IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーアン・カンユアンシェン・バイオメディカル・テクノロジー・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7272714抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法
<>
  • 特許-抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法 図1
  • 特許-抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法 図2
  • 特許-抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法 図3
  • 特許-抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法 図4
  • 特許-抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-01
(45)【発行日】2023-05-12
(54)【発明の名称】抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステルおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/94 20060101AFI20230502BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20230502BHJP
   C07C 67/56 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230502BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230502BHJP
【FI】
C07C69/94 CSP
C07C67/14
C07C67/56
A61K31/235
A61P31/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022029312
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2022162967
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202110391549.8
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521378163
【氏名又は名称】シーアン・カンユアンシェン・バイオメディカル・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XI’AN KANGYUANSHENG BIOMEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM A‐117‐11, I CHUANGTU ZHONGCHUANG PARK, NO. 14 GAOXIN 2ND ROAD, HIGH‐TECH ZONE, XI’AN, 710075 SHAANXI, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジャ
(72)【発明者】
【氏名】コン,チュンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジンイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,チエンチエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ダン
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105399684(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101671367(CN,A)
【文献】特表2001-521033(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105949146(CN,A)
【文献】米国特許第10947182(US,B1)
【文献】米国特許第10717699(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/
C07C 67/
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)を有する抗薬剤耐性菌活性を有する化合物。
【化1】
【請求項2】
式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を得ることを含む、請求項1に記載の式(I)の化合物を調製する方法であって、
【化2】
ここで、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1~1:1.3のモル比で反応器に入れる工程、
窒素雰囲気下で、有機溶媒と触媒量のトリエチルアミンを添加して反応混合物を得る工程、
前記反応混合物を20~70℃で3~6時間加熱する工程、
前記反応混合物を濃縮し、濃縮溶液を酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程、
前記粗生成物を、ジクロロメタンおよび酢酸エチルを溶離剤として用いたシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラムにより精製して、式(I)の化合物を得る工程、を含む方法。
【請求項3】
前記有機溶媒はトルエン、ジクロロメタンまたはN,N-ジメチルホルムアミドであり前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物のモル比は1 : 1.1であり、前記反応混合物を25℃で加熱し、前記反応混合物を5時間加熱し、前記溶離剤はジクロロメタン:酢酸エチル=2:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物は、多剤耐性黄色ブドウ球菌、多剤耐性緑膿菌、および、多剤耐性アシネトバクター・バウマニに対して有効である請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年4月13日に出願された中国特許出願第202110391549.8号の優先権を主張し、これは、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、全ての目的のために参照により援用される。
【0002】
