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特許7272608選択される生物分子のバイオアベイラビリティを低減させるための多孔性親和性ヒドロゲル粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】選択される生物分子のバイオアベイラビリティを低減させるための多孔性親和性ヒドロゲル粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/075 20060101AFI20230502BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230502BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230502BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C08J3/075
A61K47/60
A61K47/61
A61K9/14
A61K9/08
A61P29/00
A61P5/00
A61P37/06
A61P35/00
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020560858
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 NL2019050031
(87)【国際公開番号】W WO2019143247
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】18152397.8
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520265686
【氏名又は名称】ハーイグレク2セーアーエルエー ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】カンペルマン トム
(72)【発明者】
【氏名】カルバート リーサンネ パウラ
(72)【発明者】
【氏名】カルペリーン ヘルマヌス ベルナルドゥス ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】レイテン イェルン クリスティアヌス ヘルマヌス
(72)【発明者】
【氏名】デイクストラ ピーテル イェレ
(72)【発明者】
【氏名】ズーテビール ブラム
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/172143(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02111872(EP,A2)
【文献】特表2016-507585(JP,A)
【文献】国際公開第2007/024008(WO,A1)
【文献】特表2003-503367(JP,A)
【文献】特開平10-147518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
A61K 9/00- 9/72
47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、前記ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含み、結合分子は、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子に特異的に結合し、前記第1のポリマーネットワークを包囲する第2のポリマーネットワークを含み、前記第2のポリマーネットワークは、前記結合分子を欠く、ヒドロゲル粒子。
【請求項2】
前記第1のポリマーネットワークが、1000nm超の平均流体力学半径を有する分子の、前記第1のポリマーネットワーク中への拡散を妨害する平均メッシュサイズを有する、請求項1に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項3】
前記第1のポリマーネットワークの前記メッシュサイズが、既知の平均流体力学半径を有する分子の拡散を計測することにより決定される、請求項1または2に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項4】
前記ポリマーネットワークを構成するポリマーが、生体適合性ポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項5】
ヒドロゲルが、デキストラン-チラミンヒドロゲル;ヒアルロン酸-チラミンヒドロゲル;PEG-チラミンヒドロゲルまたはそれらの組合せを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項6】
前記結合分子が、結合ぺプチド;抗体若しくはその抗原結合部分;リガンド結合受容体;またはアプタマーである、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合部分が、単一ドメイン抗体である、請求項6に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項8】
前記単一ドメイン抗体が、ラクダまたは軟骨魚の単鎖重鎖抗体の可変ドメイン(それぞれVHHおよびVNARとも称される)である、請求項7に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項9】
前記第2のポリマーネットワークが、前記第1のポリマーネットワークの前記メッシュサイズと同一であり、またはそれよりも小さいメッシュサイズを有する、請求項に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項10】
前記第2のポリマーネットワークが、100nm超の平均流体力学半径を有する分子が浸透不能なメッシュサイズを有する、請求項1または9に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項11】
前記第2のポリマーネットワークが、1ナノメートル~450μmの厚さを有する、請求項1、9または10に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項12】
前記第2のポリマーネットワークが、標的化部分または生物コンパートメント保持分子を含む、請求項1または9~11に記載のヒドロゲル粒子。
【請求項13】
生物系中の可溶性生物分子のバイオアベイラビリティを低減させる方法であって、前記系に1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子を提供することを含み、前記ヒドロゲル粒子は、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、前記ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含み、結合分子は、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子に特異的に結合し、前記生物分子は、前記ポリマーネットワークに接近し得る流体力学半径を含み、前記結合分子は、前記生物分子に結合し得る方法。
【請求項14】
生物系中の生物分子のバイオアベイラビリティを低減させるための、請求項1~12のいずれか一項に記載のヒドロゲル粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接的環境から生物分子を除去する手段および方法に関する。より具体的には、生物分子に結合し、それを封鎖し得る内部固定化結合分子を有するヒドロゲル粒子に関する。この粒子を使用して生物分子の生物活性を低減させ、または阻害することができる。ヒドロゲル粒子は、好ましくは、注射可能である。
【背景技術】
【0002】
多くの(慢性/進行性)炎症性、感染性、および遺伝性疾患/病態(例えば、骨関節炎、炎症性関節炎、関節リウマチ、クローン病、喘息、細菌感染、敗血症および全臓器不全、癌、および移植拒絶反応)は、細胞シグナリング分子(すなわち、炎症促進性および抗炎症性サイトカインおよび成長因子、成長因子アンタゴニスト;本明細書においてさらに可溶性因子と称される)を介して調節および維持されている。抗体を使用するこれらの可溶性因子の中和は、そのような疾患を安定化させ、またはさらには治癒するための強力な手法である。種々の可溶性因子中和方針がこの目的のために開発されており、一部は先進的臨床治療法においても実行されている。これらの可溶性因子中和療法は、典型的には、抗体または抗体放出剤/粒子のボーラス注射に依存し、例えば、全身性疾患、例えば、関節リウマチの治療に広範に使用されてきた。これらは、炎症、例えば、(膝)骨関節炎の症例の局所モジュレーションについても試験されてきた[1-3]。これらの病態において、中和抗体は、局所関節環境中で抗体を保持する目的で関節内注射される。しかしながら、これらの治療法は、関節内ボーラス注射の急速なクリアランスに起因して限定された効力を示している。類似の高レベルのクリアランスは、多数の他の部位において生じ、そこではボーラス注射された分子は血管およびリンパ系への、およびその中での体液循環を介して急速にクリアランスされる。さらに、ボーラス注射された抗体は、(免疫)細胞媒介食作用により急速にクリアランスされ得る。炎症の部位におけるボーラス注射は、体液中の抗体の急速な溶解に起因して大部分が無効であるとも考えられる。炎症の局所治療のために注射抗体の治療効果を延長させるため、より長期の関節内保持時間を有する種々の抗体放出粒子が調査されてきた[4-7]。或いは、抗体は、粒子の表面上に共有結合により係留されてきた[8-10]。まとめると、図1に模式的に示されるとおり、現在、サイトカイン中和抗体の制御提示についての2つのアプローチ:i)サイトカイン中和部分の現場放出の制御、およびii)表面改質ナノ粒子を使用するサイトカインの捕捉が存在する。
【0003】
技術水準の注射可能な薬物送達系は、サイトカイン中和剤(例えば、抗体)のインビボ/現場保持時間を延長させる。しかしながら、これらは依然として最適には程遠い。例えば、抗体は、過酷な(例えば、炎症化)インビボ環境中に直接放出され、または曝露される。結果的に、治療剤の生物学的機能は、例えば、タンパク質変性に起因して損なわれる。重要なことに、損傷した抗体は、増加した免疫原性を有することにより有害でさえあり得る。また、ナノ粒子は、酸化ストレスおよび炎症促進性応答を誘導し得、毒性効果をもたらし、比較的急速にクリアランスされ(例えば、炎症化組織中の「漏出血管系(leaky vasculature)」を介して)、マイクロ粒子と比較して食作用によりスカベンジされる傾向が高い。表面上の抗体を有することが食作用をさらに容易にするため、これは表面上で形成される免疫複合体を介して媒介される。さらに、ナノまたはマイクロ粒子の表面上で提示される抗体は、体液との非特異的相互作用に対して保護されず、目的サイトカインに対して最適でない親和性をもたらす。
【0004】
本発明は、選択される生物分子の局所封鎖または枯渇のための親和性ヒドロゲル粒子である「注射可能な生物分子シンク」を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含む粒子が提供される。第1のポリマーネットワークは、好ましくは、1000nm超、好ましくは、100nm超の平均流体力学半径を有する分子が浸透不能なメッシュサイズを有する。結合分子は、好ましくは、生物分子に結合する。結合分子は、好ましくは、生物分子に特異的に結合する。このような結合分子は、特異的結合分子とも称される。第1のポリマーネットワークは、好ましくは、第1のポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含む。
【0006】
本発明はさらに、1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含み、結合分子は、前記分子に特異的に結合する粒子を提供する。前記分子は、1000ナノメートル(nm)以下の流体力学半径を有する分子である。
【0007】
ヒドロゲル粒子は、好ましくは、2つ以上の結合分子を含み、前記結合分子の少なくとも2つは、異なる標的生物分子に結合する。好ましい実施形態において、粒子は、3つ以上の結合分子を含み、前記結合分子の少なくとも3つは、異なる標的生物分子に結合する。本明細書に記載のヒドロゲル粒子の方法および使用は、粒子の周辺環境がいくつかの可溶性因子について同時に枯渇される場合に有用である状況で存在することが多い。このような場合、2つ以上の生物分子を粒子中に取り込むことが有用であり得る。
【0008】
多くの目的のため、特にかなりの量の生物分子をより長い期間にわたり捕捉する目的のため複数の粒子が投与される。粒子は、程度の差はあるが同一であり得る。したがって、本発明はまた、本明細書に記載の複数のヒドロゲル粒子を含むヒドロゲル粒子の組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、本明細書に記載のヒドロゲル粒子の少なくとも2つの集合体のプールを含む組成物であって、前記プールの少なくとも2つのヒドロゲル粒子は、異なる生物分子に結合する結合分子を含む組成物を提供する。
【0010】
過剰活性免疫系、癌、または過剰活性ホルモンおよび/若しくはサイトカイン産生細胞を有する患者の治療における、好ましくは、炎症の治療における、好ましくは、関節炎症の治療における使用のための、本明細書に記載のヒドロゲル粒子または前記ヒドロゲル粒子を含む医薬溶液若しくは組成物または本明細書に記載のプールを含む組成物も提供される。過剰活性免疫系を有する患者は、自己免疫疾患患者、炎症を有する患者などであり得る。
【0011】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子を含む、注射に好適な水溶液も提供される。
【0012】
生物系中の可溶性生物分子のバイオアベイラビリティを低減させる方法であって、前記系に本明細書に記載のヒドロゲル粒子を提供することを含み、生物分子は、前記ポリマーネットワークに接近し得る流体力学半径を含み、前記結合分子は、前記生物分子に結合し得る方法も提供される。
【0013】
生物系中の生物分子のバイオアベイラビリティを低減させるための、本明細書に記載のヒドロゲル粒子または前記ヒドロゲル粒子を含む医薬溶液若しくは組成物の使用がさらに提供される。
【0014】
ヒドロゲル粒子を含む水溶液、好ましくは、医薬溶液も提供される。
【0015】
印刷するための、または製造用途のための添加剤としての、ヒドロゲル粒子を含む水溶液、好ましくは、インクの使用も提供される。
【0016】
インビトロ細胞培養サプリメントとしての、本明細書に記載のヒドロゲル粒子または水溶液の使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】先行技術のヒドロゲル粒子の模式図。左側パネルは、結合分子の制御放出が意図されるヒドロゲル粒子中の結合分子の組織化を示す。右側パネルは、抗原に結合し、それを外側に提示することが意図されるナノ粒子の表面上に曝露される結合分子を示す。
図2】A)結合分子がヒドロゲルの内部に固定化されている本発明のヒドロゲル粒子の実施形態の模式図。B)結合分子がヒドロゲルの内部に固定化されており、ヒドロゲルが、結合分子を含有せず、粒子への標的分子の流入を可能とする篩として機能し、粒子へのより大きい分子の流入を妨害するメッシュサイズを有する第2のヒドロゲルにより包囲されている本発明のヒドロゲル粒子の実施形態の模式図。
図3】ラマVHHの模式的表示。VHHは、ループと連結している9つの抗平行βストランドで編成されている。これらのループの3つは、相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を形成する。ループL1、L2、L3およびL5は、CDRから離れて局在し、VHHのその抗原への結合を干渉せずにグリコシル化部位の導入およびグリコシル基の取り込みに好適である。ループL4はCDRの近くに局在し、その操作はVHHのその抗原への結合に影響し得る。
図4】hBMP7を標的化するVHHの特徴付け。(A)hBMP7を標的化するVHH-G7のアミノ酸配列。フレームワーク(FR)および相補性決定領域(CDR)は、Chothia[39]に従って示される。(B)精製G7を15%のSDS-PAGEによりサイズ分離し、クーマシーブリリアントブルーにより染色した。分子量マーカー(kDa)を左側に示す。(C)ELISAにおけるhBMP7へのVHH-G7の特異的結合。データを少なくとも3つのレプリケートの平均+/-標準偏差として表現する。
図5】バイヘッド(bihead)G7-MA10の構築および産生。(A)VHH G7およびMA10のアミノ酸配列アラインメント。VHHのフレームワーク(FR)および相補性決定領域(CDR)を、Chothia[29]に従って示す。(B)遺伝子操作二価VHHを模式的に表示する。N末端におけるG7およびC末端におけるMA10並びにGSリンカーの位置を示す。(C)生成された二価G7-MA10の予測3Dタンパク質モデルであり、GSリンカーを黄色で強調し、G7およびMA10のCDR3を黒色で示す。(D)組換え発現されたVHH G7、MA10およびG7-MA10を15%のSDS-PAGEによりサイズ分離し、クーマシーブリリアントブルーにより染色した。分子量マーカー(kDa)を左側に示す。一価および二価VHHの計算分子量を右側に示す。(E)ELISAによるHAに対するバイヘッドVHHの結合特異性。データを少なくとも3つのレプリケートの平均+/-標準偏差として表現する。
図6】VHHおよびBMP7についての免疫組織化学染色。マウスに、石灰化骨および軟骨中のハイドロキシアパタイト並びにBMP7に同時に結合する二機能性(バイヘッド)VHH、成長因子BMP7またはプラセボを注射した。20日目、屠殺前日、動物の半数に成長因子BMP7を注射した。21日目、動物を屠殺し、骨を単離し、抗VHH抗体(左パネル)または抗BMP7抗体を使用する免疫組織化学検査のために処理した。バイヘッドが注射されたマウスのみ、VHHが陽性に染色された(上段パネル)。20日前にバイヘッドが注射されたマウスにおいてのみ、BMP7が石灰化骨および軟骨中で特異的に濃縮された(上段右)。VHHがマウスにおける1回目の注射の3週間後にも依然としてBMP7に結合し得たことを実証するVHH染色と同時局在するBMP7染色。BMP7のみ(中段パネル)またはプラセボ(下段パネル)の注射はVHH染色を示さず、石灰化骨および軟骨中でBMP7(中段パネル)の明らかな濃縮もBMP7の完全な不存在も示さなかった。
