(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21K 9/278 20160101AFI20230502BHJP
B61D 29/00 20060101ALI20230502BHJP
F21K 9/272 20160101ALI20230502BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20230502BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20230502BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230502BHJP
【FI】
F21K9/278
B61D29/00
F21K9/272
F21V23/00 115
F21V23/00 140
F21V23/00 150
F21V33/00 400
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019184094
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591269712
【氏名又は名称】アンデス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】金沢 義徳
(72)【発明者】
【氏名】小倉 章弘
(72)【発明者】
【氏名】細川 進
(72)【発明者】
【氏名】沼尾 忠壱
(72)【発明者】
【氏名】十文字 宏昭
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-87848(JP,A)
【文献】特開2013-140683(JP,A)
【文献】特開2016-134279(JP,A)
【文献】特開2011-154993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
B61D 17/00-49/00
F21V 23/00-99/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の客室内に装備される照明装置において、
前記客室内に光を照射する直管型の灯本体と、該灯本体の一端側に設けられ前記客室内を撮影するカメラとを有し、
前記カメラは、前記灯本体の一端側で軸方向に延びる管状の軸部と、該軸部の周りに回転可能に装着されたケース本体とを備え、
前記軸部は、その軸心を間にして2分割されたハウジングを組み合わせてなり、各ハウジングを組み合わせた内側に、別部品を収納可能な内部空間が形成されたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記軸部の内側に、少なくともカメラ用の電源ドライバ基板が収納されたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記ケース本体の内側で前記軸部の外周との間に、少なくとも撮影素子を含むカメラモジュール基板が収納されたことを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記ケース本体は、その両端の開口端面がプレートにより塞がれ、
前記各プレートに、前記灯本体の一端側を貫通させる貫通口が設けられ、
前記各プレートの少なくとも一方に、前記カメラにより撮影された画像データを保存する記録媒体を出し入れする挿脱口が設けられたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記軸部に対して前記ケース本体を所定の回転角度に固定可能な角度調整手段を有し、
前記角度調整手段は、前記軸部の外周の一端側で円周方向に並ぶ複数の選択ネジ孔と、前記ケース本体で前記複数の選択ネジ孔に重なる部位に配された一の固定ネジ孔と、前記固定ネジ孔に貫通させて前記複数の選択ネジ孔の何れかに締結するネジとを備えることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の客室内に装備される照明装置において、特にカメラを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、一般的な直管型の照明装置として、例えば鉄道車両の客室内の天井に設置するものでは、省電力化等の理由により光源を従来の蛍光管からLED(発光ダイオード)に置き換えたものが増えている(例えば特許文献1)。このように、LEDを光源としたLED照明装置では、直流電源を利用するので他の電気機器を容易に組み合わせることができる。
【0003】
例えばLED照明装置の照射範囲における防犯を目的として、照明装置に監視カメラを組み込んだものが知られている(例えば特許文献2,3)。すなわち、直管型のLED照明装置の一端側に、外側収納部の中で内側収納部が軸回りに回転可能に設けられ、内側収納部にカメラ(撮影部)が収納されている。ここでカメラの撮影方向は、内側収納部を回転させることで変更可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-86813号公報
