(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】水溶性3-ケトクマリン
(51)【国際特許分類】
C07D 311/18 20060101AFI20230502BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C07D311/18 CSP
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2020532693
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2018059703
(87)【国際公開番号】W WO2019116177
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-07
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルチーニ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-145102(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030631(WO,A1)
【文献】特許第7092887(JP,B2)
【文献】特表2016-510314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
式(I)
【化1】
(ここで、
R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;又はSH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル;又はC
1-C
12アルコキシであり;
nは0~10の整数であり、nが0である場合、AはYに直接結合し;
Aは、CHR
3
であり;
R
3は、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;又はSH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換される C
1-C
12アルキル;又はC
1-C
12アルコキシである;
Yは、
【化2】
(ここで、R
5は、置換又は未置換のC
1-C
50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基又はアルキル残基によって終結してい
る)である);
【化3】
(ここで、Xは無機又は有機カチオンである);
【化4】
(ここで、Qは無機又は有機アニオンであり、及びR
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル;C
1-C
12アルコキシであり、又はR
6、R
7、及びR
8の2つは、単環構造を形成する);
【化5】
(ここで、R
9、R
10、及びR
11は、それぞれ、他の1から独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル、C
1-C
12アルコキシであり;又はR
9、R
10、及びR
11の2つは、単環構造を形成し、及びR
9、R
10、又はR
11の少なくとも1は、下記の中から選ばれる:
-CH
2CH
2CH
2SO
3-、-CH
2CH
2CH
2CH
2SO
3-、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
【化10】
、
【化11】
、
【化12】
、
【化13】
、
【化14】
、
【化15】
、
【化16】
、
【化17】
)
から選ばれる。)
【請求項2】
nが0~6である請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Yが
【化18】
(ここで、R
5
は、置換又は未置換のC
1
-C
50
アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基又はアルキル残基によって終結している)である)である請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R
1
及びR
2
が、ともに、メチル基である請求項1~3のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
R
3
が水素である請求項1~4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
請求項1において定義された式(I)の化合物の、紫外光又はブルーライト誘発光重合法における光開始剤としての使用。
【請求項7】
インク、コーティング、又は三次元物体の硬化のための光重合法における請求項6に記載の使用。
【請求項8】
インクジェット印刷用インクのための光重合法における請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1の共-開始剤と組み合わされた請求項6~8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
共-開始剤がアミンである請求項9に記載の使用。
【請求項11】
共-開始剤が、不飽和エチレン部分を有するアミンである請求項10に記載の使用。
【請求項12】
水に溶解又は乳化された少なくとも1のエチレン系不飽和化合物、及び少なくとも1の共-開始剤と任意に組み合わされた、請求項1~5のいずれかにおいて定義された式(I)の化合物を含んでなる光重合性組成物。
【請求項13】
下記の工程:
I)a)水に溶解又は乳化した少なくとも1のエチレン系不飽和化合物15~40質量%;
b)少なくとも1の、請求項1において定義された式(I)の化合物0.1~10質量%;
c)水20~80質量%
を含んでなる光重合性組成物を調製する工程;
II)任意に、プレ乾燥する工程;
III)前記工程I)又はII)の組成物を、光源にて、光重合する工程
を含んでなる光重合法。
【請求項14】
光重合を、波長200~420 nmで発光するLED光源にて行う請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光重合を、波長365~420 nmで発光するLED光源にて行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、光重合する前に、光重合性組成物を基板に塗布する工程を含んでなる請求項13又は15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1の共-開始剤も存在することを特徴とする請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項13~17のいずれかに記載の方法によって調製された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光開始剤として有用である、改良された水溶性を有する新規の3-ケトクマリン、及び前記光開始剤を含んでなる組成物に係る。本発明は、前記新規の3-ケトクマリンを含んでなる組成物及びそれらを含む光重合法にも係る。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性コーティングに使用される光開始剤は、良好な硬化速度、特に、良好な表面硬化性、低い悪臭性、良好な溶解性、及び低い黄変性を有することが必要である。光開始剤が水性処方において使用される場合には、水に適合性又は溶解性であること、低い蒸気揮発性を有すること(コーティング法は、水を除去するために高温を使用するプレ乾燥工程を含むことがある)、所望のポリマー表面コーティングを生成するために樹脂の光架橋において有効であること、安全かつ非毒性の化学物質であることも必要である
【0003】
この分野で使用される光照射源の中でも、半導体光源である発光ダイオード(LED)は、従来の中圧水銀硬化ランプと比較すると、作動温度が低く及び寿命が非常に長いとの利点のため、過去数年間にわたって、意義深い開発の対象であった。LEDランプは、また、LED装置のサイズが本質的に小さい、それらの寿命が長い、及び例えば、市販のプリントシステムに容易に工作されるとの理由から有利である。
【0004】
