特許 7272648 軸受

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-05-01

(45)【発行日】2023-05-12

(54)【発明の名称】軸受

(51)【国際特許分類】

   F16C 35/077 20060101AFI20230502BHJP

   F16C 23/06 20060101ALI20230502BHJP

   A01D 34/90 20060101ALI20230502BHJP

【ＦＩ】

F16C35/077

F16C23/06

A01D34/90 Z

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2019152817

(22)【出願日】2019-08-23

(65)【公開番号】P2021032322

(43)【公開日】2021-03-01

【審査請求日】2022-05-31

(73)【特許権者】

【識別番号】392010924

【氏名又は名称】株式会社大成モナック

(74)【代理人】

【識別番号】100091683

【弁理士】

【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄

(74)【代理人】

【識別番号】100179316

【弁理士】

【氏名又は名称】市川 寛奈

(72)【発明者】

【氏名】開 清治

【審査官】倉田 和博

(56)【参考文献】

【文献】実開平１－１６８１２６（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭６３－０３６７４０（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２０１１－０７５０９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－０６３１７６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｃ ３５／０２、３５／０７７

Ｆ１６Ｃ ２３／０６

Ａ０１Ｄ ３４／９０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

ベアリング、円筒形状のホルダ、および、弾性リングを有する軸受であって、
前記ホルダは軸方向と平行に２つに分割された部材が組み合わされて形成されており、前記ホルダの内周面に周方向に形成された内溝内に前記ベアリングの外周部分が収容され、前記ホルダの外周面に周方向に形成された外溝内に前記弾性リングが収容された状態で組み立てられていることを特徴とする軸受。

【請求項2】

前記ホルダの前記外溝が複数形成されており、前記外溝の少なくとも１つに前記弾性リングが挿入されていることを特徴とする請求項１に記載の軸受。

【請求項3】

前記弾性リングとして、Ｏリングを用いることを特徴とする請求項１または２に記載の軸受。

【請求項4】

前記ホルダの分割された部材は、互いに対向する面に凹部および凸部が設けられており、前記ホルダを組み立てる際に、一方の部材の凹部内に他方の部材の凸部が挿入されることを特徴とする請求項１～３のいずれか１項に記載の軸受。

【請求項5】

前記ホルダは、樹脂、ゴムまたは金属からなることを特徴とする請求項１～４のいずれか１項に記載の軸受。

【請求項6】

刈払機のドライブシャフトを軸受けするために使用されることを特徴とする請求項１～５のいずれか１項に記載の軸受。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、刈払機等のドライブシャフトを軸受けするために用いられる軸受に関する。

【背景技術】

【0002】

草刈り作業を行う際に使用する刈払機として、一方向に回転する刃を棹部の先端に設け、棹部の後端に設けた駆動部によって刃を回転させる構造の刈払機が多数用いられている。従来の刈払機は、棹部のパイプ内に刃を回転させるためのドライブシャフトが配置されており、ドライブシャフトは複数のブッシュ（すべり軸受け）を用いてパイプ内に回転可能に保持されている（特許文献１，２参照）。

【0003】

エンジンを用いた狩払機の場合、ブッシュによるドライブシャフトの回転抵抗はあまり問題にならないが、バッテリーを用いた充電式の刈払機の場合、ブッシュを用いたことによるドライブシャフトの回転抵抗によってバッテリーの持続時間が短くなるという問題がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１６－３６３４１号公報

【文献】特開２０１５－８６３６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は従来の問題点を解決するために、ブッシュ（すべり軸受け）の代わりにベアリングを用いて、ドライブシャフトの回転抵抗を低減させることができる軸受を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の軸受は、ベアリング、円筒形状のホルダ、および、弾性リングを有する軸受であって、前記ホルダは軸方向と平行に２つに分割された部材が組み合わされて形成されており、前記ホルダの内周面に周方向に形成された内溝内に前記ベアリングの外周部分が収容され、前記ホルダの外周面に周方向に形成された外溝内に前記弾性リングが収容された状態で組み立てられていることを特徴とする。

【0007】

前記ホルダの外周面に前記外溝が複数形成されており、前記外溝の少なくとも１つに前記弾性リングが挿入されている。

【0008】

前記弾性リングとして、Ｏリングを用いる。

【0009】

前記ホルダの分割された部材は、互いに対向する面に凹部および凸部が設けられており、前記ホルダを組み立てる際に、一方の部材の凹部内に他方の部材の凸部が挿入される。

【0010】

前記ホルダは、樹脂、ゴムまたは金属からなる。

【0011】

前記軸受は、刈払機のドライブシャフトを軸受けするために使用される。

【発明の効果】

【0012】

本発明の軸受は、ベアリング、円筒形状のホルダ、および、弾性リングを有する軸受であって、前記ホルダは軸方向と平行に２つに分割された部材が組み合わされて形成されており、前記ホルダの内周面に周方向に形成された内溝内に前記ベアリングの外周部分が収容され、前記ホルダの外周面に周方向に形成された外溝内に前記弾性リングが収容された状態で組み立てられていることにより、回転抵抗を低減することが可能であり、さらに、軸の芯ズレが少なく、組立作業性が良いという効果を奏する。

