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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】硬性鏡用のリレー光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230502BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20230502BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20230502BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B13/00
G02B23/26 A
A61B1/00 R
A61B1/00 730
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018159686
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020034658
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(73)【特許権者】
【識別番号】518307927
【氏名又は名称】李 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 洋己
(72)【発明者】
【氏名】菅家 守人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】大竹 潤
(72)【発明者】
【氏名】李 大勇
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-221658(JP,A)
【文献】特開2017-223806(JP,A)
【文献】特公昭49-005993(JP,B1)
【文献】特開2002-131509(JP,A)
【文献】特開2002-365510(JP,A)
【文献】特開2007-330706(JP,A)
【文献】特開2000-162508(JP,A)
【文献】特開平07-134246(JP,A)
【文献】米国特許第05188092(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G02B 13/00
G02B 23/26
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸となるように接合されている複数の筒体を有するレンズ固定枠と、
前記レンズ固定枠の軸方向において前記筒体の接合位置以外の位置で前記レンズ固定枠内に光軸が一致するように設けられる、接合レンズを含まない複数のレンズと、
前記筒体の接合位置近傍に設けられる、前記複数のレンズの開口絞りと、を備える
硬性鏡用のリレー光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の硬性鏡用のリレー光学系であって、
前記複数の筒体の少なくとも1つは、互いに近接する正の屈折力を有するレンズと負の屈折力を有するレンズとを含む前段レンズ群、互いに近接する負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとを含む後段レンズ群、ならびに前記前段レンズ群および前記後段レンズ群の間に配置され且つ正の屈折力を有する中段レンズを、前記複数のレンズの一部として有する
硬性鏡用のリレー光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の硬性鏡用のリレー光学系であって、
前記前段レンズ群および前記後段レンズ群の少なくともいずれかにおいて、前記正の屈折力を有するレンズと、前記負の屈折力を有するレンズとは、有効径の外部において、互いに突当てられている
硬性鏡用のリレー光学系。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の硬性鏡用のリレー光学系であって、
前記レンズ固定枠の周方向に沿った少なくとも3か所に形成される貫通孔から前記複数のレンズの少なくとも一部の外縁まで延在し、該一部を前記レンズ固定枠に固定する接着体を、さらに備える
硬性鏡用のリレー光学系。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の硬性鏡用のリレー光学系であって、
前記レンズ固定枠、前記複数のレンズ、および前記複数のレンズの少なくとも一部の光軸方向の位置を調整する隙間環それぞれの熱膨張係数E、E、およびEが、E≧(E+E)を満たす