インク及びコーティングを光硬化させるためにLEDランプを使用する場合、この光源の波長に適合するように選ばれた光開始剤系を使用する必要がある。代表的には、水銀ランプは、UV-可視スペクトル200~450 nmの全ての領域において光を放射する多色発光スペクトルを有するが、LEDランプは、通常、領域365~420 nmにおけるシングル発光バンドのみを有する。
【0005】
このように、365~420 nmの領域において吸収性の光開始剤は、増大された能力を有するLEDについての最近の発展を十分に利用することが求められる。さらに、LEDの適用には、通常、高濃度の光活性物質が要求されるため、光開始剤は、光重合性系との高い適合性を有するべきである。
【0006】
チオキサントン、例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)及びその誘導体、及びアシルホスフィンオキシドは、この分野において一般的に使用される光開始剤である。
【0007】
米国特許第4602097号(Ulano Corporation)、英国特許第2108487号(Sericol Group)、及びUS 2017/107386(Sun Chemical Group)は、水溶性のチオキサントンを開示するが、残念なことには、このクラスに属する化合物は、露光時、黄変を生じ易く、これにより、限定された安定性を有する分解生成物を形成する。その結果、初期の黄変は、貯蔵時に、予想外にシフトする。特に、イメージング、例えば、インクジェット印刷では、この不安定な黄変挙動は、最終像における画調の制御を全く困難なものとする。
【0008】
国際公開第2014/095724は、水溶性のビスアシルホスフィンオキシド開始剤を開示するが、残念なことには、この種の分子は、中程度の揮発性の、アルデヒドタイプの分解生成物を生じ、硬化コーティング又は印刷物のバックグラウンドの臭いを発生する。
【0009】
ビスアシルホスフィンオキシドのクラスに属する市販の生成物は、Omnirad 819 DW(IGM Resins BV)(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819:IGM Resins BV)の水性分散液である)である。しかし、分散液の使用は、分散液が、硬化したフィルムを通して移動できる、及び悪影響を有するとのいずれかの理由のため、例えば、硬化したフィルムを可塑化して、目的適合性を低下させる、又は前記硬化したフィルムと接触する食品を汚染するとのいずれかの理由のため、全ての用途において許容されるものではない。
【0010】
これは、LEDランプとの反応性を有する他の水適合性光開始剤についての要求が引き続き存在することを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に、水性の放射線硬化性組成物に適する新規のクラスの3-ケトクマリン、及び前記光開始剤を製造する方法に係る。
【0012】
本発明の化合物は、水性組成物に対して増大された適合性を示すように適切に官能化された3-ケトクマリンを含んでなる。
【0013】
実際、発明者らは、従来技術の化合物の欠点を克服する、すなわち、水性処方における良好な適合性、高い反応性、低い黄変性を有し、悪臭の極めて少ない硬化性生物を生成する3-ケトクマリン系の一連の新規の化合物を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本発明は、式(I)の3-ケトクマリンに係る。
式(I)
【化1】
(ここで、
R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;又はSH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル;又はC
1-C
12アルコキシであり;
nは0~10の整数であり、nが0である場合、AはYに直接結合し;
Aは、CHR
3、O、S又はNR
4(ここで、R
4は、水素又はC
1-C
6アルキル基である)であり;
R
3は、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;又はSH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル;又はC
1-C
12アルコキシである;
Yは、
【化2】
(ここで、R
5は、置換又は未置換のC
1-C
50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基又はアルキル残基によって終結していてもよい)である);
【化3】
(ここで、Xは無機又は有機カチオンである);
【化4】
(ここで、Qは無機又は有機アニオンであり、及びR
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素;C
1-C
12アルキル;置換又は未置換のアリール;置換又は未置換のヘテロアリール;置換又は未置換のC
5-C
6シクロアルキル;SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル;C
1-C
12アルコキシであり、又はR
6、R
7、及びR
8の2つは、単環構造を形成する);
【化5】
(ここで、R
9、R
10、及びR
11は、それぞれ、他の1から独立して、水素、C
1-C
12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C
5-C
6シクロアルキル、SH、-N(C
1-C
6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C
1-C
12アルキル)、-COOHにて置換されるC
1-C
12アルキル、C
1-C
12アルコキシであり;又はR
9、R
10、及びR
11の2つは、単環構造を形成し、及びR
9、R
10、又はR
11の少なくとも1は、下記の中から選ばれる:
-CH
2CH
2CH
2SO
3-、-CH
2CH
2CH
2CH
2SO
3-、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
【化10】
、
【化11】
、
【化12】
、
【化13】
、
【化14】
、
【化15】
、
【化16】
、
【化17】
)
から選ばれる。)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な具体例によれば、AはCHR3又は酸素であり、さらに好ましくは、AはCHR3である。
【0016】
本発明の好適な具体例によれば、式(I)において、nは0~6であり、さらに好ましくは、nは1~4である。
【0017】
本発明の好適な具体例によれば、式(I)において、Yは、
【化18】
(ここで、R
5は、置換又は未置換のC
1-C
50アルキル基(1以上の酸素によって中断され、ヒドロキシ基又はアルキル残基によって終結していてもよい)である)である。
【0018】
本発明の好適な具体例によれば、Xは、例えば、金属(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、例えば、Li、Na、K、Cs、等)から選ばれる有機又は無機のカチオンである。
【0019】
本発明の他の好適な具体例によれば、Xは、「オニウム」カチオン、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、又はスルホニウムカチオンから選ばれる。
【0020】
オニウムカチオンとしては、例えば、アンモニウム、テトラ-アルキルアンモニウム、トリ-アルキル-アリール-アンモニウム、ジ-アルキル-ジ-アリール-アンモニウム、テトラ-アリール-アンモニウム、テトラ-アルキルホスホニウム、トリ-アルキル-アリール-ホスホニウム、ジ-アルキル-ジ-アリール-ホスホニウム、トリ-アリール-アルキル-ホスホニウム、テトラ-アリール-ホスホニウムが含まれる。
【0021】
代表的なオニウムカチオンは、N+R12R13R14R15又はP+R12R13R14R15,であり、ここで、R12、R13、R14、R15は、それぞれ独立して、水素、C1-C20アルキル、フェニル;OH又はフェニルによって置換されたC1-C20アルキル;及びOH又はC1-C4アルキルによって置換されたフェニルから選ばれ、又はR12、R13、R14及びR15の2つは、単環式又は二環式構造を形成する。
【0022】
N
+R
12R
13R
14R
15及びR
12、R
13、R
14、及びR
15の2つが単環式又は二環式構造を形成するようなXの例としては下記のものがある;
【化19】
【0023】
