(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20230502BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20230502BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W24/08
(21)【出願番号】P 2019004233
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-12-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発、複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 理志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信雄
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142957(JP,A)
【文献】特開2017-118384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0092789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する受信手段と、
前記1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と前記干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと前記被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する生成手段と、
干渉が有ることを示すラベルと前記被干渉端末位置と前記通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと前記被干渉端末位置と前記通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記教師データを更新した更新教師データを生成する更新手段と、
前記更新教師データに基づいて、前記通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において前記通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、前記第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する機械学習手段と、
前記決定境界を用いて、前記1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび前記1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する通信パラメータ決定手段と、
前記決定された通信パラメータセットを前記2次利用者の端末群へ送信する送信手段とを備え、
前記更新手段は、前記1次利用者と前記2次利用者との間の実際の電波伝搬路
における前記干渉データのシャドウフェージング電力の最大値に比例する広さを有するように干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に
おいて前記干渉データの周囲に擬似干渉データを
ランダムに追加して前記偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記更新教師データを生成する、管理装置。
【請求項2】
前記更新手段は、前記干渉データ生成領域の広さに比例した個数の前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記更新手段は、前記2次利用者が前記1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように前記干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記更新手段は、シャドウィングを考慮して前記干渉電力を決定する、請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記更新手段は、前記1次利用者と前記2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する前記非干渉データを削除して前記偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記更新教師データを生成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記更新手段は、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて前記干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項7】
前記通信パラメータ決定手段は、前記n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した前記(n-m)次元超平面上の点と前記決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする前記(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて前記1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
受信手段が、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する第1のステップと、
生成手段が、前記1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と前記干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと前記被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する第2のステップと、
更新手段が、干渉が有ることを示すラベルと前記被干渉端末位置と前記通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと前記被干渉端末位置と前記通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記教師データを更新した更新教師データを生成する第3のステップと、
機械学習手段が、前記更新教師データに基づいて、前記通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において前記通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、前記第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する第4のステップと、
通信パラメータ決定手段が、前記決定境界を用いて、前記1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび前記1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する第5のステップと、
送信手段が、前記決定された通信パラメータセットを前記2次利用者の端末群へ送信する第6のステップとをコンピュータに実行させ、
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、前記1次利用者と前記2次利用者との間の実際の電波伝搬路
における前記干渉データのシャドウフェージング電力の最大値に比例する広さを有するように干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に
おいて前記干渉データの周囲に擬似干渉データを
ランダムに追加して前記偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記更新教師データを生成する、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、前記干渉データ生成領域の広さに比例した個数の前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項8に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、前記2次利用者が前記1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように前記干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項9に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、シャドウィングを考慮して前記干渉電力を決定する、請求項10に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、前記1次利用者と前記2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する前記非干渉データを削除して前記偏り低減処理を前記教師データに適用し、前記更新教師データを生成する、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
前記更新手段は、前記第3のステップにおいて、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて前記干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に前記擬似干渉データを追加して前記更新教師データを生成する、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記通信パラメータ決定手段は、前記第5のステップにおいて、前記n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した前記(n-m)次元超平面上の点と前記決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする前記(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて前記1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する、請求項8から請求項13のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項8から請求項14のいずれか1項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周波数共用システムでは、ある周波数帯域において無線通信を行う一次利用者に対して、その周波数帯域で二次利用者が干渉を与えずに通信するために周波数共用条件を設定する。そして、二次利用者は、その共用条件の下で通信を行う。
【0003】
しかし、予め定められた共用条件に従って二次利用者が通信を行った場合でも、伝搬路の環境の変動などに起因した干渉の発生が想定される。そこで、干渉の再発防止に向けた周波数共用条件の更新手法として、周波数管理データベース上に存在する情報に対して機械学習を行い、二次利用者の通信パラメータを決定する手法が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
この手法では、周波数管理データベース上に蓄積された二次利用者の通信座標や送信電力などの通信履歴及び一次利用者による干渉通知をもとに教師あり学習を実行し、一次利用者に干渉を与えない二次利用者の通信パラメータを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】山田仰、西尾理志、守倉正博、山本高至, “周波数共用に向けた教師あり学習による一次利用者排他領域更新方式,” 信学論(B), vol.J101-B, no.5, pp.372-382, May 2018.
【文献】K. Schaubach, N. J. Davis IV, and T. S.Rappaport, “A ray tracing method for predicting path loss and delay spread in microcellular environments,” Proc. IEEE Veh. Tech. Conf., pp. 932- 5, May 1992.
【文献】L. M. Correia, Wireless Flexible Personalized Communications, COST259: European Co-Operation in Mobile Radio Research, pp. 77-222,2001.
【文献】Zhenyu Wang, E.K. Tameh, and A.R. Nix, “Joint Shadowing Process in Urban Peer-to-Peer Radio Channels,” IEEE Trans. Veh., vol. 57, no. 1, pp. 52-64, Jan. 2008.
