(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】綿棒および綿棒の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
A61M35/00 X
(21)【出願番号】P 2019157869
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391060546
【氏名又は名称】平和メディク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】栗本 康道
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-009090(JP,A)
【文献】特開平05-137753(JP,A)
【文献】実開平07-021022(JP,U)
【文献】実開昭60-058145(JP,U)
【文献】米国特許第04259955(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸部と、
前記軸部の少なくとも一方の端部において、繊維が巻き付けられて塊状に形成された綿球部と、
を備え、
前記綿球部は、
前記繊維が加熱され溶融することで形成された表層である第1溶融層と、前記軸部における前記繊維が巻き付けられていない部分と前記繊維が巻き付けられた部分との境目の前記繊維が加熱され溶融することで形成された表層である第2溶融層と、を有し、
前記第1溶融層は、
前記軸部の軸線に沿った断面において前記軸線に対し凸状に湾曲するように形成されており、
前記第2溶融層は、
溶融された前記繊維が前記軸部に対して固着している
ことを特徴とする綿棒。
【請求項2】
請求項1に記載の綿棒において、
前記軸部は、
前記端部において、前記繊維が巻き付けられるときに前記繊維が係止される係止部を有する
ことを特徴とする綿棒。
【請求項3】
棒状の軸部の少なくとも一方の端部に繊維が塊状に形成された綿球部を有する綿棒を製造する製造方法であって、
回転する前記軸部の前記端部に対して、前記繊維を供給することによって前記軸部の前記端部に前記繊維を巻き付けさせる繊維供給工程と、
前記繊維供給工程によって前記軸部の前記端部に巻き付けられた前記繊維を塊状に成形する成形工程と、
を実行し、
前記成形工程は、前記繊維が溶融されて形成された表層である第1溶融層および第2溶融層が形成されることによって前記繊維を塊状に成形する工程であって、加熱された第1成形板により前記第1溶融層が形成される第1加熱成形工程と、加熱された第2成形板により前記軸部における前記繊維が巻き付けられていない部分と前記繊維が巻き付けられた部分との境目に前記第2溶融層が形成される第2加熱成形工程と、を有し、
前記第1加熱成形工程は、前記第1成形板に対し前記繊維が押し付けられながら成形されることによって、前記軸部の軸線に沿った断面において前記軸線に対し凸状に湾曲するような前記第1溶融層が形成され、
前記第2加熱成形工程は、前記第2成形板に対し前記繊維が押し付けられながら成形されることによって、
前記繊維が溶融されることで前記軸部に対して固着しているような前記第2溶融層が形成される
ことを特徴とする綿棒の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の綿棒の製造方法において、
前記繊維供給工程で前記繊維が巻き付けられるときに前記繊維が係止される係止部を前記軸部の前記端部に形成する軸部加工工程
を実行し、
前記繊維供給工程は、前記軸部加工工程で形成された前記係止部に対して前記繊維が係止されることによって、前記軸部の前記端部に前記繊維が巻き付けられる
ことを特徴とする綿棒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綿棒および綿棒の製造方法に関するものであり、特に、ポリエステル繊維を綿球部の原料として利用した綿棒および綿棒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル繊維を綿球部の原料として利用した綿棒としては、紙製又は樹脂製の軸部の先端に対して、ポリエステル繊維からなるスライバーが接着剤で固定されたうえで巻き付けられることによって綿球部が形成されたものであった。また、このような綿棒において、軸部に巻き付けられたポリエステル繊維からなるスライバーを略球状に成形するときには、ポリビニルアルコール水溶液等の表面固着剤を噴霧塗布しながら略球状となるように成形型にて成形することによって、繊維の解れや型崩れ等が防止された綿球部となるように製造されるものであった(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような従来の綿棒では、綿球部の表面に表面固着剤が塗布されているため、検査等で採取する検体や医療行為等における薬品等を綿球部に吸着させるときの吸着の効率が、表面固着剤が塗布および吸着されている分で悪い場合があった。