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特許7272655チオールイソメラーゼ阻害剤およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】チオールイソメラーゼ阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20230502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 9/20 20060101ALN20230502BHJP
   A61K 9/48 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P11/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P7/02
A61P35/00
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019562217
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018015694
(87)【国際公開番号】W WO2018140858
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/451,858
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519277689
【氏名又は名称】ウェスタン ニュー イングランド ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギビンズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック,リサ-マリー
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0145209(US,A1)
【文献】国際公開第2014/175253(WO,A1)
【文献】特開2016-175866(JP,A)
【文献】特表2016-540048(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103505731(CN,A)
【文献】Current Medicinal Chemistry,2007年,Vol.14, No.18, pp.1966-1977
【文献】International Journal of Clinical Pharmacologyand Therapeutics,Vol.48, No.5, Page.335-341 ,2010年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を含む、血栓症または血栓性疾患(急性心筋梗塞、胎盤不全および心房細動を除く)である疾患または状態を治療または予防する方法において使用するための医薬組成物であって、
前記細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物が、ザフィルルカスト、その薬学的に許容される塩、および/または固体状態形態であり、
前記方法が、治療有効量の前記細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を、それを必要とする患者に投与することを含み、前記患者に少なくとも1つの追加の治療剤を提供することをさらに含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記細胞外チオールイソメラーゼが、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、チオレドキシン、ERp5、ERp57、ERp72、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記血栓性疾患が、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈形成術および/もしくはステント留置後の急性閉塞、一過性虚血発作、脳血管疾患、卒中、末梢血管疾患、深静脈血栓症、肺塞栓症、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物が剤形として処方される、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物が錠剤またはカプセルとして配合される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
経口的に、局所的に、非経口的に、吸入もしくはスプレーにより、舌下に、経皮的に、頬側投与を介して、または直腸内に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記追加の治療剤が、抗血栓剤、抗凝固剤、化学療法剤、抗ウイルス剤、または抗炎症剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ザフィルルカストを含む、患者において血栓症、血栓性疾患(急性心筋梗塞、胎盤不全および心房細動を除く)、血小板凝集、フィブリン生成、またはこれらの組合せを予防または治療する方法に用いるための医薬組成物であって、
前記方法が、治療有効量の前記ザフィルルカストを、それを必要とする前記患者に投与することを含み、前記方法が、前記患者に少なくとも1つの追加の治療剤を提供することをさらに含む、医薬組成物。
【請求項10】
動脈血栓症および静脈血栓症の予防または治療のための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記方法が、1日に1回、2回、または3回投与される、約10~約200mg、具体的には約20~約175mg、より具体的には約40~約150mg、およびよりいっそう具体的には約60~約125mgの1日当たりの総用量のザフィルルカストを投与することを含む、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
細胞において細胞外チオールイソメラーゼのチオールイソメラーゼを阻害する方法に用いるための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、ザフィルルカスト、その薬学的に許容される塩、および/または固体状態形態を含み、
前記方法が、前記細胞を有効量のザフィルルカスト、その薬学的に許容される塩、および/または固体状態形態と接触させることを含む、医薬組成物。
【請求項13】
前記細胞外チオールイソメラーゼが、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、チオレドキシン、ERp5、ERp57、ERp72、またはこれらの組合せである、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
チオールイソメラーゼは、ジスルフィドオキシドレダクターゼの大ファミリーのメンバーであり、新たに合成されたタンパク質の適切なフォールディングのために必要な翻訳後ジスルフィド交換を触媒する。チオールイソメラーゼ/ジスルフィドオキシドレダクターゼの大ファミリーの約20のメンバーがヒトにおいて存在し、チオールイソメラーゼのドメイン組成はa-b-b’-a’である。これらのチオールイソメラーゼは一般に酸化還元および異性化反応が可能であり、多くの場合に小胞体中に見出され、そこで新たに翻訳されたタンパク質の適切なフォールディングを触媒する。
【0002】
さらに、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、ERp5、ERp57、ERp72およびチオレドキシン(TRX)などの一部のチオールイソメラーゼは、細胞外機能を行うことが最近発見された。以下において細胞外チオールイソメラーゼと称するこれらの5つのチオールイソメラーゼは、血小板などの細胞により分泌され、形質膜に再結合し、そこで細胞外オキシドレダクターゼとして機能する。細胞外チオールイソメラーゼはまた、内皮細胞の表面上において同定されており、血栓形成およびフィブリン形成の活性化の他に、血小板凝集、顆粒分泌、フィブリノーゲン結合、およびカルシウム動員において役割を果たすことが同定されている。これらの酵素のうち、血栓形成におけるPDIの役割は最もよく研究され理解されているが、ERp5、ERp57およびERp72もまた必要とされることが公知である。
