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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/0215 20130101AFI20230502BHJP
   B62H 5/04 20060101ALI20230502BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20230502BHJP
【FI】
B60R25/0215
B62H5/04
E05B83/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019037258
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020138678
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 充浩
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068743(JP,A)
【文献】特開2009-262605(JP,A)
【文献】特開平03-090488(JP,A)
【文献】特開2015-161385(JP,A)
【文献】特開平07-001219(JP,A)
【文献】特開2008-290572(JP,A)
【文献】特開2018-001895(JP,A)
【文献】特開平06-247260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/0215
B62H 5/04
E05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に駆動可能なモータと、
前記モータの駆動により、車両のステアリングに係止してステアリングロックするロック位置と、当該ステアリングに対する係止が解除された非ロック位置との間で移動可能なロックバーと、
前記モータ及びロックバーが取り付けられるケース部材と、
前記モータの出力軸に取り付けられた出力ギアと、
前記出力ギアと噛み合って取り付けられたウォームギアから成り、前記モータの駆動力により回転可能な伝達ギアと、
前記伝達ギアの回転に応じて回転するカム部材と、
前記伝達ギア及びカム部材を一体的に回転させる軸部と、
を具備したステアリングロック装置において、
前記ケース部材は、前記ロックバーが前記ロック位置と非ロック位置との間で移動可能な状態で収容された第1ケース部材と、前記モータの駆動を制御する制御手段が収容された第2ケース部材とを有するとともに、前記第1ケース部材及び第2ケース部材が上下に配設されて構成され、
前記モータは、前記第1ケース部材の下部に取り付けられて構成されることにより、第2ケース部材とモータとの間に前記第1ケース部材が配設された構造とされるとともに、前記第1ケース部材は、前記軸部の両端をそれぞれ支持する支持部が形成され、且つ、前記第1ケース部材及び第2ケース部材の間には、前記第1ケース部材の収容空間を覆うことにより前記第1ケース部材の収容空間と前記第2ケース部材の収容空間とを区分けするカバー部材が取り付けられたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記第1ケース部材は、前記カム部材の回転に応じて摺動し、前記ロックバーを前記ロック位置と非ロック位置との間で移動させるスライド部材を具備するとともに、前記スライド部材を摺動させる摺動面が形成されたことを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記伝達ギア及びカム部材は、前記軸部に一体形成されたことを特徴とする請求項2記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記伝達ギア、カム部材及び軸部は、樹脂成形品から成るとともに、前記軸部には、その軸方向に金属製の補強部材が形成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のステアリングロック装置。
【請求項5】
前記スライド部材は、磁石が取り付けられるとともに、前記磁石の磁気を検知する位置センサが取り付けられ、前記位置センサは、前記ロックバーが非ロック位置にある状態の前記スライド部材の位置と、前記ロックバーがロック位置にある状態のスライド部材の位置をそれぞれ検出可能とされたことを特徴とする請求項記載のステアリングロック装置。
【請求項6】
前記第2ケース部材には、前記制御手段が形成された基板が収容されるとともに、当該基板は、上下方向に亘って複数配設されたことを特徴とする請求項5記載のステアリングロック装置。
【請求項7】