また、これら綿球部に吸着させた検体や薬品等を綿球部からリリースさせるときのリリースの効率が、表面固着剤が塗布および吸着されている分で悪い場合があった。つまり、検体や薬品等の吸着およびリリースの効率が従来の綿棒に比べ良くて、十分に繊維の解れや型崩れ等が防止された綿球部を備える綿棒が求められていた。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、綿棒であって、検体や薬品等の吸着およびリリースの効率が従来の綿棒に比べ良くて、十分に繊維の解れや型崩れ等が防止された綿球部を備える綿棒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
本発明の適用例の一つである綿棒(1)は、棒状の軸部(10)と、前記軸部の少なくとも一方の端部において、繊維が巻き付けられて塊状に形成された綿球部(20)と、を備え、前記綿球部は、前記繊維が加熱され溶融することで形成された表層である第1溶融層(25)と、前記軸部における前記繊維が巻き付けられていない部分と前記繊維が巻き付けられた部分との境目の前記繊維が加熱され溶融することで形成された表層である第2溶融層(25)と、を有し、前記第1溶融層は、前記軸部の軸線に沿った断面において前記軸線に対し凸状に湾曲するように形成されており、前記第2溶融層は、溶融された前記繊維が前記軸部に対して固着していることを要旨とする。
【0008】
また、上述の適用例の綿棒(1)において、前記軸部は、前記端部において、前記繊維が巻き付けられるときに前記繊維が係止される係止部(15)を有していてもよい。
【0009】
本発明の適用例の一つである棒状の軸部(10)の少なくとも一方の端部に繊維が塊状に形成された綿球部(20)を有する綿棒(1)を製造する製造方法であって、回転する前記軸部の前記端部に対して、前記繊維を供給することによって前記軸部の前記端部に前記繊維を巻き付けさせる繊維供給工程と、前記繊維供給工程によって前記軸部の前記端部に巻き付けられた前記繊維を塊状に成形する成形工程と、を実行し、前記成形工程は、前記繊維が溶融されて形成された表層である第1溶融層(25)および第2溶融層(25)
が形成されることによって前記繊維を塊状に成形する工程であって、加熱された第1成形板により前記第1溶融層が形成される第1加熱成形工程と、加熱された第2成形板により前記軸部における前記繊維が巻き付けられていない部分と前記繊維が巻き付けられた部分との境目に前記第2溶融層が形成される第2加熱成形工程と、を有し、前記第1加熱成形工程は、前記第1成形板に対し前記繊維が押し付けられながら成形されることによって、前記軸部の軸線に沿った断面において前記軸線に対し凸状に湾曲するような前記第1溶融層が形成され、前記第2加熱成形工程は、前記第2成形板に対し前記繊維が押し付けられながら成形されることによって、前記繊維が溶融されることで前記軸部に対して固着しているような前記第2溶融層が形成されることを要旨とする。
【0010】
また、上述の適用例の綿棒(1)を製造する製造方法において、前記繊維供給工程で前記繊維が巻き付けられるときに前記繊維が係止される係止部(15)を前記軸部の前記端部に形成する軸部加工工程を実行し、前記繊維供給工程は、前記軸部加工工程で形成された前記係止部に対して前記繊維が係止されることによって、前記軸部の前記端部に前記繊維が巻き付けられるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、実施形態の一例である綿棒1の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、綿棒1における綿球部20の概略構成を説明する図である。
【
図2-1】綿棒1の製造装置100の概略構成を示す図である。
【
図2-2】(A)は、製造装置100の第1成形装置130の成型板135の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、成型板135の概略構成を示す側面図である。
【
図2-3】(A)は、製造装置100の第2成形装置140の熱成型板142の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、熱成型板142の概略構成を示す側面図である。
【
図2-4】(A)は、製造装置100の第2成形装置140の熱成型板148の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、熱成型板148の概略構成を示す側面図である。
