(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/10 20060101AFI20230502BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B65D43/10
B65D1/26
(21)【出願番号】P 2018149145
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2017157573
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】込山 和馬
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0186014(US,A1)
【文献】特開平09-226769(JP,A)
【文献】特開2005-263284(JP,A)
【文献】実開平02-087777(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0217346(US,A1)
【文献】特開2019-189289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/10
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体を容器本体に外嵌合する嵌合構造として、
前記容器本体は、底と、前記底の周囲の立ち上がり壁と、前記底と前記立ち上がり壁とで画定される上面開口の収容部と、前記立ち上がり壁の周囲には水平なヘム部と、前記ヘム部に連続して外方へ拡開形成したフレア部とを有し、
前記容器本体側において前記フレア部の下端から平面方向外向きに突出する嵌合用凸部と、前記蓋体側において平面方向内向きに窪む嵌合用凹部とを備え、
外嵌合時は、前記嵌合用凹部の全体が外側から前記嵌合用凸部の下方に嵌り込んで閉蓋状態をなす一方、
外嵌合前は、前記嵌合用凹部の下部内面が前記嵌合用凸部の上部外面に乗って、前記フレア部の下縁よりも外方に前記嵌合用凹部の最先端が位置し、前記外嵌合時よりも前記蓋体が前記容器本体から浮いた半開きの状態をなす包装用容器であって、
前記嵌合用凹部の前記下部内面、及び前記嵌合用凸部の前記上部外面はともに、外方に向かって下り、少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状に形成され、前記半開きの状態で、前記蓋体の前記容器本体に対する平面方向の相対的な移動を規制し
、
前記容器本体は、前記嵌合用凸部の下側に、当該容器本体同士を積み重ねるスタック用裾部を有し、該スタック用裾部は、下位の容器本体の前記嵌合用凸部の上部外面に乗る内面部分が、前記嵌合用凸部の上部外面と少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状であることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
容器本体の嵌合用凸部の上部外面は、一部を蓋体の嵌合用凹部の下部内面と互いに形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には断面直線状の本体側傾斜面を連続して形成してなる請求項1記載の包装用容器。
【請求項3】
蓋体の嵌合用凹部の下部内面は、一部を容器本体の嵌合用凸部の上部外面と互いに形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には前記容器本体の嵌合用凸部の上部外面における本体側傾斜面に対応した断面直線状の蓋側傾斜面を連続して形成してなる請求項2記載の包装用容器。
【請求項4】
蓋体は、嵌合用凹部の上側に、当該蓋体同士を積み重ねるスタック用肩部を有し、該スタック用肩部は、上位の蓋体の前記嵌合用凹部の下部内面が乗る外面部分が、前記嵌合用凹部の前記下部内面と少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状である請求項1、2または3記載の包装用容器。
【請求項5】
