(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20230502BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20230502BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20230502BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W16/18
H04W24/02
(21)【出願番号】P 2019002264
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2021-12-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発、複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 高至
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信雄
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142956(JP,A)
【文献】特開2018-142957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0094530(US,A1)
【文献】中村 拓哉 Takuya Nakamura,電子情報通信学会2016年通信ソサイエティ大会講演論文集1 PROCEEDINGS OF THE 2016 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,2016年09月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、前記1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、前記1次利用者の受信局と前記2次利用者の送信局との間のフェージング係数、前記2次利用者の送信局の位置と前記原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、前記1次利用者の受信局が前記2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である前記1次利用者の受信局への干渉確率として演算する演算手段と、
前記演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を前記複数の領域の各々において決定する決定手段と、
前記決定された前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、前記1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する作成手段とを備え、
前記複数の領域は、相互に同じ体積を有し、
前記演算手段は、前記複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、
円柱座標の原点から半径方向における距離が異なっても体積が同じであるように前記円柱座標によって表した3次元形状に前記複数の領域の各々の形状を近似して前記干渉電力を演算する、管理装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、前記1次利用者の受信局におけるアンテナゲイ
ン、前記1次利用者の受信局と前記2次利用者の送信局との間のフェージング係数、前記2次利用者の送信局の位置と前記原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局が前記1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、前記第1の干渉電力のラプラス変換を用いて前記第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを前記2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、前記複数の領域における前記2次利用者の全ての送信局から前記1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、前記第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて前記干渉確率を演算する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって前記第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信する送信局の個数に前記2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を前記複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、前記演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、前記目的関数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記複数の領域に存在する前記2次利用者の送信局は、前記送信許可割合に基づいて、前記1次利用者および前記2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、前記送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、前記第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記複数の領域の各々は、立方体の形状を有し、
前記演算手段は、前記立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に前記立方体の形状を近似して前記干渉電力を演算する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
演算手段が、干渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、前記1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、前記1次利用者の受信局と前記2次利用者の送信局との間のフェージング係数、前記2次利用者の送信局の位置と前記原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、前記1次利用者の受信局が前記2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である前記1次利用者の受信局への干渉確率として演算する第1のステップと、
決定手段が、前記演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を前記複数の領域の各々において決定する第2のステップと、
作成手段が、前記決定された前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、前記1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する第3のステップとをコンピュータに実行させ、
前記複数の領域は、相互に同じ体積を有し、
前記演算手段は、前記第1のステップにおいて、前記複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、
円柱座標の原点から半径方向における距離が異なっても体積が同じであるように前記円柱座標によって表した3次元形状に前記複数の領域の各々の形状を近似して前記干渉電力を演算する、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記演算手段は、前記第1のステップにおいて、前記複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、前記1次利用者の受信局におけるアンテナゲイ
ン、前記1次利用者の受信局と前記2次利用者の送信局との間のフェージング係数、前記2次利用者の送信局の位置と前記原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信局が前記1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、前記第1の干渉電力のラプラス変換を用いて前記第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを前記2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、前記複数の領域における前記2次利用者の全ての送信局から前記1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、前記第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて前記干渉確率を演算する、請求項7に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
前記演算手段は、前記第1のステップにおいて、前記第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって前記第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する、請求項8に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
前記決定手段は、前記第2のステップにおいて、前記複数の領域の各々における前記2次利用者の送信する送信局の個数に前記2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を前記複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、前記演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、前記目的関数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する前記2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
前記複数の領域に存在する前記2次利用者の送信局は、前記送信許可割合に基づいて、前記1次利用者および前記2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、前記送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、前記第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
前記複数の領域の各々は、立方体の形状を有し、
前記演算手段は、前記第1のステップにおいて、前記立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に前記立方体の形状を近似して前記干渉電力を演算する、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)の利用用途の拡大に伴い、無人航空機による通信(以下、「UAV通信」と言う。)が利用する周波数帯として、現在、利用しているアンライセンス周波数帯である高周波数帯を二次利用することが検討されている(非特許文献1)。
【0003】
これにより、動画撮影および配達等の高速・大容量が求められる通信が可能となる。一例として、日本では、現在、レーダが利用している5.7GHz帯の利用が考えられている。その際には、UAV通信がレーダに与える干渉を解析し、レーザに悪影響を及ぼさない範囲での利用が必要になる。
【0004】
このような周波数共用の問題に対して、一次利用者の排他領域の設計が提案されている(非特許文献2)。これは、排他領域に定められた範囲での二次利用者の通信を禁止することにより一次利用者への干渉を回避する手法である。
【0005】
また、非特許文献3は、2次元空間をグリッドにより細かく分割し、グリッド毎に一次利用者のアンテナゲイン等の情報を区別することで複雑な形状の排他領域を設計し、より多くの二次利用者が通信可能となることを示している。
【0006】
更に、非特許文献4は、3次元空間における干渉電力を解析し、UAV通信に適用可能な排他領域の設計手法を提案している。
【0007】
上述した特許文献2から非特許文献4における干渉電力の解析では、空間点過程を扱う確率幾何学(非特許文献5,6)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】The Information and Communication Council, “Technical requirements for upgrading of use of radio waves for robots, etc. (in Japanese),” Mar. 2016.
【文献】M. Vu, N. Devroye, and V. Tarokh, “On the primary exclusive region of cognitive networks,” IEEE Trans. Commun., vol.8, no.7, pp3380-3385, Jul. 2009.
【文献】S. Yamashita, K. Yamamoto, T. Nishio, and M. Morikura, “Optimization of primary exclusive region in spatial grid-based spectrum database using stochastic geometry,” Proc. IEEE ICC2017, Paris, France, May 2017.
【文献】K. Yoshikawa, S. Yamashita, K. Yamamoto, T. Nishio, and M. Morikura, “Resource allocation for 3rd drone networks sharing spectrum bands,” Proc. IEEE VTC2017-fall, Toront, Canada, Sept. 2017.
【文献】M. Haenggi, Stochastic Geometry for Wireless Networks, Cambridge Univ. Pr., Nov. 2012.
【文献】H. ElSawy, E. Hossain, and M. Haenggi, “Stochastic geometry for modeling, analysis, and design of multi-tier and cognitive cellular wireless networks: A survey,” IEEE Commun. Surv. Tuts., vol. 15, no.3, pp. 996-1019, 2013.
【文献】D. Schleher, “Generalized gram-charlier series with application to the sum of log-normal variates (corresp.),” IEEE Trans. Inf. Theory, vol.23, no.2, pp.275-280, May 1977.