【
図3】綿棒1の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0013】
<綿棒1の構成>
図1(A),(B)を参照して、まず、本実施形態の綿棒1の全体構成について説明する。
図1(A)は、実施形態の一例である綿棒1の概略構成を示す斜視図であり、
図1(B)は、綿棒1における綿球部20の概略構成を説明する図である。
【0014】
図1(A)に示すように、綿棒1は、軸部10、1つの綿球部20を備えている。軸部10は、ポリプロピレンを含有した熱可塑性樹脂を棒状に成形したものである。綿球部20は、軸部10の一方の端部において、所定の繊維(本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート繊維である。)が繭型(又は砲弾型)の塊状となるように成形されたものである。
【0015】
図1(B)に示すように、また、綿棒1の軸部10は、綿球部20が形成される端部において、綿球部20に覆われている部分に所定の繊維が係止されるような凹凸が形成された係止部15を有する。さらに、綿棒1の綿球部20は、表層に所定の繊維が溶融された溶融層25を有しており、溶融層25の内側(綿球部20の内部)に所定の繊維が充填された状態となっている。そして、綿球部20においては、軸部10の中心軸方向の長さLは、45.0±5.0[mm]となっており、軸部10の軸方向と垂直をなす方向の最大直径Dは、16.0±1.5[mm]となっている。
【0016】
<綿棒1の製造装置100>
図2-1、
図2-2を参照して、次に、綿棒1を製造するための製造装置100について説明する。
図2-1は、綿棒1の製造装置100の概略構成を示す図である。
図2-2(A)は、製造装置100の第1成形装置130の成型板135の概略構成を示す斜視図であり、
図2-2(B)は、成型板135の概略構成を示す側面図である。
図2-3(A)は、製造装置100の第2成形装置140の熱成型板142の概略構成を示す斜視図であり、
図2-3(B)は、熱成型板142の概略構成を示す側面図である。
図2-4(A)は、製造装置100の第2成形装置140の熱成型板148の概略構成を示す斜視図であり、
図2-4(B)は、熱成型板148の概略構成を示す側面図である。
【0017】
図2-1に示すように、製造装置100は、搬送装置105、軸部加工装置110、繊維供給装置120、第1成形装置130、第2成形装置140、を備えている。搬送装置105は、軸部加工装置110等による製造工程の各工程が実行されるために、複数の軸部10が軸部加工装置110等の各装置を通過するように、複数の軸部10を所定の間隔を空けて進行方向へ順次搬送する装置である。また、搬送装置105は、軸部加工装置110を通過させるように複数の軸部10を進行方向へ一定の速さで搬送する第1搬送部106aと、第1成形装置130を通過させるように複数の軸部10を進行方向へ一定の速さで搬送する第2搬送部106bと、第2成形装置140を通過させるように複数の軸部10を進行方向へ任意の速さで搬送する第3搬送部106cと、を備えている。
【0018】
第1搬送部106aは、複数の軸部10が所定の間隔で載置されて任意の速さで作動することによって複数の軸部10を搬送する第1コンベア部107を備えている。また、第2搬送部106bは、複数の軸部10が所定の間隔で載置されて任意の速さで作動することによって複数の軸部10を搬送する第2コンベア部108aと、第2コンベア部108aとで複数の軸部10を挟むような位置で第2コンベア部108a上の複数の軸部10に接触するように固定された固定ベルト108bと、を備えている。さらに、第3搬送部106cは、複数の軸部10が所定の間隔で載置されて任意の速さで作動することによって複数の軸部10を搬送する第3コンベア部109aと、第3コンベア部109aとで複数の軸部10を挟むような位置で第3コンベア部109a上の複数の軸部10に接触するように配置され進行方向に対して逆方向へ任意の速さで作動する変速ベルト109bと、を備えている。なお、第1搬送部106aの第1コンベア部107と第2搬送部106bの第2コンベア部108aとの間、および第2搬送部106bの第2コンベア部108aと第3搬送部106cの第3コンベア部109aとの間においては、搬送される複数の軸部10が乗り移り可能であるように構成されている。また、第1搬送部106aの第1コンベア部107、第2搬送部106bの第2コンベア部108a、および第3搬送部106cの第3コンベア部109aと変速ベルト109bは、図示しない制御部によって各々の作動の速さを任意に変更可能であるように構成されている。
【0019】