本発明は医薬化学の分野に関し、特に、抗薬剤耐性菌活性を有するプレウロムリンレインエステル(pleuromulin rhein ester)およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗菌薬剤の普及、 各種侵襲手術の増加に伴い、 臨床的な感染病原体のスペクトラムは変化し続け、 細菌の耐性化も増加の一途をたどっている。多剤耐性菌(MDRO)の感染率と患者の死亡率は年々増加している。MDROには、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)、メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(methicillin-resistant coagulase-negative Staphylococcus)(MRCNS)、ESBLを産生する大腸菌(Escherichia coli)と肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、そして、カルバペネム耐性エンテロバクター(carbapenem-resistant Enterobacter)(CRE)、多剤耐性エンテロバクター(multi-drug-resistant Enterobacter)、多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(multi-drug-resistant Acinetobacter baumannii)(MDRAB)、多剤耐性緑膿菌(multi-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa)(MDRPA)、多剤耐性エンテロコッカス(multi-drug-resistant Enterococcus)、多剤耐性肺炎レンサ球菌(multi-drug-resistant Streptococcus pneumoniae)の、合計10種類が含まれる。アシネトバクター・バウマニと緑膿菌は医療環境に広く分布し、生存期間が長い。それらは、様々な医療装置および供給品の表面上にバイオフィルムを形成することができる。患者の生得の腔粘膜を排除することは困難であり、コロニーを形成しやすい。その治療は深刻な問題を引き起こした。今日、細菌耐性の問題はますます深刻になっている。良好な抗菌活性、特有の抗菌メカニズム、他の薬剤との交差耐性が容易でなく、新しい構造を有する化合物を見出すことが特に重要である。
【0004】
プレウロムリンは、担子菌Pleurotus pleurotusmutilisおよびpleurotus passeckeranius株の高等真菌の深部培養によって産生されるジテルペン化合物である。プレウロムリンおよびその誘導体は、多くのグラム陽性菌、一部のグラム陰性難治性菌およびマイコプラズマ感染症に特有の効果を有する。このクラスの抗生物質は、タンパク質合成を選択的に阻害することによって抗菌活性を達成する。この方法は、タンパク質合成を阻害する他の抗生物質の抗菌メカニズムとは異なる。原核生物のリボソームと結合する特有のメカニズムである。切断型プレウロチン(Pleurotin)の臨床使用を通して、細菌特異的標的耐性の出現は非常に遅いことが証明され、ムピロシン、β-ラクタム、マクロライド系抗生物質またはキノロン類に対する交差耐性は見出されていない。
【0005】
レインは、ルバーブ、ケツメイシ、フリースフラワー根(fleece flower root)、アロエなどの中国の漢方薬に広く見出される親油性アントラキノン化合物である。抗腫瘍活性、抗菌活性、免疫抑制作用、利尿作用、緩下作用、抗炎症作用を有する。また、糖尿病や腎臓病の治療効果もある。レインは黄色ブドウ球菌、ヘリコバクター・ピロリ、連鎖球菌、ジフテリア、枯草菌、炭疽菌等に対して良好な抗菌活性を有することがこれまでの研究で示されている。その抗菌メカニズムはレインが細菌のDNAとRNAの生合成を阻害し、ミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達を妨げ、細菌の嫌気呼吸と発酵に関与する遺伝子の転写を妨げることに関係している可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明において、プレウロムリンは、レイン構造によって改変されて、プレウロムリンレインエステルを得る。予備的な抗菌活性試験は化合物が優れた抗菌活性を有し、多剤耐性菌によって引き起こされる感染症の治療において高い医学的研究および応用価値を有することを示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、多剤耐性菌感染によって引き起こされる感染症を治療するための新しいタイプの抗菌薬剤として使用することができる、プレウロムリンレインエステルを提供する。本発明の化合物の構造式は、式Iに示す通りである。
【化1】
【0008】
別の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物を調製する方法を提供する。この方法は、有機溶媒中で式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて式(I)の化合物を得ることを含む。
【化2】
【0009】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、以下の工程、
前記式(II)の化合物および前記式(III)の化合物を、1:1~1:1.3のモル比で反応器に入れる工程、窒素雰囲気下で、有機溶媒および触媒量のトリエチルアミンを添加して反応混合物を得る工程、前記反応混合物を20~70℃で3~6時間加熱する工程、濃縮溶液を酢酸エチルで抽出して粗生成物を得る工程、ジクロロメタンおよび酢酸エチルを溶離剤として用いてシリカゲルフレッシュクロマトグラフィーカラムにより前記粗生成物を精製して、式(I)の化合物を得る工程、とを含む。
【0010】
別の実施形態において、前記有機溶媒は、トルエン、ジクロロメタンまたはN,N-ジメチルホルムアミドである。
【0011】
別の実施形態において、前記有機溶媒は、ジクロロメタンである。
【0012】
別の実施形態において、前記式(II)の化合物と前記式(III)の化合物とのモル比が1 : 1.1である。
【0013】
別の実施形態において、前記反応混合物を25℃に加熱する。
【0014】
別の実施形態において、前記反応混合物を5時間加熱する。
【0015】
別の実施形態において、前記溶離剤は、ジクロロメタン:酢酸エチル=2:1である。
【0016】
別の実施形態において、前記化合物は、多剤耐性黄色ブドウ球菌、多剤耐性緑膿菌および多剤耐性アシネトバクター・バウマニに対して有効である。
【0017】
前述した一般的な説明と、以下の詳細な説明とは、どちらも例示的および説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供するように意図されていることを理解されたい。
【0018】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、薬剤耐性菌MARS 18-575に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。
図2図2は、薬剤耐性菌MDR-PA 18-756に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。
図3図3は、薬剤耐性菌MDR-PA 18-126に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。
図4図4は、薬剤耐性菌CR-AB 18-184に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。