容器本体のスタック用裾部の内面部分は、一部を下位の容器本体の嵌合用凸部の上部外面と互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には前記容器本体の嵌合用凸部の上部外面における本体側傾斜面に対応した断面直線状の第二の本体側傾斜面を連続して形成してなる請求項
1、2または3記載の包装用容器。
【請求項6】
請求項4記載の蓋体と請求項
5記載の容器本体とからなり、さらに、前記蓋体は、スタック用肩部と嵌合用凹部の上部間を、容器本体への外嵌合時に嵌合用凸部を収容する平面方向外向きの膨出部としている包装用容器。
【請求項7】
蓋体は、嵌合用凹部の最も内向きに突き出る先端がスタック用肩部の基端よりも内向きに突き出ている請求項
6記載の包装用容器。
【請求項8】
蓋体の嵌合用凹部の下部の外縁は、外嵌合時において、その外縁が容器本体のスタック用裾部の外縁の上方に位置する請求項4から
7のうち何れか一項記載の包装用容器。
【請求項9】
蓋体の嵌合用凹部の下部の外縁と、容器本体のスタック用裾部の外縁はともに、水平なフランジに形成される一方、外嵌合時において、蓋体側の前記フランジが容器本体の前記フランジよりも僅かに外方に突出する請求項
8記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器本体に蓋体を外嵌合によって閉蓋する包装用容器に係り、その閉蓋前に、蓋体を容器本体に対して嵌合に適した位置に位置決めする構成に関する。また同時に、当該構成を利用して、蓋体同士、容器本体同士のスタック性を安定させる構成にも言及する。
【背景技術】
【0002】
容器本体に蓋体を外嵌合によって閉蓋する包装用容器として、特許文献1に記載された発明が公知である。
図17は同文献の
図4に示された包装用容器、
図18は同文献の
図2に示された包装用容器であり、各図において、容器本体30は四角形状の上方開口部31を有しており、該上方開口部31の上縁には水平フランジ32が形成されている。
【0003】
一方、蓋体(成形蓋10)は、天板11と、該天板11の周囲に形成された外側下方に拡開する第1の傾斜面12と、該第1の傾斜面12の下端部から外側水平方向に広がる第1の水平フランジ13と、該第1の水平フランジ13の周囲に形成された外側下方に拡開する第2の傾斜面14と、該第2の傾斜面14の下端部から外側水平方向に広がる第2の水平フランジ15と、該第2の水平フランジ15の外側端に形成されたスカート部16とを備えている。
【0004】
前記スカート部16は、前記第2の水平フランジ15の外側端から垂下する垂直壁17と、該垂直壁17の下端から斜め下方に拡開する傾斜壁18と、該傾斜壁18の下端から水平方向に広がる水平縁部19とを有し、前記垂直壁17には内側へ凸となった膨出部20が形成されている。
【0005】
なお、
図17と
図18のものでは膨出部20の形状が異なり、
図17のものでは、スカート部16を構成する傾斜壁18と膨出部20の下面部22である傾斜部とが、いずれも平坦な斜面に形成されている一方、
図18のものでは、前記傾斜壁18は断面形状が上に凸の弧状をなし、前記膨出部の下面部22である傾斜部も断面形状が上に凸の弧状をなして、前記傾斜壁18と前記膨出部の下面部22である傾斜部とは、全体として断面形状が上に凸の弧状をなすように形成されている。
【0006】
このように
図17・18に示した包装用容器はいずれも、容器本体30に成形蓋10をするときは、各図に実線で示すように、容器本体30の前記水平フランジ32の上に、成形蓋10に形成した前記膨出部20の下面部22である斜面部が乗った姿勢とし、その状態で、成形蓋10の前記角部近傍における第1の水平フランジ13を容器本体30に向けて押し下げる。これにより、容器本体30の水平フランジ32と成形蓋10のスカート部16および膨出部20とが互いに変形し、容器本体30の水平フランジ32は前記成形蓋10の膨出部20を乗り越え、各図に仮想線で示すように、容器本体30の水平フランジ32の上面が、成形蓋10の前記第2の水平フランジ15の裏面に衝接した外嵌合の状態となり、蓋締めは完了するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種包装用容器における包装作業は、まず、内容物を収納した容器本体に対して蓋体を被せ、次に蓋体を下方に押し込んで外嵌合を行うが、外嵌合前あるいは外嵌合時に蓋体の位置が容器本体上で安定しなければ、スムーズに外嵌合を行うことができない。