本発明の好適な具体例によれば、Xは、好ましくは、Li+、Na+、K+、N+R12R13R14R15、又はP+R12R13R14R15であり、さらに好ましくは、Li+、Na+、K+、又はN+R12R13R14R15である。
【0024】
本発明の他の好適な具体例によれば、Qは、無機又は有機のカチオンであり、例えば、Cl-、Br-、I-、ホスフェート、ホスファイト、スルフェート、及びスルファイト、等である。
【0025】
さらに好ましくは、R1、R2は、それぞれ独立して、C1-C12アルキル基、さらに好ましくは、C1-C4アルキル基である。
【0026】
本明細書において、用語「アルキル」又は「アルキル基」は、別に表示されないところでは、1~12個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝状のアルキル鎖を意味し、アルキル基における炭素原子の各個数について、全ての可能な変形、例えば、炭素原子3個については、n-プロピル及びイソプロピル;炭素原子4個については、n-ブチル、イソブチル、及び3級-ブチル;炭素原子5個については、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチル-プロピル、及び2-メチル-ブチル、等を含む。
【0027】
用語「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」は、別に表示されないところでは、好ましくは、5~6個の炭素原子を含有する脂肪族環を意味し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルである。好ましくは、シクロアルキル基は未置換である。
【0028】
用語「アリール」又は「アリール基」は、例えば、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基、等を含む。
【0029】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」は、例えば、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラン、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、インドール、キノリン、イソキノリン、キサンテン、カルバゾール、アクリジン、インドリン、ジュロリジン、等を含む。
【0030】
用語「1以上の酸素で中断されたC1-C50アルキル基」は、前記酸素が、少なくとも1のメチレン基によって、相互に分離されていること、すなわち、O原子が非連続的であることを意味する。具体例は次の構造ユニットである:-O-CH2-OCH3、-O-CH2CH2-OCH2CH3、-O-CH2CH2-OCH2CH3-OH、-O-[CH2CH2O]vCH3又は-O-[CH2CH2O]vOH、又は-O-[CH2CH2O]vCH2CH3(ここで、v=1-24)、-O-[CH2CH2CH2O]pOH又は-O-[CH2CH2CH2O]pCH3又は-O-[CH2CH2CH2O]pCH2CH3(ここで、p=1-16)。
【0031】
用語「置換された」は、置換基が存在することを意味し、前記置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ又はアリールチオ基、複素環基であり、好ましくは、前記置換基は、メチル、エチル、イソプロピル、3級-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタニル、フリル、チエニル、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル基、等である。
【0032】
好適な具体例によれば、R1及びR2は同一であり、C1-C4アルキル、有利には、メチルである。好適な具体例によれば、OR2は5位にある。
【0033】
好適な具体例によれば、Aは4位(すなわち、カルボニル基に対してパラ位)にある。
【0034】
好ましくは、R3は水素である。
【0035】
式(I)によって表される化合物は、当業者に公知の一般的方法に従って調製される。例えば、代表的な誘導体は次のようにして合成される:
【化20】
(ここで、ALKはアルキル基、好ましくは、C
1-C
12アルキル基、例えば、メチル又はエチルであり、R
1、R
2、R
3、及びR
5 は上記のとおりである)。
【0036】
本発明の代表的な化合物の合成に関する詳細を、本明細書の実験の項に報告する。
【0037】
上記式(I)の化合物の製法は、本発明の更なる主題である。他の合成ルートも使用できる。
【0038】
式(I)の化合物は光開始剤として有用である。式(I)の化合物の、光重合プロセスにおける光開始剤としての使用は、式(I)の化合物を光開始剤として使用することを含んでなる光硬化法とともに、本発明の更なる主題である。
【0039】
本発明の他の主題は、インク、コーティング、又は三次元物体の硬化のための重合プロセスにおける式(I)の使用にある。
【0040】
「光開始剤」について、ここでは、好適な波長を有する光への露光によって重合を開始できるラジカル(単独で、又は共-開始剤との組み合わせとして)を生成できる官能基を有する分子を意味する。
【0041】
式(I)の化合物は、特に、放射線源への露光によって光重合されるインク及びコーティングに適する水性の光重合性組成物において有用である。
【0042】
それらの使用について、式(I)の化合物は、(a)水に溶解又は乳化された、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物、及び(b)少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる光重合性組成物中に含まれる。
【0043】
用語「エチレン系不飽和化合物」は、ラジカル重合を受けることができる、少なくとも1の不飽和二重結合を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、又はその混合物を意味する。また、異なった不飽和度を有するモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーの組み合わせも使用可能である。
【0044】
光重合性組成物は、インク及びコーティング組成物において通常使用される他の添加剤を含有することもできる。例えば、1以上の水相溶性溶媒、1以上の水溶性モノマー、及び1以上の追加の光開始剤を含有できる。
【0045】
本発明の処方は、光硬化性組成物及び水性組成物の一方又は両方と適合性の広範囲の原料物質を含有できることが理解される。これらの物質としては、ポリマー及び樹脂、モノマー、オリゴマー、アミン強力剤、表面調整添加剤、消泡剤、殺生物剤、結合剤、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、等が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
光重合可能な水性プレポリマー分散液は、多くの種類として、市販のものから入手できる。これらは、水及び分散された少なくとも1のプレポリマーからなる分散液と解される。これらの系における水の濃度は、例えば、5~80質量%、特に、30~60質量%である。光重合性プレポリマー又はプレポリマー混合物は、例えば、95~20質量%、特に、70~35質量%の濃度で存在する。このような組成物における水及びプレポリマーについて表示した百分率の合計は、いずれのケースでも100である。加えて、使用目的に応じて変動する量で補助剤及び添加剤も存在する。
【0047】
水に分散又は多くのケースでは溶解される光重合性の膜形成プレポリマーは、フリーラジカルによる開始が可能であり、及び、それ自体、水性プレポリマー分散液について知られているモノ-又はポリ-官能性エチレン系不飽和プレポリマーであり;例えば、これらは、プレポリマー100 g当たり0.01~1.0モルの重合性二重結合含量及び例えば、少なくとも400、特に、500~10000の平均分子量を有するが、ただし、使用目的に応じて、より大きい平均分子量を有することも考慮する。
【0048】