【0013】

前記ホルダの外周面に前記外溝が複数形成されており、前記外溝の少なくとも１つに前記弾性リングを挿入することができるので、弾性リングの本数を変更することにより、軸受の圧入荷重を調整することが可能となる。

【0014】

前記ホルダの分割された部材は、互いに対向する面に凹部および凸部が設けられており、前記ホルダを組み立てる際に、一方の部材の凹部内に他方の部材の凸部が挿入されることにより、前記ホルダを組み立てる際の位置決めが容易になり、ホルダを簡単に、かつ、精度良く組み立てることができるようになる。

【0015】

前記軸受を、刈払機のドライブシャフトを軸受けするために使用することにより、従来よりもドライブシャフトの回転抵抗を低減することが可能となり、特に、バッテリーを用いた充電式の刈払機の場合、バッテリーの持続時間を長くすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の軸受の斜視図である。

【図2】Ｏリングを取り外した状態の軸受の斜視図である。

【図3】分割したホルダおよびボールベアリングの斜視図である。

【図4】軸受の断面図である。

【図5】別の形態の軸受の断面図である。

【図6】軸受を用いた刈払機の棹部の断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

本発明の軸受１を、図を用いて以下に詳細に説明する。図１が本発明の軸受１の斜視図であり、図２，３は軸受１を分解した状態を示す斜視図である。本発明の軸受１は、ベアリング２、円筒形状のホルダ３、および、複数の弾性リングであるＯリング４を組み合わせて構成されている。

【0018】

前記ベアリング２はボールベアリングであり、従来のボールベアリングを、前記軸受１によって軸受けするシャフトに合わせて選択して用いることができる。前記ホルダ３は円筒形状を有しており、軸方向と平行に２つに分割された第１部材３１と第２部材３２とが組み合わされて構成されている。前記第１部材３１および前記第２部材３２は同一形状であり、同一の部材である。

【0019】

前記第１部材３１は、内周面に周方向に１つの内溝３３が形成されており、外周面に周方向に３つの外溝３５が形成されている。前記第２部材３２も同様に、内周面に周方向に１つの内溝３４が形成されており、外周面に周方向に３つの外溝３６が形成されている。前記第１部材３１と前記第２部材３２とを組み合わせると、前記内溝３３と前記内溝３４が接続されて１つの環状の内溝を形成し、前記ベアリング２を保持することができ、前記外溝３５と前記外溝３６とが接続されて３つの環状の外溝を形成し、前記Ｏリング４を収容することができる。

【0020】

前記外溝３５および前記外溝３６の数は３つに限定するものではなく、軸受１の用途、大きさなどに応じて適宜変更することができる。また、前記外溝３５および前記外溝３６の深さおよび幅については、異なるものを平行に配置することも可能である。前記内溝３３および前記内溝３４の数を複数とすることも可能であり、複数のベアリング２を保持する、あるいは、複数の内溝から選択して１つのベアリング２を保持することも可能である。

【0021】

前記第１部材３１は、前記第２部材３２と対向する面に２つの凹部と２つの凸部が設けられており（図示せず）、前記第２部材３２は、前記第１部材３１と対向する面に２つの凹部３７と２つの凸部３８が設けられている。図３に示すように、前記第２部材３２の一端に２つの凹部３７を設け、他端に２つの凸部３８を設け、前記第１部材３１についても同じ位置に２つの凹部および２つの凸部を設けることで、前記第１部材３１と前記第２部材３２とを組み合わせる際に、前記第２部材３２の凹部３７を前記第１部材３１の凸部と対向させ、前記第２部材３２の凸部３８を前記第１部材３１の凹部と対向させて、前記第２部材３２の凸部３８を前記第１部材３１の凹部に挿入し、前記第１部材３１の凸部を前記第２部材３２の凹部に挿入させることで、簡単に前記第１部材３１と前記第２部材３２とを位置決めさせて、正確に組み合わせることができる。前記凸部および前記凹部の数、位置および形状は特に限定するものではなく、適宜、変更可能である。

【0022】

前記第１部材３１と前記第２部材３２とを組み合わせた時、図１，４，５に示すように、前記第１部材３１の端部と前記第２部材３２の端部との間には隙間を設けている。これにより、前記第１部材３１と前記第２部材３２とによって前記ベアリング２を挟み込んで前記Ｏリング４によって固定する際に、前記ベアリング２をより強固に保持することができる。前記第１部材３１の端部と前記第２部材３２の端部とを当接させて隙間を設けないことも可能である。

【0023】

前記ホルダ３は、樹脂、ゴムまたは金属（例えば、アルミ）で形成することができ、軽量化のために、図３に示すように、内周面に肉抜きを施すことができる。前記ホルダ３の分割数は、２つに限定するものではなく、３分割、４分割とすることも可能であるが、製造コストの点から同じ大きさ、同じ形状に分割することが好ましい。