【0003】
チオールイソメラーゼを研究するためのツールは主に抗体を含み、これは制限を有している。抗血栓療法への新規のアプローチを付与するこれらのチオールイソメラーゼに対する小分子などの医薬品の必要性が当該技術分野において依然として存在する。
【0004】
加えて、PDIファミリーメンバーは、卵巣、前立腺、肺、黒色腫、リンパ腫および神経膠腫などの多くの別個のがん種において上方調節されるが、PDIの阻害は卵巣がん細胞株において細胞傷害性である。これらの酵素はがんの腫瘍形成において多機能的関与を有すると考えられており、がん遺伝子活性化、アポトーシスの回避、主要組織適合複合体クラスI関連Aタンパク質(MICA)の分泌、および化学療法剤への抵抗性において役割を果たす。
【0005】
さらには、細胞外チオールイソメラーゼが関与するがんおよび他の疾患関連プロセスを治療するためにこれらのチオールイソメラーゼに対する小分子などの医薬品の必要性が当該技術分野において依然として存在する。
【0006】
細胞外チオールイソメラーゼが関与する疾患および状態の発症または進行を予防および治療するために選択的におよび広範に細胞外チオールイソメラーゼを標的化する医薬品の開発の必要性も当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0007】
治療有効量の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を、それを必要とする患者に投与して、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患または状態を治療または予防することを含み、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物が、ザフィルルカスト、モンテルカスト、CGP-13501、CGP-7930、アロセトロン、バルサラジド、ベンセラジド、ブタクラモール、レバドパ、メサラジン、オクスカルバゼピン、これらの薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および/または固体状態形態である、方法が本明細書に開示される。
【0008】
別の実施形態では、患者において血栓症、血栓性疾患、血小板凝集、フィブリン生成、またはこれらの組合せを予防または治療する方法は、治療有効量のザフィルルカストを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、細胞において細胞外チオールイソメラーゼのチオールイソメラーゼを阻害する方法は、細胞を有効量のザフィルルカスト、モンテルカスト、CGP-13501、CGP-7930、アロセトロン、バルサラジド、ベンセラジド、ブタクラモール、レバドパ、メサラジン、オクスカルバゼピン、これらの薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および/または固体状態形態と接触させることを含む。
【0010】
上記および他の特徴は以下の図面および詳細な説明により例示される。
【0011】
一般に、本開示は選択的に、本明細書において開示される任意の適切な成分を含み、それからなり、またはそれから本質的になるものであり得る。本開示はさらに、またはあるいは、先行技術の組成物において使用されるまたはそれ以外に本開示の機能および/もしくは目的の達成のために必要でない、任意の成分、材料、原料、アジュバントまたは種を欠くか、または実質的に含まないように配合され得る。
【0012】
これより図面を参照するが、これらの図面は例示的な実施形態であり、限定的と考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】in vitro酵素アッセイにおけるザフィルルカストによる様々なチオールイソメラーゼの阻害のデータを示す図である。
図2】in vitro酵素アッセイにおけるモンテルカストによる様々なチオールイソメラーゼの阻害のデータを示す図である。
図3】in vitro酵素アッセイにおける様々な濃度の他の阻害剤による様々なERp57の阻害のデータを示す図である。
図4】ザフィルルカストによるコラーゲン刺激性の血小板凝集の阻害のデータを示す図である。
図5】ザフィルルカスト(四角)またはビヒクル(丸)の存在下でのマウスにおいて形成された血栓の最大蛍光強度を示す図である。
図6】出血時間に対するザフィルルカストの効果を、尾出血アッセイにより評価した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
チオールイソメラーゼ阻害剤および1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼが関与する疾患または状態の発症または進行の予防または治療におけるそれらの治療的使用が本明細書に開示される。
【0015】
一実施形態では、1つもしくは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患もしくは状態の治療もしくは予防のため、または1つもしくは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響されるプロセスを阻害するために、それを必要とする患者において1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼを阻害する方法は、本明細書に開示される治療有効量の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物または細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を含む組成物を患者に投与することを含む。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、本明細書に記載される通り、血栓症、血栓性疾患、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの感染性疾患、がん、炎症、またはこれらの組合せである。
【0016】
細胞外チオールイソメラーゼ
本明細書において使用される場合、「細胞外チオールイソメラーゼ」としては、少なくともプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、チオレドキシン(TRX)、ならびに以下の小胞体内在性タンパク質:ERp5、ERp57、およびERp72が挙げられる。
【0017】
PDIは、血小板活性化において重要な役割を有する508アミノ酸のタンパク質である。活性化した血小板からのPDIの放出が20年近く前に実証され、多くのその後の研究において確認されており、またそれは内皮細胞によっても放出される。PDIに対する抗体およびマイクロモル濃度の抗生物質バシトラシンは、血小板凝集、付着、および分泌を阻害する。PDIの阻害は、卵巣がんモデルにおいてがん細胞増殖を阻害し、腫瘍壊死を誘導することが示されている。
【0018】
ERp5は、2つのチオレドキシン(CGHC含有モチーフ)ドメインを含有し、PDIと47%の配列同定(sequence identify)を共有する440アミノ酸のタンパク質である。細胞表面ERp5の遮断は、血小板凝集、フィブリノーゲン結合、およびアルファ顆粒分泌の減少を結果としてもたらす。うっ血におけるその役割に加えて、高レベルのERp5発現は、ホジキンリンパ腫における効率的な抗腫瘍応答の防止と相関することが示されており、前立腺および乳がん進行のバイオマーカーとして提唱されている。
【0019】
ERp57は505アミノ酸からなるチオールイソメラーゼであり、初期血小板活性化の調節および動脈血栓形成のサポートにおいて重要な役割を果たし、血小板凝集、密顆粒分泌、フィブリノーゲン結合、カルシウム動員および動脈血流条件下での血栓形成に影響する。血栓形成におけるその役割に加えて、ERp57は、インフルエンザヘマグルチニン(hemaagglutinin)の適切なフォールディングのために必要とされることならびにアルツハイマー病の疾患進行およびがん転移に関与することも示されている。
【0020】