例えば、重合性C=C二重結合を含有し、及び多くて10の酸価を有するポリエステル、重合性C=C二重結合を含有するポリエーテル、分子当たり少なくとも2のエポキシ基を含有するポリエポキシドと、少なくとも1のα,β-エチレン系不飽和カルボン酸とのヒドロキシル基含有反応生成物、ポリウレタン(メタ)アクリレート、及び例えば、EP012339に記載されたようなα,β-エチレン系不飽和アクリルラジカルを含有するアクリルコポリマーが使用される。これらのプレポリマーの混合物も使用可能である。また、例えば、EP033896に記載された重合性のプレポリマーも好適であり、これらは、少なくとも600の平均分子量、0.2~15%のカルボキシル基含量、及びプレポリマー100 g当たり0.01~0.8モルの重合性C=C二重結合含量を有する重合性プレポリマーのチオエーテル付加物である。特殊な(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合生成物を基材とする他の好適な水性分散液がEP041125に記載されており;ウレタンアクリレートから得られた、好適な水性分散性、ラジカル硬化性のプレポリマーが、例えば、DE2936039に見られる。
【0049】
光重合性化合物(a)は、単独で、又は所望の混合物として使用される。
【0050】
アクリル化ポリウレタン分散液が特に好ましい。
【0051】
本発明の水性の光重合性組成物は、好ましくは、水に溶解又は乳化されたエチレン系不飽和化合物15~40質量%、式(I)の化合物0.1~10質量%、水20~80質量%を含んでなる。
【0052】
さらに好ましくは、水性の光重合性組成物は、水に溶解又は乳化されたエチレン系不飽和化合物15~40質量%、式(I)の化合物0.1~8質量%、水20~75質量%を含んでなる。
【0053】
最も好ましくは、水性の光重合性組成物は、水に溶解又は乳化されたエチレン系不飽和化合物20~35質量%、式(I)の化合物0.2~6質量%、水30~70質量%を含んでなる。
【0054】
用語「質量%」を使用しているが、値が組成物の総質量に対するパーセント質量であることを意味する。
【0055】
上述の化合物以外に、当分野で通常使用され、当業者に知られている他の成分を、本発明の光重合性組成物に添加することができる。例えば、熱安定剤、光酸化安定剤、抗酸化剤、フィラー、分散剤、着色料及び/又は不透明化剤、及び一般的に使用される他の添加剤である。
【0056】
本発明の光重合性組成物は、一般的に、当分野において一般的に使用される他のモノマー及びオリゴマーを含むことができる。
【0057】
本発明の実現に適するモノマーの例を下記に示す。これは、十分に水溶性であり、これにより、使用が容易である物質、及び不溶性又は限られた水相溶性を有するが、当業者により使用される物質の両方を含む。好適なモノマーは、イソブチルアクリレート;シクロヘキシルアクリレート;イソ-オクチルアクリレート;n-オクチルアクリレート;イソデシルアクリレート;イソ-ノニルアクリレート;オクチル/デシルアクリレート;ラウリルアクリレート;2-プロピルヘプチルアクリレート;トリデシルアクリレート;ヘキサデシルアクリレート;ステアリルアクリレート;イソ-ステアリルアクリレート;べへニルアクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;4-3級ブチルシクロヘキシルアクリレート;3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート;イソボルニルアクリレート;ジシクロペンチルアクリレート;ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート;ジシクロペンタニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェノキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート;アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート;クミルフェノキシエチルアクリレート;環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート;2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート;ポリプロピレングリコールモノアクリレート;カプロラクトンアクリレート;エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート;メトキシトリエチレングリコールアクリレート;トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート;ジエチレングリコールブチルエーテルアクリレート;アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;エトキシル化エチルヘキシルアクリレート;アルコキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化フェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;プロポキシル化ノニルフェノールアクリレート;ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート;エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート;エトキシル化ノニルフェノールアクリレート;アルコキシル化ラウリルアクリレート;エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート;N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド;N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート;アクリロイルオキシエチル水素スクシネート;オクトキシポリエチレングリコールアクリレート;オクタフルオロペンチルアクリレート;2-イソシアナトエチルアクリレート;アセトアセトキシエチルアクリレート;2-メトキシエチルアクリレート;ジメチルアミノエチルアクリレート;2-カルボキシエチルアクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;プロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジールジアクリレート;1,10-デカンジオールジアクリレート;エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;プロポキシル化エチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;プロピレングリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ポリブタジエンジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシル化エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート;2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;e-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;メタミンアクリレートオリゴマー;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;その組み合わせ、及び等である。
【0058】
他のモノマーとしては、環状ラクタム、例えば、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリジノン、及びN-ビニルピロリドン、及び2級又は3級アクリルアミド、例えば、アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-3級-ブチルアクリルアミド、N-ヘキシルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-3級-オクチルアクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジブチルアクリルアミド、N,N-ジヘキシルルアクリルアミド; N,N-ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、及びN,N′-メチレンビスアクリルアミド、等が含まれる。
【0059】