ここで、搬送装置105における軸部10の搬送の態様について説明する。第1搬送部106aにおいては、第1コンベア部107上に図示しない複数の溝が形成されており、第1コンベア部107上に載置された複数の軸部10の各々が複数の溝の各々に嵌ることによって、進行方向に搬送される。また、第2搬送部106bにおいては、第2コンベア部108a上に載置された軸部10は、第2コンベア部108aと固定ベルト108bとによって挟まれることによって、進行方向に搬送される。このような第2搬送部106bにおいて、第2コンベア部108a上の各軸部10に接触するように固定された固定ベルト108bによって、第2コンベア部108aと固定ベルト108bとに挟まれた軸部10には軸を中心にして進行方向の逆方向へ回転させるための応力が作用する。したがって、第2コンベア部108a上の各軸部10は、第2コンベア部108の作動の速さに応じた速さで回転しながら進行方向に搬送されることとなる。さらに、第3搬送部106cにおいては、第3コンベア部109a上に載置された軸部10における進行方向の逆方向への移動が制限されるように、各コンベア部上に設けられた図示しないストッパに係止されるとともに軸を中心にして回転可能な状態で進行方向に搬送される。このような第3搬送部106cにおいて、第3コンベア部109a上の各軸部10に接触するように設けられた変速ベルト109bが進行方向に対して逆方向へ作動することによって、各軸部10に対して軸を中心にして進行方向の逆方向へ回転させるための応力が作用する。したがって、第3コンベア部109a上の各軸部10は、ストッパに係止されているため、変速ベルト109bによる応力によって進行方向とは逆方向に移動することなく回転しながら進行方向に搬送されることとなる。そして、第2搬送部106bおよび第3搬送部106cは、第2コンベア部108aと固定ベルト108bおよび第3コンベア部109aと変速ベルト109bが複数の軸部10の繊維が供給される端部の側に向かって所定の角度で傾斜するように設けられているため、軸部10に形成された綿球部20を後述する第1成形装置130等の成形板135等に押付けるように複数の軸部10を搬送する。
【0020】
軸部加工装置110は、搬送装置105の第1搬送部106aで搬送される軸部10に対して所定の加工を施すための装置であり、第1搬送部106aの第1コンベア部107に軸部10を1本ずつ載置させる図示しない軸供給部と、軸部10の一方の端部に係止部15を形成するためのヤスリを有するヤスリ部113と、を備える。繊維供給装置120は、搬送装置105の第2搬送部106bで搬送されることで第1成形装置130を通過しようとする軸部10に対して所定の量の繊維を供給するための装置であり、所定の繊維からなるスライバーが巻かれた図示しないリールと、リールを回転させて所定の量の繊維となるようにスライバーを切断するための図示しない切断部と、を備える。
【0021】
第1成形装置130は、繊維供給装置120から供給される所定の繊維を軸部10に巻き取らせるとともに、軸部10に巻き取られた繊維に対して所定の形状となるように成形する装置であり、係止部15が形成された軸部10の端部に接着剤を塗布するための接着剤塗布部132と、所定の位置に固定された後述する所定の形状の3つの成型板135と、軸部10に巻き取られた繊維に対して水を噴霧する噴霧器138と、を備える。第2成形装置140は、第1成形装置130において成形された軸部10の繊維に対して所定の形状となるように加熱しながら成形する装置であり、所定の位置に固定された所定の形状の成型板であって各々における温度調節可能なヒータを有する熱成型板142,144,146,148を備える。なお、第2成形装置140において、熱成型板142,144,146は各々が同じ形状であるものの、熱成型板148は熱成型板142等とは異なる形状であり、詳細については後述する。
【0022】
図2-2(A)、(B)に示すように、第1成形装置130の成型板135は、樹脂製のものであって、綿棒1が押付けられる上面に第1成形面部136aと第2成形面部136bとが形成されている。第1成形面部136aは、下面方向に湾曲した凹形状に形成されている面であり、綿棒1の綿球部20となる塊状の所定の繊維が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-2(B)を参照。)。第2成形面部136bは、第1成形面部136aの最も下面に近い位置に比べてせり上がった面であり、綿棒1の軸部10における所定の繊維に覆われている部分と覆われていない部分との境界となる部分の近傍(所謂、綿球部20の付け根となる部分)が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-2(B)を参照。)。
【0023】
