(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】流動層監視装置及び流動層監視方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230502BHJP
F23C 10/18 20060101ALI20230502BHJP
G01L 7/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
F23G5/50 E
F23C10/18 ZAB
G01L7/00 M
G01L7/00 N
(21)【出願番号】P 2019234239
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】品川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】清水 忠明
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-028945(JP,U)
【文献】特開平09-104020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23C 10/18
G01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層炉内に形成される流動層を監視する流動層監視装置であって、
前記流動層炉は、ガス流通孔を有する分散板が前記流動層炉の炉内下部に配置され、炉内空間が、前記分散板より上方で流動層を形成するための流動室と、前記分散板により下方で外部からの流動化ガスを受けるための風室とに区画され、前記風室にはガス流通孔に向け流動化ガスを送気する送気管が配置され、前記風室内の送気管から前記分散板のガス流通孔を経て上昇する流動化ガスにより前記流動室内に流動層を形成するようになっており、
前記流動層監視装置は、前記送気管に、前記送気管内を流通する流動化ガスの総圧を測定する総圧測定部と、静圧を測定する静圧測定部とを備える圧力測定装置が設けられているとともに、前記静圧測定部で測定された静圧にもとづき静圧変動圧を算出する静圧変動算出部と、前記総圧測定部で測定された総圧と前記静圧測定部で測定された静圧の差から動圧を算出する動圧算出部と、前記動圧算出部で算出された動圧及び前記静圧変動算出部で算出された前記静圧変動圧が所定範囲内にあるかどうか判定する判定部と、を有している流動層監視装置。
【請求項2】
前記圧力測定装置は複数設けられ、前記分散板における異なる位置での複数の前記ガス流通孔のそれぞれに対応して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の流動層監視装置。
【請求項3】
前記圧力測定装置は、送気管内に配設されたピトー管又は送気管に設けられたオリフィス又はベンチュリ管であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流動層監視装置。
【請求項4】
流動層炉内に形成される流動層を監視する流動層監視方法であって、
前記流動層炉は、ガス流通孔を有する分散板が前記流動層炉の炉内下部に配置され、炉内空間が、前記分散板より上方で流動層を形成するための流動室と、前記分散板により下方で外部からの流動化ガスを受けるための風室とに区画され、前記風室にはガス流通孔に向け流動化ガスを送気する送気管が配置され、前記風室内の送気管から前記分散板のガス流通孔を経て上昇する流動化ガスにより前記流動室内に流動層を形成するようになっており、
前記送気管に設けられた圧力測定装置の総圧測定部によって、送気管内を流通する流動化ガスの総圧を測定するとともに、前記圧力測定装置の静圧測定部によって、送気管内を流通する流動化ガスの静圧を測定し、
総圧と静圧の差圧である動圧を動圧算出部で算出するとともに、前記静圧測定部で測定された静圧に基づき静圧変動圧を静圧変動算出部で算出し、
前記動圧算出部で算出された動圧及び前記静圧変動算出部で算出された前記静圧変動圧が所定範囲内にあるかどうか判定部で判定する流動層監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層監視装置及び流動層監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭やバイオマスを燃料とするボイラ発電施設では、気泡流動層炉もしくは循環流動層炉が広く利用されている。これらの流動層炉では、縦型炉の底部に分散板が配されており、この分散板の上に珪砂などの流動媒体が蓄積されている。分散板に形成されたガス流通孔へ空気などのガスを下方から供給することにより、流動媒体の流動層が炉内に形成される。