図7】(a)シェル(例えば、RGDタイプぺプチド)により機能化され、その一方、コア中のビオチン部分がフリーのままであり、モジュラーマイクロ組織のさらなる現場機能化を可能としたDex-TA-ビオチンマイクロゲル。(b、c)機能化シェルの厚さは、ビオチン化部分についての反応性基質として作用するneutravidinの拡散により制御することができた。(d)この容易なマルチステップ機能化プロトコルを使用して、Dex-TA-ビオチンマイクロゲルのシェルおよびコアに別々の機能性部分を与えることができ、(e)それぞれFITC-(すなわち、緑色)およびatto565標識(すなわち、赤色)シェルおよびコアを使用して実証される。このようなコア-シェルタイプ機能化は、とりわけ、非機能化または代替的に機能化されたシェルをエンジニアリングすることによりコア中の機能性部分をマイクロゲル外部から物理的に分離するために利用することができる。黒色スケールバー:100μm。白色スケールバー:20μm。
図8】機能化シェル(すなわち、第2のポリマーネットワーク)厚さの制御。スケールバー:20μm。
図9】四価neutravidinを使用してデキストラン-チラミンマイクロゲルにカップリングしている蛍光標識デスチオビオチン(DTB-FITC)は、種々の目的ビオチン化分子、例として、ビオチン-BMP7におけるVHHにより置き換えられ、それは、ホストゲスト(すなわち、物理的)相互作用を使用して化学架橋マイクロゲルの良好な機能化を実証する。
図10】デキストラン-チラミンマイクロゲルを用いず(左側パネル)および用いて(右側パネル)培養されたヒト間葉幹(間質)細胞。マイクロゲルは、白色ドットとして可視的である。マイクロゲル(すなわち、「サイトカインシンク」)は、未影響の細胞形態により示されるとおり、インビトロ細胞培養物に影響しない。
図11】BMP7におけるVHHにより機能化されたデキストラン-ビオチンマイクロゲル(すなわち、「サイトカインシンク」)を用いるおよび用いないBMP7に応答するBMPレポーター細胞系(C2C12-BRE-Luc)のインビトロルシフェラーゼ産生。VHH機能化マイクロゲルは、局所的環境から成長因子(すなわち、サイトカイン)を枯渇させることにより細胞応答を妨害し得る。
図12】左から右パネルにかけて、a、bおよびcである。近赤外線標識デキストランコンジュゲートを使用して30μm直径のマイクロゲルを調製し、マウス膝の滑液腔中に注射した。(a)3週間後、マイクロゲルは、蛍光イメージングを使用して生存動物中で依然として追跡することができ、それはマイクロゲルが注射膝中に依然として存在することを示し、および(b、c)組織学的染色を使用して死後に追跡することができた。マイクロゲルは、パネルcの左側における暗紫色ドットとして滑膜中で可視的となる。
図13】A)異なる分子量(20kDa、40kDa、70kDa、150kDa、500kDa、2000kDa)を有するFITCコンジュゲートデキストランおよびIgGとインキュベートされた中空PEG-TA(PEGにより示される)およびDexHA-TA(DexHAまたはDexにより示される)マイクロゲルの共焦点スライス像。スケールバーは、250μmを表す。B)パネルAからの共焦点画像のデジタル画像分析によるマイクロゲルの透過性の定量。評価される分子の分子量および流体力学半径は、それぞれ、[20kDaのデキストラン-FITC、40kDaのデキストラン-FITC、70kDaのデキストラン-FITC、150kDaのデキストラン-FITC、500kDaのデキストラン-FITC、2000kDaのデキストラン-FITC、150kDaのIgG]および[約3.3nm、約4.5nm、約5.8nm、約8.5nm、約14.7nm、約27.0nm、5.3nm]である。*DexHA(-チラミン)ゲルはIgGに対して透過性であるが、定量はゲルのコア中のIgG沈殿に起因して不可能であった。kは、キロダルトン(kDa)を示す。
図14】DEXおよびHAの修飾。DexおよびHAの修飾を示す模式的表示。本発明者らは、チラミンおよびmal-アミンにコンジュゲートしているデキストランを合成し、次いでこのポリマーを使用してフリーチオール基と反応させる。ポリマーVHHコンジュゲートは、現場架橋を用いて直接注射することができ、または最初にマイクロゲル中で処理し、次いでVHHを負荷することができた。こうして調製されたマイクロゲルは、関節腔中に注射することができる。ポリマーVHHコンジュゲートは、現場架橋を用いて直接注射することができ、または最初に注射することができるマイクロゲル中で処理することができた。
図15】PNCによるN-(2-アミノエチル)マレイミド塩酸塩の活性化の模式的表示(1H-NMRにより確認)。Dex-TAとの後続の反応は、Dex-TA-マレイミドを生じさせた。
図16】産物の1H-NMR分析は、Dex-TA-マレイミドの構造を裏付けた。Mal-PNCの大多数は、Dex-TA中に存在するフェノール性残基と反応した。定量に使用されたピークをスペクトルで示す。左側の挿入図は、PEG-ジチオールとのDex-TA-マレイミドの架橋産物を示し、産物中のマレイミド残基の反応性を裏付ける。
図17】PNCによるデキストランの活性化によるDex-TA-マレイミドの代替的合成の反応スキーム。続いて、Dex-PNCをチラミンおよびマレイミド-アミンの混合物と反応させ、Dex-TA-マレイミドを生じさせた。
図18】産物の1H-NMR分析は、Dex-TA-マレイミドの構造を裏付けた。定量に使用されたピークをスペクトルで示す。
図19】DMTMM存在下でのチラミンおよびマレイミドによるヒアルロン酸の機能化の反応スキーム。
図20】産物の1H-NMR分析は、HA-TA-マレイミドの構造を裏付けた。丸の区域は、チラミンおよびマレイミド残基の定量に使用されたシグナルを示す。
図21】HA-TA-マレイミドへのフリーCysを有する蛍光標識ぺプチドの指向カップリングの模式的表示。良好なカップリングがSDS-PAGE上で裏付けられた。
図22】HA-TA-マレイミドへのフリーCysを有するVHHの指向カップリングの模式的表示。良好なカップリングがSDS-PAGE上で裏付けられた。
図23】細胞(15um)、近赤外線標識細胞を含有する30および100umのマイクロゲルを、健常および骨関節炎の膝を有するラット中で関節内注射した。健常膝におけるNIRシグナルの保持がここのグラフに示される。ゲル中の標識細胞が少なくとも11週間まで存在することを示す。
図24】骨関節炎の膝の組織学的分析は、ゲルが12週間後に依然として多数存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ポリマーヒドロゲルは、広範な用途、例えば、カプセル化薬物の徐放および/または宿主における不利な環境から材料を保護するためのカプセル化材料の遮蔽において極めて有用であることが証明されている。本発明のヒドロゲルは、別々の粒子に成形することができる。ヒドロゲル粒子は典型的には球状であるが、他の形状も考えられる。ヒドロゲル粒子は、好ましくは、球状粒子である。本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、約1マイクロメートル(μm)~1000μmの平均断面径を有し得る。本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、好ましくは、約2~1000μmの平均断面径を有し得る。平均断面径は、好ましくは、3~1000μm、好ましくは、5~1000μm、好ましくは、10~1000μmである。特に好ましい実施形態において、断面径は、1~250μm、好ましくは、2~250μm、好ましくは、3~250μm、好ましくは、5~250μm、より好ましくは、10~250μmである。特に好ましい実施形態において、断面径は、1~100μm、好ましくは、2~100μm、好ましくは、3~100μm、好ましくは、5~100μm、より好ましくは、10~100μmである。一部の実施形態において、平均直径断面径は、5~500μmである。特に好ましい実施形態において、断面径は、5~250μm、好ましくは、10~200μmである。示されるサイズのヒドロゲル粒子は、顕著な剪断なしで容易に注射可能である。このようなヒドロゲル粒子は、注射部位、特に、別々の注射部位、例えば、腫瘍、炎症の部位、滑膜または他の空隙に好適な、および培養組織内の局所蓄積を容易にする。後者は、炎症を伴うことが多く、培養組織中の本発明の粒子の取り込みにより、1つ以上の不所望な生物分子の選択的な封鎖により移植部位が不利でない環境となる。ヒドロゲルは、関節内注射に特に好適である。2μm超、好ましくは、3μm超の直径を有する本発明のヒドロゲル粒子は、注射後に関節中でより効率的に保持される(Pradal et al,2016:International journal of Pharmaceutics 498:119-129.http://dx/doi.org/10.1016/j.ijpharm.2015.12.015)。好ましい実施形態において、直径は、少なくとも5μm、好ましくは、少なくとも10μm、より好ましくは、少なくとも15、30または100μmである(図23および図24参照)。
【0019】
ヒドロゲル粒子は、中空(すなわち、中空コアを有するシェル)であり得る。結合分子は、空洞中に存在し得、粒子外側への結合分子の拡散を妨害し、結合分子により結合された標的分子の拡散を可能とする第1のポリマーネットワークのメッシュサイズを設定することにより十分に固定化されている。次いで、ポリマーシェルは、抗体および/または結合分子の拡散を妨害する一方、封鎖すべき分子の拡散を可能とする。これは、サイトカインシンクとしても効率的に作用し、空間的捕捉に依存する。
【0020】
ヒドロゲル直径は、水和状態(乾燥/膨潤)およびヒドロゲルが計測される溶媒に依存的である。本明細書に記載のヒドロゲル粒子の直径は、ヒドロゲル直径が平衡に到達するまでの生理学的水性食塩溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)中でのインキュベーション後、典型的には、約1~24時間後に計測される。ヒドロゲル粒子の断面径は、例えば、限定されるものではないが、動的光散乱、レーザ回折、(デジタル)画像分析、篩分析、沈降法、電気インピーダンス、または顕微鏡観察を使用して計測/決定することができる。本発明のため、断面径は、好ましくは、顕微鏡観察とデジタル画像分析との組合せにより、または実施例に記載のとおり計測される。粒子の集合体の平均断面径は、好ましくは、集合体中の粒子の代表的な無作為選択物の断面径から決定される。代表的な選択物は、典型的には、少なくとも100個の粒子を含むが、これは必要により拡張することができる。集合体中の粒子の断面径は、典型的には、必須ではないが、ベル形状曲線(すなわち、正規分布)として分布し、平均からの標準偏差がベル形状曲線の幅を定める。ヒドロゲル粒子の断面径の代表的な選択物の分布は、本明細書において、「正規化サイズ分布」と称され、代表的な選択物の断面径の標準偏差を、代表的な選択物の平均断面径により割ったものと定義される。正規化サイズ分布は、90%よりも小さく、好ましくは、75%よりも小さく、好ましくは、50%よりも小さく、好ましくは、25%よりも小さく、好ましくは、10%よりも小さく、好ましくは、5%よりも小さい。2つの異なる平均断面径および/または2つの異なる正規化標準分布を有するヒドロゲル粒子の集合体を組み合わせることができる。このような組成物は、ある断面径を有する粒子の数をプロットすることにより容易に同定される。このようなプロットは、粒子サイズを決定する任意の手段を使用して作成することができるが、好ましくは、顕微鏡観察とデジタル画像分析との組合せを使用して決定される。
【0021】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、それらの最小サイズに起因して、慣用の巨大材料と比較して溶質の改善された拡散速度および多くの標準的な顕微鏡観察技術との直接的な適合性を提供する。粒子サイズの低減は、例えば、細胞含有ゲルからの放出キネティクスを改善することが実証されている[19,20]。別件では、注射されたヒドロゲル粒子のインビボ生体分布は、それらのサイズと関連する。5μmよりも大きいヒドロゲル粒子は、典型的には、保持時間の延長により特徴付けられる。それというのも、それらは、例えば、食作用、リンパ球流入、並びに侵入および溢出を介する注射の部位からの急速クリアランスの傾向がないためである[21,22]
【0022】
ヒドロゲル粒子製作プロセスは、2つのステップ:(1)別々の液滴中へのヒドロゲル前駆体(すなわち、ポリマー)溶液の分散および(2)現場架橋を介する液滴のゲル化を含む。ヒドロゲル前駆体液滴は、固体基板上/中でのパターニング若しくは成形、(非混和性)液体中での乳化、または気相中でのアトマイゼーションにより形成することができる[23,24]。ヒドロゲル架橋は、化学的または物理的性質のものであるポリマー間の分子相互作用に基づき分類することができる。化学的相互作用は、例えば、相補基を介して形成されている不可逆的な共有結合(例えば、マイケル型付加、ラジカル重合、酵素的架橋または放射線照射)であり得る[25]
【0023】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、(慢性)炎症性、感染性、および他の病態、例えば、遺伝性病態を、それらのプロセスを推進/維持する生物分子を局所的に枯渇させることにより中断させ、低減させ、または縮小させる方法において使用することができる。ヒドロゲル粒子は、多孔性の安定的に架橋されたヒドロゲルネットワークを含む。生物分子の1つ以上に結合し得る結合分子は、ポリマーネットワーク(第1のポリマーネットワークとも称される)中で固定化されている。結合分子の内部位置は、結合した生物分子を粒子の局所環境から効率的に遮蔽し、それによりその活性を妨害する。結合分子は、種々の手法でポリマーネットワークに結合させることができる。ホストゲスト化学が結合分子に使用されることが多い。ホストゲスト化学は、完全共有結合の力以外の力によりユニークな構造関係で一緒に保持される2つ以上の分子またはイオンから構成される複合体を説明する。ホストゲスト化学は、非共有結合を介する分子認識および相互作用の着想を包含する。非共有結合は、大型分子、例えば、タンパク質の3D構造の維持において重要であり、大型分子が互いに特異的にではあるが一過的に結合する多くの生物プロセスに関与する。8つの一般に挙げられるタイプの非共有相互作用:金属配位結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、イオン-双極子、双極子-双極子、π-πスタッキングおよび疎水性相互作用が存在する。ホストゲスト化学の非限定的な例は、ビオチン/アビジン結合である。ビオチンは、アビジンファミリーのメンバーに高い親和性で結合し得る。この特徴は、有利には、多くの商業的および非商業的状況において使用される。例は、古典的ビオチン/ストレプトアビジンの組合せおよびより新しいデスチオビオチンおよび四価neutravidinの組合せである。ホストゲスト化学の他の例は、当業者が容易に利用可能である。一部の実施形態において、結合分子は、ホストゲスト化学を介してポリマーネットワークに結合している。他の実施形態において、結合分子は、ポリマーネットワークに共有(化学)結合している。いっそうさらなる実施形態において、結合分子は、ポリマーに結合しているのではなく、ポリマーネットワーク中で捕捉されている。これは、有利には、例えば、大型結合分子に使用することができる。
【0024】
結合分子は、結合ぺプチドであり得る。このようなぺプチドは、典型的には、小型であり、並外れた特異性で標的に結合し得る。ぺプチドは、担体または足場に結合させることができる。このような担体または足場は、標的へのぺプチドの結合を支援し得るが、支援する必要はない。このような場合、担体または足場は、ぺプチドのフォールディングを拘束し得、その結合機能を容易にする。ぺプチドは、線状でも環状でもよい。結合分子、例えば、アプタマーおよびぺプチドアプタマーは、Reverdatto et al(2015;Curr Top Med Chem.15(12):1082-1101およびそれに引用される論文)に記載されている。結合分子は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。これは、単鎖Fv断片(scFv)、FAB断片、アンチカリン、いわゆるnanobody(商標)、二環式ぺプチドなどであり得る。本明細書において使用される用語「抗体」は、好ましくは、抗原上のエピトープに結合する1つ以上の可変ドメイン(そのようなドメインは、抗体の可変ドメインに由来し、またはそれと配列相同性を共有する)を含有する免疫グロブリンクラスのタンパク質に属するタンパク質性分子を意味する。抗体断片は、少なくとも抗体の可変ドメインを含む。結合分子は、リガンド/受容体ペアのメンバーでもよい。受容体は、典型的には、細胞と会合し、可溶性リガンドに結合し得るため、結合分子は受容体であることが好ましい。通常膜結合している受容体は、細胞外部分をFcテイルなどと会合させることにより改変され得ることが多い。このような改変タンパク質は、典型的には、ポリマーネットワークに容易に付着する。
【0025】
ヒドロゲルのポリマーネットワークのメッシュサイズは、種々の手法で決定することができる。本発明において、メッシュサイズは、ヒドロゲル粒子中に拡散し得る分子のサイズを示すために挙げられる。一部の実施形態において、ある他の分子、または細胞は、ヒドロゲル粒子中への拡散を妨害されることが重要である。本発明において、メッシュサイズは、好ましくは、ある流体力学半径の分子の拡散ポテンシャルにより特徴付けられる。分子の流体力学半径は、動的光散乱(DLS、Stetefeld et al,Biophys Rev.2016 Dec;8(4):409-427.DOI:10.1007/s12551-016-0218-6)を使用して決定することができる。所与の流体力学半径を有する分子の、ポリマーネットワーク中への拡散は、種々の手法でモニタリングすることができる。これを行うことができる1つの手法は、ポリマーネットワークにより離隔された2つの液体コンパートメントを作出し、既知の流体力学半径を有する標識分子をネットワークの一方のコンパートメントに添加し、系を標識分子の分布に関して(ほぼ)平衡に到達させることによるものである。2つのコンパートメントを有する好適な系の例は、ネットワークから構成される壁部を有するカプセル(例えば、図13およびその説明参照)またはポリマーネットワークにより離隔された2つの液体コンテナである。他方のコンパートメント中の標識の存在は、その分子がポリマーネットワークを介して拡散し得るか否かの尺度である。分子は、100倍大きいメッシュサイズで得られる分子の最大量の20%未満、好ましくは、10%未満が、平衡に到達した後にネットワークの反対側上で検出される場合、ネットワークを介して拡散し得ないと判断される。24時間後に平衡に到達しなかった場合、24時間において観察された割合で平衡に到達したと解釈する。このような場合、ネットワークは、示される流体力学半径を有する分子の、ネットワークを介する拡散を妨害するメッシュサイズを有する。ネットワークは、そのような分子の浸透を可能としないメッシュサイズを有する。ネットワークは、所与の流体力学半径を有する分子の、ポリマーネットワーク中への拡散を妨害するサイズを有する。
【0026】
