで、
図16のように、接続管60Aが下側に位置するようにサイクロンユニット50Aを本体ハウジング10に取り付ければ、
図16に示す状態で吸入口60a’から机上の吸引や、キーボードの清掃等、延長パイプや延長ノズルと用いないで吸引する作業を行うことが容易になる。また、このようなノズル形状は、
図14に示す従来のクリーナ101と同等の使い勝手が実現できるので、ユーザにとっては大変使いやすい。
【0047】
図17は、2段式サイクロンクリーナ201の側面図である。集塵ユニット250が本体ハウジング10に取り付けられており、本体ハウジング10は
図1~13で示したサイクロンクリーナ1、
図14、15で示したクリーナ101、及び、
図16で示したサイクロンクリーナ1Aと共通である。
【0048】
図18は、2段式サイクロンクリーナ201の鉛直断面図である。集塵ユニット250は、ダストケース213、中間ケース214、インナケース212を含む。中間ケース214には前後方向に延びる筒状の接続管217が形成され、接続管217内部は接続通路223として構成される。接続管217には図示しない延長パイプが接続可能であり、この延長パイプは
図1~13で示したサイクロンクリーナ1、
図14、15で示したクリーナ101、及び、
図16で示したサイクロンクリーナ1Aと共通のものである。接続管217の後端側は前後方向に対して屈曲する。
【0049】
中間ケース214内部には、インナケース212が取り付けられる。インナケース212は、前後方向に延びる軸線D1を中心とする円筒形の第1外筒215を有し、第1外筒215内部に第1旋回室203が1個形成される。第1外筒215は接続管217と接続するとともに、第1旋回室203と接続通路223とが第1吸気口202を通して連通する。中間ケース214に対し、図示しないヒンジなどによって、ダストケース213が着脱自在に結合される。ダストケース213は、後端が開口され前端が閉塞されて軸線D1方向に延びる筒状に形成され、内部に第1集塵室204が形成される。第1集塵室204の後端側は中間ケース214によって閉塞され、第1集塵室204は第1旋回室203と連通する。中間ケース214には、第1旋回室203内部を軸線D1方向に延びる筒状の第1排気筒218が取り付けられる。尚、軸線D1は軸線A1と同軸である。インナケース212には、第1排気筒218の後方側に設けられて第1排気筒218内部に対して開口し、第1旋回室203内外を連通する第1排気口205が形成される。インナケース212は、第1排気口205のさらに後方側に、第1排気口205を介して第1旋回室203と接続された接続通路206を形成する。
【0050】
インナケース212は、軸線D1と平行な軸線E1を中心とする円錐形の第2外筒216を有し、第2外筒216内部に第2旋回室208が形成される。第2外筒216が軸線D1を中心とする周方向に並んで複数配置されることで、複数個(本実施例においては10個)の第2旋回室208が形成される。第2外筒216と第1外筒215とは壁部の一部を共有する。第2外筒216には第2旋回室208内外を連通する第2吸気口207が形成され、第2旋回室208と接続通路206とが第2吸気口207を通して連通する。ダストケース213には、後端が開口された第2集塵室209が形成される。第2集塵室209の開口は中間ケース214によって閉塞され、第2集塵室209は第2旋回室208と連通する。尚、第1集塵室204と第2集塵室209とは、共通の仕切壁224によって仕切られる。第2旋回室208の後端には開口が設けられるとともに、後端側に中間ケース214の仕切壁220が当接することで開口が閉塞される。仕切壁220には、軸線E1方向に延びる筒状の第2排気筒219が形成されるとともに、第2排気筒219内部に第2旋回室208内外を連通するように仕切壁220に設けられた第2排気口210が形成される。
【0051】
中間ケース214は、仕切壁220と側壁221とによってフィルタ室211を形成する。フィルタ室211は後端に開口するとともに、中間ケース214が本体ハウジング10に取り付けられることで開口が本体ハウジング10により閉塞される。フィルタ室211内部には、軸線D1方向に延びる筒状のフィルタ222が取り付けられる。第2排気口210は、フィルタ222の外周側でフィルタ室211内に開口しており、フィルタ室211内におけるフィルタ222外側の空間は、第2排気口を通して第2旋回室208と連通する。フィルタ222の内側の空間は、本体ハウジング10の吸気口17を介して本体ハウジング10内部と連通する。
【0052】