【0009】
この点について、特許文献1の包装用容器では、外嵌合前に、成形蓋10は、上述したように、膨出部20の下面部22が容器本体30の水平フランジ32上に乗った姿勢をとっているが、下面部22と水平フランジ32とは互いに形状が異なり、
図17のものは、下面部22が平坦な斜面であるため、水平フランジ32に対して滑りやすく、成形蓋30が四方八方にずれるなどして安定せず、スムーズに外嵌合を行うことができない。したがって、外嵌合時には一個ずつ成形蓋10の位置を調整する手間が生じる。
【0010】
また、
図18のものは、下面部22が弧状であるが、容器本体30側の水平フランジ32(の先端)に対して点接触の状態となり、滑りやすいことは、当該下面部22を平坦な斜面とした
図17のものと同様であり、やはり安定した位置決めをもたらすものでない。
【0011】
特に、成形蓋10を強固な嵌合とするために膨出部20の内方への凸長(外側から見たときの凹深さ)を大きくすると、その下面部22の斜辺長または弧長も長くなり、その分、位置ずれも大きくなる。
【0012】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、その閉蓋前に、蓋体を容器本体に対して嵌合に適した位置に安定して位置決めすることができる包装用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために本発明では、蓋体を容器本体に外嵌合する嵌合構造として、前記容器本体は、底と、前記底の周囲の立ち上がり壁と、前記底と前記立ち上がり壁とで画定される上面開口の収容部と、前記立ち上がり壁の周囲には水平なヘム部と、前記ヘム部に連続して外方へ拡開形成したフレア部とを有し、前記容器本体側において前記フレア部の下端から平面方向外向きに突出する嵌合用凸部と、前記蓋体側において平面方向内向きに窪む嵌合用凹部とを備え、 外嵌合時は、前記嵌合用凹部の全体が外側から前記嵌合用凸部の下方に嵌り込んで閉蓋状態をなす一方、 外嵌合前は、前記嵌合用凹部の下部内面が前記嵌合用凸部の上部外面に乗って、前記フレア部の下縁よりも外方に前記嵌合用凹部の最先端が位置し、前記外嵌合時よりも前記蓋体が前記容器本体から浮いた半開きの状態をなす包装用容器であることを前提とする。
【0014】
そして、前記嵌合用凹部の前記下部内面、及び前記嵌合用凸部の前記上部外面はともに、外方に向かって下り、少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状に形成され、前記半開きの状態で、前記蓋体の前記容器本体に対する平面方向の相対的な移動を規制するという手段を採用した。
【0015】
上記手段によれば、蓋体の嵌合用凹部の下部内面と、容器本体の嵌合用凸部の上部外面とを、同一か略同一のアール形状としたので、外嵌合前の半開き状態において、蓋体を容器本体に対して嵌合に適した位置に確実に位置決めすることができる。
【0016】
当該手段において、容器本体の嵌合用凸部の上部外面については、その全部を上述した断面弧状としてもよいが、一部を蓋体の嵌合用凹部の下部内面と互いに形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には断面直線状の本体側傾斜面を連続して形成してなることが好ましい。
【0017】
これと同時に、蓋体についても、その嵌合用凹部の下部内面は、その全部を上述した断面弧状としてもよいが、一部を容器本体の嵌合用凸部の上部外面と互いに形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には前記容器本体の嵌合用凸部の上部外面における本体側傾斜面に対応した断面直線状の蓋側傾斜面を連続して形成してなることが好ましい。
【0018】
このように本体側傾斜面を設けることで、蓋体の嵌合用凹部の下部内面や蓋側傾斜面との接触機会や面積が増し、より安定した位置決めを行うことができるからである。また、位置決め後の閉蓋操作時に、蓋体の嵌合用凹部が本体側傾斜面を滑るようにスムーズに嵌合するため、容器本体の嵌合用凸部の潰れを防止するという作用もある。そして、嵌合用凸部の潰れが防止できることによって、容器本体に使用する樹脂シートの厚みを極限まで小さくすることができ、コスト削減にも寄与する。これは蓋体についても同様であり、蓋体をより小さな押圧力で嵌合させることができるため、閉蓋操作時に蓋体の潰れもなく、もって、蓋体のシートの厚みも小さくすることができる。