図2-3(A)、(B)に示すように、第2成形装置140の熱成型板142は、表面にテフロン(登録商標)でのコーティングが施された真鍮製のものであって、綿棒1が押付けられる上面に第1成形面部143aと第2成形面部143bとが形成されるとともに、上面の下方に第1成形面部143aと第2成形面部143bとを加熱する円柱状のヒータであるヒータ部143cを有している。第1成形面部143aは、下面方向に湾曲した凹形状に形成されている面であり、綿棒1の綿球部20となる塊状の所定の繊維が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-3(B)を参照。)。第2成形面部143bは、第1成形面部143aの最も下面に近い位置に比べてせり上がった面であり、綿棒1の軸部10における所定の繊維に覆われている部分と覆われていない部分との境界となる部分の近傍(所謂、綿球部20の付け根となる部分)が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-3(B)を参照。)。なお、ヒータ部143cは、図示しない外付けの制御部による制御によって、第1成形面部143aと第2成形面部143bとの温度が200~300℃となるように制御可能に設けられている。
【0024】
図2-4(A)、(B)に示すように、第2成形装置140の熱成型板148は、表面にテフロン(登録商標)でのコーティングが施された真鍮製のものであって、綿棒1が押付けられる上面に第1成形面部149aと第2成形面部149bとが形成されるとともに、上面の下方に第1成形面部149aと第2成形面部149bとを加熱する円柱状のヒータであるヒータ部149cを有している。第1成形面部149aは、下面に向かう方向に傾斜するように形成されている面であり、綿棒1の綿球部20となる塊状の所定の繊維の一部が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-4(B)を参照。)。第2成形面部149bは、第1成形面部149aから延設された最もせり上がった部分であり、綿棒1の軸部10における所定の繊維に覆われている部分と覆われていない部分との境界となる部分の近傍(所謂、綿球部20の付け根となる部分)が回転しながら押付けられる部分である(特に、
図2-4(B)を参照。)。なお、ヒータ部149cは、図示しない外付けの制御部による制御によって、第1成形面部149aと第2成形面部149bとの温度が200~300℃となるように制御可能に設けられている。
【0025】
<綿棒1の製造方法>
図3を参照して、次に、製造装置100による綿棒1の製造方法について説明する。
図3は、綿棒1の製造方法を説明するフローチャートである。
【0026】
図3に示すように、綿棒1の製造方法では、製造装置100において、軸部加工装置110による軸部加工工程と、繊維供給装置120による繊維供給工程と、第1成形装置130による第1成形工程と、第2成形装置140による第2成形工程と、が実行される。まず、軸部加工工程では、軸部加工装置110において、軸供給部によって複数の軸部10が第1搬送部106aの第1コンベア部107上の複数の溝の各々に嵌るように1本ずつ載置されるとともに、第1コンベア部107上に載置された軸部10に対し一方の端部にヤスリ部113によって係止部15が形成される。このとき、ヤスリ部113のヤスリは軸部10の外周面に接触した状態で回転する構成となっているため、第1搬送部106aで搬送される軸部10においては、係止部15が軸部10の外周面の周囲に亘って形成されることとなる。
【0027】
次に、繊維供給工程では、第1成形装置130の接着剤塗布部132によって第2搬送部106bの第2コンベア部108a上の軸部10における係止部15が形成された端部に接着剤が塗布されるとともに、繊維供給装置120によって第2コンベア部108上の軸部10の係止部15が形成されて接着剤が塗布された端部に対して所定の量の繊維が供給される。このとき、第2搬送部106bで搬送される軸部10は軸を中心に回転しているため、接着剤が軸部10の外周面の周囲に亘って塗布されるとともに、繊維が係止部15に引っ掛かることによって軸部10の外周面上の周囲に亘った塊状となるように巻き取られる。また、巻き取られた塊状の繊維は、巻き取られる部分である軸部10の端部に塗布されている接着剤によって軸部10の端部に固着されることとなる。
【0028】
次に、第1成形工程では、第1成形装置130において、3つの成型板135によって第2搬送部106bの第2コンベア部108a上の軸部10の端部に巻き取られた塊状の繊維が繭型等の略所定の形状に成形されるとともに、3つの成型板135で成形された塊状の繊維に対して噴霧器によって水が噴霧される。このとき、第2搬送部106bで搬送される軸部10は塊状の繊維を成型板135に押付けるように軸を中心に回転しているため、3つの成型板135によって繭型等の略所定の形状に成形されることとなる。