水性の光重合性組成物において一般的に使用されるモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーが好ましい。これらの化合物は、当業者にはよく知られており、例えば、US 2017/0107386、国際公開第2015/197472号、国際公開第2017/053178号、国際公開第2014/095724号に記載されている。
【0060】
モノマーは、組成物に、光重合性組成物の総質量について、0~20質量%、好ましくは、1~15質量%、さらに好ましくは、1~10質量%、最も好ましく、2~5質量%の量で添加される。
【0061】
水性の光重合性組成物は、好ましくは、少なくとも1の有機溶媒、好ましくは、1以上の水相溶性有機溶媒を含有する。理解されるように、有機溶媒は放射線硬化性ではなく、いくつかの目的を果たす。例えば、有機溶媒は、組成物の成分の1以上を可溶化させるのに役立つ。
【0062】
好適な有機溶媒としては、トリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、グリセロール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素及びジアルキルチオ尿素、ジオール(エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールを含む);グリコール(プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコール、及びその混合物及び誘導体を含む)が含まれる。
【0063】
好ましい有機溶媒は、水混和性アミド、例えば、任意に置換された環状及び/又は直鎖状の水混和性アミド及びその2以上の組み合わせを含んでなる。
【0064】
好適なアミドの例としては、ピロリドン(例えば、2-ピロリドン)、N-アルキルピロリドン(例えば、N-エチルピロリドン)、N,N-ジアルキルアルキルアミド(例えば、N,N-ジメチルエチルアミド)、アルコキシル化N,N-アルキルアルキルアミド(例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド)、及びその2以上からなる混合物が含まれる。
【0065】
少なくとも1の有機溶媒は、光重合性組成物の総質量について0~40質量%、好ましくは、0.1~38質量%、さらに好ましくは、1~30質量%、及び最も好ましくは、3~25質量%の量で組成物に添加される。
【0066】
本発明の光重合性組成物は、一般に、当分野で一般的に使用される他の光開始剤を含むこともできる。
【0067】
式(I)の3-ケトクマリンと組み合わせて使用される好適な更なる光開始剤を次に示す。これらの中には、水に完全に又は部分的に溶解する光開始剤、及び水溶性ではなく、従って、高レベルでの使用が困難である光開始剤が含まれる。光開始剤の例としては、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム及びマグネシウム、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、ビス-ジアルキルアミノベンゾフェノン、例えば、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;アントラキノン、例えば、2-エチルアントラキノンが含まれ;及び商業的に入手可能な光開始剤としては、Omnirad 4265、Omnirad 819、Omnirad 819DW、Omnirad TPO、Omnirad TPO-L、Omnirad 500、Omnirad 754、Omnirad 2959、Omnirad 910、及びOmnirad 2100、Esacure KTO 46、Esacure DP250、Omnipol TX (IGM Resins B.V.);及びGenocure(商標)MBF、GENOPOL TX1、及びNuvapol(商標)PI 3Q00(RAHN);及びSPEEDCURE 7010 (Lambson);等が含まれる。
【0068】
使用可能な他の更なる光開始剤は、Industrial Photoinitiator, Chapter 4, CRC Press, 2010、Radiation Curing in Polymer Science and Technology, 2,375-434 (1993)、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 40, 504-1518 (2002)、及びここで引用する参考Surface Coatings International, 83(6), 297-303 (2000)、Macromolecular Chemistry and Physics, 209(15), 1593-1600 (2008)、特願2007-125381(コニカミノルタホールディングス(株))、国際公開第2014/095724号(BASF SE)、国際公開第2015/197472号(AGFA Graphics NV)、国際公開第2017/053178号、及び米国特許出願公開第20170107386号(SUN Chemical Corporation)に記載されている。
【0069】
追加の光開始剤は、光重合性組成物の総質量について0~10質量%、好ましくは、0.1~5質量%、さらに好ましくは、0.2~3質量%、及び最も好ましくは、0.5~2.5質量%の量で組成物に添加される。
【0070】
本発明の光重合性組成物は、好都合には、重合反応速度を増大させる水素ドナーとして作用する分子である共-開始剤を含むこともできる。共-開始剤は当分野において知られており、これらは、代表的には、アルコール、チオール、アミン、又はヘテロ原子に隣接する炭素に結合する利用可能な水素を有するエーテルである。このような共-開始剤は、一般に、0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在する。好適な共-開始剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性又はポリマー性アミンが含まれるが、これらに限定されない。それらは、1級、2級、又は3級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸エステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート、2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾアート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、及びポリマー性アミノベンゾアート、例えば、OMNIPOL ASA(IGM Resins)、GENOPOL AB1/AB2(Rahn)、及びSPEEDCURE 7040(Lambson)、その組み合わせ、等である。
【0071】
3級アミン及び酸性官能性の両方を有する共-開始剤の使用も可能であり、例えば、N-フェニルグリシン誘導体、N,N-ジアルキルグリシン誘導体、及び4-ジアルキルアミノ安息香酸誘導体又はその塩である。
【0072】
アミン共-開始剤として、アミン変性アクリレート化合物が使用されるが、このようなアミン変性アクリレートの例としては、1級又は2級アミンとの反応によって変性されたアクリレート、例えば、EBECRYL 80/81/83/85/880/841/7100/P116、及びEBECRYL LEO 10551/10552/10553(Allnexから入手可能);CN 501/550/3705/3715/3735/3755/381/386及びUVA421(いずれもSartomerから入手可能);Photomer 4250/4967/4775/4969/5006/5662/5930/5960(いずれも、IGM Resinsから入手可能);GENOMER 5142、5161、5171、及び5275 f(Rahn); LAROMER LR8996、LR8997、LR8869、LR8889、PO 83F、PO 84F、及びPO 94F(いずれもBASFから入手可能)及びその組み合わせ、等が含まれる。
【0073】
他のアミン変性アクリレートは、米国特許第3,844,916号、EP 280222、米国特許第5,482,649号、米国特許第5,734,002号、又は米国特許出願公開第20130012611号に記載されている。
【0074】
好適な共-開始剤は、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾアート、4-ジメチルアミノ安息香酸、及びN-フェニルグリシンである。