【文献】特開2014-110181号公報
【文献】特開2014-110239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したカメラを組み込んだLED照明装置では、カメラの撮影方向を変更できるが、外側収納部の内側でカメラを内包して回転する内側収納部は筒状であるため、その内部に嵩張る別部品を組み込む作業は困難であった。また、回転する内側収納部のような可動部分には、重量が増す別部品を配置することは設計上好ましくなかった。
【0006】
そのため、照明装置として、部品の配置スペースが限定されて設計の自由度に乏しく、例えばLED用およびカメラ用の電源等の嵩張る部品は、直管の一端側にカメラと一緒にまとめて配置することは困難であり他端側に配置していた。従って、部品の組み付けが分散されるだけでなく、配線の処理も遠く引き回すことになり、製造が面倒でコストが嵩むという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、照明装置に組み込むカメラの撮影方向を変更できる上に、設計の自由度が高く各部品を同じ側にまとめて配置することを可能とし、製造が容易でコストを低減することができる照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]車両の客室内に装備される照明装置(10)において、
前記客室内に光を照射する直管型の灯本体(11)と、該灯本体(11)の一端側に設けられ前記客室内を撮影するカメラ(20)とを有し、
前記カメラ(20)は、前記灯本体(11)の一端側で軸方向に延びる管状の軸部(21)と、該軸部(21)の周りに回転可能に装着されたケース本体(22)とを備え、
前記軸部(21)は、その軸心を間にして2分割されたハウジング(211,212)を組み合わせてなり、各ハウジング(211,212)を組み合わせた内側に、別部品を収納可能な内部空間が形成されたことを特徴とする照明装置(10)。
【0009】
[2]前記軸部(21)の内側に、少なくともカメラ用の電源ドライバ基板(23)が収納されたことを特徴とする前記[1]に記載の照明装置(10)。
【0010】
[3]前記ケース本体(22)の内側で前記軸部(21)の外周との間に、少なくとも撮影素子を含むカメラモジュール基板(24)が収納されたことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の照明装置(10)。
【0011】
[4]前記ケース本体(22)は、その両端の開口端面がプレート(27,28)により塞がれ、
前記各プレート(27,28)に、前記灯本体(11)の一端側を貫通させる貫通口(27a,28a)が設けられ、
前記各プレート(27,28)の少なくとも一方に、前記カメラ(20)により撮影された画像データを保存する記録媒体を出し入れする挿脱口(28b)が設けられたことを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の照明装置(10)。
【0012】
[5]前記軸部(21)に対して前記ケース本体(22)を所定の回転角度に固定可能な角度調整手段を有し、
前記角度調整手段は、前記軸部(21)の外周の一端側で円周方向に並ぶ複数の選択ネジ孔(215)と、前記ケース本体(22)で前記複数の選択ネジ孔(215)に重なる部位に配された一の固定ネジ孔(222)と、前記固定ネジ孔(222)に貫通させて前記複数の選択ネジ孔(215)の何れかに締結するネジ(223)とを備えることを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の照明装置(10)。
【0013】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の照明装置(10)によれば、直管型の灯本体(11)の一端側にカメラ(20)を設けたから、車両の客室内における照明と監視の2つの機能を、一つの装置で実現することができる。ここでカメラ(20)は、灯本体(11)の一端側に延びる軸部(21)の周りにケース本体(22)を回転可能に装着してなるため、カメラ(20)の撮影方向を容易に変更することができる。
【0014】
カメラ(20)の軸部(21)は、その軸心を間にして2分割されたハウジング(211,212)を組み合わせてなる。これにより、軸部(21)を通常の管状では型抜きできない複雑な形状とすることも可能となり、成型難度を低くすることができ、製造時における組立性も良くすることができる。
【0015】
各ハウジング(211,212)を組み合わせた内側には、別部品を収納可能な内部空間を形成する。これにより、軸部(21)の内部に、別部品を容易に配置することが可能となり、設計の自由度が高まり各部品を同じ側(灯本体(11)の一端側)にまとめて配置することができる。
【0016】
