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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】蒸しケーキ類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/80 20170101AFI20230502BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20230502BHJP
   A23L 29/219 20160101ALN20230502BHJP
【FI】
A21D13/80
A21D2/18
A23L29/219
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019010744
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020115803
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦上 淳一
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-099629(JP,A)
【文献】特開平11-318321(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046867(WO,A1)
【文献】特開平08-242752(JP,A)
【文献】特開平07-075479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
A23L 2/00-35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料において、以下の(1)~(3)を満たす蒸しケーキ類
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積0.5~2の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、
(2)(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上
(3)(B)の原料となる澱粉が、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉からなる群より選ばれる1種以上。
【請求項2】
原料において、以下の(1)~(3)を満たすよう調整する、蒸しケーキ類の製造方 法
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積0.5~2の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、
(2)(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上
(3)(B)の原料となる澱粉が、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉からなる 群より選ばれる1種以上
【請求項3】
原料において以下の(1)~(3)を満たすよう調整することにより、蒸しケーキ類 をふんわり及びしっとりさせる方法:
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積2以下の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、
(2)(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上、
(3)(B)の原料となる澱粉が、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉からなる群より選ばれる1種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸しケーキ類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸しケーキ(蒸しパンに同じ)は、小麦粉に卵、水、砂糖、膨張剤などを加えて混合した生地を、アルミホイル等の容器へ入れて蒸すことにより製造される。蒸しケーキにおいては、特にしっとり感とふんわり感が消費者に好まれることから、主に、加工澱粉を利用した食感改良方法がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、原材料の一つとして膨潤抑制澱粉を使用することにより、体積が大きくて食感に優れるとともに、軽い食感を有する菓子類(蒸しケーキ含む)の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、小粒子澱粉を原料とする膨潤抑制澱粉を用いることで、しっとりとしていて口溶けが良く、ソフトな食感を有するケーキ類が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の菓子類の製造方法では、澱粉としては膨潤抑制澱粉のみを使用するため、ふんわり感は得られるものの粉っぽさやパサつきが生じ、特許文献2のケーキ類では、しっとりとしていてソフトな食感は得られるが、原料澱粉が小粒子澱粉に限定されるうえ、ふんわり感が十分とはいえない。
【0005】
また、一方で、α化澱粉を原料として使用すれば、しっとり感、ソフト感を有する蒸しケーキが得られることは知られている(例えば、特開2007-325526)。しかし、蒸しケーキの製造に使用すると口溶けが悪くネチャついた食感となり、ふんわり感のある蒸しケーキは得られない。
【0006】