【文献】K. Karmarkar, "A New Polynomial-Time Algorithm for Linear Programming," Combinatorica, 4 (1984), 373-395.
【文献】Glover, Fred (1986). "Future Paths for Integer Programming and Links to Artificial Intelligence". Computers and Operations Research 13 (5): 533-549. doi:10.1016/0305-0548(86)90048-1.
【文献】Cox, DR (1958). "The regression analysis of binary sequences (with discussion)". J Roy Stat Soc B 20: 215-242.
【文献】Koby Crammer, Alex Kulesza and Mark Dredze, “Adaptive Regularization of Weight Vectors,”NIPS2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載された技術では、実際に干渉が生じたことを示す干渉データを基準点とし、統計的な処理によって、干渉を示す擬似データを基準点の周囲に生成する。その結果、擬似データの生成が実際の電波伝搬路の特性と必ずしても一致しない。
【0008】
また、二次利用者が一次利用者に干渉を与える電波伝搬路中の地形といった電波伝搬に決定的に影響を与える要素が考慮されない。従って、本来なら干渉が起き得ない地点に擬似データが生成されたり、本来なら干渉が起き得る地点に擬似データが生成される。
【0009】
従って、非特許文献1に記載された技術では、実際の電波伝搬路に即して擬似データを生成することが困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、この発明の実施の形態によれば、2次利用者が干渉を回避して無線通信を行うための通信パラメータを精度良く決定可能な管理装置を提供する。
【0011】
また、この発明の実施の形態によれば、2次利用者が干渉を回避して無線通信を行うための通信パラメータを精度良く決定することをコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【0012】
更に、この発明の実施の形態によれば、2次利用者が干渉を回避して無線通信を行うための通信パラメータを精度良く決定することをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、管理装置は、受信手段と、生成手段と、更新手段と、機械学習手段と、通信パラメータ決定手段と、送信手段とを備える。
【0014】
受信手段は、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する。
【0015】
生成手段は、1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する。
【0016】
更新手段は、干渉が有ることを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、教師データを更新した更新教師データを生成する。
【0017】
機械学習手段は、更新教師データに基づいて、通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する。
【0018】
通信パラメータ決定手段は、決定境界を用いて、1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する。
【0019】
送信手段は、決定された通信パラメータセットを2次利用者の端末群へ送信する。
【0020】
そして、更新手段は、1次利用者と2次利用者との間の実際の電波伝搬路に基づいて決定された干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0021】
(構成2)
構成1において、更新手段は、干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0022】
(構成3)
構成2において、更新手段は、2次利用者が1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0023】
(構成4)
構成3において、更新手段は、シャドウィングを考慮して前記干渉電力を決定する。
【0024】
(構成5)
構成1から構成4のいずれかにおいて、更新手段は、1次利用者と2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する非干渉データを削除して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0025】
(構成6)
構成1から構成5のいずれかにおいて、更新手段は、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0026】
(構成7)
構成1から構成6のいずれかにおいて、通信パラメータ決定手段は、n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した(n-m)次元超平面上の点と決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する。
【0027】
(構成8)
この発明の実施の形態によれば、プログラムは、
受信手段が、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する第1のステップと、
生成手段が、1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する第2のステップと、
更新手段が、干渉が有ることを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、教師データを更新した更新教師データを生成する第3のステップと、
機械学習手段が、更新教師データに基づいて、通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する第4のステップと、
通信パラメータ決定手段が、決定境界を用いて、1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する第5のステップと、
送信手段が、決定された通信パラメータセットを2次利用者の端末群へ送信する第6のステップとをコンピュータに実行させ、
更新手段は、第3のステップにおいて、1次利用者と2次利用者との間の実際の電波伝搬路に基づいて決定された干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0028】
(構成9)
構成8において、更新手段は、第3のステップにおいて、干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成す。
【0029】
(構成10)
構成9において、更新手段は、第3のステップにおいて、2次利用者が1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0030】
(構成11)
構成10において、更新手段は、第3のステップにおいて、シャドウィングを考慮して干渉電力を決定する。
【0031】
(構成12)
構成8から構成11のいずれかにおいて、更新手段は、第3のステップにおいて、1次利用者と2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する非干渉データを削除して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0032】
(構成13)
構成8から構成12のいずれかにおいて、更新手段は、第3のステップにおいて、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0033】
(構成14)
構成8から構成13のいずれかにおいて、通信パラメータ決定手段は、第5のステップにおいて、n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した(n-m)次元超平面上の点と決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する。
【0034】
(構成15)
更に、この発明の実施の形態によれば、記録媒体は、構成8から構成14のいずれか1つに記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0035】
2次利用者が干渉を回避して無線通信を行うための通信パラメータをリアルタイムに精度良く決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】この発明の実施の形態における通信機器を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す管理装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図2に示す機械学習部の構成を示す概略図である。
【
図6】
図2および
図3に示す干渉推定装置における干渉推定マップMAP_IFPの作成方法を説明するための図である。
【
図7】干渉推定マップMAP_IFPの概念図である。
【
図8】
図2および
図3に示す干渉推定装置における干渉推定マップMAP_IFPの作成方法を説明するための別の図である。
【
図9】別の干渉推定マップMAP_IFPの概念図である。
【
図13】擬似干渉データの追加を示す概念図である。
【
図14】教師データに擬似干渉データを追加した状態を示す概念図である。
【
図15】過剰データを削除する方法を説明するための図である。
【
図16】更新教師データの生成方法を説明するための図である。
【
図18】決定境界を求める方法を説明するための図である。
【
図19】決定境界を求める方法を説明するための図である。
【
図20】決定境界を用いて通信パラメータセットの決定方法を説明するための図である。
【
図21】1次利用者の端末および管理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図22】
図21のステップS9の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図23】
図21のステップS11の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【
図24】排他領域の面積の増加分と非干渉発生確率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0038】
図1は、この発明の実施の形態における通信機器を示す概略図である。
図1を参照して、無線通信システムWLC1,WLC2が存在する。無線通信システムWLC1は、免許された無線通信システムであり、「1次利用者」と呼ばれる。無線通信システムWLC1は、無線局1と端末2,3とを備える。無線局1は、1次利用者の無線局であり、端末2,3は、1次利用者の端末である。そして、無線局1および端末2,3は、免許された周波数帯域で相互に無線通信を行う。
【0039】
無線通信システムWLC2は、1次利用者の周波数帯域で無線通信を行う無線通信システムであり、「2次利用者」と呼ばれる。無線通信システムWLC2は、無線局11と、端末12,13とを備える。無線局11は、2次利用者の無線局であり、端末12,13は、2次利用者の端末である。無線局11および端末12,13は、1次利用者の周波数帯域で相互に無線通信を行う。
【0040】
端末2,3の各々は、端末12,13からの信号を受信したときの受信信号強度を検出する。そして、端末2,3の各々は、受信信号強度が83dBm以上であるとき、干渉が有ると判定し、受信信号強度が83dBmよりも小さいとき、干渉が無いと判定する。
【0041】
端末2,3の各々は、干渉が有ると判定すると、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて自己の位置を検出するとともに、内蔵したタイマーを用いて、干渉が有ると判定したときの時刻を検出する。この検出した位置は、端末2,3が干渉を受けたときの位置であるので、「被干渉端末位置」と呼ばれる。
【0042】
そして、端末2,3の各々は、時刻と、干渉の有無と、被干渉端末位置とを含む干渉通知を生成し、その生成した干渉通知を無線局1へ送信する。
【0043】
無線局1は、端末2,3から干渉通知を受信し、その受信した干渉通知を無線局11へ送信する。
【0044】
管理装置10は、無線局11に配置される。そして、管理装置10は、無線局1から干渉通知を受信する。また、管理装置10は、端末12,13と無線通信を行い、その無線通信を行った時刻と、その無線通信の履歴(2次利用者における通信履歴)とを対応付けて保持する。
【0045】