【0024】

前記Ｏリング４は、前記ホルダ３の外周面の３つの環状の外溝に収容可能な大きさであり、前記ホルダ３の外周面の３つの環状の外溝の少なくとも１つに挿入することにより、前記ホルダ３内に前記ベアリング２を保持させ、前記ホルダ３を円筒形状に保つことができる。本実施形態では、弾性リングとして前記Ｏリングを用いて説明しているが、弾性リングはＯリングに限定するものではなく、前記ホルダ３を固定することができればよく、例えば、リング状のゴムバンドなどを用いることも可能である。そして、前記弾性リングの断面形状に合わせて、前記ホルダ３の環状の外溝の断面形状も適宜変更することができる。

【0025】

次に、本発明の軸受１の組み立て方法について説明する。図３の状態から、前記第２部材３２の内溝３４に前記ベアリング２を入れ、その後、前記第１部材３１を上から被せて、前記ベアリング２の上部を前記第１部材３１の内溝３３に入れて、図２に示すように、前記第１部材３１と前記第２部材３２とで前記ベアリング２を挟み込んで、前記第１部材３１と前記第２部材３２とを組み合わせる。

【0026】

この時、前記第２部材３２の凸部３８を前記第１部材３１の凹部に挿入し、前記第１部材３１の凸部を前記第２部材３２の凹部に挿入させることで、前記第１部材３１と前記第２部材３２とは、ずれることなく組み合わせることができる。そして、前記第１部材３１の内溝３３および前記第２部材３２の内溝３４に前記ベアリング２の外周部分が収容されていることにより、前記ベアリング２は、図２に示すように、前記ホルダ３の内周面に固定されて保持されている。

【0027】

前記第１部材３１と前記第２部材３２とを組み合わせた後、前記ホルダ３の外周面の３つの環状の外溝に、それぞれＯリング４を挿入させる。前記Ｏリング４によって、前記第１部材３１と前記第２部材３２とは互いに固定され、図１に示すように、前記軸受１の組立が完了する。

【0028】

図４，５に示すように、前記Ｏリング４は、外周面が前記外溝３５，３６から外側に突出した状態となっている。そして、前記軸受１を組み立てる際に、前記Ｏリング４は全ての環状の外溝に収容する必要はなく、図５に示すように、弾性リングである前記Ｏリング４の数を変更することにより、前記軸受１の圧入荷重を調整することが可能である。また、弾性リングの太さ、形状、材質などを変更することにより、前記軸受１の圧入荷重を調整することも可能である。

【0029】

前記軸受１はベアリング２を用いることにより、従来のブッシュ（すべり軸受け）を用いた場合よりも、回転抵抗を低減させることが可能となる。また、前記軸受１は、軽量なホルダ３を用いることにより軽量化が可能となり、さらに、軸の芯ズレが少なく、組立作業性が良く、組立時の油（グリス）が少なくてすむという優れた効果を奏することができる。

【0030】

図６は、本発明の軸受１を、刈払機に使用した場合の刈払機の棹部の概略断面図であり、棹部のパイプ６内に３つの軸受１を取り付けて、前記軸受１によって刈払機のドライブシャフト５を回転可能に保持している。この時、前記軸受１は、ホルダ３の外周面から前記Ｏリング４の一部が突出していることから、前記Ｏリング４が前記パイプ６の内周面と当接して、前記軸受１は前記パイプ６内に保持されている。このように、本発明の軸受１をバッテリーを用いた充電式の刈払機に使用した場合、ドライブシャフトの回転抵抗を低減させることでバッテリーの持続時間を長くすることが可能となる。また、前記軸受１は軽量であることにより、前記刈払機の軽量化も可能となる。前記軸受１は、刈払機以外のドライブシャフトに使用することも可能である。

【0031】

前記軸受１は、軸受けするシャフトに合わせてベアリング２を変更することにより、様々なシャフトに対応することができる。例えば、図５に示すように、ベアリング２と外径が同じで、内径が小さいベアリング２’を用いることにより、ホルダ３およびＯリング４は同じ部材でありながら、径の小さいシャフトに対応することができる。このように、本発明の軸受１は、同じホルダ３およびＯリング４を用いながらも、ベアリングだけを変更することで、異なる径のシャフトに対応することが可能となる。

【0032】

また、図５に示すように、前記ベアリング２’は、前記ベアリング２よりも幅も小さいが、前記ホルダ３の内周面の内溝に収容することができることから、構造的には問題が無い。さらに、前記ホルダ３の内溝の中にさらなる溝を設けることで、異なる外径および幅のベアリングに対応させることも可能である。このように、前記ホルダ３の内周面の内溝に収容可能な範囲であれば、ベアリング２を適宜交換することで、様々なシャフトに対応可能となり、前記ホルダ３および前記Ｏリング４は同じ部材を使用することができることから、本発明の軸受１は低コストで様々なシャフトに対応することが可能となり、刈払機以外のシャフトにも簡単に対応することができる。

【符号の説明】

【0033】

１ 軸受
２，２’ ボールベアリング
３ ホルダ
３１ 第１部材
３２ 第２部材
３３，３４ 内溝
３５，３６ 外溝
３７ 凹部
３８ 凸部
４ Ｏリング
５ ドライブシャフト
６ パイプ

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】