すなわち、しっとり感とふんわり感を十分に兼ね備えた蒸しケーキ類は、これまでに得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-075479
【文献】特開2006-129789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、しっとり感とふんわり感を両立した蒸しケーキ類及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、しっとり感とふんわり感を両立させるために、まず、架橋度合いの低い澱粉(低架橋澱粉)を用いて蒸しケーキを製造したところ、焼成ケーキ(以降、焼成パン類含む)のときと同様、ふんわり感は得られるもののパサつくことがわかった。次に、架橋度合いの高い澱粉(高架橋澱粉)を用いて蒸しケーキを製造したところ、焼成ケーキのときとは全く異なり、ネチャつくばかりかふんわり感まで消失してしまった。そこで、各種架橋澱粉及びそれら種々の組み合わせで蒸しケーキを製造したところ、架橋度の異なる架橋澱粉を二種類、特定の比率で配合したときに、はじめてしっとり感とふんわり感を両立できることがわかった。
【0010】
従来、焼成ケーキ類では、高架橋澱粉を使用すると、粉っぽさやザラつき等の不快な食感を生じることが知られていたが、蒸しケーキにおいては、ネチャつきが生じてボリューム感がなくなるという想定外の結果であっため、高架橋澱粉を利用する価値はないとも思われた。しかし、さらに意外にも、この高架橋澱粉を低架橋澱粉に組み合わせて使用すると、しっとり感とふんわり感を十分兼ね備えた蒸しケーキが得られたことは、当業者にとって驚くべき発見であった。
【0011】
以上より、本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の<1>~<5>から構成されるものである。
<1>原料において、以下の(1)及び(2)を満たす蒸しケーキ類。
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積0.5~2の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、(2)(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上。
<2>(B)の原料となる澱粉が、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉からなる群より選ばれる1種以上である、上記<1>記載の蒸しケーキ類。
<3>原料において、以下の(1)及び(2)を満たすよう調整する、蒸しケーキ類の製造方法。
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積0.5~2の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、
(2)上記(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上。
<4>(B)の原料となる澱粉が、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉からなる群より選ばれる1種以上である、上記<3>記載の蒸しケーキ類の製造方法。
<5> 原料において以下の(1)及び(2)を満たすよう調整することにより、蒸しケーキ類をふんわり及びしっとりさせる方法。
(1)(A)沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と(B)沈降積2以下の架橋澱粉の質量比が、80:20~50:50、
(2)(A)と(B)の合計が、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、しっとり感及びふんわり感を十分兼ね備えた蒸しケーキ類及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における「蒸しケーキ類」とは、主原料である澱粉質原料(小麦粉や澱粉)に水を加えて混合して得た生地を発酵させることなく蒸して製造されるものをいい、砂糖、卵、油脂、膨張剤などの副原料を適宜加えることができる。具体的には、蒸しケーキ、蒸しパン、蒸しカステラ、マーカーラオ、蒸し饅頭などである。
【0014】
本発明における「澱粉質原料」は、穀類、豆類、芋類、木の実などを粉状化した穀粉や、これらから取り出された澱粉を指す。「穀粉」としては、小麦粉、コーンフラワー、米粉、タピオカ粉、馬鈴薯粉、甘藷粉、そば粉等が挙げられ、「澱粉」としては、小麦澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、とうもろこし澱粉、サゴ澱粉、サトイモ澱粉やこれらのもち種の澱粉等が挙げられる。なお、「澱粉」には、澱粉に物理的又は化学的処理を施した加工澱粉が包含される。ただし、本発明の蒸しケーキ類で使用する「架橋澱粉」は、ここにいう「澱粉」には含まれない。
【0015】
本発明の架橋澱粉は、原料となる澱粉を架橋剤、塩及び水の存在下で、pHを調整しながら所定時間及び所定温度で反応させることにより得られる。架橋剤は、トリメタリン酸ナトリウム又はオキシ塩化リンを使用することができるが、トリメタリン酸ナトリウムを利用するほうが好ましい。トリメタリン酸ナトリウムを使用する場合は、原料澱粉100質量部に対して0.01~10質量部を使用すればよく、高度に架橋された澱粉(高架橋澱粉)を得たいときは0.4~10質量部程度、低度に架橋された澱粉(低架橋澱粉)を得たいときは0.01~0.05質量部程度を使用する。
【0016】