【0003】
かかる流動層炉では、流動媒体と混在するように流動層内へ供給された燃料が分散板からの空気により燃焼し、燃料の他に流動層内へ供給される被処理物に熱処理等の処理を行なう。
【0004】
しかし、流動層内の温度が流動媒体や灰の融点・軟化点程度の高温になると、流動媒体と燃料中成分との反応により低融点物質が形成されるなどの理由により、流動媒体粒子同士が凝集し、粒子塊を形成するアグロメレーションという状態が発生することがある。この粒子塊はアグロメレーション発生前の元の微細粒子よりも大きい。したがって、アグロメレーションが発生している状態において、粒子塊は、最小流動化速度が大きくなって流動化しづらくなり、沈降して炉底部の分散板上に蓄積され、正常な流動化状態が維持されなくなる。このような状態では、流動層における燃料の燃焼は正常に行われなくなり、分散板から供給されるガスの偏流、吹き抜け、局所的な高温箇所の発生、それに伴うこの高温箇所での粒子の凝集に起因して、流動層炉の正常運転はさらに困難となる。その結果、流動化状態の悪化の深刻化により流動層炉の運転停止を余儀なくされることも多い。したがって、状況が深刻化する前に粒子塊の生成を早期に検知することが重要である。
【0005】
このような問題をかかえる流動層に対し、特許文献1では、流動層形成空間に複数の温度センサを配して、検出温度から流動層の状況を把握することとしている。特許文献1では、流動層の高さ方向に各温度センサが配された第1の温度センサ群と、分散板(特許文献1では「底部」)の面に沿って各温度センサが配された第2の温度センサ群とを有している。特許文献1での図示の例では、第1の温度センサ群は、炉の直径方向における1つの位置で高さが異なるように各温度センサが配され、第2の温度センサ群は炉の高さ方向に同じレベルで、かつ直径方向で異なる位置に各温度センサが配されている。第1の温度センサ群により流動層の高さ方向における流動状態が判定される。また、第2の温度センサ群により得られた検出温度分布に部分的な低温箇所があれば、この低温箇所が流動不良であると判定される。流動不良があると判定されたときには、分散板の下方で、区分された複数の風箱のいずれかからの風量が調整される。
【0006】
また、特許文献2では、分散板(特許文献2では「空気分散板」)の下方に形成された風室での圧力を検出する圧力検出器と周波数分析器を設け、風室圧力変動周波数との相関関係から流動層の層高を測定し、この流動層の層高から流動状態を判断することとしている。風室圧力変動周波数と流動層の層高とは逆比例の関係にあり、圧力変動周波数からこの層高が求まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-271203号公報
【文献】特開平5-052304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、流動層内の粒子塊の有無を直接判定するのではなく、温度分布から流動不良を間接的に推定するので、流動層内での流れを直接測定する方法に比べ、正確さや信頼性に欠ける。
【0009】
また、特許文献2にあっては、風室圧力変動周波数から流動層の層高が求まるとしても、分散板のガス流通孔が流動媒体粒子による目詰りを生じて流動層が正規の高さでなくなっている場合、どのような目詰り状態であるかの判定はできない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、流動層の形成状態に係る流動化ガスの流れについて直接測定を行ない、流動層における粒子塊の生成に基づく流動化不良状態を早期にかつ正確に判定し、流動化状態を良好に保つことが可能な流動層監視装置及び流動層監視方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、流動層炉内に形成される流動層を監視する流動層監視装置であって、前記流動層炉は、ガス流通孔を有する分散板が前記流動層炉の炉内下部に配置され、炉内空間が、前記分散板より上方で流動