そうすると、管理装置10は、干渉通知から時刻、干渉の有無および被干渉端末位置を抽出し、その抽出した時刻、干渉の有無および被干渉端末位置を相互に対応付けて後述する管理テーブルに格納するとともに、保持している時刻および2次利用者における通信履歴とを相互に対応付けて後述する管理テーブルに格納する。
【0046】
管理装置10は、上記の動作を繰返し行い、各時刻に対応付けて、干渉の有無と、被干渉端末位置と、2次利用者における通信履歴とを順次管理テーブルに格納する。
【0047】
管理装置10は、管理テーブルに基づいて、後述する方法によって、教師データを作成し、その作成した教師データに基づいて、1次利用者へ干渉を与えない通信パラメータセットを決定し、その決定した通信パラメータセットを端末12,13へ送信する。
【0048】
端末12,13は、管理装置10から通信パラメータセットを受信すると、その受信した通信パラメータセットを用いて無線局11と無線通信を行う。
【0049】
図2は、
図1に示す管理装置10の構成を示す概略図である。
図2を参照して、管理装置10は、情報管理部101と、機械学習部102と、パラメータ決定部103と、パラメータ通知部104とを備える。
【0050】
情報管理部101は、タイマー(図示せず)を内蔵しており、無線局1から干渉通知を受信する。
【0051】
また、情報管理部101は、端末12,13との無線通信に用いられた通信パラメータ(2次利用者における通信パラメータ)を時刻に対応付けて管理する。通信パラメータは、例えば、送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等である。
【0052】
そして、情報管理部101は、時刻に対応付けて、干渉通知に含まれる干渉の有無および被干渉端末位置を管理テーブルに格納するとともに、時刻に対応付けて、2次利用者における通信パラメータを管理テーブルに格納する。すなわち、情報管理部101は、干渉通知の履歴(干渉の有無および被干渉端末位置の履歴)と2次利用者における通信履歴(2次利用者における通信パラメータの履歴)とを時系列に管理する。この干渉通知の履歴と2次利用者における通信履歴とを時系列に含むものを「管理テーブル」と呼ぶ。
【0053】
情報管理部101は、新たに干渉通知を受信すると、干渉通知の履歴と2次利用者における通信履歴とを管理テーブルに追加して管理テーブルを更新する。そして、情報管理部101は、更新した管理テーブルを機械学習部102へ出力する。
【0054】
機械学習部102は、管理テーブルを情報管理部101から受け、その受けた管理テーブルに基づいて、後述する方法によって、教師データを作成する。そして、機械学習部12は、各2次利用者の位置における1次利用者への干渉電力を推定した干渉推定マップMAP_IFPを干渉推定装置20から受け、その受けた干渉推定マップMAP_IFPに基づいて、後述する方法によって、教師データを更新して更新教師データを生成する。その後、機械学習部102は、更新教師データに基づいて機械学習を行い、通信パラメータを干渉が無いクラスCL1と干渉が有るクラスCL2とに分類するための境界であり、かつ、クラスCL1,CL2の両方から等距離にある境界である決定境界を決定する。
【0055】
そうすると、機械学習部102は、その決定した決定境界をパラメータ決定部103へ出力する。
【0056】
パラメータ決定部103は、決定境界を機械学習部102から受け、その受けた決定境界を用いて、後述する方法によって、1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する。そして、パラメータ決定部103は、その決定した通信パラメータセットをパラメータ通知部104へ出力する。
【0057】
パラメータ通知部104は、通信パラメータセットをパラメータ決定部103から受け、その受けた通信パラメータセットを端末12,13へ送信する。
【0058】
図3は、
図2に示す機械学習部102の構成を示す概略図である。
図3を参照して、機械学習部102は、生成装置1021と、擬似データ生成装置1022と、過剰データ削除装置1023と、更新装置1024と、決定装置1025とを含む。
【0059】
生成装置1021は、管理テーブルを情報管理部101から受け、その受けた管理テーブルに基づいて、後述する方法によって、教師データを生成する。そして、生成装置121は、その生成した教師データを擬似データ生成装置1022および過剰データ削除装置1023へ出力する。
【0060】
擬似データ生成装置1022は、教師データを生成装置1021から受ける。また、擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP_IFPを干渉推定装置20から受ける。
【0061】
擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP_IFPを受けると、その受けた干渉推定マップMAP_IFPに基づいて、後述する方法によって、干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に擬似干渉データを生成する。そうすると、擬似データ生成装置1022は、その生成した擬似干渉データを更新装置1024へ出力する。
【0062】
過剰データ削除装置1023は、教師データを生成装置1021から受け、その受けた教師データから過剰データを削除する。そして、過剰データ削除装置1023は、過剰データを削除した教師データを更新装置1024へ出力する。
【0063】
更新装置1024は、擬似データを擬似データ生成装置1022から受け、過剰データを削除した教師データを過剰データ削除装置1023から受ける。そして、更新装置1024は、過剰データを削除した教師データに擬似データを追加して教師データを更新し、更新教師データを生成する。そして、更新装置1024は、更新教師データを決定装置1025へ出力する。
【0064】
決定装置1025は、更新教師データを更新装置1024から受け、その受けた更新教師データに基づいて機械学習を行い、通信パラメータを干渉が無いクラスCL1と干渉が有るクラスCL2とに分類するための境界であり、かつ、クラスCL1,CL2の両方から等距離にある境界である決定境界を決定する。そして、決定装置1025は、その決定した決定境界をパラメータ決定部103へ出力する。
【0065】
図4は、管理テーブルの概念図である。
図4を参照して、管理テーブルTable-CTLは、1次利用者の干渉通知の履歴と、2次利用者の通信履歴とを含む。1次利用者の干渉通知の履歴および2次利用者の通信履歴は、相互に対応付けられる。
【0066】
1次利用者の干渉通知の履歴は、時刻1と、干渉の有無と、被干渉端末位置とを含む。時刻1、干渉の有無および被干渉端末位置は、相互に対応付けられる。
【0067】
2次利用者の通信履歴は、時刻2と、送信電力と、中心周波数とを含む。時刻2、送信電力および中心周波数は、相互に対応付けられる。
【0068】
2次利用者の通信パラメータは、上記において、送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等からなると説明した。しかし、
図4においては、説明し易くするために、2次利用者の通信パラメータとして送信電力および中心周波数だけを示した。実際には、2次利用者の通信履歴は、上述した送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等からなる。
【0069】
図4においては、時刻t0,t3,t4では、干渉が無く、そのときの2次利用者における送信電力および中心周波数が示されている。干渉が無いので、被干渉端末位置には”unknown”が格納されている。そして、”干渉無し”、”unknown”、2次利用者の送信電力および中心周波数が時刻t0,t3,t4に対応付けられている。
【0070】
また、
図4においては、時刻t1,t2では、干渉が有り、そのときの被干渉端末位置と、2次利用者の送信電力および中心周波数とが示されている。そして、”干渉有り”、被干渉端末位置((x1,y1),(x2,y2))、2次利用者の送信電力および2次利用者の中心周波数が時刻t1,t2に対応付けられている。
【0071】
このように、管理テーブルTable-CTLは、1次利用者の干渉の有無および被干渉端末位置と、2次利用者の通信パラメータとが時刻に対応付けられた構成からなる。
【0072】
情報管理部101は、無線局1から干渉通知を受信すると、干渉通知から時刻1、干渉の有(または無)および被干渉端末位置を抽出する。そして、情報管理部101は、時刻1、干渉の有(または無)および被干渉端末位置を相互に対応付けて管理テーブルTable-CTLに格納し、自己が保持している時刻2、2次利用者の送信電力および2次利用者の中心周波数を相互に対応付けて管理テーブルTable-CTLに格納する。
【0073】
情報管理部101は、この動作を干渉通知を受信する毎に行い、管理テーブルTable-CTLを作成するとともに記憶する。そして、情報管理部101は、新たな干渉通知を受信すると、上記の動作を行って管理テーブルTable-CTLを更新し、その更新した管理テーブルTable-CTLを記憶するとともに機械学習部102へ出力する。
【0074】
図5は、教師データの概念図である。
図5を参照して、教師データTCHR_Dは、干渉の有無と、被干渉端末位置と、送信電力と、中心周波数とを含む。干渉の有無、被干渉端末位置、送信電力および中心周波数は、相互に対応付けられる。
【0075】
なお、
図5においても、説明をし易くするために、2次利用者の通信パラメータとして送信電力および中心周波数が示されているが、実際には、2次利用者の通信パラメータとして、送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等が教師データTCHR_Dに格納される。
【0076】
教師データTCHR_Dにおいては、干渉有りを”1”で表し、干渉無しを”-1”で表す。
【0077】
また、教師データTCHR_Dにおいては、干渉が無い場合、被干渉端末位置を(0,0)で表す。
【0078】
そして、干渉の有無(-1または1)、被干渉端末位置((0,0)または(x1,y1)等)、送信電力(7dBm,10dBm等)および中心周波数(2.42GHz等)は、相互に対応付けられている。
【0079】
機械学習部102の生成装置1021は、情報管理部101から管理テーブルTable-CTLを受けると、その受けた管理テーブルTable-CTLの時刻1,時刻2を参照して、時刻1と時刻2とが一致する干渉の有無、被干渉端末位置、送信電力および中心周波数を抽出し、その抽出した干渉の有無、被干渉端末位置、送信電力および中心周波数を相互に対応付けて教師データTCHR_Dを作成する。この場合、干渉有りを”1”で表し、干渉無しを”-1”で表し、干渉が無いときの被干渉端末位置を(0,0)で表して教師データTCHR_Dを作成する。
【0080】
その結果、機械学習部102は、
図5に示す教師データTCHR_Dを作成する。
【0081】
教師データTCHR_Dにおいて、干渉が有ることを示すフラグ(“1”)と、フラグ(“1”)に対応付けられた被干渉端末位置、送信電力および中心周波数とは、「干渉データ」を構成する。また、教師データTCHR_Dにおいて、干渉が無いことを示すフラグ(“-1”)と、フラグ(“-1”)に対応付けられた被干渉端末位置、送信電力および中心周波数とは、「非干渉データ」を構成する。
【0082】
図5においては、2次利用者の通信パラメータとして送信電力および中心周波数だけを示したが、実際には、2次利用者の通信履歴は、上述した送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等からなる。従って、干渉が有ることを示すフラグ(“1”)と、フラグ(“1”)に対応付けられた被干渉端末位置および2次利用者の通信パラメータ(送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等)は、「干渉データ」を構成し、干渉が無いことを示すフラグ(“-1”)と、フラグ(“-1”)に対応付けられた被干渉端末位置および2次利用者の通信パラメータ(送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等)は、「非干渉データ」を構成する。
【0083】
図6は、
図2および
図3に示す干渉推定装置20における干渉推定マップMAP_IFPの作成方法を説明するための図である。また、
図7は、干渉推定マップMAP_IFPの概念図である。
【0084】
図6を参照して、干渉推定装置20は、山等が配置された地上の起伏を示す3次元地図データMAP1を外部から受け、その受けた3次元地図データMAP1上に1次利用者の受信局(端末2,3のいずれか)および2次利用者の送信局(端末12,13のいずれか)を配置する。3次元地図データMAP1は、2次元格子状に分割されており、干渉推定装置20は、1次利用者の周囲に2次利用者を格子状に配置する。なお、2次元格子状に分割された1つのマス目のサイズは、例えば、10m×10mである。
【0085】
そして、干渉推定装置20は、格子状に配置した2次利用者の各々について2次利用者が送信した電波の伝搬シミュレーションを行う。
【0086】