【0075】
本発明の組成物に配合される他の光開始剤、共-開始剤、及び更なる成分は、例えば、上述の米国特許出願公開第20170107386号、国際公開第2015/197472号、国際公開第2017/053178号、国際公開第2014/095724号の文献に記載されている。
【0076】
式(I)の化合物は、透明な水性の光重合性組成物及び不透明の又は着色された水性の組成物の両方において機能し、特に、水性の光重合性インクの調製に有用である。本発明の光開始剤及び組成物は、特に、インクジェット印刷用の水性の光重合性インクの調製に適する。
【0077】
この理由により、本発明の光重合性組成物は、さらに、1以上の着色料を含有できる。
【0078】
本発明の光重合性インクにおいて使用される着色料は、染料、顔料、又はその組み合わせである。有機及び/又は無機の顔料が使用される。着色料は、好ましくは、顔料又はポリマー性染料、最も好ましくは、顔料である。顔料は、当業者に公知の他の一般的な顔料とともに、ブラック、ホワイト、シアン、マジェンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、その混合物、等である。
【0079】
有機顔料の例としては、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、及びキレートアゾ顔料;多環式顔料、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフタロン顔料;キレート染料、例えば、塩基性キレート染料、及び酸性キレート染料;レーキ染料、例えば、塩基性レーキ染料、及び酸性レーキ染料;及びニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、及び蛍光顔料が含まれる。
【0080】
インクジェット印刷用の着色料が特に好ましい。
【0081】
水性の光重合性組成物は、一般に、アルカリ性である。好ましくは、組成物のpHは7.0~9.5である。
【0082】
少なくとも1の式(I)の化合物を含んでなる光硬化性組成物は、本発明の更なる主題である。
【0083】
他の態様によれば、光重合性組成物及びインクを光硬化させる方法は、本発明の更なる主題であり、該方法は、
I)a)水に溶解又は乳化したエチレン系不飽和化合物15~40質量%、好ましくは、20~40質量%、より好ましくは、20~35質量%;
b)少なくとも1の上述のように定義される式(I)の化合物0.1~10質量%、好ましくは、0.1~8質量%、さらに好ましくは、0.2~6質量%;
c)水20~80質量%、好ましくは、20~75質量%、さらに好ましくは、30~70質量%
を含んでなる光重合性組成物を調製する工程;
II)任意に、プレ乾燥する工程;
III)前記工程I)又はII)の組成物を、光源にて、光重合する工程
を含んでなる。
【0084】
従って、多種の多くの光源を使用することが可能であり、光源は、約200~約600 nm、例えば、200~450 nmの波長で発光する。点光源及び平板状ラジエーター(ランプカーペット)は、いずれも、好適である。例としては、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、好適な位置で金属ハロゲン化物にてドープされた中圧、高圧、及び低圧の水銀アークラジエーター(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、スーパーアクチニック蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真用フラッドライトランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、及びレーザーがある。ランプと、露光される本発明による基板との間の距離は、使用目的及びランプの強さによって変動し、例えば、1~150 cmである。365~420 nm、好ましくは、365 nm、385 nm、及び395 nmの波長で発光するLED光源が特に好ましい。
【0085】
任意に、前記光重合性組成物は、前記光源による光重合工程を行う前に、基板に塗布される。基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート、ナイロン、紙、ボード、木材、金属及びガラス、及び当業者に公知の他の基板が含まれるが、これらに限定されない。塗布方法の例としては、フレキソグラフィー、グラビア、スクリーン、インクジェット、リソグラフィー、又は凹版による印刷、スプレー、エアレススプレー、ロールコート、フレキソグラフィー、グラビア、カーテン、カスケード、スロット、ブラシ、及び巻線ローラーによるコーティングが含まれるが、これらに限定されない。前記光重合性組成物を塗布する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0086】
前記光重合性組成物は、既にコーティングされた又はプリントされた層を含んでなる基板上にも塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源による光重合後に、印刷又はコーティングに適する1以上の組成物にて重ね刷り又は上塗りされてもよい。
【0087】
前記コーティング又は印刷方法によって、前記光重合性組成物を基前記板に塗布し、前記光源によって光重合し、得られる物品を、さらにコーティング又は印刷によって加工し、又は加工することなく得られる物品は、本発明の更なる主題である。
【0088】
好ましい具体例によれば、光重合プロセスにおいて、式(I)の化合物は、上述の好ましい具体例において定義されたとおりである。
【0089】
驚くべきことには、発明者らは、式(I)の化合物が、水性のインクジェットインクにおいて、同量で使用される際、Omnirad 819 DW(水中45質量%)よりも優れたLEDランプとの反応性を示し、一方、他の処方においては、いずれも、反応性は同等であるとの知見を得た。さらに、新規の化合物は、全ての系において可溶性であり、これは、水性分散液様のOmnirad 819 DW(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)は使用不可能であるが、新規化合物は、精密濾過を必要とする用途においても使用可能であることを意味する。この特徴は、本発明の更なる技術的利点を表す。
[実施例]
【実施例1】
【0090】
【化21】
窒素雰囲気下、0℃で撹拌しながら、エチル3-フェニルプロピオネート30.0 g(168.3 mモル)及び3-クロロ-3-オキソプロピオン酸メチル24.0 g(175.8 mモル)のジクロロメタン(250 ml)溶液に、塩化アンモニウム67.0 g(502.5 mモル)を少量ずつ添加した。室温において、4時間撹拌した後、反応混合物を氷水に注ぎ、得られた混合物を、30分間、撹拌下に維持した。ついで、有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄色のオイル37.7 gを得た(収率80%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.22 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.05 (t, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.98 (s, 2H), 4.10 (q, 2H), 7.30 (d, 2H), 7.85 (d, 2H)
【実施例2】
【0091】
【化22】
実施例1の化合物34.1 g(122.5 mモル)及びピペリジン0.86 g(10.1 mモル)を、4.6-ジメトキシ-2-ヒドロキシ-ベンズアルデヒド22.3 g(122.4 mモル)のエタノール(100 ml)溶液に添加した。混合物を、還流下で、2時間撹拌し、ついで、室温に冷却した。反応生成物を濾過によって回収して、白-黄色の固体25.0 gを得た(収率50%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.23 (t, 3H), 2.65 (t, 2H), 3.10 (t, 2H), 3.89 (m, 6H), 4.12 (q, 2H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.79 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例3】
