(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】工具用ホルダ
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20230502BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021175921
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2017221205の分割
【原出願日】2017-11-16
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017082179
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭仁
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3189172(JP,U)
【文献】特開2015-085408(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0080186(KR,A)
【文献】米国特許第05673830(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0044405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
B25F 5/00
A45C 11/00 - 13/00
A45F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被装着体に装着されるホルダ本体と、前記ホルダ本体に着脱可能であるとともに工具を着脱可能に保持する工具用ブラケットと、を有する工具用ホルダであって、
前記工具用ブラケットが、前記ホルダ本体の収容空間に差し込み可能な差込み部を有し、
前記収容空間に差し込まれた状態で、前記差込み部と前記収容空間の内面との間には、差込み方向に対して垂直な方向に隙間が形成されるとともに、
前記差込み部に固定保持された工具保持部を有し、
該工具保持部には、略L字状または略T字状の工具を差し込んで保持可能な貫通孔が形成されており、該貫通孔
に筒状部材が嵌め込まれている工具用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を、帯状の被装着体に装着するための工具用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具等を作業者の腰ベルトに保持するための工具用ホルダが知られている。例えば、特許文献1には、工具に固定される差込みブラケットと、この差込みブラケットと係合して工具を保持するホルダ本体からなり、ホルダ本体に、溝をガイドにして差込みブラケットを滑り込ませる収容空間と、収容空間内に収容された差込みブラケットの後端部に当接して収容空間からの引き抜けを防止するストッパーを設けた工具用ホルダが開示されている。
【0003】
上記特許文献1の工具用ホルダによれば、工具に固定した差込みブラケットをホルダ本体に差し込むだけでロック状態に保持でき、該ホルダ本体に工具を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような差込みブラケットにおいても、ホルダ本体の収容空間に差し込まれる際の挿入性については、未だ改善の余地があった。
【0006】
それゆえ本発明は、ホルダ本体に対して工具用ブラケットをよりスムーズに取付けることができる工具用ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の工具用ホルダは、帯状の被装着体に装着されるホルダ本体と、前記ホルダ本体に着脱可能であるとともに工具を着脱可能に保持する工具用ブラケットと、を有する工具用ホルダであって、
前記工具用ブラケットが、前記ホルダ本体の収容空間に差し込み可能な差込み部を有し、
前記収容空間に差し込まれた状態で、前記差込み部と前記収容空間の内面との間には、差込み方向に対して垂直な方向に隙間が形成されるとともに、
前記差込み部に固定保持された工具保持部を有し、