伝搬シミュレーションの方法は、例えば、レイトレーシング法である(非特許文献2)。このレイトレーシング法は、電波を光に見立てて、電波の伝搬経路を探索する方法であり、幾何光学的理論に基づいて送信点から受信点へ到達する電波を追跡する手法である。
【0087】
電波の軌跡を求める手法として、イメージング法およびレイラウンチング法等がある。イメージング法は、送信点、受信点、およびその他、全ての反射面の組み合わせから、反射・回折・透過を計算し、軌跡を求める方法である。また、レイラウンチング法は、一定角度ごとに送信点から直線光を発射し、受信点に到達するものだけを求める方法である。
【0088】
従って、干渉推定装置20は、イメージング法およびレイラウンチング法等を用いて電波の軌跡を求め、その求めた電波の軌跡に基づいて、i番目の2次利用者から送信された電波の受信点(1次利用者の受信局)における受信電力Pr
PUiを次式によって算出する。
【0089】
【0090】
式(1)において、Pt
SUiは、i番目の2次利用者の送信電力であり、PL(li)は、距離減衰である。
【0091】
そして、距離減衰PL(li)は、次式によって表される。
【0092】
【0093】
式(2)において、γは、伝搬損失距離特性(Path Loss Exponent)であり、都市部では、“3”前後の値からなる。また、dは、1次利用者と2次利用者との距離であり、d0は、10~100mの値からなる。
【0094】
1次利用者の受信局の位置およびi番目の2次利用者の送信局の位置は、既知であり、伝搬損失距離特性γは、既知であり、i番目の2次利用者の送信局の送信電力Pt
SUiは、既知であるので、干渉推定装置20は、式(1)および式(2)によって受信電力Pr
PUiを算出できる。
【0095】
干渉推定装置20は、式(1)および式(2)によって受信電力Pr
PUiを算出し、その算出した受信電力Pr
PUiがしきい値Pthよりも大きいか否かを判定する。しきい値Pthは、例えば、雑音電力と同程度、あるいは、雑音電力に5~20dB程度のマージンを加えた値である。具体例としては、1次利用者が20MHzの帯域幅を有する無線通信システムである場合、雑音温度を300Kとすると、雑音電力は、-100dBmとなるため、しきい値Pthは、この雑音電力にマージンを加えた、-95~-80dBmである。
【0096】
干渉推定装置20は、受信電力Pr
PUiがしきい値Pthよりも大きいとき、受信電力Pr
PUiをi番目の2次利用者が1次利用者に与える干渉電力IFPiとし、その干渉電力IFPiを3次元地図データMAP1上のi番目の2次利用者の位置に記載する。
【0097】
一方、渉推定装置20は、受信電力Pr
PUiがしきい値Pth以下であるとき、受信電力Pr
PUiを非干渉電力NIFPiとし、その非干渉電力NIFPiを3次元地図データMAP1上のi番目の2次利用者の位置に記載する。
【0098】
干渉推定装置20は、上記の処理を全ての2次利用者について実行し、干渉電力IFP
iまたは受信電力P
r
PUiを3次元地図データMAP1上の全ての2次利用者の位置に記載して、
図7に示す干渉推定マップMAP_IFP1を作成する。なお、干渉推定マップMAP_IFP1の各マス目には、干渉電力IFP
iと2次利用者の位置l
iとからなる[IFP
i,l
i]、または非干渉電力NIFP
iと2次利用者の位置l
iとからなる[NIFP
i,l
i]が記載されている。
【0099】
干渉推定マップMAP_IFP1において、干渉電力IFPiが記載されたマス目の領域は、1次利用者のみが無線通信を行うことができる排他領域を構成する。
【0100】
図8は、
図2および
図3に示す干渉推定装置20における干渉推定マップMAP_IFPの作成方法を説明するための別の図である。
【0101】
図8を参照して、3次元地図データMAP2は、3次元地図データMAP1に建物を追加した3次元地図データである。
【0102】
干渉推定装置20は、干渉推定マップMAP_IFP1を作成すると、3次元地図データMAP2上に1次利用者の受信局(端末2,3のいずれか)および2次利用者の送信局(端末12,13のいずれか)を配置する。この場合、干渉推定装置20は、2次利用者の送信局を格子状に配置する。なお、3次元地図データMAP2上の各領域も、3次元地図データMAP1と同じように2次元格子状に分割されている。
【0103】
そして、干渉推定装置20は、3次元地図データMAP2上で電波の伝搬シミュレーションを上述した方法によって行い、i番目の2次利用者から送信された電波の受信点(1次利用者の受信局)における受信電力Pr
PUiを算出し、その算出した受信電力Pr
PUiを干渉電力IFPiまたは非干渉電力NIFPiとする。
【0104】
その後、干渉推定装置20は、3次元地図データMAP2を用いて算出した干渉電力IFPiおよび非干渉電力NIFPiによって干渉推定マップMAP_IFP1を更新する更新処理を行う。より具体的には、更新処理は、次のように行われる。干渉推定装置20は、干渉推定マップMAP_IFP1において、非干渉電力NIFPiが記載されている2次利用者から送信された電波の受信電力Pr
PUiが干渉電力IFPiに変わった場合、その2次利用者が配置されたマス目に干渉電力IFPiを記載する。また、干渉推定装置20は、干渉推定マップMAP_IFP1において、干渉電力IFPiが記載されている2次利用者から送信された電波の受信電力Pr
PUiが非干渉電力NIFPiに変わった場合、その2次利用者が配置されたマス目に非干渉電力NIFPiを記載する。
【0105】
干渉推定装置20は、この更新処理を干渉推定マップMAP_IFP1上の全ての2次利用者について実行し、干渉推定マップMAP_IFP1を干渉推定マップMAP_IFP1_UPに更新する。
【0106】
その後、干渉推定装置20は、干渉推定マップMAP_IFP1_UPに記載された干渉電力IFPiから2次利用者の送信電力Pt
SUiおよびアンテナ利得と、1次利用者と2次利用者との間の距離減衰PL(li)とを差し引いてシャドウフェージング電力SFiを算出する。干渉推定装置20は、シャドウフェージング電力SFiの算出を、干渉推定マップMAP_IFP1_UP上の全ての干渉電力IFPiについて実行する。
【0107】
なお、シャドウフェージング電力SFiは、干渉電力IFPiから2次利用者の送信電力Pt
SUiおよびアンテナ利得と距離減衰PL(li)とを差し引いて算出されるので、「干渉電力」に該当する。
【0108】
図9は、別の干渉推定マップMAP_IFPの概念図である。干渉推定装置20は、シャドウフェージング電力SF
iの算出を全ての干渉電力IFP
iについて実行すると、干渉推定マップMAP_IFP1_UP上の干渉電力IFP
iをシャドウフェージング電力SF
iに書き換えて
図9に示す干渉推定マップMAP_IFP2を作成する。なお、干渉推定マップMAP_IFP2の各マス目には、シャドウフェージング電力SF
iと2次利用者の位置l
iとからなる[SF
i,l
i]、または非干渉電力NIFP
iと2次利用者の位置l
iとからなる[NIFP
i,l
i]が記載されている。
【0109】
そうすると、干渉推定装置20は、作成した干渉推定マップMAP_IFP1,MAP_IFP2を機械学習部102の擬似データ生成装置1022へ出力する。
【0110】
擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP_IFP1,MAP_IFP2を干渉推定装置20から受ける。
【0111】
図10および
図11は、排他領域の概念図である。擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP_IFP1を受けると、その受けた干渉推定マップMAP_IFP1に基づいて、1次利用者のみが通信可能な排他領域PERを作成する。より具体的には、擬似データ生成装置1022は、干渉電力IFP
iが配置されたマス目からなる排他領域PERを作成する。その結果、例えば、
図10に示す排他領域が作成される。
【0112】
その後、擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP_IFP2に基づいて、同様にして、排他領域PERを作成する。その結果、
図11に示すように、新たな排他領域が追加される。この新たな排他領域は、3次元地図データMAP2(
図8参照)を用いてシャドウフェージング電力SF
iを推定することによって作成された排他領域である。
【0113】
擬似データ生成装置1022は、排他領域を作成すると、干渉推定マップMAP_IFP2に基づいて擬似干渉データを追加する領域を示す干渉データ生成領域を決定する。
【0114】
図12は、干渉データ生成領域の概念図である。
図12を参照して、干渉データ生成領域REG_IFは、1次利用者の受信局に干渉を与える2次利用者の位置をl
iとしたとき、干渉データ生成領域REG_IFは、位置l
iを中心とした半径Δlの円によって囲まれる領域である。
【0115】
干渉データ生成領域は、シャドウフェージング項(シャドウフェージング電力SFi)に空間相関性があることを踏まえて、干渉座標liの近傍の座標でli+Δlに生成される。干渉が起こり得る座標に擬似干渉データを生成するために、Δlの条件は、次式によって表されるものとする。
【0116】
【0117】
i番目の2次利用者の無線通信によって1次利用者が受ける受信電力Pr
PUiは、次式によって表される。
【0118】
【0119】
式(4)において、sliは、シャドウフェージング項である。
【0120】
通常、シャドウフェージング項sli+Δlの値を算出することができないので、式(3)においては、sli+Δlの値は、ある程度のマージンαをシャドウフェージングの期待値μliに見積もった値として、sli+Δl=μli+Δl+αとした。μli+Δlは、位置liで干渉が発生したときのシャドウフェージング項sli+Δlの期待値である。
【0121】
期待値μli+Δlは、Δl=0の場合、位置liで干渉が発生したときのsliの期待値μliに一致し、Δl→∞の場合、0に漸近しながら減衰するので、μli+Δlとμliの関係式は、減少のスケールがシャドウフェージングの相関距離dcorr程度であるシャドウフェージングの自己相関関数S(sli,sli+Δl)を用いて次式によって表される。
【0122】
【0123】
そして、シャドウフェージングの自己相関関数S(sli,sli+Δl)は、一般に次式によって与えられる。
【0124】
【0125】
以上より、式(3)を満たすΔlの条件は、式(5),(6)より、次式によって表される。
【0126】
【0127】
期待値μliは、位置liで干渉が発生した条件下におけるsliの期待値として、sliが期待値0の正規分布に従うことを踏まえると、以下の式でよって表される。
【0128】
【0129】
式(8)において、φ(・)は、標準正規分布の確率密度関数であり、Φ(・)は、標準正規分布の累積分布関数であり、σSは、シャドウフェージングの標準偏差である。
【0130】
この発明の実施の形態においては、式(7)におけるαをα=α0・(干渉推定MAPの値)(α0は、0<α0≦1を満たす実数である。)によって決定する。即ち、αは、干渉推定MAPの値に比例するように決定される。α0は、例えば、α0・(干渉推定MAPの最大値)がシャドウフェージングの標準偏差(都市部では、9~12dBと知られている(非特許文献3))の2倍程度となるように設定される。
【0131】
これは、都市部のシャドウフェージングが対数正規分布に従うことが知られており、標準偏差の2倍以上の値が発生する確率は、2.5%以下であることから、シミュレーションにより推定した値と実環境でのシャドウフェージングの値を揃える意味合いがある。
【0132】
一方、α0を大きくすると干渉推定値に対してマージンを大きく見積もることとなり、干渉データ生成領域は、大きくなる。一方、α0を小さくすると、干渉データ生成領域は、小さくなる。干渉データ生成領域が広いほど、一回の更新で設定される排他領域は、広くなる傾向にあるため、一次利用者の干渉頻度に対する許容度によってα0を基準値から微調整することで対応できる。
【0133】
なお、しきい値Pth、2次利用者の送信電力Pt
SUi、シャドウフェージングの相関距離dcorrおよびシャドウフェージングの標準偏差σSは、既知であり、距離減衰PL(li),PL(li+Δl)は、上述したように算出可能であるので、擬似データ生成装置1022は、式(7)および式(8)によって、Δlを決定できる。
【0134】
擬似データ生成装置1022は、干渉推定MAPの値、即ち、干渉推定MAP2上のシャドウフェージング電力CFiに比例するようにαを決定する。そして、擬似データ生成装置1022は、決定したα、しきい値Pth、i番目の2次利用者の送信電力Pt
SUi、距離減衰PL(li)、シャドウフェージングの標準偏差σS、およびシャドウフェージングの相関距離dcorrを式(7)および式(8)に代入して、式(7)を満たすようにΔlを決定する。
【0135】
αは、シャドウフェージング電力CFiの最大値が大きいほど、大きくなる。そして、式(7)の[Pth-Pt
SUi+PL(li+Δl)-α]の値は、αが大きくなると小さくなり、αが小さくなると大きくなる。その結果、式(7)の自然対数値は、αが大きくなると大きくなり、Δlは、大きくなる。つまり、Δlは、シャドウフェージング電力CFiの最大値が大きいほど、大きくなり、シャドウフェージング電力CFiの最大値が小さいほど、小さくなるように決定される。