前記[2]に記載の照明装置(10)によれば、軸部(21)の内側に、少なくともカメラ用の電源ドライバ基板(23)を収納する。このような構成とすれば、嵩張る別部品である電源ドライバ基板(23)であっても、軸部(21)の内部にまとめて組み込むことにより、限られた大きさの照明装置(10)内における部品の配置スペースを有効に活用することができる。
【0017】
前記[3]に記載の照明装置(10)によれば、ケース本体(22)の内側で軸部(21)の外周との間に、少なくとも撮影素子を含むカメラモジュール基板(24)を収納する。このような構成とすれば、カメラ(20)の主要部をなすカメラモジュール基板(24)を、ケース本体(22)の内側で軸部(21)に干渉しないように組み込むことができ、カメラ(20)全体の小型化も可能となる。
【0018】
前記[4]に記載の照明装置(10)によれば、ケース本体(22)は、その両端の開口端面がプレート(27,28)によって塞がれ、各プレート(27,28)に、灯本体(11)の一端側を貫通させる貫通口(27a,28a)を設ける。このような簡易な構成により、軸部(21)の周りにケース本体(22)を回転可能に容易に装着することができる。
【0019】
各プレート(27,28)の少なくとも一方には、カメラ(20)により撮影された画像データを保存する記録媒体を出し入れする挿脱口(28b)を設ける。これにより、ケース本体(22)の外壁の主要部は余り加工することなく、外壁の両端をなすプレート(27,28)から記録媒体をケース本体(22)に対して容易に出し入れすることができる。
【0020】
前記[5]に記載の照明装置(10)によれば、軸部(21)に対してケース本体(22)を所定の回転角度に固定可能な角度調整手段を有する。このような構成とすれば、カメラ(20)の撮影方向を適宜変更してから、所望の向きに固定して維持することが可能となる。
【0021】
角度調整手段は、軸部(21)の外周の一端側で円周方向に並ぶ複数の選択ネジ孔(215)と、ケース本体(22)に配された一の固定ネジ孔(222)と、固定ネジ孔(222)に貫通させて複数の選択ネジ孔(215)の何れかに締結するネジ(223)とを備える。このような簡易な構成により、軸部(21)に対してケース本体(22)を所定の回転角度に確実かつ容易に固定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る照明装置によれば、照明装置に組み込むカメラの撮影方向を変更できる上に、設計の自由度が高く各部品を同じ側にまとめて配置することを可能とし、製造が容易でコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る照明装置のカメラを示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す背面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す底面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す左側面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る照明装置を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る照明装置の要部(
図8中の破線の円内)を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る照明装置のカメラの角度調整を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る照明装置のカメラの角度調整の詳細を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は一例であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0025】
<照明装置10の概要>
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る照明装置10は、車両の客室内に装備されるものであり、客室内に光を照射する直管型の灯本体11と、該灯本体11の一端側に設けられ客室内を撮影するカメラ20とを有している。なお、照明装置10を装備する車両の種類は特に限定されないが、例えば鉄道車両の客室内の天井に設置するものとして好適である。
【0026】
<灯本体11について>
図1および
図2に示すように、灯本体11は、従来の直管型の蛍光灯を模した形状であり、細長い円筒状のガラス管12の内部にLED実装基板が挿入されている。図示省略したLED実装基板は、例えば細幅状の基板上に光源素子であるLEDを複数並べて実装したものである。LED実装基板は、ガラス管12の内部において、例えばシリコン接着剤等によって所定の向きに固定される。なお、灯本体11の外周表面には、LED光の光拡散を兼ねた破損時の飛散防止用の拡散フィルムを貼り付けると良い。
【0027】