図5図5は、薬剤耐性菌CR-AB 18-560に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。以下の実施例は本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
実施例1
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボン酸塩(プレウロムリンレインエステル)の調製
【0022】
窒素雰囲気下の反応器中で、ジクロロメタンに、一定量のレインおよび塩化オキサリルを添加した。DMF (ジメチルホルムアミド)を触媒として添加し、25℃で2時間反応させて、式(III)の化合物であるレイン誘導体(酸塩化物)を得た。
【0023】
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリン(式(II)の化合物)および6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。214.4mg(0.71mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、25℃で5時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル302.2mg(総収率73.78%)を得た。
【0024】
H-NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ(ppm):12.06(1H、d)、8.51(1H、s)、8.03(1H、s)、7.92(1H、d)、7.80(1H、d)、7.39(1H、d)、6.51(1H、t)、5.89(1H、d)、5.41(2H、s)、5.24(1H、d)、4.92(1H、d)、4.15(1H、t)、4.07(1H、s)、3.42(1H、d)、2.26(1H、d)、2.17-2.08(4H、t)、1.80-1.28(12H、t)、0.85(3H、s)、0.78 (3H、d);13C-NMR(100MHz、クロロホルム-d)δ(ppm):216.7、172.1、162.9、138.9、138.7、125.6、120.4、117.3、74.6、69.9、58.1、45.4、44.8、44.0、41.9、36.6、36.1、34.4、30.4、26.8、26.4、24.8、16.6、14.8、 11.5。
【0025】
実施例2
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。214.4mg(0.71mmol)のレイン誘導体を20mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、25℃で4時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル256.2mg(総収率62.55%)を得た。
【0026】
実施例3
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのトルエンに溶解した。214.4mg(0.71mmol)のレイン誘導体を20mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、30℃で6時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル268.0mg(総収率65.43%)を得た。
【0027】
実施例4
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。214.4mg(0.71mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、30℃で6時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル275.1mg(総収率67.15%)を得た。
【0028】
実施例5
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。235.6mg(0.78mmol)のレイン誘導体を20mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、25℃で4時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル260.4mg(総収率63.57%)を得た。
【0029】
実施例6
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。256.7mg(0.85mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、25℃で3時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=1:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル269.5mg(総収率65.78%)を得た。
【0030】
実施例7
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのトルエンに溶解した。217.4mg(0.72mmol)のレイン誘導体を20mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、60℃で3時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル254.5mg(総収率61.63%)を得た。
【0031】
実施例8
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。235.6mg(0.78mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、30℃で5時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=1:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル251.4mg(総収率61.36%)を得た。
【0032】
実施例9
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのトルエンに溶解した。235.6mg(0.78mmol)のレイン誘導体を20mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、65℃で3時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル261.7mg(総収率63.88%)を得た。
【0033】
実施例10
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのトルエンに溶解した。196.3mg(0.65mmol)のレイン誘導体を20mLのトルエンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、50℃で5時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=3:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル263.9mg(総収率64.41%)を得た。