硬性鏡用のリレー光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬性鏡用のリレー光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療および工業などの分野で硬性鏡が用いられている。硬性鏡は、多数のレンズを用いて、挿入部先端の被写体像を基端側に伝達する。被写体像の良好な視認性のために、多数のレンズを光軸方向において高精度で合わせた状態で固定することが求められている。従来は、高精度で位置合わせした固定のために、接合レンズ(特許文献1参照)およびレンズ押さえ筒(特許文献2参照)などが適用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-118136号公報
【文献】特開2010-158412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療などの分野で用いられる硬性鏡には、使用のたびに滅菌処理が施される必要がある。従来の硬性鏡には、ステラッド滅菌法により滅菌処理が適用されている。しかし、ステラッド滅菌法を行う装置は高価であり、低コストであるオートクレーブ滅菌法の適用が望まれている。オートクレーブ滅菌法では、硬性鏡が高温および高圧下に曝される。高温および高圧下では、収縮などにより硬性鏡内のレンズに位置ズレおよび芯ズレが発生して、初期の光学特性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる観点に鑑みてなされたもので、高温および高圧下に曝しても、光学特性を公差内に維持し得る硬性鏡用のリレー光学系を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による硬性鏡用のリレー光学系は、
互いに同軸となるように接合されている複数の筒体を有するレンズ固定枠と、
前記レンズ固定枠の軸方向において前記筒体の接合位置以外の位置で前記レンズ固定枠
内に光軸が一致するように設けられる、接合レンズを含まない複数のレンズと、
前記筒体の接合位置近傍に設けられる、前記複数のレンズの開口絞りと、を備える
ことを特徴とするものである。
【0007】
また、第2の観点による硬性鏡用のリレー光学系において、
前記複数の筒体の少なくとも1つは、互いに近接する正の屈折力を有するレンズと負の屈折力を有するレンズとを含む前段レンズ群、互いに近接する負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとを含む後段レンズ群、ならびに前記前段レンズ群および前記後段レンズ群の間に配置され且つ正の屈折力を有する中段レンズを、前記複数のレンズの一部として有する
ことが好ましい。
【0008】
また、第3の観点による硬性鏡用のリレー光学系において、
前記前段レンズ群および前記後段レンズ群の少なくともいずれかにおいて、前記正の屈折力を有するレンズと、前記負の屈折力を有するレンズとは、有効径の外部において、互いに突当てられている
ことが好ましい。
【0010】
また、第5の観点による硬性鏡用のリレー光学系において、
前記レンズ固定枠の周方向に沿った少なくとも3か所に形成される貫通孔から前記複数のレンズの少なくとも一部の外縁まで延在し、該一部を前記レンズ固定枠に固定する接着体を、さらに備える
ことが好ましい。
【0012】
また、第7の観点による硬性鏡用のリレー光学系において、
前記レンズ固定枠、前記複数のレンズ、および前記複数のレンズの少なくとも一部の光軸方向の位置を調整する隙間環それぞれの熱膨張係数Ec、El、およびEsが、Ec≧(El+Es)を満たす
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温および高圧下に曝しても、光学特性が公差内に維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るリレー光学系を含む硬性鏡の構成を概略的に示す外観図である。
図2図1の硬性鏡光学系の概略構成を示す構成図である。
図3図2のリレー光学系の軸方向に沿った断面図である。
図4図3のIV-IV線から見たリレー光学系の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る硬性鏡用のリレー光学系20を適用した硬性鏡10の模式図である。硬性鏡10は、挿入部11および操作部12を含んで構成されている。
【0017】
挿入部11は、硬質の円柱状である。挿入部11は、例えば体内などに先端側から挿入されて使用される。挿入部11の基端側に操作部12が連結されている。操作部12は、挿入部11の挿入位置調整などを行わせるべく、使用者に把持され得る。
【0018】
挿入部11には、先端から基端を超えて延在する、硬性鏡光学系13およびライトガイド14が設けられている。硬性鏡光学系13は、操作部12内まで延在する。硬性鏡光学系13は、操作部12側において、操作部12に装着されるカメラ15と光学的に結合し得る。カメラ15は、操作部12に着脱自在である。ライトガイド14は、操作部12を挿通して硬性鏡10の外部に延在する。操作部12側から延在するライトガイド14の端は、光源装置16に着脱自在に結合され得る。
【0019】
硬性鏡10の使用時には、光源装置16が放射する照明光が、ライトガイド14を介して、挿入部11の先端近傍の観察対象物に照射される。観察対象物の光学像が、硬性鏡光学系13によりカメラ15の受光面に形成される。カメラ15は、例えば、4K解像度または8K解像度などの高解像度を有する。カメラ15が撮像した画像は、画像信号として表示装置17に送信される。表示装置17は、カメラ15が撮像した画像を表示する。