【0136】
擬似データ生成装置1022は、Δlを決定すると、位置liを中心とし、半径Δlの円の領域を干渉データ生成領域REG_IFとし、擬似干渉データを干渉データ生成領域REG_IF内にランダムに生成する。この場合、擬似データ生成装置1022は、干渉データ生成領域REG_IFの広さに比例した個数の擬似干渉データを干渉データ生成領域REG_IFに生成する。
【0137】
図13は、擬似干渉データの追加を示す概念図である。
図13を参照して、干渉データ生成領域REG_IF1は、干渉データIFD1(黒丸)を中心とし、半径Δl_1の円によって表される領域である。
【0138】
また、干渉データ生成領域REG_IF2は、干渉データIFD2(黒丸)を中心とし、半径Δl_2の円によって表される領域である。
【0139】
干渉データIFD1のシャドウフェージング電力CFiは、干渉データIFD2のシャドウフェージング電力CFiよりも大きいため、Δl_1は、上述した方法によって、Δl_2よりも大きく決定される。
【0140】
その結果、干渉データ生成領域REG_IF1は、干渉データ生成領域REG_IF2よりも大きく設定される。
【0141】
そして、擬似干渉データ(ハッチング)は、干渉データ生成領域REG_IF1,REG_IF2内において干渉データIFD1、IFD2の周囲にランダムに追加される。この場合、干渉データ生成領域REG_IF1は、干渉データ生成領域REG_IF2よりも大きいので、干渉データ生成領域REG_IF1に追加される擬似干渉データ(ハッチング)の個数は、干渉データ生成領域REG_IF2に追加される擬似干渉データ(ハッチング)の個数よりも多い。
【0142】
一般に、屋外での無線通信は、建造物による遮蔽などによるシャドウィングの影響を受けるが、シャドウィングには、空間相関性があることが知られている(非特許文献4)。従って、干渉データの近傍では干渉が発生しやすいことになる。そこで、擬似干渉データ(ハッチング)は、干渉データIFD1,IFD2の周囲に追加される。
【0143】
擬似データ生成装置1022は、擬似干渉データを追加すると、その追加した擬似干渉データを更新装置1024へ出力する。
【0144】
図14は、教師データに擬似干渉データを追加した状態を示す概念図である。なお、
図14においては、説明を分かり易くするために、2個のパラメータによって構成される2次元空間を表している。そして、“干渉源からの距離”は、変更できない(変更不可)パラメータである。
【0145】
図14を参照して、教師データを2次元空間に配置する。白丸は、非干渉データを表し、黒丸は、干渉データを表す。このように、干渉データの個数は、非干渉データの個数に比べて非常に少ない。これは、実際の通信では、非干渉データは、正常な通信を示すため、履歴が豊富に存在するが、干渉データは、干渉通知があった場合だけ発生するため、非常に少ない。従って、干渉データの個数と非干渉データの個数との間には、偏りが存在する。
【0146】
そこで、上述した方法によって、擬似干渉データを干渉データの周囲にランダムに追加する。
【0147】
図15は、過剰データを削除する方法を説明するための図である。なお、
図15においても、説明を分かり易くするために、2個のパラメータによって構成される2次元空間を表している。そして、“干渉源からの距離”は、変更できない(変更不可)パラメータである。
【0148】
図15を参照して、教師データを2次元空間に配置する。白丸は、非干渉データを表し、黒丸は、干渉データを表す。機械学習部102の過剰データ削除装置1023は、干渉データを中心とした基準円CRC(n次元平面ではn-1次元超球面)を作成し、基準円CRC(n次元平面ではn-1次元超球面)の外の領域の非干渉データを削除する。この方法によって過剰データを削除することにより、従来のアンダーサンプリング手法で起こり得る、本来なら通信可能な領域を得るために学習すべき非干渉データが削除される問題を回避しつつ、教師データの中の非干渉データの割合を減らすことができる。
【0149】
基準円CRC(n次元平面ではn-1次元超球面)は、干渉データからの距離がn次元平面上で十分離れるように、例えば、最も隣接する他の干渉データとの距離の半分から同じ距離、あるいは特徴量として3次元空間上の座標を用いる場合、シャドウィングの空間相関が0.5以下となる距離(一般には20m程度)以上、空間相関が0となる距離(一般には100m程度)以下を目安にして設定される。
【0150】
図16は、更新教師データの生成方法を説明するための図である。
図16を参照して、機械学習部102の更新装置1024は、擬似干渉データ(
図16の(a)参照)を擬似データ生成装置1022から受け、過剰データ(非干渉データの一部)が削除された教師データ(
図16の(b)参照)を過剰データ削除装置1023から受ける。
【0151】
そして、更新装置1024は、過剰データ(非干渉データの一部)が削除された教師データ(
図16の(b)参照)に擬似干渉データ(
図16の(a)参照)を追加して更新教師データ(
図16の(c)参照)を生成する。そうすると、更新装置1024は、更新教師データを決定装置1025へ出力する。
【0152】
上述したように、この発明の実施の形態においては、擬似干渉データを生成して干渉データの個数を増やし、干渉データを中心とした基準円CRCの外に存在する非干渉データを削除して非干渉データの個数を減少させることにより、干渉データと非干渉データとの偏りを低減する。
【0153】
1次利用者において干渉が発生しない2次利用者の送信電力を決定する場合、更新教師データTCHR_D_UPを用いて学習を行い、通信パラメータを干渉が無いクラスCL1と干渉が有るクラスCL2とに分類する必要がある。
【0154】
そして、通信パラメータを2つのクラスCL1,CL2に分類するのに適した機械学習器として、例えば、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)が用いられる。
【0155】
SVMは、教師有り学習を用いるパターン認識モデルの一つであり、学習用サンプル(更新教師データ)を最も大胆に区切る境界を学習する。この境界を学習するためにn(nは2以上の整数)個のパラメータによって構成されるn次元空間が設定される。
【0156】
そして、n次元空間に配置された学習用サンプル(更新教師データ)を用いて学習を行った結果、学習用サンプル(更新教師データ)を最も大胆に区切る境界は、境界に最も近いサンプル(データ)との距離(マージン)が最大となるように決定される。
【0157】
SVMの特徴は、n次元空間において、複数の点を分離することができる多くの候補平面の中でマージンが最大となる超平面を探すことである。
【0158】
このマージンとは、超平面から複数の点に至る距離の最小値を言い、このマージンを最大にしながら複数の点を2つのクラスCL1,CL2に分類しようとすると、結局、クラスCL1に属するいくつかの点との距離の中の最小値と、クラスCL2に属するいくつかの点との距離の中の最小値とが等しくなるように超平面が位置しなければならない。
【0159】
このような超平面は、マージンが最大である超平面であり、この発明の実施の形態においては、「決定境界」と呼ぶ。
【0160】
図17は、決定境界の概念図である。なお、
図17においては、説明を分かり易くするために、2個のパラメータによって構成される2次元空間を表している。
【0161】
1次利用者において干渉が発生しない2次利用者の送信電力を決定する場合、更新教師データから干渉の有無と送信電力とを選択する。また、変更ができない(変更不可)パラメータとして、例えば、干渉源からの距離を選択する。
【0162】
そして、送信電力と、干渉源からの距離をパラメータとして、干渉有りを黒丸で表し、干渉無しを白丸で表すと、
図17に示すようになる。
【0163】
そうすると、2次元空間において、複数の黒丸と複数の白丸とを区切る決定境界BDを以下に示す方法によって決定する。なお、
図17においては、説明を分かり易くするため、上述したマージンが最大である超平面を2次元平面上の直線とした。理想的な決定境界が直線(または平面)で表現できない場合は、カーネル関数、例えば、Gaussianカーネル(RGBカーネル)を用いてデータの変換を行い、決定境界が平面で表現できるよう処理を施す。以後の手順は同様である。
【0164】
図18および
図19は、決定境界を求める方法を説明するための図である。干渉無しのグループ(白丸のグループ)と干渉有りのグループ(黒丸のグループ)とを最大マージンで識別する識別線は、何処を通るか不明であるが、何処かに、最大マージンを作る正例(干渉無しの白丸のグループ)、負例(干渉有りの黒丸のグループ)のそれぞれのグループの端っこのデータが存在すると仮定する。この端っこのデータをサポートベクターと言う。
【0165】
サポートベクターを通る2本の線をax+by+c=1、ax+by+c=-1とする。2本の線は、平行であるので、係数が同じである。
【0166】
そして、ax+by+c≦1で示される領域が正例(干渉無しの白丸のグループ)のデータが存在する範囲であり、ax+by+c≧-1で示される領域が負例(干渉有りの黒丸のグループ)のデータが存在する範囲である(
図18参照)。
【0167】
ここで、識別線を引くために必要な条件となる2つの不等式が得られたが、これらを一つに纏める。即ち、正例の場合は、不等式に”1”を掛けて、ax+by+c≦1となり、負例の場合は不等式に”-1”を掛けて、-1(ax+by+c)≧-1になる。
【0168】
そして、正例か負例かを表す変数t(t=1またはt=-1)を用いると、t(ax+by+c)≦1となる。
【0169】
正例および負例のそれぞれのサポートベクターから識別線に下ろした垂線の距離L1は、次式によって表される。
【0170】
【0171】
その結果、教師データの全てについて、t(ax+by+c)≦1の条件を満たしながら、L
1の分母が最小になるa,b,cを求めることにより、最大マージンに基づく識別線の位置を決定できる(
図19参照)。この最大マージンに基づく識別線の位置を決定することは、正例(干渉無しの白丸のグループ)と負例(干渉有りの黒丸のグループ)との両方から等距離の位置を決定することに相当する。
【0172】
更新教師データがi(i=1,2,3,4,・・・)個である場合、t1(ax1+by1+c)≦1、t2(ax2+by2+c)≦1、・・・、ti(axi+byi+c)≦1のi個の不等式を用いてa2+b2の最小値を与えるa,b,cを求めることになる。
【0173】
最大マージンに基づく識別線を決定するパラメータを求める問題は、変数をx,yの2つとし、更新教師データをN個とすると、ti(axi+byi+c)≦1(i=1~N)の制約条件の下で、a2+b2を最小化するa,b,cを求める制約付最小化問題になる。
【0174】
このような制約付最小化問題を解くのに便利な方法としてラグランジュの未定乗数(係数)法がある。最小化するa2+b2をf(a,b)=a2+b2とし、制約条件ti(axi+byi+c)≦1をg(x,y)=ti(axi+byi+c)-1≦0とすると、ラグランジュの未定乗数法を適用して、以下の式(10)を式(11)に変換できる。
【0175】
【0176】
【0177】
式(10),(11)において、s.t.は、「s.t.の右側に記載された条件に従うこと」を意味する(以下、同じ)。
【0178】
式(10)は、g1(a,b,c)≦0,g2(a,b,c)≦0,・・・,gn(a,b,c)≦0に従ってf(a,b)を最小にするa,bを求めることを意味するので、主問題である。
【0179】
そして、式(11)中の式(11a),(11b)は、ラグランジュの未定乗数法を適用した結果である。式(11b)は、L(a,b,c,μ1,・・・,μn)を最小化するa,b,cを表す。φは、fと同様に、1つの関数を示す記号である。
【0180】
式(11c),(11d)は、双対問題を示すものであり、φ(μ1,・・・,μn)を最大にするμ1,・・・,μnを求めれば、主問題の最小値を与えるa,b,cも求まることが保証されている。
【0181】
以下においては、説明を簡単にするために教師データの個数を2個として主問題を作成し、ラグランジュの未定乗数法を適用して関数Lを作成する。但し、a2+b2は、計算の便宜上、1/2を掛けることにする。
【0182】
ti(axi+byi+c)≦1を変形してti(axi+byi+c)-1≦0とする。その結果、次式が得られる。
【0183】
【0184】
最大化すべき双対問題の関数を作るために、Lをa,b,cについて最小化する。従って、Lをa,b,cについて偏微分し、その結果を0と置く。そうすると、次式が得られる。
【0185】
【0186】
そして、式(13)の上側の2つの式から次式が得られる。
【0187】
【0188】
式(13),(14)において、tiは、i番目の更新教師データの正負であり、xi,yiは、i番目の教師データのx座標およびy座標であるので、ti,xi,yiは、既知である。
【0189】
従って、双対問題の関数を最大にするμiが分かれば、式(14)からa,bを求めることができる。
【0190】
そこで、双対問題を作成するために、偏微分で得られた条件(式(13))を全てLに代入すると、次式が得られる。
【0191】
【0192】
その結果、双対問題は、次式にようになる。
【0193】
【0194】