該工具保持部には、略L字状または略T字状の工具を差し込んで保持可能な貫通孔が形成されており、該貫通孔に筒状部材が嵌め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホルダ本体に対して工具用ブラケットをよりスムーズに取付けることができる工具用ホルダを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工具用ブラケットを示す斜視図である。
【
図2】帯状の被装着体に対して装着されたホルダ本体と、当該ホルダ本体に
図1の工具用ブラケットを取付ける様子を示す図である。
【
図3】ホルダ本体の収容空間に収容された差込み部を示す図である。
【
図4】ホルダ本体の収容空間に差込み部が収容された状態におけるスペーサ部とフレーム部との関係を示す図である。
【
図5】誤挿入を防止するための拡幅部を設けた差込み部の一例を示す図である。
【
図6】
図1の工具用ブラケットの使用状態を例示する側面視での断面図である。
【
図7】工具保持部の変形例を示す側面視での断面図である。
【
図8】工具保持部の他の変形例を示す側面視での断面図である。
【
図9】(a)は、工具保持部の他の変形例を示す斜視図であり、(b)は、
図9(a)に示すC-C線における断面図である。
【
図10】(a)、(b)は、工具保持部の他の変形例を示す斜視図である。
【
図11】(a)、(b)は、工具保持部の他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。
図1は本発明の一実施形態としての工具用ブラケット1を示す斜視図である。
図2は、ベルト等の、帯状の被装着体Aに対して装着されるホルダ本体2と、該ホルダ本体2に工具用ブラケット1を取付ける様子を示す図である。工具用ブラケット1は、工具を着脱可能に保持することができるものである。ここで、工具とは、例えばハンマー、バール、ラチェットレンチ、電動ドライバー、巻尺等の他、工具を収納するバッグ、工具差し等も含む。また、帯状の被装着体とは、使用者の腰に巻かれる横型のベルトに限らず、例えばハーネス型安全帯の縦ベルト部分等の、略鉛直方向に延在する縦型のベルトとすることも可能である。
【0011】
本実施形態において、工具用ブラケット1は、差込み部3と、工具保持部4と、スペーサ部5とを有する。なお、本例においてスペーサ部5は、差込み部3と略同一の厚さを有する平板部材を2枚重ねた構成としており、差込み部3と工具保持部4とスペーサ部5とは、リベットにより固定されているが、これに限定されない。
【0012】
差込み部3は略平板状であり、差込み方向の先端側には、先細り状となるよう幅方向両側に傾斜面3aが設けられている。また、先端面の中心部近傍には、湾曲した切欠き状の位置決め凹部3bが形成されている。また、差込み部3の背面3cには、がたつきを防止するための突起部3dが、背面3cの一部分から突出するように設けられている。なお、突起部3dは、例えばゴムやエラストマ等の他部材を背面3cに溶着、接着等により固定して形成してもよい。
【0013】
また、差込み部3は、一対の傾斜面3aの差込み方向後方側にそれぞれ連なる第1被支持面3e(一方側の側面)と第2被支持面3f(他方側の側面)とを有する。第1被支持面3eと第2被支持面3fとは略平行であり、且つ、差込み方向に略平行に延在している。第1被支持面3eと第2被支持面3fは、収容空間Sの内面に形成される支持面(後述する6c、6d)によって支持される。また、
図1では右側に位置する第1被支持面3eの差込み方向長さL1は、左側に位置する第2被支持面3fの差込み方向長さL2よりも長くなっている。このように、差込み部3を左右非対称とし、一方側の側面(第1被支持面3e)の差込み方向長さL1を、他方側の差込み方向長さL2よりも長くし、第1被支持面3eに対向する収容空間Sの内面6cで広い範囲にわたって支持することで、差込み部3の幅方向のがたつきを、より低減することができる。特に、ストッパー部6bによって、移動を規制されていない側(第1被支持面3e)の差込み方向長さL1を長くし、収容空間Sの内面6cで広い範囲にわたって支持することで、より効果的に安定性を高めることができる。
【0014】
ホルダ本体2は、ベルト等の帯状の被装着体Aに対して着脱可能に装着されるものである。ホルダ本体2は、その前面側に、収容空間Sを含むブラケット保持部6を有しており、背面側に、被装着体Aに装着するための装着部7を有する。ブラケット保持部6は、収容空間Sを区画形成するフレーム部6aと、ストッパー部6bとを有する。
【0015】