分子は、100倍大きいメッシュサイズで得られる分子の最大量の80%超、好ましくは、90%超が、平衡に到達した後にネットワークの反対側上で検出される場合、ネットワークを介して拡散し得ると判断される。24時間後に平衡に到達しなかった場合、24時間において観察された割合で平衡に到達したと解釈する。このような場合、ネットワークは、分子のネットワーク中への拡散を可能とするメッシュサイズを有する。
【0027】
無論、比較試験は、類似の状況下で、異なるメッシュサイズを得るために要求される分子変化を除き同一であるネットワークを用いて実施される。
【0028】
第1のポリマーネットワークは、1000ナノメートル以下、好ましくは、500ナノメートル以下、好ましくは、250ナノメートル以下、より好ましくは、100ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子が第1のポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とする平均メッシュサイズを有し得る。第1のポリマーネットワークは、好ましくは、50ナノメートル以下、好ましくは、20ナノメートル以下、好ましくは、10ナノメートル以下、より好ましくは、5ナノメートル以下、より好ましくは、4ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子が第1のポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とする平均メッシュサイズを有する。抗体捕捉または封鎖が望まれる場合、平均メッシュサイズは、好ましくは、IgGの平均サイズよりも大きく、好ましくは、15ナノメートル超、好ましくは、20ナノメートル超である。抗体を粒子外で保持すべき場合、平均メッシュサイズは、典型的には、抗体よりも小さいことが好ましい。好ましくは、15ナノメートル以下、好ましくは、12、11または10ナノメートル以下である。好ましくは、10ナノメートルである。
【0029】
第1のポリマーネットワークは、1000nm超の平均流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を妨害する平均メッシュサイズを有し得、好ましくは、メッシュサイズは、500ナノメートル超、好ましくは、250ナノメートル超、好ましくは、100ナノメートル超、好ましくは、50ナノメートル超、好ましくは、20ナノメートル超、好ましくは、10ナノメートル超、好ましくは、5ナノメートル超の平均流体力学半径を有する分子の拡散を妨害し、好ましくは、4ナノメートル超の平均流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を妨害する。より大型の分子の接近を制限するネットワークは、典型的には、より長期間活性である。より大型の分子の接近を制限するネットワークは、典型的には、体内でより耐摩耗性である。
【0030】
第1のポリマーネットワークのメッシュサイズは、既知の平均流体力学半径を有する分子の拡散を計測することにより決定することができる。本発明に関して、ヒドロゲルのポリマーネットワークは、それが1000ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子がポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とする場合、少なくとも1000ナノメートルの平均メッシュサイズを有する。ヒドロゲルのポリマーネットワークは、それが500ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子がポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とする場合、少なくとも500ナノメートルの平均メッシュサイズを有する、などである。
【0031】
本発明に関して、ヒドロゲルのポリマーネットワークは、それが1000nm超の平均流体力学半径を有する分子の、第1のポリマーネットワーク中への拡散を妨害する場合、1000nm以下の平均メッシュサイズを有する。ヒドロゲルのポリマーネットワークは、それが100nm超の平均流体力学半径を有する分子の、ポリマーネットワーク中への拡散を妨害する場合、100nm以下の平均メッシュサイズを有する、などである。
【0032】
平均ヒドロゲルメッシュサイズは、機械的に、または分子放出に基づき決定することもできる(例えば、Grassi et al.,2009 Molecules Vol 14 pp 3003-3017:doi:10.3390/molecules14083003参照)。細孔サイズを決定するさらに別の手法は、理論的には、Russell(2005:Ind.Eng.Chem.Res.Vol 44:pp 8213-8217)により記載されているいわゆる「単一細孔半径(single-pore-radius)」モデルを使用するものである。これに関して、本明細書に記載のヒドロゲルは、もっぱら新たな方法により決定され、すなわち、所与の流体力学半径を有する粒子がネットワーク中に拡散し得るか否かを計測することにより決定されないメッシュサイズを有する。このような場合、1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、好ましくは、Grassi et al(前掲)に従って機械的に、またはRussel et al(前掲)による「単一細孔半径」モデルに従って決定される1000ナノメートル以下、好ましくは、500ナノメートル以下、好ましくは、250ナノメートル以下、より好ましくは、100ナノメートル以下、好ましくは、50ナノメートル以下、好ましくは、20ナノメートル以下、好ましくは、10ナノメートル以下、より好ましくは、5ナノメートル以下、より好ましくは、4以下の平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含む粒子が提供される。第1のポリマーネットワークは、好ましくは、1000ナノメートル、好ましくは、500ナノメートル、好ましくは、250ナノメートル、より好ましくは、100ナノメートル、好ましくは、50ナノメートル、好ましくは、20ナノメートル、好ましくは、10ナノメートル、より好ましくは、5ナノメートル、より好ましくは、4ナノメートルの平均メッシュサイズを有する。ヒドロゲルメッシュサイズを定義するさらに別の手法は、キロダルトン(kDa)の所与の分子量を有する分子がポリマーネットワーク中に拡散し得るか否かによるものである。粒子の半径および粒子の分子量についての相関は、式Rmin=0.066×M1/3により与えられる(Erickson 2009,Biol.Proced Online 11:32-51.Do:10.1007/s12575-009-9008-x)。この式において、変数Rminは最小半径を意味し、Mはダルトンの分子量を意味する。したがって、本発明はまた、1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、430gDa(ギガダルトン)以下、好ましくは、54gDa以下、好ましくは、6.8gDa以下、好ましくは、435MDa(メガダルトン)以下、好ましくは、54MDa以下、好ましくは、3.5MDa以下、好ましくは、435kDa(キロダルトン)以下、好ましくは、54kDa以下、好ましくは、28kDa以下の分子の拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含む粒子を提供する。
【0033】
好ましい実施形態において、1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、900kDa以下、320kDa以下、200kDa以下、180kDa以下、好ましくは、150kDa以下の分子の拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含む粒子が提供される。これらは、それぞれ、免疫グロブリン(Ig)M、IgA、IgE、IgDおよびIgGの分子量である。このような粒子の利点は、結合分子および捕捉された生物分子が、挙げられる抗体種から効率的に遮蔽されることである。不測の宿主抗体対粒子(含有物)応答の効果は、存在するとしても、それぞれの抗体/メッシュサイズについて小さい。
【0034】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子中の第1のポリマーネットワークは、好ましくは、100kDa、好ましくは、70kDa、より好ましくは、約15kDaの分子量を有する生物分子の拡散を可能とするメッシュサイズを有する。ほとんどのサイトカインは、70kDa未満の分子量を有する。
【0035】
ヒドロゲル粒子は、好ましくは、架橋ヒドロゲルポリマーを含む。架橋は、2つ以上のポリマー鎖を結合するプロセスである。化学的架橋および物理的架橋の両方が存在する。さらに、ヒドロゲルを選択する場合、水についての高い親和性を有する天然ポリマー、例えば、タンパク質または合成ポリマーの両方を出発材料として使用することができる。種々の架橋法を、ヒドロゲルの設計のために実行することができる。定義により、架橋ポリマーゲルは、溶媒が溶解させない巨大分子である。ゲル微小構造中で架橋により作出されたポリマードメインに起因して、ゲルは、より大きい化学的安定性を獲得する。種々の架橋法、例えば、限定されるものではないが、化学的架橋、光架橋(典型的には、UV)、タンパク質相互作用、水素結合などが当分野において公知である。
【0036】
架橋部分は、好ましくは、フェノール性化合物である。方法は、触媒(すなわち、ペルオキシダーゼ酵素、例えば、限定されるものではないが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ)および酸化剤(例えば、過酸化水素)を使用するフェノール性化合物の別のフェノール性化合物への酵素媒介共有結合カップリングに利用可能であり、フェノール性化合物は、少なくとも1つのヒドロキシル置換芳香環系の存在により特徴付けられ、例として、限定されるものではないが、フェノールコンジュゲート巨大分子、フェノールコンジュゲート小分子、フェノール、チラミン、チロシン、ポリフェノール、p-クマル酸、ユビキノール、ビタミンE、カテコール、フェルラ酸、カプサイシン、オイゲノール、レゾルシノール、ゲニステイン、エピカテキン、ピロガイロール(pyrogailol)、没食子酸、没食子酸プロピル、ペンタG-D-グルコース、ビスフェノールA、ブチル化ヒドロキシトルエン、クレゾール、エストラジオール、グアイアコール、4-ノニルフェノール、オルトフェニルフェノール、トリニトロフェノール、フェノールナフタレイン、プロポフォール、セロトニン、アドレナリン、チモール、キシレノール、ジエチルスチルベストロール、L-DOPA、サリチル酸メチル、サリチル酸、2-ベンジル-4-クロロフェノール、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、ブチル化ヒドロキシルアニソール、レゾルシノール、4-ヘキシルレゾルシノール、ヒドロキノン、1-ナフトール、カリックスアレーン、さらにはフェノール性基(すなわち、ヒドロキシル置換芳香環系)を天然に含有し、および/またはそれにより修飾されたぺプチド、合成または天然ポリマー、蛍光色素、薬物、DNA、タンパク質、リポタンパク質、抗体、単一ドメイン抗体、アプタマー、nanobody、および全ての他の分子、またはそれらの組合せである。好ましくは、架橋は、チラミン基を用いて行われる。
【0037】
多数のポリマーを使用してヒドロゲルを調製することができる。本発明において、ポリマーは、生体適合性ポリマーである。ポリマーは、好ましくは、デキストラン;ヒアルロン酸;およびポリ-エチレングリコール(PEG)の1つ以上である。
【0038】
生体適合性ヒドロゲルポリマーは、顕著な有害効果を産生せずに生命系と接触する能力を有するヒドロゲルポリマーである。この文脈における生体適合性は、材料が前記生体材料に対する身体の有意な病理学的応答を誘発しないことまたは前記材料が患者に有害でないことを意味する。ポリマーヒドロゲルは長きにわたり使用されており、とりわけ、Laftah et al(2011:Polymer Hydrogels:A Review,Polymer-Plastics Technology and Engineering,50:14,1475-1486)に概説されている。ヒドロゲルポリマーの好ましい例は、米国特許第8647271号明細書;米国特許出願公開第20060257488号明細書;国際公開第1999015211号パンフレット;国際公開第2011/049449号パンフレット;国際公開第2011/059325号パンフレット、国際公開第2013/073941号パンフレットおよび米国特許第8440231号明細書に記載されている。ヒドロゲルポリマーは、デキストラン-チラミン(Dex-TA)コンジュゲートがグラフトされたヒアルロン酸(HA)のコポリマーであり得る。Dex-TAコンジュゲートは、好ましくは、100個の無水グルコース環当たりのコンジュゲートチラミン部分の数として定義される、5~25の置換度(DS)を有する。前記Dex-TAコンジュゲート中のデキストラン鎖は、好ましくは、5~80kDaの平均分子量を有する。ヒドロゲルポリマーは、Dex-TAコンジュゲートと、コラーゲン-チラミン;キトサン-チラミン;キトサン-フロレト酸およびゼラチン-チラミンおよびヒアルロン酸-チラミンからなる群から選択されるコンジュゲートとを含む組成物であり得る。ヒドロゲルポリマーは、好ましくは、コンジュゲートヒアルロン酸、キトサン、デキストラン、ヒアルロン酸、ヘパリンまたはヘパリンデンプン;ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアルキレンオキシド-ポリアルキレ(polyalkyle)-テレフタレートブロックコポリマー、(好ましくは、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンテレフタレートブロックコポリマー)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸/乳酸(PGLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリエチレン;アルギネート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドまたはポリエチレングリコールテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのコポリマー(PEGT-PBT、またはPolyactive(登録商標))である。コンジュゲーションは、好ましくは、架橋基、好ましくは、少なくとも1つのチラミン、好ましくは、より多くのチラミンを用いるものである。
【0039】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、好ましくは、デキストラン-チラミンヒドロゲル;ヒアルロン酸-チラミンヒドロゲル;PEG-チラミンヒドロゲルまたはそれらの組合せを含む。
【0040】
ヒドロゲルは、化学的に安定性のヒドロゲルであり得る(Hoffman,2012:Advanced Drug Delivery Reviews 64:18-23)。ヒドロゲルは、それらが共有結合架橋ネットワークである場合、永久または化学ゲルと呼ばれる。
【0041】
本発明はまた、ヒドロゲル粒子を含む水溶液に関する。溶液は、好ましくは、注射溶液、すなわち、医療においてヒトの身体に流体を投与するために使用される中空針を通過させることができる溶液である。針は、尖っている先端における小さい開口部を含有する鋭利な先端を有する薄い中空の管である皮下注射針であり得る。無針系も存在し、それらも本明細書に記載の注射水溶液を使用する。
【0042】
生物分子についての結合分子の親和性は、極度に高い必要はない。結合した分子は、それが結合分子から不測的に放出される場合、粒子外への拡散が効率的に妨害される。それというのも、それはその結合分子に急速に再結合し、または別の利用可能な結合分子に結合するためである。
【0043】
結合は、特異性および親和性に関して表現することができる。特異性は、どの抗原またはそのエピトープが結合ドメインにより特異的に結合されるかを定める。親和性は、抗原またはエピトープを含む特定の標的への結合の力の尺度である。特異的結合は、典型的には、エピトープ含有抗原についてのある親和性を要求する。本明細書において使用される結合分子に関して、結合は、エピトープ含有抗原が少なくとも1×10e-6M、より好ましくは、1×10e-7M、1×10e-8M、より好ましくは、1×10e-9M超の親和性(Kd)で結合されるという意味で特異的である。結合分子は、好ましくは、エピトープ含有抗原に1×10e-9M~100×10e-9Mの親和性(Kd)で結合する。結合分子は、典型的には、エピトープを有さない抗原に特異的に結合しない。このような分子への結合は、典型的には、エピトープ含有抗原についてのKd未満である。典型的には、このような非特異的結合は、存在するとしても、1×10e-6M未満の力によるものである。結合分子は他の抗原に、そのような抗原がエピトープを含有する限り特異的に結合し得る。
【0044】
結合分子は、好ましくは、生物分子に結合する。結合分子により結合される分子は、好ましくは、ぺプチドまたはタンパク質である。生物分子、ぺプチドまたはタンパク質は、好ましくは、体液中で可溶性である。このような分子は、粒子のポリマーネットワーク中に拡散し得る。ぺプチドまたはタンパク質は、マトリックス、例えば、関節中の炎症促進性マトリックス分解産物の放出部分であり得る。好ましい実施形態において、タンパク質は、サイトカイン、可溶性抗原または自己抗体である。好ましい実施形態において、タンパク質は、マトリックス分解産物である。このような産物は、炎症促進性であり得る。
【0045】
好ましい実施形態において、結合分子は、サイトカインに特異的である。サイトカインは、細胞シグナリングにおいて重要な小タンパク質(約5~70kDa)のファミリーのメンバーである。これらの放出は、それらの周囲の細胞の挙動に対する効果を有する。サイトカインは、自己分泌シグナリング、傍分泌シグナリングおよび内分泌シグナリングに関与し得る。好ましいサイトカインとしては、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が挙げられるが、一般に、それにはホルモンも成長因子も含まれない。サイトカインは、広範な細胞、例として、免疫細胞、例えば、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球および肥満細胞、並びに内皮細胞、線維芽細胞、および種々の間質細胞により産生され得;所与のサイトカインは、2つ以上のタイプの細胞により産生され得る。サイトカインは、典型的には、受容体を介して作用し、免疫系において特に重要である。サイトカインは、例えば、体液性免疫応答と細胞ベース免疫応答との間の平衡をモジュレートし得る。好ましいサイトカインは、関節炎症に関与するサイトカインである。サイトカインは、好ましくは、TNFアルファ、IL1ベータ、オンコスタチンM、IL-6、IL-4、IL-10、IL-17、IL-8、アラーミン、例えば、S108またはS109である。