前記位置センサは、前記基板に取り付けられたことを特徴とする請求項6記載のステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動によりステアリングロック及びその解除を行わせるためのステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアリングロック装置は、主にスマートエントリーシステムに対応して二輪車に配設されたもので、例えば特許文献1にて開示されているようなものが提案されている。かかる従来のステアリングロック装置によれば、ロックバーを駆動するためのモータを具備するとともに、電子キーとの無線通信によって、モータを任意に正回転させてロックバーを前進又は後退させ、ステアリングロック又は当該ステアリングロックを解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-081346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のステアリングロック装置においては、モータが装置のケース部材に対して幅方向に配設されているため、二輪車に取り付けた状態で横長の形状となってしまい、メカキーで操作可能な汎用のメインスイッチ装置に対して置き換えが難しいという不具合がある。すなわち、メカキーで操作可能な汎用のメインスイッチは、タンブラ、ロックバー及びイグニッションスイッチ等が縦方向(上下方向)に配設されているため、一般には縦長の形状とされる一方、従来のステアリングロック装置は横長の形状となるため、既存の車両の意匠をあまり変更することなく、縦長のメインスイッチから横長のステアリングロック装置に変更するのが難いといった不具合が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、全体形状を縦長の形状とすることができ、既存の車両に容易に適用することができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、任意に駆動可能なモータと、前記モータの駆動により、車両のステアリングに係止してステアリングロックするロック位置と、当該ステアリングに対する係止が解除された非ロック位置との間で移動可能なロックバーと、前記モータ及びロックバーが取り付けられるケース部材と、前記モータの出力軸に取り付けられた出力ギアと、前記出力ギアと噛み合って取り付けられたウォームギアから成り、前記モータの駆動力により回転可能な伝達ギアと、前記伝達ギアの回転に応じて回転するカム部材と、前記伝達ギア及びカム部材を一体的に回転させる軸部とを具備したステアリングロック装置において、前記ケース部材は、前記ロックバーが前記ロック位置と非ロック位置との間で移動可能な状態で収容された第1ケース部材と、前記モータの駆動を制御する制御手段が収容された第2ケース部材とを有するとともに、前記第1ケース部材及び第2ケース部材が上下に配設されて構成され、前記モータは、前記第1ケース部材の下部に取り付けられて構成されることにより、第2ケース部材とモータとの間に前記第1ケース部材が配設された構造とされるとともに、前記第1ケース部材は、前記軸部の両端をそれぞれ支持する支持部が形成され、且つ、前記第1ケース部材及び第2ケース部材の間には、前記第1ケース部材の収容空間を覆うことにより前記第1ケース部材の収容空間と前記第2ケース部材の収容空間とを区分けするカバー部材が取り付けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記第1ケース部材は、前記カム部材の回転に応じて摺動し、前記ロックバーを前記ロック位置と非ロック位置との間で移動させるスライド部材を具備するとともに、前記スライド部材を摺動させる摺動面が形成されたことを特徴とする
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置において、前記伝達ギア及びカム部材は、前記軸部に一体形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載のステアリングロック装置において、前記伝達ギア、カム部材及び軸部は、樹脂成形品から成るとともに、前記軸部には、その軸方向に金属製の補強部材が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項記載のステアリングロック装置において、前記スライド部材は、磁石が取り付けられるとともに、前記磁石の磁気を検知する位置センサが取り付けられ、前記位置センサは、前記ロックバーが非ロック位置にある状態の前記スライド部材の位置と、前記ロックバーがロック位置にある状態のスライド部材の位置をそれぞれ検出可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のステアリングロック装置において、前記制御手段は、所定の電気回路が形成された基板を有するとともに、当該基板は、前記第2ケース部材内で上下方向に亘って複数配設されたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のステアリングロック装置において、前記位置センサは、前記基板に取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、モータは、第1ケース部材の下部に取り付けられて構成されたので、モータをケース部材の幅方向に配設したものに比べ、全体形状を縦長の形状とすることができ、既存の車両に容易に適用することができる。