【0019】
また、蓋体同士を積み重ねた際のスタック性を安定させる手段として、蓋体は、嵌合用凹部の上側に、当該蓋体同士を積み重ねるスタック用肩部を有し、該スタック用肩部は、上位の蓋体の前記嵌合用凹部の下部内面が乗る外面部分が、前記嵌合用凹部の前記下部内面と少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状とした。この手段においても、積み重ねの際に、乗る部分(嵌合用凹部の下部内面)と乗られる部分(スタック用肩部)の形状が同一または略同一のアール形状であるので、スタック性を安定させることができる。
【0020】
さらに、容器本体同士のスタック安定性については、容器本体は、嵌合用凸部の下側に、当該容器本体同士を積み重ねるスタック用裾部を有し、該スタック用裾部は、下位の容器本体の前記嵌合用凸部の上部外面に乗る内面部分が、前記嵌合用凸部の上部外面と少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状とした。
【0021】
この場合、容器本体のスタック用裾部の内面部分は、その全部を上述した断面弧状としてもよいが、一部を下位の容器本体の嵌合用凸部の上部外面と互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側には前記容器本体の嵌合用凸部の上部外面における本体側傾斜面に対応した断面直線状の第二の本体側傾斜面を連続して形成することで、上位の容器本体における第二の本体側傾斜面と下位の容器本体における本体側傾斜面との当接によって、より安定したスタック性が得られる。
【0022】
なお、上記蓋体と上記容器本体との組み合わせにおいて、さらに、前記蓋体は、スタック用肩部と嵌合用凹部の上部間を、容器本体への外嵌合時に嵌合用凸部を収容する平面方向外向きの膨出部とすることで、確実な外嵌合が実現する。
【0023】
さらに、この膨出部を有する蓋体において、蓋体は、嵌合用凹部の最も内向きに突き出る先端がスタック用肩部の基端よりも内向きに突き出ていることで、嵌合用凹部の嵌合深さが大きくなることによって蓋体の不用意な開蓋を回避することができる。
【0024】
一方、蓋体の嵌合用凹部の下部の外縁は、外嵌合時において、その外縁が容器本体のスタック用裾部の外縁の上方に位置することが好ましい。閉蓋した容器全体において、容器本体のスタック用裾部の外縁が最外縁となって、蓋体の嵌合用凹部の下部外縁に誤って手指や衣服等を引っ掛かけ、不用意な開蓋を防止することができるからである。
【0025】
その際、蓋体の嵌合用凹部の下部の外縁と、容器本体のスタック用裾部の外縁はともに、水平なフランジに形成される一方、外嵌合時において、蓋体側の前記フランジが容器本体の前記フランジよりも僅かに外方に突出するという構成では、不用意な開蓋を防止しつつ、蓋体側のフランジに指をかけて意図的な開蓋は容易となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の包装用容器は、蓋体を容器本体に対して嵌合に適した位置に安定して位置決めすることができるため、閉蓋作業をスムーズに行うことができる。
【0027】
また、蓋体同士、容器本体同士を積み重ねた際も安定したスタック性が得られるため、搬送やバックヤードでの内容物の詰め込み作業を荷崩れなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器の要部断面分解図
【
図3】同、閉蓋前の半開き状態を示す要部拡大断面図
【
図4】同、蓋体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図5】同、容器本体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図6】本発明の第二実施形態に係る包装用容器の要部断面分解図
【
図7】同、閉蓋前の半開き状態を示す要部拡大断面図
【
図8】同、容器本体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図9】同、蓋体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図10】本発明の第三実施形態に係る包装用容器の要部断面分解図