【0046】
結合分子は、成長因子または成長因子アンタゴニスト、例えば、Wnt分子、Wntアンタゴニスト、例えば、好ましくは、DKK1、FRZBまたはスクレロスチン、BMP、BMPアンタゴニスト、例えば、好ましくは、Noggin、GremlinまたはChordin、TGFベータ、FGFまたはNGFに特異的であり得る。
【0047】
結合分子は、生物分子が粒子中で、好ましくは、ヒドロゲルの内部ネットワーク中で結合されることを確保する。結合している生物分子は、サイズに起因し、または結合パートナー、例えば、細胞受容体の限定された移動性に起因して粒子に浸透し得ない結合パートナーへの結合を効率的に妨害される。したがって、生物分子への結合分子の結合は、生物分子上の中和エピトープへの結合である必要はない。結合は中和エピトープへの結合であり得、その結果、結合分子が生物分子に結合している場合、生物分子は結合分子がヒドロゲルの内部ネットワーク中に存在せず、またはもはや存在しない場合でも結合パートナー、例えば、受容体に機能的に結合し得ない。結合分子は、生物分子上の中和エピトープに結合することが好ましい。この特徴は、粒子が生物分子の不活性化前に不測的に部分的または完全に分解される場合、その生物分子の活性が結合している結合分子により依然として阻害されることを確保する。
【0048】
結合分子は、好ましくは、ポリマーネットワークに物理的または化学的に結合している。物理的結合は、多くの手法において考えられる。例えば、結合分子に、ネットワーク中のポリマーに直接的または間接的に結合し得る官能基を提供することによるものである。結合は、親和性結合、例えば、例示的なビオチン/アビジン結合または抗体結合であり得る。結合は、化学的結合、例えば、共有結合カップリングでもよい。ぺプチド/タンパク質結合化学は、現在高度に進化しており、多くの異なる方法が利用可能であり、非限定的な例は、アミン反応性架橋化学およびカルボジイミド架橋剤化学またはSH基を標的化するマレイミド化学である。特に一般的な方法は、分子N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)または類似の分子、例えば、スルホ-NHSを利用する。このような方法は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDS)カップリング法において使用されることが多い。架橋のために標的化することができる他の反応基は、スルフヒドリル(-SH)およびカルボニル(CHO)である。後者は、糖ぺプチドまたは糖タンパク質中の炭水化物基を酸化することにより作出することができる。
【0049】
ヒドロゲル架橋は、化学的または物理的性質のものであり得るポリマー間の分子相互作用をベースとし得る。化学的相互作用は、永久的な共有結合を生じさせる化学的に反応する部分により形成される。慣習的に、化学ヒドロゲルは、架橋剤を使用する、反応性末端基を有する単量体のラジカル重合を介して形成される[Wichterle,O.and LIM,D.(1960)Hydrophilic Gels for Biological Use.Nature 185(4706),117-118]。ラジカルベース架橋は、細胞毒性を伴い得るが、伴う必要はない。ラジカルは、例えば、フェノール性部分のペルオキシダーゼ媒介架橋において使用される酵素的架橋を介して効率的に消費され得る[Henke,S.et al.(2016)Enzymatic Crosslinking of Polymer Conjugates is Superior over Ionic or UV Crosslinking for the On-Chip Production of Cell-Laden Microgels.Macromol Biosci 16(10),1524-1532]。便宜上、ラジカルベース単一細胞カプセル化も、ラジカル形成光開始剤を細胞含有ヒドロゲル前駆体相ではなく非混和性油相に添加することにより細胞適合性様式で達成されている。この方針は、外側から内側へのマイクロゲル架橋を可能とし、それにより細胞毒性ラジカルへのカプセル化細胞の曝露を最小化した[11]。物理的結合は、可逆的(すなわち、非共有結合)であり、とりわけ、エンタングルメント、静電(すなわち、イオンまたは水素結合)、ファンデルワールス、疎水性相互作用、またはそれらの組合せ、例えば、ホストゲスト相互作用におけるものをベースとする。
【0050】
結合分子は、好ましくは、結合タンパク質、好ましくは、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、好ましくは、ラクダまたは軟骨魚の単鎖重鎖抗体の可変ドメイン(それぞれVHHおよびVNARとも称される)である。結合分子は、好ましくは、VHHまたはVNARである。これらの用語は、軽鎖を欠く単一重鎖可変ドメイン抗体を指す。好ましくは、VHHまたはVNARは、天然で軽鎖を欠くラクダまたは軟骨魚に見出すことができるタイプの抗体のものである。VHHおよびVNARは、現在、人工的に生成され、種々のVHHまたはVNAR様分子を有する大型ライブラリーから選択される。VHHまたはVNARは、現在、合成により産生することもできる。用語VHHは、現在、機能的軽鎖の不存在下で機能するように改変された別の種の重鎖可変ドメインを指すために使用されることもある。VHHまたはVNARは、好ましくは、ヒドロゲルのポリマーに化学的または物理的に、好ましくは、VHHまたはVNAR上に存在し、またはそれに提供される官能基を介する化学的架橋を介して結合している。VHHについては、前記官能基は、好ましくは、VHHの短鎖ループ1、2、3、5の1つに存在するグリコシル基である(図3およびその説明参照)。官能基は、VHHの別の部分におけるもの、例えば、VHHのC末端におけるもの、好ましくは、C末端の最後の10個のアミノ酸の1つ以上の置換におけるものでもよい。官能基は、ぺプチドとして前記VHHのC末端に付加することもできる。機能性残基は、S-S架橋またはアミン基を介して生体材料に直接結合するCysまたはMet残基であり得る。官能基は、NHS化学を介してポリマー中のそれぞれの残基に化学的に架橋し得るチラミン-アジドまたはチラミン-アルキンであり得る。
【0051】
ヒドロゲル粒子は、数ダルトン(Da)から150kDaまでのサイズ範囲の広範な分子の拡散を可能とする調整可能な多孔度を有し得る。サイトカインは、典型的には、5kDa~70kDaの分子量サイズ範囲を有し、拡散を介してヒドロゲルに容易に流入し得る。これらはヒドロゲル中に流入したら、特異的親和性抗体断片により捕捉される。結合分子についての標的でない生物分子は、粒子外に自由に拡散する。高密度の結合分子、例えば、抗体断片および関連アビディティは、標的が流入し、ヒドロゲルポリマーネットワークに結合してから粒子から離脱するのを効率的に妨害する。高親和性抗体断片が存在しない他のサイトカインは、ヒドロゲルネットワーク内外を自由に拡散し得る。例えば、CytoSorbを使用する血液吸着と比較して、本明細書に記載の少なくとも一部の方法は、特異的生物分子、例えば、サイトカインの捕捉におけるそれらの高い選択性および特異性、並びに結合分子が存在する分子のみを中和する能力により、それらを明確に際立たせる。CytoSorbまたは同等の技術は、この区別をなし得ず、血清から全てのサイトカインを枯渇させる。それというのも、それらの技術は、本発明において使用される特異的結合分子に代えて非特異的相互作用に依存するためである。
【0052】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、いわゆるサイトカインシンクとして機能し得る。ヒドロゲルは、図2に示されるとおり、(有害な)目的生物分子の封鎖および/または枯渇を可能とする一方、(例えば、炎症化組織の)有害なインビボ条件から結合分子を保護する多孔性の注射可能なマイクロ粒子である。半透過性ヒドロゲルは、目的サイトカインに対するアビディティも増加させる。それというのも、それは、細胞外マトリックス関連タンパク質、細胞により、およびメッシュサイズに応じてヒドロゲルメッシュサイズよりも大きい非特異的相互作用タンパク質(例えば、内因性抗体/サイトカイン結合タンパク質)により到達され得ない抗体の高度に濃縮された微小環境を提供するためである。本発明の粒子の利点は、粒子がマイクロメートルサイズであり、より大きいことである。これは、他の粒子と比較して粒子の長期の存在を容易にする。ナノ粒子は、例えば、典型的には、より急速にクリアランスされ、および/または食作用を受ける。
【0053】
生体適合性ヒドロゲルポリマーは、顕著な有害効果を産生せずに生命系と接触する能力を有するヒドロゲルポリマーである。この文脈における生体適合性は、材料が前記生体材料に対する身体の有意な病理学的応答を誘発しないことまたは前記材料が患者に有害でないことを意味する。ポリマーヒドロゲルは長きにわたり使用されており、とりわけ、Laftah et al(2011:Polymer Hydrogels:A Review,Polymer-Plastics Technology and Engineering,50:14,1475-1486)に概説されている。ヒドロゲルポリマーの好ましい例は、米国特許第8647271号明細書;米国特許出願公開第20060257488号明細書;国際公開第1999015211号パンフレット;国際公開第2011/049449号パンフレット;国際公開第2011/059325号パンフレット、国際公開第2013/073941号パンフレットおよび米国特許第8440231号明細書に記載されている。ヒドロゲルポリマーは、デキストラン-チラミン(Dex-TA)コンジュゲートがグラフトされたヒアルロン酸(HA)のコポリマーであり得る。Dex-TAコンジュゲートは、好ましくは、100個の無水グルコース環当たりのコンジュゲートチラミン部分の数として定義される、5~25の置換度(DS)を有する。前記Dex-TAコンジュゲート中のデキストラン鎖は、好ましくは、5~80kDaの平均分子量を有する。ヒドロゲルポリマーは、Dex-TAコンジュゲートと、コラーゲン-チラミン;キトサン-チラミン;キトサン-フロレト酸およびゼラチン-チラミンからなる群から選択されるコンジュゲートとを含む組成物であり得る。ヒドロゲルポリマーは、好ましくは、コンジュゲートヒアルロン酸、キトサン、デキストラン、ヒアルロン酸、ヘパリンまたはヘパリンデンプン;ポリ乳酸(PLA)、ポリアルキレンオキシド-ポリアルキレ-テレフタレートブロックコポリマー(好ましくは、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンテレフタレートブロックコポリマー)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸/乳酸(PGLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(アミドアミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリエチレン;アルギネート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドまたはポリエチレングリコールテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのコポリマー(PEGT-PBT、またはPolyactive(登録商標))である。コンジュゲーションは、好ましくは、架橋基、好ましくは、チラミンを用いるものである。
【0054】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、前記第1のポリマーネットワークを包囲する第2のポリマーネットワークを含み得、第2のポリマーネットワークは、前記結合分子を欠く。第2のポリマーネットワークは、シェルとも称されることがあり、第1のポリマーネットワークを包囲し、第2のポリマーネットワークを介して拡散し得ない分子、粒子および細胞からそれを遮蔽し得る。第2のポリマーネットワークが選択的メッシュサイズを有する場合、第1のポリマーネットワークは、拡散時間を低減させるためのより大きいメッシュサイズを所望により有し得る。したがって、第2のポリマーネットワークは、第1のポリマーネットワークのメッシュサイズと同一のまたはそれよりも小さいメッシュサイズを有し得る。
【0055】
本明細書に記載の第1および第2のポリマーネットワークを含むヒドロゲル粒子について、第2のポリマーネットワークは、第1のポリマーネットワークのメッシュサイズと同一のまたはそれよりも小さい平均メッシュサイズを有することが好ましい。このような場合、第1のポリマーネットワークは、好ましくは、1000ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子が第1のポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とするメッシュサイズを有し、第2のポリマーネットワークは、1000ナノメートル超の平均流体力学半径を有する分子の、第2のポリマーネットワーク中への拡散を妨害するメッシュサイズを有する。好ましくは、第2のポリマーネットワークのメッシュサイズは、500超、好ましくは、250超、好ましくは、100超、好ましくは、50超、好ましくは、20超、好ましくは、10超、好ましくは、5超の平均流体力学半径を有する分子の、第2のポリマーネットワーク中への拡散を妨害する。好ましい実施形態において、第2のポリマーネットワークは、4ナノメートル超の平均流体力学半径を有する分子の、第2のポリマーネットワーク中への拡散を妨害するメッシュサイズを有する。第1のポリマーネットワークも、無論、1000ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子が第1のポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とするメッシュサイズよりも小さいメッシュサイズを有し得る。例は、500以下、250以下、100以下、50以下、20以下、10以下、5以下、好ましくは、4ナノメートル以下の流体力学半径を有する分子が第1のポリマーネットワーク中に拡散するのを可能とするメッシュサイズである。1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、好ましくは、Grassi et al(前掲)に従って機械的に決定され、またはRussel et al(前掲)による「単一細孔半径」モデルに従って決定される1000ナノメートル以下、好ましくは、500ナノメートル以下、好ましくは、250ナノメートル以下、より好ましくは、100ナノメートル以下、好ましくは、50ナノメートル以下、好ましくは、20ナノメートル以下、好ましくは、10ナノメートル以下、より好ましくは、5ナノメートル以下、より好ましくは、4以下の平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含み、ポリマーネットワークにより固定化されている結合分子を含む粒子は、前記第1のポリマーネットワークを包囲する第2のポリマーネットワークも有し得、第2のポリマーネットワークは、結合分子を欠く。第2のポリマーネットワークは、好ましくは、第1のポリマーネットワークのメッシュサイズよりも小さい平均メッシュサイズを有する。第2のポリマーネットワークは、好ましくは、1000ナノメートル以下、好ましくは、500ナノメートル以下、好ましくは、250以下、好ましくは、100以下、好ましくは、50以下、好ましくは、20以下、好ましくは、10以下、好ましくは、5ナノメートル以下のメッシュサイズを有する。
【0056】
1マイクロメートル(μm)~1000μmの範囲の平均断面径を有するヒドロゲル粒子であって、430gDa(ギガダルトン)以下、好ましくは、54gDa以下、好ましくは、6.8gDa以下、好ましくは、435MDa(メガダルトン)以下、好ましくは、54MDa以下、好ましくは、3.5MDa以下、好ましくは、435kDa(キロダルトン)以下、好ましくは、54kDa以下、好ましくは、28kDa以下の分子の拡散を可能とする平均メッシュサイズを有する第1のポリマーネットワークを含む粒子は、前記第1のポリマーネットワークを包囲する第2のポリマーネットワークも有し得、第2のポリマーネットワークは、前記結合分子を欠く。第2のポリマーネットワークは、好ましくは、第1のポリマーネットワークのメッシュサイズよりも小さい平均メッシュサイズを有する。第2のポリマーネットワークは、好ましくは、430gDa(ギガダルトン)以下、好ましくは、54gDa以下、好ましくは、6.8gDa以下、好ましくは、435MDa(メガダルトン)以下、好ましくは、54MDa以下、好ましくは、3.5MDa以下、好ましくは、435kDa(キロダルトン)以下、好ましくは、54kDa以下、好ましくは、28kDa以下の分子の拡散を可能とするメッシュサイズを有する。
【0057】
第2のポリマーネットワークは、好ましくは、1nm~450マイクロメートル;1nm~50マイクロメートル;1nm~5マイクロメートル;1nm~500nmまたは1nm~50nmの厚さを有する。第2のポリマーネットワークは、好ましくは、5nm~450マイクロメートル;25nm~50マイクロメートル;100nm~5マイクロメートル、100nm~500nmの厚さを有する。厚さは、好ましくは、0.5~100マイクロメートル、好ましくは、0.5~50マイクロメートル、より好ましくは、0.5~20マイクロメートルである。
【0058】
第2のポリマーネットワークは、標的化部分または生物コンパートメント保持分子を含み得る。第2のポリマーネットワークは、第1のポリマーネットワークにおける内部に指向される表面および反対側上の外部に指向される表面を有する。標的化部分または生物コンパートメント保持分子は、好ましくは、外部に指向される表面において固定化されている。好ましい実施形態において、標的化部分または生物コンパートメント保持分子は、第2のポリマーネットワークに化学的または物理的に結合している。分子をポリマーネットワークに結合させる手段および方法は、本明細書の他箇所に記載されている。標的化部分は、好ましくは、目的部位において存在し、目的部位にまたはその付近で化学的または物理的に結合しているタンパク質性分子についての特異性を有する結合分子である。標的化部分は、好ましくは、細胞受容体または化学的若しくは物理的に結合しているマトリックスタンパク質についての特異性を有する結合分子である。標的化部分は、好ましくは、滑液腔中に存在し、それに化学的または物理的に結合しているタンパク質性分子に特異的である。このような標的化部分の例は、限定されるものではないが、抗体またはその抗原結合断片である。これは、単鎖Fv断片(scFv)、FAB断片、アンチカリン、いわゆるnanobody、二環式ぺプチドなどであり得る。本明細書において使用される用語「抗体」は、好ましくは、抗原上のエピトープに結合する1つ以上の可変ドメインを含有する免疫グロブリンクラスのタンパク質に属するタンパク質性分子を意味し、そのようなドメインは、抗体の可変ドメインに由来し、またはそれと配列相同性を共有する。抗体断片は、少なくとも抗体の可変ドメインを含む。結合分子は、リガンド/受容体ペアのメンバーでもよい。