【0020】
次に、硬性鏡光学系13について説明する。図2に示すように、硬性鏡光学系13は、対物光学系18、撮像光学系19、およびリレー光学系20を含んで構成されている。対物光学系18は、挿入部11の先端に設けられている。対物光学系18は、観察対象物の実像を形成する。撮像光学系19は、観察対象物の実像をカメラ15の受光面上に形成する。リレー光学系20は、対物光学系18および撮像光学系19の間に配置されている。リレー光学系20は、対物光学系18が形成する観察対象物の実像を撮像光学系19まで伝達する。
【0021】
リレー光学系20の構造を、図3を用いて詳細に説明する。リレー光学系20は、レンズ固定枠21および複数のレンズ22を含んで構成されている。さらに、リレー光学系20は、接着体23、隙間環24、および開口絞り25を含んでよい。
【0022】
レンズ固定枠21は、複数の筒体26を有する。筒体26は、任意の材料で形成されてよく、例えば、真鍮、アルミ合金、およびステンレスなどの金属によって形成される。複数の筒体26は、互いに同軸となるように接合されている。複数の筒体26は、任意の方法で接合されていてよく、例えば、溶接により接合される。
【0023】
本実施形態において、複数の筒体26のすべては、同一の大きさで、同一の形状である。筒体26の軸方向における一方の端には、内方フランジ27が形成されている。2つの筒体26は、内方フランジ27が形成される端の反対の端において接合されている。内方フランジ27が形成される端の反対の端において接合される2つの筒体26は、連結筒28を構成する。レンズ固定枠21は、少なくとも1つの連結筒28を有する。レンズ固定枠21は、挿入部11の長さに応じた数の連結筒28を含む。なお、レンズ固定枠21が複数の連結筒28を有する構成においては、2つの連結筒28は、それぞれの軸方向における端において接合されている。
【0024】
複数のレンズ22は、それぞれ任意の硝材または任意の透過性樹脂によって形成されてよい。複数のレンズ22は、レンズ固定枠21内に、それぞれの光軸が一致するように固定されている。複数のレンズ22は、レンズ固定枠21の軸方向において、複数の筒体26の接合位置jp以外の位置に配置されている。複数のレンズ22は、接合レンズを含まない。すなわち、複数のレンズ22の中のレンズ同士は接着されていない。
【0025】
単一の連結筒28に設けられるレンズ22は、単一の連結筒28の一方の端面に形成される実像を他端の端面に形成するように、設計され、連結筒28内に固定されている。したがって、複数の連結筒28の端面同士を接合することにより、接合された複数の連結筒28全体においても、実像が伝達され得る。
【0026】
本実施形態において、複数のレンズ22の一部は、複数の筒体26の少なくとも1つに、前段レンズ群29、後段レンズ群30、および中段レンズ31として、複数の筒体26の少なくとも1つに設けられている。さらに本実施形態では、複数の筒体26のすべてに、同じ前段レンズ群29、同じ後段レンズ群30、および同じ中段レンズ31が設けられている。前段レンズ群29、中段レンズ31、および後段レンズ群30は、筒体26の前段レンズ群29側の端面に形成される実像における各点像を、平行光束にして、後段レンズ群30から出射させる。
【0027】
前段レンズ群29は、筒体26の内方フランジ27が形成される端に配置されている。前段レンズ群29は、内方フランジ27が形成される端側から並ぶ、正の屈折力を有するレンズ29pと負の屈折力を有するレンズ29nとを含む。後段レンズ群30は、内方フランジ27が形成される端側から並ぶ、負の屈折力を有するレンズ30nと正の屈折力を有するレンズ30pとを含む。中段レンズ31は、前段レンズ群29および後段レンズ群30の間に配置されている。中段レンズ31は、正の屈折力を有している。
【0028】
前段レンズ群29において、正の屈折力を有するレンズ29pと負の屈折力を有するレンズ29nとは、それぞれの有効径の外部において、接着されずに、互いに突当てられていてよい。有効径とは、レンズの屈折面として機能する範囲、または硬性鏡光学系13の状態で、レンズの面内で光線が通過する範囲である。また、後段レンズ群30において、正の屈折力を有するレンズ30pと負の屈折力を有するレンズ30nとは、それぞれの有効径の外部において、接着されずに、互いに突当てられていてよい。
【0029】
複数のレンズ22は、任意の機構によって、レンズ固定枠21に固定されていてよい。本実施形態において、複数のレンズ22は、接着体23によってレンズ固定枠21に固定されている。接着体23は、レンズ固定枠21の円筒側壁に形成される貫通孔thからレンズ22の外周縁まで延在する。貫通孔thは、図4に示すように、レンズ固定枠21の周方向に沿った少なくとも3か所に形成されている。貫通孔thは、周方向に均等に配置されることが好ましく、3か所に形成される構成においては、120°間隔で配置されることが好ましい。本実施形態においては、3か所に形成されている。したがって、本実施形態では、接着体23は、レンズ22の周方向に沿った異なる3か所において、当該レンズ22をレンズ固定枠21に固定する。