本実施形態において、収容空間Sは、上方を除き、前後左右方向及び下方向を囲む枠状のフレーム部6aによって区画形成される。また収容空間Sの上方には、斜め下方にスライド可能に構成されたストッパー部6bが設けられている。フレーム部6aは、収容空間Sに配置された差込み部3の前後方向、左右方向、及び下方への移動を所定の範囲に規制し、ストッパー部6bは、収容空間Sに配置された差込み部3の上方への移動を規制する。
【0016】
なお、本実施形態のホルダ本体2は、差込み部3を収容空間Sの上方から差し込む構成としているが、差込み方向は特に限定されない。
【0017】
ストッパー部6bは、差込み部3を上方から収容空間Sに差し込む際に、斜め下方にスライドするように構成されている。これにより、収容空間Sへの入口が開放されて、差込み部3を収容空間Sに収容することができる。
【0018】
ストッパー部6bは、内部に設けたばねの弾性力により斜め上方に付勢されており、差込み部3が通過した後、元の位置に戻るように構成されている。収容空間Sに収容された差込み部3は、ストッパー部6bによって抜け出しを抑制される。これにより、工具用ブラケット1が、抜け出しを防止された状態で、ホルダ本体2に対して係合保持される。また、ホルダ本体2から工具用ブラケット1を取り外す際には、ストッパー部6bを斜め下方にスライドさせ、工具用ブラケット1を上方に引き上げることで、容易に取り外すことができる。
【0019】
なお、ストッパー部6bは、工具用ブラケット1の抜け出しを抑制することができる構成であれば、その形状や構造は特に限定されない。
【0020】
ここで
図3は、収容空間Sに収容された差込み部3を示したものである。差込み部3の差込み方向(
図3の上下方向)に対して垂直な方向において、差込み部3と収容空間Sの内面との間には隙間が形成されている。具体的に第1被支持面3eと、第1被支持面3eに対向する内面6cとの間には、差込み部3の幅方向の隙間G1が形成されている。また、第2被支持面3fと、第2被支持面3fに対向する内面6dとの間には、差込み部3の幅方向の隙間G2が形成されている。また、図示は省略するが、差込み部3の背面3cと、背面3cに対向する収容空間Sの内面6eとの間にも、隙間が形成されている。
【0021】
このように、差込み部3の差込み方向に対して垂直な方向の隙間(G1、G2及び差込み部3の厚さ方向の隙間)を有することにより、このような隙間がない場合に比べて、収容空間Sに差込み部3を差し込む過程での摩擦抵抗が小さくなるため、差込み部3をスムーズに差し込むことが可能となる。
【0022】
本実施形態の工具用ブラケット1にあっては、差込み部3の背面3cに突起部3dを設けたことにより、収容空間Sに差し込まれた状態において、背面3cと、背面3cに対向する収容空間Sの内面との間の隙間(差込み部3の厚さ方向の隙間)の一部を埋めることができる。その結果、収容空間Sに差し込まれた状態での工具用ブラケット1の前後方向(差込み部3の厚み方向)のがたつきを抑制することができ、安定性を高めることができる。すなわち、本実施形態の工具用ブラケット1によれば、差込み部3の挿入性を高める効果と、差し込み後の安定性を高める効果を両立することができる。
【0023】
突起部3dは、差込み部3の差込み方向における後方側(
図1の上方側)に設けることが好ましい。これによれば、差込み部3を収容空間Sに差し込む過程において、突起部3dが収容空間Sの内面に接触することを減らし、差し込み時の摩擦抵抗をさらに低減することができる。
【0024】
収容空間Sには、差込み部3の位置決め凹部3bに対応する位置決め凸部6fが設けられており、位置決め凸部6fに位置決め凹部3bが嵌り込むことで、差込み部3の先端部は、幅方向のがたつきを防止することができる。
【0025】
また、
図3に示すように、本例においては、収容空間Sに収容された差込み部3とストッパー部6bとが、P1及びP2の2点で点接触する構成となっている。このように、面接触ではなく点接触とすることで、着脱の際の摩擦抵抗を低減することができる。また、1点ではなく2点で接触することで、差込み部3のガタつきを効果的に抑制することができる。なお、本例では、差込み部3に切欠き3hを設けることで、差込み部3とストッパー部6bとの間に隙間を形成し、P1とP2の2点で接触し易いように構成されている。
【0026】
図4は、収容空間Sに差込み部3が収容された状態におけるスペーサ部5とフレーム部6aとの関係を示している。