【0059】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子を含む水溶液は、好ましくは、重合性溶液である。これは、例えば、生体インク(例えば、Kamperman et al(Adv.Health.Mater.6;2017;1600913参照)において有用である。他の使用としては、限定されるものではないが、体内のある位置におけるヒドロゲル粒子の保持の改善が挙げられる。さらなる重合性水溶液は、培養組織中で使用することができ、1つ以上のシンクを培養組織中に配置することにより不利な炎症性環境を移植物(培養組織)により適切とし得る。
【0060】
本明細書に記載の水溶液は、好ましくは、本明細書に記載のヒドロゲル粒子および薬学的に許容可能な担体、または賦形剤を含む医薬溶液、好ましくは、医薬組成物である。水溶液、医薬溶液または医薬組成物は、好ましくは、注射溶液または組成物である。注射溶液は、医療においてヒトの身体に流体を投与するために使用される中空針を通過させることができる溶液である。針は、尖っている先端における小さい開口部を含有する鋭利な先端を有する薄い中空の管である皮下注射針であり得る。これは、一般にシリンジ、体内に物質を注射するためのプランジャを有する手動操作装置を用いて使用される。水溶液は、溶媒が水である溶液である。水溶液は、好ましくは、生理学的溶液である(すなわち、生物に適合性のオスモル濃度を含む。生理学的塩溶液(1リットル当たり9gの塩(0.9%)溶液)が使用されることが多い。これは、リン酸緩衝液により緩衝化される場合、リン酸緩衝生理食塩水またはPBSとして公知である。
【0061】
水溶液は、移植物の包囲環境から分子/サイトカインを除去し、枯渇させるためのサイトカインシンクとして作用する(サイトカインシンクマイクロゲルを(別々の/二次)インク/生体材料中に取り込むことにより不利な環境を不利でなくする)。
【0062】
本発明はまた、過剰活性免疫系、癌、または過剰活性ホルモンおよび/若しくはサイトカイン産生細胞を有する患者の治療における、好ましくは、炎症の治療における、好ましくは、関節炎症の治療における使用のための、本明細書に記載のヒドロゲル粒子、医薬溶液、または医薬組成物を提供する。過剰活性免疫系を有する患者は、自己免疫疾患患者、炎症、微生物誘導免疫応答(例えば、細菌または酵母)、外傷誘導免疫応答(急性ストレスは炎症を惹起する)、組織変性誘導免疫応答(分解産物は炎症を誘導し得る)を有する患者などであり得る。
【0063】
過剰活性免疫系は、免疫系が体内で細胞および組織の殺傷を開始する時の状態または免疫応答が一次症状が高熱、腫れ、発赤、過労、および悪心である「サイトカインストーム」モードの状態である。一部の場合、免疫反応は、致死性である。有効な免疫系が良好な健康状態を確保するために必要である一方、過剰活性免疫系はそれ自体が脅威である。免疫系は、我々の身体をあらゆる有害なウイルスおよび細菌から保護し続ける。しかしながら、我々の免疫系が消失し、我々自身の身体組織および細胞を攻撃し始め得る場合がある。これは、種々の自己免疫疾患、種々のショック症状およびアレルギーをもたらし得る。American autoimmune related disease associationは、自己免疫疾患のリストを維持する。これらのほとんどについて、炎症促進性サイトカインまたは可溶性アレルゲン若しくは抗原の(局所的)存在が典型的である。これらの因子の1つ以上を、体内の患部局所におけるそれらの因子の1つ以上に特異的な1つ以上の結合分子を有する本明細書に記載のヒドロゲル粒子、医薬溶液、または医薬組成物を注射することによりその局所から枯渇させることができる。局所的枯渇は、少なくともその局所における疾患の進行を少なくとも低減させる。局所的枯渇は、少なくともその場所における疾患の1つ以上の症状を低減させる。
【0064】
癌は、1つの特異的原因を有さない。しかしながら、多くの癌の成長および維持の中核は、1つ以上の細胞外刺激に対するそれらの依存性である。癌細胞に標的化される抗体は、現在、臨床試験において評価されている。このような抗体は、典型的には、癌細胞または関連マトリックス上に存在する分子に指向される。本発明のヒドロゲル粒子の第1のポリマーネットワーク中の結合分子は、典型的には、そのような関連マーカーに指向されない。それというのも、それらは粒子のポリマーネットワーク中に拡散し得ない大型構造に結合しているためである。代わりに、結合分子は、好ましくは、腫瘍維持若しくは腫瘍成長効果または免疫応答阻害効果を有する可溶性ぺプチドまたはタンパク質に指向される。このような因子の非限定的な例は、種々の可溶性EGFまたはEGF様因子、種々のrスポンジン、Bmp、TGFb、WNT、FGF、VEGF、CXCL、ARG、CCL、IL、TNF、MMP、ADAMT、ANG、PDGF、IGF、HGF、PlGF、および/またはOPNである。これらの因子の1つ以上を、体内の患部局所におけるそれらの因子の1つ以上に特異的な1つ以上の結合分子を有する本明細書に記載のヒドロゲル粒子、医薬溶液、または医薬組成物を注射することによりその場所から枯渇させることができる。局所的枯渇は、少なくともその場所における癌の進行を少なくとも低減させる。局所的枯渇は、少なくともその場所における癌の1つ以上の症状を低減させる。
【0065】
血管新生癌を治療する別の手法は、血管系刺激可溶性因子、例えば、VEGFおよび/またはFGFを局所的に封鎖し、および/または枯渇させることによるものである。封鎖することができる他の血管系刺激可溶性因子は、Bmp、TGFb、WNT、FGF、VEGF、CXCL、ARG、CCL、IL、TNF、MMP、ADAMT、ANG、PDGF、IGF、HGF、PlGF、および/またはOPNである。これは少なくとも、注射部位付近の新たな血管新生を低減させる。
【0066】
炎症は、有害刺激、例えば、病原体、損傷細胞、または刺激物質に対する身体組織の生物学的応答の一部である。これは、免疫細胞、血管、および分子メディエーターが関与する保護的応答である。炎症は、典型的には、有害状況の減弱において有益である。しかしながら、炎症は、過剰に強力であり、または慢性的である場合、それ自体が有害であり得る。炎症は、細胞、マトリックスおよび構造の種々の相互作用を含むプロセスである。これは、いわゆる炎症促進性サイトカインも含む。これらのサイトカインの1つ以上を、体内の患部局所におけるそれらのサイトカインの1つ以上に特異的な1つ以上の結合分子を有する本明細書に記載のヒドロゲル粒子、医薬溶液、または医薬組成物を注射することによりその場所から枯渇させることができる。局所的枯渇は、少なくともその場所における炎症の進行を少なくとも低減させる。局所的枯渇は、少なくともその場所における炎症の1つ以上の症状を低減させる。
【0067】
第1のポリマーネットワーク中に存在する結合分子を指向させることができるサイトカインの非限定的および好ましい例は、インターロイキン-1(IL-1);IL-2;IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17およびIL-18、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンガンマ(IFN-ガンマ)、IFN-アルファ、並びに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子である。
【0068】
自己免疫疾患は、好ましくは、関節炎、好ましくは、関節リウマチである。炎症促進性サイトカインに特異的な結合分子を含むヒドロゲル粒子は、関節炎、好ましくは、関節リウマチにおける関節症状を治療するために特に好適である。
【0069】
疾患は、好ましくは、関節リウマチ、クローン病、喘息、細菌感染、敗血症、全臓器不全、癌、または移植拒絶反応である。疾患は、好ましくは、培養組織または臓器の移植を介して治療することができる疾患である。
【0070】
炎症促進性サイトカインに特異的な結合分子を含むヒドロゲル粒子は、関節炎症を治療するために特に好適である。
【0071】
過剰活性免疫系、癌、または過剰活性ホルモンおよび/若しくはサイトカイン産生細胞を有する対象を治療する方法であって、それが必要とされる対象に、本明細書に記載のヒドロゲル粒子または前記ヒドロゲル粒子を含む医薬溶液若しくは組成物を投与することを含む方法も提供される。投与は、好ましくは、局所における注射によるものである。好ましくは、腫瘍、炎症の特定部位、例えば、関節炎の関節である。炎症は、好ましくは、関節炎症である。
【0072】
マイクロ粒子は、高度に血管新生した区域、例えば、肝臓中に移植される場合、全身治療、または「インビボ透析」に使用することができる。例えば、門脈中での注射により、マイクロ粒子は肝臓の毛細血管床中で積層し、そこで、次いでそれらが血液から有害な/「不所望な」サイトカインを枯渇させ得る。この状況において、血液からアレルゲン、ヒスタミンまたはアレルギー産生サイトカインを捕捉することにより、これらをアレルギーの治療に使用することもできる。血管内注射は、肺の毛細血管床中での効率的な保持ももたらし、それを使用して例えば、炎症の緩和により疾病負荷を軽減することもできる。
【0073】
細胞生物学の研究において、マイクロ粒子を使用して細胞、組織培養物、または培養組織から特異的成長因子またはサイトカインを枯渇させることができる。これは、例えば、細胞同時培養物における細胞または細胞タイプのクロストークに対する厳密な制御を可能とする。
【0074】
サイトカインシンクは、(慢性)炎症に対する予防的治療として術中/術後に使用することもできる。注射に加え、親和性マイクロ粒子は、消化管の治療剤として最適化することもできる(例えば、腸内フローラ/高機能プロバイオティクスの調節)。獣医学的目的のため、の成長因子/抗生物質を全身枯渇させてから食肉/食品汚染を最小化する処理を行う。本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、点眼薬、局所使用(クリーム剤/ローション剤)において使用することができる。多機能性サイトカインシンクまたは別々のサイトカインシンクの混合物を使用する組み合わせアプローチを使用することができる。血液からのサイトカインの特異的な枯渇を可能とする、血液吸着装置、例えば、CytoSorb中の樹脂の代替物として使用することができる。
【0075】
注射は、腫瘍、炎症区域内、静脈内、筋肉内、腹腔内注射などであり得る。
【0076】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子のインビトロ投与は、流体を送達する任意の好適な手段、例えば、密閉可能なオリフィスを有する容器を用いて実施することができる。例えば、印刷ノズルまたは印刷装置である。
【0077】
生物系中の可溶性生物分子のバイオアベイラビリティを低減させる方法であって、前記系に本明細書に記載のヒドロゲル粒子を提供することを含み、生物分子は、前記ポリマーネットワークに接近し得る流体力学半径を含み、前記結合分子は、前記生物分子に結合し得る方法がさらに提供される。生物系は、インビトロ細胞培養系であり得る。このような系は本質的に密閉され、ヒドロゲル粒子に局所的環境を提供する。粒子は、培養培地から1つ以上の不所望な可溶性タンパク質性因子を枯渇させるために特に好適である。成長が望まれない場合、因子は、培養されている細胞のタイプに応じた可溶性成長誘導因子であり得る。非限定的な例は、EGFおよびインスリン様成長因子である。成長が望まれる場合、因子は、培養されている細胞のタイプに応じた可溶性成長阻害因子であり得る。例えば、幹細胞を培養し、分化させる場合、培養物から、不所望な系統への分化を誘導する分化因子を枯渇させることにより所望の系統以外への分化を阻害することが有利であり得る。本発明はまた、生物系中の生物分子のバイオアベイラビリティを低減させるための、本明細書に記載のヒドロゲル粒子、医薬溶液または組成物の使用を提供する。
【0078】
生物系は、ヒトでも非ヒト動物でもよい。生物系は、好ましくは、1つ以上の臓器から構成される臓器チップ、またはエクスビボ様式でヒト生物学の再現を目的とする培養生理学的系でもよい。
【0079】
生物系中の生物分子のバイオアベイラビリティを低減させる方法であって、前記系に本明細書に記載のヒドロゲル粒子を提供することを含み、前記生物分子は、200ダルトン~150キロダルトンの分子量を有し、前記結合分子は、前記生物分子に結合する方法も提供される。
【0080】
サイトカインシンクとしての、本明細書に記載のヒドロゲル粒子の使用も提供される。
【0081】
本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、多孔性表面および第1の内部ポリマーネットワーク中で固定化されている結合分子を含む第1のポリマーネットワークを有し得る。多孔性表面中の細孔は、約0.1ナノメートル(nm)~1000nmの平均断面径を有し得る。多孔性表面中の細孔は、好ましくは、0.5~1000nm;好ましくは、2~300nm;好ましくは、2~100nm、より好ましくは、5~50nmの平均断面径を有する。
【0082】
IgG抗体は、典型的には、150kDaの分子量および10nmの範囲の断面径を有する。このような分子は、100nmの細孔を有するヒドロゲル粒子中に容易に拡散し得る。IgG分子は、約5.5nmの流体力学半径を有する。
【0083】
粒子または細孔の断面径は、その最長軸に対して垂直に切断することにより形成される表面の直径である。表面がほぼ円形でない場合、直径は、断面上の2つの対向する点間の最長距離の長さおよび最短距離の長さの和の半数である。断面は、典型的には、最も幅広の点におけるものである。
【0084】
本明細書に示される断面径は、水和ヒドロゲル粒子の、またはその中の直径を指す。好ましくは、pH7~8の生理食塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水pH7.4を用いる。
【0085】
ぺプチドは、タンパク質よりも少数のアミノ酸を有する。ぺプチドとタンパク質との間の異なるサイズは、任意であることが多い。本発明において、ぺプチドは、2~50個のアミノ酸からなる分子と定義される。タンパク質は、50個超のアミノ酸を有する分子である。
【0086】
生物分子は、生物体により産生され、または産生することができる分子である。ぺプチドおよびタンパク質は、それらが人工的に合成される場合でも本発明において生物分子とみなされる。
【0087】
一部の実施形態において、ヒドロゲルは、例えば、標的生物分子に向かう粒子の「シンク」機能に加え、分子の徐放を提供するために、粒子外に拡散し得る分子をさらに含み得る。一実施形態において、ビオチンまたはビオチン化分子によるデスチオビオチン化分子の置換を、デスチオビオチン化分子のオンデマンドおよび/または制御放出に使用して、例えば、その局所的機能を遮断し、またはそのオンデマンドおよび/若しくは制御放出を達成することができる。
【0088】
明確性および正確な説明の目的のため、特徴部は、同一または別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載される特徴部の全部または一部の組合せを有する実施形態を含み得ることが認識される。
【実施例
【0089】
とりわけi)VHHのインビボ適用および生物学的安定性;ii)VHH機能化ヒドロゲル粒子の製作並びにそのインビトロおよびインビボ適用;並びにiii)中空/コア-シェルヒドロゲル粒子の製作およびそのネットワークのメッシュサイズまたは分子量カットオフの計測を説明する3つの実施例を提供する。
【0090】
実施例1
数週間の期間にわたりサイトカインシンクとして機能するヒドロゲルコンジュゲートVHHの能力は、コンジュゲートVHHが体内でそのような長い期間、生物学的に活性のままであることを要求する。体内でのVHHの安定性を試験するため、本発明者らは、マウスに、骨中のヒドロキシアパタイトに、および成長因子BMP7に同時に結合する二機能性VHH(バイヘッド)を注射した。
【0091】
材料および方法
BMP7を標的化するVHHのライブラリー構築および選択
全ての免疫は、Utrecht University動物実験倫理委員会により承認された。2頭のラマを、組換えヒトBMP7(R&D systems、#354-BP/CF)により免疫した。抗原をアジュバントStimune(CEDI Diagnostics,Lelystad,the Netherlands)と混合し、0、14、28および35日目に筋肉内注射した。44日目、RNA抽出およびライブラリー構築のために末梢血リンパ球を単離した。VHHファージディスプレイライブラリーを既に記載のとおり生成し[1~3]、大腸菌(E.colli)株TG1[supE hsd_5 thi(lac-proAB)F(traD36 proAB_lacIq lacZ_M15)]にエレクトロポレーションにより移した。
【0092】
BMP7に結合するファージを、パニング法を介して選択した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)中の減少濃度のBMP7(5μg、2μgおよび0.2μg)を、MaxiSorpプレート(Nunc,Thermo Scientific)のウェル中で4 において一晩コーティングした。約1010コロニー形成単位(cfu)のファージを、コーティングしたBMP7と室温(RT)において2時間インキュベートし、PBS中の4%のMarvel(乾燥無脂肪乳、Premier International Foods)によりブロッキングした。完全に洗浄した後、BMP7に結合するファージを、それらを100mMのトリエチルアミン(TEA)中でRTにおいて15分間中でインキュベートすることにより溶出させた。溶出させたファージを、1MのTris-HCl、pH7.5の添加を介して直ちに中和した。選択されたファージのDNA情報を、大腸菌(E.coli)TG1株による感染および寒天プレート上のアンピシリン耐性についての後続の選択により、レスキューした。バクテリオファージ遺伝子IIIを有する融合タンパク質としてVHHを発現する組換えバクテリオファージを得るため、レスキューされたTG1大腸菌(E.coli)を対数期まで成長させ、次いでそれらにヘルパーファージVCSM13(Stratagene,La Jolla,CA,USA)を感染させた[4]。ファージ粒子をポリエチレングリコール(PEG)により沈殿させ、上記のとおりBMP7によりコーティングされたウェル上で2回目の選択ラウンドにおいて使用した。2回目の選択ラウンドからの単一コロニーから選択されたファージを、シーケンシングした(Macrogen)。いくつかのVHH候補クローンのうち、さらなる特徴付けのための分析後に選択されたものをVHH G7(G7)と命名した。
【0093】
HAを標的化するVHHの選択