層を形成するための流動室と、前記分散板より下方で外部からの流動化ガスを受けるための風室とに区画され、前記風室にはガス流通孔に向け流動化ガスを送気する送気管が配置され、前記風室内の送気管から前記分散板のガス流通孔を経て上昇する流動化ガスにより前記流動室内に流動層を形成するようになっており、前記流動層監視装置は、前記送気管に、前記送気管内を流通する流動化ガスの総圧を測定する総圧測定部と、静圧を測定する静圧測定部と、を備える圧力測定装置が設けられているとともに、前記静圧測定部で測定された静圧にもとづき静圧変動圧を算出する静圧変動算出部と、前記総圧測定部で測定された総圧と前記静圧測定部で測定された静圧の差から動圧を算出する動圧算出部と、前記動圧算出部で算出された動圧及び前記静圧変動算出部で算出された前記静圧変動圧が所定範囲内にあるかどうか判定する判定部と、を有している。
【0012】
本発明において、前記圧力測定装置は複数設けられ、前記分散板における異なる位置での複数の前記ガス流通孔のそれぞれに対応して配置されているようにすることが望ましい。
【0013】
本発明において、前記圧力測定装置は、送気管内に配設されたピトー管又は送気管に設けられたオリフィス又はベンチュリ管とすることができる。
【0014】
本発明は、流動層炉内に形成される流動層を監視する流動層監視方法であって、前記流動層炉は、ガス流通孔を有する分散板が前記流動層炉の炉内下部に配置され、炉内空間が、前記分散板より上方で流動層を形成するための流動室と、前記分散板より下方で外部からの流動化ガスを受けるための風室とに区画され、前記風室にはガス流通孔に向け流動化ガスを送気する送気管が配置され、前記風室内の送気管から前記分散板のガス流通孔を経て上昇する流動化ガスにより前記流動室内に流動層を形成するようになっており、前記送気管に設けられた圧力測定装置の総圧測定部によって、送気管内を流通する流動化ガスの総圧を測定するとともに、前記圧力測定装置の静圧測定部によって、送気管内を流通する流動化ガスの静圧を測定し、総圧と静圧の差圧である動圧を動圧算出部で算出するとともに、前記静圧測定部で測定された静圧に基づき静圧変動圧を静圧変動算出部で算出し、前記動圧算出部で算出された動圧及び前記静圧変動算出部で算出された前記静圧変動圧が所定範囲内にあるかどうか判定部で判定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、流動層の形成状況に係る流動化ガスの流れについて直接測定を行ない、流動層における粒子塊の生成に基づく流動化不良状態を早期かつ正確に判定し、流動化状態を良好に保つことが可能な流動層炉監視装置及び流動層監視方法の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としての流動層炉の要部についての概要構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の装置に用いられるピトー管による圧力測定装置の概要構成図である。
【
図3】
図1の装置に用いられる他の例としてのピトー管を示す図である。
【
図4】ガス供給の正常状態及び異常状態を説明するための
図1の装置の縦断面図の一部である。
【
図5】
図1とは分散板の形式が異なる流動層炉について、種々の流動層形式の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1において、符号10は流動層炉(以下、「炉10」)であり、
図1では、流動層Sを形成する炉下部が示されている。この炉10には、流動層監視装置11(
図2参照)が接続されている。
【0019】
縦型の筒状をなす炉10の下部には分散板12が設けられており、炉10の内部空間が分散板12より上方の流動室13と、分散板12より下方の風室14とに区画されている。風室14の下部には外部からガスGを受けるガス受入口14Aが設けられている。
【0020】
分散板12は、板面にわたり分布して位置するガス流通孔12Aが複数形成されており、風室14で炉10外から供給される流動層Sの形成のための流動化ガスG(以下「ガスG」)がガス流通孔12Aを通して上方へ流通し流動室13へ分散して上昇供給される。
【0021】
ガス流通孔12Aには、ガス受入口14Aから受けたガスGを風室14から流動室13へ供給するための送気管15が分散板12の下面側で接続されている。