【
図11】同、閉蓋前の半開き状態を示す要部拡大断面図
【
図12】同、蓋体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図13】同、容器本体同士を積み重ねたときの要部拡大断面図
【
図14】本発明に係る包装用容器の外形の一例(円形)
【
図15】本発明に係る包装用容器の外形の他の例(矩形)
【
図16】本発明に係る包装用容器の外形の更なる他の例(オーバル)
【
図17】従来の包装用容器(特許文献1の
図4に相当)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る包装用容器について、蓋体1と容器本体2を分離した状態を示した要部断面図である。これら蓋体1と容器本体2は、成形金型を用いた真空成形、圧空成形、真空圧空成形など、公知の樹脂シート成形法によって製造され、次のような構成を備える。
【0030】
蓋体1は、天板1aの周囲に傾斜壁1bを有し、該傾斜壁1bの周囲には水平なヘム部1cを介してスカート部1dを垂設している。スカート部1dは、ヘム部1cの下縁に連続してやや拡開気味に形成したフレア部1eと、該フレア部1eの下縁からさらに平面方向外向きに突出して形成した膨出部1fと、該膨出部1fの下縁に連続して形成した平面方向内向きに窪む嵌合用凹部1gとからなり、さらに嵌合用凹部1gには微小な水平フランジ1hを形成し、該水平フランジ1hの内側において下面1iは開口している。
【0031】
容器本体2は、底2aとその周囲の立ち上がり壁2bとで上面開口の収容部2cを画定し、立ち上がり壁2bの周囲には、蓋体1のヘム部1c、フレア部1e、膨出部1fにそれぞれ対応するヘム部2d、フレア部2e、嵌合用凸部2fを形成している。また、この実施形態では、後述する容器本体2同士を積み重ねた際のスタック性を安定化させるために、嵌合用凸部2fの下側に垂壁部2gを介してスタック用裾部2hを形成している。さらに、このスタック用裾部2hには微小の水平フランジ2iを形成している。
【0032】
上記構成の包装用容器は、収容部2cに内容物を収容した容器本体2に蓋体1を被せ、この蓋体1のヘム部1cを下方に押し込む等することで、その内向きの嵌合用凹部1gの全体が容器本体2の嵌合用凸部2fの下方に外側から嵌り込んで、
図2に示す外嵌合の状態で閉蓋をなすところ、本発明の特徴である、その外嵌合前に蓋体1を容器本体2に対して位置決めする構成について、さらに各部の詳細な形状等について説明する。
【0033】
上記構成の包装用容器は、その外嵌合前は、
図3に示すように、蓋体1の嵌合用凹部1gの下部内面3が、容器本体2の嵌合用凸部2fの上部外面4に乗り、外嵌合時よりも蓋体1が容器本体2から浮いた半開きの状態をなすものであって、その際の位置決めについて、蓋体1側の乗る部分である上記下部内面3と、容器本体2側の乗られる部分である上記上部外面4はともに、外方に向かって下り、少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値(半径)を有した断面弧状に形成している。
【0034】
このように乗る側(嵌合用凹部1gの下部内面3)と乗られる側(嵌合用凸部2fの上部外面4)が、断面弧状として形状が合致することで、両者間に滑りが生じず、上述した半開きの状態で、蓋体1の容器本体2に対する平面方向の相対的な移動を規制することができる。よって、いったん位置決めを行えば、その状態を安定して維持し、その後、スムーズに嵌合(閉蓋)作業を実行することができる。
【0035】
次に、蓋体1を容器本体2に位置決めするさらに、その前段階において、蓋体1同士、容器本体2同士を積み重ねたときのスタック安定性について説明すると、まず、蓋体1については、これを上下に積み重ねた際、
図4に示すように、上位の蓋体1の嵌合用凹部1gの下部内面3が、下位の蓋体1の膨出部1fに乗る。そこで、本発明では、乗られる部分である膨出部1fの肩部5(請求の範囲における「スタック用肩部」)の外面部分5aと、ここに乗る嵌合用凹部1gの下部内面3とを、少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状に形成している。