ERp72は、PDIと37%の配列相同性を共有する645アミノ酸の可溶性ERタンパク質である。ERp72は3つの触媒性CGHCドメインを有し、これはPDI、ERp5およびERp57において見出される2つと比較される。活性化後に血小板の表面に誘引されるERp72のパーセントの増加は、PDI、ERp5およびERp57のそれより高く、ERp72は重要であるが現在分かっていない役割を血小板活性化において行うことが示唆される。血栓形成に対するERp72阻害の効果は同様に未知である。活性化した血小板表面へのその再配置に加えて、ERp72はポリオーマウイルスの感染プロセスに関与し、またNADPHオキシダーゼ(Nox)1のレドックスシグナル伝達にも関与している。
【0021】
一実施形態では、阻害のための標的は、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、チオレドキシン(TRX)、ERp5、ERp57、およびERp72などの細胞外チオールイソメラーゼの1つまたは複数のチオールイソメラーゼである。一実施形態では、阻害のための標的はPDIである。一実施形態では、阻害のための標的はチオレドキシン(TRX)である。一実施形態では、阻害のための標的はERp5である。一実施形態では、阻害のための標的はERp57である。一実施形態では、阻害のための標的はERp72である。
【0022】
「患者」という用語は、本明細書において使用される場合、医療処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物である。医療処置は、疾患または障害などの既存の状態の治療、予防的もしくは予防上の処置、または診断処置を含むことができる。一部の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0023】
「提供する」という用語は、本明細書において使用される場合、与えること、投与すること、販売すること、流通させること、譲渡すること(利益のためまたはそうではない)、製造すること、合成すること、または分配することを意味する。
【0024】
「少なくとも1つの追加の治療剤と共に細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩および追加の活性剤が、単一の剤形中に同時に提供され、別々の剤形中に付随的に提供され、または細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物もしくはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの追加の活性剤の両方が患者の血流中に存在するような時間内にある何らかの時間により分離された投与のための別々の剤形において投与されることを意味する。細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩および追加の活性剤は、同じ医療従事者により患者に処方される必要はない。1つまたは複数の追加の活性剤は処方を必要としない。細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物もしくはその薬学的に許容される塩または少なくとも1つの追加の活性剤の投与は、任意の適切な経路、例えば、経口錠剤、経口カプセル、経口液、吸入、注射、坐剤または局所的接触を介して行われ得る。
【0025】
「治療」という用語は、本明細書において使用される場合、(a)疾患もしくは状態または疾患もしくは状態の症状が、該疾患または状態にかかりやすい患者であり得るがまだそれを有するとは診断されていない患者において起こることを予防するため;(b)疾患または状態を阻害するため、すなわち、その発症を阻止するため;および(c)疾患または状態を緩和するため、すなわち、疾患または状態の後退を引き起こすために充分であるように、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を、唯一の活性剤としてまたは少なくとも1つの追加の活性剤と共に提供することを含む。「治療する」および「治療」はまた、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患または状態を患っている患者に、治療有効量の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を、唯一の活性剤としてまたは少なくとも1つの追加の活性剤と共に提供することを意味する。「1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患または状態」は、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼが疾患または状態に関与することを意味する。
【0026】
本明細書に開示される細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物または医薬組成物/組合せは、患者を治療するために有用である。細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物または医薬組成物/組合せは、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性が関与する疾患および障害を治療または予防するために有用である。ある特定の実施形態では、患者は、血栓症に罹患しているまたは血栓症を発症するリスクがある。ある特定の実施形態では、患者はがんに罹患している。ある特定の実施形態では、疾患は、血液がん、HPV関連がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、または大腸(結腸直腸)がんである。他の実施形態では、治療される患者は、炎症性障害、感染性疾患、免疫障害、または神経学的疾患に罹患している。
【0027】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物
本明細書において使用される場合、「細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物」は、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの阻害剤である。例示的な細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物としては、ザフィルルカスト、モンテルカスト、CGP-13501(CAS登録番号56189-68-5)、CGP-7930(CAS登録番号57717-80-3)、アロセトロン、バルサラジド、ベンセラジド、ブタクラモール、レバドパ、メサラジン、オクスカルバゼピン、これらの薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および/または固体状態形態が挙げられる。1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの阻害剤として、これらの化合物の1つまたは複数を抗血栓剤、および抗凝固剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、化学療法剤または抗がん剤など、またはこれらの組合せとして使用することができる。
【0028】
ザフィルルカストは、合成の選択的ペプチドであるロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)であり、化学名4-(5-シクロペンチルオキシカルボニルアミノ-l-メチルインドール-3-イルメチル)-3-メトキシ-N-o-トリルスルホニルベンズアミドを有する。ザフィルルカストは血小板機能、血栓形成およびがん細胞増殖を阻害する広範囲に使用可能なチオールイソメラーゼ阻害剤であることを我々は発見した。
【0029】
【化1】
【0030】
ザフィルルカストの合成および医薬品形態は、米国特許第4,859,692号明細書;同第5,294,636号明細書;同第5,319,097号明細書;同第5,482,963号明細書;同第5,583,152号明細書;同第5,612,367号明細書;同第6,143,775号明細書;同第6,333,361号明細書;および同第6,399,104号明細書(これらの内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)においてさらに記載されている。
【0031】