灯本体11の両端側には、それぞれ従来の蛍光灯の口金を模したコネクタ15が設けられている。これにより、照明装置10は、鉄道車両の客室天井にある従来の蛍光灯用のソケットに取り付けることが可能である。ガラス管12の一端側には、後述するカメラ20の先にキャップ13が固定され、キャップ13の同軸上にコネクタ15が装着されている。一方、ガラス管12の他端側には、同様にキャップ14が固定され、キャップ14の同軸上にコネクタ15が装着されている。
【0028】
各キャップ13,14は、例えば外部からの絶縁保護を目的として樹脂により略円筒状に形成され、互いに形状が少しだけ異なっている。すなわち、一端側のキャップ13は、その外周側の一部にカメラ20が被さる形状である他、その内周側には、LED照明用の電源ドライバ基板17を固定するための溝構造が形成されている。他端側のキャップ14は、その外周側は全周に亘り略同径の形状である他、その内周側には、キャパシタ18を固定するための溝構造が形成されている。
【0029】
LED照明用の電源ドライバ基板17は、LEDに給電して点灯を制御するものであり、例えば広範囲のAC電源(交流入力85~278V)、およびバッテリ電源用DC(直流入力70~110V)に単一製品で対応可能なものである。電源ドライバ基板17は、キャップ13とコネクタ15の内部に収納できるように小型化されている。
キャパシタ18は蓄電器であるが、例えば電流リップルの改善のために従来のコンデンサよりも大容量の電解コンデンサが適している。キャパシタ18は、他端側のキャップ14とコネクタ15の内部に収納されている。
【0030】
灯本体11の両端となるコネクタ15は、それぞれ同様に構成されており、各キャップ13,14の外側開口に被さるように装着される。各コネクタ15は、例えば樹脂により底有りの略円筒状に形成され、外側を向く端面(底の部分)に外部給電用の金属製のピンが2本ずつ突設されている。一端側のコネクタ15は、LED照明用の電源ドライバ基板17の固定と外部からの絶縁保護をなし、他端側のコネクタ15は、キャパシタ18の固定と外部からの絶縁保護をなすものである。
【0031】
また、灯本体11の両端側の各キャップ13,14およびコネクタ15には、それぞれの外側を覆うように金属製のカバー16が被せられている。各カバー16は、例えばアルミニウム等の金属によって外側のコネクタ15から各キャップ13,14の外周に亘って覆う底有りの略円筒状に形成され、外側を向く端面(底の部分)に前記2本のピンを挿通させる小孔が設けられている。各カバー16は、本実施形態が鉄道車両用照明である場合、その外郭が不燃材であることが基本前提のために採用されたものである。
【0032】
<カメラ20について>
図1および
図2に示すように、カメラ20は、客室内を撮影するものであり、灯本体11の一端側に回転可能に設けられている。カメラ20は、例えば可視光を用いて動画および静止画を撮影可能なCCDカメラやCMOSカメラ等である。カメラ20の撮影対象は、客室内そのものと乗客であり、カメラ20の撮影範囲には、灯本体11からLED光が照射される。
【0033】
カメラ20は、灯本体11の一端側で軸方向に延びる管状の軸部21と、該軸部21の周りに回転可能に装着されたケース本体22とを備えている。ここで軸部21は、その軸心を間にして上下に2分割されたハウジング211,212を組み合わせてなる。各ハウジング211,212を組み合わせた内側には、別部品を収納可能な内部空間が形成されている。
【0034】
<<軸部21の詳細>>
図2に示すように、軸部21の2分割された各ハウジング211,212は、例えば樹脂により一体成形されたものである。ここでハウジング211,212の材質を樹脂等の絶縁材とすることにより、内部に収納した別部品の外部との絶縁性を実現することができる。また、各ハウジング211,212に2分割することで、成型難度を低くすることが可能となり、製品生産時の組立性を良くすることができる。
【0035】
各ハウジング211,212の内側には、別部品を収納可能な内部空間が形成されている。この軸部21の内部空間には、外部から隔離した状態で別部品を収納することができる。本実施形態では、軸部21の内部空間に、例えばカメラ用の電源ドライバ基板23が収納されている。
【0036】
カメラ用の電源ドライバ基板23は、カメラ20に給電して駆動を制御するものであり、例えば広範囲のAC電源(交流入力85~278V)、およびバッテリ電源用DC(直流入力70~110V)に単一製品で対応可能なものである。電源ドライバ基板23は、前記LED照明用の電源ドライバ基板17よりも嵩張るが、軸部21の内部空間に収まるものである。各ハウジング211,212の内周側には、電源ドライバ基板23を固定するための溝構造が形成されている。
【0037】
図2に示すように、軸部21の一端側には、各ハウジング211,212の外周が一段削られて、前記キャップ13を外嵌させた状態で固定する取付部213が形成されている。各ハウジング211,212における取付部213の上下端には、キャップ13を周り止めして固定するための平キーが設けられている。
【0038】