図4に示すように、スペーサ部5の一方側の側面5aと、当該側面5aに対向するフレーム部6aの縁部6gとの間には、隙間G4が形成されている。同様に、スペーサ部5の他方側の側面5bと、当該側面5bに対向するフレーム部6aの縁部6hとの間には、隙間G5が形成されている。当該隙間G4、G5により、差込み部3を収容空間Sに差し込む際の抵抗を低減し、よりスムーズな挿入が可能となる。
【0027】
また、スペーサ部5の側面5a、5bにはそれぞれ、側方突起部5c、5dが設けられている。側方突起部5c、5dはそれぞれ、差込み部3を収容空間Sに差し込んだ後の状態において、隙間G4、G5の一部を埋めて、差込み部3の幅方向のがたつきを抑制することができる。これにより、収容空間Sに差込み部3が差し込まれた状態での工具用ブラケット1の安定性をより高めることができる。なお、側方突起部5c、5dは、例えばゴムやエラストマ等の他部材をスペーサ部5の側面5a、5bに溶着、接着等により固定して形成してもよい。
【0028】
なお、側方突起部5c、5dは、スペーサ部5の側面5a、5bにおける、差込み方向後部側(
図4における上方側)に位置することが好ましい。これによれば、側方突起部5c、5dを設けたことによる挿入性の悪化を低減することができ、より高い精度で挿入性の改善効果と安定性の向上効果の両立を図ることができる。
【0029】
幅方向のがたつきを抑制する構成としては、第1被支持面3e及び第2被支持面3fに、突起部を設けてもよい。これによれば、側方突起部5c、5dと同様の効果を得ることができる。
【0030】
図2に示すように、ホルダ本体2の装着部7は、ベース部7aと、ベース部7aにヒンジ部7bを介して連結された開閉部7cと、開閉部7cを閉じた状態で拘束するための操作部7dとを備える。
【0031】
ホルダ本体2を被装着体Aに装着する際には、操作部7dにより開閉部7cを開閉可能とした状態でヒンジ部7bを支点に開閉部7cを開き、開閉部7cを被装着体Aの内側に差し込んで閉じ、再度操作部7dを操作して開閉部7cを閉じた状態で拘束する。
【0032】
なお、被装着体Aからホルダ本体2を取り外す際には、装着する操作と逆の操作を行う。つまり、操作部7dの操作により開閉部7cを開閉可能とし、開閉部7cを開いて被装着体Aの内側から上方に引き抜くことで、ホルダ本体2を容易に取り外すことができる。このように、本実施形態によれば、例えば腰ベルトである被装着体Aを腰に巻いた状態のまま、ホルダ本体2を着脱することができる。
【0033】
なお、装着部7の構成は、本例のような開閉タイプに限定されず、例えば、単純な環状とし、ベルト等の被装着体Aを貫通させて装着する構成としてもよいし、ホルダ本体に差し込まれる部材とホルダ本体とで被装着体Aを取り囲むようにして装着する構成としてもよい。
【0034】
図1、2に示すように、本実施形態の工具保持部4は、差込み部3にスペーサ部5を介して固定保持された背板部4aと、背板部4aの下部から前方に延在する環状部4bとを備える。なお、背板部4aは、2枚の板部材を重ねて形成されているが、これに限定されず、1枚のみ、あるいは3枚以上の板部材を重ねた構成としてもよい。
【0035】
背板部4aの上端部には、誤挿入防止部4cが設けられている。誤挿入防止部4cは、収容空間Sに対して差込み部3を逆向きに差し込もうとした際に、収容空間Sへの入口に引っ掛かることで、誤挿入を防止する。誤挿入防止部4cは、正しい差込み方向の後端側に設けられる。
【0036】
なお、このような誤挿入を防止するための構成は、工具保持部4に設けた誤挿入防止部4cに限らず、例えば
図5に示すように、差込み部3に設けた拡幅部3gで形成してもよく、同様の効果を得ることができる。背板部4aの下部には、工具の落下を防止するためのロープまたはシャックル等を取付け可能な貫通孔4gが形成されている。これに対応して、ホルダ本体2には、工具の落下を防止するためのロープまたはシャックル等を取付け可能な貫通孔2a(
図2参照)が形成されている。
【0037】
環状部4bは、背板部4aに対して垂直に延在しており、使用時には略水平方向に延在することを想定した構成となっている。環状部4bは、背板部4aを構成する2枚の板部材のうちの一枚を折り曲げて形成され、略L字状または略T字状の工具を差し込んで保持可能な貫通孔4dが形成されている。
【0038】