【0014】
また第1ケース部材は、軸部の両端をそれぞれ支持する支持部が形成されたので、ケース部材と他の部材とのそれぞれに支持部を形成し、それら他の部材とケース部材とに亘って軸部を取り付けるものに比べ、組み付け誤差を抑制することができ、モータの駆動力をロックバーに対して円滑に伝達させることができる。
さらに、ケース部材は、ロックバーがロック位置と非ロック位置との間で移動可能な状態で収容された第1ケース部材と、モータの駆動を制御する制御手段が収容された第2ケース部材とを有するとともに、第1ケース部材及び第2ケース部材が上下に配設されたので、第1ケース部材及び第2ケース部材を合わせた全体形状を縦長の形状とすることができる。
またさらに、第1ケース部材及び第2ケース部材の間には、第1ケース部材の収容空間を覆うことにより前記第1ケース部材の収容空間と前記第2ケース部材の収容空間とを区分けするカバー部材が取り付けられたので、第1ケース部材の収容空間と第2ケース部材の収容空間とを区分けすることにより、第1ケース部材内のモータ等の駆動に伴って生じる衝撃等を吸収して第2ケース部材内の制御手段に伝達してしまうのを抑制することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、伝達ギア及びカム部材は、軸部に一体形成されたので、部品点数を削減することができるとともに、伝達ギアとカム部材との間の相対的位置決め精度を向上させることができ、モータの駆動力をロックバーに対してより一層円滑に伝達させることができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、伝達ギア、カム部材及び軸部は、樹脂成形品から成るとともに、軸部には、その軸方向に金属製の補強部材が形成されたので、ロックバーから過度な荷重が付与された場合であって、軸部が破損してしまうのを防止することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第2ケース部材には、制御手段が形成された基板が収容されるとともに、当該基板は、上下方向に亘って複数配設されたので、第2ケース部材を縦長の形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るステアリングロック装置を示す外観図
図2】同ステアリングロック装置の内部構成を示す断面図
図3】同ステアリングロック装置における第1ケース部材の内部構成を示す斜視図
図4】同ステアリングロック装置における第1ケース部材を示す平面図
図5】同ステアリングロック装置における軸部を第1ケース部材に形成された支持部に支持させた状態を示す斜視断面図
図6】同ステアリングロック装置における第1ケース部材の上部をカバー部材で覆った状態を示す斜視図
図7】同ステアリングロック装置におけるスライド部材の位置を検出可能な位置センサと磁石とを示す断面図
図8】同ステアリングロック装置におけるスライド部材の位置を検出可能な位置センサと磁石とを示す断面図
図9】同ステアリングロック装置における駆動部材を示す4面図
図10】同ステアリングロック装置におけるスライド部材を示す4面図
図11】同ステアリングロック装置の全体構成を示すブロック図
図12】本発明の他の実施形態に係るステアリングロック装置を示す外観図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るステアリングロック装置は、モータの駆動により二輪車のステアリングをロックするステアリングロック及びその解除を行わせるためのもので、図1~8に示すように、任意に駆動可能なモータMと、モータMの駆動力を伝達するための駆動部材2と、駆動部材2にて伝達された駆動力で移動するスライド部材7と、カバー部材9と、第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2にて構成されるケース部材Cと、車両のステアリングに係止してステアリングロックするロック位置と当該ステアリングに対する係止が解除された非ロック位置との間で移動可能なロックバーLとを有して構成されている。
【0022】
モータMは、通電により正転駆動及び逆転駆動し得るアクチュエータであり、正転駆動時に出力軸Maを正回転させるとともに、逆転駆動時に出力軸Maを逆回転させ得るよう構成されている。かかるモータMは、基板(K1、K2)に形成された制御回路11(制御手段)にて制御され、任意タイミングで正転駆動及び逆転駆動が選択的に行われるようになっている。