【文献】K.W. Sung, M. Tercero, and J. Zander, “Aggregate interference in secondary access with interference protection,” IEEE Commun. Lett., vol.15, no.6, pp.629-631, April 2011.
【文献】M.K. Simon and M.-S. Alouini, Digital Communication over Fading Channels, John Wiley & Sons, Inc., 2004.
【文献】P. Li, C. Zhang, and Y. Fang, “The capacity of wireless ad hoc networks using directional antennas,” IEEE Trans. Mobile Comput., vol.10, no.10, pp.1374-1387, Oct. 2011.
【文献】W.E. Hart, C. Laird, J.-P. Watson, and D.L. Woodruff, Pyomo Optimization Modeling in Python, vol.67, Springer Science & Business Media, 2012.
【文献】A. W¨achter and L.T. Biegler, “On the implementation of an interior-point filter line-search algorithm for large-scale nonlinear programming,” Math. Program., vol.106, no.1, pp.25-27, Mar. 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非特許文献2~4における排他領域の設計手法では、排他領域を正確に設計することが困難である。
【0011】
この発明の実施の形態によれば、1次利用者の排他領域を正確に設定可能な管理装置を提供する。
【0012】
また、この発明の実施の形態によれば、1次利用者の排他領域の正確な設定をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【0013】
更に、この発明の実施の形態によれば、1次利用者の排他領域の正確な設定をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、管理装置は、演算手段と、決定手段と、作成手段とを備える。
【0015】
演算手段は、渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、1次利用者の受信局が2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である1次利用者の受信局への干渉確率として演算する。
【0016】
決定手段は、演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において決定する。
【0017】
作成手段は、決定された複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する。
【0018】
そして、演算手段は、複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、円柱座標によって表した3次元形状に複数の領域の各々の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0019】
(構成2)
構成1において、演算手段は、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲインと、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局が1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、第1の干渉電力のラプラス変換を用いて第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、複数の領域における2次利用者の全ての送信局から1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて干渉確率を演算する。
【0020】
(構成3)
構成2において、演算手段は、第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する。
【0021】
(構成4)
構成1から構成3のいずれかにおいて、決定手段は、複数の領域の各々における2次利用者の送信する送信局の個数に2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、目的関数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する。
【0022】
(構成5)
構成1から構成4のいずれかにおいて、複数の領域に存在する2次利用者の送信局は、送信許可割合に基づいて、1次利用者および2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される。
【0023】
(構成6)
構成1から構成5のいずれかにおいて、複数の領域の各々は、立方体の形状を有する。演算手段は、立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に立方体の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0024】
(構成7)
また、この発明の実施の形態によれば、プログラムは、
演算手段が、干渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、1次利用者の受信局が2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である1次利用者の受信局への干渉確率として演算する第1のステップと、
決定手段が、演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において決定する第2のステップと、
作成手段が、決定された複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する第3のステップとをコンピュータに実行させる。
【0025】
そして、演算手段は、第1のステップにおいて、複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、円柱座標によって表した3次元形状に複数の領域の各々の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0026】
(構成8)
構成7において、演算手段は、第1のステップにおいて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲインと、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局が1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、第1の干渉電力のラプラス変換を用いて第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、複数の領域における2次利用者の全ての送信局から1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて干渉確率を演算する。
【0027】
(構成9)
構成8において、演算手段は、第1のステップにおいて、第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する。
【0028】
(構成10)
構成7から構成9のいずれかにおいて、決定手段は、第2のステップにおいて、複数の領域の各々における2次利用者の送信する送信局の個数に2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、目的関数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する。
【0029】
(構成11)
構成7から構成10のいずれかにおいて、複数の領域に存在する2次利用者の送信局は、送信許可割合に基づいて、1次利用者および2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される。