図6に示すように、貫通孔4dの周縁部(環状部4bの内周縁)には、厚肉部4eが形成されている。本例において厚肉部4eは、板部材を折り曲げて形成された環状の内周リブとして形成されている。また本例において、環状部4bの外周縁部には、外周リブ4fが設けられている。
【0039】
工具保持部4は、例えば貫通孔4dにバールBにおける直線状の棒状部分B1を差し込むとともに、バールBの屈曲部B2を環状部4bに係合させて、保持することができる。ここで、
図6に示すように、環状部4bに厚肉部4eを設けたことにより、バールBと環状部4bとが、接点H1、H2、H3の3箇所で接触することとなるため、厚肉部4eを設けない場合に比べてバールBが抜け落ち難くなる。また、内周リブ状の厚肉部4e及び外周リブ4fを設けたことにより、環状部4b全体の板厚を厚くすることなく、環状部4bの強度を高めることができる。
【0040】
なお、本例において、厚肉部4eは、板部材を折り曲げて形成された環状の内周リブとして形成されているが、これに限られず、
図7に示すように、例えばゴム等により形成された筒状部材8を貫通孔4dに嵌め込むようにして厚肉部4eを形成してもよい。また、環状部4b全体の板厚を厚くしてもよい。
【0041】
なお、バール、ハンマー等を係合保持可能な工具保持部4としては、例えば
図8に示すように、複数の貫通孔4dを有する構成としてもよい。この場合にも、それぞれの貫通孔4dの周縁部に厚肉部4eを設けることが好ましい。
【0042】
図9(a)は、工具保持部4にカラビナ10を折り畳み可能に設けた場合の形態を示す斜視図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示すC-C線における断面図である。カラビナ10は、差込み部3に対して平行となるように固定された背板部4aに対して、軸部10aを中心に回動可能に設けられている。軸部10aは、背板部4aに平行に配置されており、背板部4aに対して回動可能に保持されている。なお、カラビナ10は、背板部4aに対して回動不能に固定されていてもよい。
【0043】
図9(b)に示すように、軸部10aの側面には、90°間隔で3方向に平面部10bが設けられており、当該平面部10bに板ばね11を押し当てることで、所定の3方向の姿勢において、カラビナ10の角度が維持されるように構成されている。なお、板ばね11に代えて、球状の部材を軸部10aの側面に押し当てるようにしてもよく、この場合、平面部10bに代えて球面状の凹部を形成することが好ましい。なお、平面部10bに板ばね11を押し当てる構成とした場合、球状の部材を軸部10aの側面に押し当てる場合に比べて軸部10aが削れることを抑制することができる。
【0044】
カラビナ10は、ヒンジ10cを支点に開閉部10dを開閉させて、例えば環状の部材等にフック部10eを先端から挿入することにより、当該環状の部材を係合保持することができる。なお、カラビナ10のフック部10eの横断面形状は、強度の観点から、略三角形状であることが好ましいが、これに限られるものではない。
【0045】
本例において、フック部10eの先端部には、小径部10fを介して大径部10gが設けられている。また、開閉部10dの先端部には、開閉部10dが閉じた状態で小径部10fが入り込む小径凹部10hと、大径部10gが入り込む大径凹部10iが形成されている。小径凹部10hの幅は、大径部10gの幅よりも狭くなっている。このような構成により、開閉部10dが閉じた状態においてフック部10eに重量の大きな部材が係合保持されてフック部10eが下方に変形しようとした場合でも、大径部10gが小径凹部10hに引っ掛かり抜け止め保持されるため、開閉部10dが開くことを防止することができる。これにより、カラビナ10に重量の大きな部材が係合保持された場合でも、当該部材がカラビナ10から脱落してしまうことを防止することができる。
【0046】
また、開閉部10dの外面には凹部10jが設けられている。この凹部10jに工具を押し当てることで、位置ずれを防止することができ、工具を容易にフック部10eに挿入することができる。
【0047】
図9(b)に示すように、本例においてスペーサ部5は、背板部4aを部分的に折り曲げて形成されているが、差込み部3は先の実施形態と共通の部材で構成されている。
【0048】
図10(a)は、工具保持部4にカラビナ10を2つ設けた変形例を示している。カラビナ10の構成は、
図9に示す形態と同様である。当該構成によれば、複数の工具を効率的に係合保持することができる。
【0049】