【0023】
駆動部材2は、モータMの駆動力をスライド部材7に伝達するもので、図9に示すように、伝達ギア3と、カム部材4と及び軸部5を有して構成されている。本実施形態に係る伝達ギア3は、モータMの出力軸Maに取り付けられた出力ギア1と噛み合って取り付けられたウォームギアから成り、モータMの駆動力により回転可能とされている。カム部材4は、伝達ギア3の回転に応じて回転するもので、カム面4aを有して構成されている。
【0024】
軸部5は、駆動部材2の回転軸を構成するもので、駆動部材2の両端に突出形成されるとともに、伝達ギア3及びカム部材4を一体的に回転させるよう構成されている。すなわち、本実施形態に係る伝達ギア3及びカム部材4は、軸部5に一体形成されており、モータMが駆動して出力ギア1が回転すると、その駆動力にて伝達ギア3及びカム部材4が軸部5を中心として一体的に回転するようになっている。
【0025】
さらに、本実施形態に係る伝達ギア3、カム部材4及び軸部5は、所定の樹脂を成形して得られた樹脂成形品から成るとともに、軸部5には、その軸方向に金属製の補強部材6が形成されている。かかる補強部材6は、軸部5の中心軸に形成された挿通孔に挿通して組み付けられた補強のための金属製のピン状部材であり、軸部5の一方の端面から他方の端面に亘って取り付けられている。
【0026】
スライド部材7は、カム部材4の回転に応じて摺動し、ロックバーLをロック位置と非ロック位置との間で移動させるもので、図10に示すように、カム部材4のカム面4aと当接する当接部7aと、磁石mが取り付けられる取付部7bと、一方に突出した突出部7cとを有して構成されている。そして、モータMが駆動してカム部材4が回転すると、スライド部材7は、その当接部7aがカム面4aによって押圧され、第1ケース部材C1に形成された摺動面C1b(図4参照)上を摺動するようになっている。
【0027】
また、スライド部材7の取付部7bには、図7、8に示すように、スプリングrによって上方に付勢された磁石mが取り付けられており、スライド部材7が摺動するのに伴って、磁石mが追随して移動するよう構成されている。さらに、スライド部材7の突出部7cは、当該スライド部材7の摺動方向に突出して一体形成された部位であり、スライド部材7が摺動すると、第1ケース部材C1に形成された凹溝C1c内で摺動するようになっている。
【0028】
ロックバーLは、スライド部材7に取り付けられるとともに、モータMの駆動により、車両のステアリングに係止してステアリングロックするロック位置と、当該ステアリングに対する係止が解除された非ロック位置との間で移動可能なものである。すなわち、ロックバーLは、モータMの駆動力にてケース部材Cに対して前進及び後退し得るものとされており、前進してロック位置に至ると、ステアリングに形成されたロック孔(不図示)に挿通して係止することによりステアリングロックするとともに、後退して非ロック位置に至ると、当該ロック孔から離間して係止が解除されるよう構成されている。
【0029】
なお、スライド部材7は、図2に示すように、スプリング8にて付勢されて組み付けられており、かかるスプリング8によってロックバーLがロック位置から非ロック位置に向かって付勢されている。これにより、モータMの駆動に伴ってカム部材4が回転すると、スライド部材7及びロックバーLがスプリング8の付勢力に抗して摺動するとともに、モータMの駆動に伴ってカム部材4が反対方向に回転すると、スプリング8の付勢力によって初期位置まで摺動することとなる。
【0030】
ケース部材Cは、駆動部材2、スライド部材7及びロックバーL等を収容した第1収容空間S1を有するとともに、ロックバーLがロック位置と非ロック位置との間で移動可能な状態で収容された第1ケース部材C1と、モータMの駆動を制御する制御手段としての制御回路11及びその他回路12、並びに基板(K1、K2)等が収容した第2収容空間S2を有する第2ケース部材C2とを有するとともに、これら第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2が上下に配設されている。
【0031】
第1ケース部材C1は、図4、5に示すように、モータMの出力軸Maを貫通させ得る開口部C1aと、スライド部材7を摺動させ得る摺動面C1bと、スライド部材7の突出部7cの下面と当接しつつ摺動させ得る凹溝C1cと、ロックバーLを挿通してロック位置と非ロック位置との間の摺動を許容する挿通孔C1dと、軸部5の両端をそれぞれ支持する支持部C1eと、モータMから突出した突起部Mb(図6参照)を係止可能な切欠き部C1fとを有して構成されている。
【0032】