また、軸部21の他端側には、各ハウジング211,212の内側で、前記ガラス管12の一端側を挿入した状態で固定する軸受部214が形成されている。軸受部214に対してガラス管12の一端側は、例えば接着により一体に固定される。さらに、上側のハウジング211の外周には、軸部21に対してケース本体22を所定の回転角度に固定可能な後述する角度調整手段の一部が設けられている。
【0039】
<<ケース本体22の詳細>>
ケース本体22は、前記軸部21の外周の回りに回転可能に装着されている。ここでケース本体22は、手動により軸部21の軸心を回転中心として回転する。ケース本体22の回転範囲は、例えば撮影方向が真下を向く鉛直方向を基準角度(0度)として、その左右にそれぞれ40度ずつ等と所定の角度範囲に設定されている。また、ケース本体22は、後述する角度調整手段により軸部21に対して所定の回転角度で固定可能である。
【0040】
ケース本体22は、例えばアルミニウム等の金属により図示した形状に形成されている。ケース本体22の長手方向の全長は、前記軸部21の全長とほぼ一致している。ケース本体22の断面形状は、全長に亘って軸部21の外周上半側に沿う上部半円形断面と、上部より下側の下部略矩形断面とを組み合わせた蒲鉾型である。ケース本体22の内側で、軸部21は上部半円形断面の内側に沿うように配されている。
【0041】
ケース本体22の内側で軸部21の外周との間に、本実施形態では例えば撮影素子を含むカメラモジュール基板24が収納されている。ケース本体22の内壁側には、カメラモジュール基板24を固定するための溝構造が形成されている。ケース本体22の全体形状は、軸部21を内挿する他、カメラモジュール基板24等の別部品を収納可能な内部空間を確保した上で、灯本体11の一端側より余り大きく出っ張らずに違和感のないデザインにすると良い。
【0042】
カメラモジュール基板24は、例えばCCDまたはCMOS等の撮影素子と、CPU、ROM、RAM等で構成される制御回路と、撮影素子上に光学像を形成するレンズ等を備える。ここでレンズは、広い範囲を撮影可能な広角を用いると良い。詳しく言えば、カメラモジュール基板24に実装されたホルダ状のカメラヘッド部25にレンズが配され、レンズの奥側に被写体の光学像を入射光として光電変換して撮影する撮影素子の受光面が配されている。カメラモジュール基板24には、商用電源等の電力系統から電源ドライバ基板23を介して給電される。
【0043】
カメラモジュール基板24の制御回路は、カメラ20による撮影を制御すると共に、撮影された画像データを保存する制御を行う。ここで画像データは、例えばSDカード等の記録媒体に保存される。画像データの保存は、例えばSDカードに常時録画され、一週間程度の録画分が保存されて、古いデータから上書き保存される。また、カメラモジュール基板24は、外部からの時刻調整機能と、撮影画角の確認用として外部へのアナログ映像出力端子を備えている。
【0044】
カメラモジュール基板24の下側には、板状のガラスカバー26が重ね合わされている。ケース本体22の底面壁は、前記カメラヘッド部25のレンズが合致する位置に開口部221が形成されているが、この開口部221はガラスカバー26により遮蔽される。ガラスカバー26は、本実施形態が鉄道車両用照明であるため、その外郭が不燃材であることが基本前提のために採用されたものである。
【0045】
ガラスカバー26には、破損時の飛散防止用のフィルムを貼り付けると良い。ケース本体22の内壁側には、ガラスカバー26を固定するための溝構造も形成されている。なお、ガラスカバー26によりケース本体22の底面壁の全域を覆うようにすれば、後から機能追加等により底面壁に開口部を追加することになっても、新たな開口部もガラスカバー26で遮蔽することが可能となる。
【0046】
ケース本体22は、その両端の開口端面がプレート27,28によって塞がれている。各プレート27,28は、例えばアルミニウム等の金属薄板で開口端面と同形状に形成されている。各プレート27,28には、それぞれ灯本体11の一端側を貫通させる貫通口27a,28aが形成されている。一端のプレート27の貫通口27aには、灯本体11の一端側のキャップ13が貫通し、他端のプレート27の貫通口28aには、灯本体11の一端側のガラス管12が貫通している。なお、各貫通口27a,28aには、灯本体11の一端側に連なる前記軸部21を貫通させるように構成しても良い。
【0047】
一端のプレート27には、USBコネクタ用の開口部27bと、外部映像出力端子用の開口部27cも設けられている。ここでUSBコネクタでは、例えば外部からタブレット端末等で時刻合わせを行う。また、外部映像出力端子では、例えば録画画像をアナログコンポジット信号で出力し、外部の表示モニターで確認可能である。また、一端のプレート27には、USBコネクタと外部映像出力端子の各開口部27b,27cを覆うために、例えばアルミニウム等の金属薄板のカバー27dが着脱可能に取り付けられている。
【0048】