【0030】
接着体23のガラス転移温度は、オートクレーブ法による硬性鏡10の滅菌温度以上であってよい。オートクレーブ法による硬性鏡10の滅菌温度は、115℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
【0031】
隙間環24は、任意の材料によって形成されてよいが、(1)式を満たす材料によって形成することが好ましい。
c≧(El+Es) (1)
(1)式において、Ecは、レンズ固定枠21の熱膨張係数である。Elは、複数のレンズ22それぞれの熱膨張係数である。Esは、隙間環24の熱膨張係数である。本実施形態では、隙間環24は、例えば、真鍮、アルミ合金、およびステンレスなどの金属により形成されている。
【0032】
隙間環24は、前段レンズ群29および中段レンズ31の間、中段レンズ31および後段レンズ群30の間に設けられている。隙間環24は、有効径の外部においてレンズ22に当接する。隙間環24は、リレー光学系20の製造時に、レンズ固定枠21の軸方向におけるレンズ22の位置を調整し、所望の位置に位置合わせさせる。
【0033】
開口絞り25は、筒体26の接合位置jp近傍に設けられている。開口絞り25は、リレー光学系20が伝達する光の光量を調整する。
【0034】
以上のような構成の本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、複数の筒体26が互いに同軸となるように接合させることによりレンズ固定枠21が形成されている。このような構成により、リレー光学系20では、高温および高圧下にレンズ固定枠21に発生する応力が接合部分で緩和され得る。したがって、リレー光学系20は、高温および高圧下におけるレンズ22のズレ量を低減し得る。その結果、リレー光学系20は、高温および高圧下に曝しても、初期の光学特性の低下を低減し得る。また、通常の硬性鏡では、リレー光学系のレンズ固定枠は単一の長尺の円筒である。このような長尺の円筒内に、レンズ間に隙間環を介在させながら多数のレンズが挿入された状態で、多数のレンズは、両端側からフランジ、カシメ、押え環などによって挟み込むことにより固定される。このような構成では、高温に曝すことにより、レンズ固定枠、レンズ、および隙間環の熱膨張率の違いにより、例えば、隙間環がレンズを常温時より強く押厚することによりレンズの表面が歪みうる。また、例えば、隙間環とレンズの間に隙間が生じることによりレンズの位置ズレおよび芯ズレが発生しうる。一方で上述のような構成のリレー光学系20では、レンズ固定枠21全体より短い筒体26毎においてレンズ22を固定できるので、隙間環を介在させた両端側からの押圧以外の固定方法であっても、レンズ22を高精度で位置合わせおよび芯合わせを行わせ得る。それゆえ、高温および高圧下に曝しても、初期の光学特性の低下が低減し得る。また、リレー光学系20は、光軸方向の位置を高い精度で合わせられるので、接合レンズの採用を回避し得る。
【0035】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、リレー光学系20が有する複数のレンズ22には、接合レンズが含まれていない。一般的に、接合レンズは接着剤を用いて接合させているため、高熱環境に繰り返し曝されることにより、白濁が生じ得る。接合レンズの屈折面における白濁は、透過性などの接合レンズの光学性能を低下させる。これに対して、上述の構成のリレー光学系20は、高温に曝すことによる光学性能の低下を抑止し得る。
【0036】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、レンズ22は、筒体26の接合位置jp以外の位置に設けられている。筒体26の接合位置jpでは、レンズの高精度での芯合わせが難しい。レンズの一部として筒体26の内径と同じ長さの外径であるロッドレンズを採用することにより筒体26内での高精度での芯合わせを行い得るが、高温下に曝すことにより、熱膨張率の違いにより芯ズレが生じうる。これに対して、上述の構成のリレー光学系20では、レンズ22の芯ズレを生じさせることなく、高精度でレンズ22の芯合わせが行われ得る。
【0037】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、筒体26が互いに近接する正の屈折力を有するレンズ29pと負の屈折力を有するレンズ29nとを含む前段レンズ群29、互いに近接する負の屈折力を有するレンズ30nと正の屈折力を有するレンズ30pとを含む後段レンズ群30、ならびに前段レンズ群29および後段レンズ群30の間に配置される中段レンズ31を有している。このような構成により、リレー光学系20では、入射する光線は正の屈折力を有するレンズ29pにより、光軸方向に屈折する。したがって、リレー光学系20では、比較的大きなNAでありながら、比較的小型の有効径であるレンズが採用され得る。また、リレー光学系20では、正の屈折力を有するレンズ29pに近接した負の屈折力を有するレンズ29nが、正の屈折力を有するレンズ29pにより生じる色収差を低減させ得る。また、リレー光学系20では、負の屈折力を有するレンズ29nに隣接して正の屈折率を有する中段レンズ31が、光線束を光軸方向に収束させ得る。また、リレー光学系20では、中段レンズ31に隣接する後段レンズ群30が、前段レンズ群29および中段レンズ31で生じた色収差を低減し得る。また、リレー光学系20では、後段レンズ群30が負の屈折率を有するレンズ30nおよび正の屈折率を有するレンズ30pを含むので、色収差をさらに低減し得る。