第2ケース部材C2は、図2に示すように、第1ケース部材C1の上部に取り付けられ、制御手段を含む所定の電気回路が形成された基板(K1、K2)が収容されるとともに、当該基板は、上下方向に亘って複数(本実施形態においては下側基板K1及び上側基板K2の上下2段)配設されている。なお、同図中符号Dは、第2ケース部材C2の上部開口を塞ぐ蓋部を示すとともに、符号aは、下側基板K1又は上側基板K2に接続されたアンテナ部材を示している。
【0033】
カバー部材9は、図6に示すように、第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2の間において第1ケース部材C1の収容空間S1を覆って取り付けられたもので、スライド部材7の上面の摺動面を有するとともに、伝達ギア3の一部及びスライド部材7に取り付けられた磁石mを上方の第2ケース部材C2に臨ませ得るようになっている。かかるカバー部材9は、所定の樹脂製材料とされているが、金属製等、他の材料から成るものであってもよい。
【0034】
本実施形態に係る下側基板K1及び上側基板K2には、図11に示すように、所定の電気回路が形成されており、アンテナ部材aを介して携帯機Kと無線通信するための通信回路10と、制御回路11及びその他回路12が形成されている。その他回路12は、判定回路12aや位置センサ12b等を有しており、それぞれが下側基板K1又は上側基板K2の所定位置に取り付けられている。携帯機Kは、操作者が携帯可能とされ、例えば車両側からのアクセス信号を受信したことを条件として、車両固有のIDコード(認証コード)をアンテナKaにて無線送信可能なものである。
【0035】
判定回路12aは、通信回路10から送信された信号のIDコードが正規のIDコードか否か判定し得るもので、制御回路11と電気的に接続されている。すなわち、携帯機Kから送信された信号のうちIDコードがアンテナ部材a及び通信回路10を介して判定回路12aに送信されるとともに、そのアンテナ部材aで受信したIDコードが予め車両毎に設定された車両固有のIDコードであるか否か判定回路12aにて判定するのである。
【0036】
制御回路11(制御手段)は、モータMの駆動を制御するためのもので、IPD(インテリジェントパワーデバイス)、ダイオード等の半導体素子から成り、通信回路10による通信に基づいて本ステアリングロック装置のモータMに対する通電を制御するものである。すなわち、判定回路12aによってアンテナ部材aで受信したIDコードが正規のIDコードと一致したと判定されると、制御回路11は、モータMに対する通電を制御して駆動させ、ロックバーLをロック位置から非ロック位置まで移動させることにより、ステアリングロックを解除し得るよう構成されている。
【0037】
また、本実施形態に係る下側基板K1には、図7、8に示すように、位置センサ12bが取り付けられている。かかる位置センサ12bは、スライド部材7に取り付けられた磁石mの磁気を検知してオン、オフの電気信号を送信し得るホールIC(磁気センサ)から成る。かかる位置センサ12bは、下側基板Kにおいて2つ取り付けられており、ロックバーLが非ロック位置にある状態のスライド部材7の位置と、ロックバーLがロック位置にある状態のスライド部材7の位置(すなわち、ロックバーLのロック位置又は非ロック位置)をそれぞれ検出可能とされている。
【0038】
そして、基板(K1、K2)に形成された制御回路11によって、ロックバーLの非ロック又はロック位置を検知したことを条件としてモータ3の駆動が停止されるよう制御される。より具体的には、ロックバーLが後退する過程で一方の位置センサ12bが磁石mを検知すると、ロックバーLが非ロック位置に達したと判断してモータMの駆動を停止させるとともに、ロックバーLが前進する過程で他方の位置センサ12bが磁石mを検知すると、ロックバーLがロック位置に達したと判断してモータMの駆動を停止させることができるのである。
【0039】
ここで、本実施形態に係るステアリングロック装置は、モータMが、ケース部材C(本実施形態においては第1ケース部材C1)の下部に取り付けられている。すなわち、モータMは、第1ケース部材C1の下面に取り付けられ、下方に向かって延設した状態とされており、ステアリングロック装置の全体形状が縦長の形状(二輪車に取り付けた状態において、モータMの寸法を含む高さ寸法が他の寸法より大きい形状)となっている。
【0040】
また、本実施形態においては、モータMがケース部材C(本実施形態においては第1ケース部材C1)の下部に取り付けられているが、図12に示すように、天地を逆転させた状態で車両に組み付けるものとして、モータMがケース部材C(第1ケース部材C1)の上部に取り付けられたものとしてもよい。この場合、モータMは、第1ケース部材C1の上面に取り付けられ、上方に向かって延設した状態とされており、ステアリングロック装置の全体形状が縦長の形状(二輪車に取り付けた状態において、モータMの寸法を含む高さ寸法が他の寸法より大きい形状)となる。
【0041】