他端のプレート28には、カメラ20により撮影された画像データを保存する記録媒体を出し入れする挿脱口28bも設けられている。ここで記録媒体が例えばSDカードである場合、挿脱口28bは、SDカードの横幅に合致する大きさのスリット状に形成されている。また、他端のプレート28にも挿脱口28bを覆うために、例えばアルミニウム等の金属薄板のカバー28cが着脱可能に取り付けられている。
【0049】
<<角度調整手段の詳細>>
ケース本体22は、角度調整手段によって、軸部21に対して所定の回転角度に固定可能である。角度調整手段は、軸部21に設けた複数の選択ネジ孔215と、ケース本体22に設けた一の固定ネジ孔222と、ネジ223とを備える。このような角度調整手段は、軸部21およびケース本体22の例えば両端側の2箇所に設けられている。
【0050】
詳しく言えば、軸部21の上側のハウジング211のうち、その両端側の外周の上端側(一端側)に、円周方向に等間隔で並ぶ複数(例えば5つ)の選択ネジ孔215が設けられている。また、ケース本体22の外壁の上端側で、前記軸部21にある複数の選択ネジ孔215に重なる部位には、各選択ネジ孔215に合致する一の固定ネジ孔222が設けられている。
【0051】
ここでケース本体22は、固定ネジ孔222に貫通させたネジ223を各選択ネジ孔215の何れかに止めることにより、軸部21に対して所定の回転角度に固定される。また、ケース本体22において、固定ネジ孔222を設けた外壁の上端側は、板厚を厚くしてネジ223を確実に固定できるように強度を高めると良い。
【0052】
<本照明装置10の作用>
次に、本照明装置10の主な作用について説明する。
本照明装置10は、直管型の灯本体11の両端側に、従来の蛍光灯の口金を模したコネクタ15を設けたから、鉄道車両の客室天井にある従来の蛍光灯用のソケットにそのまま取り付けて使用することができる。そして、灯本体11の一端側にカメラ20を設けたから、鉄道車両の客室内における照明と監視の2つの機能を、一つの装置で実現することができる。
【0053】
すなわち、灯本体11からのLED光が照射された客室内や乗客の様子をカメラ20で撮影することができる。撮影した画像データに基づいて、客室内の状況を分析したり乗客の様子を監視することが可能となる。ここで画像データは、アナログ映像出力端子から出力され外部の表示モニター等に表示して確認することかでき、また、例えばSDカード等の記録媒体に一週間程度の録画分が保存される。
【0054】
カメラ20は、灯本体11の一端側に延びる軸部21の周りにケース本体22を回転可能に装着してなり、容易に撮影方向を変更することができる。ここでカメラ20の軸部21は、その軸心を間にして2分割されたハウジング211,212を組み合わせてなる。これにより、軸部21の特に内部を通常の管状では型抜きできない複雑な形状とすることも可能となる。
【0055】
本実施形態では、
図2に示すように、軸部21の内部にカメラ用の電源ドライバ基板23を固定するための溝構造や仕切り等の構造を設けている。これらの複雑な内部構造は、軸部21を2分割したことによりアンダーカットとなることはない。従って、軸部21の成型難度を低くすることが可能となり、製造時における組立性を良くすることが可能となる。
【0056】
さらに、軸部21の内部に別部品を配置させた後で管状に組み合わせることができる。そこで、各ハウジング211,212を組み合わせた内側には、別部品を収納可能な内部空間を形成する。これにより、軸部21の内部に、前記電源ドライバ基板23等の嵩張る別部品でも容易に配置することが可能となり、設計の自由度が高く各部品を同じ側灯本体11の一端側にまとめて配置することができる。
【0057】
ここで軸部21の内部における別部品は、外部から隔離した状態で収納することができる。従って、ハウジング211,212の材質を樹脂等の絶縁材とすれば、内部に収納した別部品の外部との絶縁性を実現することができる。さらには、ハウジング211,212を密閉状態に組み合わせる構造とすることにより、内部に収納した別部品の防水性を確保することも可能となる。
【0058】
ケース本体22の内側では、軸部21の外周との間に、撮影素子を含むカメラモジュール基板24を収納している。これにより、カメラ20の主要部をなすカメラモジュール基板24を、ケース本体22の内側で軸部21に干渉しないように組み込むことができ、カメラ20全体の小型化も可能となる。ケース本体22の全体的な形状は、軸部21を内挿する他、カメラモジュール基板24等の必要最低限の部品を収納可能な内部空間を確保した上で、灯本体11の一端側より余り大きく出っ張らずに違和感のないデザインにまとめることができる。
【0059】
ケース本体22は、その両端の開口端面がプレート27,28により塞がれ、各プレート27,28に、灯本体11の一端側を貫通させる貫通口27a,28aを設けている。このような簡易な構成により、軸部21の周りにケース本体22を回転可能に容易に装着することができる。ここで一端のプレート27には、USBコネクタ用の開口部27bと、外部映像出力端子用の開口部27cを設け、他端のプレート28には、SDカード等を出し入れする挿脱口28bも設けている。これにより、ケース本体22の外壁の主要部は余り加工することなく、外壁の両端をなすプレート27,28からSDカード等を容易に出し入れする等、ケース本体22の両端面も有効活用することができる。