【0038】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、前段レンズ群29および後段レンズ群30の少なくともいずれかにおいて、正の屈折力を有するレンズ29p、30pと、負の屈折力を有するレンズ29n、30nとは、有効径の外部において、互いに突当てられている。このような構成により、リレー光学系20では、レンズ22の間に介在させる隙間環24の数を低減しながらレンズを固定し得る。したがって、リレー光学系20は、熱膨張率の差によるズレの発生要因となりうる隙間環24の数が少ないので、レンズ22に発生するズレのズレ量をより低減させ得る。
【0039】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、開口絞り25が筒体26の接合位置jp近傍に設けられている。上述のように、前段レンズ群29、中段レンズ31、および後段レンズ群30が、筒体26の前段レンズ群29側の端面に形成される実像における各点像を、平行光束にして、後段レンズ群30から出射させる構成においては、開口絞り25の位置ズレによる解像度の劣化は比較的生じにくい。したがって、リレー光学系20では、位置ズレに対する許容量が大きな開口絞り25が接合位置jp近傍に設けられているので、スペースが有効に活用され得る。
【0040】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、レンズ固定枠21に形成される貫通孔thからレンズ22の外縁まで延在する接着体23が、レンズ22をレンズ固定枠21に固定する。このような構成により、リレー光学系20では、隙間環24を固定に用いていないので、高温および高圧下に曝されても、光軸方向におけるレンズ固定枠21に対する各レンズ22の位置ズレのズレ量をより低減し得る。また、リレー光学系20では、周方向に沿った3か所以上の貫通孔thからの接着剤(硬化前の接着体23)の注入量を調整することによりレンズ22毎の芯合わせが容易である。
【0041】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、接着体23のガラス転移温度が滅菌処理温度以上である。接着体23はガラス転移温度以上で異常膨張しうる。一方で上述のような構成により、リレー光学系20では、オートクレーブによる滅菌処理を施しても、接着体23の異常膨張の発生が防がれる。したがって、リレー光学系20では、接着体23の異常膨張によるレンズ22の芯ズレおよびレンズ22への歪の発生が防がれ得る。
【0042】
また、本実施形態に係る、硬性鏡10用のリレー光学系20では、Ec≧(El+Es)を満たすレンズ固定枠21、複数のレンズ22、および隙間環24が用いられている。レンズ固定枠21の熱膨張が、レンズ22および隙間環24の熱膨張より小さい場合、レンズ22の表面に隙間環24からの応力が印加されるため、レンズ22の位置ズレおよび歪が発生しうる。一方で上述のような構成により、リレー光学系20では、高温化に曝されて熱膨張しても、隙間環24がレンズ22を押圧することが防がれる。したがって、リレー光学系20では、高温化に曝しても、レンズ22の位置ズレおよび歪の発生を防ぎ得る。
【0043】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0044】
例えば、本実施形態において、硬性鏡10はカメラ15および表示装置17を用いて、観察対象物を視認させる構成であるが、カメラ15を用いずに、観察者が硬性鏡光学系13の基端側の端側から観察対象物を視認する構成であってもよい。当該構成においては、撮像光学系19の代わりに、リレー光学系20が伝達した実像の虚像を形成する接眼光学系が硬性鏡光学系13に適用される。
【符号の説明】
【0045】
10 硬性鏡
11 挿入部
12 操作部
13 硬性鏡光学系
14 ライトガイド
15 カメラ
16 光源装置
17 表示装置
18 対物光学系
19 撮像光学系
20 リレー光学系
21 レンズ固定枠
22 レンズ
23 接着体
24 隙間環
25 開口絞り
26 筒体
27 内方フランジ
28 連結筒
29 前段レンズ群
29n 前段レンズ群の負の屈折力を有するレンズ
29p 前段レンズ群の正の屈折力を有するレンズ
30 後段レンズ群
30n 後段レンズ群の負の屈折力を有するレンズ
30p 後段レンズ群の正の屈折力を有するレンズ
31 中段レンズ
jp 接合位置
th 貫通孔
図1
図2
図3
図4