モンテルカストは、合成ペプチドであるロイコトリエン受容体アンタゴニスト(LTRA)であり、化学名[R-(E)]-l-[[[l-[3-[2-(7-クロロ-2-キノリニル)エテニル]フェニル]-3-[2-(7-クロロ-2-キノリニル)エテニル]フェニル]-3 -[2-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)フェニル]プロピル]チオ]メチルシクロプロパン酢酸を有する。モンテルカストおよびモンテルカストナトリウムの合成および医薬品形態は、米国特許第5,565,473号明細書(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)においてさらに記載されている。
【0032】
「活性剤」という用語は、本明細書において使用される場合、単独でまたは別の化合物、構成成分、もしくは混合物と組み合わせて患者に投与された時に、直接的または間接的に、患者に生理学的効果を付与する化合物(細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物など)、構成成分、または混合物を意味する。間接的な生理学的効果は、代謝物または他の間接的な機序を介して起こってもよい。活性剤が化合物である場合、塩、遊離化合物の溶媒和物(水和物など)、化合物の結晶形態、非結晶(すなわち、非晶性)形態、および任意の多形体が包含される。それらを得るために使用される方法にかかわらず、全ての形態が本明細書において想定される。
【0033】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書において使用される場合、開示される化合物の誘導体であって、親化合物が無機および有機の、その酸または塩基付加塩を調製することにより改変されているものを含む。本発明における化合物の塩は、従来の化学的方法により塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩など)と反応させることにより、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることにより調製することができる。そのような反応は、典型的に、水中または有機溶媒中、または2つの混合物中で実行される。使用可能な場合、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が使用される。本発明における化合物の塩は、化合物および化合物の塩の溶媒和物をさらに包含する。
【0034】
薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱物または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩などが挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機または有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性塩および第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、従来の非毒性酸塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタン二スルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH-COOH(nは0~4である)などの有機酸から調製される塩が挙げられる。追加の好適な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17th ed.,Mack Publishing Company、Easton、Pa.,第1418頁(1985年)において見出すことができる。
【0035】
抗血栓
1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの阻害は、血小板凝集、顆粒分泌、付着、血栓形成およびフィブリン生成を遮断するので、細胞外チオールイソメラーゼは、うっ血および血栓症の調節に関与する。抗血栓剤は、危険な血餅(急性血栓症)の予防(一次予防、二次予防)または治療のために治療的に使用され得る。
【0036】
PDI、ERp5またはERp57の活性の阻害は、血栓症のマウスモデルにおいて血管のレーザー誘導損傷後の血栓形成を遮断する。
【0037】
さらには、チオールイソメラーゼの活性の阻害は血小板蓄積およびフィブリン形成の両方に効果があるので、これらの治療法は、動脈の血餅(血小板の不適切な活性化により概ね誘発される心臓発作および卒中)または静脈の血餅(凝固系の不適切な活性化により概ね引き起こされる深静脈血栓症および肺塞栓症)のいずれかしか標的化しない現在利用可能な療法に対する改善となる。データは、各チオールイソメラーゼは独特の基質特異性および作用機序を有することを示唆し、それぞれが独立した標的であり得ることを示唆する。
【0038】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物により予防または治療される血栓性疾患または状態は、急性心筋梗塞、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈形成術および/もしくはステント留置後の急性閉塞、一過性虚血発作、脳血管疾患、卒中、末梢血管疾患、胎盤不全、心房細動、深静脈血栓症、肺塞栓症、またはこれらの組合せであり得る。
【0039】
凝集、顆粒分泌および拡散研究などの広範な血小板機能アッセイにおいてザフィルルカスト(0.1μΜ~10μΜ)の存在下での血小板応答を試験した。ザフィルルカストは、血小板凝集、密およびα顆粒分泌、コラーゲン上での血小板拡散および流れ下での血栓形成を阻害することが判明した。これらのデータは、ザフィルルカストおよびプロテインジスルフィドイソメラーゼサブファミリーのチオールイソメラーゼの他の広範な阻害剤を抗血栓薬として使用できることを示唆する。
【0040】
一実施形態では、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患または状態は、動脈血栓症、静脈血栓症、血栓性疾患、例えば、急性心筋梗塞、安定狭心症、不安定狭心症、冠動脈形成術および/もしくはステント留置後の急性閉塞、一過性虚血発作、脳血管疾患、卒中、末梢血管疾患、胎盤不全、心房細動、深静脈血栓症、および肺塞栓症、またはこれらの組合せであり、かつ、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物はザフィルルカストである。
【0041】
抗がん
PDI阻害はがん療法のための実行可能な標的である。Xuら、「Protein disulfide isomerase:a promising target for cancer therapy」、Drug Discovery Today、第19巻、第3号、2014年3月を参照。
【0042】
ERp5の腫瘍転移における役割についてさらなる証拠が存在する。Gumireddyら、「In vivo selection for metastasis promoting genes in the mouse」、PNAS(2007年)、104巻第6696~6701頁を参照。
【0043】
ERp57は、ヒトにおいてPDIA3遺伝子から発現される。それは505アミノ酸からなり、正常組織と比較して、乳がん、肺がん、子宮がん、胃がんおよび肝臓がんの他に、黒色腫において上方調節される。ERp57の発現レベルは、NIH3T3細胞において発がん性肉腫ウイルスの形質転換能力と正に相関しており、ERp57が発がん性形質転換に関与することを示唆する。他のPDIファミリーメンバーと異なり、ERp57はその触媒活性a’ドメインを通じてDNA分子と相互作用するので、ERp57は核内DNAと相互作用して遺伝子発現を活性化させる能力を有する。ERp57はまた、STAT3転写複合体の構成要素であり、ERp57-STAT3はSTAT3により調節される細胞シグナル伝達および増殖をモジュレートする。ERp57はまた、細胞増殖および生存の別の重要な調節因子であるmTOR経路を通じて遺伝子発現を調節する。ERp57はまた、それ自体が追加の転写因子を活性化させる能力を有するRef-l/APEなどの、DNA修復に関与する少なくとも3つのタンパク質との結合に関与している。遺伝子調節機能に加えて、ERp57発現の増加は、卵巣がんにおけるパクリタキセルを用いる治療に対する抵抗性および喉頭がんにおける放射線抵抗性と相関し、乳がんの骨への転移を促進し、乳がん細胞株におけるEGFRシグナル伝達の脱調節に関与し、STAT3、AktおよびPLCyなどの標的分子のその下流の活性化を防止する。ERp57は血栓形成において役割を果たすので、がん患者における罹病および死亡の主要な原因であるがん関連血栓症の予防の潜在的な標的である。