【0030】
(構成12)
構成7から構成11のいずれかにおいて、複数の領域の各々は、立方体の形状を有する。演算手段は、第1のステップにおいて、立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に立方体の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0031】
(構成13)
更に、この発明の実施の形態によれば、記録媒体は、構成7から構成12のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0032】
1次利用者の排他領域を正確に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の実施の形態における通信機器を示す概略図である。
【
図2】この発明の実施の形態における空間グリッドを有するシステムの一例を示す図である。
【
図4】
図3に示す記憶手段における記憶方法を示す図である。
【
図7】排他領域PERの作成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図7に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図7に示すステップS2の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図7に示すステップS3の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図12】各グリッドにおけるアンテナゲインおよび最適化問題の解であるUAVの送信許可割合を示す図である。
【
図13】経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示す図である。
【
図14】経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの別の関係を示す図である。
【
図15】CCDFと総干渉電力I
totalとの関係を示す図である。
【
図16】送信するUAVの個数と各グリッドの体積との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0035】
図1は、この発明の実施の形態における通信機器を示す概略図である。
図1を参照して、無線通信システムWLC1,WLC2が存在する。無線通信システムWLC1は、免許された無線通信システムであり、「1次利用者」と呼ばれる。無線通信システムWLC1は、無線局1と端末2,3とを備える。無線局1は、1次利用者の無線局であり、端末2,3は、1次利用者の端末である。そして、無線局1および端末2,3は、免許された周波数帯で相互に無線通信を行う。
【0036】
無線通信システムWLC2は、1次利用者の周波数帯で無線通信を行う無線通信システムであり、「2次利用者」と呼ばれる。無線通信システムWLC2は、無線局11と、端末121~12s(sは、2以上の整数)とを備える。無線局11は、2次利用者の無線局であり、端末121~12sは、2次利用者の端末である。無線局11および端末121~12sは、1次利用者の周波数帯で相互に無線通信を行う。また、無線局11および端末121~12sは、1次利用者の周波数帯よりも低周波数の帯域である低周波数帯で制御情報のみの無線通信を行う。1次利用者の周波数帯は、例えば、5.7GHz帯であり、低周波数帯は、例えば、169MHz帯である。
【0037】
端末2,3の各々は、端末121~12sから無線信号を受信することもある。端末2,3の各々は、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて自己の位置を検出し、その検出した自己の位置を無線局1へ送信する。
【0038】
無線局1は、端末2,3の位置を端末2,3から受信し、その受信した端末2,3の位置を無線局11へ送信する。
【0039】
管理装置10は、無線局11に配置される。そして、管理装置10は、無線局1から端末2,3の位置を受信する。また、管理装置10は、端末121~12sの位置および送信電力を端末121~12sから受信する。
【0040】
管理装置10は、端末2,3の位置、端末121~12sの位置および端末121~12sの送信電力を用いて、後述する方法によって、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域PER(Primary Exclusive Region)を作成する。
【0041】
端末121~12sは、例えば、GPSを用いて自己の位置を検出し、その検出した自己の位置を管理装置10へ送信する。また、端末121~12sは、無線通信を行ったときの送信電力を検出し、その検出した送信電力を管理装置10へ送信する。
【0042】
図2は、この発明の実施の形態における空間グリッドを有するシステムの一例を示す図である。
図2を参照して、1次利用者の受信局PR(Primary Receiver)(端末2,3のいずれか)を原点Oとし、直交座標(x,y,z)によって空間を複数のグリッドGRに分割する。
【0043】
複数のグリッドGRの各々は、一辺の長さがlである立方体の形状を有するものとし、x,y,z方向にそれぞれNx+1,Ny+1,Nz+1個の平面で分割する。このとき、各グリッドGRの体積は、l3となり、各平面は、それぞれ、x=xi,i=0,・・・,Nx,y=yj,j=0,・・・,Ny,z=zk,k=0,・・・,Nzと表現される。
【0044】
ある一つのグリッドGRは、次式によって表される。
【0045】
【0046】
一つのグリッドGRの体積を|Vijk|と表記する。グリッドVijkにおいて、UAVの密度をλijkとし、UAVの送信電力をpijkとし、レーダ(1次利用者)のアンテナゲインをgijkとする。そして、λijk,pijk,gijkは、一定値であるとする。
【0047】
また、UAVの分布は、次式によって表される強度関数Λijk(x,y,z)を持つ非均一なポアソン点過程に従うものとする。
【0048】
【0049】
更に、グリッドVijkにおけるUAVの送信許可割合をaijkとする。即ち、グリッドVijkに存在するUAVは、送信許可割合aijkだけが高周波数帯(=1次利用者と共用する周波数帯)による通信を許可され、割合(1-aijk)だけが制御情報のみを通信する低周波数帯による通信が許可される(即ち、高周波数帯(=1次利用者と共用する周波数帯)による通信を禁止される)。
【0050】
全てのグリッドVijkについて送信許可割合aijkを決定することによって、複雑な形状の排他領域を設計する。この場合、グリッドVijkにおいて、高周波数帯を用いて通信するUAVは、強度関数aijkΛijk(x,y,z)を持つ非均一なポアソン点過程に従う。この点過程をΦijkと表記する。
【0051】
2次利用者の送信局ST(Secondary Transmitter)(1つの送信局STは、端末121~12sのいずれかからなる)は、複数のグリッドVijkにランダムに配置されると想定する。
【0052】
図3は、
図1に示す管理装置10の構成図である。
図3を参照して、管理装置10は、受信手段101と、演算手段102と、記憶手段103と、決定手段104と、作成手段105とを含む。
【0053】
受信手段101は、無線局1から端末2,3の位置を受信し、その受信した端末2,3の位置を演算手段102へ出力する。また、受信手段101は、端末121~12sの位置および送信電力を端末121~12sから受信し、その受信した端末121~12sの位置および送信電力を演算手段102へ出力する。
【0054】
演算手段102は、端末2,3の位置、端末121~12sの位置および端末121~12sの送信電力を受信手段101から受ける。
【0055】
演算手段102は、
図2において説明したグリッドV
ijkの体積|V
ijk|を予め保持している。
【0056】
演算手段102は、端末2,3のいずれかを1次利用者の受信局PRとして3次元空間グリッドの原点Oに配置する。
【0057】
また、演算手段102は、端末121~12sの位置に基づいて、各グリッドVijkに存在する2次利用者の送信局STの密度λijkを演算する。そして、演算手段102は、その演算した2次利用者の送信局STの密度λijkを記憶手段103に記憶する。
【0058】
更に、演算手段102は、受信手段101から受けた端末121~12sの送信電力を記憶手段103に記憶する。
【0059】