図10(b)は、工具保持部4にラチェットレンチ保持部13を設けた変形例を示している。これによれば、ラチェットレンチ(図示省略)の持ち手部分を孔部13aに差込み、ヘッド部を湾曲部13bで支持することで、安定した姿勢でラチェットレンチを保持することができる。
【0050】
図11(a)は、工具保持部4に略J型のフック部12を設けた変形例を示している。なお、このフック部12を、背板部4aに対して回動可能に設けて、折り畳み可能な構成としてもよい。
図11(a)に示すように、フック部12の最下点12aを、フック部12の前後方向の中心12bよりも背板部4a側に配置することが好ましい。これによれば、フック部12に吊り下げた工具が使用者側に保持されるため、工具の位置が安定し易く、作業時の安全性を高めることができる。なお、
図11(b)に示すように、軸部12cよりも背面側にフック部12の最下点12aが位置するような構成としてもよい。また、フック部12の横断面形状は、強度の観点から、略三角形状であることが好ましいが、これに限られるものではない。
【0051】
図12は、差込み部3の変形例を示している。
図12に示す差込み部3は、金属製の平坦な板状の背板部4aを部分的に切り起こした形状を有している。具体的に、本例の差込み部3は、
図12における右側に位置し、第1被支持面3eを有する第1側方突起部14と、左側に位置し、第2被支持面3fを有する第2側方突起部15と、下側に位置する下方突起部16とを有する。
【0052】
このように、背板部4aを構成する板材を部分的に切り起こして差込み部3を形成することにより、背板部4aと差込み部3を一体に形成することができ、また、
図1等に示すようなスペーサ部5を構成する平板部材も不要となるので、部品点数を削減することが可能となる。
【0053】
なお、図示は省略するが、本例の差込み部3(第1側方突起部14、第2側方突起部15、及び下方突起部16の少なくとも何れか)にも、傾斜面3aや、がたつきを防止するための突起部3d等を設けることができる。また、下方突起部16に、湾曲した切欠き状の位置決め凹部3b(
図1等参照)を設けることも可能である。
【0054】
図13は、差込み部3のさらなる変形例を示している。
図13に示す例では、背板部4aを樹脂製とし、金型を用いた一体成型により、背板部4aと差込み部3とを一体に形成している。このように、背板部4aと差込み部3とを一体に形成することで、部品点数を削減することが可能となる。本例においても、差込み部3に切欠き3hが設けられており、
図3に示す上記実施形態と同様に、差込み部3とストッパー部6bとが2点で点接触するように構成されている。なお、本例においても、差込み部3の背面3cに、がたつきを防止するための突起部3dを設けることができる。
【0055】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、上述の実施径形態においては、ホルダ本体2が収容空間Sを有し、工具用ブラケット1が、当該収容空間Sに差し込み可能な差込み部3を有する構成としているが、これに限られるものではなく、工具を保持可能な工具用ブラケット側に収容空間を設け、被装着体Aに装着されるホルダ本体側に差込み部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:差込みブラケット
2:ホルダ本体
3:差込み部
3a:傾斜面
3b:位置決め凹部
3c:背面
3d:突起部
3e:第1被支持面(一方側の側面)
3f:第2被支持面(他方側の側面)
3g:拡幅部
4:工具保持部
4a:背板部
4b:環状部
4c:誤挿入防止部
4d:貫通孔
4e:厚肉部
4f:外周リブ
4g:貫通孔
5:スペーサ部
5a、5b:側面
5c、5d:側方突起部
6:ブラケット保持部
6a:フレーム部
6b:ストッパー部
6c、6d、6e:収容空間の内面
6f:位置決め凸部
7:装着部
7a:ベース部
7b:ヒンジ部
7c:開閉部
7d:操作部
8:筒状部材
10:カラビナ
10a:軸部
10b:平面部
10c:ヒンジ
10d:開閉部
10e:フック部
10f:小径部
10g:大径部
10h:小径凹部
10i:大径凹部
10j:凹部
11:板ばね
12:フック部
12a:最下点
13:ラチェットレンチ保持部
13a:孔部
13b:湾曲部
14:第1側方突起部
15:第2側方突起部
16:下方突起部
L1:第1被支持面の差込み方向長さ
L2:第2被支持面の差込み方向長さ
A:被装着体
S:収容空間