【0044】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を用いて治療されるがんは、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、黒色腫、リンパ腫、神経膠腫、乳がん、または神経芽腫であり得る。
【0045】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物は、単独でまたは任意選択で別の抗がん剤もしくは化学療法剤と組み合わせて使用され得る。
【0046】
一実施形態では、がんは、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物とカルボプラチンまたはシスプラチンなどの化学療法剤との組合せを用いて治療される。そのような実施形態では、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物は、カルボプラチンおよび/またはシスプラチン抵抗性を克服または予防することにより利点を提供し得る。
【0047】
抗感染/抗ウイルス
チオールイソメラーゼ、特にPDIはまた、HIV-1の侵入に関与する。広範なチオールイソメラーゼ阻害剤(例えば、ザフィルルカスト)の使用は、Khanら、「Discovery of a Small Molecule PDI Inhibitor That Inhibits Reduction of HIV-1 Envelope Glycoprotein gpl20.」、ACS Chemical Biology、第6巻、第3号、2011年3月により実証されるように、保護効果を付与してウイルスの侵入を防止し得る。
【0048】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を用いて治療または予防されるウイルス性疾患は、HIV、デングウイルス、またはロタウイルスであり得る。1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物はさらに、Orlandi.「Protein Disulfide Isomerase-mediated Reduction of the A Subunit of Cholera Toxin in a Human Intestinal Cell Line.」、The Journal of Biochemistry、第272巻、第7号、2007年2月14日により実証されるように、コレラなどの感染性疾患を治療または予防するために使用され得る。
【0049】
抗炎症
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を用いて治療される炎症は、肺、関節、結合組織、目、鼻、腸、腎臓、肝臓、皮膚、中枢神経系、血管系または心臓の炎症であり得る。PDIは、血管炎症および組織損傷の間の好中球の誘引および自然免疫応答の活性化において不可欠な役割を果たすことが実証されている。
【0050】
神経学的および神経変性障害
チオールイソメラーゼは脳に存在し、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病などの神経学的フォールディング障害を有する患者において上方調節される。広範なチオールイソメラーゼ阻害剤(例えば、ザフィルルカスト)の使用は、神経変性疾患におけるPDIサブファミリーメンバーと関連付けられる増加した活性酸素種損傷およびアポトーシスに起因する、神経学的変性を予防しまたは低減させるため、神経変性障害を治療するため、ならびに神経学的疾患および障害を治療するために、保護効果を付与し得る。先行する研究は、PDI阻害剤がミスフォールディングしたハンチントンおよびb-アミロイドタンパク質と関連付けられる毒性を抑制できることを実証した。
【0051】
医薬組成物、投与量
1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物は、純粋な化学物質として投与することができ、または医薬組成物として投与することができる。したがって、実施形態は、薬学的に許容される担体と共に細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、唯一の活性剤として細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含有してもよく、または1つもしくは複数の追加の活性剤を含有してもよい。
【0052】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物は、従来の薬学的に許容される担体を含有する剤形において、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入もしくはスプレーにより、舌下に、経皮的に、頬側投与を介して、直腸内に、点眼液として、または他の手段により投与されてもよい。医薬組成物は、任意の薬学的に有用な形態として、例えば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液として処方されてもよい。錠剤およびカプセルなどの一部の剤形は、適切な量の活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効量を含有する、好適に定量された単位用量にさらに分割することができる。
【0053】
「剤形」という用語は、本明細書において使用される場合、活性剤の投与の単位を意味する。剤形の例としては、錠剤、カプセル、注射、懸濁液、液体、エマルション、クリーム、軟膏、坐剤、吸入可能な形態、経皮形態などが挙げられる。例示的な剤形は固体経口剤形である。
【0054】
「医薬組成物」という用語は、本明細書において使用される場合、式Iの化合物または塩などの少なくとも1つの活性剤、および担体などの少なくとも1つの他の物質を含む組成物である。医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト薬物についての米国FDAのGMP(医薬品適正製造基準)基準を満たす。医薬組成物は剤形に配合され得る。
【0055】
医薬組成物に適用される「担体」という用語は、本明細書において使用される場合、活性化合物がそれと共に提供される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0056】
担体としては賦形剤および希釈剤が挙げられ、治療されている患者への投与のために好適であるように充分に高純度かつ充分に低毒性でなければならない。担体は不活性であってもよく、またはそれ自体の薬学的利益を有していてもよい。化合物と組み合わせて用いられる担体の量は、細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物の単位用量当たりの投与のために実際的な量の材料を提供するために充分なものである。
【0057】
担体のクラスとしては、例えば、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香料、滑剤、潤滑剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤、錠剤化剤、および濡れ剤が挙げられる。一部の担体は1つより多くのクラスにおいてリストされることがあり、例えば、植物油は、一部の配合物において滑沢剤としておよび他の配合物において希釈剤として使用されることがある。例示的な薬学的に許容される担体としては、糖、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、および植物油が挙げられる。細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物の活性に実質的に干渉しない任意選択の活性剤が医薬組成物中に含まれてもよい。
【0058】
医薬組成物は、経口投与のために配合され得る。これらの組成物は、0.1~99重量パーセント(「重量%」)、具体的には少なくとも約5重量%の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を含有する。一部の実施形態では、組成物は、約25重量%~約50重量%または約5重量%~約75重量%の細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物を含有する。