更に、演算手段102は、後述する方法によって、複数のグリッドVijkの各々における2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkの関数である1次利用者の受信局PRへの干渉確率P(Itotal>Ith)を演算し、その演算した干渉確率P(Itotal>Ith)を決定手段104へ出力する。
【0060】
記憶手段103は、2次利用者の送信局STの密度λijkおよび端末121~12sの送信電力を演算手段102から受け、その受けた2次利用者の送信局STの密度λijkおよび端末121~12sの送信電力を記憶する。
【0061】
また、記憶手段103は、アンテナゲインgijkを予め記憶している。アンテナゲインgijkは、1次利用者の受信局PRのアンテナの指向性、および1次利用者の受信局PRまたは2次利用者の送信局STのアンテナ高度に影響する定数であり、各グリッドVijkに固有の値である。
【0062】
決定手段104は、干渉確率P(Itotal>Ith)を演算手段102から受ける。そして、決定手段104は、干渉確率P(Itotal>Ith)が目標値βtargetよりも小さくなり、送信が禁止される2次利用者の送信局STの個数を最小化する2次利用者の送信局STの送信許可割合aijk(0≦aijk≦1)を複数のグリッドVijkの各々において決定する。そうすると、決定手段104は、各グリッドVijkにおける2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkを作成手段105へ出力する。
【0063】
作成手段105は、各グリッドVijkにおける2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkを決定手段104から受ける。そして、作成手段105は、2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkが零であるグリッドVijkを排他領域とし、2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkが零でないグリッドVijkを非排他領域として、3次元空間グリッド上に排他領域PERを作成する。
【0064】
図4は、
図3に示す記憶手段103における記憶方法を示す図である。
図4を参照して、記憶手段103は、2次利用者の送信局STの密度λ
ijk、2次利用者の送信局STの位置Ps、2次利用者の送信電力p
ijk、アンテナゲインg
ijk、電波損失指数αおよびフェージング係数h
ijkを各グリッドV
ijkに応付けて記憶する。
【0065】
密度λijkは、演算手段102によって、グリッドVijkに存在する2次利用者の送信局STの個数をグリッドVijkの体積|Vijk|によって除算することにより得られたものである。
【0066】
2次利用者の送信局STの位置Psは、円柱座標(r,θ,z)によって決定される。送信電力pijkは、各グリッドVijkに存在する送信局STにおける送信電力の平均値からなり、一定値である。
【0067】
アンテナゲインgijkは、各グリッドVijkに固有の一定値である。フェージング係数hijkは、2次利用者の送信局STの位置Psに対応している。電波損失指数αは、α>2である。
【0068】
2次利用者の送信局STの送信許可割合aijkを複数のグリッドVijkの各々において決定する方法について説明する。
【0069】
グリッドVijk上の送信する2次利用者の送信局STは、強度関数aijkΛijk(x,y,z)を持つ非均一なポアソン点過程Φijkに従って分布している。
【0070】
1次利用者への干渉を、1次利用者の受信局PRにおける全ての送信する2次利用者の送信局STから受ける総干渉電力Itotalがしきい値Ithを上回ることとする。しきい値Ithは、例えば、雑音電力よりも10dB低い値に設定される。このとき、1次利用者への干渉確率は、P(Itotal>Ith)と表現することができる。
【0071】
高周波数帯を用いて通信するUAVがレーダ(1次利用者)へ与える総干渉電力Itotalは、次式によって表される。
【0072】
【0073】
式(3)において、Iijkは、グリッドVijkに存在するUAVからの総干渉電力であり、次式によって表される。
【0074】
【0075】
式(4)において、hxは、座標s∈ΦVijkのUAVとレーダ(1次利用者)との間のフェージング係数(平均1)であり、||d||は、座標d∈R2と原点Oとの間のユークリッド距離であり、αは、伝搬損失指数(α>2)である。
【0076】
総干渉電力Itotalの分布を求めるために、総干渉電力Itotalのn次キュムラントを計算する。そのために、まず、総干渉電力Iijkのn次キュムラントを計算する。
【0077】
総干渉電力Iijkのラプラス変換は、キャンベルの定理(非特許文献5)を用いて次式のように計算できる。
【0078】
【0079】
式(5)を用いると、総干渉電力Iijkのn次キュムラントκn(Iijk)は、n=1,2,・・・について次式のように表すことができる。
【0080】
【0081】
式(6)におけるE(hn)は、次式によって表される。
【0082】
【0083】
また、式(6)におけるAn(V)は、次式によって表される。
【0084】
【0085】
ここで、式(7)におけるfh(h)は、フェージング係数hの確率密度関数である。また、Vijkは、互いに独立な確率変数であるため、総干渉電力Itotalのn次キュムラントは、次式によって、各キュムラントの和として求められる。
【0086】
【0087】
次に、式(8)を計算する。グリッドVijkの形状が立方体である場合、An(V)の積分を直接求めることが困難であるため、次のような近似に基づいてAn(V)の積分を計算する。
【0088】
図5は、円柱グリッドの概略図である。立方体であるグリッドV
ijkを、積分が可能になるように
図5に示すような円柱グリッドに近似する。
【0089】
図5を参照して、円柱グリッドCyは、
図2に示すグリッドV
ijkの体積と同じ体積を有し、6個の面S1~S6によって囲まれた3次元形状からなる。面S1は、頂点A,B,C,Dを有する曲面であり、面S2は、頂点E,F,G,Hを有する曲面であり、面S3は、頂点A,E,H,Dを有する平面である。また、面S4は、頂点B,F,G,Cを有する平面であり、面S5は、頂点A,E,F,Bを有する平面であり、面S6は、頂点C,D,H,Gを有する平面である。
【0090】
面S1,S2は、z軸方向に沿って配置され、相互に対向する。面S3,S4は、x-y平面に平行に配置され、相互に対向する。面S5,S6は、z軸方向に沿って配置される。そして、面S5,S6の各々は、一辺の長さがlである正方形の形状を有する。
【0091】
図6は、
図5に示す面S3,S4の平面図である。
図2に示すグリッドV
ijkは、立方体の形状を有するので、立方体の底面および上面は、正方形の平面形状を有する。
【0092】
一方、円柱グリッドCyの場合、原点Oから遠ざかる方向に円弧の長さが長くなる環状扇形の平面形状を有する。
【0093】
円柱グリッドCyは、x-y平面について、次の条件を満たす。
(1)半径方向と円周方向の中点をそれぞれ結んだ交点は、正方形における対角線の交点と等しい。その座標を、直交座標で(xio,yjo)=((2i+1)l/2,(2j+1)l/2)、極座標で(rijo,θijo)=((xio
2+yjo
2)1/2,arctan(2i+1)/(2j+1))と表す。
(2)半径方向の長さは、lである。
(3)円弧の中心角は、l/rijoである。
【0094】
図2に示すグリッドV
ijkの形状を
図5および
図6に示す円柱グリッドCyの形状に近似することによって、式(8)の積分を次式のように近似する。
【0095】
【0096】
式(10)は、原点から各グリッドV
ijkまでの距離を表す(r
2+z
2)
1/2を積分の中に含むので、積分可能である。そして、式(10)が(r
2+z
2)
1/2を積分の中に含むのは、
図5および
図6に示すしたように、各グリッドV
ijkを円柱座標(r,θ,z)によって表したからである。
【0097】
また、式(10)は、α>2のとき、計算が可能である。単純な例として、α=3とすると、1次キュムラントおよび2次キュムラントは、それぞれ、式(11)および式(12)のようになる。
【0098】
【0099】
【0100】
式(11)におけるb(r)は、次式によって表される。
【0101】
【0102】
また、式(12)のc(r)は、次式によって表される。
【0103】
【0104】
以上によって、キュムラントκn(Itotal)を解析的に求めることができる。
【0105】
総干渉電力Itotalの分布をキュムラントマッチングを用いて近似的に計算する。キュムラントマッチングは、求めたい分布のn次キュムラントを、よく知られた分布のn次キュムラントとマッチングすることで、その分布を近似的に求める手法である(非特許文献7)。