【0036】
他方、容器本体2については、これを上下に積み重ねた際、
図5に示すように、下位の容器本体2の嵌合用凸部2fの上部外面4に、上位の容器本体2のスタック用裾部2hの内面部分6が乗るため、これら部分4・6を、蓋体1の場合と同様に、少なくとも一部において互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状に形成している。
【0037】
このような構成によって、蓋体1同士や容器本体2同士を積み重ねたときは、上述した蓋体1を容器本体2に位置決めしたときと同じ作用によって、蓋体1や容器本体2の平面方向の相対的な移動が規制され、安定したスタック性が得られる。
【0038】
続いて、閉蓋後の包装用容器の作用効果について説明すると、本実施形態では、蓋体1の外嵌合後、
図2に示したように、容器本体2の嵌合用凸部2fが蓋体1の膨出部1fの内側に完全に収容されるため、閉蓋状態を確実に安定して維持することができる。
【0039】
また、この実施形態では、蓋体1における嵌合用凹部1gの深さを大きくして、より強固な嵌合を実現している。具体的には、嵌合用凹部1gの最も内向きに突き出る先端7を、スタック用肩部5のフレア部1eとの接続部である基端部5bよりも内向きに突き出るように、嵌合用凹部1gの深さを設定している。これはすなわち、膨出部1fの内側の収容深さよりも嵌合用凹部1gの窪みが大きいことを意味し、容器本体2に対して嵌合用凹部1gがより深く嵌合することを意味する。よって、薄肉化の傾向が強い近年の包装用容器について、このように嵌合することで、より不用意な開蓋を防止することができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、蓋体1の水平フランジ1hを容器本体2の水平フランジ2iの上方に位置させており、容器本体2の水平フランジ2iによる下カバー作用によって、蓋体1の水平フランジ1hに下方からの力、即ち開蓋方向の力が直接作用することを防止し、もって、蓋体1の不用意な開蓋を確実に防止している。
【0041】
その一方で、意図する開蓋作業は確保されなければならない。そこで、この実施形態では、閉蓋時(外嵌合時)に、蓋体1の水平フランジ1hが容器本体2の水平フランジ2iよりも、僅かに外方に突出するように、両者フランジ1h・2iの突出長さを調整して形成している。よって、消費者が開蓋する際は、蓋体1の水平フランジ1hの先端に指をかけて、意図する開蓋を行うことができる。
【0042】
図6は、本発明の第二の実施形態に係る包装用容器を示すものであり、蓋体1の嵌合用凹部1gと容器本体2の嵌合用凸部2fに関して、下部内面3と上部外面4それぞれの形状を変更している。即ち、この第二実施形態では、嵌合用凹部1gの下部内面3と嵌合用凸部2fの上部内面4それぞれを、上述した断面弧状を有する先端部3a・4aと、その上側に連続する傾斜面3b・4bとで構成している。この他、上記実施形態と同一の構成は同一符号をもって説明する。
【0043】
上記先端部3a・4aが互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状であることは上記実施形態と同じであり、この第二実施形態では、蓋側と本体側の双方に、同じか近似する角度を有する断面直線状の傾斜面3b・4bを構成一部に含んでいる。
【0044】
当該構成によれば、その外嵌合前は、
図7に示すように、蓋体1の嵌合用凹部1gの下部内面3が、容器本体2の嵌合用凸部2fの上部外面4に乗り、外嵌合(閉蓋)時よりも蓋体1が容器本体2から浮いた半開きの状態をなすことは上記実施形態と同じであるが、その際の位置決めについては、蓋体1側の乗る部分である上記下部内面3と、容器本体2側の乗られる部分である上記上部外面4はともに、互いの傾斜面3b・4bが当接した状態となるため、当該下部内面3と上部外面4の全部を断面弧状とした場合よりも、これら部分の接触機会や面積が増し、より確実に位置決めができると共に、スタック性もより安定させることができる。
【0045】
また、閉蓋操作では、蓋体1の傾斜面3bが容器本体2の傾斜面4bを滑るように移動するため、当該操作に必要な蓋体1の押圧力を小さくすることができ、蓋体1と容器本体2の双方への負担が小さくなるため、それぞれの樹脂シートの厚みを小さくしても、閉蓋操作時に嵌合用凹部1gや嵌合用凸部2fが潰れることを防止することができる。