本発明における「沈降積」は、以下の方法によって測定された値をいう。まず、澱粉試料0.15g(固形分換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64質量%により調製)15mlを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25~35℃まで冷却する。この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーに10ml流し込み、25℃にて20時間静置後、沈殿物の目盛りを読み取り、この値を沈降積とする。なお、架橋度の高い澱粉(高架橋澱粉)では沈降積の値は小さくなる。
【0017】
本発明の蒸しケーキには架橋度の異なる特定の二種類の架橋澱粉を配合することにより得られるが、ひとつは、沈降積が8.0~9.8、より好ましくは9.0~9.5の架橋澱粉(以降、単に「低架橋澱粉」ともいう。)であり、もうひとつは、沈降積が0.5~2.0、より好ましくは0.5~1.0の架橋澱粉(以降、単に「高架橋澱粉」ともいう。)である。「低架橋澱粉」において、沈降積が8.0未満又は9.8を超えると、ふんわり感が得られにくく、「高架橋澱粉」において、沈降積が2.0を超えると、しっとり感が得られにくくなる。
【0018】
本発明の架橋澱粉の原料となる澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、豆澱粉、サトイモ澱粉、もち種馬鈴薯澱粉、もち種米澱粉、ワキシーコーン澱粉、もち種小麦澱粉、もち種タピオカ澱粉等が挙げられ、いずれの澱粉も利用することができるが、「低架橋澱粉」は、小麦澱粉又は馬鈴薯澱粉を原料とすることが好ましい。また、「高架橋澱粉」は、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及び米澱粉のいずれかを原料とすることが好ましく、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉及びタピオカ澱粉のいずれかを原料とすることがより好ましい。
【0019】
本発明の蒸しケーキ類に配合する「低架橋澱粉」及び「高架橋澱粉」の合計量は、澱粉質原料100質量部のうち、20質量部以上であり、好ましくは50質量部以上である。架橋澱粉の配合量が20質量部未満となると、しっとり感又はふんわり感が不十分な蒸しケーキ類となる。
【0020】
本発明の蒸しケーキ類における架橋澱粉の配合比は、低架橋澱粉(A)と高架橋澱粉(B)との質量比である(A):(B)が、80:20~50:50であることが好ましく、70:30~60:40であるのがより好ましい。上記範囲外の配合比となると、しっとり感又はふんわり感が不十分な蒸しケーキ類となる。
【0021】
本発明の蒸しケーキ類の製造には、上記澱粉質原料以外に必要に応じて、副材料を用いることができる。副材料とは、蒸しケーキ類の製造に一般的に使用されるもので、望まれる品質に応じて使用されるものをいう。
【0022】
本発明の蒸しケーキ類の製造方法は、澱粉質原料に上述した架橋澱粉を特定の割合で配合するという必須要件を除き、公知の蒸しケーキ類の製造方法と同様である。また、上述した架橋澱粉を配合した澱粉質原料は、蒸しケーキ類用のミックス粉として利用することができる。この場合、蒸しケーキ類用ミックス粉中の低架橋澱粉(A)及び高架橋澱粉(B)の配合量は、澱粉質原料100質量部のうち20質量部以上であり、50質量部以上であることが好ましい。また、低架橋澱粉(A)及び高架橋澱粉(B)の質量比である(A):(B)が、80:20~50:50であることが好ましく、70:30~60:40であることがより好ましい。
【0023】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【実施例
【0024】
(澱粉の架橋処理)
蒸しケーキ類に使用する各種架橋澱粉を得るため、表1に記載の澱粉を原料とし、架橋処理を行った。まず、水130質量部に硫酸ナトリウム10質量部を溶解し、そこへ各原料澱粉100質量部を加えてスラリーとした。このスラリーを、3%水酸化ナトリウム水溶液によってpH11.0~pH11.7に保持・撹拌しながら、トリメタリン酸ナトリウムを必要量(対澱粉0.01~10質量部)加え、41℃で10時間反応させた。その後、硫酸で中和、水洗し、表1に記載の架橋澱粉1~18を調製した。
【0025】
(架橋澱粉の沈降積測定)
次に、得られた各架橋澱粉について架橋度を確認するため、「沈降積」を測定した。まず、澱粉試料0.15g(固形分換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64質量%により調製)15mlを注ぎ込んだ。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、30℃まで冷却した。この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーに10ml流し込み、25℃にて20時間静置後、沈殿物の目盛りを読み取り、この値を沈降積の値とした。測定の結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
(架橋澱粉の組み合わせの検討)
(1)蒸しケーキの作製
次に、小麦粉(薄力粉)を上述の各架橋澱粉に完全に置き換えて、表2に示す配合によって蒸しケーキを作製した。なお、対照は、澱粉質原料として薄力粉のみを配合した蒸しケーキとした。
【0028】
(2)評価
得られた各蒸しケーキについて、食感を評価した。食感の評価は、よく訓練された10名のパネラーにより官能評価を行った。パネラー10人のうち、対照と比較して、「しっとり」とした食感(ただし、ベチャつく食感の場合を除く。)を有するとした人数が、8~10人のときは「◎」、6~7人のときは「○」、5人以下のときは「×」と評価した。「ふんわり」とした食感についても、同様に評価した。