【0092】
【化23】
150℃において、撹拌しながら、実施例2の化合物2.50 g(6.09 mモル)及びポリ(エチレングリコール)400 4.87 g(12.18 mモル)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物1.27 g(6.08 mモル)を少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を、水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製して、黄-褐色のオイル3.95 gを得た(収率85%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.70 (t, 2H), 3.00 (t, 2H), 3.50-3.70 (m, 32H), 3.90 (m, 6H), 4.20 (t, 2H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.75 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例4】
【0093】
【化24】
150℃において、撹拌しながら、実施例2の化合物5.00 g(12.18 mモル)及びベンジルアルコール10.00 g(92.47 mモル)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物2.54 g(12.16 mモル)を少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をエタノール30mlにて希釈し、濾過によって沈殿を回収した。沈殿物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(トルエン:酢酸エチル=90:10)によって精製して、白色の固体5.00 gを得た(収率87%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.70 (t, 2H), 3.05 (t, 2H), 3.90 (m, 6H), 5.12 (s, 2H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.25-7.40 (m, 7H), 7.75 (d, 2H), 8.4 (s, 1H)
【実施例5】
【0094】
【化25】
6M塩酸水溶液20mlを、実施例4の化合物2.44 g(5.16 mモル)の1,4-ジオキサン(20ml)溶液に添加した。混合物を、還流下で、1時間撹拌し、ついで、室温に冷却し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン25mlに懸濁化し、還流下で、1時間加熱し、ついで、室温に冷却した。濾過によって反応生成物を回収して、白-オレンジ色の固体1.58 gを得た(収率80%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.72 (t, 2H), 3.02 (t, 2H), 3.90 (m, 6H), 6.30 (d, 1H), 6.45 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.80 (d, 2H), 8.42 (s, 1H)
【実施例6】
【0095】
【化26】
150℃において、撹拌しながら、実施例2の化合物2.50 g(6.09 mモル)及びポリ(エチレングリコール)600 8.22 g(13.70 mモル)の混合物に、酸化水酸化ブチルスズ水和物1.27 g(6.08 mモル)を少量ずつ添加した。混合物を、150℃において、8時間撹拌し、蒸留によりエタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物をジクロロメタンに溶解し、濾過した。濾液を、水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=90:10)によって精製して、黄-褐色のオイル5.11 gを得た(収率87%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):2.68 (t, 2H), 3.00 (t, 2H), 3.55-3.70 (m, 50H), 3.88 (d, 6H), 4.20 (t, 2H), 6.29 (d, 1H), 6.42 (d, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.75 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例7】
【0096】
【化27】
炭酸水素ナトリウム0.549 g(6.53 mモル)を、実施例5の化合物2.50 g(6.54 mモル)のエタノール(40ml)懸濁液に添加した。混合物を、80℃において、1時間撹拌し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、白色の固体2.64 gを得た(収率100%)。
1H-NMR (D
2O-DMSO-d
6, δ ppm):2.60 (t, 2H), 3.10 (t, 2H), 4.10 (d, 6H), 6.68 (s, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.65 (d, 2H), 7.90 (d, 2H), 8.50 (s, 1H)
【実施例8】
【0097】
【化28】
トリエタノールアミン0.975 g(6.54 mモル)を、実施例5の化合物2.50 g(6.54 mモル)のエタノール(40ml)懸濁液に添加した。混合物を、80℃において、1時間撹拌し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、白色の固体3.37 gを得た(収率97%)。
1H-NMR (D
2O-DMSO-d
6, δ ppm):2.65 (t, 2H), 3.15 (t, 2H), 3.30 (m, 6H), 3.95 (m, 6H), 4.09 (s, 3H), 4.11 (s, 3H), 6.66 (s, 1H), 6.75 (s, 1H), 7.65 (d, 2H), 7.90 (d, 2H), 8.45 (s, 1H)
【実施例9】
【0098】
【化29】
0℃において、撹拌した塩化アンモニウム7.93 g(59.47 mモル)のジクロロメタン(50ml)懸濁液に、塩化アセチル4.23 ml(59.44 mモル)及び(2-ブロモエチル)ベンゼン10.00 g(54.04 mモル)を、順次、添加した。室温において、3時間撹拌した後、反応混合物を氷水に注ぎ、得られた混合物を、15分間、撹拌下に維持した。ついで、有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、淡黄色のオイル11.38 gを得て(収率93%)、これを次の工程で直接使用した。
【実施例10】
【0099】
【化30】
0℃において、撹拌しながら、アセトニトリル80ml中に、ピペリジン4.50 g(52.85 mモル)、炭酸カリウム4.75 g(34.37 mモル)、及びヨウ化カリウム0.44 g(2.65 mモル)を含有する混合物に、実施例9の化合物6.00 g(26.42 mモル)を含有するアセトニトリル(20ml)溶液を、ゆっくりと添加した。還流下、6時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。残渣を酢酸エチルにて採取し、水にて洗浄した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。粗製の生成物を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフフィー(ジクロロメタン:メタノール=90:10)によって精製して、黄色のオイル3.25 gを得た(収率53%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.42 (m, 2H), 1.60 (m, 4H), 2.45 (m, 4H), 2.52 (s, 3H), 2.55 (m, 2H), 2.85 (m, 2H), 7.25 (d, 2H), 7.85 (d, 2H)