図1には、送気管15をガス流通孔12Aに接続する接続形態の2つの例が、
図1において左半分に示される左例及び
図1において右半分に示される右例として示されている。左例では、各ガス流通孔12Aに対しそれぞれ独立した送気管15-1,15-2,15-3が接続されている。また、右例では、いくつかのガス流通孔12Aを1つのグループとして、1つの送気管15から分岐した分岐管15A,15B,15Cが同じグループ内の各ガス流通孔12Aに接続されている。これらの2つの接続形態は、適宜一方を採用してもよく、あるいは両方を混在させて採用してもよい。左例においては、各送気管15-1,15-2,15-3のそれぞれの内部に流動層監視装置11の一部である圧力測定装置11A(
図2参照)をなすピトー管16が配され、右例においては分岐管15A,15B,15Cが設けられている元管としての送気管15内にピトー管16が配されている。
【0022】
図1において、左例として示される送気管15-1,15-2,15-3内に配されるピトー管16と、右例として示される送気管15に配されるピトー管16とは同一構造である。
【0023】
ピトー管16は、
図2に見られるように、内管と外管をもつ二重管構造となっており、内管として形成された総圧測定部としての総圧管17と、この総圧管17の外側に位置する外管として形成された静圧管18とを有している。総圧管17は、ガスGの流れに対向する向きに一端部が開口された総圧孔17Aで、ガスGの流れの総圧p(動圧p
d+静圧p
s)を受けるようになっている。静圧管18は、一端部近傍の周壁に開口して形成された静圧孔18Aで静圧p
sを受けるようになっている。静圧管18の他端部側は、静圧p
sを測定する静圧測定部19となっているとともに、総圧管17の他端部側が接続され総圧pと静圧p
sとの差圧△p、すなわち動圧p
dを算出する動圧算出部20となっている。この動圧p
dからはガスGの流量を求めることが可能である。ピトー管16の構造は、
図2に限定されるものでなく、
図3のごとく、ガスGの流れに対向する向きに開口された総圧孔17Aをもった総圧管17と、ガス流れに平行な静圧孔18Aをもつ静圧管18をそれぞれ別個に並べて設置しても良い。
【0024】
ピトー管16は、このピトー管16での測定値を処理して所定信号を得る後述の諸部を備えた処理装置11Bに接続されている。この処理装置11Bは炉外に設けられており、
信号平滑部11B-1と、信号差算出部11B-2と、判定部11B-3と、報知部11B-4とを有している。
【0025】
図2に見られるように、静圧測定部19は、信号平滑部11B-1と信号差算出部11B-2に接続されており、静圧p
sに対応する静圧信号を信号平滑部11B-1と信号差算出部11B-2へ送るようになっている。本実施形態では、信号平滑部11B-1と、この信号平滑部11B-1に接続された信号差算出部11B-2とによって、静圧変動圧を算出するための静圧変動算出部が構成されている。また、
図2に見られるように、信号差算出部11B-2と動圧算出部20が、種々の判定を行なう判定部11B-3に接続されており、さらに、判定部11B-3が、その判定結果を報知する報知部11B-4に接続されている。
【0026】
ガスGの流れの静圧psは経時的に変動する。信号平滑部11B-1は、変動する静圧psに対応する静圧信号を平滑化して平均静圧値psmに対応する平均静圧信号を出力する。信号差算出部11B-2は、平均静圧信号を信号平滑部11B-1から受けるとともに、瞬時の静圧psを示す静圧信号を静圧測定部19から受け、両者の差、すなわち静圧変動分psv=psm-psを信号差として算出し、静圧変動分psvに対応する静圧変動分信号を判定部11B-3へ送る。
【0027】
判定部11B-3は、信号差算出部11B-2からの静圧変動分信号(静圧変動分psv)と、動圧算出部20からの差圧(動圧pd)に対応する動圧信号(流量信号)とを受け、後述するように静圧変動分psvと動圧pdから流動層Sの流動状態を判定する。判定部11B-3には、流動層Sにおける正常な状態のときの正常動圧範囲pdo及び正常静圧変動範囲psvoが予め入力され記憶されている。このとき、これらの正常動圧範囲pdo及び正常静圧変動範囲psvoは、分散板12における複数位置でのガス流通孔12Aの位置に対応してそれぞれ入力そして記憶されている。判定部11B-3では、各ガス流通孔12Aのそれぞれに配されたピトー管16からの出力に基づいた動圧信号及び静圧変動分信号について、次に説明するように、対応位置での正常動圧範囲pdo及び正常静圧変動範囲psvoとの比較がなされる。なお、静圧変動分は平均値からの変動を求めるだけでなく、例えば変動の周波数スペクトルをとり、周波数ごとに正常静圧変動の周波数スペクトルとの比較を行ってもよい。また別の数学的手法として静圧変動のフラクタル解析を行って比較してもよい。