HAに結合するVHHを、非免疫ラマVHHファージライブラリー(BAC BVにより寄贈されたもの)から選択した。非免疫ライブラリーの構築は既に記載されている[5]。2ラウンド選択をHAプレートに対して実施した。約1.5×1.5mmの寸法および0.1mmの厚さの純粋HAプレートが、Plasma Biotal Limited,UKにより供給された。ファージを96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中で3つのHAプレートとインキュベートした。その後の手順は、VHH G7選択と同様であった。最後に、VHH-MA10(MA10)と命名された1つのVHHをさらなる試験のために選択した。
【0094】
バイヘッドG7-MA10を、BMP7に結合するVHH、G7、およびHAに結合するVHH、MA10をコードするcDNAの遺伝子融合により構築した(図5)。PCRを使用してVHH配列を増幅させた。異なるプライマーセットを設計してN末端において局在するVHH G7、およびC末端において配置されるVHH MA10を増幅させて二価VHHを生成した。(M13Rev:GAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGGG;5GSBamRev:AGTAGGATCCGCCACCTCCTGAGGAGACCGTGACCTGGGTCCC;5GSBamFwd:TCTTGGATCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGG;TVSSRev:TGAGGAGACGGTGACCTGGGTCCC)。N末端VHHの3’およびC末端VHHの5’におけるプライマーは、ペンタぺプチド「Gly-Gly-Gly-Gly-Ser」として表されるフレキシブル配列(GSリンカー)をコードした。プライマーは、ユニーク制限部位(BamHI)を含有した。PCR増幅後、生成された断片を、N末端において局在するVHHについてはユニークN末端制限部位(SfiI)およびBamHIにより、並びにC末端において局在するVHHについてはBamHIおよびユニークC末端制限部位(BstEII)により消化した。断片を発現ベクターpMEK222中にライゲートし、それをSfiIおよびBstEIIにより消化し、その後にそれらを発現のために大腸菌(E.coli)中に形質転換した。
【0095】
大腸菌(E.coli)株TG1をプラスミドの維持、ファージによる感染およびタンパク質の発現に使用した。以下のアッセイにおける検出目的のため、異なるタグを有する2つのベクターを使用してVHHを特異的に検出した。したがって、個々に選択され、単離されたVHHのDNA情報を、C末端MycおよびHisタグを含有するプラスミドpUR8100(MA10について)またはpMEK219(G7について)、並びにC末端FLAGおよびHisタグを含有するpMEK222中にサブクローニングした。大腸菌(E.coli)TG1を、2%(w/v)のグルコースおよび100μg/mlにおけるアンピシリンを含有するルリアブロス(LB)または酵母エキスおよびトリプトン(YT)培地中で成長させた。VHHを、非静止条件下で37℃における4時間のlacプロモーターのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導により大腸菌(E.Coli)TG1から産生した。VHHタンパク質をペリプラズム画分から、コバルト親和性クロマトグラフィー(TALON His-タグ精製樹脂、ClonTech)によりC末端Hisタグを介して精製した。精製VHHを、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した。最終VHH濃度を、280nmにおけるUV吸収(NanoDrop 1000分光光度計、Thermo Scientific)および理論質量吸光係数に基づき決定した。
【0096】
VHH結合特異性
精製VHH(G7、MA10、G7-MA10)の結合特異性を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)結合アッセイにおいて試験した。骨へのMA10の結合をマウス胎児中足骨においてさらに試験した。
【0097】
BMP7へのVHH-G7またはバイヘッドG7-MA10の結合特異性
MaxiSorpプレートウェルを、PBS中のBMP7(30nM)により4℃において一晩コーティングし、その後にそれらをPBS中の2%のBSAによりRTにおいて2時間ブロッキングして非特異的結合部位をブロッキングした。続いて、ウェルを、PBS中の1%のBSA中のVHHの段階希釈物(0~7μMの範囲)とRTにおいて2時間インキュベートした。ウェルをPBS tween(PBST)およびPBSにより洗浄した。結合したVHHを、ウサギ抗VHH血清(K976)およびペルオキシダーゼにカップリングしているロバ抗ウサギ抗体とのインキュベーションにより検出した。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の量を、テトラメチルベンジジン(TMB、1-Step Ultra TMB-ELISA、Thermo Scientific)の添加により発色させた。反応をH2SO4の添加により停止させ、450nmにおいて計測した(マイクロプレートリーダー)。解離定数(Kd)を、実験データと特異的結合モデルとの後続の関連付けから得た。データをVHHなしの条件に正規化した。
【0098】
HAに対するVHH-MA10またはバイヘッドG7GS10MA10の結合特異性
3つの純粋HAプレートを含有するマイクロタイタープレートウェルを、PBS中の2%のBSAによりRTにおいて2時間ブロッキングして非特異的結合部位をブロッキングした。以降のステップはBMP7に対するG7と同様に実施した。
【0099】
VHH-MA10は、マウス胎児中足骨に結合する
妊娠17.5日目に、マウス胎児中足骨をFVBマウス胚(時期対応(time-paired)、Harlan)から単離した。(動物実験は、地域動物倫理委員会により承認された)。単離後、中足骨を24ウェルプレートのウェル中で、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび1%のGlutamax(Invitrogen)が補給された200μlのα-MEM中で加湿雰囲気および5%のCO2中で37℃において48時間個々に培養した。この平衡化期間後、中足骨をVHH(1μg/ml)の存在下で加湿雰囲気および5%のCO2中で37℃において2時間インキュベートした。インキュベーション前に可視化を可能とするため、VHH MA10および対照VHH 1B5を、Alexa Fluor647により製造業者のプロトコル(Invitrogen)に従って無作為に標識した。これは、VHH MA10-647および1B5-647をもたらした。PBSによる十分な洗浄後、中足骨をBD Pathway(BD Biosciences)により628±40nmの励起フィルタおよび692±40nmの発光フィルタを用いて蛍光について評価した。
【0100】
HAおよびBMP7に対するバイヘッドG7GS10MA10の二重結合特異性
本発明者らは、二価VHHのG7部分がHAプレート上に固定化された後のBMP7に依然として結合し得るか否かをさらに試験した。この目的のため、純粋HAプレートを、それらを2%のBSAにより2時間ブロッキングし、続いて4%のMarvel(Marvelオリジナル乾燥無脂肪乳)により1時間ブロッキングした後、PBS中の1%のBSA中の段階濃度のVHH(0~7μMの範囲)とRTにおいて2時間インキュベートした。続いて、HAプレートをhBMP7(300ng/ml)およびマウス抗hBMP7(1μg/ml)抗体とRTにおいて1時間インキュベートした。これらのステップ間で、ウェルをPBSTおよびPBSにより洗浄した。結合した抗hBMP7を、PBS中の1%のBSA中のHRPにカップリングしているロバ抗マウス抗体とのインキュベーション(1時間、RT)により検出した。HRPの量を、H22の存在下でOPDの添加により定量した(30分間、RT)。反応をH2SO4の添加により停止させた。後続の計測を490nmにおいて実施した。
【0101】
VHH G7およびバイヘッドG7-MA10の生物学的活性
アルカリホスファターゼ(ALP)アッセイ
C2C12細胞系を骨形成分化に使用した。細胞を10%のウシ胎児血清(FBS、Cambrex)、100U/mlのペニシリン(Gibco)および100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)が補給されたDMEM(Gibco)中で培養し、37℃において加湿雰囲気および5%のCO2中でインキュベートした。分化アッセイを実施するため、細胞を10,000個の細胞/cm2の密度において播種した(0日目)。コンフルエンス到達時(4日目)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma Aldrich)を用いて細胞を3日間培養し、VHH G7(1μg/ml)またはG7GS10MA10の存在下または不存在下でBMP7(300ng/ml;R&D Systems)により刺激した。7日目、細胞をPBSにより洗浄し、CDPStar溶解緩衝液(Roche)により溶解させた。ALP活性を評価するため、細胞溶解物をCDPStar試薬(Roche)に添加し、Vectorマイクロプレートルミノメーター(Promega)を使用して発光を計測した。発光単位をDNA含有量について補正した。製造業者のプロトコル(CyQuant細胞増殖アッセイキット、Invitrogen)に従う増殖アッセイを介してDNA濃度を決定した。
【0102】
ALP染色およびイメージング
純粋HAプレートを96ウェルプレート(平底)中に配置し、70%のエタノールにより2時間滅菌した。C2C12培養培地をウェルに2時間添加した。バイヘッドVHH(1μM)をウェルにPBS中の1%のBSA中で添加し、RTにおいて2時間保持した。hBMP7(300ng/ml)をPBS中でウェルに添加し、2時間放置した。これらのステップ間で、ウェルをPBSにより洗浄した。C2C12細胞を10,000個の細胞/ウェルの播種密度において、アスコルビン酸と一緒にウェルに添加した。3日後、HAプレート上でのALP発現をSigmaアルカリホスファターゼキットによりプロトコルに従って決定した。ヌクレアファストレッドにより細胞核を対比染色した後に実体顕微鏡により画像を撮影した。
【0103】
インビボ実験におけるVHH
近赤外IRDye800CW(IR)によるMA10およびバイヘッドG7GS10MA10の標識
石灰化骨マトリックスへのVHH MA10およびバイヘッドG7GS10MA10結合の有望な結果に基づき、インビボマウスモデルにおけるさらなる検出のために近赤外IRDye800CWを選択してVHHを標識した。VHH J3を非HA結合対照として使用した。VHHのC末端の部位特異的標識からなる直接標識方針を使用して抗原-抗体相互作用の干渉を回避した。これは、IRDye800CWを含有するマレイミドにコンジュゲートすることができるVHHのC末端における不対システインの遺伝子導入を介して達成された(MA10-CYSまたはG7GS10MA10-CYS)。タンパク質モデリングのためにオンラインプログラムI-TASSERを使用してVHH MA10-CYSおよびG7GS10MA10-CYSをモデリングした[6~8]。得られたVHH MA10-IRおよびG7GS10MA10-CYS-IRを、HAへの結合またはHAおよびBMP7への同時の結合について試験して遺伝子改変および標識がVHHの機能を妨害しないことを裏付けた。
【0104】
MA10のインビボ性能
石灰化骨を標的化するMA10の可能性を評価するため、MA10-IRをbalb C nu/nuマウス(Charles River,France)の2つの群において静脈内注射した。一方の群にVHH MA10-IR(70μg/100μl)を注射し、他方に陰性対照VHH J3-IR(70μg/100μl)を注射した。PEARL Impulseイメージングカメラ(Li-Cor.Lincoln,Nebraska)を使用してマウスをイメージングした。マウスを2%のイソフルランにより麻酔し、注射の0、1、3、24、48および72時間並びに7、16および20日後において腹部および背部位置においてイメージングした。結果をPearl Impulseソフトウェア3.01により分析した。注射の20日後にマウスをCO2により屠殺した。臓器および骨格を単離し、イメージングした。
【0105】
G7GS10MA10のインビボ性能
この試験は4つの実験群を含む。それぞれの群からの6匹の動物を使用して骨およびBMP7に同時に結合したバイヘッドの二重活性を計測し、したがって、BMP7はヒドロキシアパタイトを標的化するバイヘッドにより骨区域に指向された。群1からのマウスにIR標識バイヘッド(20ug/100ul)を注射し、群2からのマウスにBMP7のみ(15ug/100ul)を注射し、群3からのマウスにIR標識バイヘッドおよびBMP7(20ugのバイヘッドおよび15ugのBMP7/100ul)の混合物を注射し;混合物を注射の2時間前に調製した。群4にPBS陰性対照に注射した。20日目(屠殺24時間前)、それぞれの群の3匹のマウスは、BMP7(15ug/100ul)の別の注射を受容した。IRイメージングを規則的な時間の間隔において実施した:腹部および背部位置において0日目、2時間、24時間、72時間、7日目、14日目、21日目。全ての群を注射21日後に屠殺し、多数の臓器および骨格を回収し、イメージングした。
【0106】
IR-バイヘッド注射マウスの骨の顕微鏡画像
骨内部の蛍光シグナル位置を検出するため、メチルメタクリレート(MMA)包埋後に顕微鏡イメージングを実施した。試料スライドを作製するため、骨格試料を屠殺の24時間後に10%のホルマリン中で固定した。試料をPBSによりリンスし、組織処理装置中に置いて70%のエタノールにおいて4時間、80%のエタノールにおいて4時間、90%のエタノールにおいて4時間、96%のエタノールにおいて4時間、100%のエタノールにおいて4時間、および100%のエタノールにおいて4時間脱水した。脱水された骨格をMMA溶液(135mlのK-プラスト(plast)A、15mLのK-プラストB、1.5gの開始剤)と4℃において1週間インキュベートし;溶液を2日ごとに交換した。MMAが骨格に完全に浸潤したら、MMA包埋をMMA溶液とのインキュベーションにより4℃において一晩実施し、次いでMMAが硬化するまで37℃において水浴に供した。MMA包埋骨格から300μmの切片をダイアモンドブレード(LEILA SP1600)によりスライスし、顕微鏡に接続されたOdyssey近赤外イメージングシステムを使用してイメージングした。
【0107】
IR-バイヘッド注射マウスの骨格についての免疫化学検査
注射されたBMP7がバイヘッドにより骨組織に指向され、その後にBMP7シグナル伝達をトリガーしたか否かを検出するため、ウサギ源抗VHH(QVQ)、抗BMP7(Peprotech)および抗SMAD1(Santa Cruz)抗体を、免疫化学検査の目的に使用した。EDTA溶液(溶液を1週間ごとに交換)中での3週間の脱灰後、注射されたマウス骨格をパラフィン中で包埋し、5μmの切片をスライスした。スライドをキシレン中で脱パラフィン化し、等級化エタノールにより再水和させた。抗原をクエン酸緩衝液(10mM pH6.0)によりマイクロ波中で2分間賦活化させ、次いでRTに冷却した。これに続き、内因性ペルオキシダーゼを3%のH2O2溶液によりRTにおいて15分間ブロッキングした。PBS中の5%のBSA中での1時間のブロッキング後、試料を、ブロッキング緩衝液中で希釈された一次特異的抗体(抗VHH 10ug/ml、抗BMP7 10ng/ml、抗SMAD1 10ug/ml)およびIgG対照抗体と4℃において一晩インキュベートした。次いで、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Abcam)を30分間、およびPBS中のHRP-strep(2ug/ml)を30分間添加した。試料をDAB溶液(Abcam)中で10分間インキュベートし、ヘマトキシリンを使用して核を10秒間対比染色した。試料をそれぞれのステップ間でPBSにより3回洗浄した。Nanozoomerを使用して画像を撮影した。
【0108】
統計的分析
Windows版GraphPad Prismバージョン5.00、GraphPad Software(San Diego,California)を使用して統計的分析を実施した。分析は、全ての試料のうちまたは試料と対照との間の一元ANOVAおよびテューキーの事後検定(p<0.05)に基づいた。エラーバーは、標準偏差を示した。
【0109】
結果
BMP7を標的化するVHH(VHH-G7)の産生および特徴付け
組換えヒトBMP7により免疫されたラマのPBLから単離されたRNAから構築されたファージディスプレイライブラリーからVHHを選択した。2回の選択ラウンド後、空のウェルと比較して抗原コーティングウェル上で明確な濃縮が見出された。BMP7への結合を使用していくつかのクローンをさらなるスクリーニングのために選択した。190個のVHHクローンの2つのマスタープレートから、制限パターンおよびELISA結合アッセイに基づきグループ化することにより個々のクローンの選択を縮小させた。VHH G7(G7)と命名された1つのクローンを、結合特異性に基づきさらなる特徴付けのために選択した。遺伝子配列を発現プラスミド中にサブクローニングし、材料および方法に示されるとおり産生し、精製した。クローンG7の配列を図4に示す。組換え産生VHHの純度を、SDS-PAGEおよびクーマシーブリリアントブルー染色により評価した(図4)。16kDaのサイズを有する明確なバンドが観察された。hBMP7へのVHH G7の特異的結合を裏付けるため、ELISAを実施した(図4)。データは、VHH G7がhBMP7に2.2nMのKdで結合することを示した。
【0110】
HAを標的化するVHH(VHH MA10)の産生および特徴付け
非免疫ファージライブラリーからVHHを選択した。選択は、96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に配置されたHAプレートに対して実施した。合計2回の選択ラウンドをHAプレートに対して実施してHAプレートに結合するファージの濃縮を達成した。HAへの結合を示した6つの単一クローンをスクリーニングの間に選択した。VHH発現および配列決定後、クローンMA10をさらなる特徴付けのために選択した。TALONを使用してVHH MA10を大腸菌(E.coli)TG1のペリプラズム画分から精製した。VHHのサイズおよび純度をSDS-PAGEにより評価し、16kDaの単一バンドが検出された。HAへのVHH MA10の特異的結合をELISAにより試験した。VHH MA10は、Kd=73.9nMの見かけの親和性で用量依存的にHAへの結合を示した。
【0111】