【0029】
そして、第2成形工程では、第2成形装置140において、熱成型板142,144,146,148によって第3搬送部106cの第3コンベア部109a上の軸部10の端部の塊状の繊維の表面が溶融され、溶融層25が形成された所定の形状の綿球部20に成形される。なお、この第2成形工程では、熱成型板142の上面の温度(例えば、220~240℃である。)が、熱成型板144,146,148の上面の温度(例えば、250~270℃である。)に比べて低くなるように設定されているものとする。また、この第2成形工程では、軸部10の端部の塊状の繊維が第2成形装置140の熱成型板142,144,146,148に対して押付けられる時間(熱成型板142等の各々に接触する時間)が1.0~2.0秒となるように、第3コンベア部109aの作動の速さが設定されているものとする。
【0030】
このとき、第3搬送部106cで搬送される軸部10は塊状の繊維が熱成型板142,144,146,148に押付けられるように軸を中心に回転しているため、熱成型板142等によって塊状の繊維の外面の全てに亘って加熱されて溶融層25が形成されるとともに繭型等の所定の形状の綿球部20に成形されることとなる。また、第2成形工程では、第1成形工程で水が噴霧された状態の塊状の繊維に対して熱成型板142等による成形が実行されるため、水が噴霧されていない状態の繊維に対して熱成型板142等で成形する場合に比べて、塊状の繊維が過剰に溶融してしまうことを防ぐことができる。さらに、第2成形工程では、4つ目の熱成型板148による成形において、綿棒1の軸部10における綿球部20に覆われている部分と覆われていない部分との境界となる部分の近傍が軸を中心に回転しながら押付けられるため、綿球部20は付け根となる部分の繊維が溶融されることで軸部20に固着して、軸部10に対して抜けにくくなるように成形されることとなる。そして、第2成形工程においては、第3搬送部106cの変速ベルト109bの作動の速さを任意に変更できるため、軸部10の回転の速さを任意に変更することで、軸部10の塊状の繊維における熱成型板142等に押し付けられることによる熱の伝わり具合を適切になるように調節して、成形不良となることを防ぐことができる。また、具体的に、例えば、所定の繊維の種類を変更したりした場合には、変更した繊維の種類の特性(例えば、上述のポリエステルとは溶融温度の異なる繊維)に応じた適切な熱の伝わり具合となるように、軸部10の回転の速さを変更することができる。さらに、例えば、綿球部20の大きさや溶融層25の厚さを変更する場合には、所望の形態の綿棒となるように、軸部10の回転の速さを変更することもできる。
【0031】
<綿棒1および綿棒1の製造方法の特徴>
上述の実施形態の綿棒1によれば、綿棒1は、棒状の軸部10と、軸部10の少なくとも一方の端部において、繊維が巻き付けられて塊状に形成された綿球部20と、を備え、綿球部20は、繊維が溶融されて形成された表層である溶融層25を有する。このような綿棒1であれば、綿球部20において従来のような表面固着剤を塗布および吸着させることなく繊維のみで形成されているため、検体や薬品等の吸着およびリリースの効率が従来の綿棒に比べて良い綿球部を備えた綿棒とすることができる。また、綿球部20においては、繊維が溶融されて形成された表層である溶融層25が形成されることによって成形されているため、繊維の解れや型崩れ等が十分に防止された綿棒とすることもできる。
【0032】
また、上述の実施形態の綿棒1によれば、軸部10は、端部において、繊維が巻き付けられるときに繊維が係止される係止部15を有している。このような綿棒1であれば、軸部10に対して滑りやすい繊維(ポリエステル繊維)からなる綿球部20において、係止部15に係止させた状態の繊維が軸部10で巻き取られて成形されているため、軸部10に対して綿球部20が外れたりして繊維の解れや型崩れ等が発生してしまうことを防止できる。
【0033】
上述の実施形態の綿棒1を製造する製造方法によれば、回転する軸部10の端部に対して、繊維を供給することによって軸部10の端部に繊維を巻き付けさせる繊維供給工程と、繊維供給工程によって軸部10の端部に巻き付けられた繊維を塊状に成形する第2成形工程と、を実行し、第2成形工程では、加熱されることで繊維が溶融されて形成された表層である溶融層25が形成されることによって繊維を塊状の綿球部20に成形するように実行される。
【0034】