双対問題の関数φ(μ1,μ2)の最大化は、凸2次計画問題の解法である内点法(非特許文献5)等で求めることができる。解を求めるスピードを重視する場合、制約条件を考慮しながら、タブー探索法(非特許文献6)等の進化型計算を用いてもよい。
【0195】
内点法は、最適化問題の制約領域の内部に最適解に収束する点列を生成する逐次反復解法である。
【0196】
タブー探索法は、現在得られている解の近傍に、ある解を探索する局所探索法の一種であり、最近に探索した解をタブーとしてしばらく探索しないようにして局所解への収束を防ぎ、解空間の広域探索を行って最適解を求めるものである。
【0197】
従って、式(16)の制約条件(s.t.の右側に記載された式)の領域内で式(16)の関数φ(μ1,μ2)を大きくする点を逐次生成し、関数φ(μ1,μ2)を最大化する最適解(μ1,μ2)を求める。
【0198】
また、解を求めるスピードを重視する場合、式(16)の制約条件を考慮して局所解への収束を防ぎながら、広域探索を行って関数φ(μ1,μ2)を最大化する最適解(μ1,μ2)を求める。
【0199】
μ1,μ2を求めることができれば、既知であるt1,t2,x1,x2,y1,y2を用いて式(14)より、a,bを求めることができる。
【0200】
そして、cは、あるサポートベクターのx座標をxSとし、y座標をySとすると、axS+byS+c=1(又はaxS+byS+c=-1)から求められる。
【0201】
その結果、クラスCL1,CL2を最大マージンで識別するための決定境界BDが決定される。
【0202】
上記においては、教師データがx,yで表される2次元の場合について説明したが、教師データがn次元からなる場合、x軸をx1、y軸をx2、z軸をx3、・・・、n次元目の軸をxnで表現する。
【0203】
また、a,b等の係数も、n次元に対応してw1,w2,・・・,wnで表す。
【0204】
(x1,x2,・・・,xn),(w1,w2,・・・,wn)は、ベクトルであるので、X=(x1,x2,・・・,xn)、W=(w1,w2,・・・,wn)と表記する。
【0205】
また、a2+b2は、w1
2+w2
2+・・・+wn
2となる。そして、w1
2+w2
2+・・・+wn
2の平方根を(ユークリッド)ノルムと言う。
【0206】
xi,xj等の同じ次元同士を掛けて加算しているところは、ベクトルの内積でXTXで表される。XTは、Xの転置行列を意味する。
【0207】
更に、教師データの個数がn個である場合、“2”と表記したところは、“n”になる。
【0208】
従って、教師データがn次元からなる場合、以下の式(17)~式(24)を用いて、最大マージンを有する識別線(=決定境界BD)が決定される。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
機械学習部102の決定装置1025は、上述した方法によって、決定境界BDを決定し、その決定した決定境界をパラメータ決定部103へ出力する。
【0218】
図20は、決定境界BDを用いて通信パラメータセットの決定方法を説明するための図である。
【0219】
n個のパラメータに対し、干渉発生位置など変更不可のm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定とした(n-m)次元超平面を設定する。このとき、(n-m)次元超平面上のある点が、パラメータセットを表す。これをパラメータ設定面と呼ぶ。
【0220】
パラメータ設定範囲を与える閾値として干渉許容閾値と(n-1)次元の超平面(最低通信条件面)を設定する。具体的な決定方法は、以下のとおりである。
【0221】
[最低通信条件面]
2次利用者の受信局における所望の信号対雑音比を満たす最小値のパラメータセットをなめらかに接続したものを最低通信条件面とする。この最低通信条件面よりも決定境界側のパラメータセットであれば、2次利用者が1次利用者に干渉を与えないで通信可能であることが保証される。
【0222】
[干渉許容閾値]
干渉許容閾値は、許容される干渉を示す。観測点(更新教師データに含まれる点)と決定境界BDとの距離の最小値に対し、決定境界BDからの距離が最小値のk(kは、0<k<1を満たす実数)倍となる値を干渉許容閾値とする。kは、例えば、0.5である。
【0223】
そして、パラメータ設定面上において、ある利得関数を最大化あるいは最小化する点を探索する。このとき、制約条件として、以下の制約条件を設定する。
【0224】
(1)利得関数を最大化あるいは最小化する点は、決定境界BDに対し干渉無し側に存在し、かつ、最低通信条件面よりも決定境界BD側に存在する。
【0225】
(2)さらに、利得関数を最大化あるいは最小化する点と決定境界BDとの距離L1が干渉許容閾値以上を満たす範囲にある。
【0226】
利得関数としては、例えば、次のものが想定される。
【0227】
(i)2次利用者の端末のチャネル容量
チャネル量Cは、C=Blog(1+SINR)によって決定される。Bは、帯域幅であり、使用する周波数帯域幅に依存する。SINRは、信号対雑音比であり、送信電力および周波数帯域等によって決定される。
【0228】
(ii)2次利用者の端末の通信可能距離
使用する周波数帯および送信電力等に依存して決定される。
【0229】
(iii)ビットエラー率
送信電力、変調方式および周波数帯域幅等に依存して決まる。
【0230】
図20を参照して、通信パラメータセットの決定方法を具体的に説明する。
図20においては、変更不可であるパラメータとして、干渉源からの距離が用いられている。この干渉源からの距離は、更新教師データに含まれる被干渉端末位置と、干渉を与えた2次利用者の端末の位置との間の距離として求められる。
【0231】
そして、その求めた干渉源からの距離を固定してパラメータ設定面を2次元空間に設定する。その後、上述した最低通信条件面および干渉許容閾値を2次元空間に設定する。
【0232】
なお、
図20においては、更新教師データは、2次元からなるので、パラメータ設定面、最低通信条件面および干渉許容閾値は、直線からなる。
【0233】
そうすると、パラメータ設定面(直線)上において、利得関数が最大または最小になる点を探索し、その探索した点の中から、上述した制約条件(1),(2)を満たす点を候補点として抽出する。
【0234】
この候補点が複数存在する場合、その複数の候補点の任意の点を通信パラメータセットとして決定する。
【0235】
一方、候補点が1個である場合、その1個の候補点を通信パラメータセットとして決定する。
【0236】
パラメータ決定部103は、上述した方法によって、決定境界BDを用いて、2次利用者の端末が1次利用者の端末に干渉を与えないで無線通信を行うための通信パラメータセットを決定する。
【0237】
そして、パラメータ決定部103は、その決定した通信パラメータセットをパラメータ通知部104へ出力する。
【0238】
なお、変更可能なパラメータとしては、例えば、2次利用者における基地局あるいは端末の送信電力、送信端末位置、搬送波周波数、帯域幅、変調方式、多元接続方式およびアンテナセクタ等である。
【0239】
また、変更不可能なパラメータとしては、例えば、1次利用者の端末の位置、1次利用者の端末との距離、1次利用者における変調方式および1次利用者の多元接続方式等である。
【0240】
教師データが3次元以上からなる場合、決定境界BD、最低通信条件面および干渉許容閾値は、平面からなる。
【0241】
従って、請求項に記載された最低通信条件は、(n-1)次元の線または面からなる。
【0242】
図21は、1次利用者の端末2,3および管理装置10の動作を説明するためのフローチャートである。
【0243】
図21を参照して、1次利用者の端末(端末2,3の少なくとも1つ)は、干渉を検知し(ステップS1)、干渉通知を無線局1へ送信する。そして、無線局1は、端末(端末2,3の少なくとも1つ)から受信した干渉通知を管理装置10へ送信する(ステップS2)。
【0244】
一方、管理装置10の情報管理部101は、干渉が無い場合、無線局11と端末12,13との無線通信が発生し(ステップS3)、2次利用者の端末12,13との通信履歴を保存する(ステップS4)。
【0245】
そして、情報管理部101は、無線局1から干渉通知を受信し(ステップS5)、干渉情報および通信履歴を抽出して管理テーブルTable-CTLを作成する(ステップS6)。そうすると、情報管理部101は、管理テーブルTable-CTLを機械学習部102へ出力する。
【0246】
機械学習部102の生成装置1021は、管理テーブルTable-CTLを情報管理部101から受け、その受けた管理テーブルTable-CTLに含まれる干渉情報を通信履歴と時刻で照合し、上述した方法によって教師データを作成する(ステップS7)。
【0247】
その後、機械学習部102の生成装置1021は、作成した教師データを擬似データ生成装置1022および過剰データ削除装置1023へ出力する。
【0248】
過剰データ削除装置1023は、教師データを生成装置1021から受け、その受けた教師データに含まれる干渉データに基づいて、上述した方法によって過剰データ(一部の非干渉データ)を削除する(ステップS8)。そして、過剰データ削除装置1023は、過剰データを削除した教師データを更新装置1024へ出力する。
【0249】
また、擬似データ生成装置1022は、教師データを生成装置1021から受け、その受けた教師データに含まれる干渉データの位置および干渉電力に基づいて、上述した方法によって擬似干渉データを生成する(ステップS9)。そして、擬似データ生成装置1022は、生成した擬似干渉データを更新装置1024へ出力する。
【0250】
更新装置1024は、擬似干渉データを擬似データ生成装置1022から受け、過剰データを削除した教師データを過剰データ削除装置1023から受ける。そして、更新装置1024は、過剰データを削除した教師データに擬似干渉データを追加して教師データを更新し、更新教師データを生成する(ステップS10)。そうすると、更新装置1024は、更新教師データを決定装置1025へ出力する。
【0251】
その後、機械学習部102の決定装置1025は、更新教師データを機械学習器に入力し、上述した方法によって、SVMを用いて決定境界BDを決定または更新する(ステップS11)。
【0252】
そうすると、機械学習部102は、その決定した決定境界BDをパラメータ決定部103へ出力する。
【0253】
パラメータ決定部103は、決定境界BDを受けると、その受けた決定境界BDを用いて、上述した方法によって、1次利用者の端末に干渉を与えないための通信パラメータセットを決定し(ステップS12)、その決定した通信パラメータセットをパラメータ通知部104へ出力する。
【0254】
そして、パラメータ通知部104は、通信パラメータセットを2次利用者の端末12,13へ送信する(ステップS13)。
【0255】
端末12,13は、通信パラメータセットを受信し、その受信した通信パラメータセットを用いて無線通信に用いるパラメータを更新する(ステップS14)。
【0256】
これによって、一連の動作が終了する。
【0257】
なお、ステップS11において、決定境界BDを決定または更新する、としているのは、
図21に示すフローチャートは、1次利用者の端末2,3が干渉を検知する毎に実行されるので、フローチャートが2回目以降に実行される場合、更新教師データも更新されており、その更新された更新教師データを用いて、既に決定された決定境界BDを更新することになるからである。
【0258】
また、
図21に示すフローチャートにおいては、擬似干渉データを生成するとともに過剰データを削除し、過剰データを削除した教師データに擬似干渉データを追加して教師データTCHR_Dを更新教師データTCHR_D_UPに更新すると説明したが(ステップS8~ステップS10参照)、この発明の実施の形態においては、これに限らず、教師データから過剰データ(一部の非干渉データ)を削除し、過剰データ(一部の非干渉データ)を削除した教師データの位置および干渉電力に基づいて擬似干渉データを生成し、その生成した擬似干渉データを教師データに追加することにより、更新教師データTCHR_D_UPを生成するようにしてもよい。
【0259】
図22は、
図21のステップS9の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0260】
図22を参照して、
図21のステップS7の後、擬似データ生成装置1022は、生成装置1021から教師データを受け、その受けた教師データから干渉データを検出する(ステップS91)。
【0261】
そして、擬似データ生成装置1022は、干渉データの個数N_IFを検出する(ステップS92)。
【0262】
また、擬似データ生成装置1022は、干渉推定装置20から干渉推定マップMAP2を受ける(ステップS93)。
【0263】
その後、擬似データ生成装置1022は、i=0を設定する(ステップS94)。そして、擬似データ生成装置1022は、干渉データから被干渉端末位置(1次利用者の位置)およびi番目の2次利用者の送信電力を検出する(ステップS95)。
【0264】
引き続いて、擬似データ生成装置1022は、干渉推定マップMAP2からi番目の2次利用者の位置および干渉電力を検出する(ステップS96)。
【0265】