次に本発明者らは、外植された胎児マウス中足骨を使用して石灰化骨の可視化にMA10を使用することができるか否かを試験した。このため、VHH MA10をAlexa fluor647により標識した。無関連VHHを陰性対照VHH 1B5として使用し、それも標識した。得られた標識効率は、VHH MA10-647および1B5-647についてそれぞれ30%および50%であった。次に、中足骨を両方のVHHとインキュベートした。インタクト中足骨に対する蛍光顕微鏡観察により、VHH MA10-647が一次骨化中心の石灰化軟骨マトリックスに特異的に結合していることが明らかになった。さらに、石灰化骨マトリックスが沈着している発育中の骨襟への結合が観察された。対照的に、石灰化細胞外マトリックスへのVHH 1B5-647結合が強力に低減され、但し、石灰化および肥大軟骨の境界における一部の非特異的蛍光を除き、骨襟におけるわずかな蛍光を伴った。興味深いことに、Alexa Fluor647は、692±40nmの発光フィルタを使用していかなる有意な自己蛍光も示さなかった。
【0112】
バイヘッドG7-MA10の産生および特徴付け
生体材料表面の機能化において二重特異性を有するVHHの潜在性を探索するため、抗BMP7および抗HAからなる二重特異的VHHを構築した。材料および方法に記載のとおりPCRを使用して2つのVHHの遺伝子を結合させ(図5)、それらの間にリンカー配列を導入した(図5)。得られたバイヘッドVHHを図5に模式的に説明する。この構造は、ITASSERにより予測し、遺伝子融合が抗原結合に関与する相補性決定領域(CDR)の曝露に影響しないことを実証した[17~19]。G7GS10MA10の融合遺伝子を発現プラスミド中にサブクローニングし、材料および方法に示されるとおり産生し、精製した。図5に示されるとおり、産生されたバイヘッドVHHのサイズは、SDS-PAGEにより示されるとおり、16kDaの分子量を有する一価VHHの約2倍である30kDaの予測分子量を有した。
【0113】
二重特異的VHHにおけるMA10およびG7の組合せがHAへのバイヘッドVHHのMA10部分の結合、およびそれに応じてBMP7へのG7部分の結合に影響するか否かを示すため、ELISAを使用して結合特異性を決定した。図6に示されるとおり、バイヘッドVHHは、62.59nMのKdの見かけの親和性でHAへの特異的結合、および0.4nMのKdの見かけの親和性でhBMP7への特異的結合をそれぞれ示し、それは、HAおよびhBMP7についての個々の構成成分の親和性と一致する。バイヘッドVHHがさらにHAおよびhBMP7に同時に結合し得るか否かを示すため、最初にHAディスク上に固定化されたバイヘッドに対するhBMP7についての結合曲線を得た。示されるとおり、バイヘッドは、HAへの結合がhBMP7についてのG7の親和性を低減させたものの、HAおよびhBMP7の両方に結合し得た。
【0114】
VHH-G7またはバイヘッドG7-MA10 hBMP7の生物学的活性を、C2C12細胞において試験した。ALPは、骨形成分化の早期マーカーであり、それはhBMP7により強力に誘導される。ここで、本発明者らは、7日間の期間にわたるアルカリホスファターゼ活性(ALP)に対する、培養培地中のhBMP7の存在下または不存在下でのVHH-G7または二価G7-MA10の効果を決定した。ALP活性は、hBMP7の存在下で約400倍誘導された。興味深いことに、細胞をVHH-G7またはバイヘッドG7-MA10の存在下でhBMP7と同時処理した場合、ALP活性の明らかに優れた誘導が観察された。両方のVHHは、BMP7により誘導されるALP活性を177%で増加させた。G7とG7-MA10との間に有意差は存在しなかった。
【0115】
次に本発明者らは、hBMP7活性に対するバイヘッドG7-MA10の強化効果が、バイヘッドがHAに結合している場合に保存されるか否かを試験した。このため、C2C12細胞を、バイヘッドおよび/またはhBMP7とのプレインキュベーション後に純粋HAプレート上で培養した。HAプレートをステップ間でPBSにより広範に洗浄してから細胞を頂部上で播種した。対照と比較して、hBMP7によるHAディスクの前処理は、ALP活性をわずかに誘導した。ALP活性のかなり強力な誘導は、バイヘッドおよびBMP7の両方により前処理されたディスクにおいて見出された。これは、バイヘッドが生体材料表面上の培地からhBMP7を封鎖し得たことおよびこの局所的濃縮がC2C12細胞中でALP活性を誘導するために十分であることを示した。
【0116】
赤外線標識VHH MA10は、石灰化骨格に結合する
骨組織の最適なイメージングのためのプローブとしてのMA10の潜在性を評価するため、近赤外線標識を使用してMA10を標識し、MA10-IRを生じさせた。標識プロセスは、ELISAにより決定されたHAに対するVHHの結合特異性に影響しなかった。次に、ヌードマウスに尾静脈中でMA10-IRを静脈内注射し、注射後のいくつかの時点においてイメージングした。陰性対照としての非結合VHH J3-IRを用いてリターメイトを同一の手法で処理し、2つの群の画像を比較した。早期の時点において撮影された画像は、MA10-IR(注射7日後まで)の場合およびJ3-IR(注射3日後まで)の場合、マウスの全身にわたりIR蛍光を示した。20日目、蛍光標識は、J3-IR注射マウスとは対照的に、MA10-IRが注射されたマウスの骨格中で依然として検出可能であった。屠殺後、骨格および臓器を単離し、イメージングした。腹部および背部画像は、MA10-IRについて計測された高蛍光で輪郭が明確な骨格を示した。MA10-IRの特異的蓄積は、石灰化骨中で生じた。対照的に、骨格中でVHH J3-IRについて蛍光は計測されなかった。両方のVHHについて、肝臓、脾臓および腎臓は、20日後に蛍光を示す。蛍光は、両方の群について腎臓において明らかに可視的であった。明らかに、J3-IRは、MA10-IRよりもかなり速く身体からクリアランスされ、ヒドロキシアパタイトへの結合を介する骨格の標的化が体内のVHHの保持時間を少なくとも20日間まで大幅に拡張したことを示唆した。
【0117】
バイヘッドVHHは、ヒドロキシアパタイトの標的化によりhBMP7を骨に効率的に指向する
BMP7およびHAへの同時のバイヘッドG7-MA10の二重結合活性によりhBMP7を骨区域に指向させることができるか否かを評価するため、バイヘッドG7-MA10をIRにより標識してG7-MA10-IRにした。ELISA結果は、標識がHAに対するバイヘッドの結合特異性に影響しないことを示した。次に、hBMP7およびIR標識バイヘッドのミックスをマウス中に注射した。hBMP7のみまたは標識バイヘッドのみを対照として注射した。20日目(屠殺の24時間前)、BMP7の別の注射を実施した。早期の時点において、IR蛍光は全身に存在し;2週間後に蛍光シグナルは生存マウスにおいて計測することが困難であった。しかしながら、屠殺3週間後、蛍光は、標識バイヘッドを含有した群1および群3マウスの骨格または臓器、例えば、肝臓、脾臓および腎臓中で依然として検出可能であった。これは、バイヘッド-IRの特異的蓄積が石灰化骨において生じたことを意味する。標識バイヘッド注射マウスのシグナルは、標識MA10注射マウスと比較して弱いことが妥当である。それというのも、用量がVHH-MA10-IRのものよりも4倍低かったためである。骨内部の蛍光シグナル位置をさらに検出するため、顕微鏡イメージングを実施した。ほとんどの蛍光シグナルは骨梁に由来し、それはバイヘッドが活発な骨リモデリングの部位を標的化していることを強力に示した。
【0118】
免疫組織化学検査は、骨中のVHHの存在を裏付けた。マウスの半数に、屠殺1日前に成長因子BMP7を注射した。本発明者らは、免疫組織化学検査を実施して抗VHH抗体を使用してVHHを、および抗BMP7抗体を使用してBMP7を検出した。図6に示されるとおり、二機能性VHHの注射の20日後、ウサギ抗VHH抗体を使用した免疫組織化学検査は、石灰化ヒドロキシアパタイト含有骨および軟骨中のVHHの存在を実証する(左パネル、褐色染色)一方、予測されるとおり20日前にBMP7またはプラセボのいずれかが注射されたマウスにおいて染色は観察されなかった。20日目、マウスに屠殺1日前に尾静脈中でBMP7を注射した場合、免疫組織化学検査は、石灰化骨および軟骨中のBMP7の存在を実証した。BMP7染色は、抗VHH染色と同時局在した。さらに、20日前にBMP7またはプラセボが注射されたマウスにおいてBMP7は見出されなかった。この実験は、VHHを、マトリックスに適切に標的化される場合、体内で保持され得ることおよびVHHが生物学的に活性のままであることを実証する。これは、VHHがヒドロゲルマトリックスの骨格にコンジュゲートしている場合、および移植時、それらは、生物学的に活性のままであり、炎症促進性サイトカイン、成長因子、または成長因子アンタゴニストを長期間にわたる結合により依然として中和し得るという証拠を提供する。
【0119】
実施例2
材料
デキストラン(Dex;MW 15~25kg/mol-Mn 16kg/mol;凍結乾燥してから使用)、クロロギ酸4-ニトロフェニル(PNC;昇華してから使用)、LiCl(110℃において乾燥させてから使用)、チラミン(TA)無水ピリジン、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、トリフルオロ酢酸(TFA)、水酸化ナトリウム(NaOH)、N-Boc-1,4-ブタンジアミン(NH2-Boc)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、ビオチン-atto565、ビオチン-4-フルオレセイン(ビオチン-FITC)、6-アミノフルオレセイン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP、VI型)、過酸化水素(H2O2;阻害剤を有する)、ウシ胎児血清(FBS)、カルセインAM、エチジウムホモダイマー-1(EthD-1)、緩衝ホルマリン、Triton X-100、および全ての他の溶媒を、Sigma-Aldrichから購入した。スクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート(ビオチン-LC-NHS)をApexBioから購入した。N-ヒドロキシスクシンイミド-デスチオビオチン(EZ-Link NHS-デスチオビオチン)および4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)をThermo Scientificから購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をLonzaから購入した。ヌクレオシドを有する最小必須培地α(αMEM)、ペニシリンおよびストレプトマイシン、GlutaMAX、およびトリプシン-EDTAをGibcoから購入した。塩基性線維芽細胞成長因子(ISOKine bFGF)をNeuromicsから購入した。ファロイジン-AF647をMolecular Probesから購入した。ポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard184)をDow Corningから購入した。AquapelをVulcaviteから購入した。Novec 7500 Engineered Fluid中のPico-Surf1およびPico-Break1をDolomiteから購入した。ガスタイトシリンジ(Hamilton)、フッ素化エチレンプロピレンチューブ(FEP、内径250μm、DuPont)およびコネクタをIDEX Health and Scienceから購入した。低圧シリンジポンプ(neMESYS)をCetoniから購入した。
【0120】
Dex-TA-ビオチンの合成および特徴付け
最初に、既に記載のとおり[9、10]、デキストランをチラミンおよび1,4-ブタンジアミンにより機能化した。簡潔に述べると、デキストランをPNCにより活性化させ、続いてそれをチラミンおよびBoc保護1,4-ブタンジアミンにより置換し、TFAおよび3kDaの分子量カットオフを有する膜を使用する透析を使用した後、Dex-TA-NH2を20倍過剰のビオチン-LC-NHSと0.1Mの重炭酸緩衝液(pH約8.5)中で少なくとも1時間反応させることによりビオチンによりさらに機能化した。次いで、3kDaの分子量カットオフを有するスピンフィルタカラムを使用してDex-TA-ビオチンを精製し、濃縮した。DMSO-d6またはD2Oにおける1H NMR(AVANCE III HD NanoBay 400MHz、Bruker)を使用してDex-PNC、Dex-TA-NH2、およびDex-TA-ビオチンの良好な合成を確認した。100個のデキストラン無水グルコース環当たりのコンジュゲートチラミンおよびブチルアミン部分の数を、デキストラン(δ4.0~5.8ppm)およびチラミン基(δ6.66ppmおよびδ6.98ppm)からの積分シグナルの比、並びにデキストランおよびブチルアミン基(δ1.4~1.5ppm)の比をそれぞれ計算することにより決定した。100個のデキストラン無水グルコース環当たりのコンジュゲートビオチン部分の数を、チラミン基(δ6.66ppmおよびδ6.98ppm)およびカップリング6-アミノカプロン酸スペーサー(δ2.13)からの積分シグナルの比を計算することにより決定した。
【0121】
液滴マイクロ流体力学を使用するヒドロゲル粒子の産生および特徴付け
標準的なソフトリトグラフィ技術を使用して全てのマイクロ流体チップをPDMSおよびガラスから製造した。マイクロ流体ミキサ、液滴生成器、およびH22拡散ベース架橋チップを、それぞれ約100、約25μm、および約100μmの高チャネルで製作した。Aquapelをチップ中で導入してから使用してチャネル壁の疎水性を確保した。FEPチューブを使用して、チップを互いにおよびガスタイトシリンジに連結し、それを低圧シリンジポンプにより制御した。2%(w/w)のPico-Surf1を含有するNovec 7500 Engineered Fluidを使用して全てのエマルジョンを産生した。ヒドロゲル前駆体マイクロ液滴を生成するため、PBS中5%(w/v)のDex-TA-ビオチン(約1mMのビオチン)および22U/mlのHRPを含有したPBS、並びにPBS中5%(w/v)のDex-TA(ビオチンを有さない)および22U/mlのHRPを含有したPBSをマイクロ流体ミキサ中で合わせ、続いて油を含有する界面活性剤を1:6の流動比において使用して連結液滴生成器中で乳化した。ヒドロゲル前駆体マイクロエマルジョンを14μl/分の総流量において連結拡散プラットフォームを介して流動させ、それに逆方向でH22流動も30μl/分の流量において供給した。H22は、フィードチャネルからPDMS壁を通りゲル前駆体マイクロエマルジョン中に拡散し、それにより既に記載のとおり[11]、チラミンコンジュゲートポリマーの酵素的架橋をトリガーした。界面活性剤不含フルオロカーボン油により3回洗浄し、続いて保存のための0.05%(w/v)のNaN3並びに凝集およびスタッキングを防止するための1%(w/v)のBSAを含有するPBSの存在下でPico-Break1を補給することによりマイクロエマルジョンを破壊した。実体顕微鏡セットアップ(Leica DFC300 FXカメラを備えるNikon SMZ800)を使用してオンチップ液滴を可視化した。位相差顕微鏡観察を使用して賦活化ヒドロゲル粒子をイメージングし、Matlabソフトウェアを使用してサイズ分布を計測した。
【0122】
ヒドロゲル粒子の機能化および特徴付け
Dex-TA-ビオチンヒドロゲル粒子をPBS中の1%(w/v)BSAからなる過剰の洗浄緩衝液により3回洗浄してNaN3を除去した後、それらを洗浄緩衝液中で1μMのneutravidinと連続的にインキュベートし、洗浄緩衝液により洗浄し、洗浄緩衝液中で1μMのビオチン化またはデスチオビオチン化目的分子とインキュベートし、洗浄緩衝液により再度洗浄した。必要により、機能化プロトコルを繰り返して例えば、図7にさらに規定されるとおりコア-シェル機能化ヒドロゲル粒子を作出した。蛍光顕微鏡観察(EVOS FL)、蛍光共焦点顕微鏡観察(Zeiss LSM510およびNikon A1+)、および光退色後蛍光回復(FRAP;Zeiss LSM510)のため、ヒドロゲル粒子を、ビオチン-atto565、ビオチン-FITC、および/または1Mの重炭酸緩衝液(pH約8)中でデスチオビオチン-NHSを6-アミノフルオレセインにカップリングさせることによりインハウスで産生したデスチオビオチン-FITCにより機能化した。時間に応じて、退色前の退色速度補正平均強度について正規化されたバックグラウンドを減算した退色スポットの蛍光強度をプロットすることによりFRAP曲線を得、退色速度は、退色前の平均強度について正規化された退色スポットに加え、試料の蛍光強度を正規化することにより決定した。デスチオビオチン-ビオチン置換を特徴付けするため、Dex-TA-ビオチンヒドロゲル粒子をneutravidinにより連続的に機能化し、洗浄し、デスチオビオチン-FITCにより機能化し、洗浄し、ビオチン-atto565により機能化した一方、上記のとおり蛍光共焦点顕微鏡観察を使用してイメージングした。ImageJソフトウェアを使用して全ての蛍光画像の強度を計測した。
【0123】
細胞単離および拡大。ヒト間葉幹細胞(MSC)を新鮮骨髄試料から単離し、既に記載のとおり培養した[12]。患者材料の使用は、Medisch Spectrum Twenteの地域倫理委員会により承認され、書面によるインフォームドコンセントを全ての試料について得た。簡潔に述べると、骨髄吸引液中の有核細胞を計数し、組織培養フラスコ中で500,000個の細胞/cm2の密度において播種し、αMEM中の10%(v/v)のFBS、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン、1%(v/v)のGlutaMAX、0.2mMのアスコルビン酸、並びに1ng/mlのbFGF(新鮮添加)からなるMSC増殖培地中で培養した。細胞がほぼコンフルエンスに到達した時、0.25%(w/v)のトリプシン-EDTAを37℃において使用して細胞を剥離し、続いて実験のために継代培養し、または使用した。
【0124】
モジュラー組織工学。モジュラー組織構築物を産生するため、約1mMのビオチンを含有したDex-TA-ビオチンマイクロゲルのシェルを最初にc(RGDfK)ぺプチドにより永久的に機能化した。この目的のため、図7にも示されるとおりマイクロゲルを洗浄緩衝液中の1μMのneutravidinと30分間インキュベートし(上記セクション「マイクロゲルの機能化および特徴付け」参照)、洗浄し、続いて、洗浄緩衝液中の1μMのビオチン化環式RGDぺプチドビオチン-(PEG)2-c(RGDfK)と60分間インキュベートした。同一の機能化プロトコルにより処理されたDex-TA(すなわち、ビオチンを有さない)マイクロゲルおよびビオチン-(PEG)2-c(RADfK)により機能化されたDex-TA-ビオチンマイクロゲルを対照として使用した。次いで、細胞接着マイクロゲルを細胞と、既に記載のとおり[13]、脱塩水中の3%(w/v)の無菌アガロースをインハウス製作モールド上にキャスティングすることにより産生された非接着マイクロウェルチップ中に同時播種した。簡潔に述べると、MSCおよびマイクロゲルを、3000個のマイクロウェル(200×200×200μm)を含有するアガロース構築物(1.9cm2)中にマイクロウェル当たり50単位(すなわち、細胞数+ゲル数)の播種密度において均質に播種した。モジュラーマイクロ組織を増殖培地中で培養し、蛍光(共焦点)顕微鏡観察を使用して可視化した。C2C12BRA実験。PBS中の2μMのカルセインAM(生存)および4μMのEthD-1(死滅)により染色し、蛍光顕微鏡観察を使用して可視化することにより、細胞の生存率および代謝活性を分析した。追加の蛍光(共焦点)分析のため、構築物を最初にPBSにより洗浄し、10%の中性緩衝ホルマリンを使用して固定し、0.1%のTriton X-100を使用して透過処理し、続いて2.5U/mlのファロイジン-AF647および1μg/mlのDAPIと30分間インキュベートしてF-アクチンおよび核をそれぞれ染色した。