【0060】
また、本照明装置10では、灯本体11の一端側におけるキャップ13とコネクタ15の内部に、LED照明用の電源ドライバ基板17を収納している。同様に、灯本体11の他端側におけるキャップ14とコネクタ15の内部には、キャパシタ18を収納している。これにより、限られた大きさの照明装置10内における部品の配置スペースを有効に活用することができる。特に、LED照明用の電源ドライバ基板17を、カメラ用の電源ドライバ基板23と完全に分離したことにより、電源ドライバ基板23の破損時でも照明が点灯し続けることが可能となる。
【0061】
次に、
図10および
図11に基づき、カメラ20の撮影方向の調整について説明する。
本照明装置10では、カメラ20の軸部21に対してケース本体22を所定の回転角度に固定可能な角度調整手段を有する。これにより、カメラ20の撮影方向を適宜変更してから、所望の向きに固定して維持することが可能となる。ここで角度調整手段は、軸部21の外周に並ぶ複数の選択ネジ孔215と、ケース本体22に配された一の固定ネジ孔222と、これらのネジ孔215,222に締結するネジ223とを備える。
【0062】
ネジ223を固定ネジ孔222ないし選択ネジ孔215に締結していない状態では、ケース本体22は、軸部21の軸心を回転中心として手動で回転させることができる。ここでケース本体22の回転範囲は、例えば撮影方向が真下を向く鉛直方向を基準角度(0度)として、その左右にそれぞれ40度ずつ等と所定の角度範囲に設定されている。
【0063】
図10に示すように、角度調整手段によってケース本体22を固定できる回転角度は、撮影方向が真下を向く0度(同図(a))と、
図10中で0度より右側にそれぞれ回転させて固定可能な+20度(同図(b))、+40度(同図(c))、および
図10中で0度より左側にそれぞれ回転させて固定可能な-20度(同図(d))、-40度(同図(e))の合計5つの回転角度が予め定められている。
【0064】
この合計5つの回転角度は、それぞれ軸部21の外周の一端側で円周方向に並ぶ5つの選択ネジ孔215の位置(中心角)に対応して定められている。すなわち、
図10(a)に示すように、ケース本体22が0度の位置にある時は、
図11(a)に示すように、軸部21の外周に並ぶ複数の選択ネジ孔215のうち中央の選択ネジ孔215に対して、ケース本体22の固定ネジ孔222に貫通させたネジ223が締結されている。
【0065】
また、
図10(b)に示すように、ケース本体22が+20度の位置にある時は、
図11(b)に示すように、軸部21の外周に並ぶ複数の選択ネジ孔215のうち左から2つ目の選択ネジ孔215に対して、ケース本体22の固定ネジ孔222に貫通させたネジ223が締結されている。
【0066】
さらに、
図10(c)に示すように、ケース本体22が+40度の位置にある時は、
図11(c)に示すように、軸部21の外周に並ぶ複数の選択ネジ孔215のうち左端の選択ネジ孔215に対して、ケース本体22の固定ネジ孔222に貫通させたネジ223が締結されている。なお、
図11中では省略したが、ケース本体22が-20度、-40度の位置にある時も、同様にそれぞれ対応する位置にある選択ネジ孔215に対してネジ223が締結される。
【0067】
このような簡易な構成の角度調整手段により、軸部21に対してケース本体22を所定の回転角度に確実かつ容易に固定することができる。角度調整手段によるカメラ20の撮影方向の調整は、車両あるいは客室ごとに照明装置10の取付位置(客室天井のソケットの配置)が異なる場合、照明装置10の取付時に最適な撮影方向に予め調整しておくことができる。もちろん、照明装置10を一旦取り付けた後、カメラ20の撮影方向を途中で変更することもできる。なお、アナログ映像出力端子から出力された画像データを外部の表示モニター等に表示して確認することで、最適な撮影方向を確認することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば照明装置10を装備する車両は、貨客を輸送する鉄道車両に限定されることはなく、バスの客室やトラックの荷室等であっても良く、さらに航空機や船舶等の乗物全般や、建物内における一般の照明に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば鉄道車両等の車室内の室内灯に限らず、様々な分野の照明装置にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…照明装置
11…灯本体
12…ガラス管
13…キャップ
14…キャップ
15…コネクタ
16…カバー
17…電源ドライバ基板
18…キャパシタ
20…カメラ
21…軸部
211…ハウジング
212…ハウジング
22…ケース本体
23…電源ドライバ基板
24…カメラモジュール基板
25…カメラヘッド部
26…ガラスカバー
27…プレート
28…プレート