【0106】
この発明の実施の形態においては、非特許文献8に記載されているように、対数正規分布とマッチングすることによって総干渉電力Itotalの分布を求める。この場合、総干渉電力Itotalの確率密度関数pdf fItotalは、次式によって表される。
【0107】
【0108】
式(15)におけるμ1は、次式によって表される。
【0109】
【0110】
また、式(15)のσ1
2は、次式によって表される。
【0111】
【0112】
なお、式(16)および式(17)における「κ1(Itotal)2」の表記は、κ1(Itotal)の2乗を意味する。
【0113】
干渉確率を、高周波数帯で通信する全てのUAVがレーダ(1次利用者)に与える総干渉電力Itotalがしきい値Ithを超える確率として、P(Itotal>Ith)と定義する。その結果、干渉確率P(Itotal>Ith)は、次式によって表される。
【0114】
【0115】
式(18)におけるQ(・)は、Q関数であり、次式によって表される。
【0116】
【0117】
なお、しきい値Ithに対する干渉確率P(Itotal>Ith)は、総干渉電力Itotalの相補累積分布関数(CCDF:Complementary Cumulative Distribution Function)と同じである。
【0118】
式(18)のしきい値Ithは、既知であり、式(18)のμ1は、式(16)によって表され、式(18)のσ1は、式(17)によって表され、式(16)および式(17)のκ1(Itotal)およびκ2(Itotal)は、それぞれ、式(11)および式(12)によって表されるので、干渉確率P(Itotal>Ith)は、送信許可割合aijkの関数であることが分かる。従って、式(11)、式(12)、式(16)~式(19)によって干渉確率P(Itotal>Ith)を計算できる。
【0119】
排他領域を設定するために、各グリッドVijkにおける送信許可割合aijkを決定する最適化問題を定式化する。
【0120】
目的関数は、高周波数帯で送信が禁止されるUAVの個数UAVpとし、次式によって定義する。
【0121】
【0122】
そして、UAVの個数UAVpを最小化するように各グリッドVijkにおける送信許可割合aijkを決定する。
【0123】
また、干渉確率P(Itotal>Ith)が許容される値をβtargetとし、制約条件は、干渉確率P(Itotal>Ith)が許容値βtargetを下回ることである。
【0124】
以上より、最適化問題を式(21)および式(22)のように定式化する。
【0125】
【0126】
【0127】
即ち、式(22)の制約条件において式(21)を満たす送信許可割合aijkを各グリッドVijkについて求める。
【0128】
演算手段102は、上述した方法によって干渉確率P(Itotal>Ith)を演算し、その演算した干渉確率P(Itotal>Ith)を決定手段104へ出力する。
【0129】
決定手段104は、干渉確率P(Itotal>Ith)を演算手段102から受け、その受けた干渉確率P(Itotal>Ith)に基づいて、式(21)および式(22)を用いて、送信が禁止されるUAVの個数UAVpを最小化する送信許可割合aijkを各グリッドVijkについて求め、その求めた送信許可割合aijk(Vijk)(=各グリッドVijkにおける送信許可割合)を作成手段105へ出力する。
【0130】
作成手段105は、各グリッドV
ijkにおける送信許可割合a
ijk(V
ijk)を決定手段104から受け、その受けた送信許可割合a
ijk(V
ijk)に基づいて、
図2に示す空間グリッドにおいて、1次利用者のみが通信を行うことができる排他領域を作成する。より具体的には、作成手段105は、送信許可割合a
ijkが零であるグリッドV
ijkを排他領域とし、送信許可割合a
ijkが零でないグリッドV
ijkを非排他領域とすることによって、
図2に示す空間グリッドにおいて、1次利用者のみが通信を行うことができる排他領域を作成する。
【0131】
図7は、排他領域PERの作成方法を説明するためのフローチャートである。
図7を参照して、排他領域PERを作成する動作が開始されると、演算手段102は、1次利用者の受信局を原点とした3次元空間グリッドを構成する複数のグリッドの各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、1次利用者の受信局が2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、複数のグリッドの各々における2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である1次利用者の受信局への干渉確率として演算する(ステップS1)。
【0132】
そして、演算手段102は、その演算した干渉確率を決定手段104へ出力する。決定手段104は、干渉確率を演算手段102から受ける。そして、決定手段104は、演算された干渉確率が目標値よりも小さくなり、かつ、高周波数帯の利用が禁止される2次利用者の送信局の数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数のグリッドの各々において決定する(ステップS2)。
【0133】
その後、決定手段104は、各グリッドにおいて決定した送信許可割合を作成手段105へ出力する。作成手段105は、各グリッドにおいて決定された送信許可割合を決定手段104から受け、その受けた送信許可割合に基づいて、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する(ステップS3)。これによって、排他領域PERを作成する動作が終了する。
【0134】
図8は、
図7に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
図8を参照して、排他領域PERを作成する動作が開始されると、演算手段102は、i=0、j=0、およびk=0を設定する(ステップS11)。
【0135】
そして、演算手段102は、グリッドV
ijkに存在する2次利利用者の位置Psと原点とのユークリッド距離dを演算する(ステップS12)。より具体的には、演算手段102は、グリッドV
ijkに対応付けられた2次利用者の位置Ps(
図4参照)を記憶手段103から読み出し、その読み出した2次利用者の位置Psに基づいてユークリッド距離dを演算する。
【0136】
ステップS12の後、演算手段102は、グリッドV
ijkにおける送信電力p
ijk、アンテナゲインg
ijk、フェージング係数h
ijk、ユークリッド距離dおよび伝搬損失指数αを用いて、グリッドV
ijkにおける干渉電力I
ijkを演算する(ステップS13)。より具体的には、演算手段102は、グリッドV
ijkに対応付けられた送信電力p
ijk、アンテナゲインg
ijkおよびフェージング係数h
ijk(
図4参照)を記憶手段103から読み出し、その読み出した送信電力p
ijk、アンテナゲインg
ijkおよびフェージング係数h
ijkと、ユークリッド距離dおよび伝搬損失指数αとを式(4)に代入して干渉電力I
ijkを演算する。
【0137】
ステップS13の後、演算手段102は、立方体からなるグリッドVijkの形状を円柱グリッドの形状に近似して、干渉電力Iijkのラプラス変換Lijkを用いて干渉電力Iijkのn次キュムラントκn(Iijk)を演算する(ステップS14)。より具体的には、演算手段102は、式(5)~式(7)および式(10)を用いて干渉電力Iijkのn次キュムラントκn(Iijk)を演算する。
【0138】
そして、演算手段102は、i=Nr-1であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において、i=Nr-1でないと判定されたとき、演算手段102は、i=i+1を設定する(ステップS16)。
【0139】
その後、一連の動作は、ステップS12へ移行し、ステップS15において、i=Nr-1であると判定されるまで、ステップS12~ステップS16が繰り返し実行される。
【0140】
そして、ステップS15において、i=Nr-1であると判定されると、演算手段102は、j=Nθ-1であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0141】
ステップS17において、j=Nθ-1でないと判定されたとき、演算手段102は、j=j+1を設定する(ステップS18)。
【0142】
その後、一連の動作は、ステップS12へ移行し、ステップS17において、j=Nθ-1であると判定されるまで、ステップS12~ステップS18が繰り返し実行される。