本実施形態によれば、モータMは、ケース部材Cの上部又は下部に取り付けられたので、モータをケース部材の幅方向に配設したものに比べ、全体形状を縦長の形状とすることができ、既存の車両に容易に適用することができる。特に、本実施形態においては、第2ケース部材C2とモータMとの間に第1ケース部材C1が配設された構造となっているので、モータMの振動や発熱が第2ケース部材C2内の基板(K1、K2)に伝達してしまうのを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るケース部材C(具体的には、第1ケース部材(C1))は、軸部5の両端をそれぞれ支持する支持部C1eが形成されたので、ケース部材Cと他の部材とのそれぞれに支持部を形成し、それら他の部材とケース部材Cとに亘って軸部5を取り付けるものに比べ、駆動部材2の組み付け誤差を抑制することができ、モータMの駆動力をロックバーLに対して円滑に伝達させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る伝達ギア3及びカム部材4は、軸部5に一体形成されたので、部品点数を削減することができるとともに、伝達ギア3とカム部材4との間の相対的位置決め精度を向上させることができ、モータMの駆動力をロックバーLに対してより一層円滑に伝達させることができる。またさらに、本実施形態に係る伝達ギア3、カム部材4及び軸部5は、樹脂成形品から成るとともに、軸部5には、その軸方向に金属製の補強部材6が形成されたので、ロックバーLから過度な荷重が付与された場合であって、軸部5が破損してしまうのを防止することができる。
【0044】
加えて、本実施形態に係るケース部材Cは、ロックバーLがロック位置と非ロック位置との間で移動可能な状態で収容された第1ケース部材C1と、モータMの駆動を制御する制御手段(制御回路11やその他回路12等)が収容された第2ケース部材C2とを有するとともに、第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2が上下に配設されたので、第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2を合わせた全体形状を縦長の形状とすることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る第2ケース部材C2には、制御手段(制御回路11やその他回路12等)が形成された基板(K1、K2)が収容されるとともに、当該基板(K1、K2)は、上下方向に亘って複数配設されたので、第2ケース部材C2を縦長の形状とすることができる。またさらに、本実施形態に係る第1ケース部材C1及び第2ケース部材C2の間には、第1ケース部材C1の収容空間(第1収容空間S1)を覆うカバー部材9が取り付けられたので、第1ケース部材C1の収容空間(第1収容空間S1)と第2ケース部材C2の収容空間(第2収容空間S2)とを区分けすることができ、第1ケース部材C1内のモータM等の駆動に伴って生じる衝撃等を吸収して第2ケース部材C2内の制御手段(制御回路11やその他回路12等)に伝達してしまうのを抑制することができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば伝達ギア3及びカム部材4が軸部5とは別体とされ、これらを組み合わせて駆動部材2とするものであってもよく、その場合、伝達ギア3、カム部材4及び軸部5は、樹脂成形品とは異なる材質(例えば金属等)であってもよい。また、本実施形態に係る駆動部材2は、伝達ギア3、カム部材4及び軸部5を有して構成されているが、モータMの駆動力をロックバーLに伝達するための他の部材又は機構としてもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の形態の車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
モータがケース部材の上部又は下部に取り付けられたステアリングロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 出力ギア
2 駆動部材
3 伝達ギア
4 カム部材
5 軸部
6 補強部材
7 スライド部材
7a 当接部
7b 取付部
7c 突出部
8 スプリング
9 カバー部材
10 通信回路
11 制御回路(制御手段)
12 その他回路(制御手段)
12a 判定回路
12b 位置センサ
M モータ
Ma 出力軸
Mb 嵌合部
L ロックバー
C ケース部材
C1 第1ケース部材
C1a 開口部
C1b 摺動面
C1c 凹溝
C1d 挿通孔
C1e 支持部
C1f 切欠き部
S1 第1収容空間
C2 第2ケース部材
S2 第2収容空間
K1 下側基板
K2 上側基板
m 磁石
r スプリング
D 蓋部
図1
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図12