そうすると、擬似データ生成装置1022は、被干渉端末位置、i番目の2次利用者の送信電力、i番目の2次利用者の位置、シャドウフェージングの標準偏差σS、シャドウフェージングの相関距離dcorr、しきい値Pthおよびαに基づいて、式(7),(8)によってΔliを決定する(ステップS97)。この場合、式(7)の距離減衰PL(li+Δl)は、被干渉端末位置およびi番目の2次利用者の位置に基づいて算出される。また、αは、干渉推定マップMAP2の値にα0を乗算して決定される。なお、α0は、既知である。
【0266】
擬似データ生成装置1022は、Δliを決定すると、i番目の2次利用者の位置を中心とし、Δliを半径とする円の領域を干渉データ生成領域REG_IF_iとして決定する(ステップS98)。
【0267】
そして、擬似データ生成装置1022は、擬似干渉データを干渉データ生成領域REG_IF_i内にランダムに生成する(ステップS99)。
【0268】
その後、擬似データ生成装置1022は、i=N_IFであるか否かを判定する(ステップS100)。
【0269】
ステップS100において、i=N_IFでないと判定されたとき、擬似データ生成装置1022は、i=i+1を設定する(ステップS101)。その後、一連の動作は、ステップS95へ移行し、ステップS100において、i=N_IFであると判定されるまで、ステップS95~ステップS101が繰り返し実行される。
【0270】
そして、ステップS100において、i=N_IFであると判定されると、一連の動作は、
図21のステップS10へ移行する。
【0271】
上述したように、Δliは、干渉電力が大きくなると大きくなり、干渉電力が小さくなると小さくなる。そして、干渉電力は、実際の電波の伝搬特性に基づいて決定される。
【0272】
従って、実際の電波の伝搬特性に適して干渉データ生成領域REG_IF_iを決定できる。
【0273】
また、擬似干渉データは、干渉データ生成領域REG_IF_i内に配置されるので、実際の電波の伝搬特性に適して、1次利用者に干渉を与える2次利用者の配置領域に擬似干渉データをおよび干渉データを配置できる。その結果、実際の電波の伝搬特性に適して、干渉データと非干渉データの偏りを低減できる。
【0274】
図23は、
図21のステップS11の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0275】
図23を参照して、機械学習部102の更新装置1024は、
図21のステップS10の後、式(17)に示す目的関数および制約条件を決定する(ステップS111)。
【0276】
そして、更新装置1024は、式(18)に示すように、ラグランジュの未定乗数法を目的関数および制約条件に適用して主問題を双対問題に変換する(ステップS112)。
【0277】
その後、更新装置1024は、式(19)~(23)を用いて双対問題を解き、双対問題の関数を最大化するμiを求める(ステップS113)。
【0278】
引き続いて、更新装置1024は、更新教師データとμiとを用いて主問題の最小値を与えるw1,w2,・・・,wnを求める(ステップS114)。より具体的には、更新装置1024は、更新教師データによって示される既知のti,xi1~xinと、求めたμiとを式(14)に代入してw1,w2,・・・,wnを求める。
【0279】
ステップS114の後、更新装置1024は、ある1つのサポートベクターのx1座標、x2座標、・・・、xn座標をそれぞれx1S,x2S,・・・,xnSとすると、w1x1S+w2x2S+・・・+wnxnS+c=1(またはw1x1S+w2x2S+・・・+wnxnS+c=-1)から切片cを求める。そして、更新装置1024は、その求めたw1,w2,・・・,wnとcとをw1x1+w2x2+・・・+wnxn+c=0に代入して正例および負例の両方と最大のマージン(距離L1)を有する平面(または線)を求め、その求めた平面(または線)を決定境界として決定する(ステップS115)。
【0280】
その後、一連の動作は、
図21のステップS12へ移行する。
【0281】
上述したように、管理装置10は、実際の電波の伝搬特性に適して干渉データと非干渉データとの偏りを低減した更新教師データ(2次利用者のデータ送信における通信パラメータの履歴情報、およびデータ送信における1次利用者の干渉の有無を判定した履歴情報)を用いて、1次利用者の端末に干渉を与えない通信パラメータセットを決定するので(S6~S12参照)、2次利用者の通信パラメータの履歴情報および干渉の有無の履歴情報のみから1次利用者の端末に干渉を与えない通信パラメータセットをリアルタイムに精度良く決定できる。
【0282】
また、管理装置10は、干渉の有無と、被干渉端末位置と、干渉を検知したときの時刻とを含む干渉通知のみを1次利用者から受信して1次利用者の端末に干渉を与えない通信パラメータセットを決定するので、1次利用者の無線通信の設定が不明であっても、適切な通信パラメータセットを設定できる。
【0283】
更に、
図21から
図23に示すフローチャートは、1次利用者の端末において干渉が検知される毎に実行されるので、干渉状況のリアルタイムの変化に対応して1次利用者の端末に干渉を与えない通信パラメータセットを設定できる。
【0284】
更に、更新教師データを用いた決定境界の十分な学習ができていれば、少ない計算量で通信パラメータセットを決定できる。
【0285】
更に、干渉を与えた時のリスクは、1次利用者によって異なるが、学習された決定境界は、一意に決定されるため、1次利用者が変更しても、適切な通信パラメータを設定できる。つまり、上述した通信パラメータセットの決定方法は、1次利用者の変更に対してロバスト性を有することができる。
【0286】
特開2013-211609号公報(特許文献1)は、サポートベクターマシン(SVM)を用いて無線通信装置の周辺状況に応じて適切な通信パラメータを選択する技術を開示する。
【0287】
この技術は、状況と、パラメータと、性能(通信性能)とを対応付けて履歴データベースに格納しておき、その履歴データベースを参照して現在の周辺状況において良好な通信性能が得られる通信パラメータを選択するものである。
【0288】
そして、周辺状況(コンテキスト)は、サポートベクターマシン(SVM)を用いて決定される。
【0289】
このように、特許文献1では、周辺状況(コンテキスト)を決定するためにサポートベクターマシン(SVM)が用いられる。つまり、特許文献1では、周辺状況(コンテキスト)を分類するためにサポートベクターマシン(SVM)が用いられる。
【0290】
一方、この発明の実施の形態においては、干渉が発生する通信パラメータと干渉が発生しない通信パラメータとを分類するためにサポートベクターマシン(SVM)が用いられる。
【0291】
従って、この発明の実施の形態と特許文献1とでは、サポートベクターマシン(SVM)を用いて分類する対象が全く異なり、特許文献1には、サポートベクターマシン(SVM)を用いて通信パラメータを分類する示唆が無い。
【0292】
また、特許文献1では、相互に無線通信を行う無線通信装置間の通信パラメータを選択するが、この発明の実施の形態では、2次利用者が、無線通信の相手先ではない1次利用者に干渉を与えない通信パラメータを決定するものである。
【0293】
従って、上述した通信パラメータの決定は、特許文献1における通信パラメータの選択と全く異なるものである。
【0294】
この発明の実施の形態においては、情報管理部101、機械学習部102、パラメータ決定部103およびパラメータ通知部104の機能をプログラムPROG_Aによって実現してもよい。
【0295】
この場合、プログラムPROG_Aは、上述したステップS3~ステップS13(
図22および
図23に示すフローチャートを含む)を備える。
【0296】
そして、管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。ROMは、プログラムPROG_Aを記憶する。
【0297】
通信パラメータセットを決定する場合、CPUは、プログラムPROG_AをROMからみ出して実行する。そして、CPUは、2次利用者の通信パラメータの履歴情報をRAMに記憶するとともに、通信パラメータセットを決定する際の各種の計算結果をRAMに記憶する。
【0298】
従って、プログラムPROG_Aは、無線通信を行うために通信パラメータセットの決定をコンピュータ(CPU)に実行させるためのプログラムである。
【0299】
また、この発明の実施の形態においては、プログラムPROG_Aは、CD,DVD等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。ユーザは、プログラムPROGを記録した記録媒体をコンピュータに設定し、コンピュータ(CPU)は、記録媒体からプログラムPROG_Aを読み出して実行する。
【0300】
従って、プログラムPROG_Aを記録した記録媒体は、コンピュータ(CPU)が読み取り可能な記録媒体である。
【0301】
シミュレーションによる評価について説明する。評価指標として、干渉発生回数および排他領域の面積を用いた。
【0302】
シミュレーションに用いたパラメータを表1に示す。
【0303】
【0304】
そして、比較評価として、パラメータαがα=α0・(干渉推定マップの値)である場合と、α=一定値である場合とを比較した。
【0305】
干渉が発生するごとに排他領域を更新するシミュレーションを、干渉が発生しない確率が99.95%以上になるまで繰り返し行った。
【0306】
図24は、排他領域の面積の増加分と非干渉発生確率との関係を示す図である。
図24において、縦軸は、排他領域の面積の増加分を表し、横軸は、非干渉発生確率を表す。また、曲線k1は、α=α
0・(干渉推定マップの値)である場合における排他領域の面積の増加分と非干渉発生確率との関係を示し、曲線k2は、α=一定値である場合における排他領域の面積の増加分と非干渉発生確率との関係を示す。
【0307】
図24を参照して、排他領域の面積の増加分は、α=α
0・(干渉推定マップの値)である場合、非干渉発生確率が99.95%以上の領域において、13%以上減少することが分かった(曲線k1,k2参照)。
【0308】
これは、この発明の実施の形態による方法によって干渉データ発生領域を決定し、その決定した干渉データ発生領域に擬似干渉データを追加することによって、干渉データ(擬似干渉データを含む)と非干渉データとの偏りが実際の電波の伝搬特性に適して減少し、決定境界BDをより正確に決定できた結果、排他領域をより正確に決定できたために排他領域の面積の増加分が減少したものと考えられる。
【0309】
従って、この発明の実施の形態による方法によって擬似干渉データを追加することにより、2次利用者が干渉を回避して無線通信を行うための通信パラメータを精度良く決定できることが分かった。
【0310】
上記においては、干渉推定マップMAP2に記載された干渉電力に基づいて干渉データ生成領域REG_IFを決定すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、干渉推定マップMAP2に記載された非干渉電力の電力値に基づいて非干渉データ削除領域を決定してもよい。
【0311】
この場合、過剰データ削除装置1023は、干渉推定マップMAP2を干渉推定装置20から受ける。そして、過剰データ削除装置1023は、非干渉電力の電力値が大きいほど、非干渉データ削除領域を大きくし、非干渉電力の電力値が小さいほど、非干渉データ削除領域を小さくする。非干渉電力の電力値が大きいことは、干渉電力か非干渉電力かを決定するためのしきい値Pthに非干渉電力の電力値が近づくことになるので、本来であれば、非干渉データが配置されるべきではない。従って、非干渉データ削除領域を大きくして、より多くの非干渉データを削除することにしたものである。
【0312】
また、この発明の実施の形態においては、干渉推定装置20は、天気予報を更に用いて干渉推定マップMAP1,MAP2を作成してもよい。電波の伝搬特性は、天気によって影響を受け、一般に、雨天では、電波の伝搬特性が低下するからである。これによって、より実際の電波の伝搬特性を用いて干渉電力を推定できる。
【0313】
更に、この発明の実施の形態においては、管理装置10は、干渉推定装置20を備えていてもよい。
【0314】
更に、上記においては、機械学習部102は、サポートベクターマシン(SVM)を用いて決定境界BDを決定すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、機械学習部102は、ロジスティック回帰(非特許文献7)またはAROW(Adaptive Regularization of Weight Vectors)(非特許文献8)を用いて決定境界BDを決定してもよく、一般的には、更新教師データTCHR_D_UPを入力として決定境界BDを決定する機械学習器であれば、どのような機械学習器を用いて決定境界BDを決定してもよい。
【0315】
更に、上記においては、1次利用者の端末2,3に干渉を与えない送信電力を決定すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、1次利用者の端末2,3に干渉を与えない周波数を決定してもよく、一般的には、1次利用者の端末2,3に干渉を与えない通信パラメータセットであれば、どのような通信パラメータセットを決定してもよい。
【0316】
更に、上記においては、変更不可であるパラメータが”送信電力”であると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、”送信電力”以外のパラメータを変更不可であるパラメータとしてもよい。