【0034】
実施例11
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。253.7mg(0.84mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、40℃で4時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=1:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル268.9mg(総収率65.63%)を得た。
【0035】
実施例12
化合物2-(((3aR,4R,5S,6S,8R,9R)-5-ヒドロキシ-4,6,9-トリメチル-1-オキソ-6-ビニルデカヒドロ-3a,9-プロパノシクロペンタ[8]アヌレン-8-イル)オキシ)-2-オキソエチル4,5-ジヒドロキシ-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2-カルボキシレートの調製
【0036】
200mLの三つ口フラスコ中で、246.0mg(0.65mmol)のプレウロムリンおよび6.1mg(0.06mmol)のトリエチルアミンを、窒素雰囲気下で50mLのジクロロメタンに溶解した。196.3mg(0.65mmol)のレイン誘導体を20mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗によって反応混合物にゆっくりと滴下した。滴下終了後、20℃で5時間反応を行った。薄層クロマトグラフィーを使用して反応を完了まで追跡し、加熱を停止し、次いで保護装置を除去した。反応溶液を濃縮し、水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮し、乾燥して、プレウロムリンレインエステル粗生成物を得た。ジクロロメタン/酢酸エチル=2:1を溶離剤として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗生成物をさらに精製し、溶離剤を減圧濃縮し、乾燥させて、プレウロムリンレインエステル288.9mg(総収率70.53%)を得た。
【0037】
実施例13
本発明の化合物の抗菌活性試験
【0038】
マイクロブロス希釈法によって決定される化合物の最小阻害濃度(MIC)を、陽性対照としてセフタジジムおよびバンコマイシンを用いて測定した。
【0039】
試験株は、薬剤耐性グラム陽性菌:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA 18-575、薬剤耐性グラム陰性菌:多剤耐性緑膿菌MDR-PA 18-126、18-756、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニ CR-AB 18-184、18-560であった。これらの試験株は全て、復旦大学(Fudan University)(復旦大学抗生物質研究所:Fudan University Antibiotic Research Institute)に所属する華山病院(Huashan Hospital)から寄付され、従来の方法で同定された後に使用された。
【0040】
試験株の調製:
【0041】
MHB培地の調製:
20.0gのMHB培地を1Lの蒸留水に添加し、完全に溶解するまで沸騰させ、コニカルボトルに詰め、121℃で15分間滅菌した。
【0042】
試験株を対数増殖期まで培養した:
無菌条件下で、試験株を100mLのMHB培地に接種し、37℃の恒温恒湿インキュベーター中で20~22時間インキュベートした。
【0043】
保存溶液の調製:
試験するサンプルを秤量し、1%DMSO溶液で溶解し、濃度2560μg/mLの保存溶液を調製し、陽性参照物質を秤量し、無菌蒸留水で溶解し、濃度2560μg/mLの保存溶液を調製する。
【0044】
細菌懸濁液の調製:
無菌条件下で、対数増殖期まで培養した試験株をMHB培地で0.5 MCF濁度基準に調整し、1:10に希釈し、濃度106 CFU/mLの細菌懸濁液をスタンバイ用に調製した。
【0045】
保存溶液希釈、試験株の接種:
無菌条件下、保存溶液を256μg/mLに希釈し、滅菌した96ウェルプレートを取り、1番目と2番目のウェルを除く各ウェルに100μLのMHB培地を加え、1番目のウェルに100μLの陽性対照液を加え、2番目と3番目のウェルに100μLの化合物サンプル溶液を加え、3ウェル中でサンプル溶液を培地と混合し、100μLを4番目のウェルにピペットで分取し、混合後に、100μLを5番目のウェルにピペットで分取し、一連の時点において、9番目のウェルから100μLを採取し、廃棄する。10番目のウェルは薬剤を含まない増殖対照であり、次に、各ウェルに上記で調製した細胞懸濁液の100μLを加えて、各ウェルの最終細菌濃度を5×105 CFU/mLとし、陽性対照溶液の濃度は128μg/mLであり、サンプル溶液の濃度は、128、64、32、16、8、4、2、1μg/mLであった。
【0046】
インキュベーション:
試験株を接種した96ウェルプレートを覆い、37℃の恒温恒湿ボックス中で20~22時間インキュベートする。
【0047】
MICエンドポイントの解釈:
黒色バックグラウンド下の96ウェルプレートにおける細菌の増殖を完全に阻害することができる濃度は、細菌に対するサンプルの最小阻害濃度である。
【0048】
図1~5において、10個のウェルは、左から右へ、陽性、128μg/mL、64μg/mL、32μg/mL、16μg/mL、8μg/mL、4μg/mL、2μg/mL、1μg/mL、陰性の10個の群を表す。図1に薬剤耐性菌MARS 18-575に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。図2に薬剤耐性菌MDR-PA 18-756に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。図3に薬剤耐性菌MDR-PA 18-126に対するプレウロムリン レインエステルのin vitro抗菌活性を示す。図4に薬剤耐性菌CR-AB 18-184に対するプレウロムリン レインエステルのin vitro抗菌活性を示す。図5に薬剤耐性菌CR-AB 18-560に対するプレウロムリンレインエステルのin vitro抗菌活性を示す。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
図1~5および表1の試験結果によると、プレウロムリンおよびレインは薬剤耐性菌に対しては抑制作用を示さなかったが、プレウロムリンレインエステルは薬剤耐性グラム陽性菌MRSA(MIC=64μg/mL)、薬剤耐性グラム陽性菌MDR-PA(MIC=64μg/mL)およびCR-AB(MIC=64μg/mL)に対して強い抑制作用を示し、静菌作用は陽性対照薬より強かった。要約すると、本発明のプレウロムリンレインエステルは多剤耐性緑膿菌、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニおよび多剤耐性黄色ブドウ球菌の抗菌薬剤候補として使用することができ、さらに前臨床研究を進めることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5