【実施例11】
【0100】
【化31】
90~95℃において、撹拌しながら、トルエン30ml中に、実施例10の化合物4.65 g(20.10 mモル)及び炭酸ジメチル18.11 g(201.04 mモル)を含有する混合物に、ナトリウムメトキシド4.34 g(24.12 mモル)の30%メタノール溶液を滴下した。混合物を、90~95℃において、4時間撹拌し、蒸留によってメタノールを除去した。室温に冷却した後、反応混合物に、12%HCl水溶液60ml及び水40mlを、順次、添加した。ついで、水相を分離し、炭酸水素ナトリウム飽和溶液にて、pH7.4に塩基性化し、酢酸エチルにて抽出した。有機相を分離し、水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、黄色のオイル4.29 gを得た(収率74%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.45 (m, 2H), 1.62 (m, 4H), 2.45 (m, 4H), 2.59 (m, 2H), 2.88 (m, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.96 (s, 2H), 7.30 (d, 2H), 7.85 (d, 2H)
【実施例12】
【0101】
【化32】
実施例11の化合物4.20 g(14.51 mモル)及びモルホリン0.13 g(1.49 mモル)を、4,6-ジメトキシ-2-ヒドロキシ-ベンズアルデヒド2.64 g(14.49 mモル)のエタノール(20ml)溶液に添加した。混合物を、還流下で、2時間撹拌し、ついで、室温に冷却した。濾過によって、反応生成物を回収して、オフホワイト色の固体4.33 gを得た(収率71%)。
1H-NMR (CDCl
3, δ ppm):1.50 (m, 2H), 1.75 (m, 4H), 2.62 (m, 4H), 2.75 (m, 2H), 3.00 (m, 2H), 3.88 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 6.27 (s, 1H), 6.45 (s, 1H), 7.30 (d, 2H), 7.87 (d, 2H), 8.40 (s, 1H)
【実施例13】
【0102】
【化33】
35℃において、撹拌しながら、ヨウ化メチル4.64 g (32.69 mモル)を、実施例12の化合物3.00 g(7.12 mモル)のアセトニトリル(200 ml)溶液に添加した。35℃において、2.5時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、真空下での蒸留によって溶媒を除去した。残渣を、酢酸エチルにて採取し、濾過によって沈殿物を回収して、淡黄色の固体4.00 gを得た(収率100%)。
1H-NMR (DMSO-d
6, δ ppm):0.75 (m, 2H), 1.00 (m, 4H), 2.29 (s, 3H), 2.32 (m, 2H), 2.57 (m, 4H), 2.77 (m, 2H), 3.09 (s, 3H), 3.10 (s, 3H), 5.75 (s, 1H), 5.90 (s, 1H), 6.67 (d, 2H), 7.00 (d, 2H), 7.45 (s, 1H)
【実施例14】
【0103】
【化34】
撹拌しながら、塩化銀2.54 g(17.72 mモル)を、メタノール130 ml中に実施例13の化合物2.00 g(3.55 mモル)を含有する混合物に添加した。暗所にて、還流下、8時間撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、濾過し、真空下での蒸留によって溶媒を除去して、淡黄色の固体1.68 gを得た(収率100%)。
1H-NMR (DMSO-d
6, δ ppm):0.75 (m, 2H), 1.00 (m, 4H), 2.29 (s, 3H), 2.32 (m, 2H), 2.57 (m, 4H), 2.77 (m, 2H), 3.09 (s, 3H), 3.10 (s, 3H), 5.75 (s, 1H), 5.90 (s, 1H), 6.67 (d, 2H), 7.00 (d, 2H), 7.45 (s, 1H)
【実施例15】
【0104】
比較テスト
本発明の3-ケトクマリンを、Omnirad 819 DW(IGM Resins B.V.)(COMP-1)と比較した。
[実施例15.1]
反応性テスト
【0105】
[実施例15.1.1]
透明な水性製剤
UCECOAT 7200及びEbecryl 350(Allnex)の混合物(質量比99:1)に、光開始剤及び共-開始剤(トリエタノールアミン)を、それぞれ、濃度3質量%で溶解して、テスト用の光重合性組成物を調製した。対照化合物Omnirad 819 DW(水中45質量%)(COMP-1)を、同じ活性含量を有するように、濃度6.6質量%で溶解した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離及び角度30°で配置したLED光源(400 nm)(表1);
2)サンプルから65mmの距離及び角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)(表2)
に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表1に示し、水銀ランプでの結果を表2に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
[実施例15.1.2]
水性のブラックインクジェットインク
インクジェット印刷用の水性ブラックインクに、光開始剤及び共-開始剤(トリエタノールアミン)を、それぞれ、濃度5.0質量%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。対照化合物Omnirad 819 DW(水中45質量%)(COMP-1)を、同じ活性含量を有するように、濃度11質量%で溶解した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、2つの異なる光源:
1)サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)(表3);
2)サンプルから65mmの距離及び30°の角度で配置した水銀ランプ(160 W)(表4)
に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表3に示し、水銀ランプでの結果を表4に示す。
【0109】
【0110】
【0111】
[実施例15.1.3]
透明な水性インクジェットインク
インクジェット印刷用の透明な水性インクに、光開始剤及び共-開始剤(トリエタノールアミン)を、それぞれ、濃度5.0質量%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。対照化合物Omnirad 819 DW(水中45質量%)(COMP-1)を、同じ活性含量を有するように、濃度11質量%で溶解した。2つの異なる条件を使用した:
A.溶液を調製し、40℃において、1時間撹拌し、ついで、室温に冷却し、光重合する;
B.溶液を調製し、40℃において、1時間撹拌し、ついで、室温に冷却し、0.45μmのMilliporeフィルターで濾過し、光重合する。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから25mmの距離及び30°の角度で配置したLED光源(400 nm)に露出した。
光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを取得し、アクリル系二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピークの面積の経時的減少を、IRソフトウエアを使用して測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
400 nmにおける結果(経時の重合度(%)として表示)を表5に示す。
【0112】
【0113】
これらのテストは、式(I)の化合物が、処方において溶解性であり、分散性ではないとの利点とともに、対照(COMP-1)と同等の反応性であるか、より反応性であることを裏付けた。これは、式(I)の化合物が全ての用途に使用されることを意味している。