【0143】
そして、ステップS17において、j=Nθ-1であると判定されると、演算手段102は、k=Nz-1であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0144】
ステップS19において、k=Nz-1でないと判定されたとき、演算手段102は、k=k+1を設定する(ステップS20)。その後、一連の動作は、ステップS12へ移行し、ステップS19において、k=Nz-1であると判定されるまで、ステップS12~ステップS20が繰り返し実行される。
【0145】
そして、ステップS19において、k=Nz-1であると判定されると、演算手段102は、n次キュムラントκn(Iijk)に基づいて、複数のグリッドVijkにおける2次利用者の全ての送信局から1次利用者の受信局への干渉電力である総干渉電力Itotalのn次キュムラントκn(Itotal)を解析的に求める(ステップS21)。より具体的には、演算手段102は、式(10)、式(11)~式(14)を用いて、総干渉電力Itotalのn次キュムラントκn(Itotal)を解析的に求める。
【0146】
その後、演算手段102は、n次キュムラントκ
n(I
total)に基づいて、総干渉電力I
totalの確率密度関数を式(15)~式(17)によって演算し、その演算した確率密度関数のパラメータμ
1,σ
1を用いて干渉確率P(I
total>I
th)を演算する(ステップS22)。より具体的には、パラメータμ
1,σ
1を式(18)および式(19)に代入して干渉確率P(I
total>I
th)を演算する。そして、ステップS22の後、一連の動作は、
図7のステップS2へ移行する。
【0147】
図9は、
図7に示すステップS2の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0148】
図9を参照して、
図7に示すステップS1の後、決定手段104は、複数のグリッドV
ijkの各々における2次利用者の送信する送信局STの個数(λ
ijk|V
ijk|)に、高周波数帯における送信を禁止される2次利用者の送信局STの割合(1-a
ijk)を乗算した乗算結果を複数のグリッドV
ijkについて加算した加算結果を目的関数として演算する(ステップS31)。より具体的には、決定手段104は、式(20)によって目的関数を演算する。
【0149】
そして、決定手段104は、演算手段102から受けた干渉確率P(Itotal>Ith)に基づいて、式(22)に示す制約条件を設定する(ステップS32)。
【0150】
その後、決定手段104は、設定した制約条件の下で、目的関数を最小化する送信許可割合a
ijkを決定する(ステップS33)。より具体的には、決定手段104は、式(22)に示す制約条件の下で、式(21)を満たす送信許可割合a
ijkを決定する。この決定された送信許可割合a
ijkは、各グリッドV
ijkにおける送信許可割合であり、“0”または“1”からなる。そして、一連の動作は、
図7のステップS3へ移行する。
【0151】
図10は、
図7に示すステップS3の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0152】
図10を参照して、
図7に示すステップS2の後、作成手段105は、i=0、j=0およびk=0を設定する(ステップS41)。
【0153】
そして、作成手段105は、送信許可割合aijkが零(=0)であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0154】
ステップS42において、送信許可割合aijkが零(=0)であると判定されたとき、作成手段105は、グリッドVijkを排他領域とする(ステップS43)。
【0155】
一方、ステップS42において、送信許可割合aijkが零(=0)でないと判定されたとき、作成手段105は、グリッドVijkを非排他領域とする(ステップS44)。
【0156】
ステップS43またはステップS44の後、作成手段105は、i=Nr-1であるか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45において、i=Nr-1でないと判定されたとき、作成手段105は、i=i+1を設定する(ステップS46)。
【0157】
その後、一連の動作は、ステップS42へ移行し、ステップS45において、i=Nr-1であると判定されるまで、ステップS42~ステップS46が繰り返し実行される。
【0158】
そして、ステップS45において、i=Nr-1であると判定されると、作成手段105は、j=Nθ-1であるか否かを判定する(ステップS47)。
【0159】
ステップS47において、j=Nθ-1でないと判定されたとき、作成手段105は、j=j+1を設定する(ステップS48)。
【0160】
その後、一連の動作は、ステップS42へ移行し、ステップS47において、j=Nθ-1であると判定されるまで、ステップS42~ステップS48が繰り返し実行される。
【0161】
そして、ステップS47において、j=Nθ-1であると判定されると、作成手段105は、k=Nz-1であるか否かを判定する(ステップS49)。
【0162】
ステップS49において、k=Nz-1でないと判定されたとき、作成手段105は、k=k+1を設定する(ステップS50)。その後、一連の動作は、ステップS42へ移行し、ステップS49において、k=Nz-1であると判定されるまで、ステップS42~ステップS50が繰り返し実行される。
【0163】
そして、ステップS49において、k=N
z-1であると判定されると、作成手段105は、排他領域としたグリッドV
ijkからなる1次利用者の排他領域を3次元空間グリッドに作成する(ステップS51)。その後、一連の動作は、
図7の“終了”へ移行する。
【0164】
このように、管理装置10は、
図7に示すフローチャート(
図8から
図10に示すフローチャートを含む)に従って複数のグリッドV
ijkの各々について排他領域であるか非排他領域であるかを決定し、排他領域としたグリッドV
ijkからなる1次利用者の排他領域PERを3次元空間グリッドに作成する。従って、複雑な形状の1次利用者の排他領域PERを作成できる。
【0165】
特許文献1の
図16は、円柱形状を有する3次元空間グリッドを示すが、この3次元空間グリッドを構成する複数の領域は、相互に同じ体積を有さず、1つの領域の体積は、原点Oから半径方向に遠ざかるに伴って大きくなる。
【0166】
その結果、原点Oから半径方向に遠い位置に存在する領域は、原点Oに近い位置に存在する領域よりも大きい体積を有するので、より大きな体積を有する領域の全体を排他領域として設定する。
【0167】
従って、特許文献1においては、原点Oに近い位置においては、排他領域を細かく設定し、原点Oから半径方向に遠い位置においては、排他領域を粗く設定することになる。よって、特許文献1における排他領域は、半径方向における原点Oからの距離によって排他領域の精度が異なり、半径方向における原点Oからの距離が大きくなるに伴って、排他領域の精度が低下する。
【0168】
一方、この発明の実施の形態においては、3次元空間グリッドを構成する複数のグリッドV
ijkは、
図2に示すように相互に同じ体積(=l
3)を有する。その結果、半径方向および高さ方向のいずれにおいても、原点Oからの距離に無関係に一定の精度で排他領域を設定できる。そして、1つのグリッドV
ijkの一辺の長さlを短くすれば、より高い精度で原点Oからの距離に無関係に一定の精度で排他領域を設定できる。
【0169】
よって、この発明の実施の形態による排他領域の設定方法は、特許文献1に記載の排他領域の設定方法よりも高い精度で排他領域を設定可能な方法である。
【0170】
管理装置10は、上述した方法によって、1次利用者の排他領域PERを作成する。そして、管理装置10は、その作成した1次利用者の排他領域PERの外側に存在する2次利用者から通信可否の問い合わせがあった場合、通信可能であることを示す通知を2次利用者に送信するようにしてもよい。
【0171】
制約条件の下で求めた最適解としての送信許可割合aijkの数値評価について説明する。また、設定した排他領域PERについて、レーダの干渉確率をモンテカルロシミュレーションによって評価する。
【0172】
[評価諸元]
フェージングとして、仲上mフェージングおよび対数正規シャドウイングの複合フェージング(非特許文献9)を想定する。このとき、E(hn)は、E(h)=1を考慮すると、次式のように表される(非特許文献9)。
【0173】
【0174】
式(23)において、Γ(・)は、ガンマ関数であり、mNは、仲上mフェージングのパラメータであり、σS,dBは、対数正規シャドウイングのdB単位のパラメータであり、ξ=10/ln(10)である。