サイクロンクリーナ201における空気の流れを説明する。モータ21が駆動すると、ファン22による空気流が生じる。空気流は、吸入口217aから接続通路223内に進入し、接続管217内と第1吸気口202を通過して第1旋回室203へ進入する。空気流は第1旋回室203内で軸線D1を中心に旋回して、空気流に含まれる塵埃を遠心分離する。塵埃は旋回しながら前方へ移動して第1集塵室204に貯蔵される。空気流は第1旋回室203及び第1集塵室204から第1排気筒218内部へと進入した後、第1排気口205、接続通路206、第2吸気口207の順に進み、第2旋回室208内部へと進入する。空気流は第2旋回室208内で軸線E1を中心として旋回して、空気流に含まれる塵埃を遠心分離する。塵埃は旋回しながら前方へ移動して第2集塵室209に貯蔵される。空気流は第2旋回室208から第2排気筒219内部へと進入した後、第2排気口210を通過して、フィルタ室211におけるフィルタ222外部の空間へ進入する。空気流はフィルタ222を外側から内側に向かって通過し、この時フィルタ222によって塵埃が分離される。フィルタ222内部へ進入した空気流は、吸気口17を通過して本体ハウジング10内部へ進入し、ファン22へと向かう。
【0053】
中間ケース214には、凸部257が2つ設けられる。凸部257は、
図1~13で示したサイクロンクリーナ1のサイクロンユニット50に設けられた凸部57a,57bや、
図14、15で示したクリーナ101のダストケース151に設けられた凸部157と共通の形状を有しており、これらと同様の方法で本体ハウジング10の被取付部30に対して固定可能である。
【0054】
以上、本実施例のクリーナでは、本体ハウジング10にサイクロンユニット50、フィルタ濾過方式の集塵ユニット150、又は、サイクロンユニット250のいずれかを選択して装着できるので、集塵対象に合わせて1段式サイクロンクリーナとすることも、2段式サイクロンクリーナとすることも、フィルタ濾過方式のクリーナとすることも可能となる。尚、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、
図14及び
図15で示したフィルタ濾過方式の集塵ユニット150は、頻繁な交換をしないフィルタをダストケース151の後方側に用いるもので説明したが、ダストケース151のノズル152付近に紙パック式のフィルタを取り付ける装着部を設けた、いわゆる紙パック集塵方式のクリーナとすることも可能である。この場合も、紙パックを収容する集塵ユニットの取付部の形状を、被取付部30(
図5参照)に対応する形状とすれば良い。
【符号の説明】
【0055】
1,1A…サイクロンクリーナ、10…本体ハウジング、12…モータ収容部、13…内部空間、14…ハンドル部、15…中空部、16…吸気室、17…吸気口、18…開口ガード、19…電池パックガード、21…モータ、22…ファン、23…ファンガイド、24…モータホルダ、25…ファン収容室、26a~26d…ネジボス、27…仕切板、28…(第一の)排気口、29…(第二の)排気口、30…被取付部、31…軸方向溝、32…周方向溝、32a…ストッパ面、33…リブ、34…ロック部材、36…フィルタ取付部、38…スイッチパネル、40…電池パック、41…ラッチボタン、50,50A…サイクロンユニット、51…ダストケース、52…外筒部、52a…底面、53…旋回室、54…接続壁、55…取付部、56…円筒部、57a,57b…凸部、58…回転規制突出部、59…段差面、60,60A…接続管、60a…吸入口、60b…湾曲部、61…接続通路、62,62A…接続部、66…流入部、66a…接続開口、66b…流入口、67…流入通路、70…フィルタホルダ、71…閉鎖壁、71a…排気口、72…フランジ部、73a~73c…切欠き部、74…固定リブ、75…フィルタ枠、76…円筒部、77…開口部、78…拡径部、79…軸方向開口、80…フィルタ、81a…円筒面、81b…底面、81c…開口、82…取付部、90…(回転方向を示す)矢印、101…(フィルタ濾過方式の)クリーナ、150…(フィルタ濾過方式の)集塵ユニット、151…ダストケース、152…ノズル、152a…吸入口、152b…開閉蓋、160…フィルタ、161…枠部、162…網、163…底面、171…フィルタホルダ、A1…(サイクロンユニットの)回転軸線及び(本体ハウジングの)中心軸線、B1…(サイクロン旋回室の)中心軸線、C1…(接続管の)中心軸線、AIR1~AIR5…空気流、R1…(外筒部52)の直径、R2…(接続管60)の直径、R3…(円筒部56)の直径