【0059】
医薬組成物の「治療有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、患者に投与された時に、症状の予防または改善などの治療的利益を提供するため、例えば、1つまたは複数の細胞外チオールイソメラーゼの活性により影響される疾患または状態を患っている患者を治療するために効果的な量を意味する。治療有効量は、患者の病態、年齢、および体重、および患者において所望の応答を誘発する化合物の能力などの要因にしたがって異なってもよい。投与量レジメンは、最適な治療奏功を提供するように調整されてもよい。治療有効量はまた、阻害剤化合物の任意の毒性のまたは有害な効果(例えば、副作用)よりも治療的に有益な効果が勝っている量である。
【0060】
治療有効量は、約0.001μg/kg/日~約500mg/kg/日、好ましくは0.01μg/kg/日および100mg/kg/日の範囲内であってもよい。当業者は、患者を効果的に治療するために必要とされる投与量にある特定の要因が影響を及ぼすことがあり、該要因としては、疾患または障害の重篤度、以前の治療、患者の全般的健康および/または年齢、および存在する他の疾患が挙げられるがこれらに限定されないことを理解する。さらに、治療有効量の阻害剤化合物を用いる患者の治療は、単一の治療を含むことができ、または一連の治療を含むことができる。治療のために使用される阻害剤化合物の効果的な投与量は特定の治療の過程にわたって増加または減少させてもよいことも理解されるであろう。
【0061】
細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤化合物は、それを必要とする患者に1日に1回、2回、または3回投与することができる。この実施形態において、投与は経口的に為され得る。
【0062】
経口的に投与される場合、ザフィルルカスト、その薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および/または固体状態形態の1日当たりの総用量は、経口的に1日に1回、2回、または3回投与され得る、約10~約200mg、具体的には約20~約175mg、より具体的には約40~約150mg、よりいっそう具体的には約60~約125mgであり得る。
【0063】
医薬組成物は、容器中の医薬組成物を含み、かつ細胞外チオールイソメラーゼの1つまたは複数のチオールイソメラーゼにより媒介される疾患または障害の予防および治療において組成物を使用するための使用説明書をさらに含むパッケージ中に配合され得る。
【0064】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は限定的なものと解されるべきではない。
【実施例
【0065】
実施例1.インスリンベースの比濁アッセイ-チオールイソメラーゼ阻害活性のアッセイ
組換えチオールイソメラーゼはAbCam(Cambridge MA)から購入し、組換えインスリン(ウシ)、バシトラシン、ジチオトレイトール(DTT)緩衝液および全ての他の化学物質はSigma Aldrich(St.Louis、MOから購入し、384ウェル透明底プレートはCorning(Corning、NY)から購入した。
【0066】
DTTの存在下でのチオールイソメラーゼによるインスリンの触媒還元は、インスリン鎖の凝集を結果としてもたらす。インスリン凝集の濁度は、650nmにおける光学密度(OD)において分光光度的にモニターすることができる。このアプローチは、速度論的またはエンドポイントの様式でチオールイソメラーゼ阻害剤を同定するために多数のグループにより使用されてきた。100mMのカリウムリン酸緩衝液30μL中の最終濃度が10μg/mLのPDI、30μg/mLのERp5、10μg/mLのERp72または10μg/mLのチオレドキシンのいずれか、125μΜのインスリンおよび2mMのエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を各実験ウェルプレートに加え、陰性対照ウェルにはいかなるチオールイソメラーゼも加えなかった。リード化合物を6ポイント用量曲線において希釈し、インスリン凝集の濁度をSpectramax M3プレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA.)を使用して各75分間、速度論的に測定した。特異性アッセイではインスリン濁度アッセイもまた利用した。
【0067】
図1は、ザフィルルカストのチオールイソメラーゼ阻害活性のアッセイの結果を示す。ザフィルルカストは、PDI、ERp5、ERp57、ERp72、およびチオレドキシン(TRX)酵素の広範に使用可能な阻害剤であることが判明した。ザフィルルカストは、ERp5に対して10~300μΜの阻害範囲を有することが判明し、PDIは30~300μΜで阻害され、TRXは10~300μΜの範囲内で阻害され、ERp57は30~300μΜで阻害され、ERp72は10~300μΜで阻害される。
【0068】
図2は、モンテルカストのチオールイソメラーゼ阻害活性のアッセイの結果を示す。
【0069】
図3は、in vitro酵素アッセイにおける様々な濃度の阻害剤オクスカルバゼピン、ベンセラジド、CGP-7930、およびアロセトロンによるERp57の阻害のデータを示す。CGP-13501がERp57に特異的であることがさらに判明した。
【0070】
実施例2.ザフィルルカストは血小板機能を阻害できるチオールイソメラーゼ阻害剤であることを示す研究
ザフィルルカストおよびモンテルカストは細胞外チオールイソメラーゼのチオールイソメラーゼの広範に使用可能な阻害剤であるので(実施例1を参照)、血小板をこの化合物を用いて処理した時に全体的な血小板応答の減少が予測される。
【0071】
材料:ザフィルルカストおよびモンテルカストはSigma Aldrich(Poole、UK)から購入した。コラーゲンはTakeda(Linz、Austria)から入手した。密顆粒分泌実験のためのChronolumeおよびATPはChronolog(Pennsylvania、USA)から購入した。抗ヒトP-セレクチン(CD62P)抗体および抗ヒトPAC-1抗体はBD Biosciences(New Jersey、USA)から入手し、抗ヒトフィブリノーゲンFITCコンジュゲートはDako Cytochemicals(Cambridgeshire、UK)から入手した。CRP-XLはProf Richard Farndale(University of Cambridge、UK)から購入した。顕微鏡スライドおよびカバーガラスはVWR(Pennsylvania USA)から購入した。Prolong Anti Fade Gold MediumおよびAlexa-Fluor Phalloidin 488はThermo Fisher(California、USA)から入手した。CellixチップはCellix(Dublin、Ireland)から入手した。DioC6、トロンビン、PGI、DMSO、フィブリノーゲン、プロテアーゼフリーウシ血清アルブミン(BSA)および全ての他の試薬は分析グレードであり、Sigma Aldrich(Poole、UK)から入手した。
【0072】
ヒト血小板の調製:5mLのクエン酸ナトリウム(4%w/v)および7.5mLの温めたACD(85mMのクエン酸ナトリウム、71mMのクエン酸および110mMのグルコース)を含有するシリンジ中に薬物不使用の同意個体から50mLの血液を採取した。血液を102gで20分間遠心分離して、血小板に富んだ血漿(PRP)を得、次いでこれをデカンテーションし、10μLのプロスタサイクリン(PGI 125μg/mL、エタノール中に溶解)を加えた。血小板を1413gで10分間遠心分離することによりペレット化し、血小板の少ない血漿を廃棄し、ペレットを25mLのタイロードHEPES緩衝液(134mMのNaCl、2.9mMのKC1、0.34mMのNaHP0、12mMのNaHC0、20mMのHEPES、1mMのMgClおよび5mMのグルコース、pH7.3)中に再懸濁し、3mLのACDおよび10μLのPGIを加えた後、1413gで10分間遠心分離し、血小板ペレットをタイロード緩衝液を使用して適切な細胞密度まで再懸濁した。血小板を30℃で30分間静置して血小板応答を回復させた。