蒸しケーキ全体のバランス(総合評価)については、しっとり感及びふんわり感の評価がともに「◎」であったときを「◎」、しっとり感又はふんわり感のいずれか一方の評価が「○」であって、かつ、他方の評価が「○」又は「◎」であったときを「○」、しっとり感又はふんわり感のいずれか一方の評価が「×」であったときを「×」と評価した。評価結果は表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
評価の結果、澱粉質原料である小麦粉(薄力粉)のすべてを高架橋澱粉のみ又は低架橋澱粉のみとしても、ふんわり感としっとり感を兼ね備えた蒸しケーキは得られなかったが、高架橋澱粉と低架橋澱粉を組み合わせたものとした場合は、対照と比較して、ふんわり感としっとり感を兼ね備えた蒸しケーキとなっていた(実施例1及び2)。
【0031】
(架橋澱粉の架橋度と組み合わせの検討)
次に、架橋澱粉の架橋度と組み合わせを検討するため、表3のとおり、小麦粉(薄力粉)を各架橋澱粉にすべて置き換えた配合によって、蒸しケーキを作製した。なお、澱粉質原料以外の配合は表2と同様であるため省略した。また、対照は、澱粉質原料として小麦粉(薄力粉)のみを使用した。得られた各蒸しケーキは上述と同様の方法で評価し、その結果をあわせて表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
評価の結果、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)を、沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉(試料2~6)のいずれかと、沈降積0.5~2.0の範囲にある馬鈴薯架橋澱粉(試料12~14)のいずれかを組み合わせたものにすべて置き換えた場合、対照と比較して、ふんわり感及びしっとり感を両立した、全体の食感バランスが良い蒸しケーキが得られた(実施例2~10)。
【0034】
(架橋澱粉の配合割合の検討)
上記で組み合わせた二種類の架橋澱粉の適切な配合割合を検討するため、表4に記載の架橋澱粉を用いて、表4に示す配合によって蒸しケーキを作製した。なお、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)以外の配合は表2と同様であるため、記載を省略した。得られた各蒸しケーキについて、上述と同様の方法で評価し、その結果を表4にあわせて示す。
【0035】
【表4】
【0036】
評価の結果、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)を、沈降積9.3の小麦架橋澱粉(試料4)と、沈降積0.8の馬鈴薯架橋澱粉(試料14)を50:50~80:20の各配合量で組み合わせたものにすべて置き換えた場合、対照と比較してふんわり感及びしっとり感を両立した、全体の食感のバランスが良い蒸しケーキが得られた(実施例2及び11~13)。
【0037】
(架橋澱粉の原料となる澱粉種の検討)
架橋澱粉の原料となる澱粉種を検討するため、表5に記載の澱粉を原料とする架橋澱粉を用いて、表5に示す配合によって蒸しケーキを作製した。なお、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)以外の配合は表2と同様であるため、記載を省略した。得られた各蒸しケーキについて、上述と同様の方法で評価し、その結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
評価の結果、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)を、沈降積9.3の小麦架橋澱粉(試料4)と、沈降積0.5~2.0の範囲にある小麦架橋澱粉、タピオカ架橋澱粉又は米架橋澱粉(試料9、16~17)のいずれかを表5の配合量で組み合わせたものにすべて置き換えた場合、対照と比較してふんわり感及びしっとり感を両立した、全体の食感のバランスが良い蒸しケーキが得られた(実施例14~16)。また、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)を、沈降積9.8の馬鈴薯架橋澱粉(試料10)と沈降積0.5~2.0の範囲にある馬鈴薯架橋澱粉(試料14)を表5の配合量で組み合わせた場合も、対照と比較してふんわり感及びしっとり感を両立した、全体の食感のバランスが良い蒸しケーキが得られた(実施例17)。
【0040】
(小麦粉と架橋澱粉の配合量の検討)
小麦粉(薄力粉)と架橋澱粉の適切な配合量を検討するため、表6に記載の架橋澱粉及び配合によって蒸しケーキを作製した。なお、澱粉質原料の小麦粉(薄力粉)以外の配合は表2と同様であるため、記載を省略した。得られた各蒸しケーキは、上述と同様の方法で評価し、その結果は表6にあわせて示す。
【0041】
【表6】
【0042】
評価の結果、澱粉質原料100質量部のうち、沈降積8~9.8の範囲にある小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉(試料4又は試料10)と沈降積0.5~2.0の範囲にある馬鈴薯架橋澱粉(試料14)の合計が、20質量部以上となるように置き換え、かつ、それら二種類の架橋澱粉の配合比を50:50~80:20とすることにより、対照と比較してふんわり感及びしっとり食感を両立した、全体の食感のバランスの良い蒸しケーキが得られた(実施例18~25)。
【0043】
以上の結果から、蒸しケーキ類に配合する澱粉質原料100質量部のうち、沈降積8~9.8の小麦架橋澱粉又は馬鈴薯架橋澱粉と、沈降積2以下の架橋澱粉との合計を20質量部以上とし、かつ、それら二種類の架橋澱粉の配合比を50:50~80:20とすることにより、しっとり感及びふんわり感を十分に兼ね備えた蒸しケーキ類を提供することができる。