【0028】
<状態(i)>
ガス流通孔12AでのガスGの流れが正常状態の場合には、ガスGは正常な速度で送気管15内を流れているので動圧pdは正常動圧範囲pdoの範囲内にある。動圧pdは、既述したようにピトー管16での総圧pと静圧psとの差として求められる。また、静圧変動分psvは正常静圧変動範囲psvoの範囲内で変動しており、これは、ガス流通孔12Aで円滑なガス流通がなされているとともに、流動層S内におけるガス流通孔12A付近で気泡が適切に発生していると推測される。かかる状態では、判定部11B-3は、そのガス流通孔12Aの位置で流動媒体が凝集して粒塊となるアグロメレーション現象が生じていないと判定する。
【0029】
<状態(ii)>
動圧pdが正常動圧範囲pdoよりも低下している場合には、ガスGの流量が正常値よりも低下していると推測され、判定部11B-3は、分散板12のガス流通孔12A付近においてガスGの流通を妨げるような粒子塊がアグロメレーション現象により生成されていると判定する。また、この状態では、静圧変動分psvについては、正常静圧変動範囲psvoの範囲よりも低下していることも、低下していないこともあるが、いずれにせよ、ガス流通孔12AでのガスGの流通が妨げられているので、異常状態が発生していると言える。
【0030】
<状態(iii)>
動圧pdが正常動圧範囲psdoにある場合には、ガス流通孔12A付近においてガスGの流通が妨げられていないと推測できるが、この場合であっても、後述するように静圧変動分psvが正常静圧変動範囲psvoよりも低下しているときには異常状態が発生していると言える。具体的には、静圧変動分psvが正常静圧変動範囲psvoよりも低下している場合には、流動層S内においてガス流通孔12Aから離れた位置で気泡が発生していると推測できる。このように、ガス流通孔12A付近においてガスGが流通しつつもガス流通孔12Aから離れた位置で気泡が発生している状態であると推測される場合には、判定部11B-3は、クリンカ等の粗大粒子が粒子塊となってガス流通孔12A付近に沈降して堆積した異常状態が発生していると判定する。この状態は、ガスGが粗大粒子同士の隙間を流通して粗大粒子の堆積層を通過した後に、ガス流通孔12Aから離れた位置で気泡を発生していることを示している。
【0031】
このように、判定部11B-3は、状態(i)については正常状態であると判定し、状態(ii)及び状態(iii)については異常状態であると判定する。これらの判定は、各ピトー管16に対応するガス流通孔12A毎に行われる。したがって、本実施形態では、異常状態が発生した位置を分散板12における2次元的な位置として特定することができる。
【0032】
報知部11B-4は、判定部11B-3による判定結果、すなわち、既述の状態(i)~(iii)のいずれであるのかを、分散板12における2次元的な位置とともに報知する。報知部11B-4による報知は、ディスプレイ等の表示装置により視覚的に行われても、音声等により聴覚的に行われてもよい。
【0033】
図4は、既述の状態(i)~(iii)を説明するための
図1の装置の断面図の一部である。
図4では、流動層Sにおける種々の状態(i)~(iii)を理解しやすく同時に示すために、分散板22は、
図1における平板状の形態の分散板12とは異なり、段状の形態をなしている。
図4において、分散板22は、炉の中央位置から右側部分が示されており、炉全体としては左右対称にもしくは同心円状に段状をなし、中央位置が最も低く位置している。例えば、図示の例では、分散板22は、中央位置に近く最も低い位置にある第一分散域22-1から順次段状に高くなって、第二分散域22-2、第三分散域22-3、第四分散域22-4が形成されている。第一分散域22-1と第二分散域22-2の境界に位置する垂立壁には第一分散域22-1に向け開口する第一ガス流通孔22Aが形成されている。これと同様に、順次、第二分散域22-2に向けて第二ガス流通孔22B、第三分散域22-3に向け第三ガス流通孔22Cが形成されている。