【0073】
血小板凝集:(4×10細胞/mL)の445μLの洗浄した血小板をビヒクル(0.1%(v/v)のDMSO)または5μLのザフィルルカストもしくはモンテルカストと共に5分間インキュベートした。50μLのコラーゲン(1μg/mL)(最終)を加え、血小板凝集計(Chronolog、USA)を使用して一定の撹拌(1200rpm)と共に37℃で3分間光透過をモニターした。
【0074】
密顆粒分泌:395μLの洗浄した血小板をキュベットに加え、5μLのザフィルルカストまたはビヒクル(0.1%(v/v)のDMSO)と共に37℃で3分間インキュベートした。50μLのChronolume基質を加え、さらに2分間インキュベートした。次いで、Lumi-aggregometer(Model 700、Chronolog USA)中で一定の撹拌(1200rpm)と共に37℃で3分間50μLのコラーゲン(1μg/mL)を使用して血小板を刺激した。
【0075】
流れ下での血栓形成:ヒト血液を3.2%(w/v)のクエン酸ナトリウム中に採取し、2μΜのDIOC-6を用いて1時間標識した。cellixバイオチップを1μLのコラーゲン(100μg/mL)で1時間コーティングした。次いで、血液をビヒクル(0.1%(v/v)のDMSO)またはザフィルルカスト(10μΜ)と共に5分間インキュベートした後、20ダイン/cmのせん断速度でコラーゲンをコーティングしたCellixマイクロ流体セル上を灌流させた。共焦点顕微鏡法(Nikon Al Microscope、Nikon、Japan)により10分間の灌流にわたり画像を記録し、Image Jを使用して解析した。
【0076】
フローサイトメトリー:5μLの血小板(2×10細胞/mL)を1mMのCa2+を含む42μLのHEPES緩衝化生理食塩水に加えた。これに0.5μLのザフィルルカスト(0.6μΜ~10μΜ)もしくはモンテルカスト(0.6μΜ~10μΜ)またはビヒクル(0.1%(v/v)のDMSO)を加え、5分間インキュベートした。1μLの抗ヒトCD62p(1:500の希釈)および1μLの抗フィブリノーゲンFITCコンジュゲート(1:500の希釈)または2μLの抗PAC-1抗体を試料に加えた。血小板を5μLのCRP-XL(1ug/mL)または5μLのタイロードで20分間暗所で処理した。次いで、試料を450μLの0.2%(v/v)のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、閾値を20,000に設定してaccuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、UK)で解析した。血小板集団をゲーティングし、l0,000の事象を記録した。
【0077】
統計解析:全ての未加工データを一元配置分散分析により解析し、適切な場合にはビヒクルに対して正規化した。GraphPad Prismを使用して分散分析またはスチューデントT検定による統計解析を行った。p値の有意性水準は以下の通りである:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005。提示するデータは平均±平均の標準誤差である。
【0078】
ザフィルルカストは血小板凝集を阻害する:ヒトの洗浄した血小板(4×l0細胞/mL)を0.1μΜ~10μΜのザフィルルカストまたはビヒクルを用いて前処理した。1μg/mLのコラーゲンを用いて血小板を刺激し、3分間凝集させた。応答の代表的な凝集トレースを得、用量応答を比較した。
【0079】
12人のドナーからのデータをビヒクルに対して正規化し、ビヒクル対照に対する一元配置分散分析を使用して統計的有意性を算出した。ザフィルルカストは、濃度依存的な様式でコラーゲン刺激性の血小板凝集を阻害することが判明した(図4)。10μΜのザフィルルカストは血小板凝集を18.1%(±5.62%、81.9%の阻害)(p<0.0001)に低減させた。5μΜおよび2.5μΜのザフィルルカストは血小板凝集を22.47%±6.2%および40.00%±10.03%(それぞれ77.53%および60%の阻害)(p<0.0001)まで阻害した。1.25μΜおよび0.6μΜの濃度において類似の中間レベルの凝集が検出された。凝集は54.9%(±11.38%)および54.8%(±11.07%)であり、したがって、1.25μΜおよび0.6μΜは45%の類似の阻害を有した。(p<0.01)。0.3μΜおよび0.1μΜは血小板凝集を有意に阻害しなかった。モンテルカストもまたコラーゲン刺激性の血小板凝集を阻害することが判明した。10μΜは凝集応答を3.99±0.800%、96.1%の阻害まで阻害した(p<0.0001)。それぞれ90.63%±3.14、83.56%±10.35および62.13%±10.15阻害した5μΜ、3.75μΜおよび2.5μΜはいずれも統計的に有意であることが判明した。
【0080】
ザフィルルカストは密顆粒分泌を阻害する:密顆粒からのATPおよび他の分子の放出は正のフィードバック機構に寄与し、したがってインテグリンαIIbβ3の修飾および血小板のさらなる凝集に繋がる。血小板凝集はザフィルルカストにより破壊されたので、顆粒エキソサイトーシスの正のフィードバック作用もまた破壊され得る。
【0081】
洗浄した血小板(4×l0細胞/mL)をザフィルルカスト(0.1~10μΜ)またはビヒクルを用いて3分間前処理した。Chronolumeをさらに2分間加えた後、lumi-aggregometer中で3分間1μg/mL(最終)のコラーゲンを用いて血小板を刺激した。一元配置分散分析(n=3)を使用して統計解析の算出を行った(*P<0.05)。ビヒクル分泌ATP(1.25nM、±0.34nM)と比較して、ザフィルルカストは10μΜにおいてATP分泌を阻害し、平均ATP分泌は0.327nM(±0.0727nM)であった(P<0.05)。
【0082】
ザフィルルカストはαIIbβ3へのフィブリノーゲン結合を阻害する:血小板が活性化すると、フィブリノーゲン受容体αIIbβ3のそのリガンドであるフィブリノーゲンに対する親和性は増加する。これにより血小板の架橋が可能となり、血栓の発生が可能となる。PDI、ERp5およびERp57のいずれも、機能遮断抗体の使用を通じてフィブリノーゲン結合をモジュレートすることが示されており、この受容体の親和性調節におけるこれらの酵素の根本的役割を指し示す。潜在的な広範に使用可能なチオールイソメラーゼ阻害剤ザフィルルカストはまた、酵素活性遮断抗体と類似の様式で顆粒分泌の阻害によりフィブリノーゲン結合を阻害し得る。
【0083】
最も高い濃度のザフィルルカスト(10μΜ)は、ビヒクル(12520Au、±3264)と比較して、64.45%(±10.43%)(3696Au±1159Au)(p<0.05)のフィブリノーゲン結合の阻害を引き起こした。より低い濃度のザフィルルカストを用いて阻害傾向が観察された。
【0084】
ザフィルルカストはインテグリン活性化を阻害する:二次メッセンジャーに起因するカルシウム放出後、インテグリンαIIbβ3はコンホメーションを変化させて活性状態を形成し、抗ヒトPAC-1抗体が結合することができる。
【0085】
洗浄した血小板(2×10細胞/mL)をビヒクル、ザフィルルカスト(0.6~10μΜ)またはモンテルカスト(0.6~10μΜ)と共に5分間インキュベートした。この後に、血小板を抗PAC-1抗体と共にインキュベートし、CRP-XLを用いて刺激した後、細胞表面結合PAC-1抗体のレベルをフローサイトメトリーにより調べた。一元配置分散分析(n=3)を使用してデータを解析した。
【0086】
ザフィルルカストは、ビヒクル(1623Au、±34.67)と比較して、10μΜにおいてインテグリン活性化を54%(±4.337%、748.5Au、±87.46)阻害した(p<0.005)。
【0087】
ザフィルルカストは流れ下で血栓形成に影響する:チオールイソメラーゼ、特にERp57は動脈流下で血小板の付着および血栓の形成において重要な役割を果たすことが以前に示されている。in vitro血栓形成モデルを使用して、ザフィルルカストは流れ条件下で形成される血栓に対して何らかの生理学的効果を有するかどうかを同定した。
【0088】
親油性色素DIOC-6を用いて標識したヒト全血をザフィルルカスト(10μΜ)またはビヒクル(0.1%(v/v)のDMSO)と共に5分間インキュベートした後、20ダイン/cmの動脈せん断速度においてコラーゲン(100μg/mL)をコーティングしたcellixキャピラリー上を灌流させた。共焦点顕微鏡法を使用して画像を10分間記録し、Image Jを使用して解析した。メジアン蛍光強度を決定し、最大強度の応答と比較した。蛍光が強くなるほど、形成された血栓の体積は大きい。