【0175】
図11は、キーホールアンテナの概略図である。レーダのアンテナパターンとして、
図11に示すキーホールアンテナ(非特許文献10)を用いる。
【0176】
メインローブおよびサイドローブの利得をそれぞれGm,GSとし、ビーム幅をθdとすると、アンテナ利得g(r,θ,φ)は、次式によって表される。
【0177】
【0178】
そして、メインローブの利得Gmとサイドローブの利得GSとの間には、次式の関係が成立する。
【0179】
【0180】
gijkの計算の際には、ローストケースとしてグリッドVijkにおけるアンテナゲインの最大値を用いる。即ち、gijkは、次式によって決定される。
【0181】
【0182】
また、アンテナゲインが排他領域に与える影響に注目するため、密度λijkおよび送信電力pijkは、一定値を用いる。
【0183】
最適化問題(式(21))をモデリングフレームワークPyomo(非特許文献11)を用いてPythonに実装し、Interior Point Optimizer(IPOPT)ソルバ(非特許文献12)を用いて解く。評価諸元を表1に示す。
【0184】
【0185】
[排他領域の設計]
図12は、各グリッドにおけるアンテナゲインおよび最適化問題の解であるUAVの送信許可割合を示す図である。
図12においては、比較のために、一部の高さについて、アンテナゲインおよび送信許可割合を示す。
【0186】
図12を参照して、低い高度では、レーダ(1次利用者)との距離に応じて排他領域が設計され、高い高度では、アンテナゲインを考慮した排他領域が設計されている。
【0187】
上述したグリッドの形状における近似について、その誤差をモンテカルロシミュレーションにより検証する。
【0188】
図13は、経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示す図である。
図13において、縦軸は、経験累積分布関数を表し、横軸は、総干渉電力I
ijkを表す。また、実線は、グリッドの形状が立方体であるときの経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示し、点線は、グリッドの形状が近似形状であるときの経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示す。なお、
図13は、レーダの近傍のグリッド(原点からグリッドの中心までの距離が1.56kmであるグリッド)からの干渉電力の経験累積分布関数(ECDF:Empirical Cumulative Distribution Function)を示す。
【0189】
図14は、経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの別の関係を示す図である。
図14において、縦軸は、経験累積分布関数を表し、横軸は、総干渉電力I
ijkを表す。また、実線は、グリッドの形状が立方体であるときの経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示し、点線は、グリッドの形状が近似形状であるときの経験累積分布関数と総干渉電力I
ijkとの関係を示す。なお、
図14は、レーダから遠方のグリッド(原点からグリッドの中心までの距離が2.83kmであるグリッド)からの干渉電力の経験累積分布関数(ECDF)を示す。
【0190】
図13および
図14に示すように、グリッドが原点の近傍および遠方に拘わらず、グリッドの形状が立方体である場合と、グリッドの形状が近似形状である場合とでは、誤差が小さいことが分かる。
【0191】
設計した排他領域において、式(18)によって表される総干渉電力のCCDFをモンテカルロシミュレーションにより評価する。
図15は、CCDFと総干渉電力I
totalとの関係を示す図である。
図15において、縦軸は、CCDFを表し、横軸は、総干渉電力I
totalを表す。また、実線は、解析式によるCCDFを示し、点線は、シミュレーションによるCCDFを示す。
【0192】
図15を参照して、干渉電力は、設定したしきい値を下回ることを確認できる。解析式との誤差の原因として、グリッドの形状における近似の他に、キュムラントマッチングによる近似の誤差およびアンテナゲインのワーストケースを想定したことによる誤差が考えられる。
【0193】
円柱グリッドとの比較について説明する。
図16は、送信するUAVの個数と各グリッドの体積との関係を示す図である。
図16において、縦軸は、送信するUAVの個数を表し、横軸は、各グリッドの体積を表す。また、白丸は、グリッドの形状が立方体であるときの送信するUAVの個数と各グリッドの体積との関係を示し、黒丸は、グリッドの形状が円柱であるときの送信するUAVの個数と各グリッドの体積との関係を示す。
【0194】
この発明の実施の形態による立方グリッド分割と、特許文献1に示すような円柱座標に基づくグリッド分割について、それぞれ、排他領域PERを設計し、送信可能なUAVの個数を比較した。
【0195】
アンテナパターンとして,
図11に示すキーホールアンテナについて、メインローブの方向をθ方向にπ/4傾けたものを使用した。
【0196】
図16を参照して、どちらの場合も、グリッドの体積が小さいほど、すなわち分割数が多いほど、送信可能なUAVの個数が多いことが確認できた。
【0197】
また、同じ体積においては、立方グリッドの方が円柱グリッドと比較して送信可能なUAVの個数が多いことが確認できた。この原因は、グリッドの形状の違いによると考えられる。立方グリッドは、どの座標においてもグリッドの形状が等しいのに対し、円柱グリッドは、中心から離れるほど形状が変化するため、アンテナパターンをそれぞれのグリッドの形状で近似する際、立方グリッドの方が実際のアンテナパターンに近い形状で近似できる。そのため、メインローブとして扱う領域が小さくなり、排他領域PERが小さくなることで送信可能なUAVの個数が増加する。
【0198】
このように、この発明の実施の形態による立方グリッドを用いることによって、グリッドの形状が円柱である場合よりも送信可能なUAVの個数を増加できることを実証できた。
【0199】
この発明の実施の形態においては、管理装置10の動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。
【0200】
ROMは、
図7に示すフローチャート(
図8から
図10に示すフローチャートを含む)からなるプログラムProg_Aを格納する。また、
図4に示す2次利用者の送信局STの密度λ
ijk、2次利用者の送信局STの位置Ps、2次利用者の送信電力p
ijk、アンテナゲインg
ijk、伝搬損失指数αおよびフェージング係数h
ijkがグリッドV
ijkに対応付けられてROMに格納される。
【0201】
CPUは、ROMからプログラムProg_Aを読み出し、その読み出したプログラムProg_Aを実行して、上述した方法によって排他領域PERを作成する。
【0202】
この場合、RAMは、干渉確率P(Itotal>Ith)の演算における途中の計算結果を一時的に記憶する。また、RAMは、決定された送信許可割合aijkを一時的に記憶する。
【0203】
従って、プログラムProg_Aは、排他領域PERの作成をコンピュータ(CPU)に実行させるためのプログラムである。
【0204】
また、プログラムProg_Aは、CDおよびDVD等の記録媒体に記録されて流通されてもよい。この場合、コンピュータ(CPU)は、記録媒体からプログラムProg_Aを読み出して実行し、排他領域PERを作成する。従って、プログラムProg_Aを記録したCD,DVD等は、プログラムProg_Aを記録したコンピュータ(CPU)読み取り可能な記録媒体である。
【0205】
上記においては、管理装置10は、無線局11に配置されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、管理装置10は、無線局11と異なるところに配置されてもよく、単独で配置されてもよい。
【0206】
また、上記においては、1次利用者は、免許された無線通信システムであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、1次利用者は、排他領域外における干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムであればよい。
【0207】