このような綿棒1の製造方法であれば、第2成形工程において、綿球部20が従来のような表面固着剤を使用しないで繊維のみで成形されるため、検体や薬品等の吸着およびリリースの効率が従来の綿棒に比べて良い綿球部を備えた綿棒を製造することができる。また、第2成形工程においては、繊維が溶融されて形成された表層である溶融層25が形成されることによって綿球部20が成形されているため、繊維の解れや型崩れ等が十分に防止された綿棒を製造することもできる。
【0035】
また、上述の実施形態の綿棒1の製造方法によれば、繊維供給工程で繊維が巻き付けられるときに繊維が係止される係止部15を軸部10の端部に形成する軸部加工工程を実行し、繊維供給工程は、軸部加工工程で形成された係止部15に対して繊維が係止されることによって、軸部10の端部に繊維が巻き付けられるように実行される。このような綿棒1であれば、軸部10に対して滑りやすく巻き取られ難い繊維(ポリエステル繊維)から綿球部を製造するときに、係止部15に係止させた状態の繊維を軸部10で巻き取り始めることができるため、繊維が確実に巻き取られた綿球部20を製造することができる。つまり、このような綿棒1の製造方法であれば、軸部10に対して綿球部20が外れたりして繊維の解れや型崩れ等の発生が防止された綿棒を製造することができる。
【0036】
<その他の実施形態>
上述の実施形態の綿棒1の製造方法において、綿球部の大きさや形状が上述のようなものの製造方法であるとしたが、これに限定されず、上述の製造方法であれば、種々の大きさや形状の綿球部を備えた綿棒を製造することもできる。例えば、綿球部の大きさや形状に応じた第1成形板や第2成形板等を使用した製造装置による製造方法であれば、上述の綿球部20に比べて長さL及び最大直径Dを大きく又は小さくしたりした大きさの綿球部や綿球部20のような繭型等ではなく綿球部の先端を尖らせた雫型の形状等の綿球部であっても製造することができる。より具体的には、製造する綿球部の大きさが上述の実施形態の綿球部20に比べて大きいものであれば、第2成形板等の形状を大きくすることで、上述の実施形態の綿球部20よりも大きい綿球部であっても繊維の解れや型崩れ等が十分に防止されたものを製造することができる。
【0037】
上述の実施形態の綿棒1の製造装置100において、第1成形板135や第2成形板142等については、所定の位置に固定されたものとしたが、これに限定されず、第1成形装置130や第2成形装置140に対して上下左右や前後に可動であったり、コンベア部106上の軸部10に対する角度を調整可能であったりするような構成とされていてもよい。このような構成の第1成形板135や第2成形板142等を備える製造装置100であれば、第1成形板135や第2成形板142等の位置や角度を調整することで、種々の形状や大きさの綿球部を備えた綿棒を製造することができる。また、上述の実施形態の綿棒1の製造装置100において、搬送装置105では、第1コンベア部107の溝、第2コンベア部108aと固定ベルト108b、第3コンベア部109aのストッパによって、搬送される軸部10が進行方向とは逆方向に搬送されないような構成となっていたが、これに限定されず、搬送される軸部10が進行方向とは逆方向に搬送されないような構成となっていれば、どのような構成であってもよい。例えば、第1コンベア部や第2コンベア部において、第3コンベア部109aのストッパのようなものが設けられていてもよく、このような製造装置であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0038】
上述の実施形態の綿棒1の製造装置100において、第1成形板135や第2成形板142等については、個数が所定の個数としたり、形状が所定の形状のものとしたりしたが、これに限定されず、第1成形板135や第2成形板142等の個数は種々の個数であってもよく、形状も種々の形状のものであってもよい。つまり、製造装置100によって製造する綿棒の綿球部の大きさや形状に応じて、第1成形板135や第2成形板142等の個数や形状を種々の個数や形状のものに変更してもよい。
【0039】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…綿棒、10…軸部、15…係止部、20…綿球部、25…溶融層、100…製造装置、105…搬送装置、106a…第1搬送部、106b…第2搬送部、106c…第3搬送部、107…第1コンベア部、108a…第2コンベア部、108b…固定ベルト、109a…第3コンベア部、109b…変速ベルト、110…軸部加工装置、113…ヤスリ部、120…繊維供給装置、130…第1成形装置、132…接着剤塗布部、135…成型板、136a,143a,149a…第1成形面部、136b,143b,149b…第2成形面部、138…噴霧器、140…第2成形装置、142,144,146,148…熱成型板、143c,149c…ヒータ部。