【0034】
図4では、かかる段状の第一分散域22-1、第二分散域22-2、第三分散域22-3における流動層Sについて、3つの状態(既述の状態(i)~(iii))が示されている。この3つの状態は、それぞれ異なる炉内状況下で生ずるが、比較の便宜上、同一図に図示されている。
【0035】
図4にて最下段(最左端)に位置する第一分散域22-1上では、流動層Sは、既述の<状態(i)>となっている。すなわち、動圧p
dが正常動圧範囲p
doにあり、流動層Sではガス流通孔22AからガスGが流動室13へ向け正常に流入していることを意味している。また、この状態では、流動層S内で、所定の静圧変動範囲p
svoで静圧p
sが変動しており、ガス流通孔22A付近で正常に気泡Bが生じている。
【0036】
次に、第二分散域22-2上では、流動層Sは、既述の<状態(ii)>となっている。具体的には、ガス流通孔22BではガスGが流通しておらず、動圧pdが正常動圧範囲pdoよりも低下している。これは、流動層S内でアグロメレーション現象により生じた粒子塊M1が第二分散域22-2上に比較的密に堆積してガス流通孔22Bを閉塞し、ガスGの流通を妨げており、異常状態が発生していることを意味している。
【0037】
次に、第三分散域22-3上では、流動層Sは、既述の<状態(iii)>となっている。すなわち、ガス流動孔22CでのガスGの流通が多少は低下しているとしても、ピトー管16で得られる動圧pdは正常動圧範囲psdoにあると言える程度の値となっている。一方、静圧変動分psvは正常静圧変動範囲psvoよりも低下している。これは、流動層S内で生じたクリンカ等の粗大粒子に起因する粒子塊M2が第三分散域22-3に堆積してはいるものの、粒子塊M2同士間に隙間が残存していて、この隙間を通してガス流通孔22CからガスGが流通し、ガス流通孔22Aから離れた位置で気泡Bを生じており、異常状態が発生していることを意味している。
【0038】
本実施形態では、流動層の形成状況に係る流動化ガスの流れについて直接測定を行ない、流動層における粒子塊の生成に基づく流動化不良状態を早期かつ正確に判定できる。また、本実施形態によれば、動圧pd及び静圧変動分psvの両方に基づいて異常状態が判定されるので、流動層内で流動層が正常状態であるか否か、異常があれば、分散域のどの位置で異常となっているかの判断ができるだけではなく、異常があれば、流動層でどのような状態、すなわち粒子塊がどのように生成され、分散域上に堆積されているか推定できる。
【0039】
しかも、本実施形態では、プローブとしてのピトー管は流動層外に位置する送気管内に配されていて、送気管内には流動粒子が進入してこないので、ピトー管の総圧孔、静圧孔が目詰りするおそれはなく、信頼性をもって測定できる。
【0040】
次に、
図1に図示した形態の変形例について
図5にもとづき説明する。
【0041】
図1では、分散板12に形成された複数のガス流通孔12Aのそれぞれに送気管15もしくはその分岐管15A,15B,15Cを接続していたが、ガス流通孔12Aの数が多い場合は、送気管もしくは分岐管の接続が面倒である。そこで、この変形例として示す
図5では、複数のガス流通孔12Aをいくつかのグループに分け、分散板12の下方に、各グループに対応して副送気室17-1,17-2,17-3を形成し、この副送気室17-1,17-2,17-3に対して送気管15を1つずつ接続することとしている。こうすることで、ガス流通孔12Aを数多く形成しても、送気管15の数を少なくすることができ、これに伴い送気管15内に配されるピトー管16の総数も少なくすることができる。
【0042】
図1ないし
図5に基づき説明した形態では、圧力測定装置がピトー管であることとしたが、これに代えて、圧力測定装置は、送気管に設けられたオリフィス又はベンチュリ管であることとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 流動層炉
11 流動層監視装置
11B-1 信号平滑部(算出部)
11B-2 信号差算出部(算出部)
11B-3 判定部
11B-4 報知部
12 分散板
12A ガス流通孔
13 流動室
14 風室
15 送気管
16 ピトー管(圧力測定装置)
17 総圧管(総圧測定部)
19 静圧測定部
20 動圧算出部