更に、上記においては、各グリッドVijkは、立方体の形状を有すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、各グリッドVijkは、立方体の高さ方向における2つの面が上に凸または下に凸である2つの曲面を有する3次元形状を有していてもよく、直方体の形状を有していてもよく、一般的には、円柱座標によって表した3次元形状に近似可能な形状であれば、どのような3次元形状を有していてもよい。
【0208】
この発明の実施の形態によれば、管理装置10は、以下の構成を有していればよい。
【0209】
(構成1)
管理装置は、演算手段と、決定手段と、作成手段とを備える。
【0210】
演算手段は、渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、1次利用者の受信局が2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である1次利用者の受信局への干渉確率として演算する。
【0211】
決定手段は、演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において決定する。
【0212】
作成手段は、決定された複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する。
【0213】
そして、演算手段は、複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、円柱座標によって表した3次元形状に複数の領域の各々の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0214】
(構成2)
構成1において、演算手段は、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲインと、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局が1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、第1の干渉電力のラプラス変換を用いて第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、複数の領域における2次利用者の全ての送信局から1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて干渉確率を演算する。
【0215】
(構成3)
構成2において、演算手段は、第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する。
【0216】
(構成4)
構成1から構成3のいずれかにおいて、決定手段は、複数の領域の各々における2次利用者の送信する送信局の個数に2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、目的関数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する。
【0217】
(構成5)
構成1から構成4のいずれかにおいて、複数の領域に存在する2次利用者の送信局は、送信許可割合に基づいて、1次利用者および2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される。
【0218】
(構成6)
構成1から構成5のいずれかにおいて、複数の領域の各々は、立方体の形状を有する。演算手段は、立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に立方体の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0219】
(構成7)
コンピュータに実行させるためのプログラムは、
演算手段が、干渉データの割合が一定値となる1次利用者の受信局を原点とした3次元領域を構成する複数の領域の各々における2次利用者の非均一なポアソン点過程に従って分布した送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲイン、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、1次利用者の受信局が2次利用者の送信する全ての送信局から受けるしきい値よりも大きい干渉電力を、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合の関数である1次利用者の受信局への干渉確率として演算する第1のステップと、
決定手段が、演算された干渉確率が目標値以下になり、かつ、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において決定する第2のステップと、
作成手段が、決定された複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信許可割合に基づいて、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を作成する第3のステップとをコンピュータに実行させる。
【0220】
そして、演算手段は、第1のステップにおいて、複数の領域の各々の体積と同じ体積を有し、かつ、円柱座標によって表した3次元形状に複数の領域の各々の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0221】
(構成8)
構成7において、演算手段は、第1のステップにおいて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局の送信電力、1次利用者の受信局におけるアンテナゲインと、1次利用者の受信局と2次利用者の送信局との間のフェージング係数、2次利用者の送信局の位置と原点とのユークリッド距離、および伝搬損失指数を用いて、複数の領域の各々における2次利用者の送信局が1次利用者の受信局に与える第1の干渉電力を演算し、第1の干渉電力のラプラス変換を用いて第1の干渉電力のn(nは正の整数)次キュムラントを2次利用者の送信局の送信許可割合の関数として演算し、その演算したn次キュムラントに基づいて、複数の領域における2次利用者の全ての送信局から1次利用者の受信局への干渉電力である第2の干渉電力のn次キュムラントを演算し、その演算した第2の干渉電力のn次キュムラントに基づいて、第2の干渉電力の確率密度関数を演算し、その演算した確率密度関数のパラメータを用いて干渉確率を演算する。
【0222】
(構成9)
構成8において、演算手段は、第1のステップにおいて、第2の干渉電力の1次キュムラントからn次キュムラントまでの和を演算することによって第2の干渉電力のn次キュムラントを演算する。
【0223】
(構成10)
構成7から構成9のいずれかにおいて、決定手段は、第2のステップにおいて、複数の領域の各々における2次利用者の送信する送信局の個数に2次利用者の送信局の送信が禁止される確率を乗算した乗算結果を複数の領域について加算した加算結果を目的関数とし、演算された干渉確率が干渉の許容値よりも小さくなる制約条件の下で、目的関数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を複数の領域の各々において求めることにより、送信が禁止される2次利用者の送信局の個数を最小化する2次利用者の送信局の送信許可割合を決定する。
【0224】
(構成11)
構成7から構成10のいずれかにおいて、複数の領域に存在する2次利用者の送信局は、送信許可割合に基づいて、1次利用者および2次利用者が共用する第1の周波数帯における通信を許可され、送信許可割合から決定された送信禁止割合に基づいて、第1の周波数帯よりも低周波数帯である第2の周波数帯における制御情報のみの通信が許可される。
【0225】
(構成12)
構成7から構成11のいずれかにおいて、複数の領域の各々は、立方体の形状を有する。演算手段は、第1のステップにおいて、立方体の体積と同じ体積を有するとともに地面に平行な方向に突出した円弧状の2つの曲面と地面に垂直な方向に配置された2つの平面とを有する3次元形状に立方体の形状を近似して干渉電力を演算する。
【0226】
(構成13)
記録媒体は、構成7から構成12のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0227】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0228】
この発明は、管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に適用される。
【符号の説明】
【0229】
1,11 無線局、2,3,121~12s 端末、10 管理装置、101 受信手段、102 演算手段、103 記憶手段、104 決定手段、105 作成手段。