【0125】
統計:≧275個のマイクロゲルの直径を計測することによりマイクロゲルサイズ分布を得た。蛍光共焦点強度計測(FRAP計測を除く)を、条件ごとに≧5個のマイクロゲルに対して実施し、平均(neutravidin拡散実験の標本)または最大平均強度について正規化された平均±標準偏差(全ての他の実験)として報告した。条件ごとの≧20個のマイクロウェル中の細胞およびマイクロゲルの当業者の計数により細胞播種分布を得、マイクロウェル当たりの単位(細胞数+マイクロゲル数)の総平均数について正規化された平均±標準偏差として報告した。モジュラーマイクロ凝集体の直径、面積、真円度、および固体度を、ImageJの「面積」および「形の記述子」計測機能を使用して≧10個の構築物から得、平均±標準偏差として報告した。OriginProソフトウェアを使用して統計的有意性を分析するための線形回帰分析およびAVOVAとボンフェローニの事後検定を実施した。
【0126】
結果
本発明者らは、細胞適合様式で生化学的に調整することができるマイクロメートルサイズのヒドロゲル粒子(マイクロゲル)をエンジニアリングすることに着手した。この目的のため、生体不活性であり、生体適合性であり、容易に修飾可能であり、それにより、さらなる機能化のための完全なテンプレート材料として作用するポリマー骨格としてデキストランを選択した[14、15]。それぞれ、完全にオルソゴナルおよび細胞適合様式で酵素的に架橋させ、ビオチン/アビジン相互作用を介してさらに機能化させることができる反応性側基としてチラミンおよびビオチンを選択した[10、16、17]。既に記載のとおり[9、10]、デキストランポリマーにチラミンおよび1,4-ブタンジアミンを付与し(すなわち、Dex-TA-NH2)、次いで長鎖スペーサーを含有するアミン反応性ビオチン(ビオチン-LC-NHS)を使用してそれをさらに機能化した。1H NMRを使用して良好なDex-TA-ビオチン合成を裏付けた。デキストラン(δ4.0~5.8ppm)およびチラミン(δ6.66ppmおよびδ6.98ppm)からの積分シグナルの比並びにチラミンおよびカップリング6-アミノカプロン酸スペーサー(δ2.13)の比を計算することにより決定して、100個のデキストラン無水グルコース環当たりのコンジュゲートチラミンおよびビオチン部分の数は、それぞれ13および6つであった。チラミン機能化デキストランは、触媒としてのセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)および酸化剤としてのH22を使用してチラミン-チラミン結合の形成を介して現場で架橋させることができた。マイクロ流体液滴生成器を使用して、5%(w/v)のDex-TA-ビオチン(すなわち、約1mMのビオチン)および22U/mlのHRPから構成されるマイクロ液滴を生成した。本発明者らが近年報告した拡散ベースマイクロ流体架橋プラットフォーム[11]を使用してこれらのマイクロゲル前駆体液滴をH22の制御補給により硬化させた。これは、20.7±0.6μmの直径を有する単分散Dex-TA-ビオチンマイクロゲルの形成をもたらした。
【0127】
酵素的架橋後、ビオチン部分は、超分子ビオチン/アビジン複合体化を介して後続のオルソゴナル機能化に利用可能のままであった(すなわち、酵素的に架橋されたヒドロゲルネットワークに影響しない)。具体的には、2ステップアプローチを使用してビオチン化マイクロゲルを、それらを四価neutravidin(すなわち、アビジンアナログ)およびフルオレセイン標識ビオチン(ビオチン-FITC)とそれぞれインキュベートすることによりさらに機能化した。蛍光共焦点顕微鏡観察および光退色後蛍光回復(FRAP)は、ビオチン-FITCがDex-TA-ビオチンマイクロゲルにカップリングしたが、非機能化(すなわち、Dex-TA)マイクロゲルにカップリングしなかったことを裏付け、それは、Dex-TA-ビオチンマイクロゲルの良好な生成および機能性を検証した。最終機能化度は、マイクロゲル中のビオチンの濃度または四価neutravidinを介してカップリングさせるビオチン化官能基のタイプおよび量のいずれかを変更することにより調整することができた。マイクロゲル中のビオチン濃度を制御するため、本発明者らは、液滴生成器のインレットに連結させたマイクロ流体ミックスチップを使用してDex-TA-ビオチンおよびDex-TAヒドロゲル前駆体溶液の比を変えた。得られたマイクロゲル中のビオチン濃度は、ビオチン-FITC(すなわち、緑色)またはビオチン-atto565(すなわち、赤色)のいずれかをマイクロゲルにカップリングさせることにより計測して最終機能化度に線形相関した(R2=0.99)。或いは、生化学的組成は、ビオチン化FITCおよびatto565の比を変える一方、マイクロゲル中のビオチンの同一の濃度を維持することにより変更することができた。原則として、両方の方法を適用してマイクロゲルの生化学的特性を、それらの生体力学的特性を変更せずに調整することができた。
【0128】
次いで本発明者らは、目的分子を可逆的におよび連続的に提示し得るスマートマイクロゲルを作出することを目的とした。この目的のため、本発明者らは、超分子デスチオビオチン/アビジン複合体の可逆的性質を、デスチオビオチンをビオチンにより急速で高度に特異的な様式で置換することにより利用した。最初に、マイクロゲルにマイクロゲル中のフリービオチンに特異的に結合(Kd約10-15)する豊富な量のneutravidinを付与した。次いで、マイクロゲルを洗浄し(t=0分)、継続して蛍光共焦点イメージングを使用して継続的にイメージングして可視化し、デスチオビオチン結合および置換を経時的に定量した。neutravidin標識マイクロゲルを、マイクロゲル中の四価neutravidinの残りのフリー結合ポケットに結合(Kd約10-13)し得る1μMのデスチオビオチン-FITC(すなわち、緑色)とインキュベートした。蛍光強度がプラトーに到達した後(t約40分)、ビオチン-atto565(すなわち、赤色)を最終濃度の1μMまで導入した。ビオチンは、neutravidinとより強力に相互作用し(Kd約10-15)、それはビオチンによるデスチオビオチンの急速な置換をもたらした。デスチオビオチン-FITCの80%超が、ビオチン添加後の最初の10分以内にビオチン-atto565により置き換えられ、約95%が60分以内に置き換えられた。
【0129】
本発明者らは、マイクロゲルに永久的で空間的に制御されたシェル(すなわち、第2のポリマーネットワーク)を付与することを目的とした。具体的には、本発明者らは、マイクロゲルのシェルをビオチン化環式RGDぺプチドビオチン-(PEG)2-c(RGDfK)により機能化することにより、マイクロゲルが細胞と自己集合する一方、マイクロゲルのコア中のビオチンをさらなる現場機能化に利用可能のままとし(図7)、それにより粒子の環境からのコア中の分子を封鎖する一方、二次機能をシェルに提供することが可能となることを予測した。neutravidinの濃度およびインキュベーション時間を調整することにより、本発明者らは、マイクロゲル中へのその浸透深さを再現可能に制御することができた。この方針は、ビオチン化分子の後続のカップリングについての反応性基質として作用するneutravidinシェルの厚さを決定することにより、マイクロゲルの生化学的組成に対する2.5D制御を与えた。ビオチン-FITC(すなわち、緑色)標識および後続の蛍光共焦点イメージングを使用してこの拡散ベース空間的テンプレート化を可視化し、定量した(図7および図8)。シェル機能化後、マイクロゲルのコアは、長期neutravidinインキュベーションステップを有する機能化プロトコルを繰り返すことにより別の部分を付与することができるフリービオチンを依然として含有した。例えば、コア-シェル多機能性マイクロゲルは、図7に記載のマルチステップ機能化プロトコルを使用するシェル機能化を適用することにより容易に調製することができた。蛍光標識を使用するコア-シェル機能化プロトコルの有効性を裏付けた後(図7)、同一のコア-シェル機能化方針を使用してマイクロゲルのシェルにc(RGDfK)ぺプチドを永久的に付与してインテグリン媒介細胞接着を可能とし、ボトムアップ型自己集合を促進した。マイクロゲル中のビオチンおよび結果的にc(RGDfK)の濃度を約1mMに設定した。それというのも、これは細胞接着特性を有するヒドロゲルを提供するために有効であることが証明されているためである[18、19]。
【0130】
Dex-TA-ビオチンヒドロゲル粒子に、neutravidinの濃度およびインキュベーション時間を制御することにより調整可能な厚さの機能性シェルを付与することができた。実際、neutravidinは、ビオチン-FITC(すなわち、緑色:図8)を使用して実証されたとおり、ビオチン化目的分子の後続の係留のためのテンプレートとして作用した。
【0131】
或いは、シェルは、ヒドロゲル粒子産生後にヒドロゲル粒子の表面上で利用可能なチラミン部分の重合を介して機能化/保護することができる。
【0132】
デスチオビオチン(DTB)/ビオチン置換方針を使用して、本発明者らは、ビオチン化単一ドメイン抗体(VHH)をデキストラン-チラミン-ビオチンヒドロゲル粒子に結合させることができることを実証した(図9)。本発明者らは、ビオチンリンカーを介して遺伝子改変VHHを予め架橋させ、機能化デキストランベースヒドロゲルにカップリングさせた。個々のデキストランポリマーの架橋のために導入されるコンジュゲートに加え、それらの分子はビオチンコンジュゲートも含有する(図9)。ストレプトアビジン(または同様の分子)を多価(典型的には、四価)中間体として使用して、ビオチン化VHHをポリマー骨格に超分子相互作用で付着させる。
【0133】
指向カップリングを可能とするため、フリーCysをVHHのC末端テイル中に導入し、それにマレイミド化学を使用してビオチン分子をコンジュゲートさせる。このフリーCysを使用して、VHHは、デキストラン骨格において導入される感受性反応性基に直接カップリングさせることもできる。
【0134】
VHH機能化ヒドロゲル粒子は、局所的環境から成長因子(すなわち、サイトカイン)を枯渇させることにより細胞応答を妨害し得る(図10および図11参照)。材料および方法:C2C12 BREルシフェラーゼ細胞を成長培地(DMEM、20%のFBS、1%のペニシリンおよびストレプトマイシン)中で10.000個の細胞/cm2において播種した。24時間後、0.5%のFBSを含有する成長培地中で細胞を12時間飢餓状態にした。飢餓状態化に続き、飢餓培地中でBMP7(R&D systems、300ng/ml)により10~15時間刺激した。ヒドロゲル粒子を細胞培養物に添加する前、ヒドロゲル粒子を10%のPBS中で1時間インキュベートして非特異的結合をブロッキングした。BMP7と同時に、ヒドロゲル粒子を10倍過剰で添加した。刺激後、細胞を溶解させ、製造業者のプロトコル(Promega、ルシフェラーゼアッセイシステム)を使用してルシフェラーゼ発現を決定した。
【0135】
関節内注射後のヒドロゲルマイクロ粒子の長期保持も実証された。近赤外線標識デキストランコンジュゲートを使用して直径30μmのマイクロゲルを調製し、マウス膝の滑液腔中に注射した。3週間後、蛍光イメージングを使用してマイクロゲルを生存動物中で依然として追跡することができ、それはマイクロゲルが注射膝中に依然として存在することを示し、および組織学的染色を使用して死後に追跡することができた(図12)。マイクロゲルは、パネルcの左側における暗紫色ドットとして滑膜中で可視的となる(図12)。
【0136】
ある用途において、ビオチンまたはビオチン化分子によるデスチオビオチン化分子の置換をデスチオビオチン化分子のオンデマンドおよび/または制御放出に使用して、例えば、その局所的機能を遮断し、またはそのオンデマンドおよび/若しくは制御放出を達成することができる。
【0137】
実施例3
透過性
20、40、70、150、500および2000kDaの分子量を有するFITCコンジュゲートデキストラン(Sigma-Aldrich)および免疫グロブリンG(IgG、150kDa、Sigma-Aldrich)を使用してヒドロゲルネットワークの透過性を試験した。共焦点断面を作製し、カスタムメイドMatlabスクリプトを使用してゲルの中心の蛍光強度をバックグラウンドの蛍光強度と比較した。条件ごとに少なくとも50個のゲルを分析した。
【0138】
分析は、DexHA-TAカプセルが2000kDaまでの全てのFITCコンジュゲートおよびIgGについて透過性であることを示した(図13)が、拡散はより大きい分子について約50%遅延する。これは、DexHA-TAベースマイクロヒドロゲルが透過性であり、インビボでほぼ全ての関連分子、例として、大型タンパク質に対して透過性である可能性が最も高いが、拡散が妨げられ得たことを示唆する。DexHA-TA中のIgG浸透の定量は、ゲルのコア中のIgG沈殿に起因して不可能であった。しかしながら、PEG-TAカプセルは、150kDaまでのFITCコンジュゲートにのみ透過性であった。ほぼバックグラウンドレベルであった>500kのデキストランおよびIgGとインキュベートされたPEG-TAカプセル中のコアの蛍光強度に基づき、大型分子の拡散は、それらのカプセル中で重度に損なわれると考えられた(図13)。
【0139】
実施例4
ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介する抗体断片またはぺプチドの間接的カップリングに加え、チラミン機能化ポリマー、例えば、Dex-TAおよびHA-TAの骨格への生物分子の直接および標的化カップリングの追加の方法を探索した。
【0140】
関節中で関節内注射することができるサイトカインシンクを得る一般的な方法を、図14に挙げる。簡潔に述べると、反応性マレイミド基をポリマー-チラミンコンジュゲートの骨格にコンジュゲートさせる。このように、Dex-TA-マレイミドおよびHA-TA-マレイミドポリマーコンジュゲートを得る。続いて、2つの方法を行うことができる。第1の方法において、フリー不対システイン残基を有する抗体またはぺプチド断片を、ポリマー-TA骨格におけるマレイミド基と反応させる。これは、ポリマー-TA-タンパク質コンジュゲートを作出する。これらのコンジュゲートは、注射部位、例えば、関節腔における直接注射に、セイヨウワサビペルオキシダーゼおよび微量の過酸化水素との組合せで使用することができる。これにより、注射部位、例えば、関節腔における現場マイクロおよびマクロゲル形成が可能となる。或いは、ポリマー-TA-タンパク質コンジュゲートを使用してdex-TA-ビオチンポリマーについて記載のとおり最初にマイクロゲルを生成することができる。こうして生成されたマイクロゲルを関節腔中で直接注射することができる。さらなる方法において、ポリマー-TA-マレイミドコンジュゲートを、最初にマイクロゲル形成に使用し、その後にフリー不対システイン残基を有する特異的結合分子をマイクロゲルネットワーク中で拡散させ、ポリマー骨格におけるマレイミド残基と反応させる。
【0141】
2つの方法を使用してマレイミドおよびチラミン残基をデキストランの骨格中で導入した。最初に、マレイミド-PNC中間体を形成した。続いて、この中間体をデキストラン-チラミンコンジュゲートと反応させた(図15)。図16に示されるとおり、Dex-TA-マレイミドコンジュゲートを得た。これに加え、マレイミド-PNC中間体はフェノール性残基とも反応した(左側丸)。予測されるとおり、ポリマーコンジュゲートをポリ(エチレングリコール)ジチオール基と混合したら、マレイミド基は、急速なゲル形成により実証されるとおり依然として機能的であった。こうして調製されたDex-TA-マレイミドコンジュゲートは、フリーシステインを有するぺプチドおよびタンパク質との反応に使用することができる。
【0142】
第2の方法において、デキストランを最初にPNCと反応させてDex-PNC中間体コンジュゲートを得た。続いて、Dex-PNCをチラミンおよびマレイミド-アミンの混合物と反応させた(図17)。図18において、この方法は、チラミンについて8%およびマレイミドについて4~5%の置換度を有するDex-TA-マレイミドコンジュゲートをもたらしたことが示される(図18)。
【0143】
ヒアルロン酸(HA)チラミン-マレイミドコンジュゲートを得るため、2ステップ反応を使用した。最初にヒアルロン酸をDMTMMの存在下でチラミンと反応させ、HA-TAの形成をもたらした。続いて、HA-TAを再度DMTMMの存在下でマレイミド-アミンと反応させた(図19)。これは、4.5%のTAの置換度を有するHA-TAコンジュゲートをもたらし、続いてそれをマレイミド官能基により12%の置換度において改変した(図20)。
【0144】
こうして生成されたマレイミド機能化ポリマーコンジュゲートは、フリー不対システイン残基を有するぺプチド(図21)または組換えDNA技術を使用してタンパク質のC末端中に導入された遺伝子操作フリー不対システインを有する抗体断片(VHH)(図22)のコンジュゲーションに使用することができる。これを実証するため、フリー不対システイン残基を有するぺプチドを合成し、蛍光色素により標識した。このぺプチドをHA-TA-マレイミドポリマーコンジュゲートと反応させた。こうして形成されたHA-TA-ぺプチドコンジュゲートをSDS-PAGEゲル電気泳動に非コンジュゲートぺプチドと並べて供した。続いて、蛍光を可視化に使用した。図21に示されるとおり、HA-TA-ぺプチドコンジュゲートの分子量は、非コンジュゲートぺプチドと比較して増加し、それは良好なコンジュゲーションを実証した。同様に、図22において、HA-TA-マレイミドポリマーコンジュゲートは、不対システイン残基がC末端において遺伝子操作された抗体断片(VHH)とも反応したことが示される。マレイミド化学を使用するVHHへのポリマー-TAコンジュゲートのコンジュゲーションは、全てのVHHが反応したわけではないが、SDS-PAGEゲル電気泳動に基づきフリー未反応VHHと比較してVHHの分子量の増加を明らかに誘導した。
【0145】
本実施例は、サイトカインシンクの生成に使用することができるポリマーコンジュゲート、例えば、ヒアルロン酸およびデキストランポリマーをベースとするものを得るために異なる方針を用いることが可能であることを実証する。
【0146】
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【0147】
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