【0046】
一方、
図8・9に示すように、蓋体1同士や容器本体2同士を積み重ねた際も、蓋体1を半開きの状態で容器本体2に位置決めしたときと同じ作用によって、安定したスタック性が得られる。
【0047】
特に、この実施形態では、容器本体2については、そのスタック用裾部2hの内面部分6は、先端部6aを嵌合用凸部2fの先端部4aと互いの形状が合致するアール値を有した断面弧状として、その上側に嵌合用凸部2fの上部外面4における傾斜面4bに対応した断面直線状の第二の傾斜面6bを連続して形成しているため、容器本体2同士を積み重ねた際は、
図8に示したように、上位の第二傾斜面6bが下位の傾斜面4bに重畳して、より高いスタック性が得られる。
【0048】
他方、
図10に示す本発明の第三実施形態では、蓋体1は最初の実施形態と同一構成であるが、容器本体2については、その嵌合用凸部2fの上部外面4を、第二の実施形態と同一構成である傾斜面4bを含むものとしているため、蓋体1同士のスタック性(
図12)は最初の実施形態と同じ作用効果が得られ、蓋体1の容器本体2に対する位置決めから嵌合までの容易性(
図11)、及び容器本体2同士のスタック性(
図13)については、第二実施形態に準ずる作用効果を期待することができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されないことはもちろんであって、ここまで言及していない容器の全体形状については、
図14~
図16に示すように、平面視円形、矩形等、何れであってもよい。また、特徴的構成においても、嵌合用凹部や嵌合用凸部は蓋体や容器本体の全周に設けてもよいし、一部に一つまたは二つ以上設けてもよい。この点、
図14~
図16に示したように、各種形状のいずれにおいても、容器本体2において嵌合用凸部2fは全周に設ける一方、蓋体1における嵌合用凹部1gは複数を間隔を空けて設けることが、位置決めのしやすさ、嵌合のしやすさ、意図した開蓋のしやすさなど、総合的にバランスが最も良いのであるが、逆に、嵌合用凹部1gを蓋体1の全周に設け、嵌合用凸部2fを間欠的に設けたものでも、同等の作用効果を期待することができる。
【0050】
この他のパターンとして、嵌合用凹部1g・嵌合用凸部2fの双方ともを全周に設ける形態や、双方とも間欠的に設ける形態も本発明にて採用することが可能である。さらに、蓋体を容器本体に位置決めする構成は必須であるが、それ以外のスタック性、嵌合性、開蓋容易性に関する構成は副次的なものであって、適宜、省略することも可能である。
【0051】
さらにまた、寸法に関しては、一例として、次のように設定する。
0.7(0.9)≦r’/r≦3.0(2.5)
0.7(0.8)≦r’/r”≦2.0(1.5)
0.6(0.7)≦r’’’/r≦3.0(2.5)
ただし、rは容器本体2における嵌合用凸部2fの上部外面4のアール値、r’は蓋体1における嵌合用凹部1gの下部内面3のアール値、r”は蓋体1におけるスタック用肩部5の外面部分5aのアール値、r’’’は容器本体2におけるスタック用裾部2hの内面部分6のアール値であって、カッコ内の値は最適な比率である。
【0052】
なお、上記のように各比率に上限値を設けたのは、この値を超えると、位置決め又はスタック時に乗る側が直線に近づき安定した位置決め又はスタック性が得られないからであり、また下限値については、乗る側の曲率が乗られる側よりも大きくなり、相対移動を規制することが困難となるからである。
【符号の説明】
【0053】
1 蓋体
1a 天板
1b 傾斜壁
1c ヘム部
1d スカート部
1e フレア部
1f 膨出部
1g 嵌合用凹部
1h 水平フランジ
1i 下面
2 容器本体
2a 底
2b 立ち上がり壁
2c 収容部
2d ヘム部
2e フレア部
2f 嵌合用凸部
2g 垂壁部
2h スタック用裾部
2i 水平フランジ
3 嵌合用凹部の下部内面
3a 断面弧状の先端部
3b 断面直線状の傾斜面
4 嵌合用凸部の上部外面
4a 断面弧状の先端部
4b 断面直線状の傾斜面
5 スタック用肩部
5a スタック用肩部の外面部分
6 スタック用裾部の内面部分
6a 断面弧状の先端部
6b 断面直線状の傾斜面
7 嵌合用凹部の最先端