【0317】
更に、上記においては、管理装置10は、無線局11に設置されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、管理装置10は、無線局11と異なる位置に配置されていてもよい。この場合、管理装置10は、無線局11から干渉通知を受信してもよく、無線局1から干渉通知を受信してもよく、端末2,3から干渉通知を直接受信してもよい。
【0318】
更に、上記においては、管理装置10は、無線局1から干渉通知を受信すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、管理装置10は、端末2,3から干渉通知を直接受信してもよい。
【0319】
更に、上記においては、1次利用者の端末2,3に干渉を与えない通信パラメータセットを決定する際、最低通信条件面および干渉許容閾値を設定し、パラメータ設定面上において、最低通信条件面よりも決定境界BD側であり、かつ、決定境界BDからの距離が干渉許容閾値と決定境界BDとの距離よりも大きい点を通信パラメータセットの候補点として選択すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、最低通信条件面および干渉許容閾値を設定せずに、パラメータ設定面上において、決定境界BDよりも干渉無しのクラスCL1に属する点を通信パラメータセットの候補点として選択してもよい。
【0320】
2次利用者の端末12,13が、このようにして決定された通信パラメータセットを用いて無線通信を行っても、1次利用者の端末2,3に干渉を与えないので、初期の目的を達成できるからである。
【0321】
更に、上記においては、教師データに含まれる干渉データの周辺に擬似干渉データを生成することと、干渉データを中心とした基準円CRCの外の非干渉データを削除することとの両方を適用して教師データを更新し、更新教師データTCHR_D_UPを生成すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、教師データに含まれる干渉データの周辺に擬似干渉データを生成することのみを適用して教師データを更新し、更新教師データTCHR_D_UPを生成してもよく、干渉データを中心とした基準円CRCの外の非干渉データを削除することのみを適用して教師データを更新し、更新教師データTCHR_D_UPを生成してもよく、一般的には、教師データに含まれる干渉データの周辺に擬似干渉データを生成することと、干渉データを中心とした基準円CRCの外の非干渉データを削除することとの少なくとも一方を適用して教師データを更新し、更新教師データTCHR_D_UPを生成すればよい。
【0322】
教師データに含まれる干渉データの周辺に擬似干渉データを生成することと、干渉データを中心とした基準円CRCの外の非干渉データを削除することとの少なくとも一方を適用しても、干渉データの個数と非干渉データの個数との偏りを低減できるからである。
【0323】
更に、上記においては、非干渉データの個数が干渉データの個数よりも多い無線通信環境において、干渉データの個数を増やし、非干渉データの個数を減少させて更新教師データTCHR_D_UPを生成すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、干渉データの個数が非干渉データの個数よりも多い無線通信環境において、非干渉データからなる擬似データを生成することにより非干渉データの個数を増やすことと、非干渉データを中心とした基準円の外の干渉データを削除することにより干渉データの個数を減少させることとの少なくとも一方を適用して教師データを更新し、更新教師データTCHR_D_UPを生成してもよい。
【0324】
つまり、この発明の実施の形態においては、干渉データの個数と、非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データTCHR_D_UPを生成すればよい。
【0325】
更に、上記においては、1次利用者は、免許された無線通信システムであると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、1次利用者は、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムであればよい。
【0326】
なお、この発明の実施の形態においては、干渉通知を受信する情報管理部101は、「受信手段」を構成する。
【0327】
また、この発明の実施の形態においては、上述した方法によって教師データを作成する生成装置1021は、「生成手段」を構成する。
【0328】
更に、この発明の実施の形態においては、上述した方法によって、干渉が有ることを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、教師データを更新した更新教師データを生成する擬似データ生成装置1022、過剰データ削除装置1023および更新装置1024は、「更新手段」を構成する。
【0329】
更に、この発明の実施の形態においては、上述した方法によって決定境界BDを決定する決定装置1025は、「機械学習手段」を構成する。
【0330】
更に、この発明の実施の形態においては、上述した方法によって1次利用者に干渉を与えない通信パラメータセットを決定するパラメータ決定部103は、「パラメータ決定手段」を構成する。
【0331】
更に、この発明の実施の形態においては、パラメータ通知部104は、「送信手段」を構成する。
【0332】
上述した実施の形態によれば、この発明の実施の形態による管理装置は、次の構成を備えていればよい。
【0333】
(構成1)
この発明の実施の形態による管理装置は、受信手段と、生成手段と、更新手段と、機械学習手段と、通信パラメータ決定手段と、送信手段とを備える。
【0334】
受信手段は、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する。
【0335】
生成手段は、1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する。
【0336】
更新手段は、干渉が有ることを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、教師データを更新した更新教師データを生成する。
【0337】
機械学習手段は、更新教師データに基づいて、通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する。
【0338】
通信パラメータ決定手段は、決定境界を用いて、1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する。
【0339】
送信手段は、決定された通信パラメータセットを2次利用者の端末群へ送信する。
【0340】
そして、更新手段は、1次利用者と2次利用者との間の実際の電波伝搬路に基づいて決定された干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0341】
(構成2)
構成1において、更新手段は、干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0342】
(構成3)
構成2において、更新手段は、2次利用者が1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0343】
(構成4)
構成3において、更新手段は、シャドウィングを考慮して前記干渉電力を決定する。
【0344】
(構成5)
構成1から構成4のいずれかにおいて、更新手段は、1次利用者と2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する非干渉データを削除して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0345】
(構成6)
構成1から構成5のいずれかにおいて、更新手段は、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0346】
(構成7)
構成1から構成6のいずれかにおいて、通信パラメータ決定手段は、n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した(n-m)次元超平面上の点と決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する。
【0347】
(構成8)
この発明の実施の形態によるプログラムは、
受信手段が、干渉を示すデータの割合が一定値となる無線通信システムである1次利用者から、干渉を受けた端末の位置である被干渉端末位置と干渉の有無とを含む干渉通知を受信する第1のステップと、
生成手段が、1次利用者の周波数帯を用いて無線通信を行う無線通信システムである2次利用者の通信履歴と干渉通知の履歴とに基づいて干渉の有無を示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとを相互に対応付けた教師データを生成する第2のステップと、
更新手段が、干渉が有ることを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた干渉データの個数と、干渉が無いことを示すラベルと被干渉端末位置と通信パラメータとが相互に対応付けられた非干渉データの個数との偏りを低減する偏り低減処理を教師データに適用し、教師データを更新した更新教師データを生成する第3のステップと、
機械学習手段が、更新教師データに基づいて、通信パラメータを含むn(nは2以上の整数)個のパラメータからなるn次元空間において通信パラメータを干渉が無い第1のクラスと干渉が有る第2のクラスとに分類するための境界であり、かつ、第1および第2のクラスから等距離に存在する境界である決定境界を機械学習によって決定する第4のステップと、
通信パラメータ決定手段が、決定境界を用いて、1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットおよび1次利用者において干渉が発生する通信パラメータセットの少なくとも1つを決定する第5のステップと、
送信手段が、決定された通信パラメータセットを2次利用者の端末群へ送信する第6のステップとをコンピュータに実行させ、
更新手段は、第3のステップにおいて、1次利用者と2次利用者との間の実際の電波伝搬路に基づいて決定された干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0348】
(構成9)
構成8において、更新手段は、第3のステップにおいて、干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成す。
【0349】
(構成10)
構成9において、更新手段は、第3のステップにおいて、2次利用者が1次利用者へ与える干渉の干渉電力に比例するように干渉データ生成領域の広さを決定し、その決定した干渉データ生成領域の広さに比例した個数の擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0350】
(構成11)
構成10において、更新手段は、第3のステップにおいて、シャドウィングを考慮して干渉電力を決定する。
【0351】
(構成12)
構成8から構成11のいずれかにおいて、更新手段は、第3のステップにおいて、1次利用者と2次利用者との間の実際の伝搬路に基づいて決定された非干渉データ削除領域内に存在する非干渉データを削除して偏り低減処理を教師データに適用し、更新教師データを生成する。
【0352】
(構成13)
構成8から構成12のいずれかにおいて、更新手段は、第3のステップにおいて、地上の起伏および建物を含む3次元地図データと電波のシャドウィングを考慮した電波の伝搬シミュレーションとを用いて算出された干渉電力に基づいて干渉データ生成領域を決定し、その決定した干渉データ生成領域に擬似干渉データを追加して更新教師データを生成する。
【0353】
(構成14)
構成8から構成13のいずれかにおいて、通信パラメータ決定手段は、第5のステップにおいて、n個のパラメータのうちの変更できないm(mは1≦m<nを満たす整数)個のパラメータを固定した(n-m)次元超平面を設定し、その設定した(n-m)次元超平面上の点と決定境界との距離を指標として利得関数を最大または最小にする(n-m)次元超平面上の点を探索し、その探索した(n-m)次元超平面上の点から制約条件を用いて1次利用者において干渉が発生しない通信パラメータセットを決定する。
【0354】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0355】
この発明は、管理装置、コンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に適用される。
【符号の説明】
【0356】
1,11 無線局、2,3,12,13 端末、10 管理装置、101 情報管理部、102 機械学習部、103 パラメータ決定部、104 パラメータ通知部、1021 生成装置、1022 擬似データ生成装置、1023 過剰データ削除装置、1024 更新装置。