【0089】
ビヒクル処理およびザフィルルカスト処理の両方の血液について、時間の増加につれてメジアン蛍光およびしたがって血栓のサイズは増加した。8分の流れ後、10μΜのザフィルルカストを用いて処理した血液は、メジアン蛍光強度およびしたがって血栓形成のわずかな減少を示し(p<0.05)、89.15(±1.679のAu)のビヒクルと比較してMFIは74.86(±3.371のAu)に減少した。血栓の最終サイズもまた、ビヒクルと比較して有意に減少した(p<0.05;二元配置分散分析、3人のドナー)。ザフィルルカストはメジアン蛍光強度をビヒクルと比較して14.25%阻害した。したがって、ザフィルルカストは動脈流条件下において全血における血栓形成を減少させると結論付けた。
【0090】
以上の結果は、ザフィルルカストは、可能性としてチオールイソメラーゼの媒介を通じて、流れ下で血小板凝集、顆粒分泌、インテグリン活性化および血栓形成を阻害するという結論をサポートする。これらのデータは、チオールイソメラーゼ阻害剤および血小板機能的応答の阻害剤としてのザフィルルカストの可能性をサポートする。
【0091】
実施例3.ザフィルルカストはマウスにおいてin vivoでの血栓形成を阻害するが出血に影響しない
マウスにおける血栓形成に対するザフィルルカストの効果を精巣挙筋小動脈のレーザー損傷後に決定し、生体内顕微鏡法により観察した。雄C57/BL6マウスの血小板をDyLight 649共役抗GPIb抗体(0.2μg/g体重)を用いて標識し、ビヒクルまたはザフィルルカスト(ZFL)のいずれか(20μΜの循環濃度を達成するために必要とされる体積)を注入した。レーザー損傷後、画像を5分間記録した。図5は、ビヒクル処置マウス(n=18の血栓、丸)またはZFL処置マウス(n=12の血栓、四角)において形成された各血栓の最大蛍光強度を示し、ZFLを用いた処置は血栓サイズの低減を結果としてもたらすことを実証する。図6は、出血に対するZFLの効果を尾出血アッセイにより決定したことを示す。ビヒクルまたはZFL(20μΜの循環濃度を達成するために必要とされる体積)をC57/BL6マウスの大腿静脈に注入し、5分後に尾生検を行った。0.5cmの尾の先端を切除し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に血液を収集し、出血の中止までの時間を記録した。ZFLを用いた処置は出血時間の変化を伴わなかった。グラフは処置当たりn=10の平均±SEMを表し、データはスチューデントのT試験により解析した(***p<0.005)。
【0092】
実施例4.がん細胞増殖に対する細胞外チオールイソメラーゼ阻害剤の効果
細胞を6,000細胞/ウェルにおいて96ウェルプレート中にプレートし、指し示した濃度のザフィルルカストを用いて24時間後に処理した。細胞をさらに24時間生育させた後、増殖の変化をPrestoBlue細胞増殖アッセイにより3連で測定した。570nmでの励起および600nmの発光を用いた蛍光読取りを収集し、処理した試料を非治療対照のパーセンテージに変換した。
【0093】
OVCar8(ヒト卵巣がん細胞株)、HCTl16(ヒト結腸がん)、HeLa(子宮頸がん細胞株)およびMDA-MB-231(乳がん細胞株)細胞株を細胞増殖を阻害する能力について調べた。OVCar8およびHCTl16細胞は、5~10μΜの範囲内のIC50を呈した。HeLa子宮頸がん細胞株およびMDA-MB-231乳がん株はより感受性が低かった。表1は、OVCar8細胞、HCTl16細胞、HeLa細胞およびMDA-MB-231細胞に対してザフィルルカストを試験した細胞増殖アッセイの結果を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例5.ザフィルルカストはEGFRシグナル伝達を阻害する
HCTl16(ヒト結腸がん)細胞を薬物と共に24時間インキュベートし、総細胞抽出物を調製した。タンパク質レベルを標準化し、タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲルに流した後に電気泳動させ、その後にPVDF膜に転写した。目的の一次抗体、その後にホースラディッシュペルオキシダーゼと共役させた二次抗体を用いて膜をプロービングした。ザフィルルカストを用いて処理したHCT116細胞のウエスタンブロットは、STAT3リン酸化の測定を通じてモニターしたEGFR活性化およびその下流のシグナル伝達のほぼ完全な阻害を示した。
【0096】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0097】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数の指示対象を含む。同じ特徴または構成要素に対する全ての範囲の端点は、独立して組合せ可能であり、また記載された端点を含む。本明細書において使用される接尾辞「(s)」は、それが修飾する用語の単数および複数の両方を含むことを意図し、それにより、その用語の1つまたは複数を含む(例えば、担体(carrier(s))は1つまたは複数の担体を含む)。「または」という用語は、明らかにそうでないことが文脈により指し示されない限り、「および/または」を意味する。「組合せ」という用語は、ブレンド物、混合物などを含む。
【0098】
本明細書の全体を通じて「一実施形態」、「別の実施形態」、および「一部の実施形態」などへの言及は、その実施形態と結び付けて記載された特定の構成要素(例えば、特性、構造、ステップ、または特徴)が、本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態に含まれ、また他の実施形態において存在してもよいしまたは存在しなくてもよいことを意味する。加えて、記載された構成要素は様々な実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0099】
一般に、組成物、方法、および物品は、選択的に、本明細書において開示される任意の成分、ステップ、またはコンポーネントを含む、それからなる、またはそれから本質的になるものであり得る。組成物、方法、および物品は、さらに、またはあるいは、本発明の請求項の機能または目的の達成のために必要でない任意の成分、ステップ、またはコンポーネントを欠いているように、または実質的に含まないように配合され、実行され、または製造されてもよい。
【0100】
「任意選択の」または「任意選択で」は、その後に記載された事象または状況が起こってもよくまたは起こらなくてもよいこと、および該記載は事象が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0101】
本明細書において使用される「約」または「おおよそ」は記載された値を含み、当該の測定および特定の量の測定に伴う誤差(例えば、測定システムの限界)を考慮して当業者により決定される特定の値についての逸脱の許容される範囲内であることを意味する。例えば、「約」は、1つまたは複数の標準偏差内であることを意味し得る。
【0102】
本発明を限られた数の実施形態のみと結び付けて詳細に記載したが、本発明はそのような開示された実施形態に限定されないことが容易に理解されるはずである。むしろ、本発明は、本明細書において記載していないが本発明の精神および範囲に見合った多数のバリエーション、変更、置換、または同等の構成を組み込むように改変されてもよい。さらに、本発明の様々な実施形態を記載したが、発明の態様は、記載された実施形態の一部のみを含むことができると理解されるべきである。したがって、本発明は、以上の記載により限定されるものとして見られるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0103】
全ての参照された特許、特許出願、および他の参考文献は、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願中の用語が、組み込まれた参考文献中の用語と矛盾するまたは一致しない場合、本出願からの用語が、組み込まれた参考文献